(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】三次元積層造形用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
B29C 64/112 20170101AFI20220621BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20220621BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20220621BHJP
C08F 279/02 20060101ALI20220621BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220621BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B29C64/112
B33Y70/00
B33Y80/00
C08F279/02
C08F290/06
C08F290/14
(21)【出願番号】P 2019536743
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2018029529
(87)【国際公開番号】W WO2019035387
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2017156793
(32)【優先日】2017-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】吉永 尚生
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】正尾 菜実
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-113518(JP,A)
【文献】特開2016-186327(JP,A)
【文献】特表2017-536265(JP,A)
【文献】特表2018-528107(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154335(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
C08F 2/44
C08F 279/02
C08F 290/06
C08F 290/14
C08L 21/00
C08L 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状ゴムと、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと、モノマーとを含み、
前記アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと前記モノマーの合計含有量が、前記液状ゴム100質量部に対して、30質量部以上であ
り、
前記液状ゴムの含有量が、30質量%以上である、三次元積層造形用ゴム組成物。
【請求項2】
前記アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーは、2官能から6官能である、請求項1に記載の三次元積層造形用ゴム組成物。
【請求項3】
前記モノマーは、単官能モノマーである、請求項1または2に記載の三次元積層造形用ゴム組成物。
【請求項4】
フィラーをさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の三次元積層造形用ゴム組成物。
【請求項5】
温度35℃、相対湿度50%の環境下で、振り角1%、周波数1HzにてE型粘度計を用いて測定された粘度が、1000Pa・s以下である、請求項1~4のいずれかに記載の三次元積層造形用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれかに記載の三次元積層造形用ゴム組成物の硬化物である、ゴム成形体。
【請求項7】
破断応力(MPa)の値と破断伸び率(%)の値との積である破壊エネルギーが、400以上である、請求項
6に記載のゴム成形体。
【請求項8】
破断応力が、2.0MPa以上である、請求項
6又は
7に記載のゴム成形体。
【請求項9】
破断伸び率が、90%以上である、請求項
6~
8のいずれかに記載のゴム成形体。
【請求項10】
ショアA硬度が、35~90の範囲内にある、請求項
6~
9のいずれかに記載のゴム成形体。
【請求項11】
圧縮永久歪み(24時間)が、25%以下である、請求項
6~
10のいずれかに記載のゴム成形体。
【請求項12】
請求項1~
5のいずれかに記載の三次元積層造形用ゴム組成物を積層する積層工程と、
前記積層された三次元積層造形用ゴム組成物を硬化させる硬化工程と、
を備える、ゴム成形体の製造方法。
【請求項13】
液状ゴムと、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと、モノマーとを含み、
前記アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと前記モノマーの合計含有量が、前記液状ゴム100質量部に対して、30質量部以上であ
り、
前記液状ゴムの含有量が、30質量%以上であるゴム組成物の、三次元積層造形への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元積層造形用ゴム組成物、当該組成物を硬化させてなるゴム成形体、及び当該組成物を用いたゴム成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元構造物の設計データに基づいて、樹脂を積層及び硬化させて三次元構造物を製造する三次元積層造形装置(いわゆる、3Dプリンタ)が実用化されている。このような三次元積層造形装置としては、インクジェット方式、レーザー光の照射により光硬化性樹脂を硬化させる方式、ABS樹脂等の溶融積層を行う方式など多数の方式が知られている。
【0003】
例えば、インクジェット方式では、光硬化性液状樹脂組成物の微小液滴をノズルから所定の形状パターンを描画するように吐出し、紫外線を照射して硬化薄膜を形成し、これを繰り返して積層することにより、三次元構造物を製造する。また、例えば、溶融積層方式では、固形のABS樹脂などを熱溶融させ、ノズルから滴下させることにより、所定の形状パターンを描画し、冷却することで流動性を低下させる工程を繰り返して積層することによって、三次元構造物を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、三次元積層造形装置によって製造される三次元構造物としては、樹脂製のものが一般に知られている。一方、ゴムは、樹脂に比して弾性率の温度依存性が低く、永久圧縮歪みも小さいことから、ゴム製の三次元構造物(ゴム成形体)が製造できれば、樹脂製や金属製の三次元構造物とは異なる用途への使用が期待できる。
【0006】
このような状況下、本発明は、三次元積層造形装置によってゴム成形体を好適に製造することができ、さらに、得られるゴム成形体が高い機械的強度と優れた伸びを両立する、三次元積層造形用ゴム組成物を提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、三次元積層造形用ゴム組成物を硬化させてなるゴム成形体、及び当該組成物を用いたゴム成形体の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討を重ねた。その結果、液状ゴムと、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと、モノマーとを含み、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーとモノマーの合計含有量が、液状ゴム100質量部に対して30質量部以上である三次元積層造形用ゴム組成物を、三次元積層造形法に用いることにより、好適にゴム成形体が得られ、さらに、当該ゴム成形体は、高い機械的強度と優れた伸びを両立することを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 液状ゴムと、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと、モノマーとを含み、
前記アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと前記モノマーの合計含有量が、前記液状ゴム100質量部に対して、30質量部以上である、三次元積層造形用ゴム組成物。
項2. 前記アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーは、2官能から6官能である、項1に記載の三次元積層造形用ゴム組成物。
項3. 前記モノマーは、単官能モノマーである、項1または2に記載の三次元積層造形用ゴム組成物。
項4. フィラーをさらに含む、項1~3のいずれかに記載の三次元積層造形用ゴム組成物。
項5. 前記液状ゴムの含有量が、30質量%以上である、項1~3のいずれかに記載の三次元積層造形用ゴム組成物。
項6. 温度35℃、相対湿度50%の環境下で、振り角1%、周波数1HzにてE型粘度計を用いて測定された粘度が、1000Pa・s以下である、項1~4のいずれかに記載の三次元積層造形用ゴム組成物。
項7. 項1~6のいずれかに記載の三次元積層造形用ゴム組成物の硬化物である、ゴム成形体。
項8. 破断応力(MPa)の値と破断伸び率(%)の値との積である破壊エネルギーが、400以上である、項7に記載のゴム成形体。
項9. 破断応力が、2.0MPa以上である、項7又は8に記載のゴム成形体。
項10. 破断伸び率が、90%以上である、項7~9のいずれかに記載のゴム成形体。項11. ショアA硬度が、35~90の範囲内にある、項7~10のいずれかに記載のゴム成形体。
項12. 圧縮永久歪み(24時間)が、25%以下である、項7~11のいずれかに記載のゴム成形体。
項13. 項1~6のいずれかに記載の三次元積層造形用ゴム組成物を積層する積層工程と、
前記積層された三次元積層造形用ゴム組成物を硬化させる硬化工程と、
を備える、ゴム成形体の製造方法。
請求項14. 液状ゴムと、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと、モノマーとを含み、
前記アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと前記モノマーの合計含有量が、前記液状ゴム100質量部に対して、30質量部以上であるゴム組成物の、三次元積層造形への使用。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、三次元積層造形装置によってゴム成形体を好適に製造することができ、さらに、得られるゴム成形体が高い機械的強度と優れた伸びを両立する、三次元積層造形用ゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、当該三次元積層造形用ゴム組成物を硬化させてなるゴム成形体、及び当該組成物を用いたゴム成形体の製造方法を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ゴム成形体の一例を示す斜視図(a)及び平面図(b)である。
【
図2】ゴム成形体の一例を示す斜視図(a)及び側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の三次元積層造形用ゴム組成物は、液状ゴムと、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと、モノマーとを含み、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーとモノマーの合計含有量が、液状ゴム100質量部に対して、30質量部以上であることを特徴とする。すなわち、本発明においては、三次元積層造形法に用いられる原料として、液状ゴム、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマー、及びモノマーを含むゴム組成物において、液状ゴムに対して所定量のアミン系ウレタンアクリレートオリゴマー及びモノマーを用いることを特徴とし、これにより、三次元積層造形装置によってゴム成形体を好適に製造することができ、さらに、得られるゴム成形体が高い機械的強度と優れた伸びを両立する。以下、本発明の三次元積層造形用ゴム組成物、当該組成物を硬化させてなるゴム成形体、及び当該組成物を用いたゴム成形体の製造方法について、詳述する。
【0012】
なお、本発明において、「三次元積層造形用ゴム組成物」とは、例えば三次元構造物の設計データに基づいて、ゴム組成物を積層及び硬化させて三次元構造物を製造する三次元積層造形装置(いわゆる、3Dプリンタなど)に用いられるゴム組成物を意味する。このような三次元積層造形装置としては、インクジェット方式、レーザー光の照射により光硬化性樹脂を硬化させる方式、ABS樹脂等の溶融積層を行う方式など多数の方式が知られている。本発明のゴム組成物の積層を繰り返し、ゴム組成物を硬化させることにより、所望のゴム成形体が得られる。
【0013】
<三次元積層造形用ゴム組成物>
本発明の三次元積層造形用ゴム組成物は、液状ゴムを含む。液状ゴムとしては、特に制限されず、公知のものを使用することができる。液状ゴムの具体例としては、液状ブタジエンゴム、液状スチレン-ブタジエン共重合ゴム、液状イソプレン-ブタジエン共重合ゴム、液状イソプレンゴム、液状水素化イソプレンゴム、液状イソプレン-スチレン共重合ゴム等が挙げられる。これらの中でも、三次元積層造形用に適した粘度としつつ、硬化によって得られるゴム成形体に優れたゴム特性(例えば、後述のショア硬度、破断伸び率、破断応力、圧縮永久歪みなど)を発揮させる観点からは、熱、光、電子線などによって架橋する(メタ)アクリロイル基やビニル基などの不飽和結合を有するものや、エポキシ化合物やオキセタン化合物などの環状エーテルなどを有するものが好ましく、特に(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。液状ゴムは、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。なお、本発明において「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基またはメタクリロイル基」を意味し、これに類する表現も同様である。
【0014】
本発明の三次元積層造形用ゴム組成物における液状ゴムの含有量としては、特に制限されないが、三次元積層造形用に適した粘度としつつ、硬化によって得られるゴム成形体に優れたゴム特性を発揮させ、さらに得られるゴム成形体に高い機械的強度と優れた伸びを両立させる観点からは、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上が挙げられ、範囲としては、30~70質量%程度、30~60質量%程度、40~70質量%程度、40~60質量%程度が挙げられる。
【0015】
また、液状ゴムの数平均分子量(Mn)としては、特に制限されないが、同様の観点から、好ましくは500以上、より好ましくは5,000~60,000程度、さらに好ましくは5,000~40,000程度が挙げられる。
【0016】
なお、液状ゴムの数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用い、標準ポリスチレンにより換算して測定された値である。
【0017】
本発明の三次元積層造形用ゴム組成物は、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーを含む。本発明において、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーは、ウレタン結合のイソシアネート基に加えて、さらに窒素原子を有するウレタンアクリレートオリゴマーであれば特に制限されない。
【0018】
アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド系ウレタンオリゴマー、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを有するウレタンオリゴマーなどが挙げられる。(メタ)アクリルアミド系ウレタンオリゴマーとしては、例えば、特開2016-113518号公報に記載のものが例示できる。また、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを有するウレタンオリゴマーとしては、特開2016-181370号公報に記載のものが例示できる。
【0019】
(メタ)アクリルアミド系ウレタンオリゴマーは、末端または側鎖に(メタ)アクリルアミド基を有するウレタンオリゴマーである。(メタ)アクリルアミド系ウレタンオリゴマーは、公知のウレタン化反応技術により合成することができる。具体的には、1分子中に1個以上の水酸基を有するアルコール化合物(a1)と、1分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する(メタ)アクリルアミド化合物(a3)との反応から合成できる。また、ポリオールとイソシアネート化合物とを反応させ、分子中に1個以上のイソシアネート基を有するポリウレタンを合成し、その後、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーを用いてウレタン化合物中のイソシアネート基とさらに反応させ、目的の(メタ)アクリルアミド系ウレタンオリゴマーを合成することもできる。
【0020】
1分子中に1個以上の水酸基を有するアルコール化合物(a1)としては、主鎖骨格の末端又は側鎖に1個以上の水酸基を有する炭素数2~9のアルキレングリコール、炭素数2~6のポリアルキレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオールが挙げられる。これらのポリオールは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0021】
また、1分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(a2)としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソンアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート類、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、又は、これらのアダクトタイプ、イソシアヌレートタイプ、ビュレットタイプ等の多量体が挙げられる。これらのポリイソシアネートは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0022】
水酸基を有する(メタ)アクリルアミド化合物(a3)としては、下記一般式で示される化合物が挙げられる。
【0023】
【0024】
一般式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基、またはヒドロキシアルキル基であり、R3は炭素数1~6のアルキレン基、またはフェニレン基である。
【0025】
(メタ)アクリルアミド系ウレタンオリゴマーの重量平均分子量としては、特に制限されないが、ゴム組成物を三次元積層造形用に適した粘度としつつ、硬化によって得られるゴム成形体に優れたゴム特性を発揮させ、さらにゴム成形体に高い機械的強度と優れた伸びを付与する観点からは、好ましくは1,000~50,000程度、より好ましくは2,000~20,000程度が挙げられる。
【0026】
また、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを有するウレタンオリゴマーは、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドと、イソシアネート化合物との付加反応で製造され、光硬化性官能基としての(メタ)アクリルアミド基を有することを特徴としている。
【0027】
アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを有するウレタンオリゴマーは、公知のウレタン化反応技術により合成することができる。具体的には、ブタジエン、ブタジエンの水素添加物、イソプレン、イソプレンの水素添加物、カーボネート、エーテル、エステル、シリコーンから選ばれる1種以上の繰り返し単位を有する重合体を骨格として有する単官能又は多官能のアルコール(b1)(以下、ポリオール(b1)と省略することがある)、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート単量体(b2)、及び水酸基を有する(メタ)アクリルアミド(b3)との反応から合成できる。又、低分子量成分の含有率をより低減できる観点から、まず、ポリオール(b1)とイソシアネート単量体(b1)とを反応させ、分子中に1個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を合成し、その後、さらに水酸基を有する(メタ)アクリルアミド(b3)と反応させ、目的のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを有するウレタンオリゴマーが得られる。
【0028】
例えば、ポリブタジエン系のポリオール(b1)としては、ポリブタジエン、ポリブタジエンの水素添加物、ポリイソプレン、ポリイソプレンの水素添加物からなる群から選ばれる主鎖骨格を有し、かつ主鎖骨格の末端又は側鎖に1個以上の水酸基を有するものが挙げられる。工業的に入手しやすく、取り扱い易い点から、分子中に1,4-ビニル結合及び/又は1,2-ビニル結合を含む、もしくはそれらビニル基の水素添加物を含む両末端に水酸基を有する液状のポリブタジエン系のポリオール(b1)が好ましい。
【0029】
また、ポリカーボネート系のポリオール(b1)としては、ジオール類と炭酸エステルを原料としてエステル交換反応によって得られるもので、カーボネート基からなる主鎖骨格を有し、主鎖の末端又は側鎖に1個以上の水酸基を有するものが挙げられる。工業的に入手しやすく、取り扱い易い点から、分子中にカーボネート骨格と両末端に水酸基を有する液状のポリカーボネート系のポリオール(b1)が好ましい。
【0030】
ポリエーテル系のポリオール(b1)(すなわち、ポリエステポリオール)は、分子中にポリエーテルの主鎖骨格を有し、かつ主鎖骨格の末端又は側鎖に1個以上の水酸基を有するものである。シリコーン系のポリオール(b1)(すなわち、シリコーンポリオール)は、分子中にシリコーン主鎖骨格を有し、かつ主鎖骨格の末端又は側鎖に1個以上の水酸基を有するものである。
【0031】
1分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート単量体(b2)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(2,2,4-、2,4,4-、又はそれらの混合物)等の脂肪族イソシアネート類、1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-又は2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、2,5-又は2,6-ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、もしくは、これらのアダクトタイプ、イソシアヌレートタイプ、ビュレットタイプ等が挙げられる。イソシアネート単量体(b2)は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0032】
水酸基を有する(メタ)アクリルアミド(b3)は、水酸基を含有するメタクリルアミドまたは水酸基を含有するアクリルアミドであり、1種を単独でも、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。水酸基を含有するアクリルアミドを用いることにより硬化性が著しく向上されるので、特に好ましい。
【0033】
水酸基を有する(メタ)アクリルアミド(b3)としては、例えば、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチルヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-エチルヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エチルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-エチルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-プロピルヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-プロピルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリルアミド(b3)は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0034】
アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを有するウレタンオリゴマーの重量平均分子量としては、特に制限されないが、ゴム組成物を三次元積層造形用に適した粘度としつつ、硬化によって得られるゴム成形体に優れたゴム特性を発揮させ、さらにゴム成形体に高い機械的強度と優れた伸びを付与する観点からは、好ましくは1,000~100,000程度、より好ましくは1,500~60,000程度が挙げられる。
【0035】
また、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを有するウレタンオリゴマーの平均官能基数(すなわち、1分子中に含まれるアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド基の数)の平均値としては、同様の観点から、好ましくは1.2~20が挙げられ、さらに好ましくは1.5~10が挙げられる。
【0036】
アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーの官能基数としては、特に制限されないが、同様の観点からは、好ましくは2官能から6官能程度、より好ましくは2官能から4官能程度、さらに好ましくは2官能が挙げられる。
【0037】
アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーの市販品としては、例えば、KJケミカルズ社製の商品名「KJSA-7100」などが挙げられる。
【0038】
また、本発明の三次元積層造形用ゴム組成物に含まれるモノマーとしては、特に制限されないが、例えば単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられ、ゴム組成物を三次元積層造形用に適した粘度としつつ、硬化によって得られるゴム成形体に優れたゴム特性を発揮させ、さらにゴム成形体に高い機械的強度と優れた伸びを付与する観点からは、好ましくは単官能モノマーが挙げられる。好ましい単官能モノマーとしては、単官能アクリレートが挙げられる。
【0039】
単官能モノマーの具体例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシドを反応させたp-クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2-ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4-ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを複数モル変性させたフェノキシ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、t-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ビニルモノマー(例えばN-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等)が挙げられる。これらのでも、ゴム組成物を三次元積層造形用に適した粘度としつつ、硬化によって得られるゴム成形体に優れたゴム特性を発揮させ、さらにゴム成形体に高い機械的強度と優れた伸びを付与する観点から、特にイソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。単官能モノマーは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0040】
また、多官能モノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0041】
本発明の三次元積層造形用ゴム組成物において、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマー及びモノマーは、共架橋剤として機能する。
【0042】
本発明の三次元積層造形用ゴム組成物には、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマー及びモノマーに加えて、さらに他の共架橋剤が含まれてもよいし、含まれていなくてもよい。他の共架橋剤の具体例としては、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸マグネシウム、スチレンなどが挙げられる。他の共架橋剤は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。
【0043】
本発明において、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーとモノマーの合計含有量は、液状ゴム100質量部に対して、30質量部以上であればよいが、ゴム組成物を三次元積層造形用に適した粘度としつつ、硬化によって得られるゴム成形体に優れたゴム特性を発揮させ、さらにゴム成形体に高い機械的強度と優れた伸びを付与する観点からは、好ましくは30~150質量部程度、より好ましくは35~120質量部程度、さらに好ましくは40~100質量部程度が挙げられる。
【0044】
本発明の三次元積層造形用ゴム組成物において、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーとモノマーの質量比(アミン系ウレタンアクリレートオリゴマー:モノマー)としては、特に制限されないが、同様の観点からは、好ましくは1:9~9:1程度、より好ましくは2:8~8:2程度、さらに好ましくは3:7~7:3程度が挙げられる。
【0045】
本発明の三次元積層造形用ゴム組成物は、ラジカル開始剤を含むことが好ましい。ラジカル開始剤を含むことにより、前述の液状ゴムの硬化を促進することができる。ラジカル開始剤としては、特に制限されず、加熱、光照射、電子線照射などによってラジカルを発生させる、公知のものを使用することができる。好ましいラジカル開始剤としては、アセトフェノン、4,4’-ジメトキシベンジル、ジベンゾイル、2-ヒドロキシ-2-フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン-2-カルボン酸、ベンゾフェノン-4-カルボン酸、ベンゾフェノン-2-カルボン酸メチル、N,N,N’,N’-テトラエチルー4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-メトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-イソプロポキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-イソブトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-エトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾー
ル、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(モルフォリノ)フェニル]-1-ブタノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、1,4-ジベンゾイルベンゼン、2-エチルアントラキノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、2-イソニトロソプロピオフェノン、2-フェニル-2-(p-トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)などが挙げられる。ラジカル開始剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
ラジカル開始剤の含有量としては、液状ゴム100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部程度が挙げられ、より好ましくは1~7質量部程度である。
【0047】
本発明の三次元積層造形用ゴム組成物は、フィラーをさらに含んでいてもよい。フィラーを含むことにより、三次元積層造形用ゴム組成物の粘度や、硬化によって得られるゴム成形体のゴム特性を調整することができる。さらに、本発明の三次元積層造形用ゴム組成物は、フィラーを含むことにより、ゴム成形体により一層高い機械的強度と優れた伸びを付与することができる。本発明の三次元積層造形用ゴム組成物は、フィラーをふくむことにより、機械的強度がより一層向上するだけでなく、フィラーを含むことによる伸びの低下が小さい、フィラーの添加によって伸び向上するか、僅かな低下に止まるという効果を発揮することができる。
【0048】
フィラーとしては、特に制限されず、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、タルクなどが挙げられる。シリカをフィラーとする場合、表面改質されていないシリカを用いてもよい。また、シランカップリング剤などで表面改質された表面改質シリカ、またはシリカとシランカップリング剤との混合物などをフィラーとして使用することにより、硬化によって得られるゴム成形体の機械的強度をより一層高めることができる。フィラーは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
また、本発明の三次元積層造形用ゴム組成物がフィラーを含む場合、さらにシランカップリング剤を含んでいてもよい。特に、表面改質されていないフィラーを配合する場合、シランカップリング剤を含んでいることにより、液状ゴムとフィラーとを強固に結合することができ、硬化によって得られるゴム成形体に優れたゴム特性を発揮させることができる。
【0050】
フィラーの含有量としては、特に制限されないが、三次元積層造形用に適した粘度としつつ、硬化によって得られるゴム成形体に優れたゴム特性を発揮させる観点からは、好ましくは5質量%以上、より好ましくは5~70質量%程度、さらに好ましくは10~50質量%程度が挙げられる。
【0051】
また、本発明の三次元積層造形用ゴム組成物は、三次元積層造形用に適した粘度としつつ、硬化によって得られるゴム成形体に優れたゴム特性を発揮させる観点から、加硫ゴムを含んでいてもよい。加硫ゴムとしては、特に制限されず、天然ゴムまたは合成ゴムを加硫した、公知の加硫ゴムを使用することができる。加硫ゴムを構成するゴム成分としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらの中でも、三次元積層造形用に適した粘度としつつ、硬化によって得られるゴム成形体に優れたゴム特性を発揮させる観点からは、天然ゴムを加硫した加硫ゴムが好ましい。加硫ゴムは、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。
【0052】
三次元積層造形用に適した粘度としつつ、硬化によって得られるゴム成形体に優れたゴム特性を発揮させる観点からは、加硫ゴムは、微粒子状であることが好ましい。加硫ゴムの粒子径としては、特に制限されないが、同様の観点から、中心粒径が200μm程度以下であることが好ましく、100μm程度以下であることがより好ましく、50μm程度以下であることがさらに好ましい。
【0053】
なお、本発明において、加硫ゴムの中心粒径とは、レーザー回折/散乱式粒子径測定装置を用いたメディアン径(積算50%の粒径)である。
【0054】
本発明の三次元積層造形用ゴム組成物における加硫ゴムの含有量としては、特に制限されないが、三次元積層造形用に適した粘度としつつ、硬化によって得られるゴム成形体に優れたゴム特性を発揮させる観点からは、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20~80質量%程度、さらに好ましくは30~50質量%程度が挙げられる。
【0055】
本発明の三次元積層造形用ゴム組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において各種の添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、特に制限されず、例えば、ポリマー、染料、顔料、レべリング剤、流動性調整剤、消泡剤、可塑剤、重合禁止剤、難燃化剤、分散安定化剤、保存安定化剤、酸化防止剤、金属、金属酸化物、金属塩、セラミックス、などが挙げられる。ゴム組成物に含まれる添加剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0056】
本発明の三次元積層造形用ゴム組成物の粘度は、三次元積層造形装置によって描画・積層可能な粘度であれば特に制限されないが、三次元積層造形用に適し、かつ、硬化によって得られるゴム成形体に優れたゴム特性を発揮させる観点からは、温度35℃(誤差は±2℃)、相対湿度50%の環境下で、E型粘度計を用いて測定された粘度が、好ましくは1000Pa・s以下、より好ましくは0.1~1000Pa・s程度、さらに好ましくは1~700Pa・s程度が挙げられる。なお、この粘度は、より具体的には、E型粘度計(Anton-Paar社製のMCR301)を用いて、振り角1%、周波数1Hzにて測定した場合の粘度である。
【0057】
本発明の三次元積層造形用ゴム組成物は、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと、モノマーとを、前記アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと前記モノマーの合計含有量が、前記液状ゴム100質量部に対して、30質量部以上となるよう混合することにより、容易に製造することができ、さらに必要に応じて、ラジカル開始剤、フィラー、加硫ゴム、各種添加剤等を混合することもできる。
【0058】
<ゴム成形体>
本発明のゴム成形体は、前述の三次元積層造形用ゴム組成物の硬化物である。具体的には、三次元積層造形用ゴム組成物を加熱、光照射、電子線照射などに供することにより、硬化させたものである。
【0059】
本発明のゴム成形体のショアA硬度としては、製品に求められる硬さに応じて適宜設定すればよいが、優れたゴム特性を発揮する観点からは、好ましくは35~90の範囲が挙げられる。また、本発明のゴム成形体のショアC硬度としては、製品に求められる硬さに応じて適宜設定すればよいが、優れたゴム特性を発揮する観点からは、好ましくは45~90の範囲が挙げられる。なお、本発明において、ゴム成形体のショアA硬度及びショアC硬度は、それぞれ、JIS K6253及びJIS K7312に規定された方法に準拠して測定された値である。
【0060】
本発明のゴム成形体の破断伸び率としては、製品に求められる破断伸び率に応じて適宜設定すればよく、例えば、100~1000%程度、100~500%などが一般的であるが、優れたゴム特性を発揮する観点からは、好ましくは90%以上、より好ましくは90~280%程度が挙げられる。破断伸び率の上限値としては、通常、500%程度である。なお、本発明において、ゴム成形体の伸び率は、JIS K6251に規定された方法に準拠して測定された値である。
【0061】
本発明のゴム成形体の破断応力としては、製品に求められる破断応力に応じて適宜設定すればよく、例えば、3~45MPa程度、3~20MPa程度などが一般的であるが、優れたゴム特性を発揮する観点からは、好ましくは2.0MPa以上、より好ましくは2.0~8.0MPa程度が挙げられる。破断応力の上限値としては、通常、20MPa程度である。なお、本発明において、ゴム成形体の破断応力は、JIS K6251に規定された方法に準拠して測定された値である。
【0062】
本発明のゴム成形体において、破断応力(MPa)の値と破断伸び率(%)の値との積である破壊エネルギーは、好ましくは400以上、より好ましくは400~2500程度、さらに好ましくは700~2200程度、特に好ましくは1600~2200程度が挙げられる。
【0063】
本発明のゴム成形体の圧縮永久歪み(24時間後)としては、製品に求められる圧縮永久歪みに応じて適宜設定すればよいが、ゴム特性を発揮する観点からは、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下が挙げられる。また、圧縮永久歪み(0.5時間後)としては、製品に求められる圧縮永久歪みに応じて適宜設定すればよいが、ゴム特性を発揮する観点からは、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下が挙げられる。なお、本発明において、ゴム成形体の圧縮永久歪みは、JIS K6262に規定された方法に準拠して測定された値である。
【0064】
本発明のゴム成形体の密度としては、製品に求められる密度に応じて適宜設定すればよいが、優れたゴム特性を発揮する観点からは、好ましくは0.8~2.2g/cm3程度が挙げられる。
【0065】
本発明のゴム成形体の形状としては、特に制限されず、三次元積層造形法により所望の形状とすることができる。例えば、
図1に示すような平面形状が格子状の層を形成し、これを積層することで、三次元的な形状とすることができる。このように、同一の形状からなる層を積層することで、ゴム成形体を製造するほか、異なる平面形状の層を積層することで、ゴム成形体を製造することもできる。例えば、
図2に示すように、側面視が格子状のゴム成形体を製造することもできる。この場合、ゴム組成物に粘性があり、また、例えば、一層を形成する毎に紫外線などの光や電子線で硬化させているため、ゴム組成物を垂直方向ではなく、垂直から傾斜する方向に積層したとしても、ゴム組成物の層が崩れることなく積層させることができる。また、格子状ではなく、種々の形状の中空や中実の立体形状とすることもでき、その形状は特には限定されない。
【0066】
本発明のゴム成形体の製造方法としては、特に制限されず、前述した三次元積層造形用ゴム組成物を原料として、公知の三次元積層造形方法により製造することができる。本発明のゴム成形体の製造方法の詳細については、下記<ゴム成形体の製造方法>の項目に記載の通りである。
【0067】
<ゴム成形体の製造方法>
本発明のゴム成形体の製造方法においては、前述した三次元積層造形用ゴム組成物を用いることにより、液状の樹脂を原料に用いた従来公知の三次元積層造形方法を使用することができる。すなわち、液状の樹脂の代わりに、本発明の三次元積層造形用ゴム組成物を原料とすることにより、例えば、インクジェット方式、レーザー光の照射により原料を硬化させる方式、原料の溶融積層を行う方式などの各種の三次元積層造形方法により、ゴム成形体を製造することができる。
【0068】
本発明のゴム成形体は、例えば、前述の三次元積層造形用ゴム組成物を積層する積層工程と、積層された三次元積層造形用ゴム組成物を硬化させる硬化工程とを備える方法により、好適に製造することができる。
【0069】
より具体的には、例えば、インクジェット方式に適用する場合であれば、前述の三次元積層造形用ゴム組成物の微小液滴をノズルから所定の形状パターンを描画するように吐出してゴム組成物の薄膜を形成し、次に、加熱、光照射、または電線照射により当該薄膜を硬化させる。硬化した薄膜の上に、同様にして、ゴム組成物の薄膜を形成し、薄膜を硬化させる。これを繰り返して硬化したゴム組成物の薄膜を積層することにより、ゴム成形体(三次元構造物)を製造することができる。
【0070】
また、例えば、溶融積層方式を適用する場合であれば、加熱により三次元積層造形用ゴム組成物の粘度を低下させて、ゴム組成物をノズルから滴下させることにより、所定の形状パターンを描画するように吐出してゴム組成物の薄膜を形成し、次に、加熱、光照射、または電線照射により当該薄膜を硬化させる。硬化した薄膜の上に、同様にして、粘度を低下させたゴム組成物の薄膜を形成し、薄膜を硬化させる。これを繰り返して硬化したゴム組成物の薄膜を積層することにより、ゴム成形体(三次元構造物)を製造することができる。この場合、ゴム組成物を積層するテーブルまたはノズルの少なくとも一方を、二次元的又は三次元的に動作させることで、ゴム組成物を所望の形状に積層することができる。
【0071】
三次元積層造形用ゴム組成物を加熱により硬化させる場合、加熱温度としては、特に制限されないが、好ましくは80~170℃程度、より好ましくは100~160℃程度が挙げられる。また、加熱時間としては、好ましくは1~60分間程度、より好ましくは5~30分間程度が挙げられる。また、例えば、光照射により硬化させる場合、紫外線照射が好ましく、365nm程度の波長において紫外線強度1mW/cm2~10W/cm2程度、積算光量1mJ/cm2~100J/cm2~程度の条件で硬化させることが好ましい。紫外線は、ゴム組成物一層を形成する毎に照射することもできるし、複数層を形成する毎に照射することもできる。あるいは、ノズルに紫外線照射装置を取付けておき、ノズルからゴム組成物を吐出しつつ、紫外線を照射することもできる。この点は、紫外線以外の光の照射でも同様である。
【0072】
三次元積層造形用ゴム組成物をノズルから吐出してゴム組成物の薄膜を形成する際、当該薄膜1層の厚みとしては、好ましくは0.001~1mm程度、より好ましくは0.01~0.5mm程度が挙げられる。また、本発明の三次元積層造形用ゴム組成物が吐出されるノズルの直径としては、三次元積層造形法や装置によっても異なるが、好ましくは0.001~1mm程度、より好ましくは0.01~0.5mm程度が挙げられる。本発明の三次元積層造形用ゴム組成物は、三次元積層造形用に適した粘度を有するため、このような直径を有するノズルから吐出されるゴム組成物として、好適に使用される。
【実施例】
【0073】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0074】
<実施例1~11及び比較例1~5>
(ゴム組成物の製造)
表1,2に記載の配合割合(質量部)となるように、液状ゴム、ラジカル開始剤、及び共架橋剤を混合してゴム組成物を作製した。各成分が均一になるように混合して、ゴム組成物を製造した。なお、各成分の詳細については、以下の通りである。表2においては、実施例6と実施例9との対比、実施例7と実施例10との対比、実施例8と実施例11との対比が容易なようにこれらを併記した。
【0075】
液状ゴム:UC203(株式会社クラレ製の液状イソプレンゴム、数平均分子量35,000)
ラジカル重合開始剤:Irgacure1173(BASF社製)
共架橋剤:
KJSA-7100(KJケミカルズ株式会社製の2官能のアミン系ウレタンアクリレートオリゴマー)
IBXA(イソボルニルアクリレート 単官能モノマー、希釈剤)
フィラー:ニプシールVN3は、表面処理されていないシリカ粒子(窒素吸着比表面積(BET法)180~230m2/g程度、東ソー株式会社製)である。
【0076】
(ゴム成形体の製造)
各実施例で得られたゴム組成物を用い、ゴム組成物1層の形成とUV硬化を繰り返して、それぞれ、
図2(a)に示されるようなトラス構造のゴム成形体を製造した。具体的には、60℃に加熱したゴム組成物をノズル(ノズルサイズ:内径0.25μm)から吐出し、ゴム組成物の層を、1層(1層の厚み:0.4mm)を形成するごとに、UV光を照射して、ゴム組成物を硬化させた。UV光の波長は365nm、UV光強度は14mW/cm
2、UV光照射時間は60sec/層とした。
【0077】
(ゴム成形体のスラブ硬度)
以下の測定条件により、各実施例で得られたゴム成形体について、JIS K6253に規定された方法に準拠してショアA硬度及びJIS K7312に規定された方法に準拠してショアC硬度を測定した。結果を表1,2に示す。
【0078】
(破断伸び率)
以下の測定条件により、各実施例で得られたゴム成形体について、JIS K6251に規定された方法に準拠して破断伸び率を測定した。結果を表1,2に示す。
【0079】
(破断応力)
以下の測定条件により、各実施例で得られたゴム成形体について、JIS K6251に規定された方法に準拠して破断応力を測定した。結果を表1,2に示す。
【0080】
(破壊エネルギー)
上記で得られた破断応力(MPa)の値と破断伸び率(%)の値との積を破壊エネルギーとして計算した。結果を表1,2に示す。
【0081】
(圧縮永久歪み)
以下の測定条件により、各実施例で得られたゴム成形体について、JIS K6262に規定された方法に準拠し、0.5時間後の圧縮永久歪み、及び24時間後の圧縮永久歪みをそれぞれ測定した。結果を表1,2に示す。
【0082】
(粘度)
実施例6-11で得られた各ゴム組成物について、温度35℃(誤差は±2℃)、相対湿度50%の環境下で、E型粘度計(Anton-Paar社製のMCR301)を用いて、振り角1%、周波数1Hzにて粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0083】
【0084】
【0085】
表1に示される結果から明らかなとおり、液状ゴムと、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと、モノマーとを含み、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーとモノマーの合計含有量が、液状ゴム100質量部に対して、30質量部以上である三次元積層造形用ゴム組成物は、三次元積層造形装置によってゴム成形体を好適に製造することができ、さらに、得られるゴム成形体は、高い機械的強度と優れた伸びを両立し、高い破断エネルギーを有することが分かる。
【0086】
さらに、表2に示される結果から明らかなとおり、実施例6,7,8の三次元積層造形用ゴム組成物に対して、フィラーを添加した実施例9,10,11の三次元積層造形用ゴム組成物は、より一層高い機械的強度と優れた伸びを両立し、高い破断エネルギーを有することが分かる。フィラーを添加することによって、機械的強度が向上することについては予想できることであったが、伸びについては低下すると予想されたが、本発明の三次元積層造形用ゴム組成物では、フィラーの添加によって伸び向上するか、僅かな低下に止まるという予想外の結果となった。