(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20220621BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220621BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20220621BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20220621BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220621BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220621BHJP
C08L 17/00 20060101ALI20220621BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20220621BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20220621BHJP
C08L 57/02 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C1/00 A
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/36
C08K3/04
C08L17/00
C08L75/04
C08L83/04
C08L57/02
(21)【出願番号】P 2021070603
(22)【出願日】2021-04-19
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼村 健二
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/059673(WO,A1)
【文献】特開2017-095673(JP,A)
【文献】特開2005-281390(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116835(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109749123(CN,A)
【文献】特開平10-168234(JP,A)
【文献】特開2020-012083(JP,A)
【文献】特開2019-116574(JP,A)
【文献】特開2001-287509(JP,A)
【文献】特許第6699079(JP,B1)
【文献】特開平05-286055(JP,A)
【文献】特開平09-099712(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03760425(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0084477(US,A1)
【文献】国際公開第2021/220634(WO,A1)
【文献】特許第6863503(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
C08L 7/00
C08L 9/00
C08K 3/36
C08K 3/04
C08L 17/00
C08L 75/04
C08L 83/04
C08L 57/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのゴム層を有するトレッド部を備えたタイヤであって、
前記タイヤの最大負荷能力W
L(kg)に対するタイヤ重量G(kg)の比(G/W
L)が0.0160以下であり、
前記トレッド部が、トレッド接地端およびタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝によって仕切られた陸部を有し、
前記トレッド面を構成する第一のゴム層が、ゴム成分を含有するゴム組成物により構成され、
前記ゴム組成物の純水の接触角θが105°以上であ
り、
前記ゴム組成物の0℃における複素弾性率(MPa)(0℃E*)に対する0℃におけるtanδ(0℃tanδ)の比(0℃tanδ/0℃E*)が0.025以上であるタイヤ。
【請求項2】
前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対してシリカを50質量部以上含有する、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム組成物中の前記ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が15質量部以下である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記タイヤの最大負荷能力W
L(kg)に対するタイヤ重量G(kg)の比(G/W
L)が0.0150以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記タイヤ重量G(kg)に対する前記ゴム組成物の純水の接触角θ(°)の比(θ/G)が13.5以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ゴム組成物の純水の接触角θが115°以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ゴム組成物が、再生ゴムおよび粉ゴムからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ゴム組成物が、シリコーン、シリコーン系ポリウレタン、およびフッ素
系ポリウレタンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ゴム組成物が、テルペン系樹脂およびシクロペンタジエン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対してオイルを30質量部以上含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記ゴム組成物の0℃における複素弾性率(MPa)(0℃E*)
が4.0~11.0MPaである、請求項1~10のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記周方向溝の最深部の溝深さが5.0~9.0mmである、請求項1~11のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記陸部のうちタイヤ赤道面に最も近い陸部のトレッド表面における幅方向長さをL
0、前記タイヤ赤道面に最も近い陸部の、その陸部に隣接する前記周方向溝の最深部の溝深さの90%位置における幅方向長をL
90としたとき、L
0/L
90が0.95以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記ゴム成分が、イソプレン系ゴムを10~70質量%、およびブタジエンゴムを30~80質量%含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記タイヤがスタッドレスタイヤである、請求項1~14のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
湿潤路面での粘着性を向上させることによりタイヤのウェットグリップ性能を改善する方法として、例えば、トレッドゴムに樹脂等の可塑剤を配合する手法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤは転動している際の回転時の慣性が大きく、湿潤路面に接触する際、トレッド面と路面との間の水を除去しきれない状況が発生する。これは、水を除去する前にトレッドの端部が接地してしまうので、トレッド面と路面との間に水が閉じ込められるためと考えられる。特に高速走行時は路面とトレッド面が接触する速度が速いので、より水が閉じ込められるやすいと考えられる。このことから、高速走行時のウェットグリップ性能については改善の余地がある。
【0005】
本発明は、高速走行時のウェットグリップ性能が改善されたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、タイヤの最大負荷能力に対するタイヤ重量、およびトレッドを構成するゴム組成物の純水の接触角を所定の範囲とすることにより、ウェットグリップ性能が改善されたタイヤが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、
〔1〕少なくとも1つのゴム層を有するトレッド部を備えたタイヤであって、前記タイヤの最大負荷能力WL(kg)に対するタイヤ重量G(kg)の比(G/WL)が0.0160以下であり、前記トレッド部が、トレッド接地端およびタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝によって仕切られた陸部を有し、前記トレッド面を構成する第一のゴム層が、ゴム成分を含有するゴム組成物により構成され、前記ゴム組成物の純水の接触角θが105°以上であるタイヤ、
〔2〕前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対してシリカを50質量部以上含有する、上記〔1〕記載のタイヤ、
〔3〕前記ゴム組成物中の前記ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が15質量部以下である、上記〔1〕または〔2〕記載のタイヤ、
〔4〕前記タイヤの最大負荷能力WL(kg)に対するタイヤ重量G(kg)の比(G/WL)が0.0150以下である、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔5〕前記タイヤ重量G(kg)に対する前記ゴム組成物の純水の接触角θ(°)の比(θ/G)が13.5以上である、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔6〕前記ゴム組成物の純水の接触角θが115°以上である、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔7〕前記ゴム組成物が、再生ゴムおよび粉ゴムからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔8〕前記ゴム組成物が、シリコーン、シリコーン系ポリウレタン、およびフッ素系ポリウレタンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔9〕前記ゴム組成物が、テルペン系樹脂およびシクロペンタジエン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔10〕前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対してオイルを30質量部以上含有する、上記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔11〕前記ゴム組成物の0℃における複素弾性率(MPa)(0℃E*)に対する0℃におけるtanδ(0℃tanδ)の比(0℃tanδ/0℃E*)が0.020以上である、上記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔12〕前記周方向溝の最深部の溝深さが5.0~9.0mmである、上記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔13〕前記陸部のうちタイヤ赤道面に最も近い陸部のトレッド表面における幅方向長さをL0、前記タイヤ赤道面に最も近い陸部の、その陸部に隣接する前記周方向溝の最深部の溝深さの90%位置における幅方向長をL90としたとき、L0/L90が0.95以下である、上記〔1〕~〔12〕のいずれかに記載のタイヤ、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高速走行時のウェットグリップ性能が改善されたタイヤが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係るタイヤのトレッドの一部が模式的に示された拡大断面図である。
【
図2】タイヤの断面における、タイヤ断面幅Wt、タイヤ断面高さHt、およびタイヤ外径Dtを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一実施形態であるタイヤは、少なくとも1つのゴム層を有するトレッド部を備えたタイヤであって、前記タイヤの最大負荷能力WL(kg)に対するタイヤ重量G(kg)の比(G/WL)が0.0160以下(好ましくは0.0150以下)であり、前記トレッド部が、トレッド接地端およびタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝によって仕切られた陸部を有し、前記トレッド面を構成する第一のゴム層が、ゴム成分を含有するゴム組成物により構成され、前記ゴム組成物の純水の接触角θが105°以上(好ましくは115°以上)であるタイヤである。
【0011】
タイヤの最大負荷能力に対するタイヤ重量、およびトレッドを構成するゴム組成物の純水の接触角が上記の要件を満たすことで、得られたタイヤは、高速走行時のウェットグリップ性能が改善される。その理由については、理論に拘束されることは意図しないが、以下のように考えられる。
【0012】
タイヤは転動している際の回転時の慣性が大きく、湿潤路面に接触する際、トレッド面と路面との間の水を除去しきれない状況が発生する。本開示のタイヤは、(1)最大負荷能力に対してタイヤを軽量化することで、タイヤが転動している際の回転時の慣性を減少させることができる、(2)トレッドゴムの純水の接触角を大きくし、トレッドゴムの撥水性が向上するという特徴を有する。そして、これらが協働することで、特に高速走行時のウェットグリップ性能が改善するという、特筆すべき効果が達成されると考えられる。
【0013】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対してシリカを50質量部以上含有することが好ましい。また、前記ゴム組成物中の前記ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、15質量部以下であることが好ましい。
【0014】
シリカおよびカーボンブラックの含有量を前記の範囲とすることにより、低歪領域でも弾性の小さいゴム組成物となるため、トレッド面が細かな路面凹凸に追従できるようになる。その結果、トレッド面と路面との接触面積が増加するため、トレッドが接地した際に閉じ込められる水の量を少なくすることができると考えられる。
【0015】
前記タイヤ重量G(kg)に対する前記ゴム組成物の純水の接触角θ(°)の比(θ/G)は、13.5以上であることが好ましい。
【0016】
タイヤが重いほど回転時の慣性が大きくなり水を除去しにくくなるが、θ/Gを前記の範囲とし、タイヤ重量増加に伴ってトレッドゴムの撥水性を大きくすることで、タイヤの排水性を維持することができる。また、タイヤ重量増加に伴って路面との接地圧および接触面積が増加するため、摩擦係数を向上させることができ、ウェットグリップ性能がより向上すると考えられる。
【0017】
前記ゴム組成物は、再生ゴムおよび粉ゴムからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0018】
再生ゴム等のマトリクス層と異なるドメインが生じることで、除水された上で路面との間で引っ掛かりが生じやすくなり、高速走行時のウェットグリップ性能が向上すると考えられる。
【0019】
前記ゴム組成物は、シリコーン、シリコーン系ポリウレタン、およびフッ素系ポリウレタンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0020】
ゴム組成物にシリコーンを配合することにより、トレッドゴムの撥水性を向上させることができ、このゴム組成物をトレッド部に用いてタイヤとすることで、ウェットグリップ性能を向上させることができると考えられる。また、シリコーン系ポリウレタンおよびフッ素系ポリウレタンのウレタンに由来する構造がゴム成分との親和性に寄与し、シリコーンまたはフッ素樹脂に由来する構造がゴム成分と分離することなく撥水効果がより発揮されるものと考えられる。
【0021】
前記ゴム組成物は、テルペン系樹脂およびシクロペンタジエン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0022】
ゴム組成物にテルペン系樹脂および/またはシクロペンタジエン系樹脂を配合することにより、トレッドゴムの撥水性を向上させることができ、このゴム組成物をトレッド部に用いてタイヤとすることで、ウェットグリップ性能を向上させることができると考えられる。また、前記シリコーン等の併用によりゴム成分との親和性が向上し、ゴム成分と分離することなく撥水効果がより発揮されるものと考えられる。
【0023】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対してオイルを30質量部以上含有することが好ましい。
【0024】
オイルの含有量を前記の範囲とすることにより、トレッドゴムの撥水性および追従性を向上させることができ、このゴム組成物をトレッド部に用いてタイヤとすることで、ウェットグリップ性能を向上させることができると考えられる。
【0025】
前記ゴム組成物の0℃における複素弾性率(MPa)(0℃E*)に対する0℃におけるtanδ(0℃tanδ)の比(0℃tanδ/0℃E*)は、0.020以上であることが好ましい。
【0026】
0℃tanδ/0℃E*を前記の範囲とすることにより、除水された後、路面と接したトレッド部が良好な追従性と発熱性を発揮することができるため、高速走行時のウェットグリップ性能が向上すると考えられる。
【0027】
前記周方向溝の最深部の溝深さは、5.0~9.0mmであることが好ましい。
【0028】
前記周方向溝の最深部の溝深さを前記の範囲とすることにより、トレッド表面の撥水効果により退けられた水を溝内で受け流しやすくすることができると考えられる。
【0029】
前記陸部のうちタイヤ赤道面に最も近い陸部のトレッド表面における幅方向長さをL0、前記タイヤ赤道面に最も近い陸部の、その陸部に隣接する前記周方向溝の最深部の溝深さの90%位置における幅方向長をL90としたとき、L0/L90は0.95以下であることが好ましい。
【0030】
L90/L0を前記の範囲とすることにより、トレッド表面での接地の圧力を高くすることができ、トレッド面と路面との間で水を排水させやすくすることができると考えられる。
【0031】
<定義>
「タイヤ重量」はG(kg)で表す。ただし、Gはリムの重量を含まないタイヤ単体の重量である。
【0032】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、JATMAであれば“標準リム”、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”である。なお、前記の規格体系において定めを持たないサイズのタイヤの場合は、そのタイヤにリム組可能であり、リム/タイヤの間でエア漏れを発生させない最小径のリムのうち、最も幅の狭いものを指すものとする。
【0033】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば“最高空気圧”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”である。なお、前記の規格体系において定めを持たないサイズのタイヤの場合は、正規内圧を250kPaとする。
【0034】
「正規状態」は、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。なお、前記の規格体系において定めを持たないサイズのタイヤの場合は、そのタイヤが前記の最小リムにリム組みされかつ250kPaが充填され、しかも、無負荷の状態をいうものとする。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法(タイヤ断面幅Wt等)は、前記正規状態で測定される。
【0035】
「最大負荷能力(WL)(kg)」は、正規状態で測定されたタイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ断面高さをHt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、下記式(1)および(2)により算出される値である。Vはタイヤが占める空間の仮想体積である。前記のタイヤ断面幅Wtは、前記の状態において、タイヤ側面に模様または文字などがある場合にはそれらを除いたものとしてのサイドウォール外面間の最大幅である。前記のタイヤ断面高さHtは、ビード部底面からトレッド最表面までの距離であり、タイヤの外径とリム径の呼びとの差の1/2である。
V={(Dt/2)2-(Dt/2-Ht)2}×π×Wt ・・・(1)
WL=0.000011×V+100 ・・・(2)
【0036】
「トレッド接地端」とは、正規状態のタイヤに最大負荷能力(WL)が負荷されキャンバー角0度で平面に接地したときの最も外側の接地位置である。
【0037】
「陸部」とは、トレッド部において、トレッド接地端およびタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝によって仕切られた領域をいう。例えば、周方向溝が2つの場合、陸部は一対のショルダー陸部とそれらに挟まれたセンター陸部とに分けられ、周方向溝が3つの場合、センター陸部がさらに車両装着時に車両内側となる陸部と、同外側となる陸部とに分けられる。「タイヤ赤道面に最も近い陸部」とは、タイヤ赤道面C上に陸部が存在する場合はその陸部を指し、タイヤ赤道面C上に陸部が存在しない場合は、タイヤ赤道面Cに存在する周方向溝2のタイヤ赤道面に最も近い溝縁4を有する陸部を指すものとする。
【0038】
「周方向溝の溝深さ」は、トレッド面1と周方向溝2の溝底の最深部の延長線との距離によって求められる。なお、溝深さHは、例えば、周方向溝2が複数ある場合、トレッド面1と、複数の周方向溝2のうち最も深い溝深さを有する周方向溝2の溝底の最深部の延長線との距離である。
【0039】
「再生ゴム」とは、JIS K 6313:2012に規定された自動車用タイヤ、チューブおよびその他のゴム製品の使用済みのゴムなどを再生したもの並びにこれと同等の性状を有するものである。なお、粉状のものは除く。また、再生ゴムは、脱硫処理が施される。「粉ゴム」とは、廃ゴム製品をリサイクルした加硫粉ゴムである。粉ゴムの原料となる廃ゴムとしては、環境への配慮およびコストの観点から、中古タイヤのトレッドゴム粉砕、刈り取りのスピュー・バリ等(廃タイヤの粉砕物)を使用することが好ましい。
【0040】
「樹脂成分のSP値」は、化合物の構造に基づいてHoy法によって算出された溶解度パラメーター(Solubility Parameter)を意味し、2つの成分のSP値の差が小さいほど相溶性が良好となる。Hoy法とは、例えば、K. L. Hoy“Table of Solubility Parameters”, Solvent and Coatings Materials Research and Development Department, Union Carbites Corp.(1985)に記載された計算方法である。
【0041】
「オイルの含有量」は、油展ゴムに含まれるオイル量も含む。
【0042】
<測定方法>
「純水の接触角」は、水平に保持された各ゴム試験片の表面に2.0μLの純水を滴下し、滴下180秒後の液滴の端部がゴム組成物の表面となす角度である。接触角測定用サンプルは、長さ20mm×幅30mm×厚さ2mmの加硫ゴム組成物である。タイヤから切り出して作製する場合には、タイヤのトレッド部からタイヤ周方向が長辺となるように切り出す。
【0043】
「0℃tanδ」は、温度0℃、初期歪10%、動歪2.5%、周波数10Hzの条件下で測定する損失正接である。損失正接測定用サンプルは、長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmの加硫ゴム組成物である。タイヤから切り出して作製する場合には、タイヤのトレッド部からタイヤ周方向が長辺となるように切り出す。
【0044】
「0℃E*」は、温度0℃、初期歪10%、動歪2.5%、周波数10Hzの条件下で測定する複素弾性率である。複素弾性率測定用サンプルは0℃tanδの場合と同様にして作製される。
【0045】
「スチレン含量」は、1H-NMR測定により算出される値であり、例えば、SBR等のスチレンに由来する繰り返し単位を有するゴム成分に適用される。「ビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)」は、JIS K 6239-2:2017に従い、赤外吸収スペクトル分析により算出される値であり、例えば、SBR、BR等のブタジエンに由来する繰り返し単位を有するゴム成分に適用される。「シス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)」は、JIS K 6239-2:2017に従い、赤外吸収スペクトル分析により算出される値であり、例えば、BR等のブタジエンに由来する繰り返し単位を有するゴム成分に適用される。
【0046】
「重量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTIPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。例えば、SBR、BR等に適用される。
【0047】
「カーボンブラックのN2SA」は、JIS K 6217-2「ゴム用カーボンブラック基本特性-第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」に準じて測定される。「シリカのN2SA」は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される。「シリカの平均一次粒子径」は、透過型または走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察されたシリカの一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。「粉ゴムの平均粒径」は、JIS Z 8815:1994に準拠して測定される粒度分布から算出された質量基準の平均粒径である。
【0048】
「樹脂成分の軟化点」は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0049】
本開示の一実施形態であるタイヤの作製手順について、以下に詳細に説明する。但し、以下の記載は本開示を説明するための例示であり、本発明の技術的範囲をこの記載範囲にのみ限定する趣旨ではない。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0050】
<タイヤ>
本開示に係るタイヤは、最大負荷能力WL(kg)に対するタイヤ重量G(kg)の比(G/WL)は、本開示の効果の観点から、0.0160以下であり、0.0157以下が好ましく、0.0155以下がより好ましく、0.0153以下がさらに好ましく、0.0150以下が特に好ましい。該G/WLの下限は、本開示の効果の観点からは特に限定されないが、例えば、0.0120以上、0.0125以上、0.0130以上、0.0135以上とすることができる。なお、タイヤ重量Gは常法により変動させることができ、すなわち、タイヤの比重を大きくする、あるいは、タイヤの各部材の厚さを大きくすることにより大きくすることができ、その逆により小さくすることもできる。
【0051】
最大負荷能力WL(kg)は、本開示の効果をより良好に発揮する観点から、300以上が好ましく、400以上がより好ましく、450以上がさらに好ましく、500以上が特に好ましい。また、最大負荷能力WL(kg)は、本開示の効果をより良好に発揮する観点から、例えば、1300以下、1200以下、1100以下、1000以下、900以下、800以下、700以下、650以下とすることができる。なお、最大負荷能力WLは、前記のタイヤが占める空間の仮想体積Vを大きくすることにより大きくすることができ、その逆により小さくすることもできる。
【0052】
図1は、タイヤのトレッドの一部が示された拡大断面図である。
図1において、上下方向がタイヤ半径方向であり、左右方向がタイヤ幅方向であり、紙面に垂直な方向がタイヤ周方向である。
【0053】
本開示のトレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝2を有している。周方向溝2が2つ以上あることで、陸部3が少なくとも一対のショルダー陸部とそれらに挟まれたセンター陸部とに分けられ、さらに3つ以上であることでセンター陸部が、さらに車両装着時に車両内側となる陸部と、同外側となる陸部とに分けられる。このため、それぞれの陸部のトレッドパターンを異なるものとすることができ、トレッドパターンを設計する際の自由度が向上するので好ましい。周方向溝の本数が3つ以上である場合、タイヤ幅方向の最外側に位置する一対の周方向溝を、最外周方向溝という。周方向溝の本数は、4つ以上であってもよく、5つ以上であってもよい。周方向溝2は、周方向に沿って直線状に延びていてもよく、波状や正弦波状やジクザク状に延びていてもよい。
【0054】
陸部3は、その幅方向長さが、タイヤ半径方向外側から内側に向かって漸増していることが好ましい。本開示の周方向溝2の溝壁5は、タイヤ半径方向外側から内側に向かって直線状に延びているが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、曲線状や階段状に延びていてもよい。
【0055】
タイヤ赤道面に最も近い陸部3の、タイヤ赤道面に最も近い前記陸部のトレッド表面における幅方向長さをL0、タイヤ赤道面に最も近い陸部3のその陸部に隣接する周方向溝2の溝底の最深部の90%位置における幅方向長さをL90としたとき、L0/L90は0.95以下であることが好ましく、0.90以下がより好ましい。L0/L90を前記の範囲とすることにより、摩耗後においても良好なウェットグリップ性能を維持できる。なお、L90は、図示されるように、トレッド面1からタイヤ半径方向内側に0.90Hの位置(タイヤ赤道面に最も近い陸部3のその陸部に隣接する周方向溝2の溝深さHの90%の位置)における陸部3の幅方向長さにより求められる。
【0056】
周方向溝2の溝深さHは、トレッド部全体の厚さの20%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。また、周方向溝2の溝深さHは、トレッド部全体の厚さの60%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。なお、本開示におけるトレッド部全体の厚さとは、トレッド部を構成するゴム層の合計厚さを意味し、トレッド面1からベルト層までの最短距離により求められる。
【0057】
周方向溝2の溝深さは、本開示の効果の観点から、5.0mm以上が好ましく、6.0mm以上がより好ましい。また、周方向溝2の溝深さは、本開示の効果の観点から、9.0mm以下が好ましく、8.5mm以下がより好ましい。
【0058】
陸部3には、陸部3を横断する横溝および/またはサイプが設けられていてもよい。なお、本明細書において、周方向溝、横溝を含め「溝」は、少なくとも2.0mmよりも大きい幅の凹みをいう。一方、本明細書において、「サイプ」は、幅が2.0mm以下、好ましくは0.5~2.0mmの細い切り込みをいう。
【0059】
本開示では、トレッドは少なくとも1つのゴム層を有する。本開示のトレッドは、単一のゴム層からなるトレッドであってもよく、外面がトレッド面1を構成する第一のゴム層、および、前記第一のゴム層とベルト層との間に存在する1または2以上のゴム層を有するトレッドであってもよい。
【0060】
トレッド部全体の厚さに対する前記第一のゴム層の厚みは、例えば、30%以上、50%以上、70%以上、90%以上とすることができ、第一のゴム層のみからなるトレッドとしてもよい。
【0061】
トレッド面を構成する第一のゴム層を構成するゴム組成物の0℃における複素弾性率(0℃E*)は、11.0MPa以下が好ましく、10.0MPa以下がより好ましく、9.5MPa以下がさらに好ましい。該ゴム組成物の0℃E*を上記の範囲とすることにより、ウェットグリップ性能が良好となる傾向がある。また、該ゴム組成物の0℃E*は、4.0MPa以上が好ましく、5.0MPa以上がより好ましく、6.0MPa以上がさらに好ましい。なお、ゴム組成物の0℃E*は、ゴム成分、粉ゴム、再生ゴム、シリコーン、シリコーン系ポリウレタン、フッ素系ポリウレタン、樹脂成分、オイル等の種類や配合量により適宜調整することができる。
【0062】
トレッド面を構成する第一のゴム層を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδ(0℃tanδ)は、0.20以上が好ましく、0.22以上がより好ましく、0.24以上がさらに好ましい。該ゴム組成物の0℃tanδを上記の範囲とすることにより、ウェットグリップ性能が良好となる傾向がある。また、該ゴム組成物の0℃tanδは、0.60以下が好ましく、0.50以下がより好ましく、0.40以下がさらに好ましい。なお、ゴム組成物の0℃tanδは、ゴム成分、粉ゴム、再生ゴム、シリコーン、シリコーン系ポリウレタン、フッ素系ポリウレタン、樹脂成分、オイル等の種類や配合量により適宜調整することができる。
【0063】
トレッド面を構成する第一のゴム層を構成するゴム組成物の純水の接触角θ(°)は、トレッドゴムの撥水性を高め、高速走行時のウェットグリップ性能を向上させる観点から105°以上であり、107°以上が好ましく、109°以上がより好ましく、111°以上がさらに好ましく、113°以上がさらに好ましく、115°以上が特に好ましい。また、該ゴム組成物の純水の接触角θ(°)の上限値は特に制限されないが、例えば、170°以下、160°以下、150°以下、140°以下、130°以下とすることができる。なお、ゴム組成物の純水の接触角は、ゴム成分、粉ゴム、再生ゴム、シリコーン、シリコーン系ポリウレタン、フッ素系ポリウレタン、樹脂成分、オイル等の種類や配合量により適宜調整することができる。
【0064】
タイヤ重量G(kg)に対するトレッド面を構成する第一のゴム層を構成するゴム組成物の純水の接触角θ(°)の比(θ/G)は、12.5以上であることが好ましく、12.7以上がより好ましく、13.0以上がさらに好ましく、13.3以上がさらに好ましく、13.5以上が特に好ましい。タイヤが重いほど回転時の慣性が大きくなり水を除去しにくくなるが、θ/Gを前記の範囲とし、タイヤ重量増加に伴ってトレッドゴムの撥水性を大きくすることで、タイヤの排水性を維持することができる。また、タイヤ重量増加に伴って路面との接地圧および接触面積か増加するため、摩擦係数を向上させることができ、ウェットグリップ性能がより向上すると考えられる。一方、θ/Gの上限値は特に制限されないが、例えば、16.0以下、15.5以下とすることができる。
【0065】
トレッド面を構成する第一のゴム層を構成するゴム組成物の0℃における複素弾性率(MPa)(0℃E*)に対する0℃におけるtanδ(0℃tanδ)の比(0℃tanδ/0℃E*)は、0.020以上であることが好ましく、0.025以上がより好ましく、0.030以上がさらに好ましい。前記の範囲とすることにより、除水された後、路面と接したトレッド部が良好な追従性と発熱性を発揮することができるため、高速走行時のウェットグリップ性能が向上すると考えられる。また、トレッド面を構成する第一のゴム層を構成するゴム組成物の0℃における複素弾性率(MPa)(0℃E*)に対する0℃におけるtanδ(0℃tanδ)の比(0℃tanδ/0℃E*)は、0.060以下であることが好ましく、0.050以下がより好ましく、0.045以下がさらに好ましい。
【0066】
[ゴム組成物]
本開示のタイヤは、前述したタイヤの重量およびトレッドパターンと、ゴム組成物の前記の物性とが協働することにより、高速走行時のウェットグリップ性能をより効果的に改善することができる。
【0067】
<ゴム成分>
第一のゴム層を構成するゴム成分としては、ジエン系ゴムが好適に用いられる。ゴム成分中のジエン系ゴムの含有量は、本開示の効果の観点から、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。また、ジエン系ゴムのみからなるゴム成分としてもよい。なお、本開示のゴム成分には、後述する再生ゴムおよび粉ゴムを含まないものとする。
【0068】
ジエン系ゴムとしては、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。これらのジエン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、イソプレン系ゴム、BR、およびSBRからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、イソプレン系ゴムを含有することがより好ましく、イソプレン系ゴムおよびBRを含有することがさらに好ましい。また、イソプレン系ゴムおよびBRのみからなるゴム成分としてもよい。
【0069】
(イソプレン系ゴム)
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム等を、変性NRとしてはエポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等を、変性IRとしてはエポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等を挙げることができる。これらのイソプレン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
ゴム成分中のイソプレン系ゴムの含有量は、本開示の効果の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、40質量%以上が特に好ましい。また、イソプレン系ゴムの含有量は、100質量%でもよく、あるいは90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0071】
(BR)
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス含量が50モル%未満のBR(ローシスBR)、シス含量が90モル%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。これらのBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、BRのシス含量は、前記測定方法により測定される。
【0072】
ハイシスBRとしては、例えば、日本ゼオン(株)、宇部興産(株)、JSR(株)等より市販されているものを使用することができる。ハイシスBRを含有することで低温特性および耐摩耗性能を向上させることができる。ハイシスBRのシス含量は、95モル%以上が好ましく、96モル%以上がより好ましく、97モル%以上がさらに好ましい。なお、BRのシス含量は、前記測定方法により測定される。
【0073】
BRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性能の観点から、30万以上が好ましく、35万以上がより好ましく、40万以上がさらに好ましい。また、架橋均一性等の観点からは、200万以下が好ましく、150万以下がより好ましく、100万以下がさらに好ましい。なお、BRのMwは、前記測定方法により測定される。
【0074】
ゴム成分中のBRの含有量は、本開示の効果の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、40質量%以上が特に好ましい。また、BRの含有量は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
【0075】
(SBR)
SBRとしては特に限定されず、溶液重合SBR(S-SBR)、乳化重合SBR(E-SBR)、これらの変性SBR(変性S-SBR、変性E-SBR)等が挙げられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性されたSBR、スズ、ケイ素化合物等でカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するもの等)等が挙げられる。さらに、これらSBRの水素添加物(水素添加SBR)等も使用することができる。これらのSBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
本開示で使用できるS-SBRとしては、JSR(株)、住友化学(株)、宇部興産(株)、旭化成(株)、ZSエラストマー(株)等によって製造販売されるS-SBRが挙げられる。
【0077】
SBRのスチレン含量は、ウェットグリップ性能および耐摩耗性能の観点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また、SBRのスチレン含量は、本開示の効果の観点から、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。なお、SBRのスチレン含有量は、前記測定方法により測定される。
【0078】
SBRのビニル含量は、シリカとの反応性の担保およびウェットグリップ性能の観点から、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましい。また、SBRのビニル含量は、本開示の効果の観点から、70モル%以下が好ましく、65モル%以下がより好ましく、60モル%以下がさらに好ましい。なお、SBRのビニル含量は、前記測定方法により測定される。
【0079】
SBRの重量平均分子量(Mw)は、ウェットグリップ性能の観点から、20万以上が好ましく、25万以上がより好ましい。また、架橋均一性の観点から、重量平均分子量は200万以下が好ましく、180万以下がより好ましく、150万以下がさらに好ましい。なお、SBRのMwは、前記測定方法により測定される。
【0080】
SBRを含有する場合のゴム成分100質量%中の含有量は、特に限定されず、例えば5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上とすることができる。また、SBRの含有量は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
【0081】
(その他のゴム成分)
ゴム成分は、本開示の効果に影響を与えない範囲で、ジエン系ゴム以外の他のゴム成分を含有してもよい。他のゴム成分としては、タイヤ工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等が挙げられる。これら他のゴム成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
<フィラー>
本開示に係るゴム組成物は、フィラーとしてシリカを含有することが好ましく、カーボンブラックおよびシリカを含有することがより好ましい。また、フィラーは、カーボンブラックおよびシリカのみからなる補強用充填剤としてもよい。
【0083】
(シリカ)
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。これらのシリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、補強性およびトレッド部での減衰性の確保の観点から、140m2/g以上が好ましく、150m2/g以上がより好ましく、160m2/g以上がさらに好ましく、170m2/g以上が特に好ましい。また、発熱性および加工性の観点からは、350m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、250m2/g以下がさらに好ましい。なお、シリカのN2SAは、前記測定方法により測定される。
【0085】
シリカの平均一次粒子径は、20nm以下が好ましく、18nm以下がより好ましい。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、1nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、5nm以上がさらに好ましい。シリカの平均一次粒子径が前期の範囲であることによって、シリカの分散性をより改善でき、補強性、破壊特性、耐摩耗性をさらに改善できる。なお、シリカの平均一次粒子径は、前記測定方法により測定される。
【0086】
ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、トレッド部での減衰性の確保およびウェットグリップ性能の観点から、30質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、55質量部以上が特に好ましい。また、ゴムの比重を低減させ軽量化を図る観点から、110質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、95質量部以下がさらに好ましく、90質量部以下が特に好ましい。
【0087】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては特に限定されず、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。これらのカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、耐候性や補強性の観点から、50m2/g以上が好ましく、80m2/g以上がより好ましく、100m2/g以上がさらに好ましい。また、分散性、低燃費性能、破壊特性および耐久性能の観点からは、250m2/g以下が好ましく、220m2/g以下がより好ましい。なお、カーボンブラックのN2SAは、前記測定方法により測定される。
【0089】
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、耐候性や補強性の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、低燃費性能の観点からは、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましく、15質量部以下が特に好ましい。
【0090】
(その他のフィラー)
シリカおよびカーボンブラック以外のフィラーとしては、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルク等、従来からタイヤ工業において一般的に用いられているものを配合することができる。
【0091】
シリカの含有量に対するカーボンブラックの含有量の比は、0.40以下が好ましく、0.30以下がより好ましく、0.21以下がさらに好ましく、0.17以下がさらに好ましく、0.13以下がさらに好ましく、0.10以下が特に好ましい。シリカの含有量に対するカーボンブラックの含有量の比を前記の範囲とすることにより、ウェットグリップ性能をより向上させることができる。一方、シリカの含有量に対するカーボンブラックの含有量の比の下限値は特に制限されず、例えば0.01以上、0.02以上、0.05以上とすることができ、カーボンブラックを含有しないフィラーとしてもよい。
【0092】
ゴム成分100質量部に対するフィラーの合計含有量は、補強性およびトレッド部での減衰性の確保の観点から、40質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、55質量部以上がさらに好ましく、60質量部以上が特に好ましい。本開示の効果の観点から、120質量部以下が好ましく、110質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましく、95質量部以下が特に好ましい。
【0093】
(シランカップリング剤)
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、タイヤ工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができるが、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル系シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系シランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系シランカップリング剤;等が挙げられる。なかでも、スルフィド系シランカップリング剤および/またはメルカプト系シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、モメンティブ社等より市販されているものを使用することができる。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
シリカ100質量部に対するシランカップリング剤の含有量は、シリカの分散性を高める観点から、1.0質量部以上が好ましく、3.0質量部以上がより好ましく、5.0質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の低下を防止する観点からは、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。
【0095】
<再生ゴム、粉ゴム>
本開示に係るゴム組成物は、再生ゴムおよび粉ゴムからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有することが好ましい。再生ゴムや粉ゴムを配合したゴム組成物は、通常、破断伸び等が劣化しやすいという問題があるが、本開示においてゴム成分がスチレン部を含むゴム(スチレンブタジエンゴム等)を含みかつ芳香環樹脂を含む場合には、当該スチレン部を含むゴムは芳香環含有樹脂と相溶性があるため、スチレン部を含むゴムと芳香環含有樹脂とが相溶することによる効果によって、再生ゴムや粉ゴムを配合しても、破断時伸び等が劣化するという問題が生じにくいと考えられる。
【0096】
再生ゴムの種類は、チューブ再生ゴム、タイヤ再生ゴムおよびその他の再生ゴムのいずれでもよく、複数の種類を組み合わせることもできる。これらのなかでも、タイヤ再生ゴムが好ましい。
【0097】
再生ゴムは、公知の製造方法で得たものを用いることができ、例えば最も一般的なパン法(オイル法)をはじめとして、バンバリーミキサー・2軸反応押出機による方法、マイクロ波による方法、超音波による方法、電子線照射による方法などが開発されているが、いかなる方法で製造したものであってもよい。また、市販の再生ゴムを用いてもよい。再生ゴムを製造するための具体例の一つとして、加硫ゴム粉末を密閉式混合機または押出機に投入し100~250℃に加熱下、機械的せん断力をかけながら5~50分処理して脱硫し、再生する方法があげられる。市販品としては、例えば、村岡ゴム工業(株)、アサヒ再生ゴム(株)等によって製造販売されるものなどを用いることができる。
【0098】
再生ゴム中の天然ゴム含有比率は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。再生ゴム中の天然ゴム含有比率が上記範囲内であると、優れた破断伸びが得られる傾向がある。
【0099】
再生ゴムは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0100】
再生ゴムを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、環境への配慮の観点から、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、本開示の効果が良好に発揮されやすい観点から、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。
【0101】
粉ゴムは、廃ゴム製品をリサイクルした加硫粉ゴムであるが、粉ゴムの原料となる廃ゴムとしては、廃ゴムのゴム種は特に限定されず、NR、SBR、BR、IRなどのジエン系ゴムなどがあげられる。なお、粉ゴムとしては、タイラーメッシュにおける30メッシュパス品や40メッシュパス品などを利用することができる。粉ゴムは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0102】
粉ゴムの平均粒径は、70μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。該平均粒径は、1mm以下が好ましく、750μm以下がより好ましい。なお、粉ゴムの平均粒径は、前記測定方法により測定される。
【0103】
粉ゴム中の天然ゴム含有比率は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。粉ゴム中の天然ゴム含有比率が上記範囲内であると、優れた破断伸びが得られる傾向がある。
【0104】
粉ゴムは、例えば、村岡ゴム工業(株)、アサヒ再生ゴム(株)、Lehigh Technologies社等によって製造販売されるものなどを用いることができる。粉ゴムは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0105】
粉ゴムを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、環境への配慮の観点から、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、本開示の効果が良好に発揮されやすい観点から、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。
【0106】
ゴム成分100質量部に対する再生ゴムおよび粉ゴムの合計含有量は、環境への配慮の観点から、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、本開示の効果が良好に発揮されやすい観点から、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
【0107】
<シリコーン、シリコーン系ポリウレタン、およびフッ素系ポリウレタン>
本開示に係るゴム組成物は、シリコーン、シリコーン系ポリウレタン、およびフッ素系ポリウレタンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有することが好ましい。シリコーンは、オルガノポリシロキサンを主鎖とする化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、ポリジメチルシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジメチルシリコーン生ゴム、メチルビニルシリコーン生ゴム、メチルフェニルシリコーン生ゴム、フルオロシリコーン生ゴム等が挙げられる。なかでも、本開示の効果の観点から、反応性官能基で変性されたシリコーンおよびポリエーテル基を有するシリコーンが好ましい。
【0108】
反応性官能基で変性されたシリコーンの反応性官能基の具体例としては、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシリル基、アセトキシシリル基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、アリル基等が挙げられる。なかでも、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシリル基、およびアセトキシシリル基からなる群より選ばれる1以上の官能基で変性されたシリコーンが好ましく、両末端がシラノール基で変性されたシリコーンがより好ましい。ポリエーテル基を有するシリコーンとしては、側鎖にポリエーテル基を有するシリコーンが好ましい。
【0109】
シリコーン系ポリウレタンは、2以上の水酸基を有する前記シリコーンとイソシアネートから得ることができ、必要に応じて鎖延長剤を用いることができる。
【0110】
シリコーン系ポリウレタンの原料たるイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、およびこれらの混合物が挙げられ、トリレンジイソシアネートおよび4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0111】
シリコーン系ポリウレタンの原料たる鎖延長剤としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、およびこれらの混合物が挙げられ、ポリエーテルポリオールが好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレンジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコールのようなポリオキシアルキレンポリオール;ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
【0112】
フッ素系ポリウレタンは、2以上の水酸基を有するフッ素系樹脂とイソシアネートから得ることができ、必要に応じて鎖延長剤を用いることができる。
【0113】
フッ素系ポリウレタンの原料たるフッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロプレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)三元共重合体(EPE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン-テトラフルオロエチレン交互共重合体(ETFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン交互共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、およびこれらの混合物が挙げられる
【0114】
フッ素系ポリウレタンの原料たるイソシアネートとしては、前記のシリコーン系ポリウレタンの原料たるイソシアネートとして例示したものを同様に使用することができる。
【0115】
フッ素系ポリウレタンの原料たる鎖延長剤としては、前記のシリコーン系ポリウレタンの原料たる鎖延長剤として例示したものを同様に使用することができる。
【0116】
ゴム成分100質量部に対するシリコーン、シリコーン系ポリウレタン、およびフッ素系ポリウレタンの合計含有量は、本開示の効果の観点から、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、本開示の効果が良好に発揮されやすい観点から、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
【0117】
<樹脂成分>
本開示に係るゴム組成物は、樹脂成分として、テルペン系樹脂およびシクロペンタジエン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0118】
テルペン系樹脂およびシクロペンタジエン系樹脂は、クマロン樹脂、石油系樹脂(脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂など)、フェノール系樹脂、ロジン誘導体などのタイヤ用ゴム組成物に用いられる他の粘着性樹脂よりもSP値が低いという特徴がある。ここでSP値とは、化合物の構造に基づいてHoy法によって算出された溶解度パラメーター(Solubility Parameter)を意味し、二つの化合物のSP値が離れているほど相溶性が低いことを示す。ここで、水のSP値は約23であり、前記他の粘着樹脂のSP値は約9~12であることから、他の粘着樹脂よりもSP値が低いテルペン樹脂は、より水との相溶性が低い粘着性樹脂であり、これを含有するゴム組成物とすることにより、ゴム組成物の撥水性を向上させることができる。
【0119】
テルペン系樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテンなどのテルペン原料から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂、テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂などのテルペン系樹脂(水素添加されていないテルペン系樹脂)、ならびにこれらのテルペン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたテルペン系樹脂)が挙げられる。ここで、芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエンなどが挙げられ、また、テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。
【0120】
テルペン系樹脂のなかでも、よりSP値が低く、ゴム成分との相溶性に優れ、より撥水性を向上させることができるという理由から、水素添加されたテルペン系樹脂が好ましく、100%に近い水素添加が可能であり、さらに耐久性にも優れるという理由から水素添加されたポリテルペン樹脂がより好ましい。テルペン系樹脂への水素添加処理は、公知の方法で行うことができ、また、本発明においては、市販の水素添加されたテルペン系樹脂を使用することもできる。
【0121】
テルペン系樹脂のSP値は、ゴム組成物の撥水性をより向上させることができるという理由から、8.6以下が好ましく、8.5以下がより好ましい。テルペン系樹脂のSP値の下限は、ゴム成分との相溶性の観点から7.5以上が好ましい。
【0122】
シクロペンタジエン系樹脂のSP値は、ゴム組成物の撥水性をより向上させることができるという理由から、8.5以下が好ましく、8.4以下がより好ましい。シクロペンタジエン系樹脂のSP値の下限は、ゴム成分との相溶性の観点から7.9以上が好ましい。
【0123】
ゴム成分100質量部に対するテルペン系樹脂およびシクロペンタジエン系樹脂の合計含有量は、本開示の効果の観点から、5質量部以上が好ましく、8質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、テルペン系樹脂およびシクロペンタジエン系樹脂の合計含有量は、ゴム組成物の硬度、成形加工性、粘度を適切に確保できるという観点から、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0124】
その他の樹脂成分としては、特に限定されないが、タイヤ工業で慣用される石油樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0125】
樹脂成分(好ましくはテルペン系樹脂またはシクロペンタジエン系樹脂)の軟化点は、ウェットグリップ性能の観点から、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましい。また、加工性、ゴム成分とフィラーとの分散性向上という観点からは、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。なお、樹脂成分の軟化点は、前記測定方法により測定される。
【0126】
樹脂成分を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、本開示の効果の観点から、5質量部以上が好ましく、8質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、テルペン系樹脂およびシクロペンタジエン系樹脂の合計含有量は、ゴム組成物の硬度、成形加工性、粘度を適切に確保できるという観点から、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0127】
<その他の配合剤>
本開示に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、従来タイヤ工業で一般に使用される配合剤、例えば、オイル、ワックス、加工助剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等を適宜含有することができる。
【0128】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、動物油脂等が挙げられる。前記プロセスオイルとしてはパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルが挙げられる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、オイル芳香族系プロセスオイルを再抽出したTreated Distillate Aromatic Extract(TDAE)、アスファルトとナフテン油の混合油であるアロマ代替オイル、軽度抽出溶媒和物(mild extraction solvates)(MES)、および重ナフテン系オイル等が挙げられる。
【0129】
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、本開示の効果の観点から、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましく、35質量部以上が特に好ましい。また、低燃費性能および耐久性能の観点からは、90質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下がさらに好ましく、60質量部以下が特に好ましい。
【0130】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化防止の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0131】
加工助剤としては、未加硫時におけるゴムの低粘度化や離型性の確保を目的とした脂肪酸金属塩や、ゴム成分のミクロな層分離を抑制する観点から広く相溶化剤として市販されているもの等を使用することができる。
【0132】
加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の改善効果を発揮させる観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性および破壊強度の観点からは、10質量部以下が好ましく、8.0質量部以下がより好ましい。
【0133】
老化防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩などの老化防止剤が挙げられる。
【0134】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐オゾンクラック性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性能やウェットグリップ性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
【0135】
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
【0136】
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
【0137】
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
【0138】
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保する観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。また、劣化防止の観点からは、5.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましく、2.5質量部以下が特に好ましい。なお、加硫剤として、オイル含有硫黄を使用する場合の加硫剤の含有量は、オイル含有硫黄に含まれる純硫黄分の合計含有量とする。
【0139】
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン等が挙げられる。これらの硫黄以外の加硫剤は、田岡化学工業(株)、ランクセス(株)、フレクシス社等より市販されているものを使用することができる。
【0140】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系若しくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、所望の効果がより好適に得られる点から、スルフェンアミド系、グアニジン系、およびチアゾール系加硫促進剤からなる群から選ばれる1以上の加硫促進剤が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤およびグアニジン系加硫促進剤を組み合わせることがより好ましい。
【0141】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)およびN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)が好ましい。
【0142】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)が好ましい。
【0143】
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。なかでも、2-メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0144】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1.0質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましい。また、加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、8.0質量部以下が好ましく、7.0質量部以下がより好ましく、6.0質量部以下がさらに好ましく、5.0質量部以下が特に好ましい。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることにより、破壊強度および伸びが確保できる傾向がある。
【0145】
<製造>
本開示に係るゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。
【0146】
混練り工程は、例えば、加硫剤および加硫促進剤以外の配合剤および添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫剤および加硫促進剤を添加して混練りするファイナル練り(F練り)工程とを含んでなるものである。さらに、前記ベース練り工程は、所望により、複数の工程に分けることもできる。
【0147】
混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度150~170℃で3~10分間混練りし、ファイナル練り工程では、70~110℃で1~5分間混練りする方法が挙げられる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
【0148】
前記ゴム組成物から構成されるトレッドを備えた本開示のタイヤは、通常の方法により製造することができる。すなわち、ゴム成分に対して上記各成分を必要に応じて配合した未加硫のゴム組成物を、トレッドを構成する少なくとも1層のゴム層の形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
【0149】
<用途>
本開示のタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤに好適に用いることができ、中でも乗用車用タイヤに用いることが好ましい。なお、乗用車用タイヤとは、四輪で走行する自動車に装着されることを前提としたタイヤであり、その最大負荷能力が1000kg以下のものを指す。また、本開示のタイヤは、全シーズン用タイヤ、夏用タイヤ、スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤに使用可能であり、中でも、冬用タイヤに用いることが好ましい。
【実施例】
【0150】
以下、本開示を実施例に基づいて説明するが、本開示はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0151】
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のUBEPOL BR(登録商標)150B(シス含量:97モル%、Mw:44万)
SBR:JSR(株)製のHPR850(スチレン含量:27.5質量%、ビニル含量:59モル%、非油展品)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製ショウブラックN220(N2SA:111m2/g)
シリカ:エボニックデグサ社製のULTRASIL(登録商標)VN3(N2SA:175m2/g、平均一次粒子径:17nm)
シランカップリング剤:エボニックデグサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
粉ゴム:粉末ゴム粉W2-A(アサヒ再生ゴム(株)から入手可能)
再生ゴム:天然ゴム含有比率73質量%の再生ゴム(村岡ゴム工業(株)から入手可能)
シリコーン1:信越化学工業(株)製のSS-10(両末端シラノール変性ポリジメチルシロキサン)
シリコーン2:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のL-5345(ポリエーテル基を有するシリコーン)
樹脂成分1:ヤスハラケミカル(株)製のP125(水素添加されたポリテルペン樹脂、軟化点:125℃)
樹脂成分2:ExxonMobil社製のOppera PR-120(水素添加されたジシクロペンタジエン樹脂、軟化点:120℃)
オイル1:H&R(株)製のVivaTec400(TDAEオイル)
オイル2:出光興産(株)製のミネラルオイルPW-380
ワックス:日本精蝋(株)のオゾエース0355
老化防止剤1:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤2:住友化学(株)製のアンチゲンRD(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛1号
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
硫黄:細井化学工業(株)製のHK-200-5(5%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS))
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン(DPG))
【0152】
(実施例および比較例)
表1および表2に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度150~160℃になるまで1~10分間混練りし、混練物を得た。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で12分間プレス加硫することで、表1および表2に記載の試験用加硫ゴム組成物を作製した。
【0153】
また、得られた未加硫ゴム組成物を用いて、所定の形状の口金を備えた押し出し機でトレッド(厚さ:8.5mm)の形状に合わせて押し出し成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、表1および表2に記載の各試験用タイヤを作製した。
【0154】
得られた試験用加硫ゴム組成物および試験用タイヤについて下記の評価を行った。評価結果を表1および表2に示す。
【0155】
<接触角の測定>
加硫後の各ゴム試験片を、各試験用タイヤのトレッド部から、タイヤ周方向が長辺となるように、長さ20mm×幅30mm×厚さ2mmで切り出して作製した。水平に保持された各ゴム試験片の表面に2.0μLの純水を滴下し、滴下180秒後の液滴の端部がゴム組成物の表面となす角度(接触角θ)を、協和界面科学(株)製の接触角計DMs-401を用いてそれぞれ測定した。
【0156】
<tanδおよび複素弾性率E*測定>
加硫後の各ゴム試験片を、各試験用タイヤのトレッド部から、タイヤ周方向が長辺となるように、長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmで切り出して作製した。各ゴム試験片について、動的粘弾性測定装置(GABO社製のイプレクサーシリーズ)を用いて、温度0℃、初期歪10%、動歪2.5%、周波数10Hzの条件下でtanδおよび複素弾性率(E*)を測定した。結果を表1および表2に示す。なお、サンプルの厚み方向はタイヤ半径方向とした。
【0157】
<ウェットグリップ性能>
各試験用タイヤに250kPaの空気を充填し、排気量が2000ccである自動車の全輪に装着し、湿潤アスファルト路面にて、初速度100km/hで走行中にブレーキを踏み、制動距離を測定した。制動距離の逆数の値について、基準比較例(表1では比較例5、表2では比較例10)の制動距離を100として指数表示した。指数が大きいほど、高速走行時のウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0158】
<氷上性能>
各試験用タイヤに250kPaの空気を充填し、下記の条件で氷上での実車性能を評価した。試験場所は、住友ゴム工業(株)の北海道名寄テストコースで行い、気温は0~-5℃であった。排気量が2000ccであるFR車に装着し、時速30km/hでロックブレーキを踏み停止させるまでに要した氷上の停止距離を測定した。停止距離の逆数の値について、基準比較例(表1では比較例5、表2では比較例10)の制動距離を100として指数表示した。指数が大きいほど、氷上性能に優れることを示す。
【0159】
【0160】
【0161】
表1および表2の結果より、タイヤの最大負荷能力に対するタイヤ重量、およびトレッドを構成するゴム組成物の純水の接触角を所定の範囲とした本開示のタイヤは、高速走行時のウェットグリップ性能が改善されていることがわかる。また、好ましい態様においては、氷上性能も改善されていることがわかる。
【符号の説明】
【0162】
1・・・トレッド面
2・・・周方向溝
3・・・陸部
4・・・溝縁
5・・・溝壁
C・・・タイヤ赤道面
H・・・周方向溝の溝底さ
L0・・・陸部の幅方向長さ
L90・・・トレッド部90%摩耗時における幅方向長さ
【要約】
【課題】高速走行時のウェットグリップ性能が改善されたタイヤを提供すること。
【解決手段】少なくとも1つのゴム層を有するトレッド部を備えたタイヤであって、前記タイヤの最大負荷能力WL(kg)に対するタイヤ重量G(kg)の比(G/WL)が0.0160以下であり、前記トレッド部が、トレッド接地端およびタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝によって仕切られた陸部を有し、前記トレッド面を構成する第一のゴム層が、ゴム成分を含有するゴム組成物により構成され、前記ゴム組成物の純水の接触角θが105°以上であるタイヤ。
【選択図】なし