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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】積層型コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20220621BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/00 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019038545
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020145223
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】比留川 敦夫
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-212372(JP,A)
【文献】特開2014-220469(JP,A)
【文献】特開2017-210389(JP,A)
【文献】特開2001-196240(JP,A)
【文献】特開平10-335143(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0345543(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 17/00
H01F 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が積層されてなり、内部にコイルを内蔵する積層体と、
前記コイルに電気的に接続されている第1の外部電極及び第2の外部電極と、を備える積層型コイル部品であって、
前記コイルは、前記絶縁層とともに積層された複数のコイル導体が電気的に接続されることにより形成され、
前記積層体は、長さ方向に相対する第1の端面及び第2の端面と、前記長さ方向に直交する高さ方向に相対する第1の主面及び第2の主面と、前記長さ方向および前記高さ方向に直交する幅方向に相対する第1の側面及び第2の側面とを有し、
前記第1の外部電極は、前記第1の端面の一部を覆い、かつ、前記第1の端面から延伸して前記第1の主面の一部を覆って配置され、
前記第2の外部電極は、前記第2の端面の一部を覆い、かつ、前記第2の端面から延伸して前記第1の主面の一部を覆って配置され、
前記第1の主面が実装面であり、
前記積層体の積層方向、及び、前記コイルの軸方向が前記実装面に対して平行であり、
前記コイル導体間の前記絶縁層は磁性材料及び非磁性材料の少なくとも一方を含む材料からなり、
前記積層体の第1の端面から第2の端面に向かって、前記絶縁層に含まれる前記非磁性材料の含有率が変化しており、前記コイル導体間の前記絶縁層として、前記非磁性材料の含有率が異なる5種類以上の絶縁層を用いることを特徴とする積層型コイル部品。
【請求項2】
前記非磁性材料はSi及びZnを含有する酸化物材料を含む請求項1に記載の積層型コイル部品。
【請求項3】
Siに対するZnの含有量(Zn/Si)がモル比換算で1.8以上、2.2以下である請求項2に記載の積層型コイル部品。
【請求項4】
前記非磁性材料がさらにCuを含む請求項2又は3に記載の積層型コイル部品。
【請求項5】
前記非磁性材料はSi、K、Bを含むガラス材料にフィラーが添加された材料を含み、
前記フィラーは石英及びアルミナからなる群から選択された少なくとも1種を含む請求項1に記載の積層型コイル部品。
【請求項6】
前記ガラス材料はSiをSiO換算で70重量%以上85重量%以下、BをB換算で10重量%以上25重量%以下、KをKO換算で0.5重量%以上5重量%以下、AlをAlに換算して0重量%以上5重量%以下含む請求項5に記載の積層型コイル部品。
【請求項7】
前記磁性材料はNi-Zn-Cu系フェライト材料である請求項1~6のいずれかに記載の積層型コイル部品。
【請求項8】
前記フェライト材料は、FeをFeに換算して40mol%以上49.5mol%以下、ZnをZnOに換算して2mol%以上35mol%以下、CuをCuOに換算して6mol%以上13mol%以下、NiをNiOに換算して10mol%以上45mol%以下含む請求項7に記載の積層型コイル部品。
【請求項9】
さらに、前記積層体の内部に第1の連結導体及び第2の連結導体を備え、
前記第1の連結導体は、前記第1の端面を覆う部分の前記第1の外部電極とこれに対向する前記コイル導体との間を直線状に接続し、
前記第2の連結導体は、前記第2の端面を覆う部分の前記第2の外部電極とこれに対向する前記コイル導体との間を直線状に接続している請求項1~8のいずれかに記載の積層型コイル部品。
【請求項10】
前記第1の連結導体及び前記第2の連結導体は、いずれも、前記積層方向から平面視したときに前記コイル導体と重なり、かつ、前記コイルの中心軸よりも前記実装面側に位置する請求項9に記載の積層型コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型コイル部品として、例えば、特許文献1には、「複数のセラミック層と複数の内部電極とを積み重ねて構成したセラミック積層体と、複数の前記内部電極を電気的に接続して構成した螺旋状コイルとを備え、前記セラミック積層体のセラミックスの透磁率および/または誘電率が、前記螺旋状コイルの軸方向に段階的もしくは連続的に変化していること、を特徴とする積層コイル部品。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-109195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の電気機器の通信速度の高速化、及び、小型化に応じて、積層型コイル部品には高周波帯(例えば、30GHz以上のGHz帯)での高周波特性が充分であることが求められている。
特許文献1に記載の発明では、螺旋状コイルに発生するインダクタンスおよび浮遊容量が、螺旋状コイルの軸方向に段階的もしくは連続的に変化することになり、共振周波数が分散され広帯域な積層コイル部品が得られる、とされている。
特許文献1に記載の発明では、セラミックスの透磁率や誘電率は、消失材を含有させ空孔率を変化させることによって変化させている。しかし、空孔率が高くなると強度の低下を引き起こし、充分に透磁率や誘電率を低下させることが困難になるため、設計の自由度が低くなると考えられる。
その結果、30GHz以上の高周波領域でノイズ吸収部品として用いるには、特性が充分に発揮されないおそれがある。
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、共振周波数が分散され広帯域において使用可能な積層型コイル部品であって、高周波特性に優れる積層型コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層型コイル部品は、複数の絶縁層が積層されてなり、内部にコイルを内蔵する積層体と、上記コイルに電気的に接続されている第1の外部電極及び第2の外部電極と、を備える積層型コイル部品であって、上記コイルは、上記絶縁層とともに積層された複数のコイル導体が電気的に接続されることにより形成され、上記積層体は、長さ方向に相対する第1の端面及び第2の端面と、上記長さ方向に直交する高さ方向に相対する第1の主面及び第2の主面と、上記長さ方向および上記高さ方向に直交する幅方向に相対する第1の側面及び第2の側面とを有し、上記第1の外部電極は、上記第1の端面の一部を覆い、かつ、上記第1の端面から延伸して上記第1の主面の一部を覆って配置され、上記第2の外部電極は、上記第2の端面の一部を覆い、かつ、上記第2の端面から延伸して上記第1の主面の一部を覆って配置され、上記第1の主面が実装面であり、上記積層体の積層方向、及び、上記コイルの軸方向が上記実装面に対して平行であり、上記コイル導体間の上記絶縁層は磁性材料及び非磁性材料の少なくとも一方を含む材料からなり、上記積層体の第1の端面から第2の端面に向かって、上記絶縁層に含まれる上記非磁性材料の含有率が変化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、共振周波数が分散され広帯域において使用可能な積層型コイル部品であって、高周波特性に優れる積層型コイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る積層型コイル部品を模式的に示す斜視図である。
図2図2(a)は、図1に示す積層型コイル部品の側面図であり、図2(b)は、図1に示す積層型コイル部品の正面図であり、図2(c)は、図1に示す積層型コイル部品の底面図である。
図3図3は、積層型コイル部品の内部構造を模式的に示す断面図である。
図4図4は、図3に示す積層型コイル部品を構成する積層体の一例を模式的に示す分解斜視図である。
図5図5は、図3に示す積層型コイル部品を構成する積層体の一例を模式的に示す分解平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の積層型コイル部品について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層型コイル部品を模式的に示す斜視図である。
図2(a)は、図1に示す積層型コイル部品の側面図であり、図2(b)は、図1に示す積層型コイル部品の正面図であり、図2(c)は、図1に示す積層型コイル部品の底面図である。
【0011】
図1図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示す積層型コイル部品1は、積層体10と第1の外部電極21と第2の外部電極22とを備えている。積層体10は、6面を有する略直方体形状である。積層体10の構成については後述するが、複数の絶縁層が積層されてなり、内部にコイルを内蔵している。第1の外部電極21及び第2の外部電極22は、それぞれ、コイルに電気的に接続されている。
【0012】
本発明の積層型コイル部品及び積層体では、長さ方向、高さ方向、幅方向を、図1におけるx方向、y方向、z方向とする。ここで、長さ方向(x方向)と高さ方向(y方向)と幅方向(z方向)は互いに直交する。
【0013】
図1図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示すように、積層体10は、長さ方向(x方向)に相対する第1の端面11及び第2の端面12と、長さ方向に直交する高さ方向(y方向)に相対する第1の主面13及び第2の主面14と、長さ方向及び高さ方向に直交する幅方向(z方向)に相対する第1の側面15及び第2の側面16とを有する。
【0014】
図1に示すように、積層体10では、長さ方向(x方向)に平行、かつ、第1の端面11から第2の端面12までを貫通するコイル軸aが仮定される。
コイル軸aが伸びる方向は、積層体に内蔵されるコイルの軸方向でもあり、コイルの軸方向及び積層体の積層方向は、実装面である第1の主面13と平行となっている。
【0015】
図1には示されていないが、積層体10は、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。角部は、積層体の3面が交わる部分であり、稜線部は、積層体の2面が交わる部分である。
【0016】
第1の外部電極21は、図1及び図2(b)に示すように、積層体10の第1の端面11の一部を覆い、かつ、図1及び図2(c)に示すように、第1の端面11から延伸して第1の主面13の一部を覆って配置されている。図2(b)に示すように、第1の外部電極21は、第1の端面11のうち、第1の主面13と交わる稜線部を含む領域を覆っているが、第2の主面14と交わる稜線部を含む領域は覆っていない。そのため、第2の主面14と交わる稜線部を含む領域では、第1の端面11が露出している。また、第1の外部電極21は、第2の主面14を覆っていない。
【0017】
なお、図2(b)では、積層体10の第1の端面11を覆う部分の第1の外部電極21の高さE2は一定であるが、積層体10の第1の端面11の一部を覆う限り、第1の外部電極21の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1の端面11において、第1の外部電極21は、端部から中央部に向かって高くなる山なり形状であってもよい。また、図2(c)では、積層体10の第1の主面13を覆う部分の第1の外部電極21の長さE1は一定であるが、積層体10の第1の主面13の一部を覆う限り、第1の外部電極21の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1の主面13において、第1の外部電極21は、端部から中央部に向かって長くなる山なり形状であってもよい。
【0018】
図1及び図2(a)に示すように、第1の外部電極21は、さらに、第1の端面11及び第1の主面13から延伸して第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆って配置されていてもよい。この場合、図2(a)に示すように、第1の側面15及び第2の側面16を覆う部分の第1の外部電極21は、いずれも、第1の端面11と交わる稜線部及び第1の主面13と交わる稜線部に対して斜めに形成されていることが好ましい。なお、第1の外部電極21は、第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆って配置されていなくてもよい。
【0019】
第2の外部電極22は、積層体10の第2の端面12の一部を覆い、かつ、第2の端面12から延伸して第1の主面13の一部を覆って配置されている。第1の外部電極21と同様、第2の外部電極22は、第2の端面12のうち、第1の主面13と交わる稜線部を含む領域を覆っているが、第2の主面14と交わる稜線部を含む領域は覆っていない。そのため、第2の主面14と交わる稜線部を含む領域では、第2の端面12が露出している。また、第2の外部電極22は、第2の主面14を覆っていない。
【0020】
第1の外部電極21と同様、積層体10の第2の端面12の一部を覆う限り、第2の外部電極22の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第2の端面12において、第2の外部電極22は、端部から中央部に向かって高くなる山なり形状であってもよい。また、積層体10の第1の主面13の一部を覆う限り、第2の外部電極22の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1の主面13において、第2の外部電極22は、端部から中央部に向かって長くなる山なり形状であってもよい。
【0021】
第1の外部電極21と同様、第2の外部電極22は、さらに、第2の端面12及び第1の主面13から延伸して第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆って配置されていてもよい。この場合、第1の側面15及び第2の側面16を覆う部分の第2の外部電極22は、いずれも、第2の端面12と交わる稜線部及び第1の主面13と交わる稜線部に対して斜めに形成されていることが好ましい。なお、第2の外部電極22は、第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆って配置されていなくてもよい。
【0022】
以上のように第1の外部電極21及び第2の外部電極22が配置されているため、積層型コイル部品1を基板上に実装する場合には、積層体10の第1の主面13が実装面となる。
【0023】
本発明の積層型コイル部品のサイズは特に限定されないが、0603サイズ、0402サイズ又は1005サイズであることが好ましい。
【0024】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の長さ(図2(a)中、両矢印Lで示される長さ)は、0.63mm以下であることが好ましく、0.57mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の幅(図2(c)中、両矢印Wで示される長さ)は、0.33mm以下であることが好ましく、0.27mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の高さ(図2(b)中、両矢印Tで示される長さ)は、0.33mm以下であることが好ましく、0.27mm以上であることが好ましい。
【0025】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層型コイル部品の長さ(図2(a)中、両矢印Lで示される長さ)は、0.63mm以下であることが好ましく、0.57mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層型コイル部品の幅(図2(c)中、両矢印Wで示される長さ)は、0.33mm以下であることが好ましく、0.27mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層型コイル部品の高さ(図2(b)中、両矢印Tで示される長さ)は、0.33mm以下であることが好ましく、0.27mm以上であることが好ましい。
【0026】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さ(図2(c)中、両矢印E1で示される長さ)は、0.12mm以上、0.22mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第1の主面を覆う部分の第2の外部電極の長さは、0.12mm以上、0.22mm以下であることが好ましい。
なお、積層体の第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さ、及び、積層体の第1の主面を覆う部分の第2の外部電極の長さが一定でない場合、最も長い部分の長さが上記範囲にあることが好ましい。
【0027】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の第1の端面を覆う部分の第1の外部電極の高さ(図2(b)中、両矢印E2で示される長さ)は、0.10mm以上、0.20mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第2の端面を覆う部分の第2の外部電極の高さは、0.10mm以上、0.20mm以下であることが好ましい。この場合、外部電極に起因する浮遊容量を低減することができる。
なお、積層体の第1の端面を覆う部分の第1の外部電極の高さ、及び、積層体の第2の端面を覆う部分の第2の外部電極の高さが一定でない場合、最も高い部分の高さが上記範囲にあることが好ましい。
【0028】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層体の長さは、0.38mm以上、0.42mm以下であることが好ましく、積層体の幅は、0.18mm以上、0.22mm以下であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層体の高さは、0.18mm以上、0.22mm以下であることが好ましい。
【0029】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層型コイル部品の長さは、0.42mm以下であることが好ましく、0.38mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層型コイル部品の幅は、0.22mm以下であることが好ましく、0.18mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層型コイル部品の高さは、0.22mm以下であることが好ましく、0.18mm以上であることが好ましい。
【0030】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層体の第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さは、0.08mm以上、0.15mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第1の主面を覆う部分の第2の外部電極の長さは、0.08mm以上、0.15mm以下であることが好ましい。
【0031】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層体の第1の端面を覆う部分の第1の外部電極の高さは、0.06mm以上、0.13mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第2の端面を覆う部分の第2の外部電極の高さは、0.06mm以上、0.13mm以下であることが好ましい。この場合、外部電極に起因する浮遊容量を低減することができる。
【0032】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層体の長さは、0.95mm以上、1.05mm以下であることが好ましく、積層体の幅は、0.45mm以上、0.55mm以下であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層体の高さは、0.45mm以上、0.55mm以下であることが好ましい。
【0033】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層型コイル部品の長さは、1.05mm以下であることが好ましく、0.95mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層型コイル部品の幅は、0.55mm以下であることが好ましく、0.45mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層型コイル部品の高さは、0.55mm以下であることが好ましく、0.45mm以上であることが好ましい。
【0034】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層体の第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さは、0.20mm以上、0.38mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第1の主面を覆う部分の第2の外部電極の長さは、0.20mm以上、0.38mm以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層体の第1の端面を覆う部分の第1の外部電極の高さは、0.15mm以上、0.33mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第2の端面を覆う部分の第2の外部電極の高さは、0.15mm以上、0.33mm以下であることが好ましい。この場合、外部電極に起因する浮遊容量を低減することができる。
【0036】
本発明の積層型コイル部品では、コイル導体間の絶縁層は磁性材料及び非磁性材料の少なくとも一方を含む材料からなる。
そして、積層体の第1の端面から第2の端面に向かって、絶縁層に含まれる非磁性材料の含有率が変化している。
図3は、積層型コイル部品の内部構造を模式的に示す断面図である。
図3は、絶縁層、コイル導体及び連結導体、並びに、積層体の積層方向を模式的に示すものであり、実際の形状及び接続等を厳密には表していない。例えば、コイル導体はビア導体を介して接続されている。
【0037】
図3に示すように、積層型コイル部品1においては、複数の絶縁層31が積層されていて、内部にコイルを内蔵する積層体10となっている。
コイルは、絶縁層31とともに積層された複数のコイル導体32が電気的に接続されることにより形成される。
積層体10の積層方向、及び、コイルの軸方向(図3中、コイル軸aを示す)は、実装面である第1の主面13に対して平行である。
【0038】
図3に示す積層型コイル部品では、第1の外部電極21と、これに対向するコイル導体とが第1の連結導体41により直線状に接続されており、第2の外部電極22と、これに対向するコイル導体とが第2の連結導体42により直線状に接続されている。第1の連結導体41及び第2の連結導体42は、それぞれ、実装面となる第1の主面13に最も近い部分のコイル導体と接続されている。
第1の連結導体41及び第2の連結導体42はいずれも、積層方向から平面視したときにコイル導体と重なり、かつ、コイル導体の中心軸よりも、実装面となる第1の主面13側に位置している。
第1の連結導体41及び第2の連結導体42はいずれも、コイル導体の最も実装面に近い部分に接続されているため、外部電極の大きさを小さくして高周波特性を向上させることができる。
【0039】
図3に示すように、積層型コイル部品1においては、複数の絶縁層が積層されている。絶縁層としては、コイル導体32間の絶縁層31と、第1の連結導体41間の絶縁層35a、第2の連結導体42間の絶縁層35bが設けられている。
図3には、コイル導体間の絶縁層31において、積層体10の第1の端面11から第2の端面12に向かって、絶縁層31に含まれる非磁性材料の含有率が変化していることをハッチングのグラデーションを変化させることにより示している。
ハッチングが黒に近いほど非磁性材料の含有率が高いことを意味していることから、図3では積層体10の中央付近で絶縁層31に含まれる非磁性材料の含有率が最も高くなっている様子を示している。
【0040】
積層体10の第1の端面11から第2の端面12に向かって、絶縁層31に含まれる非磁性材料の含有率が変化しているということは、積層体10の第1の端面11から第2の端面12に向かって非磁性材料の含有率が単調増加又は単調減少していることを意味するものではない。
積層体10を構成する絶縁層31に含まれる非磁性材料の含有率が各絶縁層31において同じではなく、絶縁層31ごとに含まれる非磁性材料の含有率が異なることを意味している。
絶縁層31に含まれる非磁性材料の含有率が各絶縁層31ごとに異なることによって、透磁率や誘電率が絶縁層31ごとに異なることになるので、螺旋状コイルに発生するインダクタンスおよび浮遊容量が、螺旋状コイルの軸方向に段階的もしくは連続的に変化することになり、共振周波数が分散され広帯域な積層型コイル部品が得られることになる。
本発明の積層型コイル部品では、絶縁層の透磁率や誘電率を変化させるために絶縁層の空孔率を変化させる必要はないので、積層型コイル部品の強度が低下することが防止される。
【0041】
絶縁層に含まれる磁性材料としては、フェライト材料が挙げられる。
フェライト材料としては、Ni-Zn-Cu系フェライト材料であることが好ましい。
また、フェライト材料は、FeをFeに換算して40mol%以上49.5mol%以下、ZnをZnOに換算して2mol%以上35mol%以下、CuをCuOに換算して6mol%以上13mol%以下、NiをNiOに換算して10mol%以上45mol%以下含むことが好ましい。
フェライト材料には不可避不純物が含まれていてもよい。
【0042】
絶縁層に含まれる非磁性材料としては、Si及びZnを含有する酸化物材料(以下、第1の非磁性材料ともいう)が挙げられる。
このような材料としては、一般式aZnO・SiOで表される材料であり、aの値、すなわちSiに対するZnの含有量(Zn/Si)が1.8以上、2.2以下である材料が挙げられる。これはウィルマイトとも呼ばれる材料である。
また、この材料はさらにCuを含むことが好ましく、具体的には、Znの一部がCu等の異種金属で置換された材料であってもよい。
このような材料は、酸化物原料(ZnO、SiO、CuO等)を所定のモル比となるように配合して、湿式で混合粉砕した後、1000℃以上、1200℃以下で仮焼して作製することができる。
【0043】
また、絶縁層に含まれる別の非磁性材料としては、Si、K、Bを含むガラス材料にフィラーが添加された材料を含み、フィラーは石英及びアルミナからなる群から選択された少なくとも1種を含む材料(以下、第2の非磁性材料ともいう)が挙げられる。
ガラス材料は、SiをSiO換算で70重量%以上85重量%以下、BをB換算で10重量%以上25重量%以下、KをKO換算で0.5重量%以上5重量%以下、AlをAlに換算して0重量%以上5重量%以下含む材料であることが好ましい。
このような材料は、ガラスとフィラーを混合して作製することができる。
例えば、ガラス100重量部に対して、フィラーとしての石英を40重量部以上、60重量部以下、アルミナを0重量部以上、10重量部以下の範囲で混合することにより作製することができる。
【0044】
フェライト材料と非磁性材料の組合せとしては、フェライト材料と第1の非磁性材料を組み合わせても良く、フェライト材料と第2の非磁性材料を組み合わせてもよい。
また、フェライト材料と第1の非磁性材料及び第2の非磁性材料を組み合わせてもよい。
好ましいのはフェライト材料と第1の非磁性材料の組合せである。
【0045】
絶縁層に含まれる非磁性材料の割合は、0体積%以上、100体積%以下である。
積層体を構成する絶縁層に含まれる非磁性材料の割合は絶縁層ごとに異なっていてよいが、最も非磁性材料の割合が多い絶縁層において絶縁層に含まれる非磁性材料の割合は、好ましくは70体積%以上、80体積%以下である。
また、最も非磁性材料の割合が少ない絶縁層において絶縁層に含まれる非磁性材料の割合は、好ましくは20体積%以上、30体積%以下である。
【0046】
絶縁層に含まれる非磁性材料の割合が変化することによって、絶縁層の誘電率が変化する。
絶縁層の比誘電率としては、4.0以上、15.0以下とすることが好ましい。
【0047】
また、連結導体間の絶縁層(第1の連結導体間の絶縁層及び第2の連結導体間の絶縁層)の誘電率が、コイル導体間の絶縁層の誘電率よりも低いことが好ましい。
これは、図3における第1の連結導体41間の絶縁層35aの誘電率及び第2の連結導体42間の絶縁層35bの誘電率が、コイル導体32間の絶縁層31のうち最も誘電率が低い絶縁層の誘電率よりも低いことを意味している。
連結導体間の絶縁層の誘電率が低いと、外部電極と連結導体の間に発生する静電容量が小さくなるため好ましい。
【0048】
図4は、図3に示す積層型コイル部品を構成する積層体の一例を模式的に示す分解斜視図であり、図5は、図3に示す積層型コイル部品を構成する積層体の一例を模式的に示す分解平面図である。
【0049】
図4及び図5に示すように、積層体10は、コイル導体間の絶縁層31として、絶縁層31a、31b、31c及び31d、その間の図示しない絶縁層、並びに、絶縁層31w、31x、31y、及び31zを有する。また、連結導体間の絶縁層35aとして、絶縁層35a、35a、35a及び35aを有し、連結導体間の絶縁層35bとして絶縁層35b、35b、35b及び35bを有する。
積層体10は、各絶縁層が長さ方向(x方向)に積層されて構成されている。
なお、積層体を構成する複数の絶縁層が積み重なる方向を積層方向という。
【0050】
絶縁層31a、31b、31c及び31dには、それぞれ、コイル導体32a、32b、32c及び32dと、ビア導体33a、33b、33c及び33dとが設けられている。
絶縁層31w、31x、31y及び31zには、それぞれ、コイル導体32w、32x、32y及び32zと、ビア導体33w、33x、33y及び33zとが設けられている。
【0051】
絶縁層35a、35a、35a及び35aには、それぞれビア導体33gが設けられている。ビア導体33gは繋がって第1の連結導体41となる。
絶縁層35b、35b、35b及び35bには、それぞれビア導体33hが設けられている。ビア導体33hは繋がって第2の連結導体42となる。
【0052】
コイル導体32a、32b、32c及び32dは、それぞれ、絶縁層31a、31b、31c及び31dの主面上に設けられており、絶縁層31a、31b、31c及び31dとともに積層される。図4及び図5では、各コイル導体が3/4ターン形状を有しており、コイル導体32a、32b、32c及び32dを1つの単位(3ターン分)として、繰り返し積層される。
【0053】
絶縁層31a、31b、31c及び31dは、絶縁層に含まれる非磁性材料の含有率が異なる絶縁層である。絶縁層31a、31b、31c及び31dに含まれる非磁性材料の含有率が変化していることをハッチングのグラデーションを変化させることにより示している。
【0054】
ビア導体33a、33b、33c及び33dは、それぞれ、絶縁層31a、31b、31c及び31dを厚み方向(図4ではx方向)に貫通するように設けられている。通常、絶縁層の主面上には、ビア導体と接続されるランドが設けられる。ランドのサイズは、コイル導体の線幅よりも若干大きいことが好ましい。
【0055】
以上のように構成された、絶縁層31a、31b、31c及び31dは、図4に示すようにx方向に積層される。これにより、コイル導体32a、32b、32c及び32dは、ビア導体33a、33b、33c及び33dを介して電気的に接続される。その結果、積層体10内において、x方向に延在するコイル軸を有するソレノイド状のコイルが形成される。
【0056】
また、絶縁層31w、31x、31y及び31zも同様に絶縁層に含まれる非磁性材料の含有率が異なる絶縁層である。
絶縁層31w、31x、31y及び31zにも同様のコイル導体32w、32x、32y及び32zと、ビア導体33w、33x、33y及び33zとが設けられている。
そのため、絶縁層31w、31x、31y及び31zが図4に示すようにx方向に積層されることにより、コイル導体32w、32x、32y及び32zは、ビア導体33w、33x、33y及び33zを介して電気的に接続される。その結果、積層体10内において、x方向に延在するコイル軸を有するソレノイド状のコイルが形成される。
【0057】
絶縁層31a、31b、31c及び31dと絶縁層31w、31x、31y及び31zの間のコイル導体間の絶縁層についても、絶縁層に含まれる非磁性材料の含有率が異なるようにする。その他、コイル導体及びビア導体については同様の構成とすることができる。
【0058】
第1の連結導体41及び第2の連結導体42は、積層体10の両端面に露出する。
第1の連結導体41は、積層体10内において、第1の外部電極21とこれに対向するコイル導体32aとの間を接続する。また、第2の連結導体42は、第2の外部電極22とこれに対向するコイル導体32zとの間を接続する。
【0059】
コイル導体の繰り返し形状は特に限定されないが、円形であってもよく、多角形であってもよい。
コイル導体の繰り返し形状が多角形の場合、多角形の面積相当円の直径をコイル径とし、多角形の重心を通り長さ方向に平行な軸をコイル軸とする。
【0060】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、コイル導体の内径は、50μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0061】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、コイル導体の内径は、30μm以上70μm以下であることが好ましい。
【0062】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、コイル導体の内径は、80μm以上170μm以下であることが好ましい。
【0063】
積層方向から平面視した際の、コイル導体の線幅は特に限定されないが、積層体の幅に対して10%以上、30%以下であることが好ましい。コイル導体の線幅が積層体の幅の10%未満であると、直流抵抗Rdcが大きくなる場合がある。一方、コイル導体の線幅が積層体の幅の30%を超えると、コイルの静電容量が大きくなり、高周波特性が悪化する場合がある。
【0064】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、コイル導体の線幅は、30μm以上90μm以下であることが好ましく、30μm以上70μm以下であることがより好ましい。
【0065】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、コイル導体の線幅は、20μm以上60μm以下であることが好ましく、20μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0066】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、コイル導体の線幅は、50μm以上150μm以下であることが好ましく、50μm以上120μm以下であることがより好ましい。
【0067】
積層方向から平面視した際の、コイル導体の内径は、積層体の幅に対して15%以上、40%以下であることが好ましい。
【0068】
本発明の積層型コイル部品は、積層方向におけるコイル導体間の距離が3μm以上、7μm以下であることが好ましい。積層方向におけるコイル導体間の距離を3μm以上、7μm以下とすることで、コイルのターン数を多くできるので、インピーダンスを大きくすることができる。また、後述する高周波帯での透過係数S21も大きくすることができる。
【0069】
積層型コイル部品を構成する積層体の内部には、第1の連結導体及び第2の連結導体を備えていることが好ましい。
第1の連結導体及び第2の連結導体の形状は特に限定されないが、外部電極とコイル導体との間を直線状に接続していることが好ましい。
コイル導体から外部電極までを直線状に接続することにより、引き出し部を簡便にすることができるとともに、高周波特性を向上させることができる。
【0070】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、第1の連結導体及び第2の連結導体の長さは、15μm以上45μm以下であることが好ましく、15μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0071】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、第1の連結導体及び第2の連結導体の長さは、10μm以上30μm以下であることが好ましく、10μm以上25μm以下であることがより好ましい。
【0072】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、第1の連結導体及び第2の連結導体の長さは、25μm以上75μm以下であることが好ましく、25μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0073】
第1の連結導体及び第2の連結導体は、いずれも、積層方向から平面視したときにコイル導体と重なり、かつ、コイルの中心軸よりも実装面側に位置することが好ましい。
なお、コイルの中心軸とは、コイル導体によって形成される繰り返し形状の中心を通り、長さ方向に平行な軸である。
【0074】
なお、積層方向から平面視したときに、連結導体を構成するビア導体が互いに重なっていれば、連結導体を構成するビア導体同士は厳密に直線状に並んでいなくてもよい。
【0075】
第1の連結導体の幅及び第2の連結導体の幅は、積層体の幅の8%以上、20%以下であることが好ましい。
なお、連結導体の幅とは、連結導体のうち最も狭い部分の幅を指す。すなわち、連結導体がランドを含む場合であっても、ランドを除いた形状を連結導体の形状とする。
【0076】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、連結導体の幅は、30μm以上60μm以下であることが好ましい。
【0077】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、連結導体の幅は、20μm以上40μm以下であることが好ましい。
【0078】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、連結導体の幅は、40μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0079】
本発明の積層型コイル部品においては、第1の連結導体及び第2の連結導体の長さがいずれも、積層体の長さの2.5%以上、7.5%以下であることが好ましく、2.5%以上、5.0%以下であることがより好ましい。
【0080】
本発明の積層型コイル部品において、第1の連結導体及び第2の連結導体は2つ以上存在していてもよい。
連結導体が2つ以上存在する場合とは、端面を覆う部分の外部電極とこれに対向するコイル導体とが、連結導体によって2箇所以上で接続されている状態を指す。
【0081】
本発明の積層型コイル部品は、高周波帯(特に30GHz以上、80GHz以下)での高周波特性に優れる。具体的には、40GHzでの透過係数S21が-1dB以上、0dB以下であることが好ましく、50GHzでの透過係数S21が-2dB以上、0dB以下であることが好ましい。透過係数S21は、入力信号に対する透過信号の電力の比から求められる。透過係数S21は、基本的に無次元量であるが、通常、常用対数をとってdB単位で表される。
上記条件を満たす場合、例えば、光通信回路内のバイアスティー(Bias-Tee)回路等に好適に使用することができる。
【0082】
以下、本発明の積層型コイル部品の製造方法の一例について説明する。
【0083】
まず、絶縁層となるセラミックグリーンシートを作製する。
例えば、磁性材料及び非磁性材料に、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダ、エタノール、トルエン等の有機溶剤及び分散剤等を加えて混練し、スラリー状にする。その後、ドクターブレード法などの方法により、厚さ12μm程度のセラミックグリーンシートを得る。
【0084】
磁性材料としてのフェライト材料として、例えば、鉄、ニッケル、亜鉛及び銅の酸化物原料を混合して800℃、1時間で仮焼した後、ポールミルにより粉砕し、乾燥することにより、平均粒径が約2μmのNi-Zn-Cu系フェライト材料(酸化物混合粉末)を使用することができる。
また、フェライト材料は、FeをFeに換算して40mol%以上49.5mol%以下、ZnをZnOに換算して2mol%以上35mol%以下、CuをCuOに換算して6mol%以上13mol%以下、NiをNiOに換算して10mol%以上45mol%以下含むことが好ましい。
【0085】
非磁性材料としては、Si及びZnを含有する酸化物材料(上述した第1の非磁性材料)を使用することができる。
このような材料は、酸化物原料(ZnO、SiO、CuO等)を所定のモル比となるように配合して、湿式で混合粉砕した後、1000℃以上、1200℃以下で仮焼して作製することができる。
【0086】
また、非磁性材料として、Si、K、Bを含むガラス材料にフィラーが添加された材料を含み、フィラーは石英及びアルミナからなる群から選択された少なくとも1種を含む材料(上述した第2の非磁性材料)を使用することができる。
ガラス材料は、SiをSiO換算で70重量%以上85重量%以下、BをB換算で10重量%以上25重量%以下、KをKO換算で0.5重量%以上5重量%以下、AlをAlに換算して0重量%以上5重量%以下含む材料であることが好ましい。
このような材料は、ガラスとフィラーを混合して作製することができる。
例えば、ガラス100重量部に対して、フィラーとしての石英を40重量部以上、60重量部以下、アルミナを0重量部以上、10重量部以下の範囲で混合することにより作製することができる。
【0087】
磁性材料と非磁性材料の混合割合を変更して、非磁性材料の含有率が異なる複数種類のセラミックグリーンシートを作製する。
セラミックグリーンシートの種類は5種類以上とすることが好ましい。
そして、積層順を考慮してセラミックグリーンシートを分別しておく。
【0088】
作製したセラミックグリーンシートに、所定のレーザー加工を施して、直径20μm以上、30μm以下程度のビアホールを形成する。ビアホールを有する特定のシート上にAgペーストを用いて、ビアホールに充填し、さらに、11μm程度の厚みを有する所定のコイル周回用の導体パターン(コイル導体)をスクリーン印刷し、乾燥することでコイルシートを得る。
【0089】
個片化後に実装面と平行な方向に周回軸を有するコイルが積層体の内部に形成されるように、所定の順序でコイルシートを積層する。さらに、連結導体となるビア導体が形成されたビアシートを上下に積層する。
コイルシートの積層順は、積層体の第1の端面から第2の端面に向かって絶縁層に含まれる非磁性材料の含有率が変化するように定めることが好ましい。
また、ビアシートとしてコイルシートよりも誘電率が低い材料からなるシートを用いることが好ましい。
【0090】
積層体を熱圧着して圧着体を得た後、所定のチップ寸法になるように切断し、個片化したチップを得る。個片化したチップに対しては、回転バレルを行い、角部及び稜線部に所定の丸みを付けてもよい。
【0091】
所定の温度、時間で脱バインダ及び焼成を施すことで、内部にコイルを内蔵した焼成体(積層体)を得る。
【0092】
Agペーストを所定の厚みに引き伸ばした層にチップを斜めに浸漬させ、焼き付けることで、積層体の4面(主面、端面及び両側面)に外部電極の下地電極を形成する。
上記の方法では、積層体の主面と端面の2回に分けて下地電極を形成する場合に比べて、下地電極を1回で形成することができる。
【0093】
下地電極に対して、めっきにより、所定の厚みのNi皮膜及びSn皮膜を順次形成して、外部電極を形成する。
以上により、本発明の積層型コイル部品を作製することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 積層型コイル部品
10 積層体
11 第1の端面
12 第2の端面
13 第1の主面
14 第2の主面
15 第1の側面
16 第2の側面
21 第1の外部電極
22 第2の外部電極
31、31a、31b、31c、31d、31w、31x、31y、31z 絶縁層(コイル導体間の絶縁層)
32、32a、32b、32c、32d、32w、32x、32y、32z コイル導体
33a、33b、33c、33d、33g、33h、33w、33x、33y、33z ビア導体
35a、35a、35a、35a、35a、35b、35b、35b、35b、35b 絶縁層(連結導体間の絶縁層)
41 第1の連結導体
42 第2の連結導体
図1
図2
図3
図4
図5