(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ポリマー組成物の調製方法、および前記方法によって入手可能なポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 69/30 20060101AFI20220621BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C08G69/30
C08L77/06
(21)【出願番号】P 2017567120
(86)(22)【出願日】2016-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2016067545
(87)【国際公開番号】W WO2017017017
(87)【国際公開日】2017-02-02
【審査請求日】2019-05-22
(32)【優先日】2015-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ダイク, ハンス, クラース
(72)【発明者】
【氏名】バルトゥッセン, マイケル, ジェラルドゥス, ヘンリクス, マリア
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/118278(WO,A3)
【文献】国際公開第2014/118276(WO,A3)
【文献】特表2016-508525(JP,A)
【文献】特表2016-504479(JP,A)
【文献】特開2015-071668(JP,A)
【文献】特開2015-052111(JP,A)
【文献】特開2013-060534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00 - 69/50
C08L 77/00 - 77/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水中または水性溶媒中にジアミンおよびジカルボン酸を溶解することによって、ジカルボン酸ジアンモニウム塩を調製するステップと;
(b)ステップ(a)で得られた前記ジカルボン酸ジアンモニウム塩の溶液の流動層噴霧粒状化によって、ジカルボン酸ジアンモニウム塩粒状物材料を調製するステップと;
(c)ステップ(b)から得られた前記ジカルボン酸ジアンモニウム塩粒状物材料の直接固体状態重合によって、第1のポリマー(A1)を調製し、それによって、粒状物ポリアミド材料として前記第1のポリマー(A1)を得るステップと、
(d)ステップ(c)から直接得られる前記第1のポリマー(A1)の前記粒状物ポリアミド材料および少なくとも1種のさらなる成分が混合装置中に添加され、混合されるブレンドステップを含んでなる、ポリマー組成物を調製するステップと
を含んでなり、
前記少なくとも1種のさらなる成分が、前記第1のポリマー(A1)と混和性の第2のポリアミドポリマーを含んでおり、
前記第2のポリアミドポリマーと前記第1のポリマー(A1)との間のコポリマーの形成がもたらされる、
ポリマー組成物の調製方法。
【請求項2】
前記方法が、ドライブレンドプロセスであり、前記混合装置が、撹拌反応器または回転容器、あるいはその組合せであり、かつ得られるブレンドが、ドライブレンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- 前記混合装置が、溶融混合装置であり;
- 前記方法が、前記第1のポリマー(A1)が前記溶融混合装置中に添加され、前記溶融混合装置中で溶融されて、ポリマー溶融物が形成される溶融混合ステップを含んでなり;
- 前記第1のポリマー(A1)の溶融の前、間または後に、前記少なくとも1種のさらなる成分が前記溶融混合装置中に添加され、前記ポリマー溶融物と混合され、それによって、溶融ポリマーと、混合もしくは分散された前記少なくとも1種のさらなる成分との溶融ブレンドが形成され;
- 前記溶融ブレンドが、前記溶融混合装置から排出され、冷却されて、それによって、固体複合材の形態のブレンドが得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶融混合装置が押出機である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融ブレンドが、1つ以上のオリフィスを有するダイを通して前記溶融ブレンドを押出することによって排出され、それによって、ポリマーストランドが形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記溶融ブレンドが、ダイスリットを有するダイを通して前記溶融ブレンドを押出することによって排出され、それによって、ポリマーシートまたはポリマーフィルムが形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記溶融ブレンドが、3次元キャビティを有する鋳型中に前記溶融ブレンドを押出して、前記鋳型において前記溶融ブレンドを冷却および固化することによって排出され、それによって、3次元部品が形成され、そして前記鋳型から前記3次元部品が排出される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のポリマー(A1)が、20℃において、ISO13320-1による方法によって、レーザーグラニュロメトリーによって測定される、200~1000μmの範囲の中間粒径(d50)を有する粒径分布を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のポリマー(A1)が、
- 半芳香族ポリアミド、または
- 脂肪族ポリアミド、または
- 芳香族ポリアミド、または
- いずれかのコポリアミドもしくはそのいずれかの混合物
を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種のさらなる成分が、
- 前記第2のポリアミドポリマー以外の第2のポリマー成分(A2);または
- 強化剤および充てん剤;難燃剤および難燃剤相乗剤;安定剤、顔料、着色剤、加工助剤およびポリアミド成形組成物で使用されるさらなる補助添加剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分(B);
- あるいはそのいずれかの組合せ
を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ポリマー組成物、およびポリマー組成物、すなわち、ポリマーと、1種以上のさらなる成分とを含んでなる組成物を調製するためのポリマー配合プロセスに関する。より特に、本発明は、ポリアミドが1種以上のさらなる成分と混合される、ドライブレンドプロセス、または溶融混合プロセスに関する。また本発明は、前記プロセスによって入手可能なポリマー組成物、より特に、ポリアミドと、1種以上のさらなる成分とを含んでなるポリマー組成物に関する。本発明は、より特に、ポリマーと、1種以上の他の成分とを含んでなるドライブレンドの形態のポリマー組成物に関する。
【0002】
ポリマー配合とは、本明細書中、ポリマーと、少なくとも1種の他の成分とを含んでなるポリマー組成物の調製として理解される。ポリマー組成物を調製するための種々のプロセスが存在しており、それらのプロセスには、ドライブレンドの調製、ポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックス中に分散された添加剤または他の成分とを含んでなる粒状物材料の形態の成形組成物の調製、および成形部品の最終形態での組成物の調製が含まれる。
【0003】
ポリマー配合のために、種々の技術を適用することができる。本明細書中、ポリマー組成物は、固体材料のドライブレンドを別として、溶融混合によって調製することができる。本明細書中、ポリマーは溶融されて、そして1種以上のさらなる成分と混合される。そのようなプロセスにおいて、ポリマーは、混合前に、粉末の形態で、または予成形顆粒の形態で提供可能である。予成形顆粒は、例えば、粉末のペレットをプレスすることによって、またはポリマーの溶融押出によって調製可能であるが、ポリマーは粉末および溶融状態として提供されるか、または溶融状態で調製されて、かつ直接押出される。
【0004】
ポリマー粉末の加工は、それがホッパーなどの添加装置の目詰まりのリスクを含み、かつ例えば、脱気ベントを介して発塵の問題を有するため、ポリマーの添加を複雑化させる可能性がある。粉末の取入れ容量は、しばしば、ペレットの取入れ容量より低いこともあり、したがって、全体的な処理量が低下する。ペレットを調製することは、追加的な加工ステップを必要とし、そして、いずれにしても、粉末の取扱いを伴う。溶融状態でポリアミドポリマーを調製することは常に可能であるわけではなく、しばしば、最初にプレポリマーが粉末の形態で、または溶融物の形態で調製され、その後、プレポリマー粉末およびプレポリマー溶融物がペレットまたは顆粒へと変換され、次いで、固体状態でさらに重合され、ペレットまたは顆粒の形態のポリアミドポリマーが得られる。
【0005】
熱可塑性ポリマーに関するポリマー配合のために、溶融混合押出は、半世紀以上、最も広く使用されてきた技術である。半連続溶融押出は、高品質の製品を製造するための一貫した、かつ再現可能な方法であることが証明されている。この技術に関して、共回転噛合型二軸押出機、ならびに反回転非噛合型二軸押出機の両方が使用される。二軸押出機は、配合および脱揮発分のための、プラスチック産業の好ましい製造方法論である連続小質量混合機である。これらの押出機は、しばしば、固体、例えば、充てん剤および繊維の添加のためのサイドフィーダー、液体フィーダー、排気および湿分除去のための開口部、真空ポンプ、スクリーンチェンジャーおよびペレタイザー、例えば、ストランドペレット製造または水中ペレット製造などの補助装置と組み合わせられる。
【0006】
共回転噛合型二軸押出機は、複数のポリマー流の優れた溶融のための高せん断能力、優れた均質性のための強力な分散混合、ならびに種々の供給流のためのスクリューおよびバレル構造設計の融通性のため、一般に選択される。反回転非噛合型二軸押出機は、優れた洗浄および排気のための低せん断および高表面再生;優れた供給許容性のための広範な供給口および下方らせん運動;多段式添加を可能にする長いL/D比、ならびに非噛合型設計における摩擦面の最小化による摩耗減少によって典型的に特徴づけられる。
【0007】
配合のために利用される押出機は、典型的に、次のセクション:任意に排気セクションおよび/または真空セクションを含んでなる一次供給セクション、加熱セクション、任意に1つ以上の二次供給セクション、ならびに任意にスクリーンおよび/またはダイを含んでなる排出セクションが識別可能である、二重スクリューを含んでなるバレルを含んでなるか、あるいはインラインポリマー配合による仕上げ製品形成を積算する。
【0008】
一般に、ポリマーは、例えば、いわゆるホッパーを介して、優先的に供給スロートにおいて、一次供給セクションにおいて添加され、そして加熱セクションに入る前に輸送され、そして高密度化されなければならない。ポリマー材料は、典型的に、供給スロート(バレルの後部の付近の開口部)を通って入り、そしてスクリューと接触する。回転スクリュー(通常、600rpmまで回転する)は、加熱バレル中へプラスチックビーズを強制する。ほとんどのプロセスにおいて、加熱プロフィールは、バレルに関して、3つ以上の独立PID制御加熱ゾーンが、(ポリマーが入る)後部から前部までバレルの温度を徐々に増加させるように設定される。これによって、ポリマー材料は、それらがバレルを通して押し出されるときに、徐々に溶融することが可能となり、そしてポリマーにおいて分解を引き起こし得る過熱のリスクが低下する。
【0009】
押出機は、例えば、任意の二次供給セクションの後ろに、典型的に1つ以上の溶融混合セクションを含んでなるか、あるいは1つ以上の他の成分も、任意にポリマーと一緒に一次供給セクションで供給される場合、そのような溶融混合セクションは、加熱セクションと組み合わせられていてもよい。
【0010】
高速製造および最大能力使用のために、ポリマーが十分高い速度で添加されることが可能であること、ならびに材料が高密度化される供給セクションが短く、それによって、他のセクションのためにより大きいスペースが可能となり、かつ良好な混合品質を維持しながら、より高いスループットを可能にすることが重要である。溶融重合プロセス、またはポリマー溶融物が押出され、冷却され、かつ粒状化されるステップを含んでなる、溶融加工ステップを含んでなるプロセスによって得られる粒状化ポリマー材料によって、良好な結果が得られる。そのような粒状化材料は、典型的に、1~4、より特に2~3の範囲のL/D比、ならびに直径(D)に関して1~3mmおよび長さ(L)に関して1.5~4mmの範囲の寸法を有する顆粒からなる。
【0011】
しかしながら、全てのポリマーが溶融重合プロセスによって製造可能というわけではない。例えば、高い融点を有する半結晶質ポリアミドは、ポリマーの融点より高い温度での溶融重合間の分解の発生のため、好ましくは、他のルートを経由して製造される。そのようなプロセスの一例は、圧力下での水溶液中でのプレポリマーの調製、水性溶媒の蒸発下でのフラッシュ容器中への溶液のフラッシュによる水溶液からのプレポリマーの単離、および得られたポリマー粉末に固体状態後圧縮を受けさせることを含んでなる。
【0012】
別の例には、いわゆる、直接固体状態重合、すなわち、固体状態の塩の直接重合が続く、例えば、結晶化沈殿または噴霧乾燥による、水性溶液からのナイロン塩の調製が含まれる。このプロセスは、上記プロセスと同様に、ポリマー粉末をもたらす。そのようにして得られたポリマー粉末は、典型的に、良好ではない流動特性を有する。そのようなポリマー粉末は、ホッパーを介しての添加において、そして供給セクションでの輸送において問題を生じるおそれがあり、そして、もし可能であるならば、より長い添加セクションおよび/または真空補助添加を必要とする可能性がある。さらに、真空補助添加は、供給スロートではなく、サイドフィーダーにおいてのみ適用可能であり、それによって押出機の機能的長さが減少し、かつ真空補助添加装置は容易に目詰まりする。
【0013】
本発明の目的は、上記問題が排除されるか、または少なくとも低減される、ポリマー組成物の調製方法を提供することである。この目的は、本発明の請求項1による方法によって達成される。
【0014】
このプロセスで使用される粒状物ポリアミド材料(成分A1)は、それ自体、良好な流動特性を有する。ポリマーが、流動層噴霧粒状化によって調製されたジカルボン酸ジアンモニウム塩の直接固体状態重合によって得られた粒状物ポリアミド材料を含んでなるプロセスの効果は、ポリアミドポリマーの重合ステップの前または後に粉末から顆粒への成形ステップを必要とすることなく、添加装置の目詰まりのリスクが低く、かつ発塵の問題が限定されることである。さらなる利点は、輸送および高密度化が効率的な様式で実行可能であり、かつ比較的短い添加セクションおよび真空補助添加がない状態でも高い能力使用が可能となることである。
【0015】
本発明の特定の実施形態は、ドライブレンドプロセスに関する。
【0016】
本発明の別の特定の実施形態は、溶融ブレンドプロセスに関する。
【0017】
本発明のさらなる特定の実施形態は、上記ドライブレンドプロセスによって入手可能なドライブレンドに関する。
【0018】
本発明のさらなる実施形態は、
(i)流動層噴霧粒状化によって調製されたジカルボン酸ジアンモニウム塩の直接固体状態重合によって第1のポリマーA1を調製し、それによって、粒状物ポリアミド材料として第1のポリマーA1を得るステップと、
(ii)ステップ(i)から得られる第1のポリマー(成分A1)の粒状物ポリアミド材料および少なくとも1種のさらなる成分が混合装置中に添加され、混合されるブレンドステップを含んでなる、ポリマー組成物を調製するステップと
を含んでなるプロセスに関する。
【0019】
本発明の別のさらなる実施形態は、
(a)水中または水性溶媒中にジアミンおよびジカルボン酸を溶解することによって、ジカルボン酸ジアンモニウム塩溶液を調製するステップと;
(b)ステップaで得られたジカルボン酸ジアンモニウム塩溶液の流動層噴霧粒状化によって、ジカルボン酸ジアンモニウム塩粒状物材料を調製するステップと;
(c)ステップ(b)から得られたジカルボン酸ジアンモニウム塩粒状物材料の直接固体状態重合によって、第1のポリマーA1を調製し、それによって、粒状物ポリアミド材料として第1のポリマーA1を得るステップと、
(d)ステップ(c)から直接得られる第1のポリマー(成分A1)の粒状物ポリアミド材料および少なくとも1種のさらなる成分が混合装置中に添加され、混合されるブレンドステップを含んでなる、ポリマー組成物を調製するステップと
を含んでなるプロセスに関する。
【0020】
本発明、およびそのさらなる実施形態によるプロセスの混合ステップにおいて、少なくとも2種の成分、(本明細書中、成分A1とも呼ばれる)第1のポリマーおよび少なくとも1種のさらなる成分が混合される。言い換えると、1種以上のさらなる成分は、成分A1の次に使用される。本明細書中、少なくとも1種のさらなる成分は、適切に、第2のポリマー成分(A2)および/または二次成分(B)を含んでなる。
【0021】
本明細書中、用語が単数形の形態で使用される場合、特に他に指摘されない限り、それが複数形を含むように意図されることは留意される。第2のポリマー成分(A2)は、1種以上の他のポリマー、すなわち、成分(A1)以外のポリマーからなることが可能である。二次成分(B)は、1種以上の他の成分(B)、すなわち、ポリマー成分A1および/またはA2以外からなることが可能である。
【0022】
「少なくとも1」という表現は、「1以上」と同じ意味を有することは留意される。「および/または」という表現は、例えば、「Pおよび/またはQ」などの表現で使用される場合、「PまたはQ、あるいはPおよびQの組合せ」と同じ意味を有する。
【0023】
本発明によるプロセスにおいて、第1のポリマーA1は、流動層噴霧粒状化によって調製されたジカルボン酸ジアンモニウム塩の直接固体状態重合によって直接得られる粒状物ポリアミド材料である。
【0024】
本明細書中、「ジカルボン酸ジアンモニウム塩」という用語は、ジアミンまたはジアミンの混合物およびジカルボン酸またはジカルボン酸の混合物から調製される塩として理解される。そのような塩は、ジアミン/ジカルボン酸塩としても示されて、そしてナイロン塩として知られている。そのような塩から調製されるポリアミドは、一般に、AA-BBポリアミドとして示される。本明細書中、AA-BBポリアミドは、交互にAAおよびBB繰返し単位を含んでなるポリアミドであるとして理解される。ここで、AAは、ジアミンから誘導される繰返し単位を表し、そしてBBは、ジカルボン酸から誘導される繰返し単位を表す。本明細書中、「ジカルボン酸ジアンモニウム塩」および「ナイロン塩」という用語は、同一の意味を有するように意図され、したがって、交換可能である。
【0025】
直接固体状態重合プロセスという用語は、本明細書中、ナイロン塩からポリアミドポリマーを調製するための重合プロセスであって、前記プロセス中、塩および得られるポリアミドおよびそれらのいずれの中間体プレポリマー生成物も固体状態のままであるプロセスとして理解される。これは、プレポリマーが溶融状態で、または溶液中で調製される、溶融重合または溶液重合を含むプロセスから得られるプレポリマーの固体状態後圧縮(SSPC)を含むプロセスとは対照的である。
【0026】
「直接固体状態重合」という用語に関して、略語「DSSP」も本明細書中で使用されるであろう。DSSPプロセスにおいて、塩粉末または粒状物は、塩またはその中間体の溶融温度未満の反応温度まで加熱され、それによって、固体相における塩の重合およびポリアミドの形成が誘導される。塩および得られるポリマーの融点未満に重合温度を保持しながら、ポリマーは、一般に、粒状物材料として得られる。SSP後および直接SSPの両方のポリアミドのための固体状態重合プロセスは、CD.PapaspyridesおよびS.N.Vouyioukaによる著書「Solid-state Polymerization」(Wiley,2009年)にも記載されている。
【0027】
「融点」および「溶融温度」という用語は、本明細書中、同じ意味を有するものとして理解され、したがって、交換可能である。本明細書中、塩の融点または溶融温度は、10℃/分の加熱および冷却速度を用いて、N2雰囲気中、あらかじめ乾燥させた試料において、ISO-11357-1/3,2011によるDSC法によって測定された温度として理解される。本明細書中、Tmは、第1の加熱サイクルにおける最高溶融ピークのピーク値から計算される。本明細書中、粒状物塩材料は、105℃および100mmHgで真空下にて24時間乾燥される。
【0028】
特に、ナイロン塩は、温度が塩の溶融温度未満のままである適切な加熱プロフィールを適用することによって、直接固体状態重合によって重合可能である。好ましくは、直接固体状態重合の間、粒状塩材料は高温まで加熱され、そして前記温度は、塩の溶融温度より10℃低く、好ましくは塩の溶融温度よりも15℃低く保持される。
【0029】
「流動層噴霧粒状化」という用語は、本明細書中、ナイロン塩の水溶液または水性スラリーがナイロン塩粒子の流動層上または中に噴霧され、かつ水性媒体を蒸発させながら、予熱された気体媒体が流動層を通過し、それによって、粒状物塩材料が形成されるプロセスとして理解される。
【0030】
本明細書中、水性溶液は、水性媒体中に溶解された、ジアミンまたはジアミンの混合物およびジカルボン酸またはジカルボン酸の混合物を含んでなる。水性スラリーは、さらに、水性媒体中に分散されたジカルボン酸ジアンモニウム塩を含んでなり、かつ例えば、水性媒体を部分的に蒸発させ、かつ溶液を遠心分離で処理することによって、水性媒体中に溶解されたジアミンおよびジカルボン酸を含んでなる水性溶液から適切に得られる。
【0031】
「流動層噴霧粒状化によって調製された、ジカルボン酸ジアンモニウム塩の直接固体状態重合によって直接的に得られる粒状物ポリアミド材料」という表現における「直接的」という用語は、本明細書中、流動層噴霧粒状化から得られる塩、または直接固体状態重合から得られる粒状物ポリアミド材料のいずれも、ペレット製造ステップまたは他のいずれかの成形ステップを受けていないこと、あるいは直接固体状態重合の前もしくは間、または重合ステップの後に、液体媒体中に溶解または分散されていないことを意味する。
【0032】
流動層噴霧粒状化プロセスで形成された粒状物塩材料は、凝集粒子から典型的なることが観察されている。これらの粒子は、粒子の径がなお比較的小さい場合、特に凝集プロセスのより初期の段階で、ブラックベリー様構造を有するか、またはより球形様構造へと、より大きく成長した場合、より丸みを帯びた形状を有する傾向がある。これは、他のプロセスから得られる微粒子形態の塩とは対照的である。例えば、噴霧乾燥からの塩は、典型的に、一種のパフドオープンポップコーン型の構造、または破裂した小液滴を有する。ジアミンを固体ジカルボン酸に添加することを含んでなる乾燥固体プロセスによって得られる微粒子形態の塩は、多くのサブミクロン結晶子を有する乾燥泥のようなひび割れた表面を有するジャガイモ形状を示す。水性溶液から沈殿させた塩は、一般に、(部分的)結晶、ニードル形状または非常に微細な粉末を示すか、あるいは蒸発によって得られる場合、大きい塊を示し得る。
【0033】
流動層噴霧粒状化による粒状物塩材料の調製は、水性塩溶液または水性塩懸濁液を粒子の流動層上に噴霧することによって実行され、次のように進行すると考えられる。噴霧によって形成された液滴は、2個以上の粒子間の液体架橋を形成することができ、それによって、小凝集体が形成される。噴霧によって形成された他の液滴は、乾燥して、新しい小粒子を形成し得る。これらの新しい小粒子は、一緒に架橋して新しい小凝集体を形成し得るか、または他の凝集体に組み込まれ得、それによって、これらの凝集体は成長し、最終的に、より大きい凝集体が得られ得る。一方、液体架橋中の溶媒は蒸発し、それによって、より小さいおよびより大きい凝集体が固化するであろう。より大きい集塊岩は、粒子がより流動化し難くなる特定の径に達し得る。そのような、より大きい粒子は、流動層から沈下または除去することが可能である。流動層中の残りのより小さい凝集体は、より大きい凝集体へと成長するが、同時に、新しい小凝集体が形成し、したがって、プロセスが続くことが可能となるであろう。そのようにして形成されたより大きい凝集体は、一種のブラックベリー構造を典型的に有する。さらにより大きくなる場合、凝集体はより丸くなり得るが、なお、より大きい凝集体に一緒に結合したより小さい粒子の残りの像を示す可能性がある。さらに、異なる様式のより大きい粒子の成長が、すなわち、粒子の表面上での溶液またはスラリーの複数の液滴の堆積によって生じ得、そして堆積した液滴は広がって乾燥し、それによって、少なくとも表面層において一種のタマネギ様構造が導かれる。したがって、本発明によるプロセスによって得られる粒状物塩材料は、適切に、凝集形状またはタマネギ様形状を有する粒子を含んでなる。
【0034】
流動層噴霧粒状化によって製造された粒状物塩材料の直接固体状態重合は、重合間に粒状物塩材料および得られる粒状物ポリマー材料が機械的に撹拌される反応器中で実行され得る。反応器は、例えば、撹拌器を含んでなる反応器、または回転可能な反応器、あるいはその組合せであることが可能である。流動層噴霧粒状化によって製造された粒状物塩材料の特性は、穏やかな機械撹拌の利用、ならびに重合後の粒状物材料の形状および粒径分布の維持を予想する。
【0035】
流動層噴霧粒状化によって調製されたジカルボン酸ジアンモニウム塩の直接固体状態重合によって直接的に得られた粒状物ポリアミド材料は、相対的に小さい粒径にもかかわらず、典型的に、良好な流動性、ならびに相対的に高い密度および低い圧縮率を有する。
【0036】
適切には、本発明によるプロセスにおいて使用される粒状物ポリアミド材料(A1)は、少なくとも90体重%の、多くとも3mm(ミリメートル)の粒径を有する粒子からなる。本明細書中、多くとも3mmの粒径を有する粒子の量は、DIN 66-165パート1および2による方法によって決定されるように、ふるい分けおよび秤量によって決定される。
【0037】
適切には、粒状物ポリアミド材料(A1)は、100~1500μm(マイクロメートル)の範囲、より特に200~1000μmの範囲、なおより特に400~750μmの範囲の中間粒径(d50)を有する粒径分布を有する。本明細書中、粒径分布は、20℃において、ISO13320-1による方法によって、レーザーグラニュロメトリーを用いて測定される。
【0038】
また適切には、粒状物ポリアミド材料(A1)は、ASTM D6393による方法によって測定された、350~750kg/m3の範囲のタップバルク密度を有する。適切には、(TBD-ABD)/TBD*100%の比率によって表される圧縮率は、多くとも25%である。圧縮率は、通気バルク密度(ABD)およびタップバルク密度(TBD)を比較することによって決定される。通気バルク密度(ABD)およびタップバルク密度(TBD)のそれぞれは、ASTM D6393による方法によって測定される。
【0039】
好ましくは、粒状物ポリアミド材料(A1)は、以下の物理的特性:
a.20℃において、ISO13320-1による方法によって、レーザーグラニュロメトリーによって測定された、200~1000μmの範囲の中間粒径(d50)を有する粒径分布、および
b.ASTM D6393による方法によって測定された、350~750kg/m3の範囲のタップバルク密度
を有する。
【0040】
XおよびYが下限および上限を表す、「X~Yの範囲」という表現は、範囲が、XからYまでであり、かつYを含むという意味を有する。言い替えると、前記表現中、両限界の値は範囲に含まれる。
【0041】
本発明によるプロセスは、ドライブレンドプロセスまたは溶融混合プロセスであってよい。
【0042】
第1の実施形態によれば、本発明によるプロセスは、ドライブレンドプロセスであり、そして得られるブレンドは、ドライブレンドとして入手される。本明細書中、混合装置は、適切に、撹拌反応器または回転容器、あるいはその組合せである。
【0043】
その利点は、圧縮またはペレット化などの特別な成形ステップが不要であること、同様の、またはより小さい粒径を有する粉末の加工と比較して、添加の改善および発塵の減少以外に、少なくとも1種のさらなる成分との良好な混合がなお得られながらも、混合装置においてより高い装填およびより穏やかな機械撹拌が適用可能であることである。
【0044】
また本発明は、上記ドライブレンドプロセスによって入手可能なドライブレンドの形態のポリマー組成物、より特にドライブレンドに関する。その利点は、上記ドライブレンドは、圧縮またはペレット化などの特別な成形ステップを適用することを必要とせずに、粉末形態のポリアミドを含んでなる相当するドライブレンドと比較して、改善された流動特性を有することである。粒状物ポリアミド材料(A1)を他の良好流動成分と組み合わせる場合、A1は、粉末状態のポリアミドと比較して、流動性を損なうことなく、より多い量で使用可能である。粒状物ポリアミド材料(A1)を、流動特性があまり良好ではない他の成分と組み合わせる場合、A1は、その流動性の改善を助け、これは、粉末形態のポリアミドとは対照的である。
【0045】
ドライブレンドは、適切に、第2のポリマー成分(A2)を含んでなる。第2のポリマーは、いずれかの他のポリマー、または成分(A1)以外のポリマーであってよい。第2のポリマー成分(A2)は、いずれかの適切な形態で、例えば、顆粒、圧縮ペレットまたは粉末、あるいはそのいずれかの組合せで存在していてもよい。成分A1の次に、ドライブレンドは、ポリマー成分A1およびA2以外の1種以上の成分(B)を含んでなることも可能である。またドライブレンドは、1種以上の他の成分(B)と組み合わせて、ポリマー成分A1およびA2を含んでなり得る。ポリマー成分A2が粉末である場合、その量は、好ましくは、ポリマー成分A1の重量と比較して多くとも50重量%の量、より好ましくは、ポリマー成分A1の重量と比較して多くとも33重量%またはさらに良好には、多くとも25重量%の量で使用される。
【0046】
第2の実施形態によれば、本発明によるプロセスは、溶融混合プロセスである。溶融混合プロセスは、適切には、次の特徴およびステップを含んでなる:
- 混合装置が、溶融混合装置である;
- プロセスが、ポリマー粒状物材料(成分A1)が溶融混合装置中に添加され、そして溶融混合装置中で溶融されて、ポリマー溶融物が形成される溶融混合ステップを含んでなる;
- 粒状物ポリアミド材料(A1)の溶融の前、間または後に、1種以上のさらなる成分が溶融混合装置中に添加され、ポリマー溶融物と混合され、それによって、溶融ポリマーと、混合もしくは分散された1種以上のさらなる成分との溶融ブレンドが形成される;
- そして、溶融ブレンドが、溶融混合装置から排出され、冷却されて、それによって、固体複合材の形態のブレンドが得られる。
【0047】
溶融混合プロセスは、例えば、Brabender型混合機中でのバッチプロセスとして、または例えば、押出機中での半連続プロセスとして適切に実行される。バッチプロセスにおいて、成分は、好ましくは、ポリマー材料の溶融の前に添加および混合される。その利点は、ブレンドの前に、圧縮またはペレット化などの特別な成形ステップが不要であること以外に、同様の、またはより小さい粒径を有する粉末の加工と比較して、添加の改善および発塵の減少があること、ならびに良好な混合がなお得られながらも、より高い反応器装填およびより穏やかな機械的撹拌が適用可能であることである。
【0048】
好ましくは、溶融混合プロセスは、押出機で実行される。押出機中での溶融混合が最も広く使用されるだけではない。粒状物ポリアミド材料(A1)と組み合わせて、同様の、またはより小さい粒径を有する粉末の加工と比較して、添加の改善および発塵の減少があり、良好な混合がなお得られながらも、スループットはより高く、かつ反応器能力はより良好に利用される。
【0049】
押出機での溶融混合を含んでなる本発明の実施形態によるプロセスは、種々の目的のために好ましく利用される。
【0050】
第一に、溶融ブレンドは、1つ以上のオリフィスを有するダイを通して溶融ブレンドを押出することによって適切に排出され、それによって、ポリマーストランドが形成される。任意に、そのようにして製造されたポリマーストランドは、ダイを出た後、例えば、ダイフェースカッターによって直接切断されるか、またはストランドは、カッターを通して導出され、そして切断され、それによって、顆粒の形態の固体コンパウンドが得られる。そのような顆粒は、次いで、ポリマーシート、ポリマーフィルムおよび三次元成形部品の製造のための成形組成物として使用可能である。
【0051】
第二に、溶融ブレンドは、ダイスリットを有するダイを通して溶融ブレンドを押出することによって排出することができ、それによって、ポリマーシートまたはポリマーフィルムが形成される。
【0052】
第3の選択として、溶融ブレンドは、3次元キャビティを有する鋳型中に溶融ブレンドを押出して、鋳型において溶融ブレンドを冷却および固化することによって排出され、それによって、3次元部品が形成され、そして鋳型から3次元部品が排出される。
【0053】
第2および第3の選択肢の利点は、粒状物ポリアミド材料(A1)中のポリアミドポリマーが、溶融状態でありながら、非常に限定された温度履歴を受け、それによって、あるとしても、ポリアミドの熱分解の発生が制限されるということである。
【0054】
さらなる選択肢は、押出機中での粒状物ポリアミド材料(A1)と第2のポリマー(成分A2)との溶融ブレンドを含んでなる。この選択肢は、上記3つの選択肢のいずれとも適切に組み合わせられる。
【0055】
適切には、第2のポリマーは、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、官能化ポリエチレンおよびポリフルオロアルカンならびにそのいずれかの組合せからなる群から選択される。
【0056】
好ましくは、第2のポリマーは、ポリアミドである。ポリアミドは、適切に、粒状物ポリアミド材料(A1)と混和性であり、したがって、混和性ブレンドの形成が可能となり、任意にアミド交換反応が生じ、排出前に第2のポリアミドと粒状物ポリアミド材料(A1)との間のコポリマーの形成がもたらされる。その利点は、同コポリマーが溶融重合によって調製され、かつ完全コポリマー成分が、より長い時間、溶融温度より高い温度で保持されなければならない溶融重合プロセスと比較して、相対的に穏やかな加工条件下でコポリマーが形成されるということである。
【0057】
本発明によるプロセスで使用される粒状物ポリアミド材料(A1)は、ジカルボン酸ジアンモニウム塩、すなわち、ジアミンおよびジカルボン酸から調製されたナイロン塩の重合によって得られる。塩、ならびに塩から調製されたポリアミド中のジアミンは、単一ジアミンであることも、または異なるジアミンの混合物であることも可能である。同じくジカルボン酸は、単一ジカルボン酸または異なるジカルボン酸の混合物であることが可能である。
【0058】
プロセスで使用されるポリアミドは、適切には、ホモポリマー、すなわち、単一ジアミンおよび単一ジカルボン酸の塩から得られたポリアミドポリマーである。本プロセスで使用されるポリアミドは、複数の成分を含んでなる混合塩から調製されたコポリマーであることも可能である。混合塩は、適切に、少なくとも2種のジアミンおよび1種のジカルボン酸、または1種のジアミンおよび少なくとも2種のジカルボン酸、またはさらには、少なくとも2種のジアミンおよび少なくとも2種のジカルボン酸を含んでなる成分から製造される。
【0059】
適切に、本発明によるプロセスで使用される粒状物ポリアミド材料A1中のポリアミド、ならびにその調製のために使用される塩は、脂肪族ジアミンまたは芳香族ジアミン、あるいはそのいずれかの組合せから選択されるジアミンを含んでなる。適切な脂肪族ジアミンの例は、エチレンジアミン、1,3-プロパン-ジアミン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、cis-1,4-シクロヘキサンジアミン、trans-1,4-シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,15-ペンタデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン、1,17-ヘプタデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、1,19-ノナデカンジアミンおよび1,20-エイコサンジアミンである。適切な芳香族ジアミンの例は、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、1,4-ナフタレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、meta-キシレンジアミンおよびpara-キシレンジアミンである。
【0060】
好ましくは、ジアミンは、少なくとも脂肪族C2~C10ジアミン、すなわち、2~10個までであり、かつ10個を含む炭素原子を有する脂肪族ジアミンを含んでなる。その利点は、ジアミンから得られる塩が、より高い水溶解性を有するということである。より好ましくは、ジアミンは、ジアミンの全モル量に対して、少なくとも50モル%の量で、1個または2個以上の脂肪C2~C10ジアミンを含んでなる。さらにより好ましくは、脂肪族C2~C10ジアミンの量は、ジアミンの全モル量に対して、少なくとも75モル%である。
【0061】
特定の実施形態において、ジアミンは、ジアミンの全モル量に対して、少なくとも50モル%の量で、1個または2個以上の脂肪C4~C6ジアミンを含んでなる。より特に、脂肪族C4~C6ジアミンの量は、ジアミンの全モル量に対して、少なくとも75モル%である。脂肪族C4~C6ジアミンは、適切に、1,4-ジアミノブタン、1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミンおよび1,6-ヘキサンジアミン、またはそのいずれかの混合物から選択され;好ましくは1,4-ジアミノブタン、1,5-ペンタンジアミンおよび1,6-ヘキサンジアミン、またはそのいずれかの混合物から選択されるジアミンからなる。
【0062】
適切には、ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸、あるいはそのいずれかの組合せから選択される。
【0063】
芳香族ジカルボン酸の適切な例は、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸である。
【0064】
脂肪族ジカルボキシル酸に関しての適切な例は、シュウ酸、コハク酸、1,5-ペンタンジカルボン酸、アジピン酸、1,7-ヘプタン二酸、1,8-オクタン二酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,11-ウンデカン二酸、1,12-ドデカン二酸、1,13-トリデカン二酸、1,14-テトラデカン二酸、1,15-ペンタデカン二酸、1,16-ヘキサデカン二酸、1,17-ヘプタデカン二酸、1,18-オクタデカン二酸、1,19-ノナデカン二酸および1,20-エイコサン二酸である。
【0065】
好ましくは、ジカルボン酸は、C4~C10脂肪族ジカルボン酸、すなわち、4~10個までであり、かつ10個を含む炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を含んでなる。その利点は、ジカルボン酸から得られる塩が、より高い水溶解性を有し、より高い塩濃度の使用が可能となり、かつより少ない水が蒸発されるということである。より好ましくは、ジカルボン酸は、アジピン酸を含んでなる。
【0066】
粒状物ポリアミド材料(A1)は、上記の流動層噴霧粒状化によって調製されたジカルボン酸ジアンモニウム塩のDSSPによって入手可能であるいずれのポリアミドも含んでなることができる。粒状物ポリアミド材料A1に含まれるポリアミドは、交互にAAおよびBB繰返し単位を含んでなるAABBポリアミドである。ここで、AAは、ジアミンから誘導される繰返し単位を表し、そしてBBは、ジカルボン酸から誘導される繰返し単位を表す。ジアミンから誘導される繰返し単位およびジカルボン酸から誘導される繰返し単位の次に、ポリアミドは、いくらかの少量の他の繰返し単位、すなわち、他のモノマーから誘導される繰返し単位を含んでなってもよい。例えば、少量の単官能性モノマーおよび/またはより高次の官能性モノマーが、塩の調製およびその重合に含まれてもよい。そのようなモノマーの例は、単官能性アミン、単官能性カルボン酸、トリアミンおよび三官能性カルボン酸である。適切には、そのような他のモノマーは、ジアミンおよびジカルボン酸の次に、流動層噴霧粒状化に使用される水性媒体中に溶解される。好ましくは、そのような他のモノマーの量は低く、例えば、5モル%未満、より好ましくは、2モル%未満であり、かつポリマーは、ジアミンおよびジカルボン酸から誘導された繰返し単位から本質的になり、すなわち、95~100モル%、好ましくは、95~100モル%である。本明細書中、モル%は、ポリアミド中のモノマー繰返し単位の全モル量に対する。
【0067】
粒状物ポリアミド材料(A1)、ならびにその調製のための塩は、脂肪族、半芳香族または芳香族であってよい。適切には、粒状物ポリアミド材料A1は、半芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミドまたは芳香族ポリアミド、あるいはいずれかのコポリアミドまたはそのいずれかの混合物を含んでなる。粒状物ポリアミド材料(A1)は、適切に、少なくとも1種の半芳香族ポリアミドを含んでなるが、2種以上の半芳香族ポリアミドの混合物を含んでなってもよい。代わりに、粒状物ポリアミド材料(A1)は、適切に、少なくとも1種の脂肪族ポリアミド、または少なくとも1種の芳香族ポリアミド、あるいは2種以上の脂肪族ポリアミドの混合物、または2種以上の芳香族ポリアミドの混合物、あるいは例えば、半芳香族ポリアミドおよび脂肪族ポリアミドの混合物、または芳香族ポリアミドおよび脂肪族ポリアミドの混合物を含んでなる。混合物は、流動層噴霧粒状化によって得られ、かつDSSPによって重合されて調製された異なる粒状物ポリアミド材料のドライブレンドまたは溶融ブレンドによって容易に調製することができる。
【0068】
脂肪族ポリアミドとは、本明細書中、完全に、または本質的に、脂肪族ジアミンおよび脂肪族ジカルボン酸からなるモノマー単位から誘導される脂肪族繰返し単位からなるポリアミドとして理解される。
【0069】
半芳香族ポリアミドとは、本明細書中、完全に、または本質的に、少なくとも1つの芳香族成分および少なくとも1つの脂肪族成分を含んでなるジアミンおよびジカルボン酸からなるモノマー単位から誘導される繰返し単位からなるポリアミドとして理解される。適切に、半芳香族ポリアミド中のジアミンおよびジカルボン酸は、芳香族ジアミンおよび脂肪族ジカルボン酸、または脂肪族ジアミンおよび芳香族ジカルボン酸からなり、ジアミンおよびジカルボン酸の少なくとも1つは部分的芳香族であり、かつ部分的脂肪族である。ジアミンは、本明細書中、少なくとも1つの芳香族ジアミンおよび少なくとも1つの脂肪族ジアミンを含んでなる少なくとも2つのジアミンからなる場合、部分的芳香族および部分的脂肪族であると考えられる。ジカルボン酸は、本明細書中、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸および少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸を含んでなる少なくとも2つのジカルボン酸からなる場合、部分的芳香族および部分的脂肪族であると考えられる。
【0070】
また、ジアミンは、完全脂肪族であり、かつ少なくとも2つの異なる脂肪族ジアミンを含んでなることが可能である。また、ジカルボン酸は、完全芳香族であり、かつ少なくとも2つの異なる芳香族ジカルボン酸を含んでなることが可能である。
【0071】
本発明による粒状物ポリアミド材料A1で使用可能であるポリアミドの例としては、次の半芳香族ポリアミド:PA-XT、PA-XI、PA-XT/XI、PA-XT/X6、XT/Y6およびPA-XT/YT、ならびにそれらのいずれかのコポリマーが含まれる。ここで、Tはテレフタル酸を表し、Iはイソフタル酸を表し、6はアジピン酸を表し、そしてXおよびYはジアミンを表す。
【0072】
好ましい実施形態において、XおよびYは、互いに独立して、エチレンジアミン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、cis-1,4-シクロヘキサンジアミン、trans-1,4-シクロヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミンおよび1,10-デカンジアミン、ならびにそのいずれかのコポリマーからなる群からの脂肪族ジアミンから選択される異なるジアミンを表す。
【0073】
最終的に、塩および塩から調製されたポリアミドは、3以上のジアミンを含んでなり得る。適切には、これらのジアミンは、一部または全て、上記の群から選択される。
【0074】
より好ましい実施形態において、ポリアミドは、少なくとも75モル%のテレフタル酸からなるジカルボン酸と、少なくとも75モル%の1,6-ヘキサメチレンジアミン(HMDA)および/または1,4-ジアミノブタン(DAB)および/または1,5-ペンタンジアミンからなるジアミンとをベースとする塩から誘導される。好ましくは、ジアミンは、25:75~45:55、またはさらに良好には、30:70~40:60の範囲のモル比DAB/HMDAで、1,6-ヘキサメチレンジアミン(HMDA)および1,4-ジアミノブタン(DAB)を含んでなる。また好ましくは、ジアミンは、30:70~70:30、またはさらに良好には、40:60~60:40の範囲のモル比PD/HMDAで、1,6-ヘキサメチレンジアミン(HMDA)および1,5-ペンタンジアミン(PD)を含んでなる。
【0075】
さらにより好ましくは、ジカルボン酸は、95~100モル%のテレフタル酸からなり、かつジアミンは、少なくとも95~100モル%の1,6-ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1,4-ジアミノブタン(DAB)または1,5-ペンタンジアミンからなる。適切には、相当するポリアミドは、ホモポリマーPA-4T、PA 5TまたはPA6T、あるいはPA-4T/5T、PA-4T/6TおよびPA5T/6T、ならびにPA4T/5T/6Tなどのそのコポリマーのいずれかである。
【0076】
本発明によるプロセスで使用することができるポリアミドの他の例として、次の脂肪族ポリアミド:PA-46、PA-66、PA-46/66、PA-66/68およびPA-410、ならびにそのいずれかのコポリマーも含まれる。
【0077】
また、ポリアミドは、完全芳香族、すなわち、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジアミンからなってもよい。適切な芳香族ポリアミドの例は、PA-MXDTおよびPA-PXDTである。MXDTおよびPXDT塩は、溶解可能であるか、あるいはそれぞれのその成分ジアミンのmeta-キシレンジアミン(MXD)、para-キシレンジアミン(PXD)およびカルボン酸としてのテレフタル酸(T)から水中または水性液体中で調製可能であり、流動層噴霧粒状化によって水溶液から単離可能であり、かつ直接固体状態重合によって重合可能である。またポリアミドは、例えば、1種以上の半芳香族ポリアミドおよび1種以上の脂肪族ポリアミドのコポリアミド;1種以上の芳香族ポリアミドおよび1種以上の脂肪族ポリアミドのコポリアミド;あるいは1種以上の半芳香族ポリアミドおよび1種以上の芳香族ポリアミドのコポリアミド;およびその組合せなどのコポリアミドであってもよい。
【0078】
好ましくは、コポリアミドは、1種以上の上記半芳香族ポリアミドおよび1種以上の上記脂肪族ポリアミドのコポリアミドである。その例は、PA-XT/YT/X6/Y6である。ここで、Tはテレフタル酸を表し、6はアジピン酸を表し、そしてXおよびYは異なるジアミンを表す。これらのコポリマーにおいて、ジアミンは、適切に、3つ以上のジアミンを含んでなってもよい。
【0079】
本発明によるプロセスにおいて、粒状物ポリアミド材料A1は、少なくとも1種のさらなる成分と混合される。適切には、少なくとも1種のさらなる成分は、第2のポリマー成分(A2);および/または少なくとも1種以上の他の成分を含んでなる。
【0080】
第2のポリマー成分(A2)は、成分(A1)以外のいずれのポリマーであることも可能であり、かつまた、異なるポリマーの組合せであることも可能である。第2のポリマー成分(A2)は、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、官能性ポリエチレンおよびポリフルオロアルカンから選択される1種以上のポリマーを含んでなり得、そして好ましくはポリアミドを含んでなる。
【0081】
少なくとも1種の他の成分(B)は、適切には、強化剤および充てん剤;難燃剤および難燃剤相乗剤;安定剤(例えば、熱安定剤および光安定剤)、顔料、着色剤、加工助剤(例えば、潤滑剤およびはく離剤)およびポリアミド成形組成物で使用されるさらなる補助添加剤からなる群から選択される1種以上の成分;ならびにそのいずれかの組合せを含んでなるか、またはさらにはそれからなってもよい。
【0082】
本発明によるプロセスにおいて、成分(B)は、液体成分または反応物を含んでなってもよい。本明細書中、反応物は、ポリアミドと反応が可能である官能基を有する化合物であると理解される。反応物は、例えば、連鎖停止剤または連鎖延長剤であることが可能である。連鎖停止剤として、適切には、単官能性アミンまたは単官能性ジカルボン酸が使用される。連鎖延長剤として、適切には、二官能性アミンまたは二官能性ジカルボン酸が使用される。
【0083】
液体成分は、例えば、ドライブレンドプロセス中、結合剤として、添加剤の少量によって粒状物ポリアミド材料A1をコーティングするために使用されてもよい。本明細書中、液体成分の量は、ドライブレンドの乾燥粉末状態を維持するために十分少ないべきである。
【0084】
適切には、本発明およびその実施形態のいずれかによるプロセスによって調製される組成物は、組成物の全重量に対する重量パーセント(重量%)で、(A1)、(A2)、(B1)、(B2)および(B3)の合計が100重量%となる量で、
- (A1)10~90重量%の粒状物ポリアミド材料A1;
- (A2)0~30重量%の第2のポリマー成分(A2);
- (B1)0~60重量%の1種以上の強化剤および/または充てん剤;
- (B2)0~30重量%の1種以上の難燃剤および/または難燃剤相乗剤;ならびに
- (B3)0~20重量%の1種以上のさらなる添加剤
を含んでなる。
【0085】
特定の実施形態において、本発明およびその実施形態のいずれかによるプロセスによって調製される組成物は、組成物の全重量に対する重量パーセント(重量%)で、(A1)、(A2)、(B1)、(B2)および(B3)の合計が100重量%となる量で、
- (A1)30~90重量%の粒状物ポリアミド材料A1;
- (A2)0~25重量%の第2のポリマー成分(A2);
- (B1)0~60重量%の1種以上の強化剤および/または充てん剤;
- (B2)0~20重量%の1種以上の難燃剤および/または難燃剤相乗剤;ならびに
- (B3)0~20重量%の1種以上のさらなる添加剤
を含んでなる。
【0086】
本発明は、さらに次の実施例および比較実験によって説明される。
【0087】
[材料]
原材料として、テレフタル酸、1,4-ブタンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンの工業グレードが使用された。
【0088】
[方法]
[通気バルク密度(ABD)およびタップバルク密度(TBD)]
ABDおよびTBDは、20℃で、Hosokawa Powder Testerを用いて、ASTM D6393-08(“Standard Test Method for Bulk Solids Characterization by Carr Indices”,ASTM International,West Conshocken,PA,DOI:10.1520/D6393-08)による方法によって測定された。
【0089】
[レーザー回折による粒径分布]
粒状物材料の粒径分布、ならびにd10、d50およびd90値は、0.5バールの圧力を適用して、20℃でSympatec Helos(H0024) & Rodos装置を用いるISO 13320-1によるレーザーグラニュロメトリーによって測定され、そして25mバールのベンチュリにおいて加圧下で測定した。結果から、(d90-d10)/d50の比率によって定義されるスパンを計算する。
【0090】
[せん断試験における流動挙動]
流動性は、ASTM規格D6773-08(「Standard Shear Test Method for Bulk Solids Using the Schulze Ring Shear Tester」,ASTM International,West Conshocken,PA,DOI:10.1520/D6773-08)による方法によって測定された。せん断試験は、3kPaの圧密応力で、20℃において、Schulze Ringshear Testerを用いて実行された。測定は、試験器の充てん直後に開始された。流動挙動は、乾燥環境に貯蔵された、新たに調製された材料上で実行された。
【0091】
[実験]
[塩溶液の調製]
流動層噴霧粒状化実験による塩の調製のために、次の通りに調製された塩溶液が使用された。水中のテレフタル酸、1,4-ブタンジアミンおよび/またはヘキサメチレンジアミンの溶液を、水中1,4-ブタンジアミン溶液、水中ヘキサメチレンジアミン溶液およびテレフタル酸を、撹拌および加熱下の補足的な量の水に添加することによって調製した。液体混合物を60℃まで加熱した。この温度以上であれば、透明溶液が得られた。貯蔵の間の冷却時に、溶解した塩は部分的に結晶化し、スラリーが得られた。再加熱時に、部分的に結晶化した塩は再び溶解した。
【0092】
溶液は、28~50重量%の塩濃度で調製された。濃度は、溶液の全重量に対する全ての塩成分の重量%として計算される。1,4-ブタンジアミンとヘキサメチレンジアミンとの間の適用された比率は、36/64~42/58の範囲にあった。テレフタル酸とジアミンとの間のモル比は、ジアミンのわずかな過剰を目指して、0.995であらかじめ設定された。
【0093】
[流動層噴霧粒状化]
[SG-1およびSG-2]
流動層噴霧粒状化は、噴霧カラムの上部および中央で噴霧ノズルが備えられた噴霧コラムと、そして底部の中央で分類チャネルを含んでなるGlatt AGT 400装置において、パイロット規模で実行された。塩溶液は、新たに調製されたか、または貯蔵から取り出され、そして50℃~60℃まで加熱された。加熱は、貯蔵ビンの周囲に電気加熱ジャケットを備えることによって実行された。塩粉末の流動層は、Glatt GPCC 3.1装置において研究室規模で調製された少量の塩粉末を使用して調製された。研究室規模実験において、初期層は、噴霧乾燥によって得られた塩粒子から調製された。パイロット規模での実験における気体注入口温度は、100℃~150℃で変動した。流動化/加熱気体の流動は変動し、それによって、粒子の滞留時間は変動し、そして粒子がより大きい粒径(SG-1)になるまで成長することが可能であるか、またはより小さい粒径(SG-2)になった。層温度は、40℃~55℃に制御された。
【0094】
[乾燥塩調製 乾燥塩-1]
乾燥塩調製は、機械式撹拌器を備えた反応器中で実行した。固体テレフタル酸(245kg)を反応器中に装てんし、撹拌し、60℃まで加熱した。48kgの1,4-ブタンジアミンおよび110kgのヘキサメチレンジアミンの混合物を添加容器中で調製し、そして60℃まで加熱した。反応器中の温度を30℃~95℃に維持しながら、ジアミン混合物を撹拌下、テレフタル酸に添加した。添加の完了後に、撹拌しながら反応器含有物を95℃に保持した。塩形成ステップの全バッチサイクル時間は32時間であった。次いで、反応器含有物を冷却し、そして排出させた。
【0095】
[直接固体状態重合]
より大きい規模での直接固体状態重合(DSSP)を、機械式撹拌器を備えた1m3反応器において実行した。実験の前に、反応器をクリーニングし、そして窒素ガスを用いて不活性化した。次いで、反応器に、325kgの上記塩粉末SG-1、それぞれSG-2および乾燥塩-1を装てんした。塩を、16.4rpmの撹拌器回転速度で撹拌し、そして撹拌運動下に保持しながら、塩が0.5℃/分の加熱速度で180℃まで加熱され、その温度で4時間保持され、次いで10℃/分の加熱速度で265℃までさらに加熱され、そしてその温度で14時間保持される温度プロフィールを適用して加熱した。重合の間、いくらかのジアミンが損失し、ジカルボン酸のいくらかの過剰がもたらされ得る。追加のジアミンが、報告された温度プロフィールの最後に反応器含有物に添加されて、そして70~74のVNが得られるまで、その温度で維持された。反応器含有物は冷却され、そして反応器から排出された。排出された材料は回収され、そして分析された。
【0096】
SG-1および-2ならびに乾燥塩-1に関して、DSSPによって得られた粒状物ポリマー材料の特性および分析結果を表1に示す。
【0097】
【0098】
[配合実験]
[比較実験A]
配合実験は、Krauss-Maffei Berstorff ZE25(長さ=48L/D)押出機において実行された。乾燥塩-1は、2.5kg/時間の供給レートで、供給スロートにおいて押出機中に重量測定的に供給された。押出機は、350rpmで稼動した。ポリマーは、溶融セクション中で溶融された。さらなる成分は、サイドフィーダーを介して溶融物上に添加された。得られる材料は、複数のオリフィスを有するダイを通してストランドとして押出され、ストランドが粒状化される前に真空脱気された。2.5kg/時間より高い供給スロート上のいずれのスループットでもフラッディングが導かれた。
【0099】
[実施例I.]
乾燥塩-1がSG-1によって置き換えられ、そして押出機が325rpmで稼動されたこと以外、比較Aを繰り返した。供給スロートにおけるポリマーの供給レートは15kg/時間まで増加し、それによってフラッディングは導かなかった。15kg/時間より高いスループットを設定することによって、供給スロートのフラッディングが導かれた。
【0100】
[実施例I.]
乾燥塩-1がSG-2によって置き換えられ、そして押出機が325rpmで稼動されたこと以外、比較Aを繰り返した。供給スロートにおけるポリマーの供給レートは約12kg/時間まで増加可能であったが、それによってフラッディングは導かなかった。12kg/時間より高いスループットを設定することによって、供給スロートのフラッディングが導かれた。
【0101】
[結果]
通常のスループット(添加剤および他のポリマーまたは成分を含めて全体で25kg/時間)において、比較実験Aで使用される材料の直接配合は不可能であった。この材料のコンパウンドを製造するために、低いスループットにおいて、あらかじめ粒状化されなければならなかった。製造されたペレットは、次いで、コンパウンドを製造するために使用することができた。実施例1および2において使用される材料SG-1およびSG-2は、あらかじめ粒状化することなく、配合において直接的に使用することができた。