(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】配管の接続構造
(51)【国際特許分類】
F16L 13/10 20060101AFI20220621BHJP
F16L 21/06 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
F16L13/10
F16L21/06
(21)【出願番号】P 2019168236
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592131663
【氏名又は名称】井上商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】井上 繁
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-038825(JP,U)
【文献】特開昭61-153089(JP,A)
【文献】特開2000-170971(JP,A)
【文献】特開2010-065712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 13/10
F16L 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側配管及び下流側配管の管端部を抜け出し不能に嵌合接着してなる嵌合接着部が設けられ、上流側配管及び下流側配管のうち、嵌合接着部で外側に位置する配管の管端を跨ぐ範囲が、その全周を止水ゴムで覆われ
ると共に、該止水ゴムが、その全周を覆うジョイント材によって外周側から締付けられ、前記ジョイント材に、前記上流側配管及び下流側配管に接触することなく、止水ゴムの締付け圧縮に伴う流路方向への膨出を規制する膨出規制部が設けられたことを特徴とする配管の接続構造。
【請求項2】
上流側配管及び下流側配管のうちの少なくとも一方がアルミニウム管とされたことを特徴とする請求項
1に記載の配管の接続構造。
【請求項3】
上流側配管及び下流側配管は、建物内に設けられる排水管とされたことを特徴とする請求項
1又は2に記載の配管の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建物内に設置されるアルミニウム製の雨水排水管を接続するための配管の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物の雨水排水管には、塩ビ管(硬質ポリ塩化ビニル管)や白ガス管(配管用炭素鋼鋼管[亜鉛めっき鋼管])を用いることが多く、その塩ビ管や白ガス管は、持ち運びなどの取り扱いが可能な大きさに分割して形成され、建物に設置する際に接続されて雨水排水管を構成する。
【0003】
塩ビ管の接続には、例えば、ソケットやエルボ、T字管と呼ばれる管継手が用いられ、これに塩ビ管の管端部を嵌合することにより、管継手を介して、上流側及び下流側の塩ビ管が、又は、これらに加えて枝管が接続される。管継手と塩ビ管との嵌合部分は、接着剤の塗布によって接着され、管継手からの塩ビ管の抜け出しを阻止すると共に、嵌合部分からの漏水を防止している。
【0004】
白ガス管の接続には、溶接接合が用いられる他、例えば特許文献1が開示するような機械式の接続構造が用いられる。機械式の接続構造は、いわゆるMDジョイントと呼ばれる金属継手への白ガス管の接続に用いられることが多く、ソケット、エルボ、Y字などの各種のMDジョイントを介して複数の白ガス管を接続するようになっている。
【0005】
図9に示すように、特許文献1のパイプ接続構造は、第1パイプ101の端部の拡径部に第2パイプ102の端部を挿入して、それらの間にパッキング材103を挿入し、さらに、第2パイプ102に押輪104を外嵌して、この押輪104に外周縁を内接させるように、金属製の割りリング105を傾斜させて設けたものである。ボルト・ナット106で押輪104を移動させることにより、パッキング材103が押し込まれて第1パイプ101及び第2パイプ102に圧接すると共に、割りリング105の内周縁が第2パイプ102に圧接して、漏水及びパイプの抜け出しが阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、接着による配管の接続は、接着不良を生じた場合に漏水のおそれがあり、溶接接合は、鉛直立て管や水平横引き管などの溶接を現場作業で管全周にわたって行う必要がある分、その手間がかかると共に、品質を安定させるのが困難になりやすい。
【0008】
また、特許文献1のパイプ接続構造は、ボルト・ナットの締付けという一つの操作により、パッキング材による止水と割りリングによる配管の固定という二つの効果を得るものであり、パッキング材による止水が不十分なまま、配管の固定だけが完了するおそれがある。しかも、配管の接続が完了した後、万が一パッキング材が劣化した場合には、そのパッキング材を交換する際に配管の接続を外す必要があり、配管のメンテナンスに手間がかかるおそれがある。
【0009】
さらに、特許文献1のパイプ接続構造を採用すると共に、MDジョイントを用いる場合、そのMDジョイントは、鋳鉄製で肉厚も大きいことから重くなりやすく、管径が大きいものは、ウィンチなどで吊り上げて設置する必要がある。特に、床スラブ下の横引き管を接続する場合には、ウィンチの吊元を確保できないことから昇降機を必要とし、配管の取り付け施工に手間がかかりやすい。
【0010】
本発明は、漏水を確実に防止すると共に、配管工事の作業性を高めることができ、しかも、メンテナンスを容易にすることのできる配管の接続構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る配管の接続構造は、上流側配管及び下流側配管の管端部を抜け出し不能に嵌合接着してなる嵌合接着部を設け、上流側配管及び下流側配管のうち、嵌合接着部で外側に位置する配管の管端を跨ぐ範囲を、その全周を止水ゴムで覆ったものである。
【0012】
上記構成によれば、上流側及び下流側の配管を嵌合接着するので、配管を簡単かつ確実に固定することができる。さらに、嵌合接着部の外側の配管の管端を跨ぐように止水ゴムで覆うので、万が一、配管の嵌合接着の一部に接着不良を生じたとしても、その接着不良部分からの漏水を防止することができる。しかも、配管の嵌合接着とは別に止水ゴムの装着を行うので、配管固定効果及び漏水防止効果のそれぞれを確実に得ることができ、万が一、止水ゴムが劣化した場合には、固定した配管を外すことなく止水ゴムを交換することができる。
【0013】
また、止水ゴムをその全周を覆うジョイント材によって外周側から締付けるようにする。
【0014】
この構成によると、ジョイント材で止水ゴムの全周を外周側から締付けるので、止水ゴムを内向きに均一に圧縮して嵌合接着部の管端に密着させることができ、その漏水防止機能を高めることができる。しかも、止水ゴムの全周をジョイント材で覆うので、光劣化やオゾン劣化から止水ゴムを保護することができ、その耐久性を高めることができる。
【0015】
また、ジョイント材に、上流側配管及び下流側配管に接触することなく、止水ゴムの締付け圧縮に伴う流路方向への膨出を規制する膨出規制部を設ける。
【0016】
この構成によると、ジョイント材に膨出規制部を設けるので、止水ゴムを内向きに締付け圧縮する際、その圧縮によって止水ゴムが流路方向に膨出するのを規制して、止水ゴムの圧縮変形を抑えることができる。これにより、止水ゴムを強い力で内向きに圧縮して嵌合接着部の管端に密着させつつ、その圧縮率を小さくすることができ、時間の経過に伴って生じる圧縮永久歪を低減して、止水ゴムの耐久性を高めることができる。
【0017】
また、上流側配管及び下流側配管のうちの少なくとも一方をアルミニウム管とするようにしてもよい。
【0018】
この構成によると、少なくとも一方の配管にアルミニウム管を採用するので、そのアルミニウム管が塩ビ管や白ガス管よりも軽量である分、配管工事の作業性を向上させることができる。ここで、金属製の割りリングで固定する従来の白ガス管の接続構造をアルミニウム管の接続に採用すると、その変形や表面傷を生じて耐久性を低下させやすいが、本発明の接続構造によれば、アルミニウム管を採用しつつ、その耐久性の低下を防止することができる。
【0019】
また、上流側配管及び下流側配管を建物内に設ける排水管とするようにしてもよい。
【0020】
この構成によると、メンテナンスをするのが建物外の排水管よりも難しい建物内の排水管に本発明の接続構造を採用するので、建物内の排水管に求められる高い水密性や耐久性の要求を満たすことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のとおり、本発明によると、上流側及び下流側の配管を嵌合接着して、その外側の配管の管端を跨ぐように全周を止水ゴムで覆うことにより、上流側及び下流側の配管を簡単かつ確実に固定すると共に、嵌合接着部からの万が一の漏水を防止している。さらに、配管の嵌合接着と止水ゴムの装着とを別の工程とすることにより、配管固定及び漏水防止の両方を確実に行うと共に、止水ゴムが劣化した場合には、固定した配管を外すことなく止水ゴムを交換できるようにしている。これにより、配管の接続部分からの漏水を確実に防止すると共に、配管工事の作業性を高めることができ、しかも、配管の接続部分のメンテナンスを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る配管の接続構造を備えた雨水排水管の配置図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る配管の接続構造を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0024】
図1~
図3に示すように、接続構造1は、例えば、取り扱いが可能な大きさの配管2を接続して、建物3の内部に雨水排水管4を構成するためのものであり、上流側の配管2aの下流側管端部5aを下流側の配管2bの上流側管端部5bに挿入すると共に、抜け出し不能に接着して嵌合接着部5を構成し、さらに、嵌合接着部5において径方向で外側に位置する下流側の配管2bの上流側管端5cを流路方向に跨ぐように、その全周を止水ゴム6で覆うと共に、止水ゴム6をその全周を覆うジョイント材7によって外周側から締付けたものである。
【0025】
図1~
図4に示すように、配管2は、持ち運びなどの取り扱いが可能な長さに分割して形成されたアルミニウム管とされ、その下流側管端部5aが下流側の配管2bの上流側管端部5bに嵌合可能なよう縮径されている。上流側管端部5bには、例えば弾性接着剤からなる専用充填接着剤8が塗布され、この専用充填接着剤8が、上流側の配管2aと下流側の配管2bとを抜け出し不能に接着すると共に、配管2の熱伸縮を吸収する。
【0026】
上流側の配管2aの下流側管端部5aを下流側の配管2bの上流側管端部5bに嵌合接着して構成された嵌合接着部5は、止水ゴム6及びジョイント材7によって止水され、接続構造1を構成する。
【0027】
雨水排水管4は、例えば、建物2の屋根に設置されたルーフドレイン9で集水した雨水を地中の埋設管10まで導くものであり、適宜、フランジ付き短管11、エルボ12、T字管13、フランジ付き塩ビ管14及び塩ビエルボ15を介在させつつ、接続構造1によって配管2を接続しながら建物3の内部に構成される。
【0028】
図2、
図3、
図5及び
図6に示すように、止水ゴム6は、配管2の周長とほぼ同じ長さの帯状のゴム板とされ、その幅方向で中央付近に、下流側の配管2bの上流側管端5cを流路方向に挟むように位置して止水する2条の膨出部16が形成され、両側縁に、弾性力によって配管2の周囲に密着して止水する折返し部17が形成されている。
【0029】
図2、
図3、
図7及び
図8に示すように、ジョイント材7は、全体として開閉自在な円筒状を構成するよう、ヒンジピン18を介して、3枚のアルミニウム製の円弧板19a、19b、19cをヒンジ接合してなり、その内側に止水ゴム6が配置される。
【0030】
両側の円弧板19a、19cの端部には、ジョイント材7を締付けるボルト20を保持する筒状のボルト保持部21が形成され、このボルト保持部21にアルミニウム製で棒状の半円筒ナット22及び半円筒座金23が挿入されている。ボルト保持部21には、半円筒ナット22及び半円筒座金23のボルト孔を露出させる切欠が形成され、そのボルト孔にボルト20を螺合して、ジョイント材7を締付けるようになっている。
【0031】
配管2の嵌合接着部5にジョイント材7を装着することにより、止水ゴム6が下流側の配管2bの上流側管端5cを流路方向に跨ぐように覆い、ボルト20でジョイント材7を締付けることにより、止水ゴム6が配管2の周面に圧接されて密着し、嵌合接着部5を止水する。
【0032】
各円弧板19a、19b、19cの内側の両側縁部には、ジョイント材7の内側に配置された止水ゴム6をその幅方向に挟むように、断面溝形の膨出規制部24がビス留めされている。膨出規制部24が止水ゴム6の締付け圧縮に伴う流路方向への膨出を規制することにより、ジョイント材7の強い締付け力で止水ゴム6を配管2の周面に密着させて確実に止水しつつ、止水ゴム6の厚さ方向の圧縮率を小さくして、止水ゴム6の圧縮永久歪を抑えることができる。
【0033】
上記構成によれば、上流側及び下流側の配管2a、2bを抜け出し不能に嵌合接着した上で、その嵌合接着部5に止水ゴム6及びジョイント材7を装着して、配管2の接続構造1を構成するので、配管2a、2bを十分な強度で接続すると共に、その接続部分からの漏水を確実に防止することができる。これにより、例えば、雨水排水管4の内部に溜まった落葉やごみ、泥状の塵埃により、雨水排水管4に雨水が滞留したとしても、その雨水の水圧が作用することによる接続構造1からの配管2a、2bの抜け出しや漏水を防止することができる。
【0034】
また、配管2a、2bの嵌合接着による固定と、止水ゴム6及びジョイント材7の装着による止水とを別の作業として行うことができるので、嵌合接着による配管固定効果と、止水ゴム6及びジョイント材7による漏水防止効果とをそれぞれ確実に得ることができる。しかも、万が一、止水ゴム6が劣化した場合には、固定した配管2a、2bを外すことなく、止水ゴム6を交換することができる。
【0035】
また、ジョイント材7に膨出規制部24を設けて、止水ゴム6の厚さ方向の圧縮率を小さくするので、止水ゴム6の圧縮永久歪を抑えて、その耐久性を向上させることができる。これにより、接続構造1の強度及び水密性を高めることに加えて、接続構造1の耐久性を高めることができ、建物3の外部よりもメンテナンスが難しくなりやすい建物3の内部への雨水排水管4の設置が可能になる。しかも、雨水排水管4を建物3の内部に設置することにより、止水ゴム6の光劣化やオゾン劣化を防止することができ、接続構造1の耐久性をより高めることができる。
【0036】
また、従来の機械式の接続構造のように、抜け出しを阻止する金属製のリングで締め付け固定する必要がないので、配管2として、耐久性を低下させる変形や表面傷が比較的に生じやすいアルミニウム管を採用することができる。アルミニウム管は、一般に用いられることの多い塩ビ管や白ガス管よりも軽量であり、その分、建物3の内部で配管2を組み立てて雨水排水管4を設置する作業を容易にすることができる。
【0037】
また、上記の接続構造1を採用することにより、雨水排水管4の屈曲部のエルボ12や合流部のT字管13を一般部の配管2と同様の断面に形成することができる。これにより、従来の金属 継手として用いられる鋳鉄製で肉厚のMDジョイントと比較して、雨水排水管4の屈曲部や合流部の部材を十分に軽量化することができ、雨水排水管4の設置作業を容易にすることができる。
【0038】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、接続構造1は、配管2を接続して、建物3の内部に雨水排水管4を構成するだけでなく、建物3の外部に雨水排水管4を構成することもでき、さらに、水道管や下水管、ガス管など、あらゆる配管の接続に採用することができる。また、接続構造1は、アルミニウム管だけでなく、塩ビ管や白ガス管などの接続に採用することもできる。なお、参考の形態として、膨出規制部24は、適宜省略するようにしてもよく、さらに、ジョイント材7を省略して、止水ゴム6のみで嵌合接着部5を止水するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 接続構造
2 配管
2a 上流側の配管
2b 下流側の配管
3 建物
4 雨水排水管
5 嵌合接着部
5a 下流側管端部
5b 上流側管端部
5c 上流側管端
6 止水ゴム
7 ジョイント材
8 専用充填接着剤
9 ルーフドレイン
10 埋設管
11 フランジ付き短管
12 エルボ
13 T字管
14 フランジ付き塩ビ管
15 塩ビエルボ
16 膨出部
17 折返し部
18 ヒンジピン
19a、19b、19c 円弧板
20 ボルト
21 ボルト保持部
22 半円筒ナット
23 半円筒座金
24 膨出規制部