(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】シンチレータパネルおよびシンチレータパネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G21K 4/00 20060101AFI20220621BHJP
G01T 1/20 20060101ALN20220621BHJP
【FI】
G21K4/00 A
G01T1/20 G
G01T1/20 E
G01T1/20 L
(21)【出願番号】P 2021516707
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2021011637
(87)【国際公開番号】W WO2021200327
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2020059633
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 将
(72)【発明者】
【氏名】大倉 夏美
(72)【発明者】
【氏名】松村 和行
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-060821(JP,A)
【文献】特開2012-002627(JP,A)
【文献】特開2004-061492(JP,A)
【文献】特開2019-190870(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021540(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/069284(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0378033(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104516009(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0001946(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 4/00
G01T 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の上に形成された隔壁と、前記隔壁によって区画された、蛍光体を有するシンチレータ層とを備えるシンチレータパネルであって、前記隔壁がポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる一以上の化合物(P)を含
み、前記化合物(P)の分子鎖末端がカルボン酸残基である、シンチレータパネル。
【請求項2】
基板と、前記基板の上に形成された隔壁と、前記隔壁によって区画された、蛍光体を有するシンチレータ層とを備えるシンチレータパネルであって、前記隔壁がポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる一以上の化合物(P)を含み、前記化合物(P)が分子鎖内にフェノール性水酸基由来の構造を有する、シンチレータパネル。
【請求項3】
前記化合物(P)が分子鎖内にフェノール性水酸基由来の構造を有する、請求項1に記載のシンチレータパネル。
【請求項4】
前記隔壁がさらにエポキシ化合物由来の構造を含む請求項1~3のいずれかに記載のシンチレータパネル。
【請求項5】
化合物(P)を1molとした際、エポキシ化合物由来の構造の含有量が3mol以上25mol以下相当である請求項4に記載のシンチレータパネル。
【請求項6】
前記隔壁の表面に金属を含有する反射層を有する請求項1~5のいずれかに記載のシンチレータパネル。
【請求項7】
前記反射層の表面に、保護層を有する請求項6に記載のシンチレータパネル。
【請求項8】
前記保護層の表面に、第二の反射層を有する請求項7に記載のシンチレータパネル。
【請求項9】
前記隔壁の底部幅L3に対する隔壁の高さL1のアスペクト比(L1/L3)が5.0以上であり、底部幅L3と前記隔壁の頂部幅L4の比率(L4/L3)が0.5以上である請求項1~8いずれか記載のシンチレータパネル。
【請求項10】
基板上に隔壁を形成し、セルを区画する隔壁形成工程と、前記隔壁の表面に金属反射層を形成する反射層形成工程と、前記隔壁で区画されたセル内に蛍光体を充填する充填工程とを含み、前記隔壁はポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる一以上の化合物(P)並びにエポキシ化合物由来の構造を含有
し、前記化合物(P)の分子鎖末端がカルボン酸残基である、シンチレータパネルの製造方法。
【請求項11】
基板上に隔壁を形成し、セルを区画する隔壁形成工程と、前記隔壁の表面に金属反射層を形成する反射層形成工程と、前記隔壁で区画されたセル内に蛍光体を充填する充填工程とを含み、前記隔壁はポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる一以上の化合物(P)並びにエポキシ化合物由来の構造を含有し、前記化合物(P)が分子鎖内にフェノール性水酸基由来の構造を有する、シンチレータパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシンチレータパネルおよびシンチレータパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療現場において、フィルムを用いた放射線画像が広く用いられている。しかし、フィルムを用いた放射線画像は、アナログ画像情報である。そのため、近年、平板放射線検出器(flat panel detector:以下、「FPD」)等のデジタル方式の放射線検出器が開発されている。FPDは、放射線を可視光に変換するために、シンチレータパネルが使用される。シンチレータパネルは、放射線蛍光体を含む。照射された放射線に応じて、放射線蛍光体は、可視光を発する。発光した光は、TFT(thin film transistor)やCCD(charge-coupled device)によって電気信号に変換され、放射線の情報がデジタル画像情報に変換される。しかし、シンチレータパネルには、放射線蛍光体から発光した光が、蛍光体を含有する層(蛍光体層)内で散乱し、得られる画像の鮮鋭度が低下するという課題がある。
【0003】
そこで、発光した光の散乱の影響を小さくするために、隔壁により区画された空間内に蛍光体を充填する方法が提案されている。隔壁の材料としては、ガラス(特許文献1)や樹脂(特許文献2)によるものが提案されている。蛍光体から出た光の散乱は隔壁で抑制されることにより、高い鮮鋭度のX線画像を得ることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-168348号公報
【文献】特開2004-340737号公報
【文献】特開2019-190870号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】J.H.Daniel著「Fabrication of high aspect-ratio polymer microstructures forlarge-area electronic portal X-ray imagers」ELSEVIER、2007年6月28日オンライン公開、p.185-193
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの方法では、隔壁を有しないシンチレータパネルと比較して、隔壁の体積に相当する分だけ蛍光体の量が減少する。また、隔壁で光が部分的に吸収されてしまう。これらのことから、蛍光体による発光量が低下し、X線画像の鮮鋭度は向上するが、画像の輝度が低下するという問題があった。
【0007】
また、非特許文献1に記載のエポキシ樹脂のみを用いた隔壁を有するシンチレータパネルは、機械強度が不十分であり、シンチレータパネルの製造工程において、隔壁に破断や欠損が生じるという課題があった。
【0008】
そこで本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、隔壁を有する方式のシンチレータパネルにおいて、機械強度が十分であるとともに、輝度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、基板と、前記基板の上に形成された隔壁と、前記隔壁によって区画された、蛍光体を有するシンチレータ層と、を備えるシンチレータパネルであって、前記隔壁が、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる一以上の化合物(P)を含み、前記化合物(P)の分子鎖末端がカルボン酸残基である、シンチレータパネルである。また、本発明は、基板と、前記基板の上に形成された隔壁と、前記隔壁によって区画された、蛍光体を有するシンチレータ層と、を備えるシンチレータパネルであって、前記隔壁が、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる一以上の化合物(P)を含み、前記化合物(P)が分子鎖内にフェノール性水酸基由来の構造を有する、シンチレータパネルである。
【0010】
また本発明は、基板上に隔壁を形成し、セルを区画する隔壁形成工程と、前記隔壁の表面に金属反射層を形成する反射層形成工程と、前記隔壁で区画されたセル内に蛍光体を充填する充填工程と、を含み、前記隔壁はポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる一以上の化合物(P)並びにエポキシ化合物由来の構造を有するシンチレータパネルの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、隔壁を有する方式のシンチレータパネルの隔壁の機械強度が十分であるとともに、輝度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明に係るシンチレータパネルを含む放射線検出器用部材を模式的に表した断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るシンチレータパネルを模式的に表した断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るシンチレータパネルの一例を模式的に表した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(シンチレータパネル)
以下、図面を用いて本発明に係るシンチレータパネルの実施の形態について説明する。なお、図面は模式的なものである。また、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るシンチレータパネル2を含む放射線検出器用部材1を模式的に表した断面図である。放射線検出器用部材1は、シンチレータパネル2、出力基板3を有する。シンチレータパネル2は、基板4と、隔壁5と、隔壁5によって区画されたセル内の蛍光体層6を有する。隔壁5の表面には金属反射層(以下、「第1反射層」と称することがある。)11が形成され、その表面には保護層12が設けられている。保護層12の表面には、さらに、第2反射層13が設けられている。蛍光体層6には、蛍光体14とバインダー樹脂15が含まれている。出力基板3は、基板10と、基板10上に形成された出力層9と、出力層9上に形成されたフォトダイオードを有する光電変換層8とを有する。光電変換層8上には、隔膜層7が設けられてもよい。シンチレータパネル2の出光面と出力基板3の光電変換層8とは、隔膜層7を介して接着または密着されていることが好ましい。蛍光体層6で発光した光は、光電変換層8に到達して光電変換され、出力される。以下、それぞれについて説明する。
【0015】
(基板)
基板4を構成する材料は、放射線透過性を有する材料であることが好ましい。基板4を構成する材料は、例えば、各種のガラス、高分子材料、金属等である。ガラスは、石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラス等である。高分子材料は、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、トリアセテート、ポリカーボネート、炭素繊維強化樹脂等である。金属は、アルミニウム、鉄、銅等である。これらは二種以上を併用されてもよい。これらの中でも、基板4を構成する材料は、放射線の透過性、表面の平滑性の観点からガラス、高分子材料であることが好ましく、高分子材料であることがより好ましい。高分子材料の中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリイミドであることが好ましい。
【0016】
基板4の厚みは、シンチレータパネル2の軽量化の観点から、ガラス基板の場合は2.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましい。また、基板4の厚みは、高分子材料からなる基板の場合は、3.0mm以下であることが好ましい。
【0017】
(隔壁)
隔壁5は、少なくとも区画された空間(セル)を形成するために設けられる。そのため、シンチレータパネル2においては、格子状に配置された光電変換素子の画素の大きさ及びピッチと、シンチレータパネル2のセルの大きさ及びピッチとを一致させることにより、光電変換素子の各画素と、シンチレータパネル2の各セルとを対応づけることができる。これにより、シンチレータパネル2を用いると、高鮮鋭度の画像が得られる。
【0018】
隔壁5は、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる一以上の化合物(P)(以下、単に「化合物(P)」と称することがある。)を含む。本発明の実施の形態に係るシンチレータパネルは、化合物(P)を含有する隔壁を備えることにより、輝度を向上させることができる。その原理は主に以下の2点にあると考えられる。ただし以下の推定原理に限定されるものではない。また、以下の2点の両方ともに該当しなければならないわけでもない。
【0019】
化合物(P)を含有する隔壁は、ガラス等からなる隔壁と比べて、微細でアスペクト比の高いパターン形状とすることができる。したがって、シンチレータ層内の蛍光体の充填量を増加させ、輝度を向上させることができる。
【0020】
また、化合物(P)を有する隔壁は表面平滑性に優れる。これは、化合物(P)が耐熱性、機械特性および耐薬品性に優れることから、後述する隔壁の製造工程およびその他のシンチレータパネルの製造工程において外部からの化学的および機械的なダメージを受けにくく、それに伴う隔壁の変形や破断、欠損が生じにくいためであると推測される。また、隔壁が表面平滑性に優れていると、隔壁表面における光の反射率を高めることができる。あるいは、隔壁表面に反射層を形成する場合に、平滑性の高い反射層を形成することができる。以上から、蛍光体の発光の取り出し効率が向上し、輝度を向上させることができる。
【0021】
化合物(P)の中でも、耐熱性、耐薬品性および機械強度の観点から、ポリイミドであることが好ましい。
【0022】
隔壁の表面平滑性は、既存の表面粗さ計測方法により評価することが出来る。表面粗さ計測方法には、触針式のもの、光干渉によるもの、レーザー顕微鏡によるものが挙げられるが、隔壁の側面のように入り組んだ構造の表面粗さを評価するには、レーザー顕微鏡による方法が好ましく用いられる。表面粗さの評価指標としては、表面形状を測定した曲線の各微小部分がなす傾き(傾斜角)を算術平均した算術平均傾斜角が好ましく用いられる。算術平均傾斜角の値が小さいほど、表面形状が平滑である。
【0023】
化合物(P)を用いた感光性樹脂組成物を作製する場合、感光性材料の成分は特に限定されない。一例を挙げると、化合物(P)に多官能アクリルモノマーと光ラジカル重合開始剤を添加した光ラジカル重合性ネガ型感光性樹脂組成物、化合物(P)にエポキシ化合物と光カチオン性重合開始剤を添加した光カチオン重合性ネガ型感光性樹脂組成物、化合物(P)にナフトキノン系感光剤を添加した光可溶化ポジ型感光性樹脂組成物、などが挙げられる。これらの中でも、特に、エポキシ化合物を含有した光カチオン重合性ネガ型感光性樹脂組成物は、高いアスペクト比を有する隔壁を形成できるため好ましい。
【0024】
化合物(P)は、下記一般式(1)~(2)で表される構造から選ばれる少なくとも1種類の繰り返し単位構造を有する化合物であることが好ましい。
【0025】
【0026】
一般式(1)~(2)中、X1は2~8価の有機基を示し、X2は4~8価の有機基を示し、Y1およびY2はそれぞれ独立に2~6価の有機基を示し、R1は水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を示す。qは0~2の整数であり、r、s、tおよびuはそれぞれ独立に0~4の整数である。
【0027】
Y1およびY2はジアミン由来の有機基を表している。Y1およびY2は炭化水素基を含有していることが好ましく、芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を含有することがより好ましい。芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を含有することで、樹脂の耐熱性がより向上するため、後述するシンチレータパネルの製造工程においても、隔壁の形状や平滑性を維持することが出来る。Y1およびY2が含有する炭化水素基の炭素数は5~40が好ましい。
【0028】
Y1およびY2は、フェノール性水酸基由来の構造を有するジアミン残基であることが好ましい。フェノール性水酸基由来の構造を有するジアミン残基を含有する、すなわち、化合物(P)を含有する感光性樹脂組成物が、フェノール性水酸基を有するジアミン残基を含有することで、樹脂のアルカリ現像液への適度な溶解性が得られるため、露光部と未露光部の高いコントラストが得られ、所望のパターンが形成できる。フェノール性水酸基由来の構造とは、具体的には、芳香環を含むエーテル結合やウレタン結合を意味し、フェノール性水酸基がエポキシやオキセタン等の環状エーテル化合物、イソシアネート化合物等と反応することで形成される。
【0029】
フェノール性水酸基を有するジアミンの具体的な例としては、例えば、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ)ビフェニル、2,2’-ジトリフルオロメチル-5,5’-ジヒドロキシル-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-5,5’-ジヒドロキシベンジジンなどの芳香族ジアミンや、これらの芳香族環や炭化水素の水素原子の一部を、炭素数1~10のアルキル基やフルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換した化合物、また、下記に示す構造を有するジアミンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。また、これら2種以上のジアミン成分を含有していてもよい。
【0030】
【0031】
【0032】
化合物(P)は、これら以外の芳香族ジアミン残基を含んでもよい。芳香族ジアミンの具体的な例としては、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルなどの芳香族ジアミンや、これらの芳香族環や炭化水素の水素原子の一部を、炭素数1~10のアルキル基やフルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換した化合物などを挙げることができるが、これらに限定されない。また、これら2種以上のジアミン成分を含有していても用いてもよい。
【0033】
X1およびX2はカルボン酸残基を表している。X1およびX2は炭化水素基を含有していることが好ましく、芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を含有することがより好ましい。芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を含有することで、樹脂の耐熱性がより向上するため、後述するシンチレータパネルの製造工程においても、隔壁の形状や平滑性を維持することが出来る。
【0034】
さらに、後述する隔壁形成の際に使用する波長に対する樹脂の色が透明であり、厚膜で微細なパターン加工が可能となる点から、脂環式炭化水素基を含有することがより好ましい。
【0035】
X1およびX2が含有する炭化水素基の炭素数は5~40が好ましい。炭化水素基を含有するカルボン酸としてより好ましくは、炭素および水素を必須の原子として含み、窒素、酸素およびハロゲンからなる群より選ばれる一種以上の原子を有していてもよいカルボン酸が挙げられる。
【0036】
炭化水素基を含有するカルボン酸の具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、トリフェニルジカルボン酸、5-[2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-(トリフルオロメチル)エチル]-1,3-ベンゼンジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ジフェニルエーテルトリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物および下記に示す構造のような芳香族テトラカルボン酸や、ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸などを挙げることができるが、これらに限定されない。また、カルボン酸成分これら2種以上のカルボン酸成分を含有していても用いてもよい。
【0037】
【0038】
また、上記一般式(1)中、R1は水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を示す。炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基は直鎖でも分岐していてもよく、一部または全体が環状であってもよい。芳香族炭化水素基は水素の少なくとも一部が脂肪族炭化水素により置換されていてもよい。
【0039】
一般式(1)~(2)で表される構造のモル比は、重合する際に用いるモノマーのモル比から算出する方法や、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて、得られた樹脂、樹脂組成物、硬化膜におけるポリアミド構造やイミド前駆体構造、イミド構造、オキサゾール構造のピークを検出する方法において確認できる。
【0040】
化合物(P)は分子鎖末端がカルボン酸残基であることが好ましい。化合物(P)の分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造であることによって、化合物(P)を含有した光カチオン重合性樹脂組成物とした場合であっても、分子鎖末端がジアミン残基に由来する構造と比較して、カチオン重合が進行しやすく、所望の形状の隔壁が形成しやすくなる。結果として、蛍光体の充填量をより増加させ、輝度をより向上させることができる。このような化合物(P)は、重合の際に用いるジアミンに対して酸無水物の含有量を多くすることで得ることができる。分子鎖末端がカルボン酸残基である化合物(P)を得る別の方法として、一般に末端封止剤として用いられる化合物の中から特定の化合物、具体的には、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物を用いることによっても得る事ができる。
【0041】
また、化合物(P)の分子鎖末端を水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、チオール基、ビニル基、エチニル基、またはアリル基を有するカルボン酸または酸無水物の末端封止剤により封止することで、化合物(P)のアルカリ水溶液に対する溶解速度や得られる硬化膜の機械特性を好ましい範囲に容易に調整することができる。また、複数の末端封止剤を反応させ、複数の異なる末端基を導入してもよい。
【0042】
末端封止剤としての酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物などの酸無水物、3-カルボキシフェノール、4-カルボキシフェノール、3-カルボキシチオフェノール、4-カルボキシチオフェノール、1-ヒドロキシ-7-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-6-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-5-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-7-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-6-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-5-カルボキシナフタレン、3-カルボキシベンゼンスルホン酸、4-カルボキシベンゼンスルホン酸などのモノカルボン酸類およびこれらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、テレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,5-ジカルボキシナフタレン、1,6-ジカルボキシナフタレン、1,7-ジカルボキシナフタレン、2,6-ジカルボキシナフタレンなどのジカルボン酸類の一方のカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、モノ酸クロリド化合物とN-ヒドロキシベンゾトリアゾールやイミダゾール、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物などが好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
【0043】
これらの末端封止剤を導入した化合物(P)は、分子鎖末端がカルボン酸残基である化合物となる。そして分子鎖末端がカルボン酸残基である化合物(P)を得るために用いることのできる末端封止剤は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、末端封止剤が導入された化合物(P)を、酸性溶液に溶解し、構成単位であるアミン成分と酸無水物成分に分解し、これをガスクロマトグラフィー(GC)や、NMRにより、本発明に使用された末端封止剤を容易に検出できる。これとは別に、末端封止剤が導入された樹脂成分を直接、熱分解ガスクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトルおよび13C-NMRスペクトルで測定することによっても、容易に検出できる。
【0044】
化合物(P)の合成方法については、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールを例として次の方法により合成されるが、これに限定はされない。ポリイミド構造は、ジアミンの一部を末端封止剤である1級モノアミンに置き換えて、または、テトラカルボン酸二無水物を、末端封止剤であるジカルボン酸無水物に置き換えて、公知の方法で合成される。例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とモノアミンを反応させる方法、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジカルボン酸無水物とジアミン化合物を反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後ジアミンとモノアミンと縮合剤の存在下で反応させる方法などの方法を利用して、ポリイミド前駆体を得る。その後、公知のイミド化反応法を利用してポリイミドを合成することができる。
【0045】
ポリベンゾオキサゾール構造はビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸を縮合反応させることで合成される。例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のような脱水縮合剤と酸を反応させ、ここにビスアミノフェノール化合物を加える方法、ピリジンなどの3級アミンを加えたビスアミノフェノール化合物の溶液にジカルボン酸ジクロリドの溶液を滴下する方法などを利用してポリベンゾオキサゾール前駆体を得る。その後、公知の縮合反応法を利用してポリベンゾオキサゾールを合成することができる。 化合物(P)は、上記の方法で重合させた後、多量の水またはメタノールおよび水の混合液などに投入し、沈殿させて濾別乾燥し、単離することが好ましい。乾燥温度は40~100℃が好ましく、より好ましくは50~80℃である。この操作によって未反応のモノマーや、2量体や3量体などのオリゴマー成分が除去され、熱硬化後の膜特性を向上させることができる。
【0046】
ポリイミド、ポリアミドイミドのイミド化率は、例えば以下の方法で容易に求めることができる。まず、ポリマーの赤外吸収スペクトルを測定し、ポリイミド、ポリアミドイミドに起因するイミド構造の吸収ピーク(1780cm-1付近、1377cm-1付近)の存在を確認する。次に、そのポリマーを350℃で1時間熱処理したもののイミド化率を100%のサンプルとして赤外吸収スペクトルを測定し、熱処理前後の樹脂の1377cm-1付近のピーク強度を比較することによって、熱処理前樹脂中のイミド基の含量を算出し、イミド化率を求める。熱硬化時の閉環率の変化を抑制し、低応力化の効果が得られるため、イミド化率は50%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましい。
【0047】
(エポキシ化合物)
隔壁5はさらにエポキシ化合物由来の構造を含む、すなわち、化合物(P)を含有する感光性樹脂組成物が、エポキシ化合物を含有することが好ましい。エポキシ化合物は化合物(P)の耐熱性と機械強度を損なうことなく、加工性をより向上させることができるので、後述する所望の形状の隔壁が形成しやすくなる。これにより、蛍光体の充填量をより増加させ、輝度をより向上させることができる。エポキシ化合物由来の構造とは、具体的には、エポキシが開環することによって生じる非環状のエーテル結合、または、水酸基を意味し、エポキシ化合物の重合やフェノール性水酸基等の付加反応等で形成される。
【0048】
化合物(P)の特性を損なわないために、感光性樹脂組成物中のエポキシ化合物の含有量は質量分率で化合物(P)の含有量の2.0倍を超えないことが好ましい。感光性樹脂組成物が化合物(P)、エポキシ化合物以外の成分を含有する場合は、それらの含有量の合計が、質量分率で化合物(P)とエポキシ化合物の合計量を超えないことが好ましい。
【0049】
エポキシ化合物としては、公知のもの等が使用でき、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物が含まれる。
【0050】
芳香族エポキシ化合物としては、少なくとも1個の芳香環を有する1価又は多価のフェノール(フェノール、ビスフェノールA、フェノールノボラック及びこれらのアルキレンオキシド付加体した化合物)のグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0051】
脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個のシクロヘキセンやシクロペンテン環を有する化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られる化合物(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、等)が挙げられる。
【0052】
脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族多価アルコール又はこのアルキレンオキシド付加体のポリグリシジルエーテル(1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等)、脂肪族多塩基酸のポリグリシジルエステル(ジグリシジルテトラヒドロフタレート等)、長鎖不飽和化合物のエポキシ化物(エポキシ化大豆油及びエポキシ化ポリブタジエン等)が挙げられる。
【0053】
ポリイミドとの相溶性が向上し、微細なパターン加工性が得られ、また、ポリイミドの良好な耐熱性や機械特性を低下させない観点から、窒素原子を含有するエポキシ化合物が好ましい。さらに、樹脂組成物とした際の保存安定性が向上する点より、イソシアヌレート骨格を含有するエポキシ化合物が好ましい。
【0054】
イソシアヌレート骨格を含有するエポキシ化合物としては、例えばトリグリシジルイソシアヌレートであるTEPIC-S,TEPIC-L、TEPIC-VL、TEPIC-PASB22、TEPIC-FL(商品名、いずれも日産化学(株)製)等があげられる。
【0055】
樹脂組成物の透明性、および、ポリイミドの良好な機械特性を低下させない観点から、脂肪族エポキシ化合物が好ましい。脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、ショウフリーBATG、ショウフリーPETG(商品名、いずれも昭和電工(株)製)、デナコールEX-321L、デナコールEX-521(商品名、いずれもナガセケムテックス(株)製)等が挙げられる。
【0056】
低温での反応性の観点から、脂環式エポキシ化合物が好ましい。脂環式エポキシ化合物としては、例えば、セロキサイド2000、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド8081、エポリードGT401(商品名、いずれも(株)ダイセル製)等が挙げられる。
【0057】
これらのエポキシ化合物は単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0058】
エポキシ化合物の硬化は、カチオン重合によるものが好ましい。エポキシの硬化をカチオン重合にすることで、加工時の酸素阻害による硬化不足が生じにくく、後述する所望の形状の隔壁が形成しやすくなる。
【0059】
感光性樹脂組成物におけるエポキシ化合物の含有量は、化合物(P)を100質量部とした際、十分なカチオン硬化性を示し、パターン加工性を向上させる点から、30質量部以上であることが好ましく、より好ましくは50質量部以上である。一方、化合物(P)の特性を低下させない観点から200質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましい。
【0060】
また、隔壁中における化合物(P)を1molとした際、エポキシ化合物由来の構造の含有量が3mol以上25mol以下相当であることが好ましい。隔壁における、エポキシ化合物の化合物(P)に対する含有量を算出する方法としては、公知の方法が使用でき、例えば、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて、隔壁における化合物(P)由来の構造のピークとエポキシ化合物由来の構造のピークの積分値から算出する方法において確認できる。
【0061】
(その他の成分)
光カチオン重合性ネガ型感光性樹脂組成物に含有される光カチオン重合開始剤は、光により直接または間接的に酸を発生しカチオン重合を生じさせるものであり、公知の化合物を、特に限定なく使用することができる。具体的には、例えば芳香族ヨードニウム錯塩と芳香族スルホニウム錯塩等を挙げることができる。芳香族ヨードニウム錯塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。これらの光カチオン重合開始剤は単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0062】
光カチオン重合開始剤の含有量は、エポキシ化合物を100質量部とした場合、0.3質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。これにより、エポキシ化合物が十分な硬化性を示し、パターン加工性を向上させることができる。一方、感光性樹脂組成物の保存安定性が向上する点から、18重量部以下が好ましく、より好ましくは15重量部以下である。
【0063】
光カチオン重合性ネガ型感光性樹脂組成物には、紫外線を吸収し、吸収した光エネルギーを光酸発生剤に供与するために増感剤を使用してもよい。増感剤としては、例えば9位と10位にアルコキシ基を有するアントラセン化合物(9,10-ジアルコキシ-アントラセン誘導体)が好ましい。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のC1~C4のアルコキシ基が挙げられる。9,10-ジアルコキシ-アントラセン誘導体は、さらに置換基を有していても良い。置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基等のC1~C4のアルキル基やスルホン酸アルキルエステル基、カルボン酸アルキルエステル基等が挙げられる。スルホン酸アルキルエステル基やカルボン酸アルキルエステルにおけるアルキルとしては、例えばメチル、エチル、プロピル等のC1~C4のアルキルが挙げられる。これらの置換基の置換位置は2位が好ましい。
【0064】
光カチオン重合性ネガ型感光性樹脂組成物には、熱架橋剤を含有してもよく、アルコキシメチル基、メチロール基を有する化合物が好ましい。
【0065】
アルコキシメチル基またはメチロール基を有する例としては、例えば、DML-PC、DML-PEP、DML-OC、DML-OEP、DML-34X、DML-PTBP、DML-PCHP、DML-OCHP、DML-PFP、DML-PSBP、DML-POP、DML-MBOC、DML-MBPC、DML-MTrisPC、DML-BisOC-Z、DML-BisOCHP-Z、DML-BPC、DML-BisOC-P、DMOM-PC、DMOM-PTBP、DMOM-MBPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-HQ、TML-BP、TML-pp-BPF、TML-BPE、TML-BPA、TML-BPAF、TML-BPAP、TMOM-BP、TMOM-BPE、TMOM-BPA、TMOM-BPAF、TMOM-BPAP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP、HMOM-TPPHBA、HMOM-TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、NIKALAC(登録商標)MX-290、NIKALAC MX-280、NIKALAC MW-100LM、NIKALAC MX-750LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)が挙げられる。
【0066】
光カチオン重合性ネガ型感光性樹脂組成物には、さらにシラン化合物を含有することができる。シラン化合物を含有することにより、耐熱性樹脂被膜の密着性が向上する。シラン化合物の具体例としては、N-フェニルアミノエチルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノエチルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノブチルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノブチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどを挙げることができる。
【0067】
また、光カチオン重合性ネガ型感光性樹脂組成物には、必要に応じて、基材との塗れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類を含有してもよい。また、熱膨張係数の抑制や高誘電率化、低誘電率化のなどの目的で、二酸化ケイ素、二酸化チタンなどの無機粒子、あるいはポリイミドの粉末などを含有してもよい。
【0068】
感光性樹脂組成物は、有機溶剤を含有する溶液(ワニス)の形で用いられることが好ましく、有機溶剤としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、アセト酢酸エチルなどのアセテート類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2-ヘプタノンなどのケトン類、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノ-ル、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、その他、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0069】
また、感光性樹脂組成物のワニスは塗布の前に濾紙やフィルターを用いて濾過しても良い。濾過方法は特に限定されないが、保留粒子径0.4μm~10μmのフィルターを用いて加圧濾過により濾過する方法が好ましい。
【0070】
感光性樹脂組成物のワニスの粘度は、化合物(P)の分子量や溶液濃度によって適宜調整することができ、2000mPa・s以上であることが好ましく、5000mPa・s以上であることがより好ましい。また、粘度は、200000mPa・s以下であることが好ましく、100000mPa・s以下であることがより好ましい。例えば、スピンコート法で基材に塗布する場合には、粘度は2000~5000mPa・sであることが好ましく、ブレードコーター法またはダイコーター法で基材に塗布する場合には、10000~50000mPa・sであることが好ましい。
【0071】
(隔壁の形状)
図2は、
図1中のシンチレータパネル2の部分を抜粋した模式的な断面図である。ただし、以下の説明の理解を容易にするため、第1反射層11は省略している。隔壁5の高さL1は、50μm以上であることが好ましく、70μm以上であることがより好ましい。また、隔壁5の高さは、3000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましい。L1が3000μm以下であることにより、蛍光体14自体により発光した光の吸収が生じにくく、シンチレータパネル2は、輝度がより向上する。一方、L1が50μm以上であることにより、シンチレータパネル2は、充填可能な蛍光体14の量が適切となり、輝度がより向上する。
【0072】
隣接する隔壁5の間隔L2は、30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましい。また、隔壁5の間隔L2は、3000μm以下であることが好ましく、2000μm以下であることがより好ましい。L2が30μm以上であることにより、シンチレータパネル2は、セル内へ蛍光体13を充填しやすい。一方、L2が3000μm以下であることにより、シンチレータパネル2は、鮮鋭度がより優れた画像が得られる。
【0073】
隔壁5の底部幅L3は、2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、底部幅L3は、150μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。L3が2μm以上であることにより、シンチレータパネル2は、パターンの欠陥が生じにくい。一方、L3が150μm以下であることにより、シンチレータパネル2は、充填可能な蛍光体13の量が適切となり、輝度が低下しにくい。
【0074】
隔壁5の頂部幅L4は、2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、頂部幅L4は、80μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。L4が2μm以上であることにより、シンチレータパネル2は、隔壁5の強度が適切となり、パターンの欠陥が生じにくくなる。一方、L4が80μm以下であることにより、シンチレータパネル2は、蛍光体14が発光した光を取り出せる領域が適切となり、輝度がより向上する。
【0075】
隔壁5の底部幅L3に対する隔壁5の高さL1のアスペクト比(L1/L3)は、5.0以上であることが好ましく、10.0以上であることがより好ましく、さらに好ましくは、12.0以上である。また、アスペクト比(L1/L3)は、100.0以下であることが好ましく、50.0以下であることがより好ましい。アスペクト比(L1/L3)が5.0以上であることにより、シンチレータパネル2は、蛍光体14の充填量が適切となりやすく、X線の吸収効率が低下しにくい。また、アスペクト比(L1/L3) が100.0以下であることにより、シンチレータパネル2は、隔壁強度が適切となりやすい。
【0076】
隔壁5の間隔L2に対する隔壁5の高さL1のアスペクト比(L1/L2)は、0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましい。また、アスペクト比(L1/L2)は、20.0以下であることが好ましく、10.0以下であることがより好ましい。アスペクト比(L1/L2)が0.5以上であることにより、シンチレータパネル2は、X線の吸収効率が低下しにくい。また、アスペクト比(L1/L2)が20.0以下であることにより、シンチレータパネル2は、光の取り出し効率が低下しにくく、輝度がより向上する。ただし、
図3に示す通り、隔壁5の間隔L2が、X軸方向の長さ(L2(X))とY軸方向の長さ(L2(Y))とで異なる場合、前述の限りではない。L2(X)>L2(Y)となるようにX軸方向およびY軸方向を定めた場合、隔壁5の高さL1のアスペクト比(L1/L2(X))は、0.05以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましい。また、アスペクト比(L1/L2(X))は、10.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましい。
【0077】
隔壁5の底部幅L3と頂部幅L4の比率(L4/L3)は0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましい。0.5以上であることにより、隔壁の強度を保ちつつ、蛍光体量を増やすことが出来る。
【0078】
隔壁5の高さL1及び隣接する隔壁5同士の間隔L2は、基板に対して垂直な断面を割断するか、またはクロスセクションポリッシャー等の研磨装置により露出させ、走査型電子顕微鏡で断面を観察することにより測定することができる。ここで、隔壁5と基板との接触部における隔壁5の幅をL3とする。また、隔壁5の最頂部の幅をL4とする。
【0079】
(第1反射層)
本発明の実施の形態に係るシンチレータパネルは、隔壁5はその表面に金属を含有する反射層(第1反射層)11を有することが好ましい。第1反射層11は、隔壁5の少なくとも一部に設けられればよい。第1反射層11は、薄膜でも高い反射率を有する。そのため、薄膜である第1反射層11が設けられることにより、蛍光体13の充填量が低下しにくく、シンチレータパネル2は、輝度がより向上する。
【0080】
第1反射層11を構成する金属は特に限定されない。一例を挙げると、第1反射層11は、銀やアルミニウムなど、反射率の高い金属を主成分として含有することが好ましく、銀を主成分として含有することがより好ましい。第1反射層11は、合金であっても良い。第1反射層11を構成する金属は、特に、パラジウムと銅を含有する銀合金であることが好ましい。このような銀合金からなる第1反射層11は、大気中における変色耐性が優れる。なお、本発明の実施の形態において、「主成分として含有する」とは、所定の成分を50~100質量%となるよう含むことをいう。
【0081】
第1反射層11の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、第1反射層11の厚みは、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。また、第1反射層11の厚みは、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。第1反射層11の厚みが10nm以上であることにより、シンチレータパネル2は、充分な光の遮蔽性が得られ、鮮鋭度がより向上した画像が得られる。第1反射層11の厚みが1000nm以下であることにより、第1反射層11の表面の凹凸が大きくなりにくく、反射率が低下しにくい。
【0082】
(保護層)
本発明の実施の形態に係るシンチレータパネルは、第1反射層11の表面に、保護層12を有することが好ましい。第1反射層11は、大気中における変色耐性が乏しい合金などを使用した場合でも、保護層12が設けられていることによって、変色を低減することが出来、第1反射層11と蛍光体層6との反応による第1反射層11の反射率低下が抑制され、輝度がより向上する。保護層12は、さらに、隔壁5と第1反射層11の間に設けられていてもよい。保護層12が、隔壁5と第1反射層11の間に設けられることによって、隔壁5と第1反射層11との反応による第1反射層11の反射率低下が抑制され、輝度がより向上する。
【0083】
保護層12は、無機保護層と有機保護層のいずれもが好適に使用できる。保護層12として、無機保護層と有機保護層を積層して併用することもできる。
【0084】
(無機保護層)
無機保護層は、水蒸気の透過性が低いため保護層12として好適である。無機保護層は、スパッタ法など、公知の手法により形成できる。無機保護層の材料は特に限定されない。無機保護層の材料として、例えば、酸化ケイ素、酸化インジウムスズ、酸化ガリウム亜鉛などの酸化物、窒化ケイ素などの窒化物、フッ化マグネシウムなどのフッ化物等である。これらの中でも、無機保護層の材料は、水蒸気透過性が低く、また無機保護層形成において銀の反射率が低下しにくいことから、酸化ケイ素または窒化ケイ素を用いることが好ましい。
【0085】
無機保護層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、無機保護層の厚みは、2nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましい。また、無機保護層の厚みは、300nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。厚みが2nm以上であることにより、シンチレータパネル2は、高温・高湿環境下における輝度低下の抑制効果をより大きくすることができる。厚みが300nm以下であることにより、無機保護層による着色を抑制し、輝度をより向上させることができる。無機保護層の厚みは、後述する有機保護層の厚みと同様な方法により測定することができる。
【0086】
(有機保護層)
有機保護層は、化学的耐久性に優れる高分子化合物が好ましく、例えば、ポリシロキサンや、非晶性フッ素樹脂を主成分として含有することが好ましい。
【0087】
ポリシロキサンは、シンチレータパネルの実施の形態において一般式(3)で表されるオルガノシランを含むオルガノシランの加水分解・部分縮合物を含む。
【0088】
【0089】
上記一般式(3)中、R2は、エポキシ基および酸無水物基のうち少なくともいずれか一方を有する1価の有機基を表す。R3およびR4は、それぞれ、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアシル基または炭素数6~16のアリール基を表す。mは1~3の整数を表す。nは0~2の整数を表す。m+nは1~3である。mが2以上の場合、複数のR2は、それぞれ同じでも異なってもよい。また、nが2の場合、複数のR3は、それぞれ同じでも異なってもよい。また、m+nが2以下の場合、複数のR4は、それぞれ同じでも異なってもよい。
【0090】
非晶性フッ素樹脂は溶剤溶解性が優れため、保護層12を溶液塗布やスプレーコーティングなど、公知の手法により容易に形成され得る。ここで、「フッ素樹脂が非晶性である」とは、フッ素含有樹脂を粉末X線回折法により測定した際に、結晶構造に起因するピークが実質的に見られず、ブロードなハローのみが観察される場合をいう。
【0091】
非晶性フッ素樹脂は、一般式(4)で表される構造を繰り返し単位として有する、あるいは、一般式(4)の構造を含む互いに異なる2種の構造を有する共重合体であることが好ましい。
【0092】
【0093】
非晶性フッ素樹脂が共重合体である場合、交互共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体のいずれでもよい。
【0094】
上記一般式(4)において、Xは酸素を表し、jおよびkはそれぞれ独立に0または1を表し、pは1以上の整数を表す。
【0095】
上記一般式(4)において、R5~R8は水素、ハロゲン、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、水酸基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、シアノ基、アルデヒド基、置換もしくは無置換のエステル基、アシル基、カルボキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、または、置換もしくは無置換のエポキシ基を表す。R5~R6の少なくとも1つは、フッ素であることが好ましい。また、R7~R8の少なくとも1つは、フッ素であることが好ましい。
【0096】
上記一般式(4)において、jおよびkは酸素の数を表す。ただし、jまたはkが0の場合、XjまたはXkは単結合である。jとkの少なくともいずれかが1であると、ガラス転移温度が適切となるため好ましい。
【0097】
上記一般式(4)において、pは繰り返し数を表し、1~4であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。また、tが2以上の場合、複数のR7およびR8は互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0098】
上記一般式(4)において、アルキル基の炭素数は1~8が好ましい。アルケニル基の炭素数は1~12が好ましい。アルコキシ基の炭素数は1~10が好ましい。アリール基の炭素数は5~15が好ましい。
【0099】
有機保護層の厚みは、0.05μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましい。また、有機保護層の厚みは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。有機保護層の厚みが0.05μm以上であることにより、シンチレータパネル2は、輝度低下の抑制効果をより大きくすることができる。また、有機保護層の厚みが10μm以下であることにより、シンチレータパネル2は、セル内の体積を大きくし、蛍光体14を充分量充填することにより、輝度をより向上させることができる。本発明の実施の形態において、有機保護層の厚みは、走査型電子顕微鏡観察により測定できる。なお、後述する有機保護層形成工程で形成される有機保護層は、隔壁頂部付近の側面では厚みが薄く、底部付近の側面では厚く形成される傾向がある。そのため、このように厚みに隔たりがある場合、上記有機保護層の厚みは、隔壁5の高さ方向の中央部側面における厚みを指す。
【0100】
(第2反射層)
本発明の実施の形態に係るシンチレータパネルは、保護層12がその表面に、第二の反射層(第2反射層)13を有することが好ましい。第2反射層13は、保護層12の少なくとも一部に設けられればよい。第2反射層13が設けられることにより、蛍光体層6で発光した光がより効率的に表面に出やすくなり、シンチレータパネル2は、輝度がより向上する。
【0101】
第2反射層13は金属酸化物を含むことが好ましく、その金属酸化物は特に限定されない。一例を挙げると、第2反射層13は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウムなど、屈折率の高い金属酸化物を主成分として含有することが好ましく、酸化チタンを主成分として含有することがより好ましい。なお、本発明の実施の形態において、「主成分として含有する」とは、所定の成分を50~100質量%となるよう含むことをいう。
【0102】
金属酸化物の屈折率は、1.6以上であることが好ましく、1.8以上であることがより好ましい。屈折率が1.6以上であることによって、金属酸化物と空気との屈折率差が大きくなり、第2反射層13での反射率が向上しやすい。
【0103】
金属酸化物の形状は、粒子状であることが好ましい。粒子状であることによって、蛍光体層中で発光した光が反射層において反射する際に、反射率のばらつきが生じづらく、発光した光がより効率的に表面に出やすくなり、シンチレータパネル2は、輝度がより向上する。
【0104】
金属酸化物が粒子状である場合、その平均粒子径は、100~1000nmであることが好ましく、150~700nmであることがより好ましい。金属酸化物の平均粒子径が100nm以上であると、蛍光体が発光する光の波長に対して、反射率がより向上するため、輝度が向上しやすい。一方、1000nm以下であると、第2反射層中での粒子の密度が大きくなり、薄膜としても、反射率がより向上するため、輝度が向上しやすい。
【0105】
ここで、本発明における金属酸化物の平均粒子径とは、粒度の累積分布に対して50%となる粒子径を言い、粒度分布測定装置(例えば、MT3300;日機装(株)製)を用いて測定することができる。より具体的には、水を満たした試料室に金属酸化物を投入し、300秒間超音波処理を行った後に粒度分布を測定し、累積分布に対して50%となる粒子径を平均粒子径とする。
【0106】
第2反射層13は、金属酸化物以外に高分子化合物が含まれていてもよい。第2反射層13が高分子化合物を含んでいることにより、後述する蛍光体層の充填工程において、保護層12から第2反射層13の脱離、および第2反射層13中の金属酸化物粒子の脱離が抑制されやすくなる。
【0107】
(蛍光体層)
本発明の実施の形態に係るシンチレータパネルは、隔壁によって区画されたセル内に蛍光体を有する。
【0108】
蛍光体層6は、入射されたX線等の放射線のエネルギーを吸収して、波長300nm~800nmの範囲の電磁波、すなわち、可視光を中心に紫外光から赤外光にわたる範囲の光を発光する。蛍光体層6で発光した光は、光電変換層8で光電変換が行われ、出力層9を通じて電気信号として出力される。蛍光体層6は、蛍光体14およびバインダー樹脂15を有することが好ましい。
【0109】
(蛍光体)
蛍光体14は特に限定されない。たとえば、蛍光体14は、硫化物系蛍光体、ゲルマン酸塩系蛍光体、ハロゲン化物系蛍光体、硫酸バリウム系蛍光体、リン酸ハフニウム系蛍光体、タンタル酸塩系蛍光体、タングステン酸塩系蛍光体、希土類ケイ酸塩系蛍光体、希土類酸硫化物系蛍光体、希土類リン酸塩系蛍光体、希土類オキシハロゲン化物系蛍光体、アルカリ土類金属リン酸塩系蛍光体、アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系蛍光体が挙げられる。希土類ケイ酸塩系蛍光体としては、セリウム賦活希土類ケイ酸塩系蛍光体が挙げられ、希土類酸流化物系蛍光体としては、プラセオジム賦活希土類酸硫化物系蛍光体、テルビウム賦活希土類酸硫化物系蛍光体、ユウロピウム賦活希土類酸硫化物系蛍光体が挙げられ、希土類リン酸塩系蛍光体としては、テルビウム賦活希土類リン酸塩系蛍光体が挙げられ、希土類オキシハロゲン蛍光体としては、テルビウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体、ツリウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体が挙げられ、アルカリ土類金属リン酸塩系蛍光体としては、ユウロピウム賦活アルカリ土類金属リン酸塩系蛍光体が挙げられ、アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系蛍光体としては、ユウロピウム賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系蛍光体が挙げられる。蛍光体14は、併用されてもよい。これらの中でも、発光効率が高い点から、蛍光体14は、ハロゲン化物系蛍光体、プラセオジム賦活希土類酸硫化物系蛍光体、テルビウム賦活希土類酸硫化物系蛍光体およびユウロピウム賦活希土類酸硫化物系蛍光体から選ばれた蛍光体が好ましく、プラセオジム賦活希土類酸硫化物系蛍光体およびテルビウム賦活希土類酸硫化物系蛍光体から選ばれた蛍光体がより好ましい。
【0110】
蛍光体14の平均粒子径は、0.5~50μmが好ましく、3.0~40μmがより好ましく、4.0~30μmがさらに好ましい。蛍光体の平均粒子径が0.5μm以上であると、放射線から可視光への変換効率がより向上し、輝度をより向上させることができる。また、蛍光体の凝集を抑制することができる。一方、蛍光体の平均粒子径が50μm以下であると、蛍光体層表面の平滑性に優れ、画像への輝点の発生を抑制することができる。
【0111】
ここで、本発明における蛍光体14の平均粒子径とは、粒度の累積分布に対して50%となる粒子径を言い、粒度分布測定装置(例えば、MT3300;日機装(株)製)を用いて測定することができる。より具体的には、水を満たした試料室に蛍光体を投入し、300秒間超音波処理を行った後に粒度分布を測定し、累積分布に対して50%となる粒子径を平均粒子径とする。
【0112】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂15は特に限定されない。バインダー樹脂15は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等である。より具体的には、バインダー樹脂15は、アクリル樹脂、アセタール樹脂、セルロース誘導体、ポリシロキサン樹脂、エポキシ化合物、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセタール、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリフェニルベンゼン等である。これらの中でも、バインダー樹脂15は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース誘導体、エポキシ樹脂、ポリビニルアセタールおよびポリエステル樹脂のうち少なくともいずれか1種を含有することが好ましく、これら1~3種を主成分として含有することがより好ましい。これにより、シンチレータパネル2は、セル内での光の減衰を抑制でき、発光を充分に取り出しやすい。なお、アクリル樹脂、セルロース誘導体、エポキシ樹脂、ポリビニルアセタールおよびポリエステル樹脂のうち少なくともいずれか1種を主成分とするとは、アクリル樹脂、セルロース誘導体、エポキシ樹脂、ポリビニルアセタールおよびポリエステル樹脂の合計量が、樹脂を構成する材料の50~100質量%であることをいう。
【0113】
バインダー樹脂15は、保護層12と接触していることが好ましい。この場合、バインダー樹脂15は、保護層12の少なくとも一部に接触していればよい。これにより、シンチレータパネル2は、蛍光体14がセル内から脱落しにくい。なお、バインダー樹脂15は、
図1に示されるように、セル内にほぼ空隙なく充填されていてもよく、空隙を有するよう充填されていてもよい。
【0114】
以上、本発明の実施の形態に係るシンチレータパネル2によれば、高輝度で、高鮮鋭度の画像が得られる。
【0115】
(シンチレータパネルの製造方法)
本発明の実施の形態に係るシンチレータパネルの製造方法は、基板上に隔壁を形成し、セルを区画する隔壁形成工程と、前記隔壁の表面に金属反射層を形成する反射層形成工程と、前記隔壁で区画されたセル内に蛍光体を充填する充填工程とを含み、前記隔壁はポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる一以上の化合物(P)並びにエポキシ化合物由来の構造を含有する。以下、それぞれの工程について説明する。なお、以下の説明において、上記したシンチレータパネルの実施の形態において説明した事項と共通する事項は、説明を適宜省略する。
【0116】
(隔壁形成工程)
隔壁形成工程は、基板上に隔壁を形成し、セルを区画する工程である。基板上に隔壁を形成する方法は特に限定されない。隔壁は、前述の化合物(P)及びエポキシ化合物由来の構造を含有する。隔壁を形成する方法は、各種公知の方法が利用でき、形状の制御が容易である点から、フォトリソグラフィ法であることが好ましい。
【0117】
化合物(P)を含有する隔壁を形成する方法としては、例えば、基板の表面に、化合物(P)を含有する感光性樹脂組成物を塗布して塗布膜を得る、塗布工程と、塗布膜を露光及び現像して、隔壁パターンを得る、パターン形成工程とにより形成できる。
【0118】
塗布工程は、基板の表面に、前述の感光性樹脂組成物を全面または部分的に塗布して塗布膜を得る工程である。感光性樹脂組成物を塗布する方法は、例えば、スクリーン印刷法、バーコーター、ロールコーター、ダイコーターまたはブレードコーターが挙げられる。得られる塗布膜の厚さは、塗布回数、スクリーンのメッシュサイズまたは感光性樹脂組成物の粘度等により調整することができる。
【0119】
次に、上記方法によって形成された感光性樹脂組成物塗布膜上に、所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いるのが好ましい。
【0120】
パターンを形成するには、露光後、現像液にて露光部を除去する。現像液としては、水酸化テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを含有してもよい。
【0121】
現像は、上記の現像液を被膜面にスプレーする、塗布膜面に現像液を液盛りする、現像液中に浸漬する、あるいは浸漬して超音波をかけるなどの方法によって行うことができる。現像時間や現像ステップ現像液の温度などの現像条件は、露光部が除去されパターン形成が可能な条件であればよい。
【0122】
現像後は水にてリンス処理を行うことが好ましい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしても良い。
【0123】
また、必要に応じて現像前にベーク処理を行ってもよい。これにより、現像後のパターンの解像度が向上し、現像条件の許容幅が増大する場合がある。このベーク処理温度は50~180℃の範囲が好ましく、特に60~120℃の範囲がより好ましい。時間は5秒~数時間が好ましい。
【0124】
パターン形成後、感光性樹脂組成物の塗布膜中には未反応のカチオン重合性化合物やカチオン重合開始剤が残存している。このため、後述の熱架橋反応の際にこれらが熱分解しガスが発生することがある。これを避けるため、パターン形成後の樹脂組成物被膜の全面に上述の露光光を照射し、カチオン重合開始剤から酸を発生させておくことが好ましい。こうすることによって、熱架橋反応の際に、未反応のカチオン重合性化合物の反応が進行し、熱分解由来のガスの発生を抑制することができる。
【0125】
現像後、120℃~300℃の温度を加えて熱架橋反応を進行させる。架橋により、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。この加熱処理の方法は、温度を選び、段階的に昇温する方法や、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分間~5時間実施する方法を選択できる。
【0126】
本発明の実施の形態に係るシンチレータパネルの製造方法では、隔壁形成時の基材がシンチレータパネルの基板として用いられてもよく、支持体上に隔壁を形成し、支持体から隔壁を剥離した後、剥離した隔壁を基板上に載置して用いても良い。基材から隔壁を剥離する方法は、基材と隔壁の間に剥離補助層を設ける手法など、公知の手法を用いることができる。
【0127】
本発明の実施の形態に係るシンチレータパネルの製造方法では、隔壁形成時に基板が支持体に固定されていてもよい。基板が支持体に固定されていることで、基板の平滑性を保持することが出来るため、隔壁の形成工程において、隔壁の高さのばらつきを低減することが可能になる。
【0128】
基板は、後述するシンチレータパネルの製造工程の後に、支持体から剥離可能であることが好ましい。基板が支持体から剥離可能であることで、シンチレータパネルへの放射線の入射に対し、支持体での放射線の吸収を抑制することが可能となる。その結果、シンチレータパネルに入射する放射線量を十分にすることが可能になり、輝度がより向上する。
【0129】
支持体の材料は、基板よりも機械強度が高く、平滑性を有するものであれば特に限定されないが、ガラスであることが好ましい。
【0130】
支持体の厚みは、必要に応じて適宜調整できるが、機械強度の観点から0.3mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。
【0131】
基板を支持体に固定する方法は、公知の方法であれば特に限定はされない。高分子材料からなる基板をガラスの支持体に固定する方法について、一例を挙げると、例えば、基板の周囲に接着テープを貼り付ける方法、いずれかの材料の表面に液状の樹脂を塗布して、他方を接触させて接着する方法、接着フィルムをいずれかの材料に貼り付けて他方を圧着する方法、いずれかの材料に表面処理を施して分子間相互作用により固定する方法等が挙げられる。中でも、接着フィルムをいずれかの材料に貼り付けて他方を圧着する方法であることが好ましい。
【0132】
また、ガラス基板をガラスの支持体に固定する方法について、一例を挙げると、例えば、いずれかの材料に表面処理を施して分子間相互作用により固定する方法、いずれかの材料に低融点ガラス含有層を形成して焼結により他方と固定する方法等が挙げられる。中でも、いずれかの材料に低融点ガラス含有層を形成して焼結により他方と固定する方法であることが好ましい。
【0133】
(反射層形成工程)
本発明の実施の形態に係るシンチレータパネルの製造方法は、隔壁の表面に金属反射層(第1反射層)を形成する反射層形成工程を有する。第1反射層は、隔壁表面の少なくとも一部に形成されればよい。
【0134】
第1反射層の形成方法は特に限定されない。一例を挙げると、第1反射層は、真空蒸着法、スパッタ法若しくはCVD法等の真空製膜法、メッキ法、ペースト塗布法またはスプレーによる噴射法によって形成され得る。これらの中でも、スパッタ法により形成された第1反射層は、他の手法で形成された第1反射層に比べて反射率の均一性や耐食性が高いことから好ましい。
【0135】
(無機保護層形成工程)
なお、本発明の実施の形態に係るシンチレータパネルの製造方法は、反射層表面に無機保護層を形成する、無機保護層形成工程を有してもよい。無機保護層の形成方法は特に限定されない。一例を挙げると、無機保護層は、真空蒸着法、スパッタ法若しくはCVD法等の真空製膜法、ペースト塗布法またはスプレーによる噴射法によって形成され得る。これらの中でも、スパッタ法により形成された無機保護層は、他の手法で形成された無機保護層に比べて均一性や耐食性が高いことから好ましい。
【0136】
(有機保護層形成工程)
本発明の実施の形態に係るシンチレータパネルの製造方法は、反射層表面に有機保護層を形成する、有機保護層形成工程を有してもよい。有機保護層の形成方法は特に限定されない。一例を挙げると、有機保護層は、ポリシロキサンや、非晶性フッ素含有樹脂の溶液を隔壁基板上に真空下で塗布した後、乾燥して溶媒を除去することによって形成され得る。
【0137】
ポリシロキサンを用いる場合、乾燥後の基板は、乾燥温度よりも高温で硬化されることが好ましい。硬化することにより、基板は、ポリシロキサンの縮合が進み耐熱性や耐薬品性が向上し、シンチレータパネルの初期輝度が向上しやすくなる。
【0138】
(第2反射層形成工程)
本発明の実施の形態に係るシンチレータパネルの製造方法は、無機保護層または有機保護層表面に第2反射層を形成する、第2反射層形成工程を有してもよい。第2反射層の形成方法は、特に限定されてない。一例として、プロセスが簡便であり、大面積への均質な第2反射層形成が可能であることから、金属酸化物粉末および樹脂を溶媒に混合した第2反射層ペーストを隔壁基板上に真空下で塗布した後、乾燥して溶媒を除去する方法が挙げられる。
【0139】
(充填工程)
本発明の実施の形態に係るシンチレータパネルの製造方法は、隔壁で区画されたセル内に蛍光体を充填する、充填工程を有する。蛍光体の充填方法は特に限定されない。一例を挙げると、プロセスが簡便であり、大面積への均質な蛍光体充填が可能であることから、充填方法は、蛍光体粉末およびバインダー樹脂を溶媒に混合した蛍光体ペーストを隔壁基板上に真空下で塗布した後、乾燥して溶媒を除去する方法が好ましい。
【0140】
以上、本発明の実施の形態に係るシンチレータパネルの製造方法によれば、得られるシンチレータは、高輝度で、高鮮鋭度の画像が得られる。
【実施例】
【0141】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。各実施例および比較例で用いた化合物は以下の方法により合成した。
【0142】
(隔壁材料)
(合成例1)
(ポリイミドAの原料)
アミン化合物:2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下BAHF、東京化成工業(株)製)
酸無水物:リカシッド(商標登録) TDA-100(新日本理化(株)製)
溶剤:γ―ブチロラクトン(以下GBL、富士フイルム和光純薬(株)製)。
【0143】
(ポリイミドAの合成)
乾燥窒素気流下、BAHF29.30g(0.08mol)をGBL80gに添加し、120℃で攪拌溶解した。次に、TDA-10030.03g(0.1mol)をGBL20gとともに加えて、120℃で1時間攪拌し、次いで200℃で4時間攪拌して反応溶液を得た。次に、反応溶液を水3Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で5時間乾燥し、ポリイミドAを得た。
【0144】
(合成例2)
(ポリアミドAの原料)
アミン化合物:BAHF(東京化成工業(株)製)
酸クロライド:4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド(東京化成工業(株)製)
溶剤:N-メチル-2-ピロリドン(以下NMP、富士フイルム和光純薬(株)製)。
【0145】
(ポリアミドAの合成)
乾燥窒素気流下、BAHF29.3g(0.08mol)をNMP100gに添加し、室温で攪拌溶解した。その後、反応溶液の温度を-10~0℃に保ちながら、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド29.5g(0.1mol)を少量ずつ添加し、添加終了後室温まで昇温させ、3時間攪拌を続けた。次に、反応溶液を水3Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で5時間乾燥し、ポリアミドAを得た。
【0146】
(合成例3)
(ポリアミドイミドAの原料)
アミン化合物:BAHF(東京化成工業(株)製)
酸無水物:リカシッド(商標登録) TDA-100(新日本理化(株)製)
酸クロライド化合物:3-ニトロベンゾイルクロリド(東京化成工業(株)製)
反応性化合物:プロピレンオキシド(富士フイルム和光純薬(株)製)
溶剤A:アセトン(東京化成工業(株)製)
溶剤B:メチルセロソルブ(東京化成工業(株)製)
溶剤C:GBL(富士フイルム和光純薬(株)製)。
【0147】
(ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(a)の合成)
BAHF18.3g(0.05mol)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3mol)に溶解させ、-15℃に冷却した。ここに、3-ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11mol)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0148】
得られた白色固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセロソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム―炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、ろ過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(a)を得た。
【0149】
(ポリアミドイミドAの合成)
乾燥窒素気流下、ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(a)31.4g(0.08mol)をGBL80gに添加し、120℃で攪拌した。次に、TDA-10030.0g(0.1mol)をGBL20gとともに加えて、120℃で1時間攪拌し、次いで200℃で4時間攪拌して反応溶液を得た。次に、反応溶液を水3Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で5時間乾燥し、ポリアミドイミドAを得た。
【0150】
(合成例4)
(ポリベンゾオキサゾール前駆体Aの原料)
原料A:ジフェニルエーテル-4,4'-ジカルボン酸(東京化成工業(株)製)
原料B:1-ヒドロキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール(東京化成工業(株)製)
アミン化合物:BAHF(東京化成工業(株)製)
酸無水物:5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(東京化成工業(株)製)
溶剤A:N-メチル-2-ピロリドン(以下NMP、富士フイルム和光純薬(株)製)
溶媒B:メタノール(東京化成工業(株)製)。
【0151】
(ポリベンゾオキサゾール前駆体Aの合成)
乾燥窒素気流下、ジフェニルエーテル-4,4'-ジカルボン酸41.3g(0.16mol)、と1-ヒドロキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール43.2g(0.32mol)とを反応させて得られたジカルボン酸誘導体の混合物0.16モルとBAHF73.3g(0.20mol)をNMP570gに溶解させ、その後75℃で12時間反応させた。次に、NMP70gに溶解させた5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物13.1g(0.08mol)を加え、更に12時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/メタノール=3/1(容積比)の溶液に投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリベンゾオキサゾール前駆体Aを得た。
【0152】
(合成例5)
(ポリイミドBの原料)
アミン化合物:BAHF(東京化成工業(株)製)
酸無水物:リカシッド(商標登録) TDA-100(新日本理化(株)製)
溶剤:GBL(富士フイルム和光純薬(株)製)。
【0153】
(ポリイミドBの合成)
乾燥窒素気流下、BAHF36.63g(0.1mol)をGBL80gに添加し、120℃で攪拌溶解した。次に、TDA-100 24.02g(0.08mol)をGBL20gとともに加えて、120℃で1時間攪拌し、次いで200℃で4時間攪拌して反応溶液を得た。次に、反応溶液を水3Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で5時間乾燥し、ポリイミドBを得た。
【0154】
(感光性ポリイミドワニスの原料)
ポリイミドA:分子鎖末端がカルボン酸残基のポリイミド
ポリアミドA:分子鎖末端がカルボン酸残基のポリアミド
ポリアミドイミドA:分子鎖末端がカルボン酸残基のポリアミドイミド
ポリベンゾオキサゾール前駆体A:分子鎖末端がカルボン酸残基のポリベンゾオキサゾール前駆体
ポリイミドB:分子鎖末端がアミン残基のポリイミド
フェノール樹脂A:“マルカリンカー”(商標登録)M(丸善石油化学(株)製)
エポキシ樹脂A:“jER”(商標登録)630(三菱ケミカル(株)製)
エポキシ化合物A:“TEPIC”(商標登録)-VL(日産化学(株)製)
エポキシ化合物B:“セロキサイド”(商標登録)2081((株)ダイセル製)
エポキシ化合物C:“ショウフリー”(商標登録)PETG(昭和電工(株)製)
アクリル化合物A:BP-6EM(共栄社化学(株)製)
アクリル化合物B:“KAYARAD”(登録商標) DPHA(日本化薬(株)製)
光酸発生剤A:“CPI”(商標登録)-310B(サンアプロ(株)製)
光酸発生剤B:“CPI”(商標登録)-410S(サンアプロ(株)製)
光ラジカル重合開始剤A:OXE02(チバスペシャリティケミカルズ社製)
シランカップリング剤:KBM-403(信越化学(株)製)。
【0155】
(算術平均傾斜角の測定)
反射層形成後の隔壁基板を割断し、隔壁側面の反射層が露出した断面について、レーザーマイクロスコープVK-X200(キーエンス(株)製)を用い、倍率50倍の対物レンズで隔壁側面を5箇所撮影し、付属の解析ソフトで隔壁側面中央20μmの長さ範囲を線粗さ分析し、5点の平均値を求めて算術平均傾斜角とした。ここで算術平均傾斜角とは、表面形状を測定した曲線の各微小部分がなす傾き(傾斜角)を算術平均したものである。算術平均傾斜角の値が小さいほど、表面形状が平滑である。
【0156】
(反射率の評価)
蛍光体層充填前の各シンチレータパネル表面に、分光測色計CM-2600D(コニカミノルタ(株)製)を設置し、400~700nmにおける反射率をSCI方式により測定した。得られた反射率について、550nmにおける値を第1反射層の反射率の値とした。また、比較例1の反射率を100としたときの相対値を算出し、第1反射層の反射率とした。実施例10においては、得られた反射率を、第2反射層の反射率の値とし、比較例1の反射率を100としたときの相対値を算出し、第2反射層の反射率とした。
【0157】
(輝度の評価)
蛍光体層充填後の各シンチレータパネルを、X線検出器PaxScan 2520V(Varex社製)のセンサ表面中央に、シンチレータパネルのセルがセンサのピクセルと1対1対応するようにアライメントして配置し、基板端部を粘着テープで固定して、放射線検出器を作製した。この検出器に、X線放射装置L9181-02(浜松ホトニクス(株)製)からのX線を、管電圧50kV、X線管と検出器の距離30cmの条件でX線を照射して画像を取得した。得られた画像中の、シンチレータパネルの発光位置中央における256×256ピクセルのデジタル値の平均値を輝度値とし、輝度を測定した。輝度は任意単位で出力されるため、比較例1の値を100としたときの相対値を算出し、輝度とした。
【0158】
(X線吸収量の評価)
蛍光体層充填後の各シンチレータパネルを、EMF123型X線スペクトロメータ(EMFジャパン(株)製)の検出部上に配置した。このシンチレータパネルに、X線放射装置L9181-02(浜松ホトニクス(株)製)からのX線を、管電圧50kV、X線管と検出器の距離30cmの条件でX線を照射した際の、光子数スペクトルを取得した。得られたスペクトルの光子数の合計をX線透過量とし、シンチレータパネルが無い条件でX線を照射した場合の光子数の合計からシンチレータパネルのX線吸収量を算出した。実施例では比較例1の値を100としたときの相対値を算出し、X線吸収量とした。
【0159】
(機械強度の測定)
蛍光体層充填後の各シンチレータパネルを、光学顕微鏡OPTIPHOT300((株)ニコン製)のステージ上に蛍光体層が対物レンズ側になるように設置した。このシンチレータパネルに対して、シンチレータパネル中央の500ピクセル×500ピクセルにおける隔壁頂部の状態を観察した。観察した隔壁頂部の状態でヨレ等の変形、破断、欠損が生じている箇所の数を算出した。隔壁頂部の状態でヨレ等の変形、破断、欠損があるものの数が10箇所以下をA、11~20箇所をB、21箇所以上をCとした。
【0160】
(実施例1)
(ワニスの調製)
合成例1で得られたポリイミドAを10g(2.0mmol)、エポキシ化合物としてエポキシ化合物A(“TEPIC”-VL)10g(26.2mmol)、光酸発生剤として光酸発生剤A(“CPI”-310B)0.6g、シランカップリング剤としてKBM-403 0.8gをGBLに溶解した。溶媒の添加量は、溶媒以外の添加物を固形分とし、固形分濃度が60重量%となるように調製した。その後、保留粒子径1μmのフィルターを用いて加圧ろ過し、感光性ポリイミドワニスを得た。
【0161】
(隔壁基板の作製)
基板として、125mm×125mm×0.05mmのPIフィルムを用いた。基板の表面に、感光性ポリイミドワニスを、乾燥後の厚さが100μmになるようにダイコーターで塗布して乾燥し、感光性ポリイミドワニスの塗布膜を得た。
【0162】
次に、所望のパターンに対応する開口部を有するフォトマスク(ピッチ127μm、線幅10μmの、格子状開口部を有するクロムマスク)を介して、感光性ポリイミドワニスの塗布膜を、超高圧水銀灯を用いて2000mJ/cm2の露光量で露光した。露光後の塗布膜は、2質量%の水酸化カリウム水溶液中で現像し、未露光部分を除去して、格子状のパターンを得た。得られた格子状のパターンを、空気中200℃で60分間熱架橋硬化して、格子状の隔壁を形成した。割断により隔壁断面を露出させ、走査型電子顕微鏡S2400((株)日立製作所製)で撮像して隔壁の高さ、底部幅、頂部幅、間隔を測定した。
【0163】
(第1反射層及び無機保護層の形成)
市販のスパッタ装置、およびスパッタターゲットを用いた。スパッタ時は、隔壁基板の近傍にガラス平板を配置し、ガラス平板上における金属厚みが300nmとなる条件でスパッタを実施した。スパッタターゲットには、パラジウムおよび銅を含有する銀合金であるAPC((株)フルヤ金属製)を用いた。第1反射層を形成後、同一の真空バッチ中で、保護層としてSiNをガラス基板上における厚みが100nmとなるように形成した。
【0164】
(有機保護層の形成)
フッ素含有樹脂溶液
非晶性フッ素含有樹脂として“CYTOP”(登録商標)CTL-809Mの1質量部に対し、溶媒としてフッ素系溶剤CT-SOLV180(AGC(株)製)を1質量部混合して樹脂溶液を作製した。
【0165】
この樹脂溶液を第1反射層と無機保護層を形成した隔壁基板に真空印刷した後、90℃で1h乾燥し、さらに190℃で1hキュアして有機保護層を形成した。トリプルイオンミリング装置EMTIC3X(LEICA社製)を用いて隔壁断面を露出させ、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)Merlin(Zeiss社製)で撮像して測定した、隔壁基板における隔壁の高さ方向中央部側面の有機保護層の厚みは1μmであった。
【0166】
(蛍光体)
市販のGOS:Tb(Tbをドープした酸硫化ガドリニウム)蛍光体粉末をそのまま用いた。粒度分布測定装置MT3300(日機装(株)製)で測定した平均粒子径D50は11μmであった。
【0167】
(蛍光体層のバインダー樹脂)
蛍光体層のバインダー樹脂の作製に用いた原料は次の通りである。
バインダー樹脂:エトセル(登録商標)7cp(ダウケミカル(株)製)
溶媒:ベンジルアルコール(富士フイルム和光純薬(株)製)。
【0168】
(蛍光体層の形成)
蛍光体粉末10質量部を、濃度10質量%のバインダー樹脂溶液5質量部と混合して、蛍光体ペーストを作製した。この蛍光体ペーストを、反射層、無機保護層、有機保護層を形成した隔壁基板に真空印刷し、蛍光体の体積分率が65%になるように充填して150℃で15分乾燥し、蛍光体層を形成した。
【0169】
(実施例2)
実施例1において、ポリイミドAを用いず、合成例2で得られたポリアミドAを用いた以外は、実施例1と同様にワニスを調製した。隔壁基板を作製後、反射率と輝度、X線吸収量を測定した。
【0170】
(実施例3)
実施例1において、ポリイミドAを用いず、合成例3で得られたポリアミドイミドAを用いた以外は、実施例1と同様にワニスを調製した。隔壁基板を作製後、反射率と輝度、X線吸収量を測定した。
【0171】
(実施例4)
実施例1において、ポリイミドAを用いず、合成例4で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体Aを用いた以外は、実施例1と同様にワニスを調製した。隔壁基板を作製後、反射率と輝度、X線吸収量を測定した。
【0172】
(実施例5)
実施例1において、エポキシ化合物Aを用いず、エポキシ化合物Bを用いた以外は、実施例1と同様にワニスを調製した。隔壁基板を作製後、反射率と輝度、X線吸収量を測定した。
【0173】
(実施例6)
実施例1において、エポキシ化合物Aを用いず、エポキシ化合物Cを用いた以外は、実施例1と同様にワニスを調製した。隔壁基板を作製後、反射率と輝度、X線吸収量を測定した。
【0174】
(実施例7)
実施例1において、光酸発生剤Aを用いず、光酸発生剤Bを用いた以外は、実施例1と同様にワニスを調製した。隔壁基板を作製後、反射率と輝度、X線吸収量を測定した。
【0175】
(実施例8)
実施例1において、ポリイミドAを用いず、合成例5で得られたポリイミドBを用い、エポキシ化合物A(“TEPIC”-VL) 10gをアクリル化合物A(BP-6EM)5.0gおよびアクリル化合物B(“KAYARAD” DPHA)0.6gに変更し、光酸発生剤A(“CPI”-310B)0.6gを光ラジカル重合開始剤A(OXE02) 1.4gに変更した以外は、実施例1と同様にワニスを調整した。隔壁基板を作製後、反射率と輝度、X線吸収量を測定した。
【0176】
(実施例9)
実施例1において、ポリイミドAを用いず、合成例5で得られたポリイミドBを用いた以外は、実施例1と同様にワニスを調製した。隔壁基板を作製後、反射率と輝度、X線吸収量を測定した。
【0177】
(実施例10)
実施例1において、後述する方法で第2反射層を形成した以外は、実施例1と同様に隔壁基板を作製した。隔壁基板を作製後、反射率と輝度、X線吸収量を測定した。
【0178】
(第2反射層ペーストの原料)
第2反射層ペーストの作製に用いた原料は次の通りである。
金属酸化物:酸化チタン(平均粒子径0.25μm)
高分子化合物:エトセル(登録商標)100cp(ダウケミカル(株)製)
溶媒:テルピネオール。
【0179】
(第2反射層の形成)
バインダー樹脂として、“エトセル”(登録商標)100cpの1質量部に対し、90質量部の溶媒(テルピネオール)を混合し、80℃で加熱溶解し、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液に、9質量部の酸化チタンを添加して混練することで、第2反射層ペーストを得た。
【0180】
この第2反射層ペーストを、実施例1において第1反射層、無機保護層および有機保護層を形成した隔壁基板に真空印刷した後、90℃で1h乾燥して第2反射層を形成した。トリプルイオンミリング装置EMTIC3X(LEICA社製)を用いて隔壁断面を露出させ、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)Merlin(Zeiss社製)で撮像して測定した、隔壁基板における隔壁の高さ方向中央部側面の第2反射護層の厚みは5μmであった。
【0181】
(実施例11)
フォトマスクを、ピッチ127μm、線幅7μm、の格子状開口部を有するクロムマスクに変更した以外は、実施例1と同様に隔壁基板を作製した。隔壁基板を作製後、反射率と輝度、X線吸収量を測定した。
【0182】
(比較例1)
(隔壁基板の形成)
(感光性アクリル樹脂の調製)
以下の原料を用いて感光性アクリル樹脂を調製した。
【0183】
感光性モノマーM-1:トリメチロールプロパントリアクリレート
感光性モノマーM-2:テトラプロピレングリコールジメタクリレート
感光性ポリマー:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=40/40/30の質量比からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量43000;酸価100)
光ラジカル重合開始剤B:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1(BASF社製)
重合禁止剤:1,6-ヘキサンジオール-ビス[(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート])
紫外線吸収剤溶液:スダンIV(東京応化工業(株)製)のγ-ブチロラクトン0.3質量%溶液
粘度調整剤:フローノンEC121(共栄社化学(株)製)
溶媒:γ-ブチロラクトン(富士フイルム和光純薬(株)製)。
【0184】
4質量部の感光性モノマーM-1、6質量部の感光性モノマーM-2、24質量部の感光性ポリマー、6質量部の光ラジカル重合開始剤B、0.2質量部の重合禁止剤および12.8質量部の紫外線吸収剤溶液を、38質量部の溶媒に、温度80℃で加熱溶解し、感光性アクリル樹脂溶液を得た。
【0185】
基板として、125mm×125mm×0.05mmのPIフィルムを用いた。基板の表面に、感光性アクリル樹脂溶液を、乾燥後の厚さが100μmになるようにダイコーターで塗布して乾燥し、感光性アクリル樹脂溶液の塗布膜を得た。次に、所望のパターンに対応する開口部を有するフォトマスク(ピッチ127μm、線幅10μmの、格子状開口部を有するクロムマスク)を介して、感光性アクリル樹脂溶液の塗布膜を、超高圧水銀灯を用いて300mJ/cm2の露光量で露光した。露光後の塗布膜は、0.5質量%のエタノールアミン水溶液中で現像し、未露光部分を除去して、格子状のパターンを得た。得られた格子状のパターンを、空気中150℃で30分間乾燥して、格子状の隔壁を形成した。割断により隔壁断面を露出させ、走査型電子顕微鏡S2400((株)日立製作所製)で撮像して隔壁の高さ、底部幅、頂部幅、間隔を測定した。
【0186】
得られた隔壁基板を用いて、実施例1と同様に第1反射層と無機保護層及び有機保護層の形成を行い、蛍光体を充填して評価した。
【0187】
(比較例2)
実施例1において、ポリイミドAを用いず、フェノール樹脂Aを用いた以外は、実施例1と同様にワニスを調製した。隔壁基板を作製後、反射率と輝度、X線吸収量を測定した。
【0188】
(比較例3)
実施例1において、ポリイミドAを用いず、エポキシ樹脂Aを用いた以外は、実施例1と同様にワニスを調製した。また、隔壁基板の形成工程において、塗布膜の現像に水酸化カリウム水溶液を用いず、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタートを用いた以外は、実施例1と同様に隔壁基板を作製した。隔壁基板を作製後、反射率と輝度、X線吸収量を測定した。
【0189】
(比較例4)
(ガラス粉末含有ペーストの作製)
比較例1で作製した感光性アクリル樹脂50質量部1に、低軟化点ガラス粉末50質量部を添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、ガラス粉末含有ペーストを得た。
【0190】
(低軟化点ガラス粉末)
SiO2 27質量%、B2O3 31質量%、ZnO 6質量%、Li2O 7質量%、MgO 2質量%、CaO 2質量%、BaO 2質量%、Al2O3 23質量%、屈折率(ng)1.56、ガラス軟化温度588℃、熱膨張係数70×10-7(K-1)、平均粒子径2.3μm。
【0191】
基板として、125mm×125mm×0.7mmのソーダガラス板を用いた。基板の表面に、ガラス粉末含有ペーストを、乾燥後の厚さが100μmになるようにダイコーターで塗布して乾燥し、ガラス粉末含有ペーストの塗布膜を得た。次に、所望のパターンに対応する開口部を有するフォトマスク(ピッチ127μm、線幅10μmの、格子状開口部を有するクロムマスク)を介して、ガラス粉末含有ペーストの塗布膜を、超高圧水銀灯を用いて300mJ/cm2の露光量で露光した。露光後の塗布膜は、0.5質量%のエタノールアミン水溶液中で現像し、未露光部分を除去して、格子状の焼成前パターンを得た。得られた格子状の焼成前パターンを、空気中580℃で15分間焼成して、ガラスを主成分とする、格子状の隔壁を形成した。割断により隔壁断面を露出させ、走査型電子顕微鏡S2400((株)日立製作所製)で撮像して隔壁の高さ、底部幅、頂部幅、間隔を測定した。
【0192】
得られた隔壁基板を用いて、実施例1と同様に第1反射層と無機保護層および有機保護層の形成を行い、蛍光体を充填して評価した。
【0193】
実施例1~11、比較例1~4の評価結果を表1、2に示す。
【0194】
【0195】
【0196】
化合物(P)を含有する材料で隔壁を構成した実施例1~11はいずれも反射率と輝度が高かった。化合物(P)の一種であり、耐熱性、機械特性および耐薬品性に優れるポリイミドで隔壁を形成したことにより、反射層形成のためのスパッタ工程における加温等によるダメージが少なかったことや、蛍光体充填工程における溶剤や熱による隔壁の表面の平滑性の低下が生じなかったことに起因し、平滑性に優れた第1反射層が得られためであると推定される。さらに、機械的強度が十分であるため、蛍光体充填工程等における真空印刷時に隔壁の破断や欠損が抑制されたと考えられる。
【0197】
また、隔壁が化合物(P)とエポキシ化合物由来の構造とを含有する場合は、より加工性に優れ、隔壁頂部に対し、隔壁底部の幅がより細くなったため、蛍光体の充填量が上がり、輝度がより高くなったと考えられる。特に、化合物(P)の分子鎖末端がカルボン酸残基である実施例1~7および10~11はカチオン重合が十分に進行したため、平滑性に優れた隔壁が形成でき、輝度がより高くなったと考えられる。
【0198】
一方、比較例1では、化合物(P)を含まないアクリル樹脂で隔壁を形成したため、隔壁側面の算術平均傾斜角が悪化し、平滑性が低下したことで、反射率、輝度が低下した。また、耐薬品性に劣ることから、蛍光体充填工程における隔壁の変形がみられた。比較例2では、化合物(P)を含まないがフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂で隔壁を形成したため、隔壁側面の算術平均傾斜角が悪化し、平滑性が低下したことで、反射率、輝度が低下した。比較例3では、化合物(P)を含まないエポキシ樹脂で隔壁を形成したため、反射率や輝度は適当であったが、隔壁の機械強度が低く、シンチレータパネルの作製工程において隔壁の破断や欠損がみられた。比較例4では、低軟化点ガラスを用いて隔壁を形成したため、ガラス粉末の溶融による隔壁側面の凹凸が生じ、隔壁の平滑性が低下した。また、ガラスの溶融により隔壁底部の幅が太くなったことで、蛍光体の充填量の低下によるX線吸収量の低下がみられた。これらの結果、反射率の低下と、それに伴う輝度の低下がみられた。
【符号の説明】
【0199】
1 放射線検出器用部材
2 シンチレータパネル
3 出力基板
4 基板
5 隔壁
6 蛍光体層
7 隔膜層
8 光電変換層
9 出力層
10 基板
11 第1反射層
12 有機保護層
13 第2反射層
14 蛍光体
15 バインダー樹脂
L1 隔壁の高さ
L2 隣接する隔壁の間隔
L2(X) 隣接する隔壁のX軸方向の間隔
L2(Y) 隣接する隔壁のY軸方向の間隔
L3 隔壁の底部幅
L4 隔壁の頂部幅