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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20220621BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20220621BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H01F17/00 C
H01F27/29 F
H01F41/04 B
H01F27/29 123
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019160555
(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2021040043
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】大谷 慎士
(72)【発明者】
【氏名】今枝 大樹
(72)【発明者】
【氏名】笹島 菜美子
(72)【発明者】
【氏名】須永 友博
(72)【発明者】
【氏名】大門 正美
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由雅
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/115180(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/115603(WO,A1)
【文献】特開2019-134141(JP,A)
【文献】特開2014-212298(JP,A)
【文献】特開2001-358164(JP,A)
【文献】特開2003-253455(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0061810(US,A1)
【文献】特開2017-123406(JP,A)
【文献】特開2001-52937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 27/29
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂および金属磁性粉のコンポジット材料からなるコンポジット体と、
前記コンポジット体の外面上に配置された金属膜と
を備え、
前記金属磁性粉は、Feを含み、
前記金属膜は、主としてNiを含み、前記樹脂および前記金属磁性粉に接触する、電子部品。
【請求項2】
前記金属膜は、アモルファスである、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記金属膜は、さらにPを含む、請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記金属膜に対するPの含有率は、1wt%以上13wt%以下である、請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記金属膜は、さらにFeを含む、請求項1から4の何れか一つに記載の電子部品。
【請求項6】
前記コンポジット体内において、前記外面と平行に延びるインダクタ配線と、
前記インダクタ配線から前記外面と垂直に延びて前記コンポジット体の内部を貫通し、前記外面に露出する柱状配線と、
前記金属膜上を覆う親はんだ層と、をさらに備え、
前記金属膜は、前記柱状配線に接触し、
前記金属膜および前記親はんだ層は、外部端子を構成する、請求項1から5の何れか一つに記載の電子部品。
【請求項7】
樹脂および金属磁性粉のコンポジット材料からなるコンポジット体の外面上に、無電解めっき処理により、金属膜を形成して、電子部品を製造する方法であって、
主としてNiを含む前記金属膜を、自己触媒型還元めっき処理により、Feを含む前記金属磁性粉上に析出させ、前記樹脂に接触させる、電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品としては、特開2013-225718号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この電子部品は、樹脂および金属磁性粉のコンポジット材料からなるコンポジット体(上部コア、下部コア)と、コンポジット体の外面上に配置された金属膜(端子電極)とを備える。金属磁性粉は、Feを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-225718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のような電子部品では、通常、金属膜には導電性の高いCuが用いられる。一方、Feを含む金属磁性粉の線膨張係数とCuを含む金属膜の線膨張係数は、大きく異なるため、熱負荷時に金属磁性粉と金属膜の固着力が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、金属磁性粉と金属膜の固着信頼性を向上できる電子部品およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様である電子部品は、
樹脂および金属磁性粉のコンポジット材料からなるコンポジット体と、
前記コンポジット体の外面上に配置された金属膜と
を備え、
前記金属磁性粉は、Feを含み、
前記金属膜は、主としてNiを含み、前記樹脂および前記金属磁性粉に接触する。
【0007】
ここで、「金属膜は主としてNiを含む」とは、金属膜に対するNiの含有率が、80wt%以上であることをいう。
【0008】
前記態様によれば、金属磁性粉はFeを含み、金属膜は主としてNiを含むので、金属膜の線膨張係数を金属磁性粉の線膨張係数に近づけることができ、熱負荷時に金属磁性粉と金属膜の固着力が低下することを抑制することができる。したがって、金属磁性粉と金属膜の固着信頼性を向上できる。
【0009】
また、電子部品の一実施形態では、前記金属膜は、アモルファスである。
【0010】
前記実施形態によれば、金属膜は、アモルファスであるので、結晶構造に比べて、金属膜の表面を平坦に形成でき、また、金属膜の厚みを薄くできる。
【0011】
また、電子部品の一実施形態では、前記金属膜は、さらにPを含む。
【0012】
前記実施形態によれば、金属膜は、Pを含むので、金属膜の耐食性が向上する。また、Feとの置換反応なしにNiが析出開始されるため、金属磁性粉と金属膜の固着力をさらに向上できる。
【0013】
また、電子部品の一実施形態では、前記金属膜に対するPの含有率は、1wt%以上13wt%以下である。
【0014】
前記実施形態によれば、金属膜に対するPの含有率が1wt%以上であることにより、金属膜の耐食性および固着力の向上の効果を確実に得ることができる。また、金属膜に対するPの含有率が13wt%以下であるので、金属膜の成膜性が向上する。
【0015】
また、電子部品の一実施形態では、前記金属膜は、さらにFeを含む。
【0016】
前記実施形態によれば、金属膜は、Feを含むので、金属膜の線膨張係数を金属磁性粉の線膨張係数により近づけることができ、熱負荷時に金属磁性粉と金属膜の固着力が低下することをさらに抑制することができる。
【0017】
また、電子部品の一実施形態では、
前記コンポジット体内において、前記外面と平行に延びるインダクタ配線と、
前記インダクタ配線から前記外面と垂直に延びて前記コンポジット体の内部を貫通し、前記外面に露出する柱状配線と、
前記金属膜上を覆う親はんだ層と、をさらに備え、
前記金属膜は、前記柱状配線に接触し、
前記金属膜および前記親はんだ層は、外部端子を構成する。
【0018】
前記実施形態によれば、コンポジット体と外部端子との固着信頼性が向上した電子部品を提供できる。
【0019】
また、電子部品の製造方法の一実施形態では、
樹脂および金属磁性粉のコンポジット材料からなるコンポジット体の外面上に、無電解めっき処理により、金属膜を形成して、電子部品を製造する方法であって、
主としてNiを含む前記金属膜を、自己触媒型還元めっき処理により、Feを含む前記金属磁性粉上に析出させ、前記樹脂に接触させる。
【0020】
前記実施形態によれば、金属磁性粉はFeを含み、金属膜は主としてNiを含むので、金属膜の線膨張係数を金属磁性粉の線膨張係数に近づけることができ、熱負荷時に金属磁性粉と金属膜の固着力が低下することを抑制することができる。また、Feとの置換反応なしにNiが析出開始されるため、金属磁性粉と金属膜の固着力をさらに向上できる。したがって、金属磁性粉と金属膜の固着信頼性が向上した電子部品を製造できる。
【発明の効果】
【0021】
本開示の一態様である電子部品およびその製造方法によれば、金属磁性粉と金属膜の固着信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】電子部品としてのインダクタ部品の第1実施形態を示す透視平面図である。
図1B図1AのA-A断面図である。
図2図1Bの一部拡大図である。
図3A】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図3B】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図3C】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図3D】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の一態様である電子部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0024】
(第1実施形態)
(構成)
図1Aは、電子部品の第1実施形態を示す透視平面図である。図1Bは、図1AのA-A断面図である。図2は、図1Bの一部拡大図である。
【0025】
電子部品は、一例として、インダクタ部品1である。インダクタ部品1は、例えば、パソコン、DVDプレーヤー、デジタルカメラ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクスなどの電子機器に搭載される回路基板に実装される表面実装型の電子部品である。ただし、インダクタ部品1は、表面実装型でなく、基板内蔵型の電子部品であってもよい。また、インダクタ部品1は、例えば全体として直方体形状の部品である。ただし、インダクタ部品1の形状は、特に限定されず、円柱状や多角形柱状、円錐台形状、多角形錐台形状であってもよい。
【0026】
図1A図1Bに示すように、インダクタ部品1は、絶縁性を有する素体10と、素体10内に配置された第1インダクタ素子2Aおよび第2インダクタ素子2Bと、素体10の長方形状の第1主面10aから端面が露出するように素体10に埋め込まれた第1柱状配線31、第2柱状配線32、第3柱状配線33および第4柱状配線34と、素体10の第1主面10a上に配置された第1外部端子41、第2外部端子42、第3外部端子43および第4外部端子44と、素体10の第1主面10a上に設けられた絶縁膜50とを備える。図中、インダクタ部品1の厚みに平行な方向をZ方向とし、順Z方向を上側、逆Z方向を下側とする。Z方向に直交する平面において、インダクタ部品1の長手側となる長さに平行な方向をX方向とし、インダクタ部品1の短手側となる幅に平行な方向をY方向とする。
【0027】
素体10は、絶縁層61と、絶縁層61の下面61aに配置された第1磁性層11と、絶縁層61の上面61bに配置された第2磁性層12とを有する。素体10の第1主面10aは、第2磁性層12の上面に相当する。素体10は、絶縁層61、第1磁性層11および第2磁性層12の3層構造であるが、磁性層のみの1層構造、磁性層と絶縁層のみの2層構造、複数の磁性層及び絶縁層からなる4層以上の構造のいずれであってもよい。
【0028】
絶縁層61は、絶縁性を有し、主面が長方形の層状であり、絶縁層61の厚みは、例えば、10μm以上100μm以下である。絶縁層61は、例えば、低背化の観点からガラスクロスなどの基材を含まないエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂などの絶縁樹脂層であることが好ましいが、NiZn系やMnZn系などのフェライトのような磁性体や、アルミナ、ガラスのような非磁性体からなる焼結体層であってもよく、ガラスエポキシなどの基材を含む樹脂基板層であってもよい。なお、絶縁層61が焼結体層である場合は、絶縁層61の強度や平坦性を確保でき、絶縁層61上の積層物の加工性が向上する。また、絶縁層61が焼結体層である場合は、低背化の観点から研磨加工されていることが好ましく、特に積層物のない下側から研磨されていることが好ましい。
【0029】
第1磁性層11及び第2磁性層12は、高い透磁率を有し、主面が長方形の層状であり、樹脂135と、樹脂135に含有された金属磁性粉136とを含む。つまり、第1磁性層11及び第2磁性層12は、樹脂135および金属磁性粉136のコンポジット材料からなる。樹脂135は、例えば、エポキシ系樹脂やビスマレイミド、液晶ポリマ、ポリイミドなどからなる有機絶縁材料である。金属磁性粉136は、Feを含み、例えば、FeSiCrなどのFeSi系合金、FeCo系合金、NiFeなどのFe系合金、または、それらのアモルファス合金などの磁性を有する金属材料である。金属磁性粉136の平均粒径は、例えば0.1μm以上5μm以下である。インダクタ部品1の製造段階においては、金属磁性粉136の平均粒径を、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%に相当する粒径(いわゆるD50)として算出することができる。金属磁性粉136の含有率は、好ましくは、磁性層全体に対して、20Vol%以上70Vol%以下である。金属磁性粉136の平均粒径が5μm以下である場合、直流重畳特性がより向上し、微粉によって高周波での鉄損を低減できる。なお、金属磁性粉でなく、NiZn系やMnZn系などのフェライトの磁性粉を用いてもよい。
【0030】
第1インダクタ素子2A、第2インダクタ素子2Bは、素体10の第1主面10aと平行に配置された第1インダクタ配線21、第2インダクタ配線22を含む。これにより、第1インダクタ素子2Aおよび第2インダクタ素子2Bを第1主面10aと平行な方向で構成でき、インダクタ部品1の低背化を実現できる。第1インダクタ配線21と第2インダクタ配線22は、素体10内の同一平面上に配置されている。具体的に述べると、第1インダクタ配線21と第2インダクタ配線22は、絶縁層61の上方側、つまり、絶縁層61の上面61bにのみ形成され、第2磁性層12に覆われている。
【0031】
第1、第2インダクタ配線21,22は、平面状に巻回されている。具体的に述べると、第1、第2インダクタ配線21,22は、Z方向から見たときに、半楕円形の弧状である。すなわち、第1、第2インダクタ配線21,22は、約半周分巻回された曲線状の配線である。また、第1、第2インダクタ配線21,22は、中間部分で直線部を含んでいる。なお、本願において、インダクタ配線の「スパイラル」とは、渦巻形状を含む平面状に巻回された曲線形状を意味し、第1インダクタ配線21、第2インダクタ配線22のような1ターン以下の曲線形状も含み、また当該曲線形状は、部分的な直線部を含んでいてもよい。
【0032】
第1、第2インダクタ配線21,22の厚みは、例えば、40μm以上120μm以下であることが好ましい。第1、第2インダクタ配線21,22の実施例として、厚みが45μm、配線幅が40μm、配線間スペースが10μmである。配線間スペースは絶縁性の確保から、3μm以上20μm以下が好ましい。
【0033】
第1、第2インダクタ配線21,22は、導電性材料からなり、例えばCu、Ag,Auなどの低電気抵抗な金属材料からなる。本実施形態では、インダクタ部品1は、第1、第2インダクタ配線21,22を1層のみ備えており、インダクタ部品1の低背化を実現できる。なお、第1、第2インダクタ配線21,22は金属膜であってもよく、例えば、無電解めっき処理により形成されたCuやTiなどの下地層上に、CuやAgなどの導電層が形成された構造であってもよい。
【0034】
第1インダクタ配線21は、第1端、第2端がそれぞれ外側に位置する第1柱状配線31、第2柱状配線32に電気的に接続され、第1柱状配線31および第2柱状配線32からインダクタ部品1の中心側に向かって孤を描く曲線状である。また、第1インダクタ配線21は、その両端にスパイラル形状部分よりも線幅の大きいパッド部を有し、パッド部において、第1、第2柱状配線31,32と直接接続されている。
【0035】
同様に、第2インダクタ配線22は、第1端、第2端がそれぞれ外側に位置する第3柱状配線33、第4柱状配線34に電気的に接続され、第3柱状配線33および第4柱状配線34からインダクタ部品1の中心側に向かって孤を描く曲線状である。
【0036】
ここで、第1、第2インダクタ配線21,22のそれぞれにおいて、第1、第2インダクタ配線21,22が描く曲線と、第1、第2インダクタ配線21,22の両端を結んだ直線とに囲まれる範囲を内径部分とする。このとき、Z方向からみて、第1、第2インダクタ配線21,22について、その内径部分同士は重ならず、第1、第2インダクタ配線21,22は、互いに離隔している。
【0037】
第1、第2インダクタ配線21,22の第1から第4柱状配線31~34との接続位置からX方向に平行な方向であってインダクタ部品1の外側となる方向に向かってさらに配線が伸びており、この配線はインダクタ部品1の外側に露出している。つまり、第1、第2インダクタ配線21,22は、インダクタ部品1の積層方向に平行な側面(YZ平面に平行な面)から外部に露出している露出部200を有する。
【0038】
この配線は、インダクタ部品1の製造過程において、第1、第2インダクタ配線21,22の形状を形成後、追加で電解めっきを行う際の給電配線と接続される配線である。この給電配線によりインダクタ部品1を個片化する前のインダクタ基板状態において、追加で電解めっきを容易に行うことができ、配線間距離を狭くすることができる。また、追加で電解めっきを行うことで、第1、第2インダクタ配線21,22の配線間距離を狭くすることにより、第1、第2インダクタ配線21,22の磁気結合を高めたり、第1、第2インダクタ配線21,22の配線幅を大きくして電気抵抗を低減したり、インダクタ部品1の外形を小型化したりすることができる。
【0039】
また、第1、第2インダクタ配線21,22は、露出部200を有するので、インダクタ基板の加工時の静電気破壊耐性を確保できる。各インダクタ配線21,22において、露出部200の露出面200aの厚み(Z方向に沿った寸法)は、好ましくは、各インダクタ配線21,22の厚み(Z方向に沿った寸法)以下で、かつ、45μm以上である。露出面200aの厚みがインダクタ配線21,22の厚み以下であることにより、磁性層11,12の割合を増やすことができ、インダクタンスを向上できる。また、露出面200aの厚みが45μm以上であることにより、露出面200a付近の断線の発生を低減できる。露出面200aは、好ましくは、酸化膜である。これによれば、インダクタ部品1とその隣接部品との間でショートを抑制できる。
【0040】
第1から第4柱状配線31~34は、各インダクタ配線21,22からZ方向に延在し、第2磁性層12の内部を貫通している。第1柱状配線31は、第1インダクタ配線21の一端の上面から上側に延在し、第1柱状配線31の端面が、素体10の第1主面10aから露出する。第2柱状配線32は、第1インダクタ配線21の他端の上面から上側に延在し、第2柱状配線32の端面が、素体10の第1主面10aから露出する。第3柱状配線33は、第2インダクタ配線22の一端の上面から上側に延在し、第3柱状配線33の端面が、素体10の第1主面10aから露出する。第4柱状配線34は、第2インダクタ配線22の他端の上面から上側に延在し、第4柱状配線34の端面が、素体10の第1主面10aから露出する。
【0041】
したがって、第1柱状配線31、第2柱状配線32、第3柱状配線33、第4柱状配線34は、第1インダクタ素子2A、第2インダクタ素子2Bから上記第1主面10aから露出する端面まで、当該端面に直交する方向に直線状に伸びる。これにより、第1外部端子41、第2外部端子42、第3外部端子43、第4外部端子44と、第1インダクタ素子2A、第2インダクタ素子2Bとをより短い距離で接続することができ、インダクタ部品1の低抵抗化や高インダクタンス化を実現できる。第1から第4柱状配線31~34は、導電性材料からなり、例えば、インダクタ配線21,22と同様の材料からなる。
【0042】
第1から第4外部端子41~44は、素体10の第1主面10a上に配置されている。第1から第4外部端子41~44は、第2磁性層12(コンポジット体)の外面上に配置された金属膜である。第1外部端子41は、第1柱状配線31の素体10の第1主面10aから露出する端面に接触し、第1柱状配線31と電気的に接続されている。これにより、第1外部端子41は、第1インダクタ配線21の一端に電気的に接続される。第2外部端子42は、第2柱状配線32の素体10の第1主面10aから露出する端面に接触し、第2柱状配線32と電気的に接続されている。これにより、第2外部端子42は、第1インダクタ配線21の他端に電気的に接続される。
【0043】
同様に、第3外部端子43は、第3柱状配線33の端面に接触し、第3柱状配線33と電気的に接続されて、第2インダクタ配線22の一端に電気的に接続される。第4外部端子44は、第4柱状配線34の端面に接触し、第4柱状配線34と電気的に接続されて、第2インダクタ配線22の他端に電気的に接続される。
【0044】
インダクタ部品1では、第1主面10aは、長方形状の辺に相当する直線状に伸びる第1端縁101、第2端縁102を有する。第1端縁101、第2端縁102は、それぞれ素体10の第1側面10b、第2側面10cに続く第1主面10aの端縁である。第1外部端子41と第3外部端子43は、素体10の第1側面10b側の第1端縁101に沿って配列され、第2外部端子42と第4外部端子44は、素体10の第2側面10c側の第2端縁102に沿って配列されている。なお、素体10の第1主面10aに直交する方向からみて、素体10の第1側面10b,第2側面10cは、Y方向に沿った面であり、第1端縁101、第2端縁102と一致する。第1外部端子41と第3外部端子43の配列方向は、第1外部端子41の中心と第3外部端子43の中心を結ぶ方向とし、第2外部端子42と第4外部端子44の配列方向は、第2外部端子42の中心と第4外部端子44の中心を結ぶ方向とする。
【0045】
絶縁膜50は、素体10の第1主面10aにおける第1から第4外部端子41~44が設けられていない部分上に設けられている。ただし、絶縁膜50は第1から第4外部端子41~44の端部が乗り上げることで、第1から第4外部端子41~44とZ方向に重なっていてもよい。絶縁膜50は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド等の電気絶縁性が高い樹脂材料から構成される。これにより、第1から第4外部端子41~44の間の絶縁性を向上できる。また、絶縁膜50が第1から第4外部端子41~44のパターン形成時のマスク代わりとなり、製造効率が向上する。また、絶縁膜50は、樹脂135から金属磁性粉136が露出していた場合に、当該露出する金属磁性粉136を覆うことで、金属磁性粉136の外部への露出を防止することができる。なお、絶縁膜50は、シリカや硫酸バリウムなどの絶縁材料からなるフィラーを含有してもよい。
【0046】
図2に示すように、第1外部端子41は、第2磁性層12上に形成され、樹脂135および金属磁性粉136に接触する金属膜410と、金属膜410上を覆う親はんだ層411を有する2層の多層金属膜である。第2、第3、第4外部端子42,43,44の構成は、第1外部端子41の構成と同じであるため、以下、第1外部端子41のみについて説明する。
【0047】
金属膜410は、主としてNiを含む。これによれば、金属磁性粉136はFeを含み、金属膜410は主としてNiを含むので、金属膜410の線膨張係数を金属磁性粉136の線膨張係数に近づけることができ、熱負荷時に金属磁性粉136と金属膜410の固着力が低下することを抑制することができる。具体的に述べると、Feの線膨張係数は、11.7[×10-6/K]であり、Niの線膨張係数は、13.3[×10-6/K]であり、Cuの線膨張係数は、17.7[×10-6/K]であるため、Niを含む金属膜の線膨張係数は、Cuを含む金属膜の線膨張係数よりも、Feを含む金属磁性粉の線膨張係数に近い。また、金属磁性粉136のFeと金属膜410のNiは、イオン化傾向が近いため、FeとNiの置換反応が生じ難く、置換反応に伴う、金属磁性粉136と金属膜410の固着力の低下を抑制できる。また、FeとNiの置換反応が生じ難いので、金属磁性粉136の減少を抑制して、L値などの特性の低減を抑制できる。
【0048】
したがって、金属磁性粉136と金属膜410の固着信頼性を向上できる。そして、外部端子の剥離を低減したインダクタ部品1を提供できる。
【0049】
このように、本願では、金属磁性粉のFeと金属膜のNiは、イオン化傾向が近く、FeとNiの置換反応が進み難い。これに対して、従来技術のように、金属磁性粉にFeを、金属膜にCuを用いた場合、FeとCuのイオン化傾向が離れており、FeとCuの置換反応が進んでしまう。したがって、本願の思想は、従来技術の思想と全く異なるものである。従来技術では、金属膜のCuは、金属磁性粉のFeとの置換反応により形成されるので、置換反応では、金属磁性粉と金属膜の固着力は小さい。また、従来技術では、FeとCuが置換反応するので、金属磁性粉が減少して、L値などの特性が低減するおそれがある。
【0050】
好ましくは、金属膜410は、無電解めっき処理により形成される。これによれば、金属膜410が電解めっき処理により形成される場合に比べて、外部端子の形状を自由に形成できる。
【0051】
好ましくは、金属膜410は、アモルファスである。これによれば、金属膜410が結晶構造である場合に比べて、金属膜410の表面を平坦に形成でき、また、金属膜の厚みを薄くできる。
【0052】
好ましくは、金属膜410は、Pを含む。これによれば、金属膜410の耐食性が向上する。また、Pは、後述するように、金属膜410を無電解めっき処理により形成する際に用いられる還元剤の次亜リン酸ナトリウムに由来するものであり、これを含むことにより、Feとの置換反応なしにNiが析出開始されるため、金属磁性粉と金属膜の固着力をさらに向上できる。
好ましくは、金属膜410に対するPの含有率は、1wt%以上13wt%以下である。金属膜410に対するPの含有率が1wt%以上であることにより、金属膜410の耐食性および固着力の向上の効果を確実に得ることができる。また、金属膜410に対するPの含有率が13wt%以下であることにより、金属膜410が成膜時に良好に伸び、金属膜410の成膜性が向上する。
【0053】
ここで、金属膜410を無電解めっき処理で形成する際、例えば、還元剤として次亜リン酸ナトリウムを用い、Niのめっき液に素体(コンポジット体)を浸漬すると、金属膜としての無電解Niめっきを形成できる。次亜リン酸ナトリウムは、金属磁性粉のFeに対して活性があるため、Niは、Feとの置換反応なしに、析出が開始される。つまり、Niは、自己触媒型還元めっき処理により形成される。これにより、NiとFeの固着力を高くできる。この際、金属膜には、Pが共析する。
【0054】
好ましくは、金属膜(外部端子)は、Feを含む。これによれば、金属膜の線膨張係数を金属磁性粉の線膨張係数により近づけることができ、熱負荷時に金属磁性粉と金属膜の固着力が低下することをさらに抑制することができる。ここで、金属膜にFeを含める場合、例えば、めっき液にFeを含めて金属膜をめっき処理により形成する。これにより、金属磁性粉がめっき液に溶けにくくなり、金属磁性粉の減少を抑制できる。
親はんだ層411は、金属膜410上を覆い、第1外部端子41の最外層を構成する。親はんだ層411は、例えばAuやSnなど、はんだの濡れ性が高い材料を含む。なお、従来技術の外部端子では、最下層に導電性の高いCu層やAg層を形成し、その上に、Ni層などの金属膜、AuやSnなどの親はんだ層を形成する3層構造となるが、第1外部端子41では、上記のとおり金属膜410と親はんだ層411の2層構造であるため、外部端子の薄型化や、低電気抵抗化を実現することができる。
【0055】
(製造方法)
次に、インダクタ部品1の製造方法について説明する。
【0056】
図3Aに示すように、複数のインダクタ配線21,22と複数の柱状配線31~34を素体10により覆った状態において、素体10の上面を研磨などによって研削加工し、柱状配線31~34の端面を素体10の上面から露出させる。その後、図3Bに示すように、素体10の上面全体に、スピンコートやスクリーン印刷などの塗布法、ドライフィルムレジスト貼付などの乾式法などにより、ハッチングにて示す絶縁膜50を形成する。絶縁膜50は例えば感光性レジストである。
【0057】
その後、外部端子を形成する領域において、フォトリソグラフィやレーザ、ドリル、ブラストなどにより、絶縁膜50を除去することにより、柱状配線31~34の端面および素体10(第2磁性層12)の一部が露出する貫通孔50aを絶縁膜50に形成する。この際、図3Bに示すように、貫通孔50aからは柱状配線31~34の端面全体を露出させてもよいし、柱状配線31~34の端面の一部を露出させてもよい。また、1つの貫通孔50aから、複数の柱状配線31~34の端面を露出させてもよい。
【0058】
その後、図3Cに示すように、貫通孔50a内に、金属膜410を後述の方法により形成し、さらに、金属膜410上にハッチングにて示す親はんだ層411を形成して、マザー基板100を構成する。金属膜410および親はんだ層411は、切断前の外部端子41~44を構成する。その後、図3Dに示すように、マザー基板100、すなわち封止された複数のインダクタ配線21,22を、ダイシングブレードなどを用いてカット線Cにて2つのインダクタ配線21,22ごとに個片化して、複数のインダクタ部品1を製造する。金属膜410および親はんだ層411は、カット線Cにて切断されて、外部端子41~44を形成する。なお、外部端子41~44の製造方法は上記のように金属膜410および親はんだ層411を切断する方法であってもよいし、あらかじめ貫通孔50aを外部端子41~44の形状となるように絶縁膜50を除去した上で金属膜410および親はんだ層411を形成する方法であってもよい。
【0059】
(金属膜410の製造方法)
前述の金属膜410の製造方法について説明する。
【0060】
前述のとおり、絶縁膜50に貫通孔50aを形成した状態では、貫通孔50aからは、柱状配線31~34の端面および素体10が露出している。この貫通孔50aから露出する柱状配線31~34の端面および素体10の上面に対して、無電解めっき処理により、素体10に接触し導電性を有する金属膜410として、Ni層を形成する。
【0061】
具体的に述べると、主としてNiを含む金属膜410を、自己触媒型還元めっき処理により、Feを含む金属磁性粉136に析出させる。例えば、次亜リン酸ナトリウムの還元剤を用い、Niめっき液に素体10を浸漬して、第2磁性層12(コンポジット体)上に無電解Niめっきの金属膜410を形成する。金属膜410は、第2磁性層12の樹脂135および金属磁性粉136に接触する。
【0062】
柱状配線(Cu)31~34上に金属膜410を形成するには、例えば、金属磁性粉136に析出した金属膜410を成長させて柱状配線31~34上に伸びるようにしてもよい。または、柱状配線31~34上に触媒層としてPd層を形成し、触媒層上に無電解めっき処理により金属膜410を形成するようにしてもよい。
【0063】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
【0064】
前記実施形態では、素体内には第1インダクタ素子および第2インダクタ素子の2つが配置されたが、3つ以上のインダクタ素子が配置されてもよく、このとき、外部端子および柱状配線は、それぞれ、6つ以上となる。
【0065】
前記実施形態では、インダクタ素子が有するインダクタ配線のターン数は、1周未満であるが、インダクタ配線のターン数が、1周を超える曲線であってもよい。また、インダクタ素子が有するインダクタ配線の総数は、1層に限られず、2層以上の多層構成であってもよい。また、第1インダクタ素子の第1インダクタ配線と第2インダクタ素子の第2インダクタ配線は第1主面と平行な同一平面に配置される構成に限られず、第1インダクタ配線と第2インダクタ配線が第1主面と直交する方向に配列された構成であってもよい。
【0066】
また、「インダクタ配線」とは、電流が流れた場合に磁性層に磁束を発生させることによって、インダクタ部品にインダクタンスを付与させるものであって、その構造、形状、材料などに特に限定はない。例えば、ミアンダ配線などの公知の様々な配線形状を用いることができる。
【0067】
前記実施形態では、金属膜は、インダクタ部品の外部端子として適用しているが、これに限られず、例えば金属膜がインダクタ部品の内部電極であってもよい。また、金属膜は、インダクタ部品に限られず、コンデンサ部品や抵抗部品などの他の電子部品に適用してもよく、これらの電子部品を搭載する回路基板に適用してもよい。例えば、金属膜として、回路基板の配線パターンであってもよい。
【0068】
前記実施形態では、金属膜を、外部端子に用いているが、インダクタ配線に用いてもよい。すなわち、コンポジット体を基板代わりとして、コンポジット体上に金属膜として、無電解めっき処理を用いてインダクタ配線を形成してもよい。これにより、インダクタ配線として前述の効果を有する金属膜を得ることができ、前述の効果のとおりに金属膜を形成することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 インダクタ部品(電子部品)
2A 第1インダクタ素子
2B 第2インダクタ素子
10 素体
101 第1端縁
102 第2端縁
10a 第1主面
10b 第1側面
10c 第2側面
11 第1磁性層(コンポジット体)
12 第2磁性層(コンポジット体)
21 第1インダクタ配線
22 第2インダクタ配線
31 第1柱状配線
32 第2柱状配線
33 第3柱状配線
34 第4柱状配線
41 第1外部端子
410 金属膜
411 親はんだ層
42 第2外部端子
43 第3外部端子
44 第4外部端子
50 絶縁膜
61 絶縁層
100 マザー基板
135 樹脂
136 金属磁性粉
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D