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  • 特許-鋼材の清浄度評価方法 図1
  • 特許-鋼材の清浄度評価方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】鋼材の清浄度評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
G01N29/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019186330
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021060373
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-07-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】土信田 知樹
(72)【発明者】
【氏名】内田 啓之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 翔
(72)【発明者】
【氏名】飛鷹 秀幸
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-177684(JP,A)
【文献】特開2004-144289(JP,A)
【文献】特開2006-349698(JP,A)
【文献】特開2012-181112(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0048576(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材の中心を0%、表面を100%とした径方向位置において、前記鋼材の90%以上100%以下の範囲の少なくとも一部を探傷するよう、超音波探傷を行い、
前記超音波探傷により得られる、前記鋼材中の介在物の寸法と個数とに基づいて清浄度を評価し、
前記超音波探傷を行う際に、探傷される前記鋼材の評価体積を100000mm以上とし、
前記鋼材は、直径が42mm以上82mm以下の丸棒である、鋼材の評価方法。
【請求項2】
前記超音波探傷を行う際に、前記超音波の周波数を30MHz以上70MHz以下とする、請求項1に記載の鋼材の清浄度評価方法。
【請求項3】
前記鋼材は、転がり軸受、ボールねじ、リニアガイド、トラクションドライブ変速機、又は電動ブレーキに使用される鋼材である、請求項1又は2に記載の鋼材の清浄度評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材の清浄度評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、軸受用鋼等の転がり疲れが発生する用途に使用される鋼の転動疲労寿命は、鋼中の非金属介在物の量、特に、酸化物系介在物の量と強い相関関係があることが知られている。そのため、鋼中の非金属介在物の量は、JIS法(JIS-G0555)や、ASTM(アメリ力材料試験協会):E45法で測定され、その結果を製鋼工程にフィードバックすることによって、一定の品質の鋼、あるいは、より高品質の鋼が製造されていた。
【0003】
また、鋼中の酸化物系介在物の量は、当然、鋼の酸素含有量と強い相関があることから、軸受用鋼等の清浄度が要求される鋼の製造は、鋼中酸素含有量の低減のために、溶鋼脱ガスや真空精錬、取鍋精錬等の清浄度向上に効果のある種々の製鋼方法が採用されている。
ここで、近年の製鋼技術の発達により、鋼の酸素含有量を極力減らすことが可能となったが、鋼の酸素含有量が低レベルになると、鋼中の非金属介在物は非常に少なく、且つ小さくなり、そのため、上記のJIS法やASTM法では検出限界に近い領域での測定となり、清浄度レベルの評価としては妥当ではない場合も見受けられるようになった。
【0004】
また、JIS法やASTM法よりも測定精度が高く、数十μmの小さな介在物を評価する方法として、極値統計法が採用されている。極値統計法は、現時点で一般的な評価方法であり、その評価方法は、単位面積100~200mm程度でサンプル数15~30個を観察し、サンプル毎で最大の介在物径を記録し、統計学により想定面積中に存在する最大介在物径を推測するというものである。
【0005】
しかし、極値統計法は、ある一定の面積を評価し、想定面積中に存在する最大介在物径を予想するという統計学を利用した評価手法であるため、サンプルの準備はもちろん、評価及び解析にも非常に多大な時間とロードがかかるという問題点があった。
これらのJIS法やASTM法、極値統計法等の従来の清浄度の評価方法における問題点に対して、測定精度が高く、短時間で行うことができる清浄度の評価方法として、超音波探傷によって鋼の清浄度を評価する方法が行われている。例えば、特許文献1には、超音波探傷法による鋼材の清浄度の評価方法として、周波数25MHz~100MHzの超音波を鋼材へ送波し,鋼材の表面から所定深さまでの表層部分に含まれる直径20μm以上の介在物の個数を測定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-177684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の方法の場合、鋼材の径方向の位置について、鋼材の中心を0%、表面を100%としたときに、50%以上の位置を探傷している。しかし、探傷する径方向の位置が上記の50%以上の位置であると、鋼材の直径や材質によっては表面近くの位置での超音波透過量と50%近くの位置での超音波透過量の差が大きく、50%近くの位置では検出できる最小介在物寸法が大きくなり、清浄度の信頼性が低下する恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、超音波探傷法による鋼材の清浄度評価方法において、信頼性の高いデータを迅速に取得することができる、鋼材の清浄度評価方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば鋼材の中心を0%、表面を100%とした径方向位置において、上記鋼材の90%以上100%以下の範囲の少なくとも一部を探傷するよう、超音波探傷を行い、上記超音波探傷により得られる、上記鋼材中の介在物の寸法と個数とに基づいて清浄度を評価し、上記超音波探傷を行う際に、探傷される上記鋼材の評価体積を100000mm 3 以上とする、鋼材の評価方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、超音波探傷法による鋼材の清浄度評価方法において、信頼性の高いデータを迅速に取得することができる、鋼材の清浄度評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態における超音波探傷検査装置の構成を示す模式図である。
図2】実施例1における径方向位置と清浄度指数との関係を示すグラフである。
図3】実施例2における各評価体積に対する介在物個数比を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するように、本発明の実施形態を例示して多くの特定の細部について説明する。しかしながら、かかる特定の細部の説明がなくても1つ以上の実施態様が実施できることは明らかである。また、図面は、簡潔にするために、周知の構造及び装置が略図で示されている。
【0013】
<鋼材の清浄度評価方法>
図1に、本発明に一実施形態に係る鋼材の清浄度評価方法に用いる超音波探傷検査装置1の概略構成図を示す。超音波探傷検査装置1は、鋼材である丸棒2の清浄度を評価する装置であり、図1に示すように、探触子11と、水槽12と、3個のモータ13~15と、モータコントローラ16と、探傷器17と、演算部18と、チャック装置19とを備える。介在物が評価される鋼材は、本実施形態では軸受鋼であるが、非金属介在物が起因して不具合が発生する鋼材(例えば、肌焼鋼等の高清浄度鋼)であれば特に限定されない。なお、本発明に適する製品としては、例えば、転がり軸受や、ボールねじ、リニアガイド、トラクションドライブ変速機、電動ブレーキ等を対象とすることができる。
【0014】
探触子11は、焦点型の超音波探触子であり、超音波を発信し、反射したエコーを検出することで丸棒2を探傷する。また、本実施形態における超音波探傷法では、垂直探傷法が用いられ、探触子11は、水槽12内の丸棒2の中心線の直上に設けられ、超音波の発信方向が鉛直方向下方に設定される。
水槽12は、超音波伝達媒体である水を貯留する。なお、探触子11は、水槽12内の水の中に設けられる。
【0015】
3個のモータ13~15は、モータコントローラ16の制御信号を受けて探触子11をx軸、y軸及びz軸に平行な方向にそれぞれ移動される。なお、x軸、y軸及びz軸は、それぞれ直交する軸であり、x軸方向及びy軸方向が水平方向に平行な方向であり、z軸方向が鉛直方向に平行な方向である。また、y軸方向は、丸棒2の長手方向に平行な方向である。
【0016】
モータコントローラ16は、演算部18への入力で作動が制御され、3個のモータ13~15の回転方向や回転速度、回転角を制御することにより、を制御する装置であり、探触子11と丸棒2との位置関係を制御する。
探傷器17は、探触子11に接続され、探触子11の探傷周波数、反射エコー及び反射エコーの強度から検出される介在物の大きさをモニターし、それらの測定結果を演算部18に記憶する。
【0017】
演算部18は、演算処理機能を有するパソコン等のコンピュータシステムであり、ROM、RAM、CPU等を備えて構成され、ROM等に予め記憶された各種専用のプログラムを実行することにより、後述する各機能をソフトウェア上で実現する。また、演算部18は、探傷器17で算出された測定結果を記憶する。
チャック装置19は、丸棒2を固定する工具であり、丸棒2の長手方向の両端を固定する。また、チャック装置19は、不図示の回転駆動装置の駆動力を受けて回転することで、中心線を中心に丸棒2を回転させることができる。なお、チャック装置19の回転の制御は、モータコントローラ16によって行われてもよい。
【0018】
本実施形態に係る清浄度評価方法では、チャック装置19を用いて丸棒2を一定方向に回転させると共に、探触子11で丸棒2を超音波探傷する。丸棒2は、圧延されたままの状態のものでもよいが、圧延後に熱処理をし、表面を旋削して研磨したものであることが好ましい。旋削及び研磨による丸棒2の表面の削り代は、特に限定されないが、厚さで1mm(直径換算で2mm)としてもよい。
【0019】
超音波探傷では、探触子11から発信される超音波の周波数を30MHz以上70MHz以下とすることが好ましい。超音波探傷の周波数をこのような範囲とすることで、最小寸法が30μm程度となる介在物を検出することができる。また、超音波の周波数を高くするとより小さい介在物を検出することができるようになるが、同時に超音波の減衰が大きくなるため、評価体積当たりの測定時間が長くなってしまう。周波数を低くすると、超音波の減衰が小さくなるため、測定時間に関しては有利であるが、検出できる介在物の最小寸法が大きくなり、清浄度の評価を誤る恐れがある。すなわち、大きい介在物ほど評価体積当たりの存在数が少なくなるため、大きな介在物しか検出できない場合、あるいは、大きな介在物のみを測定対象とした場合は、評価体積を大きくしないと、大きな介在物が存在しているにもかかわらず、介在物を見逃してしまう恐れがある。評価体積との兼ね合いもあるが、上記周波数範囲を用いれば、適当な測定時間で適正な清浄度評価ができる。更に好ましくは、超音波の周波数を、40MHz以上60MHz以下とし、より好ましくは50MHzとする。
【0020】
なお、介在物の寸法は、介在物の大きさを表す指標であればよく、介在物の直径であっってもよい。また、介在物の寸法は、介在物の直径に限らず、√area等の他の指標であってもよい。つまり、本実施形態に係る鋼材の評価方法においては、後述するように、介在物の大きさを表す指標である介在物の寸法と、介在物の個数とに基づいて清浄度が評価される。また、介在物の最小寸法についても、介在物の最小直径に限らず、√area等の他の指標の最小値が用いられてもよい。
【0021】
また、本実施形態では、丸棒2を回転させながら超音波探傷を行うことで、丸棒2の表面から特定の深さの範囲を、周方向に連続して測定する。この際、超音波探傷が行われる丸棒2の特定の深さの範囲を、径方向位置で90%以上100%以下とする。径方向位置は、丸棒2の長手方向に直交する断面において、丸棒2の中心を0%、丸棒2の表面を100%とした場合の、丸棒2の半径方向での位置を示す。なお、この範囲において、全ての範囲で超音波探傷が行われてもよく、一部の範囲で超音波探傷が行われてもよい。つまり、径方向位置において、90%以上100%以下の範囲の少なくとも一部の範囲で超音波探傷が行われる。丸棒2の径方向位置が90%以上100%以下の範囲では、鋼材の清浄度の差が顕著に表れることとなる。このため、この範囲を探傷することで、信頼性の高い清浄度のデータを取得することができる。
【0022】
さらに、超音波探傷では、丸棒2の超音波探傷する体積である評価体積を、60000mm以上とし、好ましくは100000mm以上とする。評価体積は、丸棒2を回転させながら連続して行われる超音波探傷にて、丸棒2の探傷される領域の体積である。評価体積が60000mm未満の場合、清浄度である非金属介在物の個数のばらつきが大きくなることから、精度よく清浄度を評価することができない。このため、評価体積を60000mm以上とすることで精度よく清浄度を評価することができ、評価体積を100000mm以上とすることでより高い精度で清浄度を評価することができる。また、評価体積の上限は特に限定されないが、200000mmとすることが好ましい。評価体積が200000mm超となる場合、探傷に要する時間が長くなる上、評価体積を100000mm以上200000mm以下とする場合に比べて清浄度の評価精度に大きな差がない。
【0023】
さらに、超音波探傷では、探触子11により反射エコーの強度などの探傷結果が探傷器17へと送られる。探傷器17での探傷結果は、演算部18に記録され、検出された介在物の寸法を算出する。つまり、演算部18には、評価体積に含まれる介在物の寸法と個数とが記録される。なお、超音波の周波数を30MHz以上70MHzとすることで、検出される最小寸法が30μm程度以上の介在物の個数と寸法が結果として記録されることとなる。
【0024】
超音波探傷が終了した後、演算部18は、探傷結果から、清浄度評価指標である清浄度指数を算出することで清浄度を評価する。清浄度は軸受寿命と強い相関があるべきであるが、寿命と相関のある清浄度パラメーターとして介在物寸法と介在物個数が主因子として挙げられる。よって、清浄度指数は、介在物の寸法と個数とを用いて算出される指標である。清浄度指数の算出方法は、特に限定されず、用途や鋼材の種類に応じて適設定されてもよい。例えば、清浄度指数は、高くなるほど清浄度が悪いものとして設定され、寸法の大きな介在物が多くなるほど高くなるように設定されてもよい。また、例えば、清浄度指数としては、検出される介在物の寸法から極値統計法において用いられる介在物の面積の平方根√areaを算出し、この√areaが所定値以上となる介在物の大きさと個数とから決定される指数が用いられてもよい。
【0025】
<変形例>
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態とともに種々の変形例を含む本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲に記載された発明の実施形態には、本明細書に記載したこれらの変形例を単独または組み合わせて含む実施形態も網羅すると解すべきである。
【0026】
例えば、上記実施形態では、清浄度が評価される鋼材は丸棒2であるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。鋼材は、角形の棒鋼や板材であってもよい。
また、上記実施形態では、超音波探傷検査装置1として、図1に示す構成のものを用いるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。超音波探傷検査装置は、鋼材の表層を上記の条件で超音波探傷可能なものであれば、他の構成であってもよい。
【0027】
<実施形態の効果>
(1)本発明の一態様に係る鋼材の清浄度評価方法は、鋼材(例えば、丸棒2)の中心を0%、表面を100%とした径方向位置において、鋼材の90%以上100%以下の範囲の少なくとも一部を探傷するよう、超音波探傷を行い、超音波探傷により得られる、鋼材中の介在物の寸法と個数とに基づいて清浄度を評価する。
上記(1)の構成によれば、信頼性の高い清浄度のデータを迅速に取得することができる。なお、超音波探傷は、一例として、鋼材と探触子11とを超音波伝達媒体中に配し、探触子11から超音波を鋼材に発信することで行われる。
【0028】
(2)上記(1)の構成において、超音波探傷を行う際に、探傷される鋼材の評価体積を60000mm以上とする。
(3)上記(2)の構成において、評価体積を100000mm以上とする。
上記(2),(3)の構成によれば、より高い精度で清浄度を評価することができる。
(4)上記(1)~(3)のいずれかの構成において、超音波探傷を行う際に、超音波の周波数を30MHz以上70MHz以下とする。
上記(4)の構成によれば、最小寸法が30μm程度となる介在物を検出することができる。
(5)上記(1)~(4)のいずれかの構成において、鋼材は転がり軸受、ボールねじ、リニアガイド、トラクションドライブ変速機、又は電動ブレーキに使用される鋼材である。
【実施例1】
【0029】
次に、本発明者らが行った実施例1について説明する。実施例1では、径と清浄度の異なる5本の丸棒2のサンプルについて、複数の径方向位置での清浄度を測定することで、清浄度と径方向位置との関係を調べた。実施例1の調査では、上記実施形態と同様な方法で丸棒2を超音波探傷し、焦点型探触子は周波数50MHz、振動子径3mm、水中焦点距離12.5mmの探触子を用いた。超音波探傷をする際、圧延直後の丸棒2に対して、探傷する丸棒2の表面が径方向位置で90%付近、70%付近、50%付近、30%付近となるように徐々に丸棒2を研削し、それぞれ研削した後に、上記範囲について超音波探傷を行った。本実施例では、介在物からのエコー強度などの探傷結果から√areaを推定し、その√areaが50μm以上の介在物の個数と寸法から清浄度指数を算出した。
【0030】
図2に実施例1の結果として、丸棒2の径方向位置と清浄度指数との関係を示す。また、表1に各サンプルにおける、圧延まま材直径及び探傷位置を示す。なお、探傷位置は、圧延直後の丸棒2に対する探傷する径方向位置を示す。また、清浄度指数は、介在物の個数が多くなるほど高くなり、介在物の寸法が大きくなるほど高くなるように設定される。
【0031】
図2に示すように、鋼材の中心寄り部分で清浄度が悪く(30%位置)、半径中心位置(50%位置)部分では良くなり、鋼材表面部分で悪くなる(90~100%位置)ことが確認できた。このことは、清浄度が悪いサンプルと良いサンプルの差が、鋼材表面での顕著であり、半径中心位置(50%位置)では差が出にくいということを示している。したがって、鋼材のうちで鋼材表面からこの鋼材の径方向位置で10%深さの範囲(図1の90~100%の範囲)に含まれる介在物を評価することで、鋼材の清浄度を高い信頼性で評価できることが確認できた。また、清浄度の序列は鋼材内部で大きく変わらないことから中心部から90%位置までの測定は省略できる。
【0032】
【表1】
【実施例2】
【0033】
次に、本発明者らが行った実施例2について説明する。実施例2では、直径と清浄度の異なる3本の丸棒2のサンプルについて、評価体積を変えて同体積当たりの介在物個数を測定することで、評価体積と測定精度との関係を調べた。実施例2では、上記実施形態と同様な方法で丸棒2を超音波探傷し、異なる評価体積で実施例1と同様の手法で算出した√areaが50μm以上の介在物の一定体積当たりの個数を複数回測定した。そして、各評価体積における介在物個数のばらつきを求めることで、測定精度を調査した。
【0034】
図3に実施例2の結果として、各評価体積における介在物個数比を示す。図3の縦軸に示す介在物個数比は、測定される介在物の一定体積当たりの個数について、各サンプルそれぞれの最も評価体積が大きいときの個数を1とした際の、各評価体積の個数の比を示すものである。介在物個数比が1以上のプロットは、同評価体積における介在物個数比のバラツキの最大値、1以下のプロットは同評価体積におけるバラツキの最小値を示している。また、表2には、各サンプルにおける、圧延まま材直径及び評価体積(図3の横軸の評価体積の数値)を示す。
【0035】
【表2】
【0036】
評価体積が小さいときには検出された介在物個数の比がばらついているが、評価体積が多くなるにつれて介在物個数比が安定することが確認できた。特に、評価体積が60000mm以上の領域ではバラツキが顕著に小さくなり、評価体積が100000mm以上の領域ではほぼ一定となることが確認できた。このことから、上記施形態のように、評価体積を60000mm以上、好ましくは100000mm以上とすることで、精度よく迅速に清浄度を評価できることが確認できた。
【符号の説明】
【0037】
1 超音波探傷検査装置
11 探触子
12 水槽
13~15 モータ
16 モータコントローラ
17 探傷器
18 演算部
19 チャック装置
2 丸棒
図1
図2
図3