IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧
特許7092138メンテナンス範囲最適化装置、メンテナンス範囲最適化方法、及びプログラム
<>
  • 特許-メンテナンス範囲最適化装置、メンテナンス範囲最適化方法、及びプログラム 図1
  • 特許-メンテナンス範囲最適化装置、メンテナンス範囲最適化方法、及びプログラム 図2
  • 特許-メンテナンス範囲最適化装置、メンテナンス範囲最適化方法、及びプログラム 図3
  • 特許-メンテナンス範囲最適化装置、メンテナンス範囲最適化方法、及びプログラム 図4
  • 特許-メンテナンス範囲最適化装置、メンテナンス範囲最適化方法、及びプログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】メンテナンス範囲最適化装置、メンテナンス範囲最適化方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20120101AFI20220621BHJP
   G06Q 10/04 20120101ALI20220621BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
G06Q10/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019541035
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2018033298
(87)【国際公開番号】W WO2019050014
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-03-02
(31)【優先権主張番号】62/555,776
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】谷本 啓
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-099227(JP,A)
【文献】三和 雅史,長期的な軌道保守計画の最適化のための軌道状態評価モデルの構築,日本オペレーションズ・リサーチ学会 2012年秋季研究発表会,公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会,2012年09月12日,p.16-17,ISSN 1883-1893
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数箇所でのメンテナンスが求められる対象におけるメンテナンスの範囲を最適化するための装置であって、
前記メンテナンスが過去に実行された際における、メンテナンスされた箇所のメンテナンス前の状態、メンテナンスコスト、及び移動コストを含む情報を、学習データとして、Q学習を実行して、メンテナンスの範囲とメンテナンスにかかるコスト全体との関係を示すモデルとして、現在の時間より後の区間におけるメンテナンスコストと、現在の時間より後の区間における前記対象の状態の悪さとの合計を表す項を含むQ関数を構築する、学習処理部と、
前記対象のメンテナンス前の状態を特定するデータを前記Q関数に入力し、前記データが入力された前記Q関数を、前記対象の各部分をメンテナンスするかどうかを示すベクトルの式に当てはめて、前記Q関数の値が最大となるときの前記ベクトルを特定し、特定した前記ベクトルを、メンテナンスの範囲として設定する、メンテナンス範囲設定部と、
を備えている、
ことを特徴とするメンテナンス範囲最適化装置。
【請求項2】
コンピュータが、複数箇所でのメンテナンスが求められる対象におけるメンテナンスの
範囲を最適化するための方法であって、
(a)前記メンテナンスが過去に実行された際における、メンテナンスされた箇所のメン
テナンス前の状態、メンテナンスコスト、及び移動コストを含む情報を、学習データとし
て、Q学習を実行して、メンテナンスの範囲とメンテナンスにかかるコスト全体との関係
を示すモデルとして、現在の時間より後の区間におけるメンテナンスコストと、現在の時間より後の区間における前記対象の状態の悪さとの合計を表す項を含むQ関数を構築する、ステップと、
(b)前記対象のメンテナンス前の状態を特定するデータを前記Q関数に入力し、前記データが入力された前記Q関数を、前記対象の各部分をメンテナンスするかどうかを示すベクトルの式に当てはめて、前記Q関数の値が最大となるときの前記ベクトルを特定し、特定した前記ベクトルを、メンテナンスの範囲として設定する、ステップと、
を有する、
ことを特徴とするメンテナンス範囲最適化方法。
【請求項3】
コンピュータによって、複数箇所でのメンテナンスが求められる対象におけるメンテナンスの範囲を最適化するための、プログラムであって、
前記コンピュータに、
(a)前記メンテナンスが過去に実行された際における、メンテナンスされた箇所のメン
テナンス前の状態、メンテナンスコスト、及び移動コストを含む情報を、学習データとし
て、Q学習を実行して、メンテナンスの範囲とメンテナンスにかかるコスト全体との関係
を示すモデルとして、現在の時間より後の区間におけるメンテナンスコストと、現在の時間より後の区間における前記対象の状態の悪さとの合計を表す項を含むQ関数を構築する、ステップと、
(b)前記対象のメンテナンス前の状態を特定するデータを前記Q関数に入力し、前記データが入力された前記Q関数を、前記対象の各部分をメンテナンスするかどうかを示すベクトルの式に当てはめて、前記Q関数の値が最大となるときの前記ベクトルを特定し、特定した前記ベクトルを、メンテナンスの範囲として設定する、ステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数箇所でのメンテナンスが求められる対象におけるメンテナンスの範囲の最適化を実行するための、メンテナンス範囲最適化装置、及びメンテナンス範囲最適化方法に関し、及びそれらを実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地理的に分散した複数の対象に対して、メンテナンスが行われる場合がある。例えば、道路では、車両の通行、経年劣化によって。凹み、ひび割れといった損傷が発生するが、損傷は道路の様々な箇所に分散して発生する。このような場合、地理的に分散して発生している損傷に対して、メンテナンスを行う必要がある。
【0003】
但し、道路のように全長が長く、多数の路線で構成されている場合においては、一度に全ての損傷をメンテナンスすることは物理的に不可能である。このため、従来から、道路においては、路線毎に優先度を設定して、メンテナンスの実行計画が策定されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、道路を構成する路線それぞれ毎に、メンテナンスの優先度を設定するシステムを提案している。特許文献1に開示されたシステムは、まず、道路の属性を示す属性情報と、道路の状態を示す状態情報と、外部から入力される入力情報とを取得する。このうち、属性情報は、道路の幅員、延長、位置、舗設時期、利用用途、利用頻度等を含む。状態情報は、道路の舗装の状態を示す情報であり、ひび割れ率、轍の状態、平坦性等を含む。入力情報は、道路に関して発信された情報であり、例えば、窓口に寄せられた苦情、要望等を含む。
【0005】
続いて、特許文献1に開示されたシステムは、取得した各情報を用いて、各路線におけるメンテナンスの優先度を算出する。具体的には、特許文献1に開示されたシステムは、安全性、利用頻度、用途、地域、交通量、重要度等を加味して、路線毎に、優先度を算出する。この結果、特許文献1に開示されたシステムによれば、早急にメンテナンスすべき路線から順にメンテナンスが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-89593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、道路のようにメンテナンス箇所が、地理的に分散している場合は、メンテナンスのための移動にコストがかかる。従って、メンテナンスの優先順位の高い箇所の近くに、優先順位は次点ではないが、別のメンテナンスすべき箇所が存在する場合は、移動コストの点からは、その場所も一緒にメンテナンスすべきである。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されたシステムでは、路線毎に優先順位が設定されるに過ぎず、メンテナンスすべき範囲の最適化は行われていないため、結果、メンテナンスにかかるコスト全体が上昇してしまうという問題がある。
【0009】
本発明の目的の一例は、上記問題を解消し、地理的に分散した複数の箇所をメンテナンスする場合において、コストの上昇を抑制しつつ、メンテナンスの範囲を最適化し得る、メンテナンス範囲最適化装置、メンテナンス範囲最適化方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一側面におけるメンテナンス範囲最適化装置は、複数箇所でのメンテナンスが求められる対象におけるメンテナンスの範囲を最適化するための装置であって、
前記メンテナンスが過去に実行された際における、メンテナンスされた箇所のメンテナンス前の状態、メンテナンスコスト、及び移動コストを含む情報を、学習データとして機械学習を実行して、メンテナンスの範囲とメンテナンスにかかるコスト全体との関係を示すモデルを構築する、学習処理部と、
前記モデルを用いてメンテナンスの範囲を設定する、メンテナンス範囲設定部と、
を備えている、
ことを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面におけるメンテナンス範囲最適化方法は、複数箇所でのメンテナンスが求められる対象におけるメンテナンスの範囲を最適化するための方法であって、
(a)前記メンテナンスが過去に実行された際における、メンテナンスされた箇所のメンテナンス前の状態、メンテナンスコスト、及び移動コストを含む情報を、学習データとして機械学習を実行して、メンテナンスの範囲とメンテナンスにかかるコスト全体との関係を示すモデルを構築する、ステップと、
(b)前記モデルを用いてメンテナンスの範囲を設定する、ステップと、
を有する、
ことを特徴とする。
【0012】
更に、上記目的を達成するため、本発明の一側面におけるプログラムは、コンピュータによって、複数箇所でのメンテナンスが求められる対象におけるメンテナンスの範囲を最適化するための、プログラムであって、
前記コンピュータに、
(a)前記メンテナンスが過去に実行された際における、メンテナンスされた箇所のメンテナンス前の状態、メンテナンスコスト、及び移動コストを含む情報を、学習データとして機械学習を実行して、メンテナンスの範囲とメンテナンスにかかるコスト全体との関係を示すモデルを構築する、ステップと、
(b)前記モデルを用いてメンテナンスの範囲を設定する、ステップと、
を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、地理的に分散した複数の箇所をメンテナンスする場合において、コストの上昇を抑制しつつ、メンテナンスの範囲を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化装置の構成を具体的に示すブロック図である。
図3図3は、本発明の実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化装置の学習処理における動作を示すフロー図である。
図4図4は、本発明の実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化装置のメンテナンス範囲最適化処理における動作を示すフロー図である。
図5図5は、本発明の実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における、メンテナンス範囲最適化装置、メンテナンス範囲最適化方法、及びプログラムについて、図1図4を参照しながら説明する。
【0016】
[装置構成]
最初に、図1を用いて、本実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化装置の概略構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示す本実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化装置10は、複数箇所でのメンテナンスが求められる対象において、メンテナンスの範囲を最適化するための装置である。図1に示すように、メンテナンス範囲最適化装置10は、学習処理部20と、メンテナンス範囲設定部30とを備えている。
【0018】
このうち、学習処理部20は、メンテナンスが過去に実行された際における、メンテナンスされた箇所のメンテナンス前の状態、メンテナンスコスト、及び移動コストを含む情報を、学習データとして機械学習を実行する。そして、学習処理部20は、機械学習の結果から、メンテナンスの範囲とメンテナンスにかかるコスト全体との関係を示すモデルを構築する。メンテナンス範囲設定部30は、この構築されたモデルを用いて、メンテナンスの範囲を設定する。
【0019】
このように、メンテナンス範囲最適化装置10は、メンテナンスの対象が、地理的に分散した複数の箇所でのメンテナンスが求められるものである場合において、過去のデータから、メンテナンスの範囲とコストとの関係を学習することができる。このため、メンテナンス範囲最適化装置10によれば、地理的に分散した複数の箇所をメンテナンスする場合において、コストの上昇を抑制しつつ、メンテナンスの範囲を最適化することができる。
【0020】
続いて、図2を用いて、本実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化装置10の構成及び機能についてより具体的に説明する。図2は、本発明の実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化装置の構成を具体的に示すブロック図である。
【0021】
本実施の形態において、メンテナンス範囲最適化の対象は、複数箇所での補修が必要となるものであれば特に限定されることはない。具体的な対象としては、例えば、道路、水道管、多数のATM(Automatic Teller Machine)で構築されたATM網等が挙げられる。以下に置いては、メンテナンス範囲最適化の対象が、道路である場合について説明する。
【0022】
また、図2に示すように、本実施の形態では、メンテナンス範囲最適化装置10は、上述した学習処理部20及びメンテナンス範囲設定部30に加え、更に、モデル格納部40と、データ取得部50とを備えている。
【0023】
学習処理部20は、上述したように学習データを用いて機械学習を実行して、モデルを構築し、構築したモデルをモデル格納部40に格納する。また、学習データとしては、まず、メンテナンスされた箇所のメンテナンス前の状態を特定するデータ、例えば、メンテナンスされた箇所の凹凸度合を示すデータが挙げられる。このような凹凸度合を示すデータは、例えば、路面までの距離を測定するレーザ距離計を備えた車両を走らせることによって得ることができる。
【0024】
更に、学習データとしては、メンテナンスにかかったコストを特定するデータ、メンテナンス業者の移動にかかったコストを特定するデータ等も挙げられる。また、これらの学習データは、予め道路に設定された区間毎に用意される。なお、区間の数を以下「I」とする。
【0025】
また、学習処理部20は、本実施の形態では、機械学習としてQ学習を実行し、モデルとしてQ関数を構築する。以下に具体的に説明する。
【0026】
まず、ある区間における道路の状態をsとすると、下記の数1が成立する。tは、基準時から経過時間を示している。
【0027】
【数1】
【0028】
また、各区間をメンテナンスするかどうかを示すベクトルをaとする。aは、I次元のベクトルである。この場合、aは、下記の数2によって表すことができる。また、下記の数2において、Cost(s,a)が、学習によって構築されるQ関数である。βは、未来の不確定な要素をディスカウントする変数であり、下記の数3によって表される。
【0029】
【数2】
【0030】
【数3】
【0031】
この場合において、学習処理部20は、下記の数4に示すデータDを学習データとして取得する。また、下記の数4において、s及びst+1は、下記の数5によって表され、aは、下記の数6によって表される。
【0032】
【数4】
【0033】
【数5】
【0034】
【数6】
【0035】
更に、下記の数4において、αは、状態の悪さに起因するコストまたはリスク評価値が発生する閾値を示している。また、lはメンテナンスにかかったコストを示し、lはメンテナンス業者の移動にかかったコストを示している。
【0036】
また、上記数4において、r(s,a)は、メンテナンスにかかったコストと、状態の悪さに起因するコスト又はリスク評価値とを合計したトータルのコストを表しており、下記の数7によって表される。
【0037】
【数7】
【0038】
加えて、上記数7において、l(s)は、数8に示すように、状態sにおいて生じるコストを示している。また、l(a)は、数9に示すように、メンテナンスaが行われた場合のコストを示している。
【数8】
【0039】
【数9】
【0040】
そして、学習処理部20は、上記数4に示すデータDを学習データとしてQ学習を実行し、Q関数として、下記の数10に示す関数Qθ(=Cost(s,a))を構築する。
【0041】
【数10】
【0042】
また、上記数10において、qは、現在の時間tより後での、区間iにおける状態の悪さを示しており、下記の数11によって表される。
【0043】
【数11】
【0044】
なお、上記の数10において、θは、学習されるパラメタであり、θからθまでをまとめたものを示している。また、θは、メンテナンス優先度が高まっていくゆるやかさを示し、θはメンテナンス優先度が高まる閾値を示し、θはsiに対するメンテナンス優先度の増分のsiが大きいときの極限を示し、θはメンテナンスしないことの平均的な価値の対数を示している。
【0045】
更に、学習処理部20は、学習データとして、新たなデータDを取得すると、下記の数12~数15を用いて、関数Qθを更新する。なお、下記の数15において、kは、反復回数のインデックスを示している。
【0046】
【数12】
【0047】
【数13】
【0048】
【数14】
【0049】
【数15】
【0050】
データ取得部50は、メンテナンス範囲の最適化対象についての入力データを取得し、取得した入力データをメンテナンス範囲設定部30に入力する。この場合の入力データとしては、予め設定されている道路の各区間における道路の状態sを示すデータが挙げられる。
【0051】
メンテナンス範囲設定部30は、本実施の形態では、まず、データ取得部50で取得された入力データを、モデル格納部40に格納されているモデルに入力し、得られる値が最大化するように、メンテナンスの範囲を設定する。具体的には、メンテナンス範囲設定部30は、入力データとベクトルaとを上記数9に示した関数Qθに入力したときに、関数Qθの値を最大値とする、ベクトルaを特定し、特定したベクトルaをメンテナンス範囲として出力する。
【0052】
[装置動作]
次に、本発明の実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化装置10の動作について図3及び図4を用いて説明する。以下の説明においては、適宜図1及び図2を参酌する。また、本実施の形態では、メンテナンス範囲最適化装置10を動作させることによって、メンテナンス範囲最適化方法が実施される。よって、本実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化方法の説明は、以下のメンテナンス範囲最適化装置10の動作説明に代える。
【0053】
最初に、図3を用いて、メンテナンス範囲最適化装置10による学習処理について説明する。図3は、本発明の実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化装置の学習処理における動作を示すフロー図である。
【0054】
図3に示すように、最初に、学習処理部20は、学習データを取得する(ステップA1)。具体的には、学習処理部20は、学習データとして、メンテナンスされた箇所の凹凸度合を示すデータ、メンテナンスにかかったコストを特定するデータ、メンテナンス業者の移動にかかったコストを特定するデータ等を取得する。
【0055】
次に、学習処理部20は、ステップA1で取得したデータを用いて、Q学習を実行して、Q関数を構築する(ステップA2)。また、学習処理部20は、構築したQ関数を、モデル格納部40に格納する。
【0056】
次に、学習処理部20は、ステップA1で取得されたデータの中に、ステップA2で利用されていないデータが存在している場合は、この利用されていないデータを用いて、ステップA2で構築されたQ関数を更新する(ステップA3)。ステップA3は、利用されていないデータが存在しなくなるまで繰り返し実行される。ステップA3の終了により、学習処理は終了する。
【0057】
続いて、図4を用いて、メンテナンス範囲最適化装置10によるメンテナンス範囲の最適化処理について説明する。図4は、本発明の実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化装置のメンテナンス範囲最適化処理における動作を示すフロー図である。
【0058】
図4に示すように、最初に、データ取得部50は、メンテナンス範囲の最適化対象についての入力データを取得する(ステップB1)。具体的には、データ取得部50は、入力データとして、予め設定されている道路の各区間における道路の状態sを示すデータを取得する。
【0059】
次に、メンテナンス範囲設定部30は、本実施の形態では、まず、データ取得部50で取得された入力データを、モデル格納部40に格納されているモデルに入力し、得られる値が最大化するように、メンテナンスの範囲を設定する(ステップB2)。
【0060】
具体的には、ステップB2では、メンテナンス範囲設定部30は、任意のベクトルaを設定し、設定したベクトルaと入力データとを、上記数9に示した関数Qθに入力して出力値を取得する。また、メンテナンス範囲設定部30は、任意のベクトルaの設定と、出力値の取得とを繰り返し実行して、関数Qθの値を最大値とするベクトルaを特定する。そして、メンテナンス範囲設定部30は、特定したベクトルaをメンテナンス範囲として出力する。
【0061】
ステップB2の実行により、本実施の形態では、現在の道路の状態に対して、最適なメンテナンスの範囲が得られることになる。
【0062】
[実施の形態における効果]
以上のように、本実施の形態では、メンテナンスの対象が道路であり、メンテナンスすべき箇所が地理的に分散している場合において、過去の道路メンテナンス時のデータから、メンテナンスの範囲とコストとの関係がQ学習によって学習される。従って、本実施の形態によれば、道路の地理的に分散した複数の箇所をメンテナンスする場合において、コストの上昇を抑制しつつ、メンテナンスの範囲を最適化することができる。
【0063】
また、上述した例では、メンテナンス範囲最適化の対象が、道路である場合について説明したが、本実施の形態では、道路以外にも、水道管、ATM網等にも適用できる。また、水道管が対象となる場合は、メンテナンスされた箇所のメンテナンス前の状態を特定するデータとしては、例えば、水道管の内部の状態を示すデータが用いられる。更に、ATM網が対象となる場合は、メンテナンスされた箇所のメンテナンス前の状態を特定するデータとしては、各ATMにおける紙幣の保有量を特定するデータが用いられる。
【0064】
[プログラム]
本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータに、図3に示すステップA1~A3、図4に示すステップB1~B2を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化装置10とメンテナンス範囲最適化方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、学習処理部20、メンテナンス範囲設定部30及びデータ取得部50として機能し、処理を行なう。
【0065】
また、本実施の形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されても良い。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、学習処理部20、メンテナンス範囲設定部30及びデータ取得部50のいずれかとして機能しても良い。
【0066】
ここで、本実施の形態におけるプログラムを実行することによって、メンテナンス範囲最適化装置10を実現するコンピュータについて図5を用いて説明する。図5は、本発明の実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0067】
図5に示すように、コンピュータ110は、CPU(Central Processing Unit)111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。なお、コンピュータ110は、CPU111に加えて、又はCPU111に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていても良い。
【0068】
CPU111は、記憶装置113に格納された、本実施の形態におけるプログラム(コード)をメインメモリ112に展開し、これらを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。また、本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであっても良い。
【0069】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0070】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0071】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0072】
なお、本実施の形態におけるメンテナンス範囲最適化装置10は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェアを用いることによっても実現可能である。更に、メンテナンス範囲最適化装置10は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。
【0073】
上述した実施の形態の一部又は全部は、以下に記載する(付記1)~(付記6)によって表現することができるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0074】
(付記1)
複数箇所でのメンテナンスが求められる対象におけるメンテナンスの範囲を最適化するための装置であって、
前記メンテナンスが過去に実行された際における、メンテナンスされた箇所のメンテナンス前の状態、メンテナンスコスト、及び移動コストを含む情報を、学習データとして機械学習を実行して、メンテナンスの範囲とメンテナンスにかかるコスト全体との関係を示すモデルを構築する、学習処理部と、
前記モデルを用いてメンテナンスの範囲を設定する、メンテナンス範囲設定部と、
を備えている、
ことを特徴とするメンテナンス範囲最適化装置。
【0075】
(付記2)
付記1に記載のメンテナンス範囲最適化装置であって、
前記学習処理部が、前記機械学習としてQ学習を実行し、前記モデルとしてQ関数を構築し、
前記メンテナンス範囲設定部が、前記Q関数の値が最大化するように、メンテナンスの範囲を設定する、
ことを特徴とするメンテナンス範囲最適化装置。
【0076】
(付記3)
複数箇所でのメンテナンスが求められる対象におけるメンテナンスの範囲を最適化するための方法であって、
(a)前記メンテナンスが過去に実行された際における、メンテナンスされた箇所のメンテナンス前の状態、メンテナンスコスト、及び移動コストを含む情報を、学習データとして機械学習を実行して、メンテナンスの範囲とメンテナンスにかかるコスト全体との関係を示すモデルを構築する、ステップと、
(b)前記モデルを用いてメンテナンスの範囲を設定する、ステップと、
を有する、
ことを特徴とするメンテナンス範囲最適化方法。
【0077】
(付記4)
付記3に記載のメンテナンス範囲最適化方法であって、
前記(a)のステップにおいて、前記機械学習としてQ学習を実行し、前記モデルとしてQ関数を構築し、
前記(b)のステップにおいて、前記Q関数の値が最大化するように、メンテナンスの範囲を設定する、
ことを特徴とするメンテナンス範囲最適化方法。
【0078】
(付記5)
コンピュータによって、複数箇所でのメンテナンスが求められる対象におけるメンテナンスの範囲を最適化するための、プログラムであって、
前記コンピュータに、
(a)前記メンテナンスが過去に実行された際における、メンテナンスされた箇所のメンテナンス前の状態、メンテナンスコスト、及び移動コストを含む情報を、学習データとして機械学習を実行して、メンテナンスの範囲とメンテナンスにかかるコスト全体との関係を示すモデルを構築する、ステップと、
(b)前記モデルを用いてメンテナンスの範囲を設定する、ステップと、
を実行させる、プログラム。
【0079】
(付記6)
付記5に記載のプログラムであって、
前記(a)のステップにおいて、前記機械学習としてQ学習を実行し、前記モデルとしてQ関数を構築し、
前記(b)のステップにおいて、前記Q関数の値が最大化するように、メンテナンスの範囲を設定する、
ことを特徴とするプログラム
【0080】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0081】
この出願は、2017年9月8日に出願された米国出願62/555,776を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、地理的に分散した複数の箇所をメンテナンスする場合において、コストの上昇を抑制しつつ、メンテナンスの範囲を最適化することができる。本発明は、複数箇所でのメンテナンスが求められる、道路、水道管、ATM網等に有用である。
【符号の説明】
【0083】
10 メンテナンス範囲最適化装置
20 学習処理部
30 メンテナンス範囲設定部
40 モデル格納部
50 データ取得部
110 コンピュータ
111 CPU
112 メインメモリ
113 記憶装置
114 入力インターフェイス
115 表示コントローラ
116 データリーダ/ライタ
117 通信インターフェイス
118 入力機器
119 ディスプレイ装置
120 記録媒体
121 バス
図1
図2
図3
図4
図5