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特許7092064カム装置、及び機械装置、並びに部品、軸受、車両、及び機械の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】カム装置、及び機械装置、並びに部品、軸受、車両、及び機械の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 53/02 20060101AFI20220621BHJP
   F01L 1/08 20060101ALI20220621BHJP
   F16H 25/12 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
F16H53/02 Z
F01L1/08 A
F16H25/12 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019031699
(22)【出願日】2019-02-25
(62)【分割の表示】P 2018558785の分割
【原出願日】2018-06-13
(65)【公開番号】P2019086153
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2017214232
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土橋 弘平
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-75959(JP,U)
【文献】特開2011-243500(JP,A)
【文献】特表2016-535222(JP,A)
【文献】特開平10-246309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カム軸周りの正方向及び逆方向の回転運動をカムフォロアの直動運動に変換するカムであり、前記カムのカムプロファイルは、周方向一端において、前記カム軸が前記カムフォロアによって前記逆方向に回転不能となる回転端を有し、該回転端から周方向他端まで前記カムフォロアが当接するカム面を備え、前記カム面の周方向他端は、前記カム軸からの距離が、前記カム軸と前記回転端との間の距離よりも大きい、カムと、
該カムのカム軸周りの回転運動によって直動運動する前記カムフォロアと、
前記カム軸を正回転、逆回転、回転停止、及び回転速度制御して回転駆動する回転駆動装置と、を備え、
前記カム面は、該カムの表面に形成された前記カム軸寄りの位置から外面まで連続する渦巻き状の溝の側面によって形成され、
前記カム面の周方向他端は、前記カム軸が前記正方向の回転を許容する開放端とされ、
前記カム面の周方向一端から周方向他端までの割付角は、360°以上であ
前記カム面は、前記周方向一端と前記周方向他端との間に、前記カム軸の回転により前記カムフォロアのリフト量が増加または減少するリフト領域と、前記カム軸が回転しても前記カムフォロアのリフト量が一定のドエル領域と、を有し、
前記回転駆動装置は、前記カム軸の回転速度を、前記カムフォロアが前記ドエル領域に位置するときに、前記カムフォロアが前記リフト領域に位置するときよりも減速するように回転駆動する、カム装置。
【請求項2】
前記ドエル領域は、前記リフト領域の周方向両側でそれぞれ所定の割付角に亘って設けられている、請求項に記載のカム装置。
【請求項3】
前記ドエル領域は、前記リフト領域の途中に形成される請求項に記載のカム装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載のカム装置を備えた機械装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のカム装置を用いて、部品を製造する、部品の製造方法。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のカム装置を用いて、軸受を製造する、軸受の製造方法。
【請求項7】
請求項に記載の部品の製造方法を用いて、車両を製造する、車両の製造方法。
【請求項8】
請求項に記載の部品の製造方法を用いて、機械を製造する、機械の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カム装置、及び機械装置、並びに部品、軸受、車両、及び機械の製造方法に関する。また、本発明は、より詳細には、カムのリフト領域での圧力角を大幅に緩和して円滑な作動を図ると共に、小型化されたカム装置、及び機械装置、並びに部品、軸受、車両、及び機械の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板カム、円筒カムなど回転運動を直動運動に変換する従来のカム機構では、板カムや円筒カムの円周面、或いは円筒の端面に、求められる動作に応じてリフト領域及びドエル領域を形成し、該カムの一方向への回転により、カムフォロアをリフト領域、及びドエル領域の形状に応じて直動動作させる。即ち、板カムや円筒カムのカム面は、カムフォロアの行き工程、戻り工程、及び停止工程のリフト領域、及びドエル領域の組み合わせで構成された連続した閉軌道となる。
【0003】
この板カム、円筒カムにおいてカムフォロアのリフトアップ速度、又はリフトダウン速度を上げたい場合には、カムの回転速度を上げることで達成する。しかし、他のカムとの兼ね合いで回転速度の変更が許されない場合には、カムの回転速度は変更せず、リフト領域の割付角を減らすことになる。割付角が小さくなると圧力角が大きくなるため、カム全体を大きくする必要が生じる。また、同一の割付角でリフト量を、より大きくする場合も同様であり、物理的な圧力角の制約から、カム装置が大型となると共に駆動装置には大きな動力が要求される。
【0004】
特許文献1の複数カム装置では、主カムと、主カムより速く回転する補助カムとを重ね合わせて配置し、主カムの急変化の工程を補助カムで行うことでカムの圧力角を小さくして円滑な運動を図っている。特許文献2のプロフィール可変型カム装置では、第1のカムと第2のカムとを、カムプロファイル調整機構により相対的に回転させて、第1及び第2のカムの作動角を変更してカムプロファイルを調整可能としている。また、特許文献3のカム装置では、外周面に凹凸カム域を有する少なくとも2枚の円板状カムを重ね、外周面の一部に凹面を形成して、カムプロファイルを可変としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開昭50-69470号公報
【文献】日本国実開昭60-141406号公報
【文献】日本国実開昭53-14066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、主カム及び補助カムを回転させる駆動機構が複雑となり、カム機構全体を小型化、簡素化し難い問題があった。特許文献2及び3では、カムプロファイルを可変とすることを目的としているが、いずれも2枚のカムを用いており、カム装置を小型化することが困難であった。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、カムのリフト領域での圧力角を大幅に緩和して円滑な作動を図ると共に小型化されたカム装置、及び機械装置、並びに部品、軸受、車両、及び機械の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) カム軸周りの正方向及び逆方向の回転運動をカムフォロアの直動運動に変換するカムであり、前記カムのカムプロファイルは、周方向一端において、前記カム軸が前記カムフォロアによって前記逆方向に回転不能となる回転端を有し、該回転端から周方向他端まで前記カムフォロアが当接するカム面を備え、前記カム面の周方向他端は、前記カム軸からの距離が、前記カム軸と前記回転端との間の距離よりも大きい、カムと、
該カムのカム軸周りの回転運動によって直動運動する前記カムフォロアと、
前記カム軸を正回転、逆回転、回転停止、及び回転速度制御して回転駆動する回転駆動装置と、を備え、
前記カム面は、該カムの表面に形成された前記カム軸寄りの位置から外面まで連続する渦巻き状の溝の側面によって形成され、
前記カム面の周方向他端は、前記カム軸が前記正方向の回転を許容する開放端とされ、
前記カム面の周方向一端から周方向他端までの割付角は、360°以上である、カム装置。
(2) 前記カム面は、前記カム軸が前記正方向に回転するとき、前記カムフォロアのリフト量を増加させるリフト領域と、前記カム軸の前記正方向及び前記逆方向の回転に関わらず、前記カムフォロアのリフト量が一定のドエル領域と、を備える、(1)に記載のカム装置。
(3) 前記ドエル領域は、前記リフト領域の周方向両側でそれぞれ所定の割付角に亘って設けられている、(2)に記載のカム装置。
(4) 前記ドエル領域は、前記リフト領域の途中に形成される、(2)に記載のカム装置。
(5) (1)~(4)のいずれかに記載のカム装置を備えた機械装置。
(6) (1)~(4)のいずれかに記載のカム装置を備えて、部品を製造する、部品の製造方法。
(7) (1)~(4)のいずれかに記載のカム装置を備えて、軸受を製造する、軸受の製造方法。
(8) (6)に記載の部品の製造方法を用いて、車両を製造する、車両の製造方法。
(9) (6)に記載の部品の製造方法を用いて、機械を製造する、機械の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のカム装置によれば、カムをカム軸周りで正回転、逆回転、回転停止、及び回転速度制御して回転することで、従来のカムと同様のカム曲線を有し、且つ、カムは、同様の作動を行う従来のカムと比較して、リフト領域での圧力角が小さく、且つ大幅に小型化できるので、従来のカム装置と比較して大幅に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るカム装置の斜視図である。
図2図1に示すカム装置の側面図である。
図3】(a)はカムが正回転する状態を示す側面図、(b)はカムが逆回転する状態を示す側面図である。
図4図1に示すカム装置のカム線図である。
図5図1に示すカム装置と同様のカム線図を実現する従来の板カムの側面図である。
図6】第1実施形態のカムの第1変形例を示す側面図である。
図7】第1実施形態のカムの第2変形例を示す側面図である。
図8】第1実施形態のカムの第3変形例を示す側面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るカム装置の側面図である。
図10図9に示すカム装置のカム線図である。
図11図9に示すカム装置と同様のカム線図を実現する従来の板カムの側面図である。
図12】本発明の第3実施形態に係るカム装置の側面図である。
図13】本発明の第4実施形態に係るカム装置の側面図である。
図14】本発明のカム装置を用いて生産される部品の一例である玉軸受の部分破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態に係るカム及びカム装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態のカム装置10は、図1及び図2に示すように、カムプロファイルを有するカム面21が外面上に形成されたカム20と、カム20のカム軸22を正方向及び逆方向に回転駆動可能な回転駆動装置Mと、カム面21上を転動してカムプロファイルの形状に応じて直動運動するカムフォロア30と、を備える。
【0013】
本実施形態では、カムプロファイルを形成するカム面21は、周方向の一部に、カムフォロア30が接触しない不連続部27を有して形成される。具体的に、図2に示すように、カムプロファイルは、周方向一端において、カム軸22がカムフォロア30によって逆方向(時計方向)に回転不能となる回転端28を有し、また、カム面21の周方向他端は、カム軸22からの距離(本実施形態では、後述する第2ドエル領域26の半径R2)が、カム軸22と回転端28との間の距離(本実施形態では、後述する第1ドエル領域24との境界における回転端28の半径R1)よりも大きくなるように設計される。さらに、カム面21の周方向他端は、カムフォロア30が該周方向他端に当接している状態で、カム軸22が正方向(反時計方向)の回転を許容する開放端29とされる。
なお、本実施形態では、回転端28は、カムフォロア30の外周面に沿った円弧領域を示している。
また、以後の説明において、カム軸22が正方向(反時計回り)に回転する場合を正回転、逆方向(時計回り)に回転する場合を逆回転とする。
【0014】
さらに、カム面21は、図2に示すように、回転端28から時計回りに、第1ドエル領域24、リフト領域25、及び第2ドエル領域26を備える。
第1ドエル領域24は、カム軸22の中心Oからの半径(距離)R1が一定に設計される。リフト領域25は、第1ドエル領域24に連続して形成され、カム軸22の中心Oからの半径(距離)Rが次第に大きくなるように設計される。第2ドエル領域26は、リフト領域25に連続して形成され、カム軸22の中心Oからの半径(距離)R2が、第1ドエル領域24の半径R1より大きく、且つ一定に設計される。また、不連続部27は、周方向一端の回転端28と、周方向他端の開放端29との間に形成される。
【0015】
リフト領域25は、第1ドエル領域24の一端24aと第2ドエル領域26の他端26aとを連続する。リフト領域25における、カム軸22の中心Oからの半径Rは、第1ドエル領域24から第2ドエル領域26に向かって、半径R1から半径R2まで次第に大きくなり、第1ドエル領域24と第2ドエル領域26とを滑らかに接続している。このため、リフト領域25では、カム軸22が正方向に回転するとき、カムフォロア30のリフト量が増大し、また、カム軸22が逆方向に回転するとき、カムフォロア30のリフト量が減少する。また、ドエル領域24、26は、カム軸22の正方向及び逆方向の回転に関わらず、カムフォロア30のリフト量が一定となる。
【0016】
リフト領域25の割付角θ1は、周方向両側に形成される第1ドエル領域24の割付角θ2と第2ドエル領域26の割付角θ3の合計角度(θ2+θ3)より大幅に大きく設定されている。リフト領域25の割付角θ1を大きく設定したのは、リフト領域25での圧力角をできるだけ小さくしてカムフォロア30を滑らかに作動させるためである。
【0017】
このため、リフト領域25の割付角θ1は、カム20の全周(360°)の大部分を占めることが望ましい。即ち、周方向一端及び周方向他端からそれぞれ設けられる、第1及び第2ドエル領域24,26の割付角θ2、θ3は、カム20の停止、始動領域として必要なわずかな角度とし、残りの大部分の角度をリフト領域25の割付角θ1として割り付けるのがよい。
【0018】
さらに、本実施形態では、回転端28における圧力角αは、90°に設定されており、不連続部27は、カムフォロア30が直線運動する方向と平行に形成されている。
なお、回転端28における圧力角αとは、回転端28でのカムフォロア30が不連続面に接する圧力角であり、具体的には、カムフォロア30が接するカム面の法線とカムフォロア30の進む方向とのなす角度を表す。
【0019】
カムフォロア30は、一端がカムフォロア30に回動可能に連結されるガイドロッド32がガイド31に案内されることでガイド31の長手方向に直線運動する。
【0020】
回転駆動装置Mは、正回転、逆回転、回転停止、及び回転速度制御可能なモータであり、例えば、サーボモータやパルスモータなどで構成される。回転駆動装置Mは、カム軸22に接続されてカム20を正回転、逆回転、回転停止、及び回転速度制御する。
【0021】
次に、本実施形態のカム装置10の作用について、図4に示すカム曲線を参照して説明する。
【0022】
図2に示すように、カムフォロア30がカム面21の回転端28に接触している状態で、回転駆動装置Mを始動し、カムフォロア30がドエル領域24の一端24aに移動するまでの間に、カム20を所定の一定速度で正回転させる。この間、カム曲線の初期休止工程S1が形成される。
【0023】
そして、図3(a)に示すように、カム20がさらに所定の一定速度で正回転して、カムフォロア30がリフト領域25に達すると、カムフォロア30は、リフト領域25のカムプロファイルに沿ってカム20の中心Oから次第に離間(リフトアップ)してカム曲線のリフトアップ工程S2が形成される。
そして、図3(b)に示すように、カムフォロア30が第2ドエル領域26に達した後、回転駆動装置Mを減速させ、カムフォロア30が開放端29に達するまでにカム20の回転が停止する。これにより、カムフォロア30が直線運動を停止して中間休止工程S3が形成される。
【0024】
さらに、回転駆動装置Mを始動し、カム20を一定速度(正回転時の回転速度と異なる速度であってもよい)で逆回転すると、カムフォロア30は、リフト領域25のカムプロファイルに沿ってカム20の中心Oに次第に接近(リフトダウン)し、カム曲線のリフトダウン工程S4が形成される。
その際、リフトアップ工程S2とリフトダウン工程S4の移動速度(勾配)を異ならせる場合には、正回転の回転速度と異なる回転速度で逆回転させる。そして、カムフォロア30が第1ドエル領域24に達すると、回転駆動装置Mを減速させ、カム曲線の終期休止工程S5が形成される。
【0025】
なお、図4に示すリフトアップ工程S2及びリフトダウン工程S4は、カム20の回転の加速、及び減速が、割付角θ1のカム曲線形状(MS曲線形状)で、隣接する第1ドエル領域24、及び第2ドエル領域26と滑らかに繋がっており、リフト領域25では安定した一定回転速度で回転する場合を示している。
なお、カム20の回転の加速領域、及び減速領域の少なくとも一部が、リフト領域25の端部(リフト領域25の第1ドエル領域24及び第2ドエル領域26との接続部)にかかるように回転駆動装置Mを制御することで、通常のカム曲線形状よりさらに滑らかに加減速するようにしてもよい。すなわち、カム曲線形状に加え、リフト領域25での回転駆動装置Mの変速によってリフトの特性を与えてもよい。
【0026】
本実施形態のカム装置10は、上記したように、カム20が往復回転することで、往復回転をカムフォロア30の直動運動に変換する。その際、カム20は、カムフォロア30が不連続部27を越えて回転することはない。なお、ここで言う直動運動とは、本実施形態のようなカムフォロア30の直線運動に限定されず、カムフォロア30に接続されたリンクの他端を中心とするカムフォロア30の揺動運動も含まれる。
【0027】
上記したように、本実施形態のカム装置10は、リフトアップ工程S2及びリフトダウン工程S4が、同一のリフト領域25における正回転及び逆回転によって形成されるため、リフト領域25の割付角θ1を従来のカム装置と比較して大きくすることができる。これにより、リフト領域25での圧力角を小さくして滑らかな作動を可能とすると共に、カム装置10を小型化することができる。
【0028】
例えば、カム20のリフト量(R2-R1)を12mm、リフト領域25の割付角θ1を315°に設定すれば、リフト領域25での圧力角は略6°となり、カムフォロア30の円滑な作動が可能となる。さらに、カム軸22の直径、及びカムフォロア30の径を、それぞれφ28mm、φ16mmとしたときのカム20の最大半径R2は28mmとすることができ、後述する図5に示す従来の板カム100(最大半径r=87.5mm)と比較して大幅に小型化することができる。また、カム軸22の径を細くすることができれば、さらなる小型化も可能となる。
【0029】
本発明に係るカム装置10の作用は、従来のカム装置と比較することで、より一層理解が容易になる。図5は、第1実施形態のカム装置10と同様のカム曲線(図4参照)を有する従来の板カム100の側面図である。
【0030】
図5に示すように、従来の板カム100は、第1リフト領域101と第2リフト領域102を有し、第1及び第2リフト領域101,102の間には、第1ドエル領域103、及び第2ドエル領域104が設けられている。第1及び第2リフト領域101,102のリフト量はいずれも12mmであり、第1リフト領域101の第1割付角θaは25°、第2リフト領域102の第2割付角θbは30°である。
【0031】
リフト領域での圧力角を約30°とした場合、割付角θaが25°の第1リフト領域101で12mmのリフト量を得るためには、板カム100の最大半径rは87.5mmとなる。カム軸105の直径、カムフォロア30の直径は、それぞれ第1実施形態のカム装置10と同じφ28mm、φ16mmとした。
【0032】
この板カム100を一定速度で回転することで、第1ドエル領域103、第1リフト領域101、第2ドエル領域104、及び第2リフト領域102により、それぞれ図4に示す初期休止工程S1、リフトアップ工程S2、中間休止工程S3、リフトダウン工程S4、及び終期休止工程S5を有するリフト量12mmのカム曲線が得られる。
【0033】
即ち、板カム100の第1ドエル領域103が本実施形態のカム20の第1ドエル領域24に対応し、第1リフト領域101が正回転時のリフト領域25に対応し、第2ドエル領域104が第2ドエル領域26に対応し、第2リフト領域102が逆回転時のリフト領域25に対応する。
【0034】
なお、本実施形態のカム装置10において、従来の板カム100のリフトアップ工程S2の変位速度(勾配)と同じ変位速度を得るには、正回転時におけるカム20のリフト領域25(割付角θ1=315°)の通過時間を、従来の板カム100の第1割付角θa(25°)の通過時間と同じ時間に設定することで、可能となる。また、カム装置10において、従来の板カム100のリフトダウン工程S4の変位速度(勾配)と同じ変位速度を得るには、逆回転時におけるカム20のリフト領域25(割付角θ1=315°)の通過時間を、従来の板カム100の第2割付角θb(30°)の通過時間と同じ時間に設定することで、可能となる。
【0035】
このように、本実施形態のカム装置10は、リフト領域25に対する割付角θ1を極めて大きくすることができ、カム面が連続した閉軌道である従来の板カム100の機構と比較してカム20を大幅に小型化することができる。即ち、本実施形態のカム装置10は、カム装置10を小型化する機能と、リフト領域25での圧力角を小さくして作動を滑らかにする機能を併せ持つ。さらに、カム20の回転速度を変更することで、カムプロファイルを可変とする。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のカム20によれば、カムプロファイルは、周方向一端において、カム軸22がカムフォロア30によって逆方向に回転不能となる回転端28を有し、該回転端28から周方向他端(開放端29)までカムフォロア30が当接するカム面21を備え、カム面21の周方向他端は、カム軸22からの距離が、カム軸22と回転端28との間の距離よりも大きい。これにより、カム20は、同様の作動を行う従来の板カム100と比較して、大幅に小型化できる。
【0037】
また、カム面21は、カム20の外面によって形成され、カム面21の周方向他端は、カム軸22が正方向の回転を許容する開放端29とされ、回転端28と開放端29との間のカム面21は、カムフォロア30と非接触な不連続部27を有する。これにより、カム20は、リフト領域25の割付角θ1を大きく設定でき、リフト領域25での圧力角を小さくすることができる。
【0038】
また、カム面21は、カム軸22が正方向に回転するとき、カムフォロア30のリフト量を増加させるリフト領域25と、カム軸22の正方向及び逆方向の回転に関わらず、カムフォロア30のリフト量が一定の第1ドエル領域24及び第2ドエル領域26と、を備える。これにより、カム20は、カム20を正回転及び逆回転することで、リフトアップ、リフトダウン、及びリフト休止を有するカム曲線を形成することができる。
【0039】
また、第1ドエル領域24及び第2ドエル領域26は、リフト領域25の周方向両側でそれぞれ所定の割付角θ2,θ3に亘って設けられている。これにより、カム20は、第1ドエル領域24及び第2ドエル領域26によって、回転駆動装置Mの始動時、又は停止時のばらつきを吸収して、初期休止工程S1、中間休止工程S3、及び終期休止工程S5を形成できる。
【0040】
また、本実施形態のカム装置10によれば、上記したカム20と、該カム20のカム軸22周りの回転運動によって直動運動するカムフォロア30と、カム軸22を正回転、逆回転、回転停止、及び回転速度制御して回転駆動する回転駆動装置Mと、を備える。これにより、カム装置10は、カム20をカム軸22周りで正回転、逆回転、回転停止、及び回転速度制御して回転することで、従来の板カム100と同様のカム曲線を有し、且つ従来のカム装置と比較して大幅に小型化することができる。
【0041】
また、カム面21は、カム軸22が正方向に回転するとき、カムフォロア30のリフト量を増加させるリフト領域25と、カム軸22の正方向及び逆方向の回転に関わらず、カムフォロア30のリフト量が一定の第1ドエル領域24及び第2ドエル領域26と、を備える。そして、カムフォロア30の休止工程S1,S3,S5は、第1ドエル領域24及び第2ドエル領域26、又はカム軸22の回転停止により実現し、カムフォロア30のリフトアップ工程S2、及びリフトダウン工程S4は、カム軸22の正回転、及び逆回転により実現し、カムフォロア30のリフトアップ工程S2、及びリフトダウン工程S4におけるカムフォロア30の速度変化の全部又は一部をカム軸22の回転速度制御により実現する。これにより、カム装置10は、従来のカム装置と比較して大幅に小型化することができる。
【0042】
なお、上記実施形態では、回転端28における圧力角αが90°に設定されているが、回転端28における圧力角αは、図6及び図7に示すように、60°以上に設定されればよい。
【0043】
即ち、図6に示すように、回転端28における圧力角αが60°に設定されてもよく、或いは、図7に示すように、回転端28における圧力角αが鈍角(α>90°)に設定されてもよい。ここで、回転端28の圧力角αを60°以上にすることで、実際の設計において十分な小型化が図られる。つまり、回転端28の圧力角αを大きくすることで、回転端28と開放端29との間の割付角が小さくなり、これにより、リフト領域25の割付角θ1を大きくすることができる。不連続部27は、例えば、カッタ切込み部で形成することができる。
なお、回転端28における圧力角αの上限は、図8に示すように、カムプロファイルの形状上、180°に設定される。
【0044】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のカム装置について図9図11を参照して説明する。図9は本発明の第2実施形態であるカム装置の側面図である。本実施形態のカム装置10Aは、カムプロファイルを有するカム面21が外面に形成されたカム50と、カム50のカム軸22を回転駆動する回転駆動装置M(図1参照)と、カム面21の形状に沿って直動移動するカムフォロア30と、を備える。本実施形態のカム装置10Aは、カム50が、3つのドエル領域51、53、55と、各ドエル領域の間に形成された2つのリフト領域52、54を備える点で第1実施形態のカム装置10と異なる。
【0045】
具体的には、本実施形態のカム装置10Aでも、カムプロファイルを形成するカム面21は、周方向の一部に、カムフォロア30が接触しない不連続部56を有して形成される。具体的に、カムプロファイルは、周方向一端において、カム軸22が逆方向(時計方向)に回転不能となる回転端57を有し、また、カム面21の周方向他端は、カム軸22からの距離(本実施形態では、後述する第3ドエル領域55の半径R3)が、カム軸22と回転端57との間の距離(本実施形態では、後述する第1ドエル領域51との境界における回転端57の半径R1)よりも大きくなるように設計される。さらに、カム面21の周方向他端は、カムフォロア30が該周方向他端に当接している状態で、カム軸22が正方向(反時計方向)の回転を許容する開放端58とされる。
【0046】
さらに、カム面21は、図9に示すように、回転端57から時計回りに、第1ドエル領域51、第1リフト領域52、第2ドエル領域53、第2リフト領域54、及び第3ドエル領域55を備える。
第1ドエル領域51は、カム軸22の中心Oからの半径R1が一定に設計される。第1リフト領域52は、第1ドエル領域51に連続して形成され、カム軸22の中心Oからの半径Rが次第に大きくなるように設計される。第2ドエル領域53は、第1リフト領域52に連続して形成され、カム軸22の中心Oからの半径R2が一定に設計される。第2リフト領域54は、第2ドエル領域53に連続して形成され、カム軸22の中心Oからの半径Rが次第に大きくなるように設計される。第3ドエル領域55は、第2リフト領域54に連続して形成され、カム軸22の中心Oからの半径R3が一定に設計される。第2ドエル領域53の半径R2は、第1ドエル領域51の半径R1より大きく、第3ドエル領域55の半径R3は、第2ドエル領域53の半径R2より大きい。また、不連続部56は、周方向一端の回転端57と、周方向他端の開放端58との間に形成される。
【0047】
そして、第1ドエル領域51は割付角θ4に割り付けられ、第1リフト領域52は割付角θ5に割り付けられ、第2ドエル領域53は割付角θ6に割り付けられ、第2リフト領域54は割付角θ7に割り付けられ、第3ドエル領域55は割付角θ8に割り付けられている。
【0048】
第1~第3ドエル領域51、53、55の各割付角θ4、θ6、θ8は、回転駆動装置Mが始動して所定の速度に達する、あるいは所定の速度から減速して停止するのに必要なだけの割付角があればよい。第1リフト領域52の割付角θ5、及び第2リフト領域54の割付角θ7には、略360°の回転角度の内の大半の角度が割り付けられている。
【0049】
図9に示す不連続部56は、カムフォロア30との接触面が、カムフォロア30の移動方向と平行に形成されて回転端57での圧力角αが90°であり、カム軸22の逆回転によるカムフォロア30の進行は不能である。
【0050】
図9に示すように、カムフォロア30がカム面21の回転端57に接触している状態から、回転駆動装置Mを始動し、カムフォロア30が第1ドエル領域51を移動するまでの間に、カム50を正回転で所定の一定速度となるように増速させる。そして、カム50を所定の速度で第3ドエル領域55まで正回転させる。さらに、第3ドエル領域55において、回転駆動装置Mを減速させ、カム50の正回転を停止する。これにより、初期休止工程S11、第1リフトアップ工程S12、第1中間休止工程S13、第2リフトアップ工程S14、及び第2中間休止工程S15を有する図10に示すカム曲線が形成される。
【0051】
また、カムフォロア30が第3ドエル領域55に位置する間に、回転駆動装置Mを始動し、カム50を所定の一定速度になるまで逆回転で増速させる。そして、カム50を第1ドエル領域51まで逆回転させる。さらに、第1ドエル領域51において、回転駆動装置Mを減速させ、カム50の逆回転を停止する。これにより、第1リフトダウン工程S16、第3中間休止工程S17、第2リフトダウン工程S18、及び終期休止工程S19が形成される。
【0052】
本実施形態のカム装置10Aは、同じカムプロファイル上を正回転及び逆回転してカム曲線を形成するので、第1リフトアップ工程S12と第1リフトダウン工程S18、及び第2リフトアップ工程S14と第2リフトダウン工程S16の各リフト量は同じになる。
【0053】
図10に示すリフトダウン工程S16,S18は、リフトアップ工程S12,S14より勾配が急になっている。これは、カム50の逆回転速度を、正回転速度より速く回転させることで達成可能である。
また、第3中間休止工程S17は、第1中間休止工程S13よりも休止期間が長くなっている。これは、第3中間休止工程S17において、カム50の逆回転速度を正回転速度よりも減速又は一時的に停止させることで達成される。
【0054】
参考に、図10に示すカム曲線が得られる従来の板カム110は、図11において時計回りに、第1ドエル領域111、第1リフトアップ領域112、第2ドエル領域113、第2リフトアップ領域114、第3ドエル領域115、第1リフトダウン領域116、第4ドエル領域117、及び第2リフトダウン領域118が順に形成されて閉曲線となる。
【0055】
そして、板カム110を一定速度で正回転させることで、第1ドエル領域111はカム曲線の初期休止工程S11を、第1リフトアップ領域112はカム曲線の第1リフトアップ工程S12を、第2ドエル領域113はカム曲線の第1中間休止工程S13を、第2リフトアップ領域114はカム曲線の第2リフトアップ工程S14を、第3ドエル領域115はカム曲線の第2中間休止工程S15を形成する。また、第1リフトダウン領域116はカム曲線の第1リフトダウン工程S16を、第4ドエル領域117はカム曲線の第3中間休止工程S17を、第2リフトダウン領域118はカム曲線の第2リフトダウン工程S18を形成する。
【0056】
なお、第2実施形態のカム装置10Aにおいても、リフトアップ及びリフトダウンの始点、終点においてリフト量をさらになめらかに増加又は減速させるようにするため、第1実施形態のカム装置10で説明したように、カム50の回転の加速、及び減速の少なくとも一部が、リフト領域52,54の端部にかかるように回転駆動装置Mを制御してもよい。
【0057】
また、第1リフトアップ工程S12、及び第1リフトダウン工程S18を与える第1リフト領域52と第2リフト領域54とは、カム曲線を変えてもよく、例えば、図10に示すように、曲線の中間に等速区間を持つ変形等速度曲線(Modified Constant Velocity,MCV曲線)や変形正弦曲線(MS曲線)、サイクロイド曲線などを用いることもできる。
【0058】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態のカム装置について図12を参照して説明する。図12は第3実施形態のカム装置の側面図である。第3実施形態のカム装置10Bは、カムプロファイルを有するカム面21が外面に形成されたカム70と、カム70のカム軸22を回転駆動する回転駆動装置M(図1参照)と、カム面21の形状に沿って直動移動するカムフォロア30と、を備える。
【0059】
本実施形態のカム装置10Bは、カム70が、リフト領域71、不連続部27及び回転端28とから形成され、ドエル領域を有しない点で第1及び第2実施形態のカム装置10,10Aと異なる。本実施形態のカム70は、回転端28から開放端29まで、すべての割付角θ1がリフト領域71に割り付けられている。これにより、リフト領域71での圧力角が、さらに小さくなり、カム70が小型化される。
【0060】
本実施形態のカム装置10Bでは、リフト量のみがカムプロファイルで与えられ、カム曲線(図示せず)の休止工程、リフトアップ工程、及びリフトダウン工程は、回転駆動装置Mで制御されるカム70の回転により与えられる。即ち、リフト領域71上においてカム70を停止させることで休止工程が形成され、カム70の正回転によりリフトアップ工程が形成され、カム70の逆回転によりリフトダウン工程が形成される。
【0061】
休止工程の位置(位相)及び回数は、リフト領域71上におけるカム70の停止位置及び停止回数を設定することで、任意の位置に、任意の回数の休止工程を設定可能である。また、休止工程の休止長さは、カム70の停止時間を設定することで任意の休止長さが設定される。これにより、リフトアップ工程とリフトダウン工程とでパターン(位置及び長さ)が異なる休止工程も容易に設定が可能である。
【0062】
また、リフトアップ工程、及びリフトダウン工程の変位速度(勾配)は、回転駆動装置Mによりカム軸22の回転速度を制御することで変更可能であり、カム70の回転速度を速くすることで変位速度が速くなり(急勾配)、カム70の回転速度を遅くすることで変位速度が遅くなる(緩勾配)。
【0063】
リフトアップ工程、及びリフトダウン工程のリフト量は、回転駆動装置Mによるカム70の回転角度によって任意に変更することができる。即ち、複数のリフトアップ工程及び複数のリフトダウン工程を有するカム曲線の場合、各リフトアップ工程でのリフト量と、各リフトダウン工程でのリフト量とが異なるカム曲線も設定することができる。ただし、リフトアップ工程での合計リフト量と、リフトダウン工程での合計リフト量とは、同じリフト量とする必要がある。また、リフト量の上限は、リフト領域71の最大リフト量によって制限される。
したがって、リフト領域71での任意の位置での速度制御により、カムフォロア30に任意の動作特性を与えることができ、また、任意の位置でドエルを再現するようにしてもよい。
【0064】
その他の構成及び効果は、第1実施形態のカム装置10と同様である。
【0065】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態のカム装置について図13を参照して説明する。図13は本発明の第4実施形態であるカム装置の側面図である。第4実施形態のカム装置10Cは、カム20の代わりに、回転カムとしての溝カム80を備える点で、第1実施形態のカム装置10と異なる。
【0066】
本実施形態の溝カム80は、図13に示すように、カム軸22寄りの周方向一端、即ち、カム軸22の中心部Oから所定の距離離れた位置に回転端82を有し、回転端82からカム20の外面まで連続する渦巻き状のカム溝81を備える。渦巻き状のカム溝81の内側面がカムフォロア30と接触するカム面21として作用する。また、カム面21の周方向他端は、カム20の外面に形成され、このカム面21の周方向他端は、カム軸22からの距離(本実施形態では、後述する第2ドエル領域86の半径R2)が、カム軸22と回転端82との間の距離(本実施形態では、後述する第1ドエル領域84との境界における回転端28の半径R1)よりも大きい。回転端82は、カム軸22がカムフォロア30によって逆方向に回転不能となり、また、カム面21の周方向他端は、カム軸22が正方向の回転を許容する開放端とされる。
【0067】
さらに、カム面21は、図13に示すように、回転端82から時計回りに、第1ドエル領域84、リフト領域85、及び第2ドエル領域86を備える。
第1ドエル領域84は、カム軸22の中心Oからの半径(距離)R1が一定に設計される。リフト領域85は、第1ドエル領域24に連続して形成され、カム軸22の中心Oからの半径(距離)Rが次第に大きくなるように設計される。第2ドエル領域86は、リフト領域85に連続して形成され、カム軸22の中心Oからの半径(距離)R2が、第1ドエル領域84の半径R1より大きく、且つ一定に設計される。
【0068】
したがって、本実施形態では、リフト領域85は、その割付角は360°以上となっており、圧力角がさらに低減されると共に、リフト量が増大する。
【0069】
そして、回転駆動装置Mによって溝カム80が正回転することでカムフォロア30がカム溝81の形状に従って直動運動してリフトアップ工程が形成され、逆回転することでリフトダウン工程が形成される。また、第1ドエル領域84及び第2ドエル領域86によって、回転駆動装置Mの始動時、又は停止時のばらつきを吸収して、リフト休止工程が形成される。さらに、回転駆動装置Mによりカム軸22(溝カム80)の回転を制御すれば、休止工程の位置(位相)、回数、休止長さ、及びリフトアップ工程及びリフトダウン工程の変位速度(勾配)を任意に設定できるのは、第3実施形態のカム装置10Bと同様である。
【0070】
以上説明したように、本実施形態であるカム装置10Cによれば、カム面21は、カム80の表面に形成された、カム軸22寄りの位置から外面まで連続する渦巻き状のカム溝81の内側面によって形成され、カム溝81の周方向他端は、カム軸22が正方向の回転を許容する開放端とされている。これにより、カム装置10Cは、割付角を360°以上に設定することができ、圧力角がさらに低減してカムフォロア30を滑らかに作動させることができる。
【0071】
図14は、本発明のカム装置10,10A,10B,10Cが適用された機械装置により製造される部品の一例である玉軸受90の部分破断図である。玉軸受90は、内周面に外輪軌道91aが形成された外輪91と、外周面に内輪軌道92aが形成された内輪92と、外輪軌道91aと内輪軌道92aの間に転動自在に配設された複数の玉93と、複数の玉93を転動自在に保持する保持器94とを備える。
【0072】
本発明のカム装置10,10A,10B,10Cが適用された機械装置は、例えば、玉軸受90の玉93の組付け工程に使用される。また、本発明のカム装置10,10A,10B,10Cが適用された機械装置は、玉軸受90の組付け以外にも、電動パワーステアリング装置などの車両の部品の製造や、各種機械(動力を問わない)の部品の製造、電気部品の製造にも適用可能である。
【0073】
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0074】
例えば、上記実施形態では、従動節としてカムフォロア30が直動する構成について説明したが、本発明のカムは、従動節が揺動する機構に適用されてもよい。
【0075】
また、複数のカム20,50,70,80を備えるカム装置10,10A,10B,10Cでは、それぞれのカム20,50,70,80に対応して複数の回転駆動装置Mを配設して、個別に異なる回転速度で回転させてもよい。この場合、それぞれの回転駆動装置Mの出力は小さくてよいので、回転駆動装置Mの小型化が可能となる。また、カム装置10,10A,10B,10Cを作動部の近傍に配置することができ、カム装置10,10A,10B,10Cを備える機械装置の小型化に寄与する。
【0076】
本出願は、2017年11月6日出願の日本特許出願2017-214232に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0077】
10,10A,10B,10C カム装置
20,50,70,80 カム
21 カム面
22 カム軸
30 カムフォロア
24,26,51,53,55,84,86 ドエル領域
25,52,54,71,85 リフト領域
27,56 不連続部
28,57,82 回転端
S1,S3,S5,S11,S13,S15,S17,S19 休止工程
S2,S12,S14 リフトアップ工程
S4,S16,S18 リフトダウン工程
90 玉軸受
α 回転端における圧力角
θ1~θ8 割付角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14