(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】インシュレータ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/02 20060101AFI20220621BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20220621BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20220621BHJP
B60K 13/04 20060101ALI20220621BHJP
F02B 77/11 20060101ALI20220621BHJP
F01N 13/14 20100101ALI20220621BHJP
【FI】
F16L59/02
B32B15/04 Z
B62D25/20 G
B60K13/04 Z
F02B77/11 Z
F01N13/14
(21)【出願番号】P 2018004854
(22)【出願日】2018-01-16
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】山川 勇人
(72)【発明者】
【氏名】江草 俊顕
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-519710(JP,A)
【文献】特開2013-046930(JP,A)
【文献】特開平08-103835(JP,A)
【文献】特開昭56-080332(JP,A)
【文献】特開2001-079691(JP,A)
【文献】特開2001-099113(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0238276(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/02
B32B 15/04
B62D 25/20
B60K 13/04
F02B 77/11
F01N 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル状の第1本体部及び当該第1本体部に形成された第1孔部を有する第1金属体と、
該第1金属体の上記第1本体部に沿って配設されるシート状の吸音遮熱体と、
上記第1金属体に組み付けられ、当該第1金属体に組み付けた状態で上記吸音遮熱体を覆うパネル状の第2本体部及び当該第2本体部に形成された第2孔部を有する第2金属体とを備え、
上記第1本体部及び上記第2本体部のいずれか一方の外周縁部には、折り返されて上記第1本体部及び上記第2本体部のいずれか一方との間で上記第1本体部及び上記第2本体部のいずれか他方を挟み込むヘムフランジ部が設けられ、
上記第1本体部、上記第2本体部及び上記ヘムフランジ部が重なり合って形成される重合部には、一方の面に凹部が形成されるとともに当該凹部に対応する凸部が他方の面に形成されるように重合方向に押圧変形させた変形部が設けられ、
上記第1金属体と上記第2金属体とは、当該第1金属体における上記第1孔部と上記第2金属体における上記第2孔部とが対応する
とともにU字状の断面をなすよう
に重なりあっており、
上記変形部は、
上記U字状の断面において上記第1孔部及び上記第2孔部に対応する位置
である両孔部に近接した位置に設けられていることを特徴とするインシュレータ。
【請求項2】
請求項1に記載のインシュレータにおいて、
上記凹部は、上記第1本体部及び上記第2本体部の外周縁部に沿って延びる溝形状をなし、
上記凸部は、上記凹部に対応する突条形状をなしていることを特徴とするインシュレータ。
【請求項3】
請求項1に記載のインシュレータにおいて、
上記凹部は、当該凹部の開口側から見て点形状をなし、
上記凸部は、上記凹部に対応する突起形状をなしていることを特徴とするインシュレータ。
【請求項4】
第1金属体のパネル状をなすとともに第1孔部が形成された第1本体部及び第2金属体のパネル状をなすとともに第2孔部が形成された第2本体部のいずれか一方に沿うようにシート状の吸音遮熱体を配設した後、上記第1本体部及び上記第2本体部のいずれか他方が上記吸音遮熱体を覆うように、且つ、上記第1孔部と上記第2孔部とが互いに対応する
ととともにU字状の断面をなすように上記第1金属体と上記第2金属体とを重ね合わせ、
しかる後、上記第1本体部及び上記第2本体部のいずれか一方の外周縁部に設けられたヘムフランジ部を折り返して上記第1本体部及び上記第2本体部のいずれか一方との間に上記第1及び第2本体部のいずれか他方を挟み込むとともに、上記第1本体部、上記第2本体部及び上記ヘムフランジ部が重なり合って形成される重合部を一方の面に凹部が形成されるとともに当該凹部に対応する凸部が他方の面に形成されるように重合方向に押圧変形させて変形部を
上記U字状の断面において上記第1孔部及び上記第2孔部に対応する位置
である両孔部に近接した位置に形成することを特徴とするインシュレータの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のインシュレータの製造方法において、
上記ヘムフランジ部を折り返す折返具には、折返方向に突出する突出部が設けられ、該突出部は、上記折返具が上記ヘムフランジ部を折り返すと同時に上記重合部をその重合方向に変形させて上記変形部を形成するよう構成されていることを特徴とするインシュレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両に組み付けられる遮熱及び吸音対策用のインシュレータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1に開示されているインシュレータは、防音及び遮熱を目的として車両下部におけるフロアパン下面とマフラーとの間に配設されている。上記インシュレータは、アルミニウム合金材からなるパネル状の第1金属体と、該第1金属体のフロアパン側に配設されたシート状の吸音遮熱体と、該吸音遮熱体のフロアパン側に配設されたアルミニウム合金材からなるフィルム状の第2金属体とを備え、第1金属体の外周縁部に所定の間隔をあけて設けられた複数のヘムフランジ部を折り返すとともにこのヘムフランジ部と第1金属体の外周部分とで吸音遮熱体の外周部分と第2金属体の外周部分とを同時に挟み込むことにより、第1金属体、吸音遮熱体及び第2金属体を一体にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の如きインシュレータは、板状部分が三重になった重合部を複数作ることにより組み立てられるとともに各重合部の重合方向がほぼ同一方向になっている。したがって、組み立てられた後、次工程に搬送する途中や、或いは、被組付体に組み付ける作業時等において、不意に第1又は第2金属体に対して重合部の重合方向と交差する方向に力が作用すると、第1金属体と第2金属体とが互いに滑って第1金属体に対する第2金属体の相対位置がずれてしまい、例えば、第1金属体及び第2金属体の互いに対応する位置に形成された取付用の孔がインシュレータの被取付体への取付時にずれてしまうといった不具合が発生してしまう。
【0005】
これを回避するために、第1金属体の外周部分と第2金属体の外周部分とを溶接により一体にすることが考えられる。
【0006】
しかし、特許文献1の如きインシュレータを構成する第1及び第2金属体は、車両重量が増加しないように、例えば、板厚が1mm以下の金属板で形成されるのが一般的である。したがって、第1金属体の外周部分と第2金属体の外周部分とを溶接で繋ぐ場合、溶接時に発生する熱が起因となって第1及び第2金属体の全体が熱変形を起こしてしまい、ひいては、完成後のインシュレータの外観精度が低下してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、組立後に各部品同士の位置関係が変わることなく、しかも、外観精度の優れたインシュレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、第1及び第2金属体を重ね合わせたときの重合部分に変形部を形成するようにしたことを特徴とする。
【0009】
すなわち、第1の発明では、パネル状の第1本体部及び当該第1本体部に形成された第1孔部を有する第1金属体と、該第1金属体の上記第1本体部に沿って配設されるシート状の吸音遮熱体と、上記第1金属体に組み付けられ、当該第1金属体に組み付けた状態で上記吸音遮熱体を覆うパネル状の第2本体部及び当該第2本体部に形成された第2孔部を有する第2金属体とを備え、上記第1本体部及び上記第2本体部のいずれか一方の外周縁部には、折り返されて上記第1本体部及び上記第2本体部のいずれか一方との間で上記第1本体部及び上記第2本体部のいずれか他方を挟み込むヘムフランジ部が設けられ、上記第1本体部、上記第2本体部及び上記ヘムフランジ部が重なり合って形成される重合部には、一方の面に凹部が形成されるとともに当該凹部に対応する凸部が他方の面に形成されるように重合方向に押圧変形させた変形部が設けられ、上記第1金属体と上記第2金属体とは、当該第1金属体における上記第1孔部と上記第2金属体における上記第2孔部とが対応するとともにU字状の断面をなすように重なりあっており、上記変形部は、上記U字状の断面において上記第1孔部及び上記第2孔部に対応する位置である両孔部に近接した位置に設けられていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、上記凹部は、上記第1本体部及び上記第2本体部の外周縁部に沿って延びる溝形状をなし、上記凸部は、上記凹部に対応する突条形状をなしていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第1の発明において、上記凹部は、当該凹部の開口側から見て点形状をなし、上記凸部は、上記凹部に対応する突起形状をなしていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第1金属体のパネル状をなすとともに第1孔部が形成された第1本体部及び第2金属体のパネル状をなすとともに第2孔部が形成された第2本体部のいずれか一方に沿うようにシート状の吸音遮熱体を配設した後、上記第1本体部及び上記第2本体部のいずれか他方が上記吸音遮熱体を覆うように、且つ、上記第1孔部と上記第2孔部とが互いに対応するととともにU字状の断面をなすように上記第1金属体と上記第2金属体とを重ね合わせ、
しかる後、上記第1本体部及び上記第2本体部のいずれか一方の外周縁部に設けられたヘムフランジ部を折り返して上記第1本体部及び上記第2本体部のいずれか一方との間に上記第1及び第2本体部のいずれか他方を挟み込むとともに、上記第1本体部、上記第2本体部及び上記ヘムフランジ部が重なり合って形成される重合部を一方の面に凹部が形成されるとともに当該凹部に対応する凸部が他方の面に形成されるように重合方向に押圧変形させて変形部を上記U字状の断面において上記第1孔部及び上記第2孔部に対応する位置である両孔部に近接した位置に形成することを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第4の発明において、上記ヘムフランジ部を折り返す折返具には、折返方向に突出する突出部が設けられ、該突出部は、上記折返具が上記ヘムフランジ部を折り返すと同時に上記重合部をその重合方向に変形させて上記変形部を形成するよう構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1及び第4の発明では、重なり合う第1金属体の外周部分、第2金属体の外周部分及びヘムフランジ部の互いに対応する部分がそれぞれ重合方向の同じ側に変形しているので、もし仮に、第1又は第2金属体に対して重合部の重合方向と交差する方向に力が作用しても、第1金属体の外周部分、第2金属体の外周部分及びヘムフランジ部の各変形部分が互いに係合し合って第1金属体に対して第2金属体の位置がずれるのを確実に防ぐことができる。また、変形部を押圧変形により形成しているので、変形部の変形の影響が第1金属体の第1本体部及び第2金属体の第2本体部に影響を及ぼしにくい。したがって、完成後のインシュレータの外観精度を向上させることができる。
【0015】
第2の発明では、第1金属体の外周部分、第2金属体の外周部分及びヘムフランジ部の各変形部分における互いに係合する領域が広くなるので、第1金属体に対して第2金属体の位置がずれるのを確実に防ぐことができる。
【0016】
第3の発明では、第2の発明に比べて小さな力で重合部に変形部を形成することができるので、設備を簡素化してコストを抑えることができる。
【0017】
第5の発明では、ヘムフランジ部を折り返して重合部を形成すると同時に変形部が形成されるので、変形部を形成するためだけの工程を別途設ける必要が無く、シンプルで、且つ、低コストな生産ラインにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態1に係るインシュレータの斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係るインシュレータを製造する製造ラインの一部概略断面図であり、治具に2つの金属体と吸音遮熱体とを重ねる直前の状態を示す図である。
【
図5】
図4の後、治具に2つの金属体と吸音遮熱体とを重ね合わせた状態を示す図である。
【
図6】
図5の後、第2金属体のヘムフランジ部を折り返した状態を示す図である。
【
図7】
図6の後、第1本体部、第2本体部及びヘムフランジ部が重なり合う重合部に変形部を形成した状態を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態2に係る
図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0020】
《発明の実施形態1》
図1及び
図2は、本発明の実施形態1に係るインシュレータ1を示す。該インシュレータ1は、排気系部品や駆動系部品から発生する熱や騒音などに対する遮熱及び防音を目的として車両のフロアパンF1下面に取り付けられるものであり、インシュレータ製造装置10で製造されている(
図3参照)。
【0021】
インシュレータ1は、車両前後方向に延びるアルミニウム合金材からなる第1金属体2と、該第1金属体2におけるフロアパンF1側に配設され、グラスウールからなるシート状の吸音遮熱体3と、該吸音遮熱体3のフロアパンF1側に設けられたアルミニウム合金材からなる第2金属体4とを備えている。尚、
図1,2の第1金属体2及び第2金属体4の板厚は、便宜上、誇張して描かれている。
【0022】
第1金属体2は、板厚が0.4~0.6mmで、且つ、1000~3000番台のアルミニウム合金板をプレス成形することにより得たものであり、パネル状をなす第1本体部2aを有している。
【0023】
該第1本体部2aは、車両前後方向に延びる幅広水平面部21と、該幅広水平面部21の車幅方向両端部分から車幅方向両側に進むにつれて次第に下方に位置するよう傾斜する一対の傾斜面部22と、各傾斜面部22における幅広水平面部21の反対側の縁部に沿って延びる帯状水平面部23とを備えている。
【0024】
各傾斜面部22には、上方に向けて張り出すとともに張出面が水平に延びる平面視で円形状の第1座面部22aが車両前後方向に所定の間隔をあけて一対形成され、各第1座面部22aの中央には、第1嵌合孔22bが形成されている。
【0025】
そして、第1本体部2aにおける4つの第1座面部22aに囲まれる部分には、
図2に示すように、多数の貫通孔2bが形成されている。
【0026】
第2金属体4は、板厚が0.4~0.6mmで、且つ、1000~3000番台のアルミニウム合金板をプレス成形することにより得たものであり、パネル状をなす第2本体部4aを有している。
【0027】
該第2本体部4aは、車両前後方向に延びる幅広水平パネル部41と、該幅広水平パネル部41の車幅方向両端部分から車幅方向両側に進むにつれて次第に下方に位置するよう傾斜する一対の傾斜パネル部42と、各傾斜パネル部42における幅広水平パネル部41の反対側の縁部に沿って延びる帯状水平パネル部43とを備えている。
【0028】
各傾斜パネル部42には、上方に向けて張り出すとともに張出面が水平に延びる平面視で円形状の第2座面部42aが第1金属体2における各第1座面部22aに対応するように一対形成され、各第2座面部42aの中央には、第2嵌合孔42bが形成されている。
【0029】
そして、第2金属体4における4つの第2座面部42aに囲まれる部分は、第2金属体4における4つの第2座面部42aより外側の部分に対して上方に段差状に張り出していて、第1金属体2に第2金属体4を組み付けると、第1金属体2における4つの第1座面部22aより外側の部分と第2金属体4における4つの第2座面部42aより外側の部分とが重なり合うとともに、第1金属体2における4つの第1座面部22aに囲まれる部分と第2金属体4における4つの第2座面部42aに囲まれる部分との間に吸音遮熱体3を収容する収容空間層S1が形成されるようになっている。
【0030】
すなわち、第2金属体4の第2本体部4aは、第1金属体2に第2金属体4を組み付けた状態で、第1金属体2の第1本体部2aに沿って配設された吸音遮熱体3を覆うようになっている。
【0031】
第2本体部4aの外周縁部には、6つのヘムフランジ部44が所定の間隔をあけて設けられている。具体的には、各帯状水平パネル部43の車両前後方向に延びる縁部に所定の間隔をあけて一対設けられ、幅広水平パネル部41における車両前側縁部の中央及び車両後側縁部の中央にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0032】
各ヘムフランジ部44は、第1金属体2及び第2金属体4を一体にする前の状態では、
図3に示すように、第2本体部4aとで断面略L字状となるように第2金属体4の裏面側に突出していて、
図4乃至
図7に示すように、第1金属体2側に折り返されて第2本体部4aとの間で第1本体部2aを挟み込むことにより第1金属体2と第2金属体4とを一体にするようになっている。
【0033】
第1本体部2a、第2本体部4a及びヘムフランジ部44が重なり合って形成される重合部5には、
図2に示すように、ヘムフランジ部44側の面(一方の面)に凹部5aが形成されるとともに当該凹部5aに対応する凸部5bが第2本体部4a側の面(他方の面)に形成されるように重合方向に押圧変形させた変形部5cが設けられている。
【0034】
凹部5aは、第1本体部2a及び第2本体部4aの外周縁部に沿って延びる溝形状をなし、凸部5bは、凹部5aに対応する突条形状をなしている。
【0035】
インシュレータ製造装置10は、
図3に示すように、第1金属体2に対する第2金属体4の位置決めが可能な治具6を備えている。
【0036】
該治具6は、フロアに設置された治具本体61を備え、該治具本体61には、第2金属体4を支持可能な複数の支持フレーム62が上方に向かって張り出すように設けられている。
【0037】
第2金属体4の外周部分における各第2座面部42aに対応する部分を支持する各支持フレーム62(以下、支持フレーム62Aと呼ぶ)の上面には、第1金属体2の第1嵌合孔22b及び第2金属体4の第2嵌合孔42bに嵌合可能な位置決めピンP1が突設されていて、第2金属体4の裏面を上向きにした姿勢で各位置決めピンP1が各第2嵌合孔42bに嵌合するように第2金属体4を治具本体61に載置するとともに第2金属体4の第2本体部4aに吸音遮熱体3を載置し、且つ、第1金属体2の表面を下向きにした姿勢で各位置決めピンP1が各第1嵌合孔22bに嵌合するように第1金属体2を治具本体61に載置することにより、第2金属体4に第1金属体2を組み付けた状態で第1金属体2と第2金属体4との位置決めがなされるようになっている。
【0038】
また、各支持フレーム62A上面の外周寄りの位置には、上方に開口する凹状をなす干渉回避部62aが形成されている。
【0039】
さらに、各支持フレーム62には、第2金属体4のヘムフランジ部44を折り返す折返フレーム7(折返具)が設けられている。
【0040】
各折返フレーム7は、略上下方向に延びるブロック形状をなしていて、治具本体61に載置された状態における第2金属体4の各ヘムフランジ部44の外側に位置している。
【0041】
各折返フレーム7は、治具本体61に載置された状態の第1金属体2及び第2金属体4の外周縁部に沿って延びる回動軸C1周りに図示しないカム機構及びシリンダによって回動可能になっていて、第1金属体2及び第2金属体4を治具本体61に載置した状態で各折返フレーム7を治具6の内側に回動させると、各ヘムフランジ部44が折り返されて各ヘムフランジ部44と第2本体部4aとの間に第1本体部2aが挟み込まれ、第1本体部2a、第2本体部4a及びヘムフランジ部44が重なり合って重合部5が形成されるようになっている。
【0042】
折返フレーム7の上部には、折返方向に突出する突出部7aが突設され、該突出部7aは、折返フレーム7を折返方向に回動させた際、干渉回避部62aに対応する位置となっている。
【0043】
そして、突出部7aは、
図4乃至
図7に示すように、折返フレーム7がヘムフランジ部44を折り返して重合部5を形成すると同時に重合部5をその重合方向に変形させて変形部5cを形成するよう構成され、これにより、第1金属体2及び第2金属体4が各ヘムフランジ部44によって一体になったインシュレータ1が得られるようになっている。
【0044】
次に、本発明の実施形態1に係るインシュレータ製造装置10を用いたインシュレータ1の製造について詳述する。
【0045】
まず、
図3及び
図4に示すように、各ヘムフランジ部44が折り返される前の状態の第2金属体4の裏面側を上向きにした姿勢で各位置決めピンP1が各第2嵌合孔42bに嵌合するように第2金属体4を治具本体61に載置する。
【0046】
次に、治具本体61に載置した第2金属体4の第2本体部4aにシート状の吸音遮熱体3を載置する。
【0047】
次いで、第1金属体2の表面側を下向きにした姿勢で各位置決めピンP1が各第1嵌合孔22bに嵌合するように、且つ、第1本体部2aが吸音遮熱体3を覆うように第1金属体2を第2金属体4に重ね合わせる。すると、第1金属体2の第1本体部2aと第2金属体4の第2本体部4aとの間に収容空間層S1が形成され、該収容空間層S1に吸音遮熱体3が収容された状態になる。このとき、
図5に示すように、第2本体部4aの外周部分に第1本体部2aの外周部分が重なった状態になる。
【0048】
しかる後、各折返フレーム7を治具6の内側に回動させると、
図6に示すように、各折返フレーム7は、各ヘムフランジ部44を折り返して当該各ヘムフランジ部44と第2本体部4aとで第1本体部2aを挟み込み、第1本体部2a、第2本体部4a及びヘムフランジ部44が重なり合う重合部5を形成する。
【0049】
その後、さらに各折返フレーム7を治具6の内側に回動させる。すると、
図7に示すように、突出部7aが重合部5をその重合方向に押圧変形させて変形部5cを形成する。当該変形部5cは、重合部5のヘムフランジ部44側の面に凹部5aが形成されるとともに、凹部5aに対応する凸部5bが重合部5の第2本体部4a側の面に形成された形状になっている。
【0050】
以上より、本発明の実施形態1によると、重なり合う第1金属体2の外周部分、第2金属体4の外周部分及びヘムフランジ部44の互いに対応する部分がそれぞれ重合方向の同じ側に変形しているので、もし仮に、第1金属体2又は第2金属体4に対して重合部5の重合方向と交差する方向に力が作用しても、第1金属体2の外周部分、第2金属体4の外周部分及びヘムフランジ部44の各変形部分が互いに係合し合って第1金属体2に対して第2金属体4の位置がずれるのを確実に防ぐことができる。
【0051】
また、変形部5cを押圧変形により形成しているので、変形部5cの変形の影響が第1金属体2の第1本体部2a及び第2金属体4の第2本体部4aに影響を及ぼしにくい。したがって、完成後のインシュレータ1の外観精度を向上させることができる。
【0052】
さらに、変形部5cにおける凹部5aが溝形状をなす一方、凸部5bが突条形状をなしているので、第1金属体2の外周部分、第2金属体4の外周部分及びヘムフランジ部44の各変形部分における互いに係合する領域が広くなり、第1金属体2に対する第2金属体4の位置がずれるのを確実に防ぐことができる。
【0053】
それに加えて、本発明のインシュレータ製造装置10では、折返フレーム7がヘムフランジ部44を折り返して重合部5を形成すると同時にヘムフランジ部44に設けられた突出部7aによって変形部5cが形成されるので、変形部5cを形成するためだけの工程を別途設ける必要が無く、シンプルで、且つ、低コストな生産ラインにすることができる。
【0054】
尚、本発明の実施形態1では、重合部5のヘムフランジ部44側の面に凹部5aが形成されるとともに重合部5の第2本体部4a側の面に凸部5bが形成されるように重合方向に押圧変形させて重合部5に変形部5cが形成されているが、重合部5の第2本体部4a側に凹部5aが形成されるとともに重合部5のヘムフランジ部44側に凸部5bが形成されるように重合方向に押圧変形させて重合部5に変形部5cを形成してもよい。
【0055】
また、本発明の実施形態1では、収容空間層S1にグラスウールからなる吸音遮熱体3を収容しているが、その他の種類の材質からなる吸音遮熱体3を収容するようにしてもよい。
【0056】
《発明の実施形態2》
図8及び
図9は、本発明の実施形態2に係るインシュレータ1を示す。この実施形態2では、第1金属体2にヘムフランジ部24を設けている点と吸音遮熱体3が2層になっている点とが実施形態1と異なっているだけで、その他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0057】
実施形態2における第1金属体2の外周縁部には、6つのヘムフランジ部24が所定の間隔をあけて設けられている。具体的には、各帯状水平面部23の車両前後方向に延びる縁部に所定の間隔をあけて一対設けられ、幅広水平面部21における車両前側縁部の中央及び車両後側縁部の中央にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0058】
各ヘムフランジ部24は、第1金属体2及び第2金属体4を一体にする前の状態では、第1本体部2aとで断面略L字状となるように第1金属体2の表面側に突出していて、第2金属体4側に折り返されて第1本体部2aとの間で第2本体部4aを挟み込むことにより第1金属体2と第2金属体4とを一体にするようになっている。
【0059】
第1本体部2a、第2本体部4a及びヘムフランジ部24が重なり合って形成される実施形態2の重合部5には、
図9に示すように、ヘムフランジ部24側の面(一方の面)に凹部5aが形成されるとともに当該凹部5aに対応する凸部5bが第1本体部2a側の面(他方の面)に形成されるように重合方向に押圧変形させた変形部5cが設けられている。
【0060】
尚、実施形態2における第2金属体4の外周縁部には、実施形態1のようにヘムフランジ部44は設けられていない。
【0061】
実施形態2の吸音遮熱体3は、
図9に示すように、グラスウールからなる第1層3aと、ガラスクロスからなる第2層3bとが重なった構造になっている。
【0062】
尚、実施形態2に係るインシュレータ1の製造方法は、第1金属体2に設けられた各ヘムフランジ部24を折り返して当該各ヘムフランジ部24と第1本体部2aとで第2本体部4aを挟み込んで第1金属体2と第2金属体4とを一体にする点を除いて実施形態1と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0063】
以上より、本発明の実施形態2によると、第1金属体2と第2金属体4とを一体にする各ヘムフランジ部24を第1金属体2に設けても実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0064】
尚、本発明の実施形態1,2では、変形部5cにおける凹部5aが溝形状をなすとともに凸部5bが突条形状をなしているが、これに限らず、変形部5cの凹部5aが当該凹部の開口側から見て点形状をなすとともに凸部5bが突起形状をなしていてもよい。そうすると、凹部5aが溝形状をなすとともに凸部5bが突条形状をなす変形部5cに比べて小さな力で重合部5に変形部5cを形成することができるので、設備を簡素化してコストを抑えることができる。
【0065】
また、本発明の実施形態1,2では、ヘムフランジ部24,44を折り返す作業と重合部5に変形部5cを形成する作業とを同一工程で行っているが、別工程で行うようにしてもよい。
【0066】
また、本発明の実施形態1,2では、第2金属体4における4つの第2座面部42aに囲まれる部分が第2金属体4における4つの第2座面部42aより外側の部分に対して上方に段差状に張り出すことで、第1金属体2の第1本体部2aとの間に収容空間層S1を形成しているが、これに限らず、第1金属体2における4つの第1座面部22aに囲まれる部分が第1金属体2における4つの第1座面部22aより外側に部分に対して下方に段差上に張り出すことで第2金属体4の第2本体部4aとの間に収容空間層S1を形成するような構造であってもよい。
【0067】
また、本発明の実施形態1,2では、第1金属体2及び第2金属体4をアルミニウム合金材から形成しているが、これに限らず、他の種類の素材から形成してもよい。
【0068】
また、本発明の実施形態1,2では、6つのヘムフランジ部24,44で第1金属体2及び第2金属体4を一体にしているが、2~5つのヘムフランジ部24,44で第1金属体2及び第2金属体4を一体にしてもよいし、7つ以上のヘムフランジ部24,44で第1金属体2及び第2金属体4を一体にしてもよい。
【0069】
また、本発明の実施形態2の吸音遮熱体3は、異なる種類の材料からなる2つの層が重なり合う構造になっているが、異なる種類の材料からなる3つ以上の層が重なり合う構造であってもよい。
【0070】
また、本発明の実施形態2では、重合部5のヘムフランジ部24側の面に凹部5aが形成されるとともに重合部5の第1本体部2a側の面に凸部5bが形成されるように重合方向に押圧変形させて重合部5に変形部5cが形成されているが、重合部5の第1本体部2a側に凹部5aが形成されるとともに重合部5のヘムフランジ部24側に凸部5bが形成されるように重合方向に押圧変形させて重合部5に変形部5cを形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、例えば、車両に組み付けられる遮熱及び吸音対策用のインシュレータ及びその製造方法に適している。
【符号の説明】
【0072】
1 インシュレータ
2 第1金属体
2a 第1本体部
3 吸音遮熱体
4 第2金属体
4a 第2本体部
5 重合部
5a 凹部
5b 凸部
5c 変形部
7 折返フレーム(折返具)
7a 突出部
24 ヘムフランジ部
44 ヘムフランジ部