(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】パーマネント方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20220621BHJP
A61Q 5/04 20060101ALI20220621BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q5/04
A61Q5/12
(21)【出願番号】P 2018097563
(22)【出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】516184643
【氏名又は名称】立川 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100191204
【氏名又は名称】大塚 春彦
(72)【発明者】
【氏名】立川 秀樹
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-166341(JP,A)
【文献】特開2011-088878(JP,A)
【文献】特許第5801778(JP,B2)
【文献】特開2010-090038(JP,A)
【文献】特開2018-035074(JP,A)
【文献】特開2014-043403(JP,A)
【文献】特開2003-335641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪に
pH10.5~12.0の強アルカリ性電解水を塗布する強アルカリ性電解水塗布工程と、
前記強アルカリ性電解水を塗布した毛髪に
該強アルカリ性電解水を浸透させる強アルカリ性電解水浸透工程と、
前記強アルカリ性電解水を浸透させた毛髪をヘアアイロンによって所望の形状に加熱変形する加熱変形工程と、
前記加熱変形させた毛髪に
pH2.0~3.0の強酸性電解水を塗布する強酸性電解水塗布工程と、
前記強酸性電解水を塗布した毛髪に
該強酸性電解水を浸透させる強酸性電解水浸透工程と、
を有することを特徴とする
化学薬剤を使用しないパーマネント方法。
【請求項2】
強酸性電解水塗布工程において、毛髪に強酸性電解水を塗布する前、後又は同時に、
リンス、コンディショナー、及びヘアクリームから選ばれる少なくとも1種の酸性毛髪用化粧料を塗布することを特徴とする請求項1記載の
化学薬剤を使用しないパーマネント方法。
【請求項3】
強酸性電解水及び酸性毛髪用化粧料を混合して同時に塗布することを特徴とする請求項2記載の化学薬剤を使用しないパーマネント方法。
【請求項4】
強アルカリ性電解水浸透工程と加熱変形工程との間に、毛髪を乾燥する乾燥工程を有することを特徴とする請求項1~
3のいずれか記載の
化学薬剤を使用しないパーマネント方法。
【請求項5】
ヘアアイロンの加熱温度が、150~230℃であることを特徴とする請求項1~
4のいずれか記載の
化学薬剤を使用しないパーマネント方法。
【請求項6】
ヘアアイロンの毛髪を加熱する時間が、1.0~10.0秒であることを特徴とする請求項1~
5のいずれか記載の
化学薬剤を使用しないパーマネント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水を用いたパーマネント方法に係り、詳しくは、頭皮や環境に悪影響を与える可能性のある化学薬剤を使用しない、電解水を用いたアイロンパーマ(水アイロンパーマ)、アイパー(水アイパー)等の施術方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、パーマネント方法としては、パーマネントウエーブ剤などの化学薬剤を用いる方法が一般的に用いられている。
【0003】
このようなパーマネント方法においては、補助剤として、電解水を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、電解水が有する酸化還元力によって、毛髪の塩結合の切断、再結合がなされるとされているが、電解水をパーマネント剤として用いるのではなく、補助剤として用いることが開示されているにすぎない。
【0004】
また、特許文献2では、この特許文献1に記載の電解水による毛髪の塩結合の切断、再結合について検証がなされているが、この切断、再結合が効率的になされているとは考えがたいと、結論づけられている。具体的には、一般的なパーマネント方法の以下の手順、(1)毛髪をカットする(2)シャンプーをする(3)第1液をかけて数分待つ(4)第2液をかけて数分待つ(5)お湯でパーマ液を洗い流す(6)トリートメントをする(7)ブローをしてかわかす、という手順において、第1液及び第2液の代わりに電解水を用いた検証実験が行われているが、結果としてパーマがかかる様子が確認できなかったと記載されている。また、これ以上の検証は行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-90038号公報
【文献】特開2014-43403号公報(段落[0005]~[0007])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、電解水を用いた、化学薬剤を使用しないパーマネント方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、頭皮や環境に優しく安心かつ安全なパーマネント方法について検討する中で、頭皮や環境に悪影響を与える可能性のある化学薬剤を使用せずに、頭皮や環境に優しく安心かつ安全な電解水のみを用いることを着想した。本発明者は、さらに検討を進めた結果、電解水を毛髪に十分に浸透させること、ヘアアイロンを用いて毛髪の加熱変形を行うことなどの所望の処理を行うことにより、化学薬剤を用いた場合と同等のパーマネントを実現できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]毛髪に強アルカリ性電解水を塗布する強アルカリ性電解水塗布工程と、
前記強アルカリ性電解水を塗布した毛髪に強アルカリ性電解水を浸透させる強アルカリ性電解水浸透工程と、
前記強アルカリ性電解水を浸透させた毛髪をヘアアイロンによって所望の形状に加熱変形する加熱変形工程と、
前記加熱変形させた毛髪に強酸性電解水を塗布する強酸性電解水塗布工程と、
前記強酸性電解水を塗布した毛髪に強酸性電解水を浸透させる強酸性電解水浸透工程と、
を有することを特徴とするパーマネント方法。
【0009】
[2]強アルカリ性電解水塗布工程の前に、毛髪を洗髪する洗髪工程を有することを特徴とする[1]記載のパーマネント方法。
[3]洗髪工程と強アルカリ性電解水浸透工程との間に、毛髪を乾燥する乾燥工程を有することを特徴とする[2]記載のパーマネント方法。
[4]強アルカリ性電解水浸透工程と加熱変形工程との間に、毛髪を乾燥する乾燥工程を有することを特徴とする[1]~[3]のいずれか記載のパーマネント方法。
[5]強酸性電解水塗布工程において、毛髪に強酸性電解水を塗布する前、後又は同時に、酸性毛髪用化粧料を塗布することを特徴とする[1]~[4]のいずれか記載のパーマネント方法。
[6]酸性毛髪用化粧料が、リンス、コンディショナー、及びヘアクリームから選ばれる少なくとも1種の化粧料であることを特徴とする[5]記載のパーマネント方法。
[7]強アルカリ性電解水浸透工程において、毛髪を加温する加温処理を行うことを特徴とする[1]~[6]のいずれか記載のパーマネント方法。
【0010】
[8]強アルカリ性電解水及び/又は強酸性電解水が、電解促進剤を含有する水の電気分解水であることを特徴とする[1]~[7]のいずれか記載のパーマネント方法。
[9]強アルカリ性電解水のpHが、10.5~12.0であることを特徴とする[1]~[8]のいずれか記載のパーマネント方法。
[10]強酸性電解水のpHが、2.0~3.0であることを特徴とする[1]~[9]のいずれか記載のパーマネント方法。
[11]ヘアアイロンの加熱温度が、150~230℃であることを特徴とする[1]~[10]のいずれか記載のパーマネント方法。
[12]ヘアアイロンの毛髪を加熱する時間が、1.0~10.0秒であることを特徴とする[1]~[11]のいずれか記載のパーマネント方法。
【0011】
[13]容器に収容された強アルカリ性電解水と、容器に収容された強酸性電解水と、ヘアアイロンとを具備することを特徴とする出張訪問用パーマネント施術キット。
[14]電解水製造装置と、ヘアアイロンとを具備することを特徴とする出張訪問用パーマネント施術キット。
[15]さらに酸性毛髪用化粧料を具備することを特徴とする[13]又は[14]記載の出張訪問用パーマネント施術キット。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパーマネント方法によれば、頭皮や環境に悪影響を与える可能性のある化学薬剤を用いることなく、頭皮や環境に優しく安心かつ安全にパーマネント施術を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパーマネント方法の工程図である。
【
図2】本発明のパーマネント方法により施術したウィッグの1か月後の写真(実施例1)である。
【
図3】本発明のパーマネント方法により施術した人の施術直後の写真(実施例2)である。
【
図4】本発明のパーマネント方法により施術した人の4か月後の写真(実施例2)である。
【
図5】本発明のパーマネント方法により施術した人の施術直後の写真(実施例3)である。
【
図6】本発明のパーマネント方法により施術した人の5か月後の写真(実施例3)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のパーマネント方法は、毛髪に強アルカリ性電解水を塗布する強アルカリ性電解水塗布工程と、強アルカリ性電解水を塗布した毛髪に強アルカリ性電解水を浸透させる強アルカリ性電解水浸透工程と、強アルカリ性電解水を浸透させた毛髪をヘアアイロンによって所望の形状に加熱変形する加熱変形工程と、加熱変形させた毛髪に強酸性電解水を塗布する強酸性電解水塗布工程と、強酸性電解水を塗布した毛髪に強酸性電解水を浸透させる強酸性電解水浸透工程とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明のパーマネント方法は、上記工程以外の工程を有していてもよい。例えば、強アルカリ性電解水塗布工程の前に洗髪工程を有することが好ましい。また、洗髪工程と強アルカリ性電解水浸透工程との間に、毛髪を乾燥する乾燥工程(洗髪後乾燥工程)を有することが好ましい。さらに、強アルカリ性電解水浸透工程と加熱変形工程との間に、毛髪を乾燥する乾燥工程(強アルカリ性電解水浸透後乾燥工程)を有することが好ましい。
【0016】
本発明の「パーマネント」には、毛先にウエーブが形成されるアイロンパーマの他、毛先にウエーブが形成されないアイパーを含む。
【0017】
以下、本発明のパーマネント方法について詳しく説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るパーマネント方法は、洗髪工程(S1)、洗髪後乾燥工程(S2)、強アルカリ性電解水塗布工程(S3)、強アルカリ性電解水浸透工程(S4)、強アルカリ性電解水浸透後乾燥工程(S5)、加熱変形工程(S6)、強酸性電解水塗布工程(S7)、及び強酸性電解水浸透工程(S8)を順次有している。
【0018】
<洗髪工程>
洗髪工程(S1)は、強アルカリ性電解水塗布工程前に毛髪の汚れを十分に除去する工程である。この工程により、強アルカリ性電解水の浸透を妨げる毛髪表面の汚れや油分を除去することができる。したがって、強アルカリ性電解水の毛髪への浸透がより促進され、短時間で施術が可能となると共に、パーマネントウエーブの仕上がりがよりよくなる。本工程において使用するシャンプー剤は、強アルカリ性電解水の毛髪への浸透を妨げず促進させる点から、中性のものやアルカリ性のものが好ましく、アルカリ性のものがより好ましい。
【0019】
<洗髪後乾燥工程>
洗髪後乾燥工程(S2)は、強アルカリ性電解水塗布工程に先立って、洗髪工程において濡れた毛髪を乾燥させる工程である。これにより、次工程の強アルカリ性電解水塗布工程における強アルカリ性電解水を毛髪に十分に浸透させることができる。用いるヘアドライヤーは、イオン又はオゾンを付与しないもの(又は付与しない設定)が好ましい(本発明のすべての工程において同様)。
【0020】
ここで、皮脂の分泌が少ない高齢者や、活発な活動を行わない入院患者等に対しては、強アルカリ性電解水塗布工程の前(当日)に行われる洗髪工程(及びその後の乾燥工程)を省略することもできる。本発明のパーマネント方法は、パーマネント施術中、施術後も洗髪の必要がないので、従来困難であった老人ホームや病院への出張訪問によるパーマンネントの施術も容易に行うことができる。
【0021】
<強アルカリ性電解水塗布工程>
強アルカリ性電解水塗布工程(S3)は、毛髪に強アルカリ性電解水を塗布する工程である。塗布方法としては、被施術者の毛髪に電解水を塗布できる方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、素手で直接塗布する方法や、ハケ、スプレー、アプリケーター等の器具を用いて塗布する方法を挙げることができる。この工程は、複数回繰り返すことが好ましい。本工程においては、化学薬剤に比べて安全な電解水を使用し、必ずしも使い捨てのゴム手袋等を用いる必要がないことから、経済的であり、環境にもよい。
【0022】
本工程で用いる強アルカリ性電解水の製造方法は、特に制限されるものではなく、電解促進剤を含有する水を電気分解する方法が好ましく、安全性や入手容易性の観点から、食塩水(塩化ナトリウム水溶液)を電気分解する方法が好ましい。電解水を製造する装置としては、公知の電解水製造装置を用いることができる。
【0023】
強アルカリ性電解水のpHとしては、10.5~12.0であることが好ましく、11.0~11.6であることがより好ましい。pHが10.5未満であると、持続性のある十分なパーマネントウエーブを得ることができないおそれがあり、pHが12.0を超えると、頭皮を痛めるおそれがある。
【0024】
<強アルカリ性電解水浸透工程>
強アルカリ性電解水浸透工程(S4)は、強アルカリ性電解水を塗布した毛髪に強アルカリ性電解水を浸透させる工程である。この工程により、毛髪表面に塗布された強アルカリ性電解水が、毛髪内に浸透して、毛髪内部の水素結合、塩(イオン)結合、又はシスチン結合を切断すると推察される。浸透のために放置する時間としては、10分以上であることが好ましく、15分以上であることがより好ましく、30分以上であることがさらに好ましい。放置時間の上限は、特に制限はないが、施術効率の点等から、60分程度であることが好ましい。放置する時間とは、強アルカリ性電解水の塗布後、ドライヤーでの乾燥開始までの時間をいう。なお、本強アルカリ性電解水浸透工程において放置する間に顔剃りやカットを行うことができる。
【0025】
本強アルカリ性電解水浸透工程においては、毛髪をラップやアルミホイル等を用いてラッピングして放置することが好ましい。
【0026】
また、本強アルカリ性電解水浸透工程においては、毛髪を加温する加温処理を行うことが好ましい。具体的には、お湯で濡らして絞ったタオルや蒸しタオル等の加温されたタオルを用いて毛髪を包む方法や、ヒーター等の熱源を用いて毛髪を加温する方法を挙げることができる。これにより、強アルカリ性電解水を毛髪により浸透させることができると共に、浸透時間を短縮することができる。
【0027】
本発明の強アルカリ性電解水塗布工程、及び強アルカリ性電解水浸透工程においては、具体的に例えば、毛髪に強アルカリ性電解水を塗布した後、カットを施し、再度、毛髪に強アルカリ性電解水を塗布した後、ラッピングをして顔そりを行い、さらにホットタオルで加温する、といった一連の処理を行うことが好ましい。
【0028】
<強アルカリ性電解水浸透後乾燥工程>
強アルカリ性電解水浸透後乾燥工程(S5)は、加熱変形工程に先立って、毛髪に塗布した強アルカリ性電解水を実質的に完全に乾燥する工程である。これにより、次工程の加熱変形工程におけるヘアアイロンの熱を毛髪に十分に伝えることができる。なお、化学薬剤を用いる従来の方法では、通常、毛髪を7~8割程度乾燥させるが、本発明の方法においては、実質的に完全に乾燥させる。
【0029】
<加熱変形工程>
加熱変形工程(S6)は、強アルカリ性電解水を浸透させた毛髪をヘアアイロンによって所望の形状に加熱変形する工程である。ヘアアイロンとしては、丸型、角型、平型等の各種ヘアアイロンを用いることができる。これにより、アイロンパーマ、アイパー、縮毛矯正等の目的のパーマネント施術を行うことができる。
【0030】
本工程においては、通常の化学薬剤を用いる場合に比して、強めのテンションで変形させることが好ましいことから、ヘアアイロンは、角(エッジ)を有する形状のものが好ましく、多角形の角型ヘアアイロンが特に好ましい。また、ヘアアイロンは、温度調節が可能なものを用いることが好ましい。これにより、被施術者の毛質にかかわらず、より持続性のある十分なパーマネントウエーブを得ることができる。
【0031】
ヘアアイロンの加熱温度(設定温度)としては、150~230℃であることが好ましく、190~215℃であることがより好ましく190~205℃であることがさらに好ましい。また、ヘアアイロンで毛髪を加熱する時間としては、1.0~10.0秒であることが好ましく、1.5~4.0秒であることがより好ましい。この範囲の温度や時間であると、毛髪が焼き切れたり必要以上に傷んだりすることなく、持続性のある十分なパーマネントウエーブを得ることができる。
【0032】
<強酸性電解水塗布工程>
強酸性電解水塗布工程(S7)は、加熱変形させた毛髪に強酸性電解水を塗布する工程である。塗布方法としては、被施術者の毛髪に電解水を塗布できる方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、素手で直接塗布する方法や、ハケ、スプレー、アプリケーター等の器具を用いて塗布する方法を挙げることができる。
【0033】
本工程で用いる強酸性電解水の製造方法は、特に制限されるものではなく、電解促進剤を含有する水を電気分解する方法が好ましく、安全性や入手容易性の観点から、食塩水(塩化ナトリウム水溶液)を電気分解する方法が好ましい。この強酸性電解水は、上記強アルカリ性電解水と同時に製造されるものを用いることが効率的で好ましい。
【0034】
強酸性電解水のpHとしては、2.0~3.0であることが好ましく、2.2~2.7であることがより好ましい。pHが2.0未満であると、頭皮を痛めるおそれがあり、pHが3.0を超えると、パーマネントウエーブの定着(固定)が不十分となるおそれがある。
【0035】
この強酸性電解水を毛髪に塗布する前、後又は同時に、酸性毛髪用化粧料を塗布することが好ましい。特に、同時に塗布することが特に好ましい。すなわち、強酸性電解水及び酸性毛髪用化粧料を混合して塗布することが特に好ましい。これにより、強酸性電解水が毛髪に馴染みやすくなり、強酸性電解水の浸透を促進し、より持続性のあるパーマネントウエーブを得ることが可能となる。酸性毛髪用化粧料としては、リンス、コンディショナー、ヘアクリーム等を例示することができる。
【0036】
<強酸性電解水浸透工程>
強酸性電解水浸透工程(S8)は、強酸性電解水を塗布した毛髪に強酸性電解水を浸透させる工程である。この工程により、毛髪に塗布された強酸性電解水が、毛髪内に浸透して、加熱変形されたパーマネントウエーブが定着(固定)される。浸透のために放置する時間としては、強アルカリ性電解水の放置時間より短くてよく、例えば、10秒以上であればよい。なお、放置する時間とは、強酸性電解水の塗布後、ドライヤーでの乾燥開始までの時間をいう。本発明の強酸性電解水浸透工程においては、化学薬剤を用いた場合と比較して長時間放置する必要がないため、短時間で施術することができる。
【0037】
本強酸性電解水浸透工程においては、強アルカリ性電解水浸透工程と同様に、毛髪のラッピングや加温処理を行ってもよいが、必ずしも必要はない。
【0038】
以上説明したとおり、本発明のパーマネント方法によれば、頭皮や環境に影響を与える可能性のある化学薬剤を用いることなく、電解水を用いることによって、安心かつ安全に、化学薬剤を用いた場合と同等の持続性のあるパーマネントウエーブを得ることができる。また、本発明のパーマネント方法は、化学薬剤を使用せず電解水を使用するため、電解水塗布の後に洗髪を行う必要がなく、簡単かつ短時間に施術を行うことができる。また、例えば、老人ホームや病院など、洗髪の難しい場所においても、容易にパーマネント施術を行うことができる。さらに、本発明のパーマネント方法は、化学薬品を使用しないため、頭皮に与えるダメージも小さく、将来的な薄毛等への不安も解消され、薄毛の不安のある人等もパーマネント施術を受けやすくなる。
【0039】
続いて、本発明の出張訪問用パーマネント施術キットについて説明する。
本発明の第1の出張訪問用パーマネント施術キットは、容器に収容された強アルカリ性電解水と、容器に収容された強酸性電解水と、ヘアアイロンとを具備するものであり、さらに酸性毛髪用化粧料を具備することができる。これらの加えて、ドライヤー、ラップ、アルミホイル、予備用電解水等のその他の道具を具備してもよい。
なお、電解水製造装置を用いて製造した電解水は、所定期間、効果を保持可能なことから、店舗で電解水を製造し、容器に収容して持ち運ぶことができる。
【0040】
他方、本発明の第2の出張用パーマネント施術キットは、電解水製造装置とヘアアイロンとを具備する。この場合、上記本発明のキットで例示した他の道具をさらに具備することが好ましく、それ以外のものとして電気分解のための食塩等の電解促進剤を具備することが好ましい。
【0041】
本発明のパーマネント施術キットは、訪問先において本発明のパーマネント方法による施術を行うのに使用することができる。すなわち、本発明のパーマネント施術キットを、老人ホームや病院などの訪問先に持参し、その訪問先において、本発明のパーマネント施術キットを用いて本発明のパーマネント方法を実施することができる。
【0042】
具体的に、第1の出張訪問用パーマネント施術キットの使用方法の一例を説明すると、まず、店舗において、水道水及び食塩等の電解促進剤を電解水製造装置に投入して、強アルカリ性電解水及び強酸性電解水を製造し、この製造した強アルカリ性電解水及び強酸性電解水をそれぞれスプレイヤーに充填する(第2の出張用パーマネント施術キットの場合は、この作業を訪問先の現場で行う)。これにより、容器入りの強アルカリ性電解水と、容器入りの強酸性電解水と、ヘアアイロンとを具備する出張訪問用キットとする。
【0043】
続いて、訪問先にて、スプレイヤーに充填された強アルカリ性電解水及び強酸性電解水(必要に応じて酸性毛髪用化粧料)、並びにヘアアイロンを用いて本発明のパーマネント方法による施術を行う。上記のように、本発明のパーマネント方法は必ずしも洗髪が必要ないことから、本発明のパーマネント施術キットは、洗髪の難しい訪問先に持参して使用する出張訪問用として特に有用である。
【0044】
以下、上述したパーマネント方法の具体的な実施態様について、実施例に基づき説明する。
【0045】
[実施例1]
[ウィッグを用いた形状記憶試験]
ストレートの髪質の人毛100%のウィッグを用いて、本発明のパーマネント方法による毛髪の形状記憶試験を行った。具体的には、以下の手順で行った。
【0046】
まず、ウィッグから毛髪を4束取り出した(
図2参照)。各毛髪束について、pH11.3の強アルカリ性電解水を塗布し、40分間放置した後、イオンやオゾンが発生しないヘアドライヤーにて乾燥させた。次に、ヘアアイロンを用いて、200℃、3秒程度で加熱変形させた後、pH2.5の強酸性電解水を塗布し、自然乾燥を行った。なお、強アルカリ性電解水及び強酸性電解水は、市販の電解水生成装置を用いて食塩水から製造した。
【0047】
施術後、1か月間に洗髪を15回程度行った。施術から1か月経過後のウィッグを示す写真を
図2(I)に示す。
図2(I)の右側2つ(A1、A2)については、A社の角型ヘアアイロンを用いて加熱変形を行ったものであり、
図2(I)の左側2つ(B1、B2)については、B社の角型ヘアアイロンを用いて加熱変形を行ったものである。また、A1及びB1は、同じ巻き方でパーマされたものあり、A2及びB2は、同じ巻き方でパーマされたものである。
【0048】
この施術から1ヶ月経過したウィッグの毛髪に対して、
図2(II)に示すように、指先で毛髪を巻き込みながら、通常のスタイリングと同様に、ドライヤーで5秒程度、熱を与えた。その結果を
図2(III)に示す。
【0049】
図2(III)に示すように、本発明のパーマネント方法によって施術された毛髪A1、A2、B1、及びB2は、1か月経過後もパーマの形状が容易に復元され、形状記憶が維持されていた。すなわち、本発明の方法によるパーマネントウエーブは、毛髪内部の構造変化によるものであり、化学薬剤を用いる場合と同等のパーマネントウエーブを得ることができることがわかった。
【0050】
[実施例2]
[実際の人の毛髪を対象とした形状記憶試験]
被施術者A(40代男性)に、本発明のパーマネント方法によるパーマネント施術(アイロンパーマ)を行った。具体的には、以下の手順で行った。
【0051】
まず、被施術者Aの毛髪を洗髪し乾燥させた後に、pH11.2の強アルカリ性電解水を毛髪に塗布した。続いて、カットを施し、再度、毛髪に強アルカリ性電解水を塗布した。その後、毛髪にラッピングをして顔そりを行い、さらに45℃程度のお湯で濡らして絞ったホットタオルを毛髪に巻き、5分程度放置した後に、ヘアドライヤーを用いて乾燥させた。続いて、エッジのある角型のヘアアイロン(設定温度205℃)を用いて、アイロンパーマを施術した。続いて、少量の酸性リンスを手に取り、pH2.5の強酸性電解水を混合して、毛髪に塗布した。15秒程度放置した後、ヘアドライヤーにて乾燥させた。
図3に、施術直後の毛髪を示す写真を示し、
図4に、施術後4か月後の毛髪を示す写真を示す。なお、4か月の間に1回カットを行っている。
【0052】
[実施例3]
被施術者B(60代男性)に、実施例2と同様に、本発明のパーマネント方法によるパーマネント施術(アイパー)を行った。
図5に、施術直後の毛髪を示す写真を示し、
図6に、施術後5か月後の毛髪を示す写真を示す。なお、5か月の間にカットを2回行ったため、
図6では、両サイド部にはパーマが残っていない。また、
図6中、指で指し示す部分は、パーマがかかっている部分を示す。実施例2との操作の相違は、表1に示すとおりである。
【0053】
実施例2及び3におけるパーマネントの処理条件、パーマのかかり度合い及び持続度合いの評価を表1に示す。
【0054】
【0055】
表1に示すように、本発明のパーマネント方法(実施例2及び3)は、パーマのかかりも良好であり、持続性が高いことがわかる。
【0056】
また、本発明のパーマネント方法(実施例2及び3)は、ショーヘアの日本人の男性を対象としているが、これに限られることなく、ロングヘアの女性や日本人以外にも適用可能であり、特に、アジア系の直毛の人に有効であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、頭皮や環境に悪影響を与えることなくパーマネント施術を行うことができるものであり、産業上有用である。