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特許7092136拡張現実または仮想現実ディスプレイ用の導波路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】拡張現実または仮想現実ディスプレイ用の導波路
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20220621BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20220621BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20220621BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B27/01
G02B6/122 301
G02B5/18
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019540647
(86)(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 GB2018050697
(87)【国際公開番号】W WO2018178626
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】1705160.8
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516384623
【氏名又は名称】ウェーブ オプティックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】グレイ、デイヴィッド ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレラ、モーメド サリム
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0321781(US,A1)
【文献】国際公開第2016/020643(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0126239(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0059879(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/02
G02B 27/01
G02B 6/122
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張現実または仮想現実ディスプレイに使用するための導波路であって、
フォトニック結晶中の複数の光学構造を備え、
前記複数の光学構造は、前記導波路内で互いに重なる少なくとも2つの回折光学素子を提供するようにアレイ状に配置され、前記2つの回折光学素子の各々は、入力方向から光を受け取り、出力回折光学素子として次いで作用することができる他の回折光学素子に向かって光をカップリングするように構成され、視聴者に向けてアウトカップリングされた次数を提供し、
前記複数の光学構造はそれぞれ、前記導波路の平面で見たときに、異なる角度でそれぞれの法線ベクトルを有する複数の実質的に直線の辺を備える形状を有する、導波路。
【請求項2】
前記複数の光学構造はそれぞれ、少なくとも1つの頂点を備える、請求項1に記載の導波路。
【請求項3】
前記複数の光学構造はそれぞれ、少なくとも4つの実質的に直線の辺を備える、請求項1または2に記載の導波路。
【請求項4】
前記辺のうちの1つは、前記アレイ状の光学構造の規則的な間隔の約0.1~0.4の比である長さを有する、請求項1~3の何れか一項に記載の導波路。
【請求項5】
前記複数の光学構造は、前記2つのそれぞれの回折光学素子に対して実質的に平行な辺をそれぞれ備える、請求項1~4の何れか一項に記載の導波路。
【請求項6】
前記複数の光学構造はそれぞれ、前記入力方向に対して実質的に±30°で傾斜した辺を備える、請求項1~5の何れか一項に記載の導波路。
【請求項7】
前記複数の光学構造はそれぞれ複数の頂点を有し、各頂点の内角は180°未満である、請求項1~6の何れか一項に記載の導波路。
【請求項8】
前記導波路内で互いに重なった前記2つの回折光学素子とは別個の、光を前記導波路内にカップリングし、前記アレイ状の前記複数の光学構造に前記入力方向で光を供給するように構成された入力回折光学素子を含む、請求項1~7の何れか一項に記載の導波路。
【請求項9】
前記複数の光学構造はそれぞれ、前記入力方向に対して実質的に垂直な少なくとも1つの対称軸を備える、請求項1~8の何れか一項に記載の導波路。
【請求項10】
前記複数の光学構造はそれぞれ、前記入力方向と実質的に平行な少なくとも1つの対称軸を備える、請求項1~9の何れか一項に記載の導波路。
【請求項11】
前記複数の光学構造はそれぞれ、互いに垂直な少なくとも2つの対称軸を有する、請求項1~10の何れか一項に記載の導波路。
【請求項12】
前記入力方向が入力軸を画定し、前記複数の光学構造が前記入力軸からずれた位置で異なる形状を有する、請求項1~11の何れか一項に記載の導波路。
【請求項13】
前記複数の光学構造が周囲の導波路媒体との屈折率の差を示す、請求項1~12の何れか一項に記載の導波路。
【請求項14】
前記複数の光学構造は、前記導波路の表面上の表面レリーフ構造である、請求項1~12の何れか一項に記載の導波路。
【請求項15】
拡張現実または仮想現実ディスプレイ用の導波路の製造方法であって、
フォトニック結晶に複数の光学構造を供給する段階と、
前記導波路内で互いに重なる少なくとも2つの回折光学素子を提供するように、前記複数の光学構造をアレイ状に配置する段階であって、前記2つの回折光学素子の各々は、入力方向から光を受け取り、出力回折光学素子として次いで作用することができる他の回折光学素子に向かって光をカップリングするように構成され、視聴者に向けてアウトカップリングされた次数を提供する、段階と、
前記導波路の平面で見たときに、少なくとも1つの対称軸と、異なる角度でそれぞれの法線ベクトルを有する複数の実質的に直線の辺とを有する形状の前記複数の光学構造をそれぞれ提供する段階とを含む、方法。
【請求項16】
前記複数の光学構造にコーティングを施す段階を含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張現実または仮想現実ディスプレイに使用するための導波路に関する。特に、本発明は、入力光が出力素子において2つの直交方向に拡大され、導波路から視聴者に向かってカップリングされる導波路に関する。これにより、拡張現実ディスプレイでアイボックスを物理的に拡大することができる。
【背景技術】
【0002】
拡張現実ディスプレイは、ユーザが自身の周囲および投射画像を見ることを可能にする。軍事または輸送用途では、投射画像は、ユーザによって知覚される現実の世界に重ねることができる。これらのディスプレイの他の用途には、ビデオゲームおよび眼鏡などのウェアラブル装置が含まれる。
【0003】
通常の拡張現実設定では、ユーザが物質的世界を見続けることができるように、透明ディスプレイ画面がユーザの前に提供される。ディスプレイ画面は典型的にはガラス導波路であり、プロジェクタは一方の側に設けられている。プロジェクタからの光は回折格子によって導波路にカップリングされる。投射光は導波路内で全内部反射する。次いで、光は、それがユーザによって視認されることができるように、他の回折格子によって導波路からカップリングされる。プロジェクタは、物質的世界のユーザの視覚を拡張する情報および/または画像を提供することができる。
【0004】
拡張現実ディスプレイにおいて入力光を二次元に拡大するための光学装置が国際公開第2016/020643号に開示されている。プロジェクタからの入力光を導波路にカップリングするために入力回折光学素子が設けられている。光学装置はまた、2つの回折光学素子の各々が入力回折光学素子からの光を受け取り、それを対のうちの他方の回折光学素子にカップリングすることができ、他方の回折光学素子は次に、光を導波路から視聴者に向かってカップリングする出力回折光学素子として作用することができるように、導波路において互いに重なる2つの回折光学素子を有する出力素子を含む。一実施形態では、互いに重ねられた2つの回折光学素子は、フォトニック結晶内に設けられる。これは、導波路の表面内または表面上に配置される、周囲の導波路媒体より高い屈折率を有するピラーのアレイを設けることによって達成される。国際公開第2016/020643号のピラーは、視聴者の視点から導波路の平面で見たときに円形の断面形状を有すると記載されている。この配置は、光を二次元に拡大すること、および、光を導波路からカップリングすることを同時に行うのに非常に有効であることが分かっている。有利なことに、これにより導波路上の空間の使用を改善することができ、製造コストを低減させることができる。
【0005】
出力画像内の中央縞が、他の部分よりも高い相対輝度を有することが観察されているため、既知の導波路に関して問題が特定されている。この「縞模様」効果はユーザにとって望ましくなく、本発明の目的はこの問題を克服し軽減することである。
【0006】
本発明の一態様によれば、複数の光学構造を備える拡張現実または仮想現実ディスプレイに使用するための導波路が提供され、複数の光学構造は、導波路内で互いに重なる少なくとも2つの回折光学素子を提供するようにアレイ状に配置され、2つの回折光学素子の各々は、入力方向から光を受け取り、それを出力回折光学素子として次いで作用することができる他の回折光学素子に向かってカップリングするように構成され、視聴者に向けてアウトカップリングされた次数を提供し、複数の光学構造のうちの少なくとも1つは、導波路の平面で見たときに、異なる角度でそれぞれの法線ベクトルを有する複数の実質的に直線の辺を有する形状を有する。
【0007】
このようにして、導波路は、縞模様効果を引き起こす次数に回折される光の割合を減らすことができることが分かった。これにより、重ねた回折光学素子の回折効率を向上させることができ、曲げられて他の回折光学素子に向かってカップリングされる光の割合を増加させることができる。これにより、円形の断面形状を備える光学構造を有する既知の導波路で観察されてきた縞模様効果を軽減することができる。また、これにより、見るためにユーザに向かってカップリングされる光を制御することによって導波路の全体的な効率を改善することができる。
【0008】
少なくとも1つの光学構造は多角形形状を有することができる。したがって、少なくとも1つの光学構造は少なくとも1つの頂点を備え得る。頂点によってつながれた少なくとも4つの実質的に直線の辺、および、場合によっては、5、6またはそれ以上の実質的に直線の辺があってもよい。
【0009】
少なくとも1つの頂点は丸みを帯びた縁を示してもよい。実際の実装は、少なくともある程度は丸みを帯びた縁を伴うと考えられている。
【0010】
少なくとも1つの光学構造は、入力方向に対して実質的に垂直な少なくとも1つの対称軸を備え得る。少なくとも1つの対称軸は、入力方向に対して実質的に平行であり得る。光学構造は、互いに垂直な少なくとも2つの対称軸を有することができる。
【0011】
各頂点の内角は180°未満であり得る。これにより、光学構造を製造することができる容易さを改善することができる。なぜなら、ノッチまたは内側に突出する入口を有する光学構造を作成することはより複雑であり得るからである。
【0012】
辺のうちの1つは、アレイ状の光学構造の間隔の約0.1~0.4の比である長さを有することができる。より好ましくは、辺のうちの1つは、光学構造の間隔の約0.2である長さを有する。光学構造の間隔は、あるいは、アレイの格子定数として知られ得る。
【0013】
光学構造は、2つのそれぞれの回折光学素子に対して実質的に平行な辺を備え得る。辺は入力方向に対して実質的に±30°で傾斜していてもよい。この配置は、有利なことに、回折効率を必要な次数に改善し、縞模様を軽減できることがわかった。
【0014】
導波路は、光を導波路にカップリングし、アレイ状の複数の光学構造に入力方向に光を供給するように構成された入力回折光学素子を含み得る。入力回折光学素子は、導波路の一方の表面に溝を備える回折格子であることが好ましい。好ましくは、入力格子は光を導波路にカップリングするための高い効率を有する。
【0015】
入力方向は入力軸を画定してもよく、光学構造は入力軸から接線方向にずれた位置で異なる形状を有してもよい。光学構造は、それらが入力軸で整列される縞模様効果を引き起こす次数の透過を減少させることを目的とする形状を有することができる。これは、入力軸からずれた位置ではそれほど重要ではない可能性があり、したがってアレイの端における光学構造は異なる形状を有する可能性がある。
【0016】
導波路内の光学構造のアレイはフォトニック結晶と呼ばれることがある。導波路は光学ディスプレイ内に設けられてもよい。
【0017】
光学構造は、周囲の導波路媒体との屈折率の差を示すことが好ましい。このようにして、光学構造を導波路内に埋め込むことができ、構造と導波路媒体との間の屈折率の差によりそれらの回折特性を作り出すことができる。
【0018】
光学構造は、導波路の表面上に表面レリーフ機構として設けることができる。表面レリーフ機構の屈折率とそれらを取り囲む空気との間の不一致は、所望の回折特性を提供し得る。いくつかの実施形態では、回折効率を制御するために光学構造にコーティングを施すことができる。
【0019】
本発明の別の態様によれば、拡張現実または仮想現実ディスプレイ用の導波路の製造方法が提供され、当該方法は、複数の光学構造を提供する段階と、導波路内で互いに重なる少なくとも2つの回折光学素子を提供するように、複数の光学構造をアレイ状に配置する段階であって、2つの回折光学素子の各々は、入力方向から光を受け取り、それを出力回折光学素子として次いで作用することができる他の回折光学素子に向かってカップリングするように構成される、段階と、視聴者にアウトカップリングされた次数を提供する段階と、導波路の平面で見たときに、異なる角度でそれぞれの法線ベクトルを有する複数の実質的に直線の辺を有する形状を備える複数の光学構造のうちの少なくとも1つを提供する段階とを含む。
【0020】
本発明の実施形態は、図面を参照して例によりここで説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】既知の導波路の上面図である。
【0022】
図2】既知の導波路の他の上面図である。
【0023】
図3】本発明の一実施形態における導波路に使用するためのフォトニック結晶の上面図である。
【0024】
図4】本発明の一実施形態における導波路内のフォトニック結晶に使用することができる異なる形状を有する光学構造のいくつかの例を示す。
【0025】
図5】本発明の一実施形態における導波路内で使用するためのフォトニック結晶の上面図である。
【0026】
図6】本発明の一実施形態において、特定の形状を有する光学構造について、ノッチ幅と共に回折効率がどのように変化するかを示すグラフである。
【0027】
図7】本発明の一実施形態において、他の形状を有する光学構造について平坦な側(flat sided)の幅と共に回折効率がどのように変化するかを示す他のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1および図2は、既知の導波路6の上面図である。導波路6の表面には、プロジェクタ(図示せず)からの光を導波路6にカップリングするための入力回折格子1が設けられている。導波路にカップリングされた光は、全内部反射によってフォトニック結晶3を含む出力素子2に向かって進む。この例では、フォトニック結晶3は、これらの上面図から見て円形の断面形状を有するピラー(図示せず)を備える。ピラーは周囲の導波路媒体の屈折率に対して異なる屈折率を有し、それらは六方対称性を有するアレイ状に配置される。
【0029】
光がx軸に沿って入力回折格子から出力素子2内のフォトニック結晶3に当たると、透過されるか、または、フォトニック結晶3内のアレイによって形成された回折光学構造の1つによって±60°曲げられる。
【0030】
素子2から回折された出力画像は、他の部分よりも高い相対輝度を有する中央縞7を備えることが分かった。この効果は、フォトニック結晶3内のアレイによって形成された回折光学構造の回折効率によって生じると考えられる。特に、入力回折格子1から受け取られる光のかなりの部分が、フォトニック結晶3に当たるときに、回折して±60°曲げられるのではなく、眼に向かって回折する。
【0031】
図3は、導波路14内に設けられた光学構造10のアレイであるフォトニック結晶12の一部の上面図である。導波路14は、n=1.5前後の低い屈折率を有し得る。この配置における光学構造10は、4つの実質的に直線の辺と4つの頂点とを有する平行四辺形である。光学構造10は、導波路の幅にわたって実質的に同じ断面形状を有する。他の実施形態では、光学構造10は導波路14の幅の一部のみにわたって設けられてもよい。
【0032】
一実施形態では、光学構造10を導波路14の一方の表面に設けることができる。この配置では、光学構造10は、導波路14の表面から突出するような機構の高さを有することができる。有効フォトニック結晶は、30nm~200nmの範囲の機構の高さで作成できることが分かった。光学構造10間の谷には空気流路が形成されている。光学構造10は、導波路媒体と同じ屈折率を有することができ、n=1.5前後である。光学構造10は、屈折率n=1を有する空気によって囲まれており、この屈折率の不一致は回折を可能にすることができる。回折効率は、光学構造10の水平面に薄膜コーティングを施すことによって制御することができる。コーティング材料は通常(常にではないが)導波路14よりも高い屈折率を有する。一実施形態では、n=2.4前後の屈折率のコーティングが施される。
【0033】
別の実施形態では、光学構造10を導波路14の媒体内に埋め込むことができる。したがって、光学構造10は、完全に導波路14の媒体内に設けることができる。これは、回折を起こすために、光学構造10と導波路媒体14との間の屈折率の不一致を必要とする。これは、一方の表面に光学構造10を備える表面レリーフプロファイルを有する導波路14を作成することによって達成することができる。次に、接合材料を光学構造10上に塗布することができ、これを導波路14と同じ屈折率を有するカバー片に接合することができる。導波路媒体14とは異なる(通常はより高い)屈折率を有する接合材料を選択することによって、接合材料を間に挟んで、元の導波路とカバー片との間に一体化導波路14を作成することができる。この設計では、接合材料は光学構造10と同じ形状を有するが、周囲の導波路媒体とは異なる屈折率を有する。
【0034】
アレイ状の光学構造10の規則的な配置は、いくつかの有効な回折格子または回折光学構造として考えることができる。特に、距離qだけ離れた光学構造の隣接する列に対して、y軸に沿って整列された光学構造10を有する格子H1を画定することが可能である。格子H2は、x軸に対して+30°の角度で、光学構造10の列で配置され、隣接する列は、格子定数として知られる距離pだけ離れている。最後に、格子H3は、x軸に対して-30°の角度で、光学構造の列で配置され、隣接する列は距離pだけ離れている。値pとqは、式q=2pCos(30°)によって互いに関連している。有効フォトニック結晶は、340nm~650nmの範囲のpの値で作成され得ることが分かった。
【0035】
x軸に沿って受け取られた入力格子からの光がフォトニック結晶12に入射すると、それは様々な回折光学素子による複数の同時回折を受ける。光はゼロ次まで回折することができ、それは入射光の伝搬の延長である。格子H1によって光を一次回折次数に回折することもできる。一次は、導波路14からz軸に沿って正の方向に、視聴者に向かってカップリングされ、これは、眼へ一直線の次数として画定することができる。光はまた、H2回折光学構造によって一次回折次数に回折され得る。この一次はx軸に対して+60°で回折され、この光ビームはフォトニック結晶とさらに相互作用するように進む。光はまた、H3回折光学構造によって一次回折次数に回折され得る。この一次はx軸に対して+60°で回折され、この光ビームはフォトニック結晶とさらに相互作用するように進む。H2回折光学構造とのその後の回折相互作用は、正のz軸において導波路12から光を視聴者に向かってカップリングすることができる。したがって、光は各点で導波路からカップリングされ得るが、それでもなお光は導波路12内で二次元的に拡大し続けることができる。フォトニック結晶の対称性は、全ての出射ビームが入力ビームと同じ角度特性および色特性を有することを意味し、これは、このフォトニック結晶の配置を用いて、多色(および単色)光源も入力ビームとして使用できることを意味する。
【0036】
フォトニック結晶は、入力光が二次元ディスプレイ画面を満たすことができるように、二次元における光の同時かつ急速な拡大を可能にすることができる。これにより、二次元ビーム拡大のために導波路サイズを最小限に抑えることができるので、超小型ディスプレイを可能にすることができる。
【0037】
この配置では、光学構造10は、回折光学構造H2、H3と平行な直線状の辺を有する。したがって、平行四辺形の辺は、x軸に対して±30°で傾斜している。これは、入力光が入力格子1から受け取られる方向である。
【0038】
驚くべき利点は、回折光学構造H1、H2、H3の回折効率が著しく高められる非円形光学構造10で見出される。これにより、構造H1、H2、H3によって一次に回折される光の割合が増加し、ゼロ次に回折され、全内部反射によって導波路12内を伝搬し続ける光の割合が減少する。これにより、円形構造で観察されている縞模様効果を減少させることができ、導波路14の有用性が著しく向上する。
【0039】
図4は、縞模様効果をさらに低減するために使用することができる光学構造10の他の形状のいくつかの例を示す。第1の光学構造10は、図3に示されるものと同様の形状を有する。第1の光学構造10は、より大きい平行四辺形16内に示される単純な平行四辺形であり、これはフォトニック結晶12内の光学構造10の間隔を示す。上下の頂点は120°の角度を有している。格子定数pは、より大きい平行四辺形16の一辺の長さに等しい。第2の光学構造20は、一対の中央ノッチ22を有する変形平行四辺形である。この配置では、各ノッチ22は、外側平行四辺形のそれぞれの主な辺に平行な2つの辺と、回折光学構造H2、H3とから形成されている。ノッチ幅24を画定することができ、異なる実施形態において、ノッチ幅24は変わり得る。ノッチ22は180°より大きい内角を有する頂点26を備える。第3の光学構造30は、x軸に平行な2つの表面を有する他の変形平行四辺形である。「平坦な側の」長さ34を画定することができ、それはx軸に平行な辺の長さである。異なる実施形態において、平坦な側の長さ34は変わり得る。第3の光学構造30は複数の頂点を有し、各頂点は180°未満の内角を有する。第2の光学構造20と同様であるが、ただ1つのノッチ42を備える第4の光学構造40が提供される。一方の側にノッチ52を有し、他方の側にx軸に平行な平坦部分54を有する第5の光学構造50が提供される。第3の光学構造30と同様であるが、ただ1つの「平坦な側の」長さ64を有する第6の光学構造60が提供される。第1の光学構造10と同様の形状を備えるが、サイズが小さい第7の光学構造70が提供される。第2の光学構造20と同様の形状を備え、上下のノッチ82を有する第8の光学構造80が提供される。ノッチ82は、第1および第2のノッチ幅84、85によって画定され、第2のノッチ幅85は第1のノッチ幅84よりも大きい。したがって、第8の光学構造80は、サイズの異なる2つの類似した部分的に重なっている平行四辺形からなる形状を有する。第1、第2、第3および第7の光学構造10、20、30、70は、x軸およびy軸において対称性を有する。第4、第5および第6の光学構造40、50、60は、y軸においてのみ対称性を有する。第8の光学構造80は、x軸においてのみ対称性を有する。
【0040】
図4に示される全ての光学構造において、多角形は、フォトニック結晶12内の回折光学構造H1、H2と実質的に平行な辺を備える。しかしながら、光学構造が構造体H1、H2に対して平行ではない辺を有する他の実行可能な実施形態も考えられる。
【0041】
頂点は、図4に示される全ての光学構造に存在する。実際には、これらの頂点は、検査時に使用される拡大の度合いに応じて、わずかに丸みを帯びた角を有する。
【0042】
図5は、規則的なアレイの第2の光学構造20を有するフォトニック結晶12の一例である。
【0043】
図6は、第2の光学構造20のアレイによって形成された、図5に示されるように光がフォトニック結晶12と相互作用するときに光が眼へ一直線の次数にカップリングされる効率を示すグラフである。グラフは、(x軸とy軸における対称性を維持しながら)ノッチ幅24が変化したときに眼へ一直線の次数の効率がどのように変化するかを示している。効率はS偏光およびP偏光についてプロットされている。このグラフでは、ノッチ幅がゼロのときにS偏光の効率が高くなる。ゼロのノッチ幅が実際には第1の光学構造10の単純な平行四辺形の形状に対応することに留意されたい。ノッチ幅24が格子定数pの0.15~0.25の範囲にあるとき、眼へ一直線の回折効率が最小に減少することが分かる。実際には、格子定数pは、導波路での使用を意図している光の中心波長に部分的に基づいて選択される。
【0044】
図6から明らかなように、図5に示されるように、第2の光学構造の規則的なアレイを有するフォトニック結晶を使用することによって、眼へ一直線の次数にカップリングされる光の有効な抑制が達成され得、ノッチ幅24が、格子定数pの0.15~0.25の範囲にある。実際には、効率を完全にゼロに低下させることを避けることが望ましい場合があり、そうでなければ光がないと有効な暗い縞が出力画像に生じ得る。
【0045】
図7は、光が第3の光学構造30のアレイによって形成されたフォトニック結晶12と相互作用するときに光が眼へ一直線の次数にカップリングされる効率を示すグラフである。このグラフは、(x軸とy軸における対称性を維持しながら)平坦な側の長さ34を変化させると効率がどのように変化するかを示している。効率はS偏光およびP偏光についてプロットされている。このグラフでは、平坦な側の幅がゼロのときにS偏光の効率が高くなる。ゼロの平坦な側の幅は、実際には、第1の光学構造10の単純な平行四辺形の形状に対応することに留意されたい。平坦な側の幅34が格子定数pの0.25~0.35の範囲にあるときに回折効率が最小に低下することが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7