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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】浴槽用枕
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/00 20060101AFI20220621BHJP
   A47K 3/12 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
A47K3/00 Z
A47K3/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021165946
(22)【出願日】2021-10-08
(62)【分割の表示】P 2018005610の分割
【原出願日】2018-01-17
(65)【公開番号】P2022001300
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2021-11-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲隆
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-095948(JP,A)
【文献】特開2017-104192(JP,A)
【文献】米国特許第5715546(US,A)
【文献】独国実用新案第202005002570(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00
A47K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽に設置され、入浴者の頭を載せることが可能な浴槽用枕であって、
一対の側部と、前記一対の側部の後端を接続する後端部と、を有し、入浴者の頭の荷重
を支えるための支持部と、
前記支持部の上に設けられ、前記入浴者の頭が載置される上面を形成するとともに、前
記一対の側部の間の空間の上方を覆うことにより、前記浴槽の機能部を収納するための収
納空間を前記支持部とともに形成する頭載置部と、
前記機能部の一部を前方に露出させる開口部と、
を備え、
前記頭載置部の硬さは、前記支持部の硬さよりも柔らかことを特徴とする浴槽用枕。
【請求項2】
前記機能部は、左右方向に延びたスリット状の吐水口を有し、前記浴槽の内方に向けて湯水を吐水する吐水ユニットであることを特徴とする請求項1記載の浴槽用枕。
【請求項3】
前記浴槽用枕は、浴槽本体及び機能部の少なくとも一方に上方から嵌合又は係合した状態で、浴槽本体の上端の上に取り付けられることを特徴とする請求項1または2記載の浴槽用枕。
【請求項4】
前記頭載置部の前端は、上面視において後方側に向かって円弧状に湾曲することを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の浴槽用枕。
【請求項5】
前記収納空間の後端は、上面視において後方側に向かって円弧状に湾曲することを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の浴槽用枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、浴槽用枕に関する。
【背景技術】
【0002】
入浴中の入浴者が頭を載せて快適に入浴できるように、浴槽に設置される浴槽用枕が知られている。このような浴槽用枕においては、例えば特許文献1のように、吐水装置などの機能部を覆った状態で設置できるように、内部に収納空間を有するタイプがある。
【0003】
浴槽用枕には入浴者の頭が載置されるため、浴槽用枕の少なくとも上面は、弾性を有する比較的柔らかい材質で形成することが好ましい。しかしながら、浴槽用枕の全体を柔らかい材質で形成してしまうと、入浴者の頭の荷重を支えきれずに、下方へ撓んでしまう可能性が生じる。特に、内部に収納空間を有するタイプの浴槽用枕では、下方への撓みによって収納空間を適切に維持できなくなってしまうという問題が生じる。
【0004】
そこで、内部に収納空間を有するタイプの浴槽用枕では、入浴者の頭の荷重を支持するための支持部と、支持部の上方に配置され、少なくとも上面を支持部よりも柔らかい材質で形成する頭載置部と、で浴槽用枕を形成することが考えられている。
【0005】
支持部と頭載置部とで浴槽用枕を形成した場合、清掃などで浴槽用枕を浴槽から取り外す時には、作業者は、上面を形成する頭載置部を掴み、上方に力を掛けて取り外す可能性が高い。この際、支持部よりも柔らかい材質で形成された頭載置部が折れ曲がり、これが繰り返されると、折れ曲がりによる折れ跡が頭載置部の上面に形成されてしまうという問題がある。このため、内部に収納空間を有する浴槽用枕では、クッション性を損なうことなく収納空間の変形を抑制でき、且つ上面に折れ跡が生じてしまうことを抑制できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-8428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、クッション性を損なうことなく内部の収納空間の変形を抑制でき、且つ上面に折れ跡が生じてしまうことを抑制することができる浴槽用枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、浴槽に設置され、入浴者の頭を載せることが可能な浴槽用枕であって、一対の側部と、前記一対の側部の後端を接続する後端部と、を有し、入浴者の頭の荷重を支えるための支持部と、前記支持部の上に設けられ、前記入浴者の頭が載置される上面を形成するとともに、前記一対の側部の間の空間の上方を覆うことにより、前記浴槽の機能部を収納するための収納空間を前記支持部とともに形成する頭載置部と、を備え、前記頭載置部の硬さは、前記支持部の硬さよりも柔らかく、前記後端部と前記頭載置部との接続面の外縁を表す前記収納空間側の接続ラインは、変曲点を有する曲線状であることを特徴とする浴槽用枕である。
【0009】
この浴槽用枕によれば、硬い支持部と柔らかい頭載置部とで浴槽用枕を形成することにより、クッション性を損なうことなく、入浴者の頭が載置された際の収納空間の変形を抑制することができる。そして、収納空間側の接続ラインが、変曲点を有する曲線状である。これにより、作業者が柔らかい材質で形成された頭載置部の前端を掴んで上方に力を掛け、浴槽用枕を浴槽から取り外そうとした際にも、頭載置部の前端から接続ラインに対して、「てこの原理」による力を掛かり難くすることができる。従って、例えば左右方向に直線状に延びる接続ラインを形成した場合などと比べて、支持部に対して柔らかい材質で形成された頭載置部が、接続ラインを基点に大きく折れ曲がり、頭載置部の上面に折れ跡が発生してしまうことを抑制することができる。例えば、収納空間側の接続ラインが変曲点を有する曲線状であることにより、頭載置部の折れ曲がりが繰り返された際に、直線状の接続ラインなどと比べて、接続ラインを基点に同じ個所で折れ曲がってしまうことを抑制することができる。例えば、頭載置部の折れ曲がりの個所を前後にずらすことができる。従って、頭載置部の折れ曲がりが繰り返された際にも、頭載置部の上面に大きな折れ跡が発生してしまうことを抑制することができる。このように、クッション性を損なうことなく内部の収納空間の変形を抑制でき、且つ上面に折れ跡が生じてしまうことを抑制可能な浴槽用枕を提供することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記収納空間側の前記接続ラインの左右方向の中央近傍は、前記変曲点より前方に位置していることを特徴とする浴槽用枕である。
【0011】
頭載置部の左右方向の中央近傍は、左右方向の端部などと比べて把持し易く、力も加え易いことから、頭載置部に対して大きな力が加わる可能性が高い。また、頭載置部の前端のうち収納空間の左右方向の中央近傍の部分を把持された場合、支持部の一対の側部からの距離が長くなるため、頭載置部の前端の他の部分を把持された場合と比べて、「てこの原理」の力が頭載置部に加わり易くなってしまう。従って、上記のように、収納空間側の接続ラインの左右方向の中央近傍を、変曲点より前方に位置させることにより、頭載置部の収納空間の中央近傍の部分を把持された場合などにも、接続ラインを基点とする「てこの原理」による力を頭載置部に掛かり難くすることができる。これにより、頭載置部が接続ラインを基点に大きく折れ曲がり、頭載置部の上面に折れ跡が発生してしまうことを、より確実に抑制することができる。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、前記収納空間側の前記接続ラインは、前方側に向かって凸となるように湾曲した湾曲部を有し、前記湾曲部の頂点部分は、前記収納空間側の前記接続ラインの左右方向の中央近傍に設けられていることを特徴とする浴槽用枕である。
【0013】
この浴槽用枕によれば、頭載置部の収納空間の中央近傍の部分を把持された場合などにも、接続ラインを基点とする「てこの原理」による力を、より頭載置部に掛かり難くすることができる。
【0014】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記収納空間側の前記接続ラインの少なくとも一部は、波形形状であることを特徴とする浴槽用枕である。
【0015】
この浴槽用枕によれば、接続ラインの少なくとも一部が波形形状、すなわち節である変曲点及び頂点部分が複数ある形状であるため、頭載置部が大きく折れ曲がってしまうことによる大きな折れ跡が頭載置部の上面に発生してしまうことを、より確実に抑制することができる。
【0016】
第5の発明は、第1~第4のいずれか1つの発明において、前記収納空間側の前記接続ラインの少なくとも一部は、前記一対の側部の後端を結ぶ仮想線よりも前方に位置していることを特徴とする浴槽用枕である。
【0017】
この浴槽用枕によれば、作業者が柔らかい材質で形成された頭載置部の前端を掴んで上方に力を掛け、浴槽用枕を浴槽から取り外そうとした際にも、頭載置部の前端から接続ラインに対して、「てこの原理」による力を、より掛かり難くすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の態様によれば、クッション性を損なうことなく内部の収納空間の変形を抑制でき、且つ上面に折れ跡が生じてしまうことを抑制することができる浴槽用枕が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る浴槽及び浴槽用枕を模式的に表す斜視図である。
図2】実施形態に係る浴槽及び浴槽用枕を模式的に表す平面図である。
図3】実施形態に係る浴槽用枕を模式的に表す斜視図である。
図4】実施形態に係る浴槽用枕を模式的に表す底面図である。
図5】実施形態に係る浴槽用枕を模式的に表す断面図である。
図6】実施形態に係る浴槽用枕の変形例を模式的に表す底面図である。
図7】実施形態に係る浴槽用枕の変形例を模式的に表す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る浴槽及び浴槽用枕を模式的に表す斜視図である。
図2は、実施形態に係る浴槽及び浴槽用枕を模式的に表す平面図である。
図1及び図2に表したように、浴槽用枕10は、湯水を貯留する浴槽100に設置される。浴槽用枕10は、浴槽100に取り付けられた状態で使用され、浴槽100に入浴した入浴者が頭を載せることを可能にする。換言すれば、浴槽用枕10は、入浴者の頭を支持するように、浴槽100に取り付けられる。
【0021】
浴槽100は、浴槽本体102を備える。浴槽本体102は、内壁面104を有する。内壁面104は、入浴者の背中を支持する背もたれ面106を有する。ここで、本願明細書においては、背もたれ面106に背中を当接させた入浴者からみて上方を「上方」とし、下方を「下方」とし、前方を「前方」とし、後方を「後方」とし、右側を「右側方」とし、左側を「左側方」とする。
【0022】
浴槽100は、機能部110を備えている。機能部110は、背もたれ面106に連なる上端(リム面)の上に設けられる。機能部110は、例えば、浴槽本体102の内方に向けて湯水を吐水する吐水ユニットである。機能部110は、前方に向けて湯水を吐水する。浴槽100は、例えば、浴槽本体102内に溜められた湯水を図示を省略したポンプによって吸引し、吸引した湯水を機能部110から吐水する。換言すれば、浴槽100は、浴槽本体102内に溜められた湯水を循環させる。これにより、浴槽本体102から湯水を溢れさせることなく、機能部110から湯水を吐水することができる。
【0023】
機能部110は、例えば、背もたれ面106に背中を当接させた入浴者の首や肩に向けて湯水を吐水する。これにより、例えば、入浴者の首や肩をより温めたり、入浴者の首や肩にマッサージ効果を付与したりすることができ、入浴時のリラクゼーション効果をより高めることができる。
【0024】
機能部110は、左右方向に延びたスリット状の吐水口110aを有する。これにより、機能部110は、左右方向に延びた帯状の水流を吐水口110aから吐水する。吐水口110aの左右方向の長さは、例えば、20cm以上である。吐水口110aの左右方向の長さは、例えば、人間の首の平均的な幅よりも長い。これにより、背もたれ面106に背中を当接させた入浴者の首や肩に適切に湯水を当てることができる。また、吐水口110aの左右方向の長さは、例えば、浴槽本体102の内部の空間の左右方向の幅よりも短い。これにより、浴槽本体102内に適切に湯水を吐水することができる。
【0025】
機能部110は、吐水ユニットに限ることなく、例えば、浴槽本体102内の湯水に向けて光を照射する照明ユニットなどでもよい。機能部110は、例えば、湯水を吐水する吐水機能と、吐水された湯水を照らす照明機能と、を有してもよい。機能部110は、浴槽100に取り付けて使用される任意の装置でよい。
【0026】
浴槽用枕10は、浴槽本体102の背もたれ面106に連なる上端の上に取り付けられる。これにより、入浴者は、背もたれ面106に背中を当接させ、且つ頭を浴槽用枕10に載せた状態で入浴を行うことができる。このように、浴槽用枕10を設けることで、よりリラックスさせた姿勢で入浴者に入浴を行わせることができる。入浴時のリラクゼーション効果をより高めることができる。
【0027】
また、浴槽用枕10は、機能部110を上方から覆うように、浴槽本体102の上端の上に取り付けられる。浴槽用枕10は、浴槽本体102に取り付けられた状態において、機能部110の少なくとも一部を覆い隠す。浴槽用枕10は、入浴者の頭の載置を可能にするとともに、機能部110の外部への露出を抑制する。これにより、機能部110を浴槽本体102に設けた場合にも、浴槽100の美観の低下を抑制することができる。浴槽100では、浴槽用枕10と機能部110とを設けることにより、リラクゼーション効果の向上と美観の向上とを図ることができる。
【0028】
浴槽用枕10は、入浴者の頭を載せることが可能な枕本体12と、枕本体12の前面に設けられた開口14と、を有する。枕本体12は、上記のように、浴槽本体102の上端の上に取り付けられ、機能部110を上方から覆う。
【0029】
枕本体12は、例えば、浴槽本体102及び機能部110の少なくとも一方に上方から嵌合又は係合した状態で、浴槽本体102の上端の上に取り付けられる。これにより、例えば、入浴者が枕本体12の上に頭を載せた際などに、枕本体12が左右や前後に動いてしまうことなどを抑制することができる。従って、入浴者の頭を、より適切に支持することができる。
【0030】
また、浴槽用枕10を浴槽本体102から取り外す場合には、例えば、枕本体12を掴んで上方に力を掛け、枕本体12の嵌合又は係合を解除する。これにより、浴槽用枕10を浴槽本体102から取り外すことができる。
【0031】
開口14は、機能部110の一部を前方に露出させる。この例において、開口14は、機能部110の吐水口110aの少なくとも一部を前方に露出させる。開口14は、吐水口110aと同様に、左右方向に延びたスリット状である。
【0032】
機能部110から吐水された湯水は、吐水口110a及び開口14を介して浴槽本体102内に吐水される。すなわち、開口14は、機能部110から吐水された湯水を流すための開口である。浴槽用枕10及び機能部110は、枕本体12に頭を載せた状態の入浴者の首や肩に湯水を吐水する。これにより、リラクゼーション効果をさらに高めることができる。
【0033】
開口14は、湯水を流すための開口に限定されるものではない。例えば、機能部110が照明ユニットである場合には、開口14は、機能部110から照射された光を通すための開口である。開口14は、枕本体12の前面に設けられ、機能部110の一部を前方に露出させる任意の開口でよい。
【0034】
図3は、実施形態に係る浴槽用枕を模式的に表す斜視図である。
図4は、実施形態に係る浴槽用枕を模式的に表す底面図である。
図5は、実施形態に係る浴槽用枕を模式的に表す断面図である。
図3及び図4は、浴槽用枕10を下方から見た状態を模式的に表している。図5は、図4のA1-A2線断面を模式的に表している。
図3図5に表したように、浴槽用枕10の枕本体12は、支持部20と、頭載置部30と、を備える。
【0035】
支持部20は、枕本体12において、入浴者の頭の荷重を支えるための部分である。支持部20は、一対の側部21、22と、後端部24と、を有する。側部21、22は、例えば、前後方向に延びる。側部22は、側部21と左右方向に並ぶ。また、側部22は、左右方向において、側部21と離間している。従って、側部21と側部22との間には、空間が設けられている。後端部24は、左右方向に延び、一対の側部21、22の後端を接続する。側部21、22は、換言すれば、左右方向に延びた後端部24の左右の端部から前方に向かって延びた部分である。
【0036】
頭載置部30は、支持部20の上に設けられ、入浴者の頭が載置される上面32を形成する。また、頭載置部30は、一対の側部21、22の間の空間の上方を覆うことにより、浴槽100の機能部110を収納するための収納空間34を支持部20とともに形成する。枕本体12は、浴槽本体102の上端の上に取り付けられた状態において、収納空間34内に機能部110を収納する。
【0037】
開口14は、収納空間34と連続する。開口14は、換言すれば、収納空間34の少なくとも一部を前方に露出させる。頭載置部30は、例えば、収納空間34を形成するとともに、収納空間34の少なくとも一部を前方に露出させる開口14を枕本体12の前面に形成する。
【0038】
この例において、収納空間34の左右方向の中央は、枕本体12の左右方向の中央と実質的に同じである。収納空間34の左右方向の中央は、枕本体12の左右方向の中央に対して右側又は左側にずれていてもよい。
【0039】
支持部20及び頭載置部30には、例えば、ポリウレタンなどの樹脂材料が用いられる。支持部20及び頭載置部30は、弾性を有する。また、頭載置部30の硬さは、支持部20の硬さよりも柔らかい。
【0040】
支持部20の硬さは、例えば、アスカーC型の硬度において、60度程度である。頭載置部30の硬さは、例えば、アスカーC型の硬度において、40度程度である。これにより、入浴者の頭を支持する際のクッション性を頭載置部30によって得ることができるとともに、入浴者の頭の荷重を支持部20によって適切に支持することができる。例えば、枕本体12の全体を柔らかい材質で形成した場合などと比べて、入浴者の頭を支持した際の収納空間34の変形を抑制することができる。支持部20の硬さは、上記に限ることなく、入浴者の頭の荷重を適切に支持可能な任意の硬さでよい。頭載置部30の硬さは、上記に限ることなく、入浴者の頭を支持する際の適切なクッション性を得られる任意の硬さでよい。
【0041】
後端部24と頭載置部30との接続面40の外縁を表す収納空間34側の接続ライン42は、変曲点PIを有する曲線状である。接続ライン42は、例えば、複数の変曲点PIを有する曲線状である。また、接続ライン42の収納空間34側の少なくとも一部は、例えば、後端部24よりも前方に延び、収納空間34の上方に位置している。支持部20は、後端部24の上端から前方に向かって突出した突出部26を有する。突出部26は、収納空間34の上方に位置し、頭載置部30と接している。これにより、上記のように、接続ライン42の少なくとも一部を収納空間34の上方に位置させることができる。
【0042】
収納空間34側の接続ライン42の少なくとも左右方向の中央近傍は、変曲点PIより前方に位置している。収納空間34側の接続ライン42の左右方向の中央近傍は、収納空間34の上方に位置している。換言すれば、接続ライン42は、少なくとも収納空間34の左右方向の中央近傍において、収納空間34の上方に位置している。突出部26は、収納空間34の左右方向の中央近傍に設けられている。突出部26の少なくとも一部は、収納空間34の左右方向の中央に位置している。これにより、上記のように、収納空間34側の接続ライン42の少なくとも左右方向の中央近傍を、変曲点PIより前方に位置させることができる。収納空間34側の接続ライン42の左右方向の中央近傍を、収納空間34の上方に位置させることができる。
【0043】
ここで、収納空間34側の接続ライン42とは、例えば、枕本体12の略全周に表れる接続ライン42のうちの収納空間34内に表れている部分である。また、接続ライン42の左右方向の中央近傍とは、例えば、接続ライン42を左右方向に三分割したうちの、中央の部分である。接続ライン42の左右方向の中央近傍は、例えば、左右方向の中央から右側に3cm、及び左右方向の中央から左側に3cmの、計6cmの範囲を少なくとも含む。収納空間34の左右方向の中央近傍についても、接続ライン42に関する説明と同様である。
【0044】
収納空間34側の接続ライン42は、前方側に向かって凸となるように円弧状に湾曲した湾曲部42aを有する。換言すれば、突出部26の前端26aは、上面視において、前方側に向かって凸となるように円弧状に湾曲している。突出部26の前端26aを上方から見た形状は、例えば、半円状である。
【0045】
湾曲部42aの頂点部分42bは、収納空間34側の接続ライン42の左右方向の中央近傍に設けられている。頂点部分42bは、例えば、収納空間34の前後方向の中央CLよりも前方に位置する。また、頂点部分42bは、例えば、頭載置部30の前端30a(枕本体12の前端)よりも後方に位置する。すなわち、頂点部分42bは、収納空間34の前後方向の中央CLと頭載置部30の前端30aとの間に設けられる。換言すれば、接続ライン42の前端の少なくとも一部は、収納空間34の前後方向の中央CLと頭載置部30の前端30aとの間に設けられる。例えば、接続ライン42の前端の中央近傍は、収納空間34の前後方向の中央CLと頭載置部30の前端30aとの間に設けられる。
【0046】
この例において、収納空間34の後端34aは、上面視において後方側に向かって凸となるように円弧状に湾曲している。収納空間34の後端34aは、換言すれば、後端部24の前端である。従って、収納空間34側の接続ライン42は、上面視において前方側に向かって凸となるように円弧状に湾曲した部分(湾曲部42a)と、後方側に向かって凸となるように円弧状に湾曲した部分(湾曲部42aの両側の部分)と、を有する。すなわち、この例において、収納空間34側の接続ライン42は、2つの変曲点PIを有する曲線状である。
【0047】
浴槽本体102の背もたれ面106は、例えば、入浴者の背中を受けやすくするため、上面視において後方側に向かって円弧状に湾曲する。この場合、背もたれ面106に連なる上端の前方側の縁部も、上面視において後方側に向かって円弧状に湾曲する。従って、これらの形状に合わせて、頭載置部30の前端30aも、後方側に向かって円弧状に湾曲する。これにより、頭載置部30の前端30aと背もたれ面106との間に不要な段差などが生じてしまうことを抑制し、頭載置部30の上面32に入浴者の頭をより載せやすくすることができる。収納空間34の後端34aは、例えば、この頭載置部30の前端30aの形状に合わせて、上面視において後方側に向かって凸となるように円弧状に湾曲する。
【0048】
収納空間34の後端34aを上方から見た形状は、円弧状に限ることなく、例えば、左右方向に延びる直線状などでもよい。収納空間34の後端34aを上方から見た形状は、任意の形状でよい。
【0049】
収納空間34側の接続ライン42を2つの変曲点PIを有する曲線状とする場合には、2つの変曲点PIの間の距離を、なるべく長くすることが好ましい。換言すれば、湾曲部42aの左右方向の幅は、なるべく長くすることが好ましい。2つの変曲点PIの左右方向の距離は、例えば、一方の変曲点PIと側部21との間の左右方向の距離及び他方の変曲点PIと側部22との間の左右方向の距離のそれぞれよりも長いことが好ましい。なお、変曲点PIの数は、2つに限ることなく、3つ以上でもよい。
【0050】
収納空間34側の接続ライン42の形状及び突出部26の形状は、上記に限ることなく、変曲点PIを有する曲線状の任意の形状でよい。
【0051】
以上、説明したように、本実施形態に係る浴槽用枕10では、硬い支持部20と柔らかい頭載置部30とで浴槽用枕10を形成することにより、クッション性を損なうことなく、入浴者の頭が載置された際の収納空間34の変形を抑制することができる。そして、収納空間34側の接続ライン42が、変曲点PIを有する曲線状である。これにより、作業者が柔らかい材質で形成された頭載置部30の前端30aを掴んで上方に力を掛け、浴槽用枕10を浴槽100から取り外そうとした際にも、頭載置部30の前端30aから接続ライン42に対して、「てこの原理」による力を掛かり難くすることができる。従って、例えば左右方向に直線状に延びる接続ラインを形成した場合などと比べて、支持部20に対して柔らかい材質で形成された頭載置部30が、接続ライン42を基点に大きく折れ曲がり、頭載置部30の上面32に折れ跡が発生してしまうことを抑制することができる。例えば、収納空間34側の接続ライン42が変曲点PIを有する曲線状であることにより、頭載置部30の折れ曲がりが繰り返された際に、直線状の接続ラインなどと比べて、接続ライン42を基点に同じ個所で折れ曲がってしまうことを抑制することができる。例えば、頭載置部30の折れ曲がりの個所を前後にずらすことができる。従って、頭載置部30の折れ曲がりが繰り返された際にも、頭載置部30の上面32に大きな折れ跡が発生してしまうことを抑制することができる。このように、クッション性を損なうことなく内部の収納空間34の変形を抑制でき、且つ上面32に折れ跡が生じてしまうことを抑制可能な浴槽用枕10を提供することができる。
【0052】
また、浴槽用枕10は、枕本体12の前面に設けられた開口14を有する。この場合、浴槽用枕10を浴槽100から取り外す際に、開口14に手指を掛け、頭載置部30の前端30aの部分が掴まれやすくなる。このような場合にも、上記のように、収納空間34側の接続ライン42を変曲点PIを有する曲線状にすることにより、上面32に折れ跡が生じてしまうことを抑制することができる。
【0053】
また、浴槽用枕10では、収納空間34側の接続ライン42の少なくとも一部が、収納空間34の前後方向の中央CLよりも前方に位置する。これにより、頭載置部30が接続ライン42を基点に大きく折れ曲がり、頭載置部30の上面32に折れ跡が発生してしまうことを、より確実に抑制することができる。
【0054】
また、浴槽用枕10では、収納空間34側の接続ライン42が、頭載置部30の前端30aよりも後方に位置する。これにより、クッション性の低下をより確実に抑制することができる。
【0055】
頭載置部30の左右方向の中央近傍は、左右方向の端部などと比べて把持し易く、力も加え易いことから、頭載置部30に対して大きな力が加わる可能性が高い。また、頭載置部30の前端30aのうち収納空間34の左右方向の中央近傍の部分を把持された場合、支持部20の一対の側部21、22からの距離が長くなるため、頭載置部30の前端30aの他の部分を把持された場合と比べて、「てこの原理」の力が頭載置部30に加わり易くなってしまう。従って、上記のように、収納空間34側の接続ライン42の左右方向の中央近傍を、変曲点PIより前方に位置させることにより、頭載置部30の収納空間34の中央近傍の部分を把持された場合などにも、接続ライン42を基点とする「てこの原理」による力を頭載置部30に掛かり難くすることができる。これにより、頭載置部30が接続ライン42を基点に大きく折れ曲がり、頭載置部30の上面32に折れ跡が発生してしまうことを、より確実に抑制することができる。
【0056】
浴槽用枕10では、収納空間34側の接続ライン42が、前方側に向かって凸となるように湾曲した湾曲部42aを有し、湾曲部42aの頂点部分42bが、収納空間34側の接続ライン42の左右方向の中央近傍に設けられている。これにより、頭載置部30の収納空間34の中央近傍の部分を把持された場合などにも、接続ライン42を基点とする「てこの原理」による力を、より頭載置部30に掛かり難くすることができる。
【0057】
また、収納空間34の上方に位置する接続ライン42を連続的に滑らかに変化する円弧状とすることにより、例えば、接続ライン42を三角形状や四角形状などの角を有する形状とした場合などと比べて、接続ライン42を基点とする「てこの原理」による力を、より頭載置部30に掛かり難くすることができる。
【0058】
図6は、実施形態に係る浴槽用枕の変形例を模式的に表す底面図である。
なお、上記実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
図6に表したように、浴槽用枕10aでは、収納空間34側の接続ライン42の少なくとも一部が、一対の側部21、22の後端21a、22aを結ぶ仮想線VLよりも前方に位置している。仮想線VLは、より詳しくは、側部21の収納空間34側の後端21aと、側部22の収納空間34側の後端22aと、を結ぶ仮想的な線である。
【0059】
このように、浴槽用枕10aでは、収納空間34側の接続ライン42の少なくとも一部が、仮想線VLよりも前方に位置している。これにより、作業者が柔らかい材質で形成された頭載置部30の前端30aを掴んで上方に力を掛け、浴槽用枕10aを浴槽100から取り外そうとした際にも、頭載置部30の前端30aから接続ライン42に対して、「てこの原理」による力を、より掛かり難くすることができる。
【0060】
浴槽用枕10aでは、湾曲部42aの一部が、仮想線VLよりも前方に位置している。接続ライン42において仮想線VLよりも前方に位置する部分は、湾曲部42aに限ることなく、任意の部分でよい。
【0061】
図7は、実施形態に係る浴槽用枕の変形例を模式的に表す底面図である。
図7に表したように、浴槽用枕10bでは、収納空間34側の接続ライン42の少なくとも一部が、波形形状である。接続ライン42は、少なくとも左右方向の中央近傍において波形形状に形成されている。浴槽用枕10bにおいて、接続ライン42は、複数の変曲点PI及び複数の頂点部分42bを有する曲線状である。波形形状は、換言すれば、左右方向に並べて設けられた複数の円弧状の突出部26を有する形状である。
【0062】
このように、浴槽用枕10bでは、接続ライン42の少なくとも一部が波形形状、すなわち節である変曲点PI及び頂点部分42bが複数ある形状であるため、頭載置部30が大きく折れ曲がってしまうことによる大きな折れ跡が頭載置部30の上面32に発生してしまうことを、より確実に抑制することができる。また、波形形状の接続ライン42において、複数の頂点部分42bは、左右方向に一直線状に並ばない。これにより、大きな折れ跡が頭載置部30の上面32に発生してしまうことを、より確実に抑制することができる。さらに、波形形状の接続ライン42において、複数の頂点部分42bは、同一の曲率の曲線上に並ばない。換言すれば、複数の頂点部分42bは、同一円周上に並ばない。これにより、大きな折れ跡が頭載置部30の上面32に発生してしまうことを、さらに確実に抑制することができる。
【0063】
この例では、接続ライン42が、5つの頂点部分42bを有している。接続ライン42に設けられる頂点部分42bの数は、5つに限ることなく、2つ以上の任意の数でよい。また、図7では、各突出部26のそれぞれの突出量が、比較的小さい状態を図示している。例えば、接続ライン42の少なくとも一部を波形形状とした場合に、複数の頂点部分42bのそれぞれが、上記の仮想線VLよりも前方に位置するようにしてもよい。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、浴槽用枕10、10a、10bなどが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0065】
10、10a、10b 浴槽用枕、 12 枕本体、 14 開口、 20 支持部、 21、22 側部、 24 後端部、 26 突出部、 30 頭載置部、 32 上面、 34 収納空間、 40 接続面、 42 接続ライン、 100 浴槽、 102 浴槽本体、 104 内壁面、 106 背もたれ面、 110 機能部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7