(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】発音器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20220621BHJP
H04R 1/34 20060101ALI20220621BHJP
H04R 7/14 20060101ALI20220621BHJP
H04R 1/06 20060101ALI20220621BHJP
H04R 31/00 20060101ALI20220621BHJP
B60Q 5/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H04R1/02 101G
H04R1/02 104Z
H04R1/34 310
H04R7/14 Z
H04R1/06 310
H04R31/00 B
B60Q5/00 650C
B60Q5/00 670A
(21)【出願番号】P 2020003162
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2019045656
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 晋
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-053540(JP,A)
【文献】特開2003-092793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
H04R 1/34
H04R 7/14
H04R 1/06
H04R 31/00
B60Q 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤフラム(72)を振動させることで発音を行う発音器であって、
前記ダイヤフラムと、通電により前記ダイヤフラムを振動させて音を発生させる駆動部(73)と、を有する発音体(7)と、
前記発音体が収容されるベース筒部(21)と、前記ベース筒部の軸方向の一端側に配置されていると共に、前記発音体が配置される領域を放音領域として、該放音領域に前記発音体が発生させた音が導かれる放音孔(25)が形成されている隔壁(24)と、を含み、前記ダイヤフラムおよび前記隔壁によって前記ベース筒部内が第1空間(4)と第2空間(5)とに隔てられたベース(2)と、を備え、
前記ダイヤフラムの振動方向において、前記隔壁から隙間を設けて前記放音領域を覆って配置された保護壁(22)および該保護壁と前記ベース筒部とを連結する立壁(23)とを有し、
前記保護壁と前記立壁および前記隔壁の間に、前記放音孔を通じて前記第1空間に連通する放音空間(6)が構成されていると共に、少なくとも一方向において前記保護壁および前記立壁が開口されることで、前記放音孔を通じて前記第1空間から前記放音空間に導かれた音が出力される放出孔(61)が形成されていることを特徴とする発音器。
【請求項2】
前記保護壁および前記立壁は、前記軸方向に対して交差する方向において前記ベース筒部よりも突き出しており、該突き出した部分において前記保護壁と対向する対向壁(27)が備えられ、
前記放出孔が前記保護壁と前記立壁および前記対向壁によって囲まれて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発音器。
【請求項3】
前記放出孔は、前記立壁の方が前記保護壁よりも長さが短くされることで、前記立壁で構成される方が短手方向、前記保護壁で構成される方が長手方向となる横長形状とされていることを特徴とする請求項2に記載の発音器。
【請求項4】
前記保護壁と前記立壁および前記対向壁のうち前記放出孔を構成している先端が同一平面上において終端され、該先端が構成する一面によって放出面(62)が構成されていることを特徴とする請求項3に記載の発音器。
【請求項5】
前記放出面の法線方向が前記ダイヤフラムの振動方向と平行な平面とされていることを特徴とする請求項4に記載の発音器。
【請求項6】
前記放音領域において、前記隔壁には前記放音孔を構成する貫通孔が複数個形成されていると共に、前記放音孔以外の領域によって梁部(26)が構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の発音器。
【請求項7】
前記梁部のうち前記ダイヤフラム側には、前記ダイヤフラムの前記振動方向への変位を制限するストッパー(261)が備えられていることを特徴とする請求項6に記載の発音器。
【請求項8】
前記ダイヤフラムは、前記第1空間側に凸となる内周部(721)と、前記内周部の外縁から前記第1空間に向かって広がる中空の円錐台形状の外周部(722)と、を有し、
前記ストッパーは、前記内周部と前記外周部との円形の境界部と同径とされていると共に前記梁部から前記ダイヤフラム側に突き出した円筒部(261a)を有していることを特徴とする請求項7に記載の発音器。
【請求項9】
前記境界部には、前記円筒部に対向していて前記ダイヤフラムの変位時に該ダイヤフラムの振動方向に最も変位する円形端部(723)が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の発音器。
【請求項10】
前記駆動部は、
前記ダイヤフラムの一面側に配置された筒状の芯部(74)と、
前記芯部に巻かれたボイスコイル(75)と、
前記ボイスコイルに磁界を印加することで、前記芯部および前記ボイスコイルを変位させ、前記ダイヤフラムを振動させる磁気回路部(76)と、を備え、
前記円形端部は、前記駆動部側に前記芯部の一端が接着剤で固定されていることを特徴とする請求項9に記載の発音器。
【請求項11】
前記梁部は、前記放音領域の中心から放射状に延びる径方向梁(262)と、同心円状に配置された円形梁(263)と、を有し、
前記円筒部は、前記円形梁に備えられていることを特徴とする請求
項8ないし10のいずれか1つに記載の発音器。
【請求項12】
前記ダイヤフラムは、前記第1空間側に凸となる内周部(721)と、前記内周部の外縁から前記第1空間に向かって広がる中空の円錐台形状の外周部(722)と、を有し、
前記放音領域において、前記隔壁が開口されていて前記放音孔が構成され、
前記隔壁のうち前記保護壁と対向する一面(24a)と前記保護壁との間の寸法をYaとし、
前記隔壁における前記一面から前記ダイヤフラムにおける前記内周部と前記外周部との境界部までの距離をYbとして、
Ya ≧ Yb
を満たすことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の発音器。
【請求項13】
前記隔壁のうち前記保護壁と対向する一面(24a)と前記保護壁との間の寸法をYaとし、
前記隔壁における前記一面から前記ダイヤフラムにおける前記内周部と前記外周部との境界部までの距離をYbとして、
Ya < Yb
を満たすことを特徴とする請求項8ないし10のいずれか1つに記載の発音器。
【請求項14】
前記ダイヤフラムの振動方向と交差し、前記立壁の外側で前記隔壁と平行な方向に沿って備えられたコネクタ(29)を有していることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1つに記載の発音器。
【請求項15】
前記立壁は、前記隔壁のうち前記保護壁と対向する一面(24a)と前記保護壁との間に、前記隔壁のうち前記保護壁と対向する一面と前記保護壁との距離と等しい高さで、かつ、該立壁のうちの前記放出孔と対向する壁面から前記放出孔に向かって直線状に形成された支持部(231)を有している、請求項1ないし14のいずれか1つに記載の発音器。
【請求項16】
前記支持部は、前記放音孔を跨いで形成されている、請求項15に記載の発音器。
【請求項17】
前記支持部は、前記隔壁のうち前記保護壁と対向する一面(24a)と前記保護壁との間に、複数本が平行に配置されている、請求項15または16に記載の発音器。
【請求項18】
ダイヤフラム(72)を振動させることで発音を行う発音器の製造方法であって、
第1空間
(4)側に凸となる内周部(721)と前記内周部の外縁から前記第1空間に向かって広がる中空の円錐台形状の外周部(722)とを有した前記ダイヤフラムと、通電により前記ダイヤフラムを振動させて音を発生させる駆動部(73)と、を有する発音体(7)と、
前記発音体が収容されるベース筒部(21)と、前記ベース筒部の軸方向の一端側に配置されていると共に、前記発音体が配置される領域を放音領域として、該放音領域が開口されることで前記発音体が発生させた音が導かれる放音孔(25)が形成された隔壁(24)と、を含み、前記ダイヤフラムおよび前記隔壁によって前記ベース筒部内が
前記第1空
間と第2空間(5)とに隔てられたベース(2)と、
前記ダイヤフラムの振動方向において、前記隔壁から隙間を設けて前記放音領域を覆って配置された保護壁(22)および該保護壁と前記ベース筒部とを連結する立壁(23)と、を有し、
前記保護壁と前記立壁および前記隔壁の間に、前記放音孔を通じて前記第1空間に連通する放音空間(6)が構成されていると共に、少なくとも一方向において前記保護壁および前記立壁が開口されることで、前記放音孔を通じて前記第1空間から前記放音空間に導かれた音が出力される放出孔(61)が形成された発音器を用意し、
前記隔壁のうち前記保護壁と対向する一面(24a)と前記保護壁との間の寸法をYaとし、
前記隔壁における前記一面から前記ダイヤフラムにおける前記内周部と前記外周部との境界部までの距離をYbとして、
Ya > Yb
を満たす設計とし、
気密検査工程として、前記放出孔から治具(10)を挿入すると共に前記放音孔内に前記治具を配置した状態で前記第2空間の圧力を前記第1空間の圧力よりも高くすることで前記ダイヤフラムを前記第1空間側に膨らませることを特徴とする発音器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発音器およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、車両における接近通報装置に用いられる発音器が提案されている。この発音器では、円筒状のベース筒部を有するベースの両端をカバーとケースにて覆うことで筐体を構成し、筐体内に発音体を配置すると共に、カバーの中央に放音孔を備え、発音体より発した音が放音孔から放出されるようになっている。また、この発音器では、車両のどこに搭載されても放音が行えるように、発音器の正面および側面の位置、具体的には発音体と対向するカバーの中央位置およびベースの側面位置に、複数個の放音孔が円環状に並べて配置され、発音器の正面および全周に音を放出できる構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す発音体では、車両のどこに搭載されても良いように複数個の放音孔をベースの側面およびカバーの中央に円環状に並べて配置していることから、放音が必要とされない方向の放音孔からも必然的に音が出てしまう。このため、その音が車室内へ透過したり伝搬したりすることで、車室内騒音が発生し得るという課題がある。
【0005】
また、特許文献1に示す発音体を車両に搭載する場合、発音器の正面から放音が行われることから、カバー側に音の通り路のスペースを確保する必要があったため、発音体の正面に車両部品を近接して搭載させることができない。このため、車両の狭い空間には発音器を配置することができないという課題がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、より車室内騒音を少なくできると共に、正面の位置に車両部品を近接配置することが可能な構成の発音器およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ダイヤフラム(72)を振動させることで発音を行う発音器であって、ダイヤフラムと、通電によりダイヤフラムを振動させて音を発生させる駆動部(73)と、を有する発音体(7)と、発音体が収容されるベース筒部(21)と、ベース筒部の軸方向の一端側に配置されていると共に、発音体が配置される領域を放音領域として、該放音領域に発音体が発生させた音が導かれる放音孔(25)が形成されている隔壁(24)と、を含み、ダイヤフラムおよび隔壁によってベース筒部内が第1空間(4)と第2空間(5)とに隔てられたベース(2)と、を備え、ダイヤフラムの振動方向において、隔壁から隙間を設けて放音領域を覆って配置された保護壁(22)および該保護壁とベース筒部とを連結する立壁(23)とを有し、保護壁と立壁および隔壁の間に、放音孔を通じて第1空間に連通する放音空間(6)が構成されていると共に、少なくとも一方向において保護壁および立壁が開口されることで、放音孔を通じて第1空間から放音空間に導かれた音が出力される放出孔(61)が形成されていることを特徴としている。
【0008】
例えば、請求項2に記載したように、保護壁および立壁は、軸方向に対して交差する方向においてベース筒部よりも突き出しており、該突き出した部分において保護壁と対向する対向壁(27)が備えられ、放出孔が保護壁と立壁および対向壁によって囲まれて構成される。このような構成において、請求項3に記載したように、放出孔が、立壁の方が保護壁よりも長さが短くされることで、立壁で構成される方が短手方向、保護壁で構成される方が長手方向となる横長形状とされるようにすると好ましい。このようにすれば、ダイヤフラムの振動方向を短手方向にできて製品の厚みを小さくできるようにしつつ、横長形状であっても音圧を出すために必要な開口面積を確保することが可能となる。また、このような構成では、例えば、請求項4に記載したように、保護壁と立壁および対向壁のうち放出孔を構成している先端を同一平面上において終端させ、該先端が構成する一面によって放出面(62)を構成することができる。そして、例えば、請求項5に示すように、放出面の法線方向をダイヤフラムの振動方向と平行な平面とすることができる。
【0009】
請求項6に記載の発明では、放音領域において、隔壁には放出孔を構成する貫通孔が複数個形成されていると共に、放出孔以外の領域によって梁部(26)が構成されていることを特徴としている。
【0010】
このように、放音領域の内の放出孔以外の領域に梁部を備えることができる。これにより、走行時の被水や飛び石が発音体に到達することを抑制でき、水や石の接触による発音体の破損を防止できる。
【0011】
請求項7に記載の発明では、梁部のうちダイヤフラム側には、ダイヤフラムの振動方向への変位を制限するストッパー(261)が備えられていることを特徴としている。
【0012】
これにより、気密検査によるダイヤフラムの過度な変形による破損を抑制することが可能となる。例えば、請求項8に記載したように、ダイヤフラムは、第1空間側に凸となる内周部(721)と、内周部の外縁から第1空間に向かって広がる中空の円錐台形状の外周部(722)と、を有した構成とされ、ストッパーは、内周部と外周部との円形の境界部と同径とされていると共に梁部からダイヤフラム側に突き出した円筒部(261a)を有した構成とされる。この場合、請求項9に記載したように、境界部に、円筒部に対向していてダイヤフラムの変位時にダイヤフラムの振動方向に最も変位する円形端部(723)を形成することができる。このような円形端部を形成することで、ダイヤフラムの中でも強度が高い部分にストッパーの円筒部を当接させられるようにできる。
【0013】
請求項10に記載の発明では、駆動部は、ダイヤフラムの一面側に配置された筒状の芯部(74)と、芯部に巻かれたボイスコイル(75)と、ボイスコイルに磁界を印加することで、芯部およびボイスコイルを変位させ、ダイヤフラムを振動させる磁気回路部(76)と、を備え、円形端部は、駆動部側に芯部の一端が接着剤で固定されていることを特徴としている。
【0014】
このように、円形端部のうちの駆動部側に芯部の一端を接着剤で固定することで、芯部とダイヤフラムを一体化できる。
【0015】
また、請求項11に記載したように、例えば、梁部は、放音領域の中心から放射状に延びる径方向梁(262)と、同心円状に配置された円形梁(263)と、を有した構成とされ、ストッパーの円筒部を円形梁に備えた構成にできる。
【0016】
請求項12に記載の発明では、ダイヤフラムは、第1空間側に凸となる内周部(721)と、内周部の外縁から第1空間に向かって広がる中空の円錐台形状の外周部(722)と、を有し、放音領域において、隔壁が開口されていて放音孔が構成され、隔壁のうち保護壁と対向する一面(24a)と保護壁との間の寸法をYaとし、隔壁における一面からダイヤフラムにおける内周部と外周部との境界部の円形端部までの距離をYbとして、Ya≧Ybを満たすことを特徴としている。
【0017】
このように、隔壁のうち放音領域の対応する部分を開口させて放音孔とすることで、ストッパーが備えられていない構造とされても良い。その場合でも、Ya≧Ybの関係を満たしていれば、治具(10)を用いることで短い時間で安定した気密検査を行うことが可能となる。
【0018】
請求項13に記載の発明では、隔壁のうち保護壁と対向する一面(24a)と保護壁との間の寸法をYaとし、隔壁における一面からダイヤフラムにおける内周部と外周部との境界部までの距離をYbとして、Ya < Ybを満たすことを特徴としている。
【0019】
気密検査の際に、ダイヤフラムと治具の間に隙間Ydを設ける場合は、治具の厚みYcを小さくすることができる。このため、Ya<Ybとすることができ、製品の厚みを小さくできる。
【0020】
請求項14に記載の発明では、ダイヤフラムの振動方向と交差し、立壁の外側で隔壁と平行な方向に沿って備えられたコネクタ(29)を有していることを特徴としている。このような構成とすれば、コネクタを備えても製品の厚みを小さくできる。
【0021】
請求項15に記載の発明では、立壁は、隔壁のうち保護壁と対向する一面(24a)と保護壁との間に、隔壁のうち保護壁と対向する一面と保護壁との距離と等しい高さで、かつ、該立壁のうちの放出孔と対向する壁面から放出孔に向かって直線状に形成された支持部(231)を有している。
【0022】
このように、支持部を形成することにより、保護壁の強度の向上に加えて保護壁の配置場所の安定化が図れる。例えば、支持部については、請求項16に記載の発明のように、放音孔を跨いで形成されるようにできるし、請求項17に記載の発明のように、複数本が平行に配置されるようにもできる。
【0023】
請求項18に記載の発明は、ダイヤフラム(72)を振動させることで発音を行う発音器の製造方法であって、隔壁(24)のうち保護壁と対向する一面(24a)と保護壁(22)との間の寸法をYaとし、隔壁における一面からダイヤフラム(72)における内周部(721)と外周部(722)との境界部までの距離をYbとして、Ya>Yb を満たす設計とし、気密検査工程として、放出孔から治具(10)を挿入すると共に放音孔内に治具を配置した状態で第2空間(5)の圧力を第1空間(4)の圧力よりも高くすることでダイヤフラムを第1空間側に膨らませることを特徴としている。
【0024】
このように、少なくともYa>Ybとすることで、治具を使用して気密検査の安定化と検査時間の短縮に貢献することができる。
【0025】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態にかかる発音器の正面図である。
【
図9】ケースを外した状態での発音器の背面図である。
【
図10】気密検査時の様子を示した発音器の断面図である。
【
図11】気密検査時にストッパーとダイヤフラムとが当接している様子を示した拡大図である。
【
図12】第2実施形態にかかる発音器を立壁の位置で切断し、正面方向から見た断面図である。
【
図14】第3実施形態にかかる発音器を立壁の位置で切断し、正面方向から見た断面図である。
【
図16】
図14に示す発音器に対して治具を用いて気密検査を行う時の様子を示した断面図である。
【
図17】第4実施形態にかかる発音器の正面図である。
【
図22】気密検査時にストッパーとダイヤフラムとが当接している様子を示した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0028】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態の発音器は、例えば自動車の車室外に設置され、警報音を発生させるために使用される。発音器は、内部に2つの空間が形成された筐体を備え、筐体内に配置される発音体にて発音を行う。
【0029】
具体的には、
図1~
図6に示すように、発音器の筐体1は、それぞれ樹脂製のベース2とケース3との2部品で構成されている。
【0030】
ベース2は、略長円筒状のベース筒部21を備え、このベース筒部21の軸方向の一端側の開口部を覆うように、保護壁22が形成されていると共に、他端側の開口部を覆うように長円板状のケース3が嵌合され、接着にて気密的に接合されている。後述する発音体7は、ベース筒部21の他端側の開口部に組み付けられるが、この開口部に長円形状のケース3が気密的に接着されることで、発音体7が組み付けられている側の防水・気密性が確保されている。
【0031】
保護壁22は、
図6に示すように、ベース筒部21の外縁のうちの一方向を除く部分に沿って立設された立壁23によってベース筒部21と連結されており、ベース筒部21の一端側の端面を構成する隔壁24の一面24aとの間に所定の寸法Yaの隙間を設けて配置されている。この保護壁22によってベース筒部21の一端側開口部、より詳しくは一端側開口部の内側に位置している発音体7が正面方向(
図1の法線方向)から直視できないように覆われることで、発音体7への水や雪および飛び石などの異物の侵入を抑制される。
【0032】
そして、
図6、
図7に示すように、ベース筒部21内の空間は、ベース筒部21内に設けられた隔壁24により2分割されている。具体的には、隔壁24には、発音体7が発生させた音を導く放音孔25およびその周囲の梁部26が備えられており、放音孔25および梁部26を覆うように発音体7が配置されることで、ベース筒部21内の空間が2分割されている。そして、ベース筒部21と隔壁24および発音体7に備えられるダイヤフラム72によって第1空間4が形成され、ベース筒部21と隔壁24とケース3およびダイヤフラム72によって第2空間5が形成されている。
【0033】
さらに、第1空間4は、保護壁22および立壁23によって構成される後述する放音空間6とも連通しており、第1空間4に発せられた音が放音空間6を通じて
図1の下方に備えられる放出孔61より出力されるようになっている。以下、放出孔61からの音の出力方向を放音方向という。
【0034】
図1および
図8に示すように、隔壁24は略長円形状によって構成されており、その外縁部において保護壁22と反対側に突出すようにベース筒部21が設けられている。そして、ベース筒部21および隔壁24の外周であって、長円形状を長径に沿って区画した半分に沿うように立壁23が形成され、さらに長円形状の長手方向の両端から接線方向、換言すれば放出方向に向かって立壁23が延設されている。
【0035】
本実施形態の場合、保護壁22および立壁23は、ベース筒部21よりも放出方向側に突出すように延設されている。また、
図2、
図7に示すように、この保護壁22のうちベース筒部21から突出すように延設された部分と対向するように、ベース筒部21を挟んで保護壁22と反対側に対向壁27が形成されている。そして、保護壁22と立壁23および対向壁27が振動方向に交差する一方向において開口されている。これにより、
図2に示すように保護壁22、立壁23および対向壁27によって囲まれた放出孔61が構成され、さらに放出孔61よりも筐体1の内側に保護壁22と立壁23および隔壁24で囲まれた放音空間6が構成されている。放出孔61は、
図2に示すように、所定幅W1を有し、かつ、その幅方向と直交する方向を長手方向とする扁平形状で構成されることで、車両への適用が容易になっている。つまり、放出孔61は、立壁23の方が保護壁22よりも短くされることで、立壁23で構成される方が短手方向、保護壁22で構成される方が長手方向となる横長形状とされている。このため、ダイヤフラム72の振動方向を短手方向とすることで製品の厚みを小さくできるようにしつつ、横長形状であっても音圧を出すために必要な開口面積が確保できるようにしている。
【0036】
なお、
図5に示すように、保護壁22と立壁23および対向壁27がベース筒部21よりも所定長さP1だけ突き出す構造とされているが、突き出していなくても良い。ただし、これらを突き出す構造とすると、その長さを調整することで、音の共鳴効果が得られたり、共鳴周波数の調整による音質、音圧を可変させられたりするという効果が得られる。また、保護壁22と立壁23および対向壁27がベース筒部21よりも突き出す構造とされているため、対向壁27を備えてあるが、突き出す構造とされないのであれば、対向壁27についてはなくても良い。
【0037】
図1、
図7、
図8に示すように、保護壁22、立壁23および対向壁27の先端は、同一平面上において終端されている。以下、この保護壁22、立壁23および対向壁27の先端が構成する一面を放出面62という。本実施形態の場合、放出面62は、
図7に示すように、ダイヤフラム72の振動方向と平行な平面とされ、かつ、
図8に示すように、ベース筒部21の長手方向とも平行な平面とされている。放出孔61より出力される音は、この放出面62の法線方向を中心として放出されて外部に伝えられる。このため、放出孔61の位置や放出面62の法線方向に基づいて音の放出方向が特定されている。
【0038】
また、隔壁24の中央部近辺の領域を電気信号に基づいて音を発生させる発音体7が配置される放音領域として、放音領域には、
図1、
図8に示すように、隔壁24に貫通孔を形成することで構成した放音孔25が複数形成されている。そして、
図6、
図7に示すように、発音体7が、放音孔25を塞ぐようにして第2空間5に配置されている。より詳しくは、放音孔25は、発音体7に備えられたダイヤフラム72によって塞がれている。このため、第2空間5は、ダイヤフラム72によって第1空間4と隔てられる。
【0039】
なお、ダイヤフラム72等によって第1空間4と第2空間5との間の気密性が確保されている。このため、温度変化によりダイヤフラム72に加わる圧力の変動を抑制するために、
図1、
図8に示すように、隔壁24には、放音領域とは異なる場所に、両空間を連通させる通気孔241を形成してある。通気孔241には、空気を通しつつ水を遮断する材質で構成された通気膜242が貼られており、この通気膜242によってダイヤフラム72に加わる圧力変動を調整している。
【0040】
図1、
図6~
図8に示すように、放音領域のうち放音孔25以外の部分は、梁部26とされ、梁部26のうちのダイヤフラム72側の一面には梁部26が部分的に突出させられて構成されたストッパー261が形成されている。
図1および
図8に示すように、本実施形態の場合、梁部26は、放音領域の中心から放射状に延びる径方向梁262と同心円状に配置された円形梁263とを有した構成とされている。また、本実施形態の場合、円形梁263は、3つ備えられている。
【0041】
本実施形態では、径方向梁262を6本等間隔に備えている。そのうちの120°の角度で等間隔に3本が円形梁263のうち最も内側に位置しているものから放音領域の外周まで形成され、残りの3本が円形梁263のうち二番目のものから放音領域の外周まで形成されている。
【0042】
梁部26は、放音領域のうち放音孔25以外の領域を覆っていることから、走行時の被水や飛び石が発音体7に到達することを抑制し、水や石の接触による発音体7の破損を防止する。本実施形態では、梁部26を含む隔壁24のうち保護壁22と対向する一面24aは平坦面とされているが、凹凸を有していても良い。ただし、樹脂成形によってベース2全体を一度に製造する場合、この一面24aと保護壁22との間にスライド型が配置されることから、スライド型の型抜きが行える形状とされる。
【0043】
また、ストッパー261は、気密検査の際にダイヤフラム72が変位したとき、ダイヤフラム72に接触し、振動方向へのダイヤフラム72の変位を制限するものである。これにより、ダイヤフラム72の過度な変形による破損が抑制される。
図6、
図7に示すように、ストッパー261は、ダイヤフラム72に対向するように配置されており、ダイヤフラム72に対応した形状とされている。
【0044】
具体的には、ストッパー261は、径方向梁262と3つの円形梁263のうちの中心から二番目のものをダイヤフラム72側に突出させることにより構成されている。ストッパー261のうち円形梁263から突出させられた部分は、円形梁263に沿って円形状に突き出させられた円筒部261aを構成している。また、ストッパー261のうち径方向梁262から突出させられた部分は、円筒部261aを中心として径方向外方に向かって傾斜させられた傾斜部261bを構成している。ストッパー261のうち一面24aからの距離を高さとすると、円筒部261aは、全周同じ高さとされていると共に最も高くされている。また、傾斜部261bは、円筒部261aと連結されている部分では円筒部261aと同じ高さとされ、円筒部261aから離れると徐々に高さが低くされている。
【0045】
なお、傾斜部261bは、径方向梁262の全部に形成されているが、一部だけ、例えば二番目の円形梁263から放音領域の外周まで形成されているもののみ、逆に、一番内周側の円形梁263から放音領域の外周まで形成されているもののみに形成されていても良い。
【0046】
図1~4、
図6~
図9に示すように、ベース筒部21の外側には、発音体7を図示しない外部ハーネスに電気的に接続するための略四角筒状のコネクタ29が形成されている。コネクタ29は、ダイヤフラム72の振動方向と交差し、立壁23の外側で隔壁24と平行な方向に沿って備えられていて、製品の厚みが小さくできる構造とされている。
図6に示すように、ベース筒部21のうちコネクタ29が形成された部分には、ベース筒部21を貫通してコネクタ29の内部と第2空間5とを接続する貫通孔291が形成されており、この貫通孔291を通るようにターミナル9が圧入されている。
【0047】
ターミナル9は、ベース筒部21の内部において、接着剤によってベース筒部21に固定されており、ターミナル9を配置するために形成された貫通孔291は、この接着剤とターミナル9とによって塞がれている。ターミナル9は、第2空間5において後述するリードピン78に接続されている。
【0048】
ターミナル9は、
図6に示すように、一方向を長手方向とする平板棒状の端子部91と、リードピン78に接続される接続部92とを有している。端子部91は、貫通孔291に挿し込まれる部分であり、一端が第2空間5側に位置し、他端がコネクタ29の内部に位置するように配置される。接続部92は、端子部91のうち第2空間5側に位置させられる一端に接続され、端子部91の長手方向に対して交差する方向、本実施形態では直交する方向に屈曲した形状とされている。
【0049】
図6、
図7、
図9に示すように、発音体7は、フレーム71と、ダイヤフラム72と、ダイヤフラム72を振動させる駆動部73とを備えている。
【0050】
フレーム71は、略段付円筒状とされ、樹脂製とされている。フレーム71は、軸方向の両端部において開口しており、一方の開口部を構成する開口幅が広い方の円筒部711と、他方の開口部を構成する開口幅が狭い方の円筒部712と、円筒部711と円筒部712とを繋ぐ円盤状の段付部713とを有している。円筒部711が構成する開口部は、ダイヤフラム72によって塞がれている。そして、フレーム71は、ダイヤフラム72によって開口部が塞がれた側の端部において、隔壁24に接着にて気密的に接合されることでベース2に固定されている。
【0051】
また、
図6、
図9に示すように、段付部713に、フレーム71の内部と外部とを連通させる貫通孔714が形成されており、貫通孔714を通じてフレーム71の内外で連通した第2空間5が構成されている。そして、第2空間5は、隔壁24およびダイヤフラム72によって第1空間4と隔てられている。
【0052】
ダイヤフラム72は、振動板を構成するもので、振動させられることによって音を発生させる。
図6に示すように、ダイヤフラム72の内周部721は、第1空間4側に向かって凸となる凸面状とされている。また、ダイヤフラム72の外周部722は、第1空間4側に傾斜している。具体的には、外周部722は、内周部721の外縁から第1空間4側に向かって広がる中空の円錐台形状とされている。
【0053】
内周部721と外周部722との円形の境界部とストッパー261の円筒部261aとは、同径とされていて対向配置されている。また、外周部722の傾斜と傾斜部261bとは、同じ形状とされていて対向配置されている。さらに、
図6に示すように、内周部721と外周部722との円形の境界部において、ダイヤフラム72には円筒部261aに対向していてダイヤフラム72の変位時にダイヤフラム72の振動方向に最も変位する円形端部723が形成されている。気密検査の際にダイヤフラム72が変位したときには、
図10、
図11に示すように円形端部723に円筒部261aが当接すると共に、外周部722に傾斜部261bが当接するようになっている。この円形端部723は、駆動部73側で発音体7に備えられるボビン74の一端が接着剤で固定され、ボビン74とダイヤフラム72とが一体化されている。このため、ダイヤフラム72の中でも強度が高い部分となり、円筒部261aが硬く強度の高い部分と当接させられるようにできる。
【0054】
後述するように、発音体7では、ダイヤフラム72の振動によって音が発生する。音圧が十分に大きい音を発生させるためには、ダイヤフラム72とストッパー261との距離をある程度大きくすることが必要となる。このため、ダイヤフラム72のうちストッパー261に接触する面と、ストッパー261のうちダイヤフラム72に接触する面との距離は、発音動作によってはダイヤフラム72がストッパー261に接触しないように、発音動作によるダイヤフラム72の変位量よりも大きくされている。そして、気密検査の際には、発音動作の際よりもダイヤフラム72が大きく変位してストッパー261に当接するようになっている。
【0055】
例えば、ダイヤフラム72のうちストッパー261に接触する面と、ストッパー261のうちダイヤフラム72に接触する面との間の距離が1mm~3mm程度とされている。
【0056】
また、外周部722のうち内周部721とは反対側の端部には、外周部722の軸方向から見た形状がリング状とされ、半径方向に沿った断面がS字状とされたばね部724が接続されている。ダイヤフラム72は、ばね部724の端部においてフレーム71に接着されている。本実施形態では、内周部721、外周部722、円形端部723、ばね部724は、一枚の薄膜で形成されている。
【0057】
駆動部73は、フレーム71の2つの開口部のうち開口幅が狭い方の円筒部712を塞ぐように配置されている。
図6に示すように、駆動部73は、ボビン74と、ボイスコイル75と、磁気回路部76とを備えている。
【0058】
ボビン74は、円筒状とされており、ダイヤフラム72の内周部721の外縁において円形端部723の裏面に接続され、ダイヤフラム72から第2空間5内方に向かって立設されている。ボビン74の外側には、ボイスコイル75が巻かれている。ボビン74は、芯部に相当する。
【0059】
磁気回路部76は、ボイスコイル75に磁界を印加するためのものであり、一面および他面を有する円板形状の磁石761と、磁石761の一面に接続されたトッププレート762と、磁石761の他面に接続されたヨーク763とを備えている。ヨーク763の底部に磁石761およびトッププレート762が配置されることで磁気回路部76が構成されており、ヨーク763の円筒部と磁石761およびトッププレート762との間に隙間が設けられ、この隙間内にボビン74およびボイスコイル75が入り込むようにして配置されている。ヨーク763は、円筒部における開口入口側から外周部全域において、円筒部712の内側に嵌め込まれ、接着されることで磁気回路部76がフレーム71と一体とされている。
【0060】
このように構成されることで、ボビン74に巻かれたボイスコイル75には、トッププレート762の側面と、ヨーク763の円筒部の側面との間に発生する磁界が印加されるようになっている。このため、磁界が印加された状態のボイスコイル75に電流を流すと、ボビン74はヨーク763の円筒部に嵌め込まれた状態で軸方向に変位する。これにより、ダイヤフラム72が振動して、音が発生する。
【0061】
また、発音体7はボイスコイル75と電気的に接続されたリードピン78を備えている。図示していないが、リードピン78は、ボイスコイル75にはんだ付けなどで電気的に接続されており、ボイスコイル75から径方向外側に向かって引き出されている。本実施形態では、リードピン78はフレーム71に一体成型等によって一体化され、フレーム71の外部に延設され、ターミナル9と接するようにレイアウトされている。そして、
図9に示すように、リードピン78がターミナル9に形成された接続溝に圧入されることで、ボイスコイル75と外部との電気的接続が可能となっている。
【0062】
以上のようにして、本実施形態の発音器が構成されている。このように構成された発音器は、車室外に配置され、より詳細には、放出孔61側が車両前方側等に位置するようにして、車両のフロントバンパー内等に配置される。そして、発音器の外部からの音源信号に基づいてボイスコイル75への通電が行われると、
図2、
図7に示した振動方向にダイヤフラム72が振動し、発音体7より音が発せられる。この音が、第1空間4や放音孔25および放音空間6などを通り、放出孔61から外部に放出される。これにより、電気自動車などの走行音が静かな車両であっても、発音器より警報音を発生させることで、周囲に車両の接近を報知することが可能となる。
【0063】
また、発音器の製造工程の1つとして気密検査工程を行っている。この気密検査工程の際には、第1空間4と第2空間5との間に圧力差が発生させられる。具体的には、放出孔61側より通気孔241を通じて空気を送り込むことで第2空間5が加圧されて、第2空間5の圧力が第1空間4の圧力よりも高くなる。これにより、
図10、
図11に示すように、ばね部724の変形に基づいてダイヤフラム72の内周部721および外周部722が第1空間4に向かって変位し、ダイヤフラム72は第1空間4側に膨らむように変形する。
【0064】
このとき、変形したダイヤフラム72はストッパー261に接触し、これによりダイヤフラム72の変形が制限される。すなわち、筐体1の内部に配置されたストッパー261が、ダイヤフラム72を押さえる治具の代わりにダイヤフラム72の反転や変形を抑制する。したがって、ダイヤフラム72を押さえる治具を使用せずに気密検査を行うことが可能となる。また、ダイヤフラム72がストッパー261に接触する際に、円形端部723が円筒部261aに当接し、外周部722が傾斜部261bに当接するが、強度の低い内周部721は円筒部261aの内側に位置していてストッパー261に接触しない。このため、ダイヤフラム72を破損から保護できる。
【0065】
このような構造の発音器では、放音孔25を覆うように保護壁22を備えているため、保護壁22と立壁23および隔壁24等で構成される放音空間6を通じて放出孔61から出力される。すなわち、発音体7が発した音が一方向から出力されるようにできる。このため、必要とされない方向への放音が行われることを抑制でき、不要な音が車室内へ浸透したり伝搬したりすることを抑制できる。
【0066】
また、発音器の正面の位置、つまりダイヤフラム72の振動方向において、放音孔25を覆うように保護壁22を備えている。このため、車両における発音器の搭載空間のうち保護壁22と隣接する位置に、音の通り路となるスペースを確保する必要がない。つまり、保護壁22と近接して車両部品を搭載することが可能となり、車両の狭い空間にも発音器を配置することが可能になる。したがって、正面の位置に車両部品を近接配置することが可能な発音器にできる。
【0067】
さらに、本実施形態の構造の発音器では、筐体1を型成形によって形成できる。例えば、筐体1の保護壁22および立壁23の外壁面を構成するための下型と、ベース筒部21や隔壁24の内壁面を構成するための上型と、放音空間6を構成するためのスライド型を用い、樹脂成形によって筐体1を形成できる。このため、ベース筒部21の一端側についてはケース3で覆う必要があるが、他端側は保護壁22で覆われていることから、その部分をカバーなどで覆う必要がない。したがって、筐体1をベース2とケースの2部品で構成することが可能となり、部品点数の削減、ひいては製品コストの削減を図ることが可能となる。
【0068】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して放音孔25の形状を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0069】
図12および
図13に示すように、本実施形態では、放音孔25を隔壁24に形成した複数の円形貫通穴によって構成している。放音孔25を構成する円形貫通穴は、放音領域の中心から放射状に回転対称に形成されている。そして、隔壁24のうち放音孔25が形成されていない部分が梁部26とされている。隔壁24のうちストッパー261の円筒部261aと対応する部分には放音孔25が形成されずに梁部26とされており、この部分に円筒部261aが形成されている。
【0070】
なお、ストッパー261について、第1実施形態で説明した傾斜部261bが備えられていても良いが、本実施形態の場合は、傾斜部261bについては備えていない。
【0071】
このように、放音孔25を円形貫通孔で構成することもできる。第1実施形態も同様であるが、放音孔25の形状や寸法、レイアウトに基づいて、共鳴効果が得られたり、共鳴周波数を調整することを可能となる。このため、放音孔25の形状や寸法、レイアウトについては任意に調整でき、本実施形態のように複数の円形貫通孔によって構成することもできる。
【0072】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して放音孔25の形状を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0073】
図14および
図15に示すように、本実施形態では、隔壁24のうちの放音領域と対応する部分を円形状に開口させることで放音孔25としている。このように、放音領域と対応するように放音孔25を形成するようにしても良い。
【0074】
また、このような構造とする場合、ストッパー261が備えられていないことになる。このため、気密検査を行う場合には、
図16に示すように、ストッパー261と同じ形状の先端部を備えた治具10を用いている。この場合、保護壁22と隔壁24の一面24aの間の寸法Yaと、一面24aからダイヤフラム72の円形端部723までの距離Ybと、治具10の厚みYcとの間において、次式を満たす関係が成り立つようにしている。
【0075】
(数1) Ya ≧Yc ≧ Yb
まず、気密検査の際に、放出孔61から治具10を挿入し、放音孔25まで届くようにする必要がある。このため、厚みYcは、寸法Ya以下であることが必要となる。また、気密検査の際に、ダイヤフラム72と治具10との間が若干の隙間を有する状態になるか当接した状態になるようにすると、気密検査の結果の安定化に貢献することができるため、治具10の厚みYcは距離Yb以上としている。したがって、少なくともYa≧Ybとすることで、治具10を使用して気密検査の安定化と検査時間の短縮に貢献することができる。
【0076】
このように、隔壁24のうち放音領域の対応する部分を開口させて放音孔25とすることで、ストッパー261が備えられていない構造とされても良い。その場合でも、治具10を用いることで気密検査を行うことが可能となる。
【0077】
なお、気密検査の際に、ダイヤフラム72と治具10の間に隙間Ydを設ける場合は、治具10の厚みYcを小さくすることができるため、製品の厚みを小さくすることができ、Ya<Ybとすることができるが、少なくとも隙間Ydはストッパー261とダイヤフラム72の隙間のYe相当が望ましい。
【0078】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1、第2実施形態に対してベース2の形状を変更したものであり、その他については第1、第2実施形態と同様であるため、第1、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、ここでは第1実施形態の構造においてベース2の形状を変更する場合を例に挙げて説明するが、第2実施形態の構造に対しても適用可能である。
【0079】
図17~
図21に示すように、本実施形態では、保護壁22と隔壁24の一面24aとの間に、立壁23の一部として支持壁231を保護壁22と一面24aとの距離と等しい高さで形成している。支持壁231は、立壁23のうち放出孔61と対向する壁面から放出孔61に向かって直線状に形成されており、
図17および
図21に示されるように一面24aのうちの最も放出孔61側の端部に至るように形成されている。この支持壁231が備えられることにより、保護壁22と梁部26を含めた隔壁24の一面24aとが連結され、一面24aと保護壁22との間の距離が所定距離で安定化させられると共に、梁部26が隔壁24や保護壁22に対して支持されるようにできる。
【0080】
これにより、保護壁22の強度やダイヤフラム72と当接するストッパー261の強度を高められると共に、保護壁22やストッパー261の配置場所を安定化させられ、その結果、ダイヤフラム72の変位量の安定化を図ることが可能となる。
【0081】
また、支持壁231が放出孔61の少なくとも一部を跨ぐように形成されている。このため、放出孔61を通じて斜め方向から放出孔61内を見たときに、支持壁231によって奥側の放音孔25を構成する梁部26の壁面などが隠れるようにできる。これにより、放出孔61から放音孔25が視認しにくくなるようにできる。
【0082】
また、支持壁231が放音空間6を仕切るように形成されることから、その仕切り方に応じて、仕切られた2つの部屋での共鳴周波数を調整することができ、それにより音響効果が得られる。
【0083】
なお、本実施形態では支持壁231が放音孔25の全部を跨ぐように形成している。しかしながら、ストッパー261の強度の向上、ダイヤフラム72の変位量の安定化、放音孔25の奥側の遮蔽、音響効果のいずれの効果を得るだけであれば、少なくとも放出孔61の一部を跨ぐように支持壁231が形成されていれば良い。ただし、円形梁263のうちのストッパー261を構成しているものを跨ぐようにして支持壁231を形成し、ストッパー261を支持壁231で両持ち支持できる寸法とするのが好ましい。
【0084】
さらに、支持壁231が放出孔61に向かって直線状とされており、スライド型を用いてベース2を製造する際に型抜きが行える形状になっている。したがって、ベース2を容易に成形することが可能となる。そして、成形によってベース2を製造する際に、製造誤差によって梁部26の形成位置が変化し得るが、支持壁231を備えるようにしているため、その製造誤差の発生も抑制される。このため、ストッパー261を含めた梁部26の成形寸法の安定化を図ることも可能となる。
【0085】
また、本実施形態では、ダイヤフラム72の振動方向から見て、ベース筒部21が長円形状ではなく、長方形状の四隅を傾斜させた八角形としている。そして、立壁23もベース筒部21の外形に沿った形状とされている。すなわち、ベース筒部21を八角形の中心線を通る直線、
図17で言えばXIX-XIX線に沿って区画した場合に、その区画された一方に沿うように立壁23が形成されている。さらに、区画された他方においては、ベース筒部21の長手方向の両端から八角形の相対する短辺に沿って、換言すれば放出方向に向かって立壁23が延設されている。
【0086】
このように、ベース筒部21を長円形状にして放出孔61と反対側において角部を円弧状とするのではなく、角部を傾斜させて面取りしたような形状とすることもできる。このように、ベース筒部21の角部を傾斜させた形状にすると、放音空間6の形状が変化することから、ベース筒部21を長円形状とする場合に対して音響効果を変化させることが可能となる。
【0087】
なお、放音空間6の形状に基づく音響効果については、ベース筒部21の角部の傾斜部分の角度、すなわち傾斜部分のベース筒部21のうちの長辺に対して成す角度によっても変化する。このため、要求される音響効果に応じてベース筒部21の角部の傾斜部の角度を調整すれば良い。
【0088】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0089】
例えば、上記各実施形態で、放音孔25の形状やレイアウトの一例を挙げたが、放音孔25の形状やレイアウトについては任意であり、他の形状やレイアウトであっても良い。また、ダイヤフラム72の形状やストッパー261の形状についても、他の形状とすることができる。その場合でも、ストッパー261によってダイヤフラム72の変位を規制することで、ダイヤフラム72の反転や変形、破損を抑制することが可能となる。
【0090】
さらに、上記各実施形態では、保護壁22および立壁23をベース2の一部として構成したもの、つまりこれらが一部品で構成されたものを例に挙げた。しかしながら、これも一例を示したに過ぎず、例えば、保護壁22および立壁23を別部材とし、ベース2に組み付けることで一体化されるようにしても良い。
【0091】
また、保護壁22によって発音体7が配置される放音領域を覆うようにした構造とすることで、放音方向を限定できることから、放音方向を1方向に限定せずに、2方向としても良い。例えば、保護壁22や立壁23の開口を2カ所に設けることで、放音方向を2方向にできる。その場合でも、放音方向を2方向に限定できることから、車室内騒音を少なくできるし、保護壁22によって発音体7が配置される放音領域を覆うようにしているおとから、発音器の正面の位置に車両部品を近接配置することができる。
【0092】
さらに、上記第4実施形態では、支持壁231について、放音孔25を跨ぐように1本のみ形成した構造としたが、複数本が平行に形成されていても良い。支持壁231の本数や形成位置については任意であり、各支持壁231の長さについても任意である。その場合、複数本が同じ長さとされていても良いし、異なる長さとされていても良い。支持壁231の本数が増える程、ダイヤフラム72の変位量の安定化の効果が高まるし、放音孔25を視認しにくくなるようにできる。
【0093】
また、上記第4実施形態は、第1、第2実施形態のようにストッパー261が備えられる構造に対して支持壁231を備える場合を例に挙げているが、第3実施形態のようにストッパー261を備えていない構造についても適用できる。ただし、その場合には、ストッパー261の安定化という効果は得られない。
【符号の説明】
【0094】
1…筐体、2…ベース、3…ケース、4…第1空間、5…第2空間、6…放音空間、7…発音体、9…ターミナル、10…治具、21…ベース筒部、22…保護壁、23…立壁、24…隔壁、24a…一面、25…放音孔、26…梁部、27…対向壁、29…コネクタ、61…放出孔、62…放出面、71…フレーム、72…ダイヤフラム、73…駆動部、74…ボビン、75…ボイスコイル、76…磁気回路部、78…リードピン、91…端子部、92…接続部、231…支持壁、241…通気孔、242…通気膜、261…ストッパー、261a…円筒部、261b…傾斜部、262…径方向梁、263…円形梁、291…貫通孔、711…円筒部、712…円筒部、713…段付部、714…貫通孔、721…内周部、722…外周部、723…円形端部、724…ばね部、761…磁石、762…トッププレート、763…ヨーク