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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】透明複合シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/08 20060101AFI20220621BHJP
   D06M 11/79 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C08J5/08 CFH
D06M11/79
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019005377
(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公開番号】P2020111710
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】橋本 幸枝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 令佳
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-119580(JP,A)
【文献】特開2018-030953(JP,A)
【文献】特開2010-229640(JP,A)
【文献】国際公開第2011/125396(WO,A1)
【文献】特開2007-045951(JP,A)
【文献】特開2009-079163(JP,A)
【文献】米国特許第04923754(US,A)
【文献】特開2011-213821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16、15/08-15/14、C08J5/04-5/10、5/24、
B29C41/00-41/36、41/46-41/52、70/00-70/88、
G02B1/00-1/08、3/00-3/14、
C08G77/00-77/62、
D06M10/00-11/84、16/00-16/00、19/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオール基を有するシルセスキオキサンを含有する樹脂組成物の硬化物と、ガラス繊維織物とを備える、透明複合シートであって、
前記樹脂組成物の硬化物の屈折率(Nr)と前記ガラス繊維織物の屈折率(Ng)とが、下記式(1)を満たす、透明複合シート。
0.02<|Nr-Ng|≦0.04・・・(1)
【請求項2】
全光線透過率が90%以上である、請求項1に記載の透明複合シート。
【請求項3】
前記ガラス繊維織物を構成するガラス繊維フィラメント表面に、シリカ微粒子が付着されている、請求項1又は2に記載の透明複合シート。
【請求項4】
前記透明複合シートの中心線平均粗さ(Ra)が0.8μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の透明複合シート。
【請求項5】
前記ガラス繊維織物は、Tガラス又は低誘電ガラスから構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の透明複合シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の透明複合シートを含む透明基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明複合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズ、光ディスク及びディスプレイ基板等に用いられる光学材料として、ガラスは幅広く利用されていた。しかしながらガラスは割れやすく、曲げられず、比重が大きく軽量化に不向きである等の理由から、その代替としてガラス繊維に樹脂組成物を含浸させた複合シートが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、高水準の耐熱性及び透明性を有し、熱膨張係数が小さい複合シートとして、ガラス繊維と硬化性樹脂組成物とを用いた透明複合シートが記載されている。また、特許文献1には、透明複合シートの透明性の低下を防ぐため、ガラス繊維の屈折率と硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率との差を、-0.02~+0.02の範囲内にすることが記載されている(特許文献1、段落0057)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-129766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年普及しているスマートフォン及びタブレットの基板及びこれらのカバーとして用いるシートとして、特許文献1に記載されるような透明複合シートの適用が検討されている。しかしながら、特許文献1に記載されるような透明複合シートは、透明性を有していたとしても、文字等が滲んで見える場合がある。したがって、透過視認性が向上された透明複合シートの提供が望まれる。
【0006】
本発明は上述の問題点を解決するためのものであり、透過視認性の良好な透明複合シートを提供することを目的とする。
【0007】
なお、本発明においてシートの「透過視認性」とは、シートを間に挟んでシートの向こう側を見た際の、向こう側にある文字及び絵の視認しやすさのことを意味し、後述する方法により判定できる。また、シートが「透明である」及び「透明性を有する」とは、シートの全光線透過率が85%以上であることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ガラス繊維織物と樹脂硬化物とを含む複合シートにおいて、特定の成分を含む樹脂組成物を用い、樹脂組成物の硬化物とガラス繊維織物との屈折率差を特定の範囲に調整することによって、透明複合シートの透過視認性が向上することを見出し、本発明を達成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、チオール基を有するシルセスキオキサンを含有する樹脂組成物の硬化物と、ガラス繊維織物とを備える、透明複合シートであって、樹脂組成物の硬化物の屈折率(Nr)とガラス繊維織物の屈折率(Ng)とが、下記式(1)を満たす、透明複合シートを提供する。
0.02<|Nr-Ng|≦0.04・・・(1)
【0010】
透明性の低下を防ぐためにガラス繊維の屈折率と硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率との差を-0.02~+0.02の範囲内にするという特許文献1の記載に対して、本発明にかかる透明複合シートによれば、樹脂組成物としてチオール基を有するシルセスキオキサンを含有する樹脂組成物を用い、この樹脂組成物の硬化物の屈折率とガラス繊維織物の屈折率とを上記式(1)の範囲とすることで、高い透明性を維持しつつ、良好な透過視認性を有する透明複合シートとなる。また、ガラス繊維織物と樹脂組成物の硬化物とを含むことで、透明複合シートが強固となり、破損しにくく、かつ、軽量化が可能となり、取扱いの容易な透明複合シートとなる。さらに、シルセスキオキサンの硬化物を含むため、シリカ複合化の効果により、本発明の透明複合シートは耐熱性、耐薬品性に優れるという特徴を有する。
【0011】
本発明の透明複合シートの全光線透過率は90%以上であることが好ましい。全光線透過率が90%以上であることにより、さらに透明性が増し、透過視認性がより向上する。
【0012】
本発明の透明複合シートにおいて、ガラス繊維織物を構成するガラス繊維フィラメント表面に、シリカ微粒子が付着されていることが好ましい。ガラス繊維フィラメント表面にシリカ微粒子が付着されていると、透過視認性がさらに向上する。
【0013】
本発明の透明複合シートの中心線平均粗さ(Ra)は0.8μm以下であることが好ましい。中心線平均粗さが0.8μm以下であることにより、透明複合シートの表面が平滑となり、透過視認性がさらに向上する。また、表面が平滑であるため、接着性に優れ、各種製品のカバーとして使用するのにさらに好適となる。
【0014】
透明複合シートに含まれるガラス繊維織物は、Tガラス又は低誘電ガラスから構成されることが好ましい。ガラス繊維織物がTガラス又は低誘電ガラスから構成されることにより、ガラス繊維織物の屈折率が式(1)の範囲を満たすように調節することが容易となり、透明複合シートの透過視認性が向上する。
【0015】
本発明の透明複合シートは、破損しにくく、取扱いが容易で、さらに透明性及び透過視認性が良好であるため、透明基材に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、透過視認性の良好な透明複合シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態に係る透明複合シートの斜視図である。
図2図2は、実施例における透過視認性の判定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明にかかる透明複合シートの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は本発明の透明複合シートの一実施形態を示す図である。透明複合シート1は、縦糸12及び横糸14から構成されるガラス繊維織物10と、ガラス繊維織物10に含浸された樹脂組成物の硬化物15とからなるものである。すなわち、透明複合シート1は、ガラス繊維織物10及び樹脂組成物の硬化物15から構成されており、ガラス繊維織物10の糸間隙に侵入するように、ガラス繊維織物10の周囲に樹脂組成物の硬化物15が配されている。樹脂組成物の硬化物15の屈折率(Nr)とガラス繊維織物10の屈折率(Ng)は、下記式(1)を満たす。
0.02<|Nr-Ng|≦0.04・・・(1)
【0020】
以下、透明複合シート1の各構成要素について詳しく説明する。
【0021】
(a)ガラス繊維織物
ガラス繊維織物10は、縦糸12及び横糸14(これらはいずれもガラス繊維束からなり、ガラス繊維束は複数のガラス繊維フィラメントから構成される)が製織されてなるものであり、透明複合シート1の基布となる材料である。ガラス繊維織物10の含有量は透明複合シート1の全質量に対し、10~60質量%であることが好ましい。含有量を10質量%以上とすることで、透明複合シート1の強度を向上させることができる。また、含有量を60質量%以下とすることで、樹脂が十分にガラス繊維織物に含浸し、カスレ及び白化を防ぎ、表面平滑性及び透過視認性を向上させることができる。ガラス繊維織物10の含有量は、より好ましくは20~50質量%である。上記の範囲にすることにより、透明複合シート1の強度を維持しながら、透過視認性をさらに向上させることができる。
【0022】
透明複合シート1におけるガラス繊維織物10の単位面積あたりの質量は10~100g/mであることが好ましい。単位面積あたりの質量を10g/m以上にすることで、ガラス繊維織物10の強度を十分に高められる。ガラス繊維織物10の単位面積あたりの質量を100g/m以下にすることで、ガラス繊維織物10の厚さを薄くでき、透明複合シート1の透過視認性をさらに向上させることができる。ガラス繊維織物10の単位面積あたりの質量は好ましくは20~50g/mである。なお、単位面積あたりの質量を上記範囲にするために、厚めのガラス繊維織物を一枚用いてもよいし、薄めのガラス繊維織物を複数枚用いてもよいが、透明性及び透過視認性を高めるためには、ガラス繊維織物を一枚用いることが好ましい。また、ガラス繊維織物10の厚さは、10~100μmであることが好ましく、15~50μmであることがより好ましく、20~30μmであることがさらに好ましい。
【0023】
ガラス繊維織物10は、ガラス組成として、SiOの含有量が最も高く、さらに他の成分としてCaO、MgO、SiO、Al、Fe、NaO、TiO、LiO、KO、ZrO、B、MoO、GeO、P、P、V、BeO、ZnO、BaO及びCr等の成分を含んでもよい。ガラスの組成によって、Eガラス、Tガラス、低誘電ガラス等を、ガラス繊維織物10を構成するガラスとして挙げることができるが、この中でも、Tガラス及び低誘電ガラスが好ましい。なお、Eガラスとは、全量に対し、52~56質量%のSiO、12~16質量%のAl、5~10質量%のB、合計して20~25質量%のCaO+MgO及び合計して0~0.8質量%のLiO+KO+NaOを含むガラス組成を意味する。また、Tガラスとは、全量に対し、64~66質量%のSiO、24~26質量%のAl、9~11質量%のMgO、0~0.3質量%のCaO及び合計して0~0.3質量%のLiO+KO+NaOを含むガラス組成を意味する。また、低誘電ガラスとは、全量に対し、48~62質量%のSiO、9~18質量%のAl、17~26質量%のB、0~6質量%のMgO、0.1~9質量%のCaO、0~5質量%のTiO、0~6質量%のSrO、0~6質量%のP、合計して0.05~0.5質量%のLiO+KO+NaO及び合計して0~3質量%のF+Clを含むガラス組成を意味する。さらに、低誘電ガラスは、52.0~57.0質量%のSiO、12.0~16.0質量%のAl、18~19.9質量%のB、2.0~6.0質量%のMgO、2.0~6.0質量%のCaO、0.5~3.5質量%のTiO、合計して0.05~0.3質量%のLiO+KO+NaO及び合計して0.5~2.0質量%のF+Clを含むガラス組成であることが好ましい。Tガラス及び低誘電ガラスをガラス繊維織物10の素材として用いた場合、樹脂組成物の硬化物15とガラス繊維織物10との屈折率差が式(1)を満たすように、ガラス繊維織物10の屈折率(Ng)を調整しやすくなる。作製した透明複合シート1の透過視認性が特に優れることから、Tガラス及び低誘電ガラスの中でも、Tガラスを用いることがより好ましい。一方、特に、高周波を用いる車載レーダー等の基板やこれらの筐体、高速無線LANサーバーの基板、監視システム内の回路基板用途においては、その誘電率及び誘電正接が低いことから、Tガラス及び低誘電ガラスの中でも、低誘電ガラスを用いることがより好ましい。
【0024】
ガラス繊維織物10の縦糸12及び横糸14を構成するガラス繊維フィラメントのフィラメント直径は、特に限定されないが、ガラス繊維織物10の作製の容易性の観点から、また、透明複合シート1の強度及び透過視認性の両方を向上させる観点から3~9μmであることが好ましく、より好ましくは3~5μmである。縦糸12及び横糸14を構成するガラス繊維フィラメントのフィラメント直径は、縦糸12と横糸14との間で同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0025】
ガラス繊維織物10の縦糸12及び横糸14は、特に限定されないが、25~500本のガラス繊維フィラメントが束ねられて形成されることが、ガラス繊維織物10の作製の容易性から、また、透明複合シート1の強度及び透過視認性の両方を向上させる観点から好ましく、より好ましくは30~410本であり、さらに好ましくは40~210本であり、特に好ましくは90~110本である。縦糸12及び横糸14を構成するガラス繊維フィラメントのフィラメント本数は、縦糸12と横糸14との間で同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0026】
ガラス繊維織物10の縦糸12及び横糸14の番手は、特に限定されないが、1.0~50.0texであることが好ましく、1.5~15.0texであることがより好ましく、2.0~10.0texであることがさらに好ましく、2.5~7.0texであることが特に好ましい。なお、番手(tex)とは、ガラス繊維糸の1000mあたりの質量(単位:g)に相当する。縦糸12及び横糸14の番手は、縦糸12と横糸14との間で同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0027】
ガラス繊維織物10の縦糸12及び横糸14を構成するガラス繊維フィラメント表面に、シリカ微粒子が付着されていることが好ましい。シリカ微粒子がガラス繊維フィラメント表面に付着されていることにより、樹脂組成物の含浸性を向上させることができ、透明複合シート1の透過視認性をより高くすることが可能となる。本発明において、シリカ微粒子がガラス繊維フィラメント表面に付着されているとは、1又は2以上のガラス繊維フィラメント表面にシリカ微粒子の一部分が溶融して固着されている状態、及び、シリカ微粒子が1又は2以上のガラス繊維フィラメント表面に主に静電相互作用によって接着されている状態を含む。ガラス繊維フィラメント表面にシリカ微粒子を付着させるには、例えば国際公開WO2011/125396号に記載の方法を用いることができる。具体的には、ガラス繊維織物をシリカ微粒子の水分散液中に浸漬し、ガラス繊維織物のガラス繊維フィラメント表面にシリカ微粒子を付着させ、シリカ微粒子が付着したガラス繊維織物に開繊処理を施し、開繊処理が施されたガラス繊維織物を350~450℃で24~72時間加熱処理することによって、ガラス繊維フィラメント表面にシリカ微粒子が付着したガラス繊維織物を得ることができる。
【0028】
シリカ微粒子は、ガラス繊維フィラメント表面に、以下に定義する表面面積比が0.0010~0.10となるように付着していることが好ましく、0.0050~0.050となるように付着していることが好ましい。表面面積比は、ガラス繊維フィラメント表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて2000倍で観察し、任意の5ヶ所の4μm×4μm領域について、その領域中に存在する全シリカ微粒子の面積を求め、(4μm×4μm領域中に含まれる全シリカ微粒子の面積)/(4μ×4μm)を計算し、5つの計算値の平均値をとることで求めることができる。また、シリカ微粒子は、体積平均粒子径が10~300nmであることが好ましく、70~120nmであることが特に好ましい。
【0029】
ガラス繊維織物10は縦糸12及び横糸14を平織することにより作製される。ガラス繊維織物10の織組織としては、平織に限らず、綾織、朱子織、斜子織、畦織等様々な織組織を採用することができる。ガラス繊維織物10の打ち込み密度は、特に限定されないが、10~150本/25.4mmであることが好ましく、40~130本/25.4mmであることがより好ましく、60~110本/25.4mmであることが好ましい。縦糸の打ち込み密度と横糸の打ち込み密度は、同一でも異なってもよいが、透明複合シートの等方性を高め、厚みムラを低減するという観点からは、縦糸と横糸の打ち込み密度比(横糸の打ち込み密度/縦糸の打ち込み密度)が、0.9~1.1であることが好ましく、0.95~1.05であることがより好ましい。なお、打ち込み密度とは、1インチ(25.4mm)当たりの縦糸又は横糸の本数のことをいう。
【0030】
ガラス繊維織物10に対して開繊処理を施すことが好ましい。なお、開繊処理とは、ガラス繊維織物を構成する縦糸12及び横糸14の糸幅を拡大させる処理のことを表す。開繊処理によって、糸間隙を狭くすることができる。また、開繊処理により、ガラス繊維織物10を構成している縦糸12と横糸14とをばらけさせて、ガラス繊維織物10全体を扁平にすることができる。このように、開繊処理により、ガラス繊維束の占める容積及び面積範囲を変化させることが可能となる。また、ガラス繊維織物10を扁平にすることにより、透明複合シート1の全光線透過率を高くすることができる。
【0031】
ガラス繊維織物10に対して開繊処理を施すことにより、ガラス繊維織物10の表面ガラス糸被覆率が、50~100%となることが好ましく、80~100%となることがより好ましく、86~100%となることがさらに好ましい。表面ガラス糸被覆率を、上記範囲とすることで、透明複合シート1の透過視認性及び強度の両方を向上させることができる。なお、ガラス繊維織物の表面ガラス糸被覆率(%)は、縦糸12の平均糸幅Wt(mm)、縦糸12の打ち込み密度Dt(本/25.4mm)、横糸14の平均糸幅Wy(mm)、横糸14の打ち込み密度Dy(本/25.4mm)として、100×{Wt×Dt×25.4+Wy×Dy×25.4-(Wt×Dt)×(Wy×Dy)}/(25.4×25.4)、を計算することにより求めることができる。
【0032】
透明複合シート1の耐久性を向上させる目的で、ガラス繊維織物10に予め表面処理を行って接着性物質を付着させてもよい。接着性物質としては、シランカップリング剤を用いることができる。これにより、ガラス繊維織物10と樹脂組成物との界面密着性が向上する。シランカップリング剤は、シランカップリング剤が付着していないガラス繊維織物100質量部に対して、0.01~0.2質量部とすることが好ましい。より好ましくは、0.02~0.15質量部であり、さらに好ましくは0.03~0.10質量部である。なお、シランカップリング剤の付着量は、[シランカップリング剤の付着したガラス繊維織物の重量]-[加熱処理等によりシランカップリング剤の付着したガラス繊維織物からシランカップリング剤を除去した(=シランカップリング剤が付着していない)ガラス繊維織物の重量]、により算出することができる。
【0033】
ガラス繊維織物10は、1.500~1.600の屈折率(Ng)を有することが好ましい。ガラス繊維織物10の屈折率(Ng)が上記範囲であることにより、ガラス組成物の繊維化が比較的容易となる。また、屈折率(Ng)が上記の範囲であることにより、樹脂組成物の硬化物15の屈折率(Nr)とガラス繊維織物10の屈折率(Ng)とが式(1)を満たすように調整しやすくなる。より好ましくは、ガラス繊維織物10の屈折率(Ng)は、1.501~1.580であり、さらに好ましくは1.503~1.570であり、より好ましくは、1.505~1.550であり、特に好ましくは、1.508~1.540であり、最も好ましくは、1.515~1.530である。ガラス繊維織物10の屈折率(Ng)は、ガラス繊維織物10を構成するガラス繊維のガラス組成等に依存するため、ガラス組成等を調整することにより、ガラス繊維織物10の屈折率(Ng)を適宜調整することができる。
【0034】
(b)樹脂組成物の硬化物
樹脂組成物の硬化物15は、チオール基を有するシルセスキオキサン(以下、場合により「成分(A)」と称する)を含有する樹脂組成物の硬化物である。より具体的には、該樹脂組成物は、成分(A)の他に、硬化剤(以下、場合により「成分(B)」と称する)、を含有し、樹脂組成物の硬化物15は、該樹脂組成物に紫外線照射及び/又は加熱等の処理を行い、成分(A)を重合させて硬化した重合体である。
【0035】
透明複合シート1における樹脂組成物の硬化物15の単位面積あたりの質量は10~90g/mであることが好ましい。樹脂組成物の硬化物15の質量を10g/m以上にすることで、ガラス繊維織物10の模様が浮き出る現象、及び、樹脂が白化して見える現象を防止できる。また、樹脂組成物の硬化物15の質量を90g/m以下にすることで、透明複合シート1におけるガラス繊維織物10の割合が高くなり、透明複合シート1の強度を高められる。樹脂組成物の硬化物15の質量は20~80g/mであることがより好ましい。上記範囲にすることで、透明複合シート1の強度を維持しながら、透明複合シート1の表面平滑性を向上させることができる。
【0036】
樹脂組成物の硬化物15は、1.540~1.560の屈折率(Nr)を有することが好ましい。樹脂組成物の硬化物15の屈折率(Nr)が上記範囲であることにより、樹脂組成物の硬化物15の屈折率(Nr)とガラス繊維織物10の屈折率(Ng)とが式(1)を満たすように調整しやすくなる。より好ましくは、樹脂組成物の硬化物15の屈折率(Nr)は、1.545~1.553であり、さらに好ましくは1.546~1.550である。樹脂組成物の硬化物15の屈折率(Nr)は、樹脂組成物に含有される成分(A)及び成分(B)の種類及び量、重合開始剤等の他の成分の種類及び量等に依存し、これらを適宜調整することにより、樹脂組成物の硬化物15の屈折率(Nr)を調整することができる。
【0037】
成分(A)は、下記式(2):
Si(OR・・・(2)
で示されるチオール基含有シラン化合物(以下、場合により「成分(a1)」と称する)を、加水分解及び縮合して得ることができる化合物(ポリシルセスキオキサン)である。成分(A)のポリシルセスキオキサンは、ランダム構造、ラダー構造、ケージ構造等を示すことができるが、本発明においては、成分(A)は、ガラス繊維織物との密着性に優れ、高い透明性及び透過視認性が得られることから、ランダム構造のシルセスキオキサンを含有することが好ましい。
【0038】
式(2)において、Rとしては、具体的には、チオール基を有する炭素数1~8の脂肪族炭化水素基、チオール基を有する炭素数1~8の脂環式炭化水素基、又はチオール基を有する芳香族炭化水素基等が挙げられる。Rとしては、具体的には、水素原子、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基、炭素数1~8の脂環式炭化水素基、又は芳香族炭化水素基等が挙げられる。チオール基を有する「炭化水素基」は、炭素原子と水素原子とだけでなく、チオール基に由来する硫黄原子も含む基である。複数のRは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0039】
式(2)で表される成分(a1)としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルトリブトキシシラン、1,4-ジメルカプト-2-(トリメトキシシリル)ブタン、1,4-ジメルカプト-2-(トリエトキシシリル)ブタン、1,4-ジメルカプト-2-(トリプロポキシシリル)ブタン、1,4-ジメルカプト-2-(トリブトキシシリル)ブタン、2-メルカプトメチル-3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトメチル-3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトメチル-3-メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、2-メルカプトメチル-3-メルカプトプロピルトリブトキシシラン、1,2-ジメルカプトエチルトリメトキシシラン、1,2-ジメルカプトエチルトリエトキシシラン、1,2-ジメルカプトエチルトリプロポキシシラン、及び1,2-ジメルカプトエチルトリブトキシシラン等が挙げられる。なかでも、加水分解反応の反応性が高く、かつ入手が容易であるため、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。成分(a1)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
また、本発明においては、成分(A)を得るに際し、上記チオール基含有シラン化合物(a1)に加えて、他の架橋性化合物(a2)(以下、場合により「成分(a2)」と称する)を併用してもよい。
【0041】
成分(a2)としては、チオール基を含有しないアルコキシシランが好ましく、トリアルキルアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシチタン及びテトラアルコキシジルコニウム等が挙げられる。なかでも、トリアルキルアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン又はテトラアルコキシシランを使用した場合は、成分(A)の架橋密度を容易に調整できるためより好ましい。また、アルキルトリアルコキシシランを使用した場合には、成分(A)に含まれるチオール基の数を容易に調整でき、最終的に得られる樹脂組成物の硬化物15の屈折率を調整できるためさらに好ましい。
【0042】
上記トリアルキルアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン及びトリフェニルエトキシシラン等が挙げられる。上記ジアルキルジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン及び3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。上記アルキルトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン及びフェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。上記テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラブトキシシラン等が挙げられる。上記テトラアルコキシチタンとしては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン及びテトラブトキシチタン等が挙げられる。上記テトラアルコキシジルコニウムとしては、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム及びテトラブトキシジルコニウム等が挙げられる。これら以外の金属アルコキシドを用いてもよい。成分(a2)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
成分(a1)と成分(a2)とを併用する場合は、[成分(a2)のモル数]/[成分(a1)及び成分(a2)の合計モル数]が0.10~0.70であることが好ましく、0.15~0.50であることがより好ましく、0.20~0.40であることがさらに好ましく、0.25~0.35であることが特に好ましい。成分(a1)及び成分(a2)を上記の範囲とすることで、得られるチオール基含有シルセスキオキサン(A)中に含まれるチオール基の数を調整でき、最終的に得られる樹脂組成物の硬化物15の屈折率を適当な範囲に調整することが可能となり、さらに、硬度を高めることができる。
【0044】
本発明に用いられるチオール基含有シルセスキオキサン(A)は、成分(a1)単独又は成分(a1)に成分(a2)を併用して、それらを加水分解後、縮合させて得ることができる。加水分解反応によって、成分(a1)又は成分(a2)に含まれるアルコキシ基がシラノール基となり、アルコールが副生する。加水分解反応の反応温度及び反応時間は、成分(a1)の反応性又は成分(a1)及び成分(a2)の反応性に応じて任意に設定できる。
【0045】
成分(A)を得るための加水分解反応では触媒を用いることが好ましい。触媒としては、従来公知の加水分解触媒として機能しうる酸性触媒を任意に用いることができる。触媒活性が高く、更に縮合反応の触媒としても機能するので、上記触媒はギ酸であることが好ましい。
【0046】
加水分解反応の際には、溶剤を用いてもよく、溶剤を用いなくてもよい。該溶剤の種類は特に限定されない。溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。加水分解反応の際に用いられる溶剤は、縮合反応に用いられる溶剤と同じであることが好ましい。成分(a1)の反応性又は成分(a1)及び成分(a2)の反応性が低い場合は、上記加水分解反応の際に、溶剤を用いないことが好ましい。
【0047】
加水分解反応終了後、加水分解触媒と脱水縮合触媒とが同一でない場合、系内から加水分解触媒を実質的に除去しておくことが好ましい。除去しない場合、後述の縮合反応において反応が進行しなかったり、シラノール基が完全に消費されなかったり、異常な高分子量化のため系がゲル化してしまったりするため、成分(A)が得にくくなる場合がある。除去方法は、用いた触媒に応じて公知の各種の方法から適宜に選択できる。
【0048】
縮合反応においては、前記のシラノール基間で水が副生し、またシラノール基とアルコキシ基間ではアルコールが副生して、シロキサン結合を形成する。縮合反応には、従来公知の脱水縮合触媒として機能しうる塩基性触媒を任意に用いることができる。中でも塩基性の高いものが好ましく、具体例としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))等のアルカリ塩類を挙げることができる。縮合反応は、反応温度に設定し、脱水縮合触媒を添加した極性溶剤に対し、加水分解反応で得た加水分解物を含む溶液を順次添加する方法によって行うことができる。
【0049】
当該縮合反応の終了後、用いた触媒を除去することが好ましい。触媒を除去することにより、成分(A)及び成分(A)を含む樹脂組成物の安定性が向上する。除去方法は、用いた触媒に応じて公知の各種の方法から適宜に選択できる。
【0050】
上述のようにして、本発明に用いられるチオール基を有するシルセスキオキサン(A)を作製することができるが、成分(A)として市販品を用いてもよい。チオール基を有するシルセスキオキサンの市販品としては、コンポセランSQ106、コンポセランSQ107、コンポセランSQ109(いずれも荒川化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0051】
成分(A)のチオール当量は、100~500g/eqであることが好ましく、120~400g/eqであることがより好ましく、150~300g/eqであることがさらに好ましく、180~250g/eqであることが特に好ましく、200~225g/eqであることが特に好ましい。上記範囲の成分(A)を用いることで、最終的に得られる樹脂組成物の硬化物15の屈折率を適当な範囲に調整することができる。なお、チオール当量は、ヨウ素滴定法にて測定することができる。ここで、ヨウ素滴定法としては、例えば、成分(A)0.2gをクロロホルム20mlに溶解させ、イソプロパノール10ml、水20ml、でんぷん指示薬1mlを添加した後、0.05mol/lヨウ素溶液で滴定して測定する方法が挙げられる。
【0052】
本発明に用いられる、成分(A)を含む樹脂組成物は、さらに硬化剤(成分(B))を配合することにより、紫外線硬化性樹脂組成物及び/又は熱硬化性樹脂組成物とすることができる。成分(B)としては、炭素-炭素2重結合を有する化合物(以下、場合により「成分(B1)」と称する)、エポキシ基を有する化合物(以下、場合により「成分(B2)」と称する)、イソシアネート基を有する化合物(以下、場合により「成分(B3)」と称する)を挙げることができる。副生成物がなく最終的に得られる樹脂組成物の硬化物15の収縮が少ないことから、炭素-炭素2重結合を有する化合物である成分(B1)を硬化剤として用いることが好ましい。
【0053】
本発明で用いることができる成分(B1)は、特に限定されず、従来公知の炭素-炭素2重結合を有する化合物を適宜用いることができる。炭素-炭素2重結合を有する官能基としては、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アリル基等が挙げられる。
【0054】
成分(B1)の炭素-炭素2重結合は、チオール基含有シルセスキオキサン(A)のチオール基と反応(エン-チオール反応)するが、当該反応は炭素-炭素2重結合の種類により、反応機構が異なる。即ち、ラジカル重合性の低いビニル基、アリル基をもつ化合物を成分(B1)として用いた場合には、エン-チオール反応のみが進行し、チオール基含有シルセスキオキサン(A)中のチオール基と成分(B1)中の炭素-炭素2重結合がほぼ1:1(モル比)で反応する。一方、ラジカル重合性の高いアクリル基、メタクリル基をもつ化合物を成分(B1)として用いた場合には、成分(B1)中の炭素-炭素2重結合の重合反応も並行して進行し、チオール基含有シルセスキオキサン(A)中のチオール基と成分(B1)中の炭素-炭素2重結合が1:1~100(モル比)程度で反応する。
【0055】
ラジカル重合性の低いビニル基、アリル基をもつ成分(B1)としては、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールFジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、トリプロピレングリコールジアリルエーテル、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル等が挙げられる。これらの化合物は、いずれか単独で、又は組み合わせて使用できる。これらの中でも、アリル基含有化合物は得られる組成物の保管安定性が高いため好ましく、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルは入手が容易であるため、特に好ましい。
【0056】
ラジカル重合性の高いアクリル基、メタクリル基をもつ成分(B1)としては、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらの化合物は、いずれか単独で、又は組み合わせて使用できる。
【0057】
本発明で用いることができる成分(B2)としては、特に限定されず、従来公知のエポキシ基を有する化合物を適宜に用いることができる。例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリフェノールフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの化合物は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。該例示化合物のうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(市販品としては、例えば、三菱化学(株):商品名「JER828」等)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(市販品としては、例えば、三菱化学(株):商品名「JER807」等)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(市販品としては、例えば、新日鐵化学(株):商品名「ST-3000」等)、脂環式エポキシ樹脂(市販品としては、例えば、ダイセル化学工業(株):商品名「セロキサイド2021P」等)は、最終的に得られる樹脂組成物の硬化物15が無色透明性、耐熱性等に優れ、かつ入手が容易であるため特に好ましい。
【0058】
また、本発明で用いることができる成分(B3)は、特に限定されず、従来公知のイソシアネート基を有する化合物を適宜用いることができる。該ジイソシアネート化合物としては、例えば芳香族、脂肪族又は脂環族の各種公知のジイソシアネート類を使用することができ、より具体的には、例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、並びにダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。これらの化合物は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。該例示化合物のうち、イソホロンジイソシアネートは、最終的に得られる硬化物が無色透明性、耐熱性等に優れ、かつ入手が容易であるため特に好ましい。
【0059】
本発明の樹脂組成物において、成分(A)は50~65質量%含まれ、成分(B)は50~35質量%含まれることが好ましい。また、成分(A)は53~62質量%含まれ、成分(B)は47~38質量%含まれることがより好ましい。成分(A)及び成分(B)がこの範囲で含まれることで、得られる樹脂組成物の硬化物15の屈折率を好適な範囲とすることができる。
【0060】
本発明の樹脂組成物には、公知の重合開始剤、硬化触媒、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、フィラー等を配合してもよい。本発明の樹脂組成物において、例えば、重合開始剤は、0.1~2質量%含まれ、硬化触媒は0.1~2質量%含まれる。
【0061】
[透明複合シートの製造方法]
次に、透明複合シート1を製造するための製造方法について説明する。透明複合シート1を製造する製造方法は、樹脂組成物を含む溶液をガラス繊維織物10に含浸させる含浸工程と、溶剤を揮発させる揮発工程と、樹脂組成物を硬化させる硬化工程とを有する。
【0062】
まず、樹脂組成物を、溶剤に溶解させて溶液を作製する。溶剤としては、樹脂組成物と非反応性であればよく、公知のものを適宜選択して用いることができる。樹脂組成物を溶剤で希釈して所望の粘度とすればよい。樹脂組成物の粘度が低い場合は、溶剤を用いなくてもよい。
【0063】
次に、樹脂組成物及び必要に応じて溶剤を含む溶液を、ガラス繊維織物10に含浸させる。樹脂組成物を含む溶液の粘度が低い場合は、ガラス繊維織物10への含浸性が高くなるので好ましい。上記溶液をガラス繊維織物10に含浸させる方法としては、例えば、ガラス繊維織物10を上記溶液中に浸漬する方法、ガラス繊維織物10に対して上記溶液を塗布する方法等が挙げられる。上記溶液が、ガラス繊維織物10を被覆し、さらに縦糸12の間及び横糸14の間に生ずる糸間隙に侵入する。溶液がガラス繊維束間の糸間隙に侵入している状態で、溶剤を揮発させる。続いて、樹脂組成物が紫外線硬化性樹脂の場合は紫外線照射により、また、樹脂組成物が熱硬化性樹脂の場合は加熱により、樹脂組成物が紫外線及び熱硬化性樹脂の場合は紫外線照射及び加熱により、樹脂組成物を硬化させる。このようにして、ガラス繊維織物10とガラス繊維織物10に含浸した樹脂組成物の硬化物15とを含む透明複合シート1が得られる。
【0064】
上記溶剤の揮発工程においては、ガラス繊維織物10に含浸させた樹脂組成物を含む溶液中の溶剤を揮発させる。溶剤の揮発方法は溶剤の種類、量等に応じて適宜決定すればよいが、80~120℃程度に加熱し、常圧又は減圧下で360~600秒程度乾燥することが好ましい。溶液が溶剤を含まない場合には、この揮発工程を省略してもよい。
【0065】
上記樹脂組成物の硬化工程においては、樹脂組成物が紫外線硬化性樹脂組成物の場合は、紫外線を照射すればよい。紫外線の照射量は、紫外線硬化性樹脂組成物の種類、量等に応じて適宜決定すればよいが、250nmでの積算光量が300~1000mJ/cm程度となるよう照射することが好ましい。また、紫外線照射して得られた硬化物を、さらに加熱してもよい。加熱することで、硬化物の力学特性を安定させることができる。加熱の方法は適宜決定すればよいが、80~120℃程度に加熱し、360秒~600秒度の条件とされる。
【0066】
また、樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物の場合は、加熱することにより、溶剤の揮発及び樹脂組成物の硬化を行うことができる。加熱温度及び加熱時間は、溶剤の種類及び量、熱硬化性樹脂組成物の種類及び量、ガラス繊維織物の厚み等を考慮して、適宜決定する。通常は80~160℃程度で10分~5時間程度の条件とするのが好ましい。
【0067】
また、樹脂組成物が紫外線及び熱硬化性樹脂組成物の場合は、加熱して溶剤の揮発を行った後、紫外線及び熱で二段階硬化させることにより硬化させることができる。二段階硬化を行う方法としては、一段階目で熱硬化を行った後、二段階目で紫外線硬化を行ってもよいし、一段階目で紫外線硬化を行った後、二段階目で熱硬化を行ってもよい。各硬化は、上述の紫外線硬化性樹脂組成物の硬化条件及び熱硬化性樹脂組成物の硬化条件と同様の条件で行うことができる。
【0068】
このようにして得られる本発明の透明複合シート1において、樹脂組成物の硬化物15の屈折率(Nr)とガラス繊維織物10の屈折率(Ng)とは、下記式(1)を満たす。
0.02<|Nr-Ng|≦0.04・・・(1)
好ましくは、樹脂組成物の硬化物15とガラス繊維織物10との屈折率差|Nr-Ng|は、0.02<|Nr-Ng|≦0.03であり、さらに好ましくは0.02<|Nr-Ng|≦0.025である。なお、樹脂組成物の硬化物15の屈折率(Nr)がガラス繊維織物10の屈折率(Ng)より高いことが好ましい。すなわち、(Nr-Ng)は正の値であることが好ましい。
【0069】
透明複合シート1の全光線透過率は85%以上であり、したがって透明性を有する。透明複合シート1の全光線透過率は90%以上であることが好ましい。このような透過率にすることで光が十分に通過し、透明複合シート1の透明性及び透過視認性がさらに向上する。透明複合シート1の全光線透過率を調整するには、ガラス繊維織物10の種類及び厚み、樹脂組成物の種類及び量を調整することにより行うことができる。なお、全光線透過率は、JIS K7361に従って、測定することができる。
【0070】
透明複合シート1の中心線平均粗さ(Ra)は0.8μm以下であることが好ましい。中心線平均粗さ(Ra)が0.8μm以下であることにより、透明複合シート1表面の平滑性が向上し、透過視認性がさらに優れたものになる。また、表面が平滑となるため、透明複合シート1を各種製品のカバー等として用いる際にも接着性が良好なものとなり、かつ各種製品の美観を損なうことがない。中心線平均粗さ(Ra)はより好ましくは0.01~0.5μmであり、さらに好ましくは0.05~0.4μmである。なお、中心線平均粗さ(Ra)は、JIS B0601-1982に従って、測定することができる。
【0071】
本発明の透明複合シート1は、破損しにくく、取扱いが容易で、さらに透明性及び透過視認性が良好であるため、各種用途に使用できる。例えば、透明基材、ガラス代替建築材料、透明保護カバー等に用いることができる。
【0072】
本発明の透明複合シート1は、樹脂材料と比べて耐熱性が高く、ガラス材料と比べて柔軟性があるため、透明基材に特に好適に用いることができる。ここで、透明基材としては、例えば、液晶表示素子用基板、有機EL表示素子用基板、カラーフィルター基板、太陽電池用基板、スマートフォン及びタブレットの表示基材(ディスプレイ)、電子回路基板が挙げられる。中でも、透明複合シート1を通して文字及び絵が視認しやすいので、スマートフォン及びタブレットの表示基材として最も好適に用いることができる。
【実施例
【0073】
以下、本発明の好適な実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
[ガラス繊維織物の作製]
以下に示す実施例1~4、比較例1、2及び参考例1、2において、以下の6種類のガラス繊維織物を用いた。
【0075】
(NHR-EGCの作製)
Eガラス組成(表1参照)のヤーンを製織して作製された、IPCスペック1037相当(厚さ25μm、単位面積あたりの質量:24g/m、フィラメント径:4.5μm、フィラメント本数:100本、番手:4.2tex、縦糸打ち込み密度:69本/25.4mm、横糸打ち込み密度:72本/25.4mm、織組織:平織)のガラス繊維織物(日東紡績(株)製)に、以下の処理1~5を施した(このガラス繊維織物を、以下、場合により「NHR-EGC」と称する)。NHR-EGCには、体積平均粒子径100nmのシリカ微粒子が表面面積比0.030で付着し、シランカップリング剤が、シランカップリング剤が付着していないガラス繊維織物100質量部に対して0.1質量部付着していた。NHR-EGCの厚さは25μmであり、屈折率は1.561であった。
処理1:ガラス繊維織物を、シリカ微粒子の水分散液中に浸漬して、シリカ微粒子をガラス繊維織物に付着させた(以下、この処理を「NHR処理」ということもある)。
処理2:ガラス繊維織物に対して、バイブロウォッシャーを用いた開繊処理を施した。
処理3:ガラス繊維織物を、400℃で48時間加熱した。
処理4:ガラス繊維織物に、シランカップリング剤(N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)を用いた表面処理を施した。
処理5:ガラス繊維織物に対して、2MPaの圧力を有する噴射水を用いた開繊処理を施した。
【0076】
(EGCの作製)
Eガラス組成(表1参照)のヤーンを製織して作製された、IPCスペック1037相当のガラス繊維織物(日東紡績(株)製)に、処理1を施さないこと以外はNHR-EGCの作製と同様に、処理2~5を施した(このガラス繊維織物を、以下、場合により「EGC」と称する)。EGCには、シランカップリング剤が付着していないガラス繊維織物100質量部に対して、シランカップリング剤が0.1質量部付着していた。EGCの厚さは25μmであり、表面ガラス糸被覆率は99%であり、屈折率は1.561であった。
【0077】
(NHR-TGCの作製)
Tガラス組成(表1参照;具体的には、64.8質量%のSiO、25.0質量%のAl、10.0質量%のMgO、0.1質量%のCaO及び合計して0.1質量%のLiO+NaO+KOを含むガラス組成)のヤーンを製織して作製された、IPCスペック1037相当のガラス繊維織物(日東紡績(株)製)に、NHR-EGCの作製と同様に、処理1~5を施した(このガラス繊維織物を、以下、場合により「NHR-TGC」と称する)。NHR-TGCには、体積平均粒子径100nmのシリカ微粒子が表面面積比0.030で付着し、シランカップリング剤が、シランカップリング剤が付着していないガラス繊維織物100質量部に対して0.1質量部付着していた。NHR-TGCの厚さは25μmであり、屈折率は1.526であった。
【0078】
(TGCの作製)
Tガラス組成(表1参照;具体的には、64.8質量%のSiO、25.0質量%のAl、10.0質量%のMgO、0.1質量%のCaO及び合計して0.1質量%のLiO+NaO+KOを含むガラス組成)のヤーンを製織して作製された、IPCスペック1037相当のガラス繊維織物(日東紡績(株)製)に、EGCの作製と同様に、処理2~5を施した(このガラス繊維織物を、以下、場合により「TGC」と称する)。TGCには、シランカップリング剤が付着していないガラス繊維織物100質量部に対して、シランカップリング剤が0.1質量部付着した。TGCの厚さは25μmであり、表面ガラス糸被覆率は99%であり、屈折率は1.526であった。
【0079】
(NHR-LDGCの作製)
低誘電ガラス組成(表1参照;具体的には、54.5質量%のSiO、14.6質量%のAl、19.4質量%のB、4.2質量%のMgO、4.1質量%のCaO、1.9質量%のTiO、及び、合計して0.3質量%のLiO+NaO+KO、及び、1.0質量%のFを含む組成)のヤーンを製織して作製された、IPCスペック1037相当のガラス繊維織物(日東紡績(株)製)に、NHR-EGCの作製と同様に、処理1~5を施した(このガラス繊維織物を、以下、場合により「NHR-LDGC」と称する)。NHR-LDGCには、体積平均粒子径100nmのシリカ微粒子が表面面積比0.030で付着し、シランカップリング剤が、シランカップリング剤が付着していないガラス繊維織物100質量部に対して0.1質量部付着していた。NHR-LDGCの厚さは25μmであり、表面ガラス糸被覆率は99%であり、屈折率は1.513であった。
【0080】
(LDGCの作製)
低誘電ガラス組成(表1参照;具体的には、54.5質量%のSiO、14.6質量%のAl、19.4質量%のB、4.2質量%のMgO、4.1質量%のCaO、1.9質量%のTiO、0.1質量%のFe、及び、合計して0.2質量%のLiO+NaO+KO、及び、1.0質量%のFを含む組成)のヤーンを製織して作製された、IPCスペック1037相当のガラス繊維織物(日東紡績(株)製)に、EGCの作製と同様に、処理2~5を施した(このガラス繊維織物を、以下、場合により「LDGC」と称する)。LDGCには、シランカップリング剤が付着していないガラス繊維織物100質量部に対して、シランカップリング剤が0.1質量部付着した。LDGCの厚さは25μmであり、表面ガラス糸被覆率は99%であり、屈折率は1.513であった。
【0081】
(ガラス繊維織物の屈折率の測定)
作製した各ガラス繊維織物の屈折率は、JIS K7142(プラスチック-屈折率の求め方)A法に準じて測定した。具体的には、以下のとおりである。
【0082】
まずガラス繊維織物(大きさが1m以上のもの)を電気炉にて1450℃で6hr加熱して、溶融した後、冷却速度50℃/hrにて除歪処理してガラスブロックを得た。なお、ガラス繊維織物表面に化合物が付着している場合(樹脂中にガラス繊維織物が埋め込まれている場合も含む)には、ガラス繊維織物を溶融する前に、ガラス繊維織物を625℃で30分間加熱し、樹脂を除去する。
【0083】
次いで、ガラスブロックを、ダイヤモンドカッターを用いた切削及び研磨機を用いた研磨により加工し、5mm×8mm×35mm用の測定用試料を得た。
【0084】
最後に、アッベ式屈折計(株式会社アタゴ製DR-M2)を用い、JIS K7142A法に規定された測定手順に従い、測定用試料の屈折率を測定した。なお、中間液には、1-ブロモナフタレンを用いた。
【0085】
なお、ガラス繊維織物のサイズが1m未満の場合には、ガラス繊維織物の屈折率は、JIS K7142(プラスチック-屈折率の求め方)B法に準じて測定する。具体的には、まずガラス繊維織物を粉砕しガラス繊維粉体を得る。なお、ガラス繊維織物表面に化合物が付着している場合(樹脂中にガラス繊維織物が埋め込まれている場合も含む)には、粉砕する前に、ガラス繊維織物を625℃で30分間加熱し、樹脂を除去する。
【0086】
次いで、ベンジアルアルコール(nD:1.539)と1-ブロモナフタレン(nD:1.655)を所定量混合し、混合した後の液体の屈折率をアッベ屈折計((株)アタゴ製の「DR-M2」)により測定し、屈折率が0.001刻みとなるように複数の浸液を調整する。スライドガラス上にガラス繊維紛体を置き、ガラス繊維紛体に対して浸液の一つを滴下し、その上にカバーガラスを載せ、分光器((株)島津製作所製の「SPG-120S」)によりD線(589nm)を光源として、顕微鏡((株)島津製作所製の「AE31」)によりガラス繊維粉体を観察する。
【0087】
次いで、ガラス繊維粉体に焦点を合わせた後、顕微鏡の鏡筒を移動させて、顕微鏡対物レンズとガラス繊維粉体との間を離して焦点を外した際に、ガラス繊維粉体周辺に見えるベッケ線の移動する方向で、ガラス繊維粉体と浸液のどちらの屈折率が高いかを判断し、浸液を適宜変更する。
【0088】
最後に、ベッケ線の移動がなくなった場合にはその浸液の屈折率を、又は、ガラス繊維粉体の屈折率が2つの浸液間に収まった場合には2つの浸液の平均値を、ガラス繊維織物の屈折率とする。
【0089】
【表1】
【0090】
(透明樹脂液の作製)
実施例、比較例において、以下の3種類の透明樹脂液を使用した。
【0091】
(T-SQ)
チオール基を有するシルセスキオキサンとして、荒川化学工業(株)製の商品名「HBSQ1063」(構成成分:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、[メチルトリエトキシシラン(成分a2)のモル数]/[3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(成分a1)とトリエトキシシラン(成分a2)との合計モル数]=0.3 、チオール当量206g/eq、カゴ型構造中心)10g(固形分:6.8g)を用いた。これに、硬化剤として多官能アリレート(荒川化学工業(株)製の商品名「HBSQ2054」)10g(固形分:5.2g)を添加し、混合して、透明樹脂液を得た(この透明樹脂液を、以下、場合により「T-SQ」と称する)。T-SQの光硬化後の屈折率は1.548であった。
【0092】
なお、硬化後の樹脂組成物の屈折率は、透明樹脂液を、後述の透明複合シートを作製する際と同一の硬化条件で硬化させて、樹脂シートを作製し、次いで、アッベ式屈折計(株式会社アタゴ製DR-M2)を用い、JIS K7142A法に規定された測定手順に従い、樹脂シートの屈折率を測定することで求めた。ここで、樹脂粉体の屈折率をJIS K7142A法で測定することに代えて、樹脂シートの表面を削って得た樹脂粉体を採取し、この樹脂粉体の屈折率をJIS K7142B法によりにより測定しても、屈折率測定値は実質的に同一である。なお、JIS K7142B法を用いる際に利用する、浸液の調整方法、各種測定機器は、ガラス繊維織物の測定方法で用いたものと同様である。また、樹脂シートの表面を削って樹脂粉体を採取することに代えて、透明複合シートの表面を削って樹脂粉体を採取することもできる。なお、透明複合シートから、20μm×30mm×30mm以上の大きさをもつ硬化後の樹脂組成物のみからなる層を分離困難である場合には、透明複合シートの表面を削って樹脂粉体を採取し、樹脂粉体の屈折率をJIS K7142B法により測定することで、硬化後の樹脂組成物の屈折率を求める。
【0093】
(E-SQ)
エポキシ基を含有するシルセスキオキサンとして、荒川化学工業(株)製の商品名「HBSQ5005」(構成成分:3-エポキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ランダム構造中心)10g(固形分:7.6g)を用いた。これに、硬化剤として光カチオン活性剤(荒川化学工業(株)製の商品名「HBSQ2055」)10g(固形分:0.4g)を添加し、混合して、透明樹脂液を得た(この透明樹脂液を、以下、場合により「E-SQ」と称する)。E-SQの光硬化後の屈折率は1.504であった。
【0094】
(PC)
ポリカーボネート樹脂(帝人(株)製の商品名「パンライト(登録商標) L1250Y」)10gをジクロロメタン(和光純薬工業(株)製)100gに溶解して、透明樹脂液を得た(この透明樹脂液を、以下、場合により「PC」と称する)。PCの熱硬化後の屈折率は1.585であった。
【0095】
(実施例1)
NHR-TGCにT-SQを滴下した。次いで、このガラス繊維織物を、オーブン内において90℃で8分間乾燥した。次いで、このガラス繊維織物をポリエチレンテレフタレートフィルムで挟み込み、シート状にした。次いで、このシートの上面からUVコンベア装置にて3Kwで1分間、UV光(250nm)を照射して、ガラス繊維織物中の透明樹脂を架橋により硬化させた。ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、透明複合シートを得た。得られた透明複合シートの質量は99.8g/mであり、透明複合シート中ガラス繊維織物(NHR-TGC)の含有量は24質量%であった。
【0096】
(実施例2)
NHR-TGCをTGCに変更したこと以外は実施例1と同様にして、透明複合シートを作製した。得られた透明複合シートの質量は94.3g/mであり、透明複合シート中ガラス繊維織物(TGC)の含有量は25質量%であった。
【0097】
(実施例3)
NHR-TGCをNHR-LDGCに変更したこと以外は実施例1と同様にして、透明複合シートを作製した。得られた透明複合シートの質量は59.0g/mであり、透明複合シート中ガラス繊維織物(NHR-LDGC)の含有量は36質量%であった。
【0098】
(実施例4)
NHR-TGCをLDGCに変更したこと以外は実施例1と同様にして、透明複合シートを作製した。得られた透明複合シートの質量は64.4g/mであり、透明複合シート中ガラス繊維織物(LDGC)の含有量は33質量%であった。
【0099】
(比較例1)
NHR-TGCをNHR-EGCに変更したこと以外は実施例1と同様にして、透明複合シートを作製した。得られた透明複合シートの質量は54.2g/mであり、透明複合シート中ガラス繊維織物(NHR-EGC)の含有量は37質量%であった。
【0100】
(比較例2)
NHR-TGCをEGCに変更したこと以外は実施例1と同様にして、透明複合シートを作製した。得られた透明複合シートの質量は59.1g/mであり、透明複合シート中ガラス繊維織物(EGC)の含有量は34質量%であった。
【0101】
(比較例3)
T-SQをE-SQに変更したこと以外は実施例1と同様にして、透明複合シートを作製した。得られた透明複合シートの質量は75.3g/mであり、透明複合シート中ガラス繊維織物(NHR-TGC)の含有量は32質量%であった。
【0102】
(比較例4)
EGCへPCを滴下し、80℃で10分加熱することで溶媒を飛ばした。次いで、このガラス繊維織物を鏡面板の上に置き、もう一枚鏡面板を重ね合わせ、プレス機(東邦マシナリー(株)製の「TD-50」)により、温度260℃、面圧30kg/cm、加圧時間60秒の条件でプレスし、冷却した。次いで、冷却後鏡面板をプレス機から取り出し、透明複合シートを作製した。
【0103】
実施例及び比較例で得られた透明複合シートについて、以下の物性を評価した。評価した物性を表2及び表3に示す。
【0104】
(全光線透過率)
JIS K7361に基づいて、全自動ヘーズメーター(東京電色社製の「NDH5000」)を用いて、得られた透明複合シートの全光線透過率を測定した。
【0105】
(表面粗さ)
表面粗さ測定機((株)ミツトヨ製の「J-47-2-0130」)を用いて、表面粗さとして中心線平均粗さRa(JIS B0601-1982)を測定した。
【0106】
(透過視認性)
図2は、実施例における透過視認性の判定方法を説明する図である。図2に示すように、レーザポインタ23に実施例及び比較例で得た透明複合シート21を接触させて、透明複合シート21から300mm離れた板22に映ったレーザ光Lの直径D1mmを測定した。板22に映ったレーザ光Lの直径D1(mm)とレーザポインタ23の出射口から出るレーザ光Lの直径D2(mm)との差Δd=(D1-D2)(mm)により、透過視認性を評価した。当実施例においては、レーザポインタ23の出射口から出るレーザ光Lの直径D2は5mmとした。Δdが0に近いほど透過視認性が高く、Δd≦8mmの場合、透過視認性が高いと判断した。
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
表2及び表3に示すとおり、実施例1~4の透明複合シートは、比較例1~4の透明複合シートに比べて優れた透過視認性を有していた。実施例1及び2の透明複合シートは、特に優れた透過視認性を示した。
【符号の説明】
【0110】
1…透明複合シート、10…ガラス繊維織物、12…縦糸、14…横糸、15…樹脂組成物の硬化物、21…透明複合シート、22…板、23…レーザポインタ、L…レーザ光。
図1
図2