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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】パターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/24 20060101AFI20220621BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20220621BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H05K3/24 C
H05K3/10 D
H05K1/02 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020501936
(86)(22)【出願日】2018-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2018006595
(87)【国際公開番号】W WO2019163070
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(72)【発明者】
【氏名】牛久 正幸
(72)【発明者】
【氏名】大屋 秀信
(72)【発明者】
【氏名】星野 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 正好
(72)【発明者】
【氏名】小俣 猛憲
(72)【発明者】
【氏名】新妻 直人
(72)【発明者】
【氏名】青山 亮
(72)【発明者】
【氏名】浦山 一歩
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-039109(JP,A)
【文献】特開2017-066493(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130869(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/190224(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/24
H05K 3/10
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に導電性材料を含むパターン中間体を印刷する印刷工程と、前記パターン中間体を電解めっき処理するめっき工程とを少なくとも含み、
前記印刷工程において印刷される前記パターン中間体は、前記めっき工程において通電される被めっき部と、該被めっき部から不連続的に設けられ、前記めっき工程において通電されない不連続部とを有し、
前記めっき工程において、めっき皮膜の形成に寄与する金属塩、酸化剤として働く金属塩及び錯化剤とを少なくとも含有するめっき液を用いて電界めっき処理することにより、前記パターン中間体の前記不連続部を除去して、めっき皮膜で被覆された前記被めっき部によって構成されたパターンを形成するパターン形成方法。
【請求項2】
記金属塩は、主金属として銅又はニッケルを含む金属塩と、該主金属に対する標準電極電位の差が1V以内である金属を含む金属塩である請求項1記載のパターン形成方法。
【請求項3】
記金属塩は、主金属として銅を含む金属塩と、該主金属に対する標準電極電位の差が1V以内である金属としてニッケルを含む金属塩である請求項2記載のパターン形成方法。
【請求項4】
記金属塩は、主金属としてニッケルを含む金属塩と、該主金属に対する標準電極電位の差が1V以内である金属として鉄、すず、クロム又は銅の何れかを含む金属塩である請求項2記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記めっき液は、更に亜鉛を含む金属塩を含有する請求項4記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記印刷工程において、前記基材上に前記導電性材料を含むライン状液体によって閉じられた幾何学図形を形成し、次いで、前記ライン状液体を乾燥して前記導電性材料を該ライン状液体の縁に沿って堆積させることにより、内側細線によって構成された前記不連続部と外側細線によって構成された前記被めっき部とを有する前記パターン中間体を形成する請求項1~5の何れかに記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記印刷工程において、前記基材上に前記導電性材料をインクジェット法により付与する請求項1~6の何れかに記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法に関し、より詳しくは、パターンの抵抗を低く保持しながらパターンにおける不連続部を簡便に除去できるパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性材料を含むパターンを形成する方法として、従来、フォトリソグラフィー技術が広く使用されている。しかし、フォトリソグラフィー技術は、材料ロスが多く、工程が複雑である。そのため、材料ロスが少なく、工程が簡略な方法が検討されている。例えば、インクジェット法によって導電性材料を含む液滴を基材に付与して、細線パターンを形成する方式がある。しかし、インクジェット法では、インク出射時に主液滴以外にミスト状の液滴が飛び散ることがある。飛び散ったミスト状のインクは、基材上に不連続部(所望されるパターンとは異なる位置に孤立するように付与された導電性材料からなる部位)を形成し、透明性を劣化させる要因となる。
【0003】
また、本出願人はこれまでに、基材上に、導電性材料を含むライン状液体によって、閉じられた幾何学図形を形成し、前記ライン状液体を乾燥して、前記導電性材料を縁部に沿って堆積させることにより、前記導電性材料を含む内側細線と外側細線からなるパターン中間体を形成し、更に、前記パターン中間体のうち前記内側細線を除去することにより、除去せず残留させる細線によってパターンを形成する技術を開示している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-39109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電性材料を含むパターンを形成する方法において、ミストに由来して形成される不連続部や、描画方法に由来して形成される不連続部(例えば特許文献1の内側細線)が製品において不要である場合、これを除去することが求められる。しかし、かかる不連続部をパターンの抵抗を低く保持しながら簡便に除去する技術は十分に確立されていない。
【0006】
そこで、本発明の課題は、パターンの抵抗を低く保持しながらパターンにおける不連続部を簡便に除去できるパターン形成方法を提供することにある。
【0007】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0009】
1.
基材上に導電性材料を含むパターン中間体を印刷する印刷工程と、前記パターン中間体を電解めっき処理するめっき工程とを少なくとも含み、
前記印刷工程において印刷される前記パターン中間体は、前記めっき工程において通電される被めっき部と、該被めっき部から不連続的に設けられ、前記めっき工程において通電されない不連続部とを有し、
前記めっき工程において、めっき皮膜の形成に寄与する金属塩、酸化剤として働く金属塩及び錯化剤とを少なくとも含有するめっき液を用いて電界めっき処理することにより、前記パターン中間体の前記不連続部を除去して、めっき皮膜で被覆された前記被めっき部によって構成されたパターンを形成するパターン形成方法。
2.
記金属塩は、主金属として銅又はニッケルを含む金属塩と、該主金属に対する標準電極電位の差が1V以内である金属を含む金属塩である請求項1記載のパターン形成方法。
3.
記金属塩は、主金属として銅を含む金属塩と、該主金属に対する標準電極電位の差が1V以内である金属としてニッケルを含む金属塩である請求項2記載のパターン形成方法。
4.
記金属塩は、主金属としてニッケルを含む金属塩と、該主金属に対する標準電極電位の差が1V以内である金属として鉄、すず、クロム又は銅の何れかを含む金属塩である請求項2記載のパターン形成方法。
5.
前記めっき液は、更に亜鉛を含む金属塩を含有する請求項4記載のパターン形成方法。
6.
前記印刷工程において、前記基材上に前記導電性材料を含むライン状液体によって閉じられた幾何学図形を形成し、次いで、前記ライン状液体を乾燥して前記導電性材料を該ライン状液体の縁に沿って堆積させることにより、内側細線によって構成された前記不連続部と外側細線によって構成された前記被めっき部とを有する前記パターン中間体を形成する請求項1~5の何れかに記載のパターン形成方法。
7.
前記印刷工程において、前記基材上に前記導電性材料をインクジェット法により付与する前記1~6の何れかに記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パターンの抵抗を低く保持しながらパターンにおける不連続部を簡便に除去できるパターン形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】印刷工程の一例を説明する図
図2】めっき工程後のパターンの一例を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について詳しく説明する。
【0013】
1.パターン形成方法
本実施形態に係るパターン形成方法は、基材上に導電性材料を含むパターン中間体を印刷する印刷工程と、前記パターン中間体を電解めっき処理するめっき工程とを少なくとも含み、前記印刷工程において印刷される前記パターン中間体は、前記めっき工程において通電される被めっき部と、該被めっき部から不連続的に設けられ、前記めっき工程において通電されない不連続部とを有し、前記めっき工程において、互いに金属種が異なる2種以上の金属塩と錯化剤とを少なくとも含有するめっき液を用いて電界めっき処理することにより、前記パターン中間体の前記不連続部を除去して、めっき皮膜で被覆された前記被めっき部によって構成されたパターンを形成する。
【0014】
かかるパターン形成方法によれば、不連続部をパターンの抵抗を低く保持しながら簡便に除去することができる。不連続部としては、上述したようにミストに由来して形成される不連続部や、描画方法に由来して形成される不連続部(例えば特許文献1の内側細線)等が挙げられる。また、特にパターンによって透明導電膜等を形成する場合、不連続部の除去によって、パターンの低視認性や透明性を向上することができる。
【0015】
以下に、パターン形成方法が備える印刷工程及びめっき工程について更に詳しく説明する。
【0016】
(1)印刷工程
【0017】
印刷工程では、基材上に導電性材料を含むパターン中間体を印刷する。本実施形態では、印刷工程において、後段のめっき工程において通電される被めっき部と、該被めっき部から不連続的に設けられ、めっき工程において通電されない不連続部とを有するパターン中間体を印刷する。
【0018】
〔パターン中間体〕
パターン中間体は、導電性材料を含み、被めっき部と不連続部とを有する。被めっき部は、後段のめっき工程において、電解めっき処理用の電極(給電電極であり通常はカソード)に通電される部位である。一方、不連続部は、被めっき部から不連続的に設けられ、電解めっき処理用の電極に通電されない。
【0019】
即ち、パターン中間体において、被めっき部と不連続部とは、互いに絶縁されるように不連続的に設けられた部位である。パターン中間体を構成する互いに絶縁された部位のうち、後段のめっき工程において通電される部位が被めっき部であり、通電されない部位が不連続部である。パターン中間体を構成する互いに絶縁された部位のうち何れを被めっき部として選択し、何れを被めっき部として選択するかは任意であり、目的や用途等に合わせて決定することができる。
【0020】
パターン中間体の形状は格別限定されず、例えば線状、ベタ状等の何れでもよく、所望の形状で基材上に形成することができる。1本又は複数本の導電性細線(線状に付与された導電性材料)によってパターン中間体を構成することは好ましいことである。
【0021】
〔印刷法〕
印刷工程においては、基材上に導電性材料を付与するために印刷法を用いることができる。印刷法は格別限定されず、例えば、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法等が挙げられ、中でもインクジェット法が好ましい。インクジェット法におけるインクジェットヘッドの液滴吐出方式は格別限定されず、例えばピエゾ方式やサーマル方式等が挙げられる。
【0022】
〔コーヒーステイン現象〕
印刷法においては、基材上に付与されたインク(導電性材料を含む液体)を乾燥させる際にコーヒーステイン現象を利用することができる。コーヒーステイン現象を利用することで、導電性材料を含む液体を乾燥する際に、該液体の縁に沿って前記導電性材料を選択的に堆積させて、導電性細線を形成することができる。
【0023】
コーヒーステイン現象を利用した印刷法の好ましい一例においては、まず、基材上に導電性材料を含むライン状液体によって閉じられた幾何学図形を形成し、次いで、ライン状液体を乾燥して導電性材料を該ライン状液体の縁に沿って堆積させることにより、内側細線と外側細線からなるパターン中間体を形成することができる。このような印刷法の一例について、図1を参照して説明する。
【0024】
まず、図1(a)に示すように、閉じられた幾何学図形として四角形を成すライン状液体2を、基材1の長手方向(図中、上下方向)及び幅方向(図中、左右方向)に所定の間隔で複数形成する。
【0025】
次いで、図1(b)に示すように、ライン状液体2を乾燥させる際にコーヒーステイン現象を利用して導電性材料を該ライン状液体2の縁に沿って堆積させる。このとき、閉じられた幾何学図形は、縁として内周縁及び外周縁を有するため、内周縁に堆積した導電性材料からなる内側細線3と、外周縁に堆積した導電性材料からなる外側細線4とからなる細線ユニット5が形成される。
【0026】
かかる細線ユニット5において、外側細線4は、内側細線3を内周側に包含している。図示の例では、内側細線3及び外側細線4を、同心状に形成している。内側細線3及び外側細線4は、ライン状液体2の内周縁及び外周縁の形状に対応して四角形を成している。
【0027】
次いで、図1(c)に示すように、閉じられた幾何学図形として四角形を成すライン状液体2を、基材1の長手方向(図中、上下方向)及び幅方向(図中、左右方向)に所定の間隔で複数形成する。ここで、複数の四角形を成すライン状液体2は、先に形成された細線ユニット5の間に挟まれる位置に形成される。ここでは、四角形を成すライン状液体2は、これに隣接する細線ユニット5のうちの外側細線4と接触するが、内側細線3とは接触しないように配置されている。
【0028】
次いで、図1(d)に示すように、ライン状液体2を乾燥させる際にコーヒーステイン現象を利用して、各々のライン状液体2から、内側細線3及び外側細線4からなる細線ユニット5を更に形成し、これをパターン中間体とすることができる。
【0029】
得られたパターン中間体において、外側細線4は、隣接する外側細線4と互いに接続されている。一方、内側細線3は、他の内側細線3、及び、外側細線4と接続されていない。即ち、内側細線3は、外側細線4から不連続的に形成され、パターン中間体中において孤立している。
【0030】
後述するめっき工程において、例えば、外側細線4を被めっき部として選択すると共に、内側細線3を不連続部として除去することで、図2に示すパターンを形成することができる。
【0031】
図2の例において、内側細線3は除去されており、外側細線(内側細線が除去されているため単に細線ともいう)4によってパターンが形成されている。かかるパターンにおいて、外側細線4は、該外側細線4が成す四角形の2本の対角線の方向に、二次元的に複数並設されており、互いに隣接する外側細線4は、頂点を挟む両辺同士を交差させて2つの交点で交わっている。
【0032】
図1及び図2の例では、ライン状液体2、内側細線3及び外側細線4を四角形にしているが、これに限定されず、例えば三角形、六角形、八角形等の多角形からなる閉じられた幾何学図形とすることができる。また、閉じられた幾何学図形は、例えば円形、楕円形等のように曲線要素を含むことができる。
【0033】
以上の説明では、コーヒーステイン現象を利用して、閉じられた幾何学図形によって構成されたパターン中間体を形成する場合について主に示したが、これに限定されず、種々のパターン中間体を形成することができる。例えば、基材上に直線状、曲線状、あるいは折れ線状のライン状液体を付与し、該ライン状液体の長手方向に沿う両縁に導電性材料を堆積させることによって、1本のライン状液体から2本1組の平行線を形成することもできる。また、印刷法は必ずしもコーヒーステイン現象を利用しなくてもよい。コーヒーステイン現象によって基材上に付与されたインクの形状と異なる形状のパターン中間体を形成することができるが、コーヒーステイン現象を利用せず、基材上に付与されたインクの形状と同形状のパターン中間体を形成してもよい。
【0034】
〔基材〕
基材としては、透明基材が好適に用いられる。透明基材の透明の度合いは特に限定されず、その光透過率が数%~数十%の何れでもよく、その分光透過率もどのようなものでもよい。これら光透過率及び分光透過率は用途、目的に応じて適宜定めることができる。
【0035】
基材の材質は格別限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、セルロース系樹脂(ポリアセチルセルロース、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート等)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-(ポリ)スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂等が挙げられる。これらの材質を用いれば、基材1に良好な透明性を付与できる。また、特に合成樹脂材料を用いることによって、基材1に良好な可撓性を付与することができる。合成樹脂材料により構成された基材1は、フィルムの形態とすることができ、該フィルムは、延伸されていても、未延伸であってもよい。
【0036】
基材の形状は格別限定されず、例えば板状(板材)等とすることができる。板材とする場合、厚さ、大きさ(面積)及び形状は特に限定されず、透明導電膜の用途、目的に応じて適宜定めることができる。板材の厚さは格別限定されず、例えば1μm~10cm程度、更には20μm~300μm程度とすることができる。
【0037】
また、基材には、表面エネルギーを変化させるための表面処理を施してもよい。更に、基材には、ハードコート層や反射防止層などを設けてもよい。
【0038】
〔インク〕
次に、印刷法、特に上述したコーヒーステイン現象に好適に用いられるインクについて、詳しく説明する。
【0039】
インクに含有させる導電性材料は格別限定されず、例えば、導電性微粒子、導電性ポリマー等が挙げられる。
【0040】
導電性微粒子として、例えば、金属微粒子、カーボン微粒子等が挙げられる。
【0041】
金属微粒子を構成する金属として、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Mo、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等が挙げられる。これらの中でも、Au、Ag、Cuが好ましく、Agが特に好ましい。金属微粒子の平均粒子径は、例えば1~100nm、更には3~50nmとすることができる。平均粒子径は、体積平均粒子径であり、マルバーン社製「ゼータサイザ1000HS」により測定することができる。
【0042】
カーボン微粒子としては、例えば、グラファイト微粒子、カーボンナノチューブ、フラーレン等が挙げられる。
【0043】
導電性ポリマーとしては、格別限定されないが、π共役系導電性高分子を好ましく挙げることができる。π共役系導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン類やポリアニリン類等が挙げられる。π共役系導電性高分子は、例えばポリスチレンスルホン酸等のようなポリアニオンと共に用いてもよい。
【0044】
インク中の導電性材料の濃度は、例えば5重量%以下とすることができ、更には0.01重量%以上1.0重量%以下とすることができる。これにより、コーヒーステイン現象が促進され、導電性細線を更に細くできる等の効果が得られる。
【0045】
インクに用いられる溶媒は格別限定されず、水や有機溶剤から選択された一種又は複数種を含むことができる。有機溶剤としては、例えば、1,2-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール等のアルコール類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。
【0046】
また、インクには界面活性剤等の他の成分を含有させることができる。界面活性剤は格別限定されず、例えばシリコン系界面活性剤等が挙げられる。インク中の界面活性剤の濃度は、例えば1重量%以下とすることができる。
【0047】
〔インクの乾燥〕
基材上に付与されたインク(ライン状液体)の乾燥方法は自然乾燥でも強制乾燥でもよい。強制乾燥に用いる乾燥方法は格別限定されず、例えば、基材の表面を所定温度に加温する方法や、基材の表面に気流を形成する方法等を単独で、あるいは組み合わせて用いることができる。気流は、例えばファン等を用いて、送風又は吸引を行うことによって形成することができる。
【0048】
〔焼成処理〕
基材上に形成されたパターン中間体には、焼成処理を施すことができる。焼成処理は、例えばめっき工程の前処理として行うことができる。焼成処理としては、例えば、光照射処理、熱処理等が挙げられる。光照射処理には、例えば、ガンマ線、X線、紫外線、可視光、赤外線(IR)、マイクロ波、電波等を用いることができる。熱処理には、例えば、熱風、加熱ステージ、加熱プレス等を用いることができる。
【0049】
(2)めっき工程
めっき工程では、印刷工程において印刷されたパターン中間体を電解めっき処理する。上述したように、パターン中間体は、めっき工程において通電される被めっき部と、該被めっき部から不連続的に設けられ、めっき工程において通電されない不連続部とを有している。
【0050】
めっき工程において、互いに金属種が異なる2種以上の金属塩と錯化剤とを少なくとも含有するめっき液を用いて電界めっき処理することにより、パターン中間体の不連続部を除去して、めっき皮膜で被覆された被めっき部によって構成されたパターンを形成することができる。
【0051】
例えば、基材上のパターン中間体をメッキ液に浸漬した状態で、アノードをメッキ液と接触させ、カソードを被めっき部と電気的に接続して通電し、被めっき部をめっき皮膜で被覆することができる。このとき、通電されない不連続部をめっき液により除去することができる。
【0052】
めっき液によって上記のような作用が発揮される理由は、以下のように考えられる。まず、めっき液に含有される2種以上の金属塩のうち1種が主にめっき皮膜の形成に寄与する際に、他の種は主に酸化剤として働く。パターン中間体の不連続部を構成する導電性材料は、この酸化剤によって酸化され、更にめっき液に含有される錯化剤によって溶解が促進され、これらの結果としてエッチング機能が働いて除去される。電解めっきにおいて錯化剤は一般にアノード電極の溶解促進に用いられるが、本発明者は、本発明に係るめっき液中において、錯化剤が、別の効果として、不連続部の除去に有効に機能することを検討により発見し、本発明に至った次第である。通常のエッチングでは、不連続部と被めっき部とが共に除去されてしまい、不連続部を選択的に除去することは困難であるが、本実施形態のめっき液によれば、被めっき部にはめっき皮膜の形成が優先し、不連続部を選択的に除去することができる。
【0053】
〔めっき液〕
めっき液に含有される互いに金属種が異なる2種以上の金属塩は、主金属を含む金属塩と、該主金属に対する標準電極電位の差が1V以内である金属を含む金属塩とを少なくとも含むことが好ましい。このとき、主金属は銅又はニッケルであることが特に好ましい。主金属とは、めっき液中の金属のうちモル濃度が最も高い金属のことである。主金属のモル濃度は、同じ主金属を含む複数種の金属塩が存在する場合は、これらの金属塩を構成する主金属の合計のモル濃度とする。また、「主金属」と「主金属に対する標準電極電位の差が1V以内である金属」とは、互いに標準電極電位の差が1V以内であればよく、どちらがより高い標準電極電位を有していてもよい。
【0054】
めっき液中における主金属のモル濃度は格別限定されないが、0.05(mol/l)~0.5(mol/l)の範囲であることが好ましい。
【0055】
主金属に対する標準電極電位の差が1V以内である金属は、主金属に対して微量であることが好ましく、例えば、「主金属」と「主金属に対する標準電極電位の差が1V以内である金属」とのモル濃度比は、1:0.001~1:0.05の範囲であることが好ましい。特に好ましい範囲は、1:0.003~1:0.02である。
【0056】
めっき液に含有される2種以上の金属塩は、主金属として銅を含む金属塩と、該主金属に対する標準電極電位の差が1V以内である金属としてニッケルを含む金属塩とを含むことが更に好ましい。
【0057】
また、めっき液に含有される2種以上の金属塩は、主金属としてニッケルを含む金属塩と、該主金属に対する標準電極電位の差が1V以内である金属として鉄、すず、クロム又は銅の何れかを含む金属塩とを含むことが更に好ましい。
【0058】
更に、めっき液に含有される2種以上の金属塩は、主金属としてニッケルを含む金属塩と、該主金属に対する標準電極電位の差が1V以内である金属として鉄、すず、クロム又は銅の何れかを含む金属塩とを含む場合は、2種以上の金属塩として、更に亜鉛を含む金属塩を含有することが特に好ましい。これにより、主金属であるニッケルが亜鉛と共に被めっき部上にニッケル・亜鉛合金めっき皮膜を形成する。その結果、不連続部が除去されることと、ニッケル・亜鉛合金めっきによる黒化(反射防止効果)とが相乗的に作用して、透明性や低視認性に特に優れる効果が得られる。
【0059】
上記のように亜鉛を含む金属塩を併用する場合、めっき液中における亜鉛の濃度(重量%)は、主金属より低ければよく、好ましくは、別途含有される「主金属に対する標準電極電位の差が1V以内である金属」よりも高いことである。特にニッケルを含む金属塩を含有するめっき液中に亜鉛を含む金属塩を併用することでめっき表面(めっき皮膜表面)を黒色化でき、かかる黒色化は本発明において視認性を相乗的に低減できるため好ましいことである。このような効果を良好に発揮する観点では、ニッケルを含む金属塩と亜鉛を含む金属塩とのモル濃度比が1:0.3~1:0.6の範囲であることが好ましい。
【0060】
以上の説明において、銅を含む金属塩は格別限定されず、例えば、硫酸銅五水和物等が挙げられる。ニッケルを含む金属塩は格別限定されず、例えば、硫酸ニッケル六水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、塩化ニッケル等が挙げられる。鉄を含む金属塩は格別限定されず、例えば、塩化第二鉄六水和物等が挙げられる。すずを含む金属塩は格別限定されず、例えば、塩化第一すず等が挙げられる。クロムを含む金属塩は格別限定されず、例えば、塩化第二クロム等が挙げられる。亜鉛を含む金属塩は格別限定されず、例えば、硫酸亜鉛等が挙げられる。
【0061】
めっき液に含有される錯化剤は格別限定されず、導電性材料の溶解を促進可能なものを好ましく用いることができ、例えば、硼酸、クエン酸、チオシアン酸ナトリウム、ピロリン酸、エチレンジアミン四酢酸等から選択される1種又は複数種を用いることができる。めっき液中における錯化剤の濃度は格別限定されないが、0.03mol/L~1mol/Lの範囲であることが好ましい。
【0062】
めっき液の溶媒には水を好ましく用いることができる。また、めっき液には、以上に説明した成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を適宜含有することができる。めっき液に含有される他の成分としては、例えば、塩酸、光沢付与剤、界面活性剤、pH緩衝剤等が挙げられる。
【0063】
以上に説明しためっき液を用いためっき工程では、例えば、図1(d)に示したパターン中間体をめっき液中で電解めっき処理する際に、被めっき部である外側細線4を電解めっき処理用の電極(給電電極であり通常はカソード)に電気的に接続して、該外側細線4に通電することによって、該外側細線4上にめっき層を形成することができる。このとき、不連続部である内側細線3は、被めっき部である外側細線4から不連続的に設けられているため、通電経路から除外され、通電されない。かかる内側細線3をめっき液の作用によって除去することで、図2に示したパターンを形成することができる。図2に示したパターンは、外側細線4により構成されており、内側細線3が除去されている。
【0064】
以上のように、パターン中間体の一部である不連続部(ここでは内側細線3)を除去し、めっき皮膜で被覆された被めっき部(ここでは外側細線4)によってパターンを形成することによって、該パターンに任意の格子間隔(細線の配置間隔)を付与することができる。
【0065】
また、並設された複数の導電性細線によって1つの透明導電膜を形成する場合、パターン中間体において孤立している不連続部は透明導電膜の導電性に寄与し難いだけでなく、透過率や透明性を低下する原因になる。不連続部を除去することによって、透明導電膜の透過率や透明性を向上することができる。
【0066】
更に、めっき工程によって被めっき部にめっき皮膜が積層されるため、得られるパターンが低抵抗化され、導電性に優れる効果も得られる。
【0067】
不連続部は、上述した内側細線に限定されず、種々の形状を有することができる。不連続部は、印刷工程において意図的にあるいは意図せずに形成されたものであり、且つ最終製品において不要になるものであることが好ましい。不連続部は、例えば、被めっき部を印刷するための印刷工程において、インクのミスト等が意図せず基材上に付着して形成されたものであってもよい。このような不連続部についても、上述しためっき工程で好適に除去することができ、最終製品の品質を向上することができる。また、複数種の不連続部を同時に除去することも可能であり、例えば、上述した内側細線からなる不連続部とミストに由来する不連続部とを同時に除去してもよい。
【0068】
〔複数の金属層〕
めっき工程では、パターン中間体に対して、めっき液を異ならせた複数回のめっき処理を施してもよい。この場合、各回のめっき液でめっき金属を異ならせてもよい。複数回のめっき処理によって、被めっき部上に複数の金属層(めっき皮膜)を積層することができる。複数回のめっき処理を施す場合、少なくとも1回のめっき処理、好ましくは少なくとも最初の1回のめっき処理において、互いに金属種が異なる2種以上の金属塩2種以上の金属塩と錯化剤とを少なくとも含有するめっき液を用いて電界めっき処理を行い、不連続部を除去することが好ましい。
【0069】
(3)その他
以上に説明した印刷工程及びめっき工程によって形成されたパターン、あるいは該パターンを基材上に有するパターン付き基材の用途は格別限定されず、種々の用途に用いることができる。
【0070】
並設された複数本の導電性細線からなるパターンを1つの透明導電膜として用いることは好ましいことである。透明導電膜は、透明電極として、例えば、種々の電子機器が備える種々のデバイス等に利用することができ、具体的としては、液晶、プラズマ、有機エレクトロルミネッセンス、フィールドエミッション等の各種方式のディスプレイ用の透明電極として用いることができる。
【0071】
また、透明電極は、例えば、タッチパネル、携帯電話、電子ペーパー、各種太陽電池、各種エレクトロルミネッセンス調光素子等の透明電極として用いることができる。特に、透明電極は、例えば、スマートフォン、タブレット端末等のような電子機器のタッチパネルセンサーに用いることができる。タッチパネルセンサーとして用いる場合は、透明電極を位置検出用電極(X電極及びY電極)として用いることができる。
【0072】
なお、ここでいう「透明」とは、透明導電膜を構成する導電性細線自体が透明であることを意味するものではなく、透明導電膜が全体として(例えば導電性細線が設けられていない領域を介して)光を透過可能であればよい。
【0073】
また、1本又は複数本の導電性細線からなるパターンを、電気回路を構成する電気配線等として用いることも好ましいことである。
【実施例
【0074】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。
【0075】
(試験1)
1.パターン形成方法
(1)印刷工程
〔インクの調製〕
インク(導電性材料を含む液体)として、以下の組成のものを調製した。
・銀ナノ粒子(平均粒子径:20nm):0.2重量%
・界面活性剤(ビッグケミー社製「BYK348」):0.05重量%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(略称:DEGBE)(分散媒):25重量%
・水(分散媒):残量
【0076】
〔基材の準備〕
基材として、導電性材料を含む液体の接触角が20.3°となるように表面処理が施されたPET基材を用意した。表面処理としては、信光電気計装社製「PS-1M」を用いてコロナ放電処理を行った。
【0077】
〔パターン中間体の印刷〕
インクジェットヘッド(コニカミノルタ社製「KM1024iLHE-30」(標準液滴容量30pL))を基材に対して相対移動させながら該インクジェットヘッドからインクを吐出して、図1(a)に示すように、基材1上に、導電性材料を含むライン状液体2によって閉じられた幾何学図形を複数形成した。幾何学図形は、基材1の長手方向に対して各辺が45°で傾斜する四角形である。
【0078】
これらのライン状液体2を乾燥させることにより、該ライン状液体2の内側縁及び外側縁に導電性材料を選択的に堆積させて、図1(b)に示すように、内側細線3及び外側細線4からなる細線ユニット5を複数形成した。
【0079】
得られた細線ユニット5の内側細線3及び外側細線4は、基材1の長手方向に対して各辺が45°で傾斜する四角形である。この四角形は、内側細線31及び外側細線32の中間の線に沿って測定される1辺の長さが0.75mmである。
【0080】
次いで、インクジェットヘッドを基材1に対して相対移動させながら該インクジェットヘッドからインクを吐出して、図1(c)に示すように、基材1上に、導電性材料を含むライン状液体2によって閉じられた幾何学図形を複数形成した。幾何学図形は、基材1の長手方向に対して各辺が45°で傾斜する四角形である。ライン状液体2の形成位置は、該ライン状液体2の四角形の頂点近傍が、先に形成された細線ユニット5の外側細線の四角形の頂点を覆うように設定した。
【0081】
これらのライン状液体2を乾燥させることにより、該ライン状液体2の内側縁及び外側縁に導電性材料を選択的に堆積させて、図1(d)に示すように、内側細線3及び外側細線4からなる細線ユニット5を複数形成した。得られた細線ユニット5の内側細線3及び外側細線4は、基材の長手方向に対して各辺が45°で傾斜する四角形である。この四角形は、内側細線3及び外側細線4の中間の線に沿って測定される1辺の長さが0.75mmである。
【0082】
先に形成された細線ユニット5の外側細線4と、後に形成された細線ユニット5の外側細線4は互いに接続されており、先に形成された細線ユニット5の内側細線3と、後に形成された細線ユニットの内側細線3は、互いに接続されず独立している。なお、この互いに接続されず独立している内側細線3は、後述する電界めっき処理において通電しない不連続部である。
【0083】
以上の工程では、70℃に加熱されたステージ上に配置した基材1にライン状液体2をパターニングすることにより、ライン状液体2の乾燥を促進させている。また、形成された内側細線3及び外側細線4には、130℃のオーブンで、10分間の焼成処理を施して、導電性材料のパターン中間体とした。
【0084】
(2)めっき工程
〔めっき液の調製〕
主金属として銅を含む金属塩を含有するめっき液1-1~1-3を表1に示す組成で調製した。
【0085】
〔電解めっき処理〕
印刷工程によって印刷されたパターン中間体に、上記めっき液1-1~1-3をそれぞれ用いて、電解めっき処理を施した。これにより、内側細線3を除去し、外側細線4を除去せず残留させて、図2に示したものと同様のパターンを形成した。電解メッキは下記メッキ条件により行った。以下、めっき液1-1~1-3を用いた試験を、それぞれ試験1-1~1-3と称する。
【0086】
<メッキ条件>
パターン中間体が形成された基材を70×140mmに裁断し試験片とした。試験片のパターン中間体を構成する外側細線4をカソードに電気的に接続して通電し、室温(20℃)のめっき液内で電解めっき処理を施した。その際、アノードはめっき用銅板と接続し、めっき液内で銅板から30mm離れた位置に試験片を設置した。0.15Aの定電流で90秒間、電解めっき処理を施した。めっき終了後、試験片を水洗し、乾燥させた。
【0087】
2.評価方法
めっき工程によって得られた各パターンについて以下の評価方法で評価した。
【0088】
(1)透過率
透過率[%]は、東京電色社製AUTOMATIC HAZEMETER (MODEL TC-H III DP)を用いて測定した全光線透過率[%]である。なお、パターンのない基材(フィルム)を用いて補正を行い、作成したパターンの全光線透過率として測定した。
【0089】
(2)低視認性
サンプルをライトテーブル上で目視し、細線が視認できる距離を評価した。以下の評価基準において、△以上であれば、透明導電膜としての用途において好ましく用いることができる。なお、評価ランク(◎〇△×)は任意に選択した20人の評価結果から最も劣位な評価と最も優位な評価を除く18人の評価平均値である。
〔評価基準〕
◎:距離15cmで細線が視認できない
〇:距離15cmで細線が視認できるが30cmでは視認できない
△:距離30cmで細線が視認できるが50cmでは視認できない
×:距離50cmで細線が視認できる
【0090】
(3)シート抵抗値
シート抵抗値[Ω/□]は、ダイアインスツルメンツ社製ロレスタEP(MODEL MCP―T360型)直列4探針プローブ(ESP)を用いて測定した値である。
【0091】
以上の結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
3.評価
表1より、主金属として銅を含む金属塩を含有するめっき液を用いる場合において、互いに金属種が異なる2種以上の金属塩と錯化剤とを少なくとも含有するめっき液1-1を用いた試験1-1は、互いに金属種が異なる2種以上の金属塩を含有しないめっき液1-2を用いた試験1-2や、錯化剤を含有しないめっき液1-3を用いた試験1-3との対比で、抵抗の変化がほとんどないにもかかわらず、パターンの透過率及び低視認性に優れることがわかる。
【0094】
(試験2)
試験1において、「(2)めっき工程」を以下のように変更したこと以外は、試験1と同様にしてパターンを形成した。
【0095】
〔めっき液の調製〕
主金属としてニッケルを含む金属塩を含有するめっき液2-1~2-5を表2に示す組成で調製した。
【0096】
〔電解めっき処理〕
印刷工程によって印刷されたパターン中間体に、上記めっき液2-1~2-5をそれぞれ用いて、電解めっき処理を施した。これにより、内側細線3を除去し、外側細線4を除去せず残留させて、図2に示したものと同様のパターンを形成した。電解メッキは下記メッキ条件により行った。以下、めっき液2-1~2-5を用いた試験を、それぞれ試験2-1~2-5と称する。
【0097】
<メッキ条件>
パターン中間体が形成された基材を70×140mmに裁断し試験片とした。試験片のパターン中間体を構成する外側細線4をカソードに電気的に接続して通電し、50℃に加温されためっき液内で電解めっき処理を施した。その際、アノードはめっき用ニッケル板と接続し、めっき液内で銅板から30mm離れた位置に試験片を設置した。0.15Aの定電流で1分間、電解めっき処理を施した。めっき終了後、試験片を水洗し、乾燥させた。
【0098】
2.評価方法
めっき工程によって得られた各パターンについて試験1と同様の評価方法で評価した。結果を表2に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
3.評価
表2より、主金属としてニッケルを含む金属塩を含有するめっき液を用いる場合においても、試験1と同様に、互いに金属種が異なる2種以上の金属塩と錯化剤とを少なくとも含有するめっき液2-1~2-3を用いた試験2-1~2-3は、互いに金属種が異なる2種以上の金属塩を含有しないめっき液2-4を用いた試験2-4や、錯化剤を含有しないめっき液2-5を用いた試験2-5との対比で、抵抗の変化がほとんどないにもかかわらず、パターンの透過率及び低視認性に優れることがわかる。
【0101】
(試験3)
試験1において、「(2)めっき工程」を以下のように変更したこと以外は、試験1と同様にしてパターンを形成した。
【0102】
〔めっき液の調製〕
主金属としてニッケルを含む金属塩を含有し、更に亜鉛を含有する金属塩を含有するめっき液3-1~3-8を表3に示す組成で調製した。
【0103】
〔電解めっき処理〕
印刷工程によって印刷されたパターン中間体に、上記めっき液3-1~3-8をそれぞれ用いて、電解めっき処理を施した。これにより、内側細線3を除去し、外側細線4を除去せず残留させて、図2に示したものと同様のパターンを形成した。電解メッキは下記メッキ条件により行った。以下、めっき液3-1~3-8を用いた試験を、それぞれ試験3-1~3-8と称する。
【0104】
<メッキ条件>
パターン中間体が形成された基材を70×140mmに裁断し試験片とした。試験片のパターン中間体を構成する外側細線4をカソードに電気的に接続して通電し、50℃に加温されためっき液内で電解めっき処理を施した。その際、アノードはめっき用ニッケル板と接続し、めっき液内で銅板から30mm離れた位置に試験片を設置した。0.15Aの定電流で1分間、電解めっき処理を施した。めっき終了後、試験片を水洗し、乾燥させた。
【0105】
2.評価方法
めっき工程によって得られた各パターンについて試験1と同様の評価方法で評価した。結果を表3に示す。
【0106】
【表3】
【0107】
3.評価
表3より、主金属としてニッケルを含む金属塩を含有し、更に亜鉛を含有する金属塩を含有するめっき液を用いる場合において、更に鉄、すず、クロム又は銅を含有する金属塩と錯化剤とを少なくとも含有するめっき液3-1~3-7を用いた試験3-1~3-7は、錯化剤を含有しないめっき液3-8を用いた試験3-8との対比で、抵抗の変化がほとんどないにもかかわらず、パターンの透過率及び低視認性に優れることがわかる。試験3-1~3-7の低視認性に関しては、不連続部が除去されたことと、ニッケル・亜鉛合金めっきによる黒化(反射防止効果)とが相乗的に作用して、特に優れた効果が発揮された。
【符号の説明】
【0108】
1:基材
2:ライン状液体
3:内側細線(不連続部)
4:外側細線(被めっき部)
5:細線ユニット
図1
図2