特許 7092379 プレスブレーキ用調整可能ダイ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-06-20

(45)【発行日】2022-06-28

(54)【発明の名称】プレスブレーキ用調整可能ダイ

(51)【国際特許分類】

   B21D 5/02 20060101AFI20220621BHJP

【ＦＩ】

B21D5/02 D

【請求項の数】 19

(21)【出願番号】P 2019518198

(86)(22)【出願日】2017-10-19

(65)【公表番号】

(43)【公表日】2019-10-31

(86)【国際出願番号】 IB2017056504

(87)【国際公開番号】W WO2018073781

(87)【国際公開日】2018-04-26

【審査請求日】2020-10-15

(31)【優先権主張番号】102016000106455

(32)【優先日】2016-10-21

(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT

(31)【優先権主張番号】102017000052717

(32)【優先日】2017-05-16

(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT

(73)【特許権者】

【識別番号】518292933

【氏名又は名称】ロッレリ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ

【氏名又は名称原語表記】ＲＯＬＬＥＲＩ Ｓ．ｐ．Ａ．

(74)【代理人】

【識別番号】100145403

【弁理士】

【氏名又は名称】山尾 憲人

(74)【代理人】

【識別番号】100131808

【弁理士】

【氏名又は名称】柳橋 泰雄

(74)【代理人】

【識別番号】100101454

【弁理士】

【氏名又は名称】山田 卓二

(72)【発明者】

【氏名】ドメニコ・マッツォッキ

【審査官】豊島 唯

(56)【参考文献】

【文献】特開２００５－２９７０２８（ＪＰ，Ａ）

【文献】中国実用新案第２０５５７１１８６（ＣＮ，Ｕ）

【文献】実開平０５－０３９７１４（ＪＰ，Ｕ）

【文献】米国特許出願公開第２００３／００４１６４２（ＵＳ，Ａ１）

【文献】米国特許第４３６６６９８（ＵＳ，Ａ）

【文献】米国特許出願公開第２００９／０３２０２９２（ＵＳ，Ａ１）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ２１Ｄ ５／０１ － ５／０２

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

プレスブレーキ用ダイであって、
ベース（１０）と、
型の第１のハーフ部（２０）および第２のハーフ部（３０）であって、前記ベース（１０）上で摺動するように載っており、前記第１のハーフ部（２０）と前記第２のハーフ部（３０）との間で型キャビティ（Ｃ）が定められる、型の第１のハーフ部（２０）および第２のハーフ部（３０）と、
を備え、
前記第１のハーフ部（２０）は、互いに平行な複数の第１の板（２２）を備え、
前記第２のハーフ部（３０）は、互いに平行な複数の第２の板（３２）を備え、前記第１の板および前記第２の板は、前記ダイの横断方向（Ｙ）に延在し、前記ダイの長手方向（Ｘ）に交互に配置され、前記第１の板（２２）は、二つの連続した第１の板（２２）の間に第２の板（３２）の少なくとも一部を収容するように、互いに距離をあけて配置され、前記第２の板（３２）は、二つの連続した第２の板（３２）の間に第１の板（２２）の少なくとも一部を収容するように、互いに距離をあけて配置され、前記ダイは、前記型キャビティ（Ｃ）の幅を変化させるために、前記第１のハーフ部（２０）および前記第２のハーフ部（３０）を互いから離れるようにおよび互いに向かって動かす移動装置を備え、前記移動装置が、
前記第１の板（２２）で得られる複数の第１の誘導部（２４）および前記第２の板（３２）で得られる複数の第２の誘導部（３４）と、
前記第１のハーフ部（２０）および前記第２のハーフ部（３０）が互いから離れるようにまたは互いに向かって動かされたとき、前記第１の誘導部および前記第２の誘導部に沿って摺動するように、前記ダイの前記長手方向（Ｘ）に沿って配置され、かつ前記第１の誘導部（２４）および前記第２の誘導部（３４）と係合されたシャフト（４１）と、
前記シャフト（４１）に取り付けられた少なくとも第１のピニオン（４２）および第２のピニオン（４３）と、
第１の板（２２）および第２の板（３２）でそれぞれ少なくとも第１のラック（２５）および第２のラック（３５）と、
を備えることを特徴とし、
前記第１のラックおよび前記第２のラックは、ある方向へのまたは反対方向への前記シャフト（４１）の回転に応じて前記二つのハーフ部（２０、３０）が互いから離れるようにまたは互いへ向かって動かされるようにそれぞれ前記第１のピニオンおよび前記第２のピニオンとかみ合わされる、
プレスブレーキ用ダイ。

【請求項2】

前記第１の誘導部（２４）および前記第２の誘導部（３４）は、それぞれ前記第１の板（２２）および前記第２の板（３２）で得られたスロットを備え、前記シャフト（４１）は前記スロット内を自由に摺動できることを特徴とする、請求項１に記載のダイ。

【請求項3】

前記シャフト（４１）の前記第１の誘導部（２４）での摺動方向（Ｓ１）と前記第２の誘導部（３４）での摺動方向（Ｓ２）は、傾斜して一点に集まっていることを特徴とする、請求項１または請求項２に記載のダイ。

【請求項4】

前記摺動方向（Ｓ１、Ｓ２）は、前記摺動方向の間で１００°から１３０°の角度を定めることを特徴とする、請求項３に記載のダイ。

【請求項5】

前記第１のラック（２５）および前記第２のラック（３５）は、それぞれ前記第１の誘導部（２４）の前記摺動方向および前記第２の誘導部（３４）の前記摺動方向に対して実質的に平行に配置されることを特徴とする、請求項３または請求項４に記載のダイ。

【請求項6】

前記第１のラック（２５）および前記第２のラック（３５）は、それぞれ第１の誘導部（２４）および第２の誘導部（３４）のスロットの反対側の縁に配置されることを特徴とする、請求項２から請求項５のいずれか一項に記載のダイ。

【請求項7】

前記ベース（１０）上の前記型の前記ハーフ部（２０、３０）の摺動方向に対して実質的に直角な方向（Ｚ）に沿って前記シャフトを誘導するように構成された前記シャフト（４１）の誘導手段（１４）をさらに備えることを特徴とする、請求項１から請求項６のいずれか一項に記載のダイ。

【請求項8】

前記第１のハーフ部および前記第２のハーフ部を少なくとも特定の開口位置でクランプするためのクランプ手段を備え、前記クランプ手段は少なくとも、前記ダイの前記長手方向（Ｘ）に沿って延在するクランプロッド（５０）を収容するためのシート（１７）を備え、前記シート（１７）は、少なくとも前記ベース（１０）で得られる下側部（１８）、並びに前記第１の板（２２）および前記第２の板（３２）で得られる上側部（２７、３７）を備え、前記下側部（１８）および前記上側部（２７、３７）は、前記クランプロッド（５０）が収容される前記シート（１７）を形成するように、前記二つのハーフ部（２０、３０）の少なくとも特定の開口位置で互いに実質的に合わせられ得ることを特徴とする、請求項１から請求項７のいずれか一項に記載のダイ。

【請求項9】

前記型の前記二つのハーフ部（２０、３０）の異なる特定の開口位置で前記クランプロッド（５０）を収容するためのいくつかのシート（１７）を形成するように、それぞれの第１の板（２２）でのシートのいくつかの上側部（２７）、およびそれぞれの第２の板（３２）でのシートのいくつかの上側部（３７）を備えることを特徴とする、請求項８に記載のダイ。

【請求項10】

前記クランプロッド（５０）は、上側部分に複数の横方向のノッチ（５１）を設けられた形状を備え、前記ノッチ（５１）は、第１の板（２２）および／または第２の板（３２）と、隣り合う板との間の距離の約半分に等しいピッチで連続して配置され、前記第１の板（２２）および／または前記第２の板（３２）の厚みと少なくとも等しい幅を有することを特徴とする、請求項８または請求項９に記載のダイ。

【請求項11】

前記ベース（１０）に対する前記ハーフ部（２０、３０）の垂直運動を防ぐように適合された拘束手段（６０）を備え、前記拘束手段は、少なくとも一対のブラケット（６１）を備え、前記少なくとも一対のブラケット（６１）は、前記ベース（１０）に対して拘束され、ハーフ部（２０、３０）の一つ以上の板（２２、３２）の端部と係合するように、かつ前記ベース（１０）にそれらが実質的に載っている状態を保持するようにそれぞれ適合されていることを特徴とする、請求項１から請求項１０のいずれか一項に記載のダイ。

【請求項12】

前記ブラケット（６１）は、前記ベース（１０）のそれぞれの外側縁に配置されたシートを備え、前記シートは、前記板（２２、３２）の前記端部（２２ｂ、３２ｂ）の幅に実質的に等しい幅を有する複数の開口（６２）を有し、前記開口は、前記端部（２２ｂ、３２ｂ）の上側サイド（２６、３６）と摺動自在に係合するように適合された当接エッジ（６２ａ）を有することを特徴とする、請求項１１に記載のダイ。

【請求項13】

少なくとも一つの形成された開口位置で、前記第１のハーフ部（２０）および前記第２のハーフ部（３０）をブロックするためのブロックシステムを備え、前記ブロックシステムは、前記ベース（１０）の上側表面（１３）に作られた複数の溝（１９）、並びに前記第１の板（２２）の一つ以上および前記第２の板（３２）の一つ以上の下側表面（２３、３３）に作られた一つ以上のブロック歯（２９、３９）を備え、それぞれのブロック歯（２９、３９）は、前記ハーフ部の前記下側表面（２３、３３）が前記ベース（１０）の前記上側表面（１３）上に載っているとき、前述された溝（１９）の一つと係合するのに適しており、前記ブロックシステムはまた、前記ハーフ部（２０、３０）が互いにより近づくようにまたはさらに離れるように動かされ得るように、前記溝（１９）から前記ブロック歯（２９、３９）を外すために、前記二つのハーフ部（２０、３０）を持ち上げるのに適した持ち上げシステム（７０）を備えることを特徴とする、請求項１から請求項１２のいずれか一項に記載のダイ。

【請求項14】

前記持ち上げシステムは、前記第１のハーフ部（２０）および前記第２のハーフ部（３０）の二つの連続する板（２２、３２）の間に配置された連結部（７１）を備えることを特徴とする、請求項１３に記載のダイ。

【請求項15】

前記連結部（７１）は、少なくとも一つの揺動誘導部（７２）を備え、前記揺動誘導部（７２）は、非動作位置と持ち上げられた位置との間で振動でき、前記非動作位置では、前記揺動誘導部（７２）が前記ハーフ部（２０、３０）と係合せず、前記持ち上げられた位置では、前記揺動誘導部（７２）が位置調整部材（７３）を持ち上げるように、前記ハーフ部（２０、３０）の少なくとも一つの板（２２、３２）と一体の前記位置調整部材（７３）と係合することを特徴とする、請求項１４に記載のダイ。

【請求項16】

前記揺動誘導部（７２）は、前記ハーフ部（２０、３０）の少なくとも一つの板（２２、３２）にヒンジで連結されていることを特徴とする、請求項１５に記載のダイ。

【請求項17】

前記位置調整部材（７３）は、ロール手段または摺動手段を備えることを特徴とする、請求項１５または請求項１６に記載のダイ。

【請求項18】

前記揺動誘導部（７２）を待機位置と前記持ち上げられた位置との間で動かすように設計されたアクチュエータ（７５）を備え、前記アクチュエータは前記揺動誘導部に連結されていることを特徴とする、請求項１５から請求項１７のいずれか一項に記載のダイ。

【請求項19】

前記アクチュエータ（７５）は、前記ベース（１０）に収容され、前記ベース（１０）の前記上側表面から前記揺動誘導部（７２）へ向かって突出する能動的な移動部品（７５ｂ）を備えることを特徴とする、請求項１８に記載のダイ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、金属板またはそれに類するものなどのシート状部材を曲げることによって変形させるプレスブレーキ（プレス機）で使用できる調整可能なダイに関する。

【0002】

特に、本発明は、異なる曲げ角度または曲げ半径でシートを曲げることができるように、互いに対して移動される二つの部品を備える調整可能なダイに関する。

【背景技術】

【0003】

周知のように、曲げプレスは、パンチを備えられ、油圧アクチュエータによって動かされ、ダイに対して（通常は金属板の）シート状のワークピースをプレスするように適合されている。当該ダイは、必須ではないが典型的にはＶ字型ノッチによって形成されたシートを有する。

【0004】

待機位置において、パンチは、金属板を曲げるためにパンチとダイとの間に挿入できるようにダイから距離をあけて配置される。動作位置では、パンチの下側端は、二つの前述した部材の間に配置された金属板をプレスするためにダイのシートに向かって動かされ、金属板を曲げる。曲げられる金属板の厚み、曲げ角度および金属板の材料に応じて、プレスは、シートの所定の形状および大きさを有するダイを備えられなければならない。

【0005】

多くの場合、固定された種類の（すなわち、定められた形状および大きさを有する一つ以上のシートを有する）ダイが使用される。曲げパラメータに応じて、プレスは、的確な形状と大きさを有するダイを備えられる。

【0006】

しかしながら、固定されたダイは、曲げパラメータについて多くの変化を必要とする操作を実行するとき、および、したがって、プレス機での適切なダイの多くの変更または再配置を必要とされたとき、非実用的である。

【0007】

当該操作は、多くの時間だけでなく、場合によっては、数十キログラムの重量がありえるダイを取り扱う困難を伴う。

【0008】

また、作業される金属板の曲げ半径を変えるために互いに向かってまたは互いから離れるように動くことができ、且つ選択された位置に対してクランプできる、二つのハーフ部で形成された調整可能なダイが、この分野で知られている。

【0009】

二つのハーフ部のそれぞれは、曲げの間、金属板を載せる縁を有する。二つのハーフ部を互いから離れるように動かすことで、縁はまた、金属板の曲げ点の下側端が位置される自由空間をそれらの間に残して互いから離れるように動く。

【0010】

上記されたようなダイの例は、米国特許第４３６６６９８Ａ号（特許文献１）および米国特許第７１１７７１１Ｂ２号（特許文献２）に示されている。

【0011】

しかしながら、これらの文献は、異なるクランプ位置の間でダイの二つのハーフ部を動かすためのシステムを記載しない。当該動作は、いくつかの場合には、プレスを制御する作業者によって手動で行われる。しかしながら、ダイの長さが相当大きい（例えば２メートル以上）とき、ハーフ部は、ハーフ部を動かし、再配置するために複数人を必要とするような重量となる。

【0012】

米国特許第５２４９４５２Ａ号（特許文献３）及び米国特許第５０２２２４８Ａ号（特許文献４）は、それぞれ送りねじ駆動装置によって及び油圧アクチュエータによって、二つのハーフ部が互いに対して動かされ得る調整可能なダイを説明する。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0013】

【文献】米国特許第４３６６６９８Ａ号

【文献】米国特許第７１１７７１１Ｂ２号

【文献】米国特許第５２４９４５２Ａ号

【文献】米国特許第５０２２２４８Ａ号

【発明の概要】

【0014】

機能的だが、これらのシステムは、製造するには非常に複雑かつ費用がかかる。したがって、大きな大きさのダイにのみ好適に適用され得る。

【0015】

これに関連して、本発明の目的は、上記された先行技術の制限を打開する調整可能なダイを提案することである。

【0016】

したがって、本発明の目的は、二つのハーフ部が実用的かつ速やかに動かされ得る調整可能なダイを提案することである。

【0017】

本発明の別の目的は、高価でなく、かつ容易に製造できるダイを作り出すことである。

【0018】

本発明の別の目的は、定期的なメンテナンスまたは総点検（オーバーホール）作業を必要としない頑丈な調整可能なダイを提供することである。

【0019】

本発明のさらなる別の目的は、二つのハーフ部の位置の安定かつ正確なクランプシステムを備えられた調整可能なダイを提供することである。

【0020】

本発明のさらなる目的は、実用的かつ速やかに作動する二つのハーフ部のクランプシステムを備えられた調整可能なダイを提供することである。

【0021】

本発明のもう一つの目的は、高価でなく、かつ容易に製造できるクランプシステムを備えられたダイを提案することである。

【0022】

これらの目的は、互いから離れるようにおよび互いに向かって動くことができる型の二つのハーフ部のそれぞれが、互いに平行かつ一体になった複数の板を備える、調整可能なダイによって実現される。それぞれのハーフ部の板は、それぞれのハーフ部の板の間に反対側のハーフ部の板の少なくとも一部をそれぞれ収容するように、互いに距離をあけて配置される。当該構成にすると、板が互いに入り込むことができ、板の間に備えられた型キャビティの幅を変化させる。本発明によると、ダイは、ラック（歯竿）タイプの二つのハーフ部の移動装置を設けられる。より具体的には、装置は、第１の板および第２の板に連結された一つ以上のラックとかみ合うように、少なくとも一つの、又は好ましくは二つのピニオン（歯車）が取り付けられる、シャフトを備える。板で得られる誘導部は、前述のシャフトと係合し、回転に応じて、二つのハーフ部が互いから離れるようにまたは互いに向かって動かされることを確保する。シャフトは、例えばハンドホイール、レバー若しくはそれに類するものを通じて手動で、または電気アクチュエータ若しくは空気圧式アクチュエータ（例えば電気モータ）によって操作され得る。

【0023】

したがってダイがこのようにして構成されると、二つのハーフ部を素早く再配置し、曲げられる金属板の厚み、および曲げ半径に応じて型キャビティの大きさを変化させる。

【0024】

移動装置の部品の数の制限および機械的な単純化によって、ダイが頑丈になり、故障または破損しづらくなり、先行技術の調整可能なダイに比べて比較的安くなる。

【0025】

本発明の対象はしたがって、
ベースと、
ベース上に摺動するように載っている型であって、型キャビティが当該型の間に形成される、型の第１のハーフ部および第２のハーフ部と、
を備える、ダイである。

【0026】

ダイにおいて、第１のハーフ部は、互いに平行な複数の第１の板を備え、第２のハーフ部は、互いに平行な複数の第２の板を備える。第１の板および第２の板は、ダイの横断方向に延在し、かつダイの長手方向に交互に配置される。第１の板は、二つの連続した第１の板の間に第２の板の少なくとも一部を収容するように、互いに距離をあけて配置される。第２の板は、二つの連続した第２の板の間に第１の板の少なくとも一部を収容するように、互いに距離をあけて配置される。ダイは、型キャビティの幅を変化させるために、第１のハーフ部および第２のハーフ部を互いから離れるようにおよび互いに向かって動かす移動装置を備える。当該装置は、
第１の板で得られる複数の第１の誘導部、および第２の板で得られる複数の第２の誘導部と、
第１のハーフ部および第２のハーフ部が互いから離れるようにまたは互いに向かって動かされたとき、第１の誘導部および第２の誘導部に沿って摺動するように、ダイの長手方向に沿って配置され、かつ第１の誘導部および第２の誘導部と係合されたシャフトと、
シャフトに取り付けられた少なくとも第１のピニオンおよび第２のピニオンと、
第１の板および第２の板でそれぞれ少なくとも第１のラックおよび少なくとも第２のラックと、
を備える。

【0027】

前述の第１のラックおよび第２のラックは、ある方向への又は反対方向へのシャフトの回転に応じて、二つのハーフ部が互いから離れるようにまたは互いに向かって動かされるように、第１のピニオンおよび第２のピニオンとかみ合わされる。

【0028】

本発明の態様によると、第１の誘導部および第２の誘導部は、それぞれ第１の板および第２の板で得られる、細長い隙間（スロット）を備え、シャフトは、スロットで自由に摺動できる。好ましくは、スロットは、直線的に延在し、かつ実質的に一定の幅を有する。

【0029】

本発明の好ましい実施形態によると、第１の誘導部と第２の誘導部それぞれでの、シャフトの摺動方向は、傾斜して一点に集まっている。実際には、スロットは、ベース上のハーフ部の摺動方向に対して平行に配置されず、むしろダイの中央に向かって降下する方向に傾斜する。

【0030】

当該配置は、大きさを小さくすることに、したがって、同じ型キャビティの大きさで板の重量を減らすことに、特に効果的である。

【0031】

より詳細には、前述のように配置すると、板の端部の高さが小さくなり、キャビティの形状または大きさに影響を与えないが、それにもかかわらずハーフ部の安定性にとって必要なことである。

【0032】

好ましくは、摺動の前述の方向は、それらの間で１００°から１３０°の間で構成された角度を定める。角度は好ましくは約１１０°である。

【0033】

ハーフ部の対称的な移動を得るために、前述の方向は、ダイの中心線軸に対して対称的である。すなわち、前述の方向のそれぞれと中心線軸との間の角度は同じである。

【0034】

本発明の別の態様によると、ダイはさらに、実質的に垂直な方向に沿って、すなわち、ベース上での型のハーフ部の摺動方向に対して直角に、シャフトを誘導するように構成されたシャフトの誘導手段を備える。

【0035】

さらに、ハーフ部の対称的な移動を得るために、これらの誘導手段は好ましくは、シャフトの前述の摺動方向がダイの中心線軸を通るように配置される。このようにして、型キャビティの中心は常に、中心線に、したがって、曲げパンチに合わされている。

【0036】

本発明の別の態様によると、第１のラックおよび第２のラックは、第１の誘導部および第２の誘導部の摺動方向に対して実質的に平行に配置される。

【0037】

本発明のさらなる別の態様によると、第１のラックおよび第２のラックは、それぞれ第１の誘導部および第２の誘導部のスロットの反対側の縁に配置される。当該配置にすると、シャフトの回転に応じて、二つのハーフ部は反対方向へ、すなわち互いへ向かってまたは互いから離れるように、動かされる。

【0038】

本発明の別の態様によると、ダイは、第１のハーフ部および第２のハーフ部を一つ以上の特定の位置にクランプするためのクランプシステムを備える。

【0039】

クランプシステムは、上記された本発明のハーフ部の移動システム、または代替的に、任意の周知の、自動的な若しくは任意選択的に完全に手動の、移動システムを備えられた調整可能なダイで使用され得る。

【0040】

当該第２のケースの場合、調整可能なダイはしたがって、ベースと、ベース上に摺動するように載っている型であって、型キャビティが当該型の間に形成される、型の第１のハーフ部および第２のハーフ部と、を備える。第１のハーフ部は、互いに平行な複数の第１の板を備え、第２のハーフ部は、互いに平行な複数の第２の板を備える。第１の板および第２の板は、ダイの横断方向に延在し、かつダイの長手方向に交互に配置される。第１の板は、二つの連続した第１の板の間に第２の板の少なくとも一部を収容するように、互いに距離をあけて配置される。第２の板は、二つの連続した第２の板の間に第１の板の少なくとも一部を収容するように、互いに距離をあけて配置される。

【0041】

ダイはさらに、以下に記載される形態による、ハーフ部のクランプシステムを備える。

【0042】

第１の形態によると、クランプシステムは、クランプロッドを収容するための少なくとも一つのシートを備える。クランプロッドは、ダイの長手方向に沿って延在する。シートは、ベースで得られる少なくとも一つの下側部、および第１の板および第２の板で得られる上側部を備える。シートの下側部および上側部は、型の二つのハーフ部の特定位置で実質的に互いに合わせられたとき、前述のシートを定める。つまり、シートの下側部および上側部が、共通の方向に沿って合わせられたとき、クランプロッドを摺動するよう収容できる。シートの形状は、曲げ動作の間、型のハーフ部の相互の摺動を防ぐようなものである。

【0043】

したがって、同じダイは、「開口」位置の範囲を提供し、開口位置のそれぞれは、異なる厚みおよび曲げ半径を有する金属板を曲げるために型キャビティの所定の幅に対応する。

【0044】

好適には、クランプロッドは、上側部分に複数の横方向のノッチを設けられた、中実の又は円柱の形状を備える。そのようなノッチは、第１の板または第２の板と、隣接する板との間の距離の約半分に等しいピッチで連続して配置される。さらに、ノッチは、第１の板および第２の板の厚みと少なくとも等しい幅、またはわずかに大きい幅を有する。

【0045】

クランプロッドが当該構造であると、ダイは、クランプロッドを軸に沿って短い距離を動かして、特定の開口位置でクランプされた状態から、解放された状態へと変化され得る。解放された状態では、二つのハーフ部が互いから離れるようにまたは互いに向かって動かされ得る。

【0046】

実際には、全ての第１の板および第２の板が上側部分でノッチに合わせられた位置にロッドを持っていけば十分である。このようにして、前述の板は、ノッチでクランプロッドを通ってベース上で自由に摺動できる。

【0047】

本発明の別の好ましい形態によると、クランプシステムは、ベースの上側表面で得られる複数の溝、並びに第１の板の一つ以上および第２の板の一つ以上の下側表面で得られる一つ以上のクランプ歯を備える。

【0048】

それぞれのクランプ歯は、ハーフ部の下側表面がベースの上側表面上に載っているとき、前述の溝の一つを収容するように適合される。

【0049】

溝の形状およびクランプ歯の形状は、少なくとも互いに離れる方向への、および任意選択的に互いに向かう方向への、ベースに対する二つのハーフ部の移動を防ぐようなものである。

【0050】

歯が溝に係合されたとき、ダイのハーフ部はしたがって、曲げの間に生じた、前述の部品が互いに離れるように動かす傾向がある力に耐えることができる。

【0051】

クランプシステムはさらに、ハーフ部が互いに向かってまたは互いから離れるように動かされ得るように、溝から歯を外すために二つのハーフ部を持ち上げるように適合された、持ち上げシステムを備える。

【0052】

この状態では、二つのハーフ部は、実行される曲げ動作に応じて、互いに向かってまたは互いから離れるように動かされ得る。

【0053】

選ばれた位置に至ると、持ち上げシステムは、それぞれのクランプ歯がベースでの対応する溝と係合するように、ハーフ部を再び下げる。

【0054】

溝は好ましくは、ダイの長手方向に平行に延在する。溝は好ましくは、連続しており、一定の大きさの断面を有する。

【0055】

溝は、ハーフ部のそれぞれのクランプ歯でのみ得られ、または好ましくは、実質的にベースの全長に延在する。

【0056】

本発明の態様によると、持ち上げシステムは、第１のハーフ部および第２のハーフ部の二つの連続する板の間に介在された連結部を備える。

【0057】

長さおよび重量に応じて、ダイは、それぞれのハーフ部に役立つ連結部を一つより多く、例えば二つ、三つまたはそれ以上、備えることができる。

【0058】

好ましい実施形態によると、連結部は、待機位置と持ち上げられた位置との間を振動する少なくとも一つの揺動誘導部を備える。待機位置では、揺動誘導部はハーフ部と係合しない。持ち上げられた位置では、揺動誘導部は、ゲージを持ち上げるように、ハーフ部の少なくとも一つの板と一体になったゲージと係合する。

【0059】

振動運動は、例えば、ハーフ部の少なくとも一つの板で揺動誘導部をヒンジで連結することで得られる。

【0060】

好適には、本発明によると、ゲージは、ロール手段を備えることができる。このようにして、揺動誘導部が持ち上げられた位置にあるとき、ロール部材は、そこで自由に摺動でき、ベースに対して、および向かい合うハーフ部に対して、ハーフ部を簡単に動かす。

【0061】

本発明の態様によると、持ち上げシステムは、前述の待機位置と持ち上げ位置との間で揺動誘導部を動かすように適合された揺動誘導部に連結された少なくとも一つのアクチュエータを備えることができる。アクチュエータはベースに収容され得、ベースの上側表面から揺動誘導部へ向かって突出する能動的な（アクティブな）移動部品を備えられる。

【0062】

典型的には、それぞれの揺動誘導部は、アクチュエータによって動作される。

【0063】

典型的には、アクチュエータは、空気圧若しくは油圧シリンダ、電気線形アクチュエータまたは電磁石であり得る。本発明の別の態様によると、ダイは、ハーフ部の垂直運動を、より正確には、ベースに対するハーフ部の傾斜を、防ぐように適合された拘束手段を備える。

【0064】

本発明による拘束手段は、ベースに拘束された一対のブラケットを備える。一対のブラケットは、ハーフ部の一つ以上の板の端部に係合するように、かつベースにそれが実質的に載っている状態を保持するようにそれぞれ適合される。

【0065】

好ましい形態によると、ブラケットは、ベースのそれぞれの外側縁で配置されたシートを備える。シートは、板の端部の幅と実質的に等しい幅を有する複数の開口を有する。さらに、開口は、端部の上側サイドと摺動自在に係合するように適合された当接エッジを有する。

【図面の簡単な説明】

【0066】

本発明のさらなる特徴および利点が、添付図面に示されたような、プレスブレーキ用調整可能なダイの、好ましいが排他的でない、実施形態の例の記載から明らかになる。

【0067】

【図1】図１は、本発明による調整可能なダイの斜視図である。

【図2】図２は、図１のダイの分解斜視図である。

【図3】図３は、図１のダイの平面図である。

【図4】図４は、図３のダイの横断平面Ｂ－Ｂに沿った断面図である。

【図5】図５は、図３のダイの横断平面Ａ－Ａに沿った断面図である。

【図6a】図６ａは、二つのハーフ部の、図６ｂとは異なる開口位置を備える本発明によるダイの正面図である。

【図6b】図６ｂは、二つのハーフ部の、図６ａとは異なる開口位置を備える本発明によるダイの正面図である。

【図7】図７は、ハーフ部のクランプシステムの一部の斜視図である。

【図8】図８は、本発明の別の形態によるダイの斜視図である。

【図9】図９は、図８のダイの正面図である。

【図10a】図１０ａは、図８のダイの断面正面図である。

【図10b】図１０ｂは、図８のダイの断面正面図である。

【図10c】図１０ｃは、図８のダイの断面正面図である。

【0068】

添付図面に関して、本発明によるプレスブレーキ用の調整可能なダイは、全体的に符号１で示される。

【発明を実施するための形態】

【0069】

調整可能なダイ１は、プレスブレーキ（周知であり、説明しない）に設置され得る。当該プレスは、ベッド、ベッド上に設置され得る下側ビームＢ（図４、図５参照）、下側ビームの上に取り付けられる上側ビーム、および下側ビームＢへ向かう又は下側ビームＢから離れる垂直運動を上側ビームに伝えるように適合される（例えば油圧の）アクチュエータを備える。パンチ（図示されていない）は、除去自在に上側ビームに設置され得る。

【0070】

調整可能なダイ１は、好ましくは金属（典型的にはスチール）の単一ブロックで形成される支持ベース１０を備える。好ましい形態によると、ベース１０は、実質的には一定の厚みのシート状または板状である。したがって、ベースは、下側ビームＢ上に載っている平坦な下側面１１および上側面、並びに任意選択的に、ダイを下側ビームＢ上に正確に配置させる突出尾部１２を有する。また、ベースは、広く平坦な上側表面１３を有し、型２０の第１のハーフ部および型３０の第２のハーフ部（以下、単に「ハーフ部」とも称する）が上側表面１３上に摺動するように載るように受けられる。

【0071】

前述のハーフ部２０、３０の間で、型キャビティＣが定められ、曲げている間、曲げられた金属板の一部が受けられる。より詳細には、キャビティＣは、第１のハーフ部２０の面２１および第２のハーフ部の面３１の二つの面２１、３１によって横方向に範囲を定められる。説明された形態では、面２１、面３１は、傾斜され、一点に集まってキャビティにＶ字状の輪郭を与える。前述の面２１と面３１と間の角度は、典型的には約９０度である。さらに、前述の面は好ましくは、ダイの中心線平面Ｐｍに対して対称的に配置される。しかしながら、面２１、面３１は、異なる形状および異なる角度配置を有することができ、例えばベース１０の上側表面１３に対して実質的に垂直にあることも可能である。

【0072】

第１の部分２０および第２の部分３０はそれぞれ、互いに平行な、複数の第１の板２２および第２の板３２を備える。複数の第１の板２２および第２の板３２は、ダイ１の横断方向Ｙに延在し、ベース１０に対して実質的に直角に配置される。パンチが金属板を変形させるために与える押圧力に耐えるために、板２２、３２は、一般的にスチールまたは同等の強度を有する他の金属で作られる。

【0073】

二つの隣り合う第１の板２２間の距離は、それぞれの第１の板２２の厚みと少なくとも同じ、又は好ましくはそれぞれの第１の板２２の厚みより大きい。同様に、二つの隣り合う第２の板３２間の距離は、それぞれの第２の板３２の厚みと少なくとも同じ、又は好ましくはそれぞれの第２の板３２の厚みより大きい。この距離は、挿入物２８、３８によって定められ、維持される。挿入物２８、３８はそれぞれ、二つの板２２の間、二つの板３２の間に介在され、例えばねじ又はこれに類するものによって、そこに固定される。挿入物２８、３８の目的はまた、曲げの間にハーフ部に対して金属板によって加えられる強い力に耐えるように、ハーフ部２０、３０の剛性を高めることである。

【0074】

本発明によると、第１の板２２および第２の板３２は、ダイ１の長手方向Ｘに沿って互いに交互に配置される。このようにして、第１のハーフ部２０および第２のハーフ部３０のそれぞれの面２１、３１は、型キャビティＣを形成するように互いに向かい合う。板２２、板３２はそれぞれ、ベース１０の上側表面１３上に摺動するように載る平坦な下側面２３、３３を有する。ハーフ部２０、３０の横断方向Ｙに沿った、互いへ向かう又は互いから離れる移動をすると、型キャビティＣの幅を変化させ、曲げの間、ダイ１が異なる幅の又は異なる曲げ半径を有する金属板を支持できる。

【0075】

好ましい形態によると、板２２、３２は、上側中央部２２ａ、３２ａ、およびダイのそれぞれの側部に向かって延在する下側端部２２ｂ、３２ｂを備え、上側中央部２２ａ、３２ａの間にキャビティＣが形成される。好ましくは、端部２２ｂ、３２ｂは、実質的に一定の高さを有する。すなわち、ベース１０の上側表面１３に実質的に平行な上側サイド２６、３６を有する。

【0076】

ダイ１は、本発明によると、互いに向かう又は互いから離れる前述の移動をハーフ部２０、３０に伝えるように構成された、全体的に４０で示される移動装置を設けられる。

【0077】

移動装置４０は、シャフト４１、並びに複数の第１の誘導部２４および第２の誘導部３４を備える。シャフト４１は、ダイの長手方向Ｘに沿って延在する。複数の第１の誘導部２４および第２の誘導部３４は、第１の板２２および第２の板３２にそれぞれ得られ、シャフト４１を摺動自在に受けるように適合される。

【0078】

第１の板２２’にある少なくとも第１の誘導部２４’および第２の板３２’にある少なくとも第２の誘導部３４’はそれぞれ、第１のラック２５および第２のラック３５に関連付けられる。シャフト４１に取り付けられた第１のピニオン４２は、第１のラック２５とかみ合い、一方、第２のピニオン４３は、第２のラック３５とかみ合う。

【0079】

本発明によると、移動装置は、シャフト４１の回転に応じて、ピニオン４２、４３がラック２５、３５を反対方向に動かし、関連する板２２’、３２’を、したがってハーフ部２０、３０を、互いから離れるように又は互いへ向かって移動させるように構成される。

【0080】

好ましい形態によると、誘導部２４、３４は、好ましくは一定の幅の、直線のスロットを備える。典型的には、誘導部２４、３４の幅は、シャフト４１の直径と、すなわち、誘導部に収容されるシャフト４１の部分の直径とおおむね同一である。

【0081】

ハーフ部２０、３０が互いに関して動くとき、シャフト４１は、第１の誘導部のスロットおよび第２の誘導部のスロットに沿って同時に摺動できる。

【0082】

ピニオン４２、４３の大きさおよびラック２５、３５の大きさ（特にモジュール）を制限するために、移動装置は好ましくは、少なくとも二つ以上の第１のピニオン４２および二つ以上の第２のピニオン４３を備える。好適には、第１のピニオンの組および第２のピニオンの組は、ダイの長手方向Ｘに沿って均一的に配置される。

【0083】

このようにして、板２２、３２に加えられた押圧力は、長手方向に沿っていくつかの箇所に分配され、ハーフ部２０、３０の移動を流動的にする。

【0084】

本発明の好ましい形態によると、誘導部２４、３４、すなわちシャフト４１の摺動方向Ｓ１、Ｓ２（図４、図５参照）は、傾斜して一点に集まっている。前述の方向Ｓ１、Ｓ２の間に構成された角度は好ましくは、１００°から１３０°の間で構成され、より好ましくは約１１０°である。

【0085】

上述されたように、誘導部２４、３４の当該傾斜配置は、それぞれの板２２、３２の、前部表面、したがって重量を減らすことができる。

【0086】

より詳細には、上記で示された誘導部の配置にすると、下側摺動面２３、３３が得られる下側部分での板の大きさを制限できる。実際、この部分は、ハーフ部により大きな安定性を与えるように、板の残りの部分より大きな幅を有する。しかしながら、ハーフ部２０、３０およびダイ１の全体重量を制限するために、必要な機械的強度に合わせて、可能な限り当該下側部分の高さの拡張を減らすことが好ましい。

【0087】

本発明によると、ダイ１は、ベース１０に実質的に垂直な方向Ｚに沿って、すなわち、ハーフ部２０、３０の移動方向に、シャフト４１を誘導するためにさらなる誘導手段１４を備えられる。

【0088】

実際、誘導部２４、３４の傾斜配置は、誘導部に沿った摺動中、ハーフ部２０、３０が互いに向かって動かされたとき、シャフト４１が上向きに、またはハーフ部２０、３０が互いから離れるように動かされたとき、シャフト４１が下向きに移動されることを確保する。

【0089】

誘導手段は、ベース１０と一体になったブラケット１５を備え、そこでシャフト４１を摺動自在に受けるように適合されたスロット１６が得られる。

【0090】

スロット１６は、平面に合わせられたシャフト４１を保持し、ハーフ部２０、３０が互いに関して対称に動くことができるように平面Ｐｍに合わせられる。

【0091】

好適には、スロット１６で、シャフト４１は、前述のスロット１６でのシャフトの移動を容易にするためにベアリング４４を設けられる。

【0092】

スロット１６は好ましくは、シャフト４１の実用的かつ素早い設置または除去を可能とするように上側部分に開口がある。

【0093】

本発明によると、シャフト４１は、手動で又は自動的に回転され得る。例えば、シャフト４１は、レバー、フライホイール若しくはこれに類するもの、または代替的に、電気モータ、若しくはその他の電気式若しくは空気圧式アクチュエータに接続され得る。

【0094】

本発明による移動装置はしたがって、金属板の異なる厚みまたは異なる曲率半径などの、異なる動作パラメータでの曲げ動作にダイを使用できるようにするために、二つのハーフ部２０、３０の関連する位置または「開口」を変化させることを可能にする。添付図面６ａおよび図面６ｂは、最小開口位置および最大開口位置での本発明によるダイをそれぞれ示す。

【0095】

本発明によると、ダイ１は、前述の最小開口位置および最大開口位置だけでなく一つ以上の特定の中間開口位置で、第１のハーフ部２０と第２のハーフ部３０とをクランプするためのクランプシステムを備えられ得る。

【0096】

すでに上述したように、本発明によると、当該クランプシステムは、上気された二つのハーフ部の移動システムまたは（既知または未知にかかわらず）任意のその他の移動システムを備えられた調整可能なダイに適用され得る。

【0097】

第１の形態によると、クランプシステムは、ダイの長手方向Ｘに実質的に平行に延在するクランプロッド５０を摺動自在に収容する少なくとも一つのシート１７を備える。

【0098】

シート１７は、いくつかの部分、少なくとも一つの下側部および上側部を備え、当該部分は、互いに向かい合うことができる。

【0099】

より詳細には、下側シート部１８は、ベース１０の上側表面１３上に得られる。下側部１８は典型的には、ダイの長手方向に平行に延在する溝の形状を有する。当該溝は好ましくは、連続しており、一定の大きさの断面を有する。

【0100】

シートの上側部１７は、一つ以上の第１の板２２の下側表面２３で得られる上側部２７、および一つ以上の第２の板３２の下側表面３３で得られる上側部３７を備える。

【0101】

下側部１８および上側部２７、３７が、ダイの長手方向で互いに整列されているとき、下側部１８および上側部２７、３７は、クランプロッド５０が摺動できるシート１７を形成する。

【0102】

ベース１０に関する板２２、３２のクランプは、シート１７とクランプロッド５０の断面との実質的に相補的な形状によって、保証される。好ましくは、クランプロッド５０の摺動を容易にするために、およびクランプロッドが板２２、３２の間で動かなくなるのを防ぐために、シートの上側部２７、３７は、クランプロッド５０の幅およびシートの下側部１８の幅よりわずかに大きな幅を有する。

【0103】

好ましい実施形態によると、クランプロッド５０は、上側部分に複数の横方向のノッチ５１（図７参照）を設けられた、中実の又は円柱の形状を備える。ノッチ５１は、第１の板２２または第２の板３２と、隣り合う板との間の距離の約半分に等しいピッチで、互いに距離をあけて、連続して配置される。ノッチ５１の幅は代わりに、少なくとも第１の板２２および第２の板３２の厚みに少なくとも等しい。好ましくは、ノッチの下側エッジ５１ａは、シート１７の下側部１８の深さより低い高さを有する。

【0104】

一つのノッチ５１と隣接するノッチとの間に、クランプロッド５０は代わりに、シート１７の下側部１８の深さより、大きな大きさの断面を、すなわち、大きな高さを備える断面を有する部分５２を有する。

【0105】

クランプロッド５０がシート１７に挿入され、かつ部分５２が板２２、３２のシートの上側部２７、３７に合わせられたとき、板２２、３２は、ハーフ部２０、３０がベース１０で移動するのを防ぐようにクランプされ得る。

【0106】

ハーフ部２０、３０を互いから離れるようにまたは互いに向かって動かすためには、ノッチ５２に板２２、３２を合わせるようにシート１７内でクランプロッド５０を摺動させれば十分である。当該位置で、板２２、３２は、ノッチ５１を通ってクランプロッド５０を自由に通ってベース１０の上側表面１３上を摺動できる。

【0107】

本発明の好ましい形態によると、クランプシステムは、同じ板２２、３２にシートのいくつかの上側部２７、３７を備える。例えば、それぞれの板２２、３２は、二つ以上の上側部２７、３７が得られる。シートの前述の上側部は、いくつかのシート１７、すなわちいくつかの位置を形成するように配置され、前述の上述部は、いくつかの位置にクランプロッド５０を収容するように下側部１８に合わせられる。

【0108】

このようにして、ダイは、ハーフ部２０、３０の異なる開口状態で、様々なクランプ位置を有することができる。したがって、ダイは、プレスでの異なる構成部品を除去し、再配置する必要なく、互いに実質的に異なる厚みおよび曲げ半径を有する金属板の曲げることを可能とする。

【0109】

任意選択的に、シートのいくつかの下側部１８はまた、少なくとも一つのシート位置１８および上側部２７、３７が合わせられる開口を増やすためにベース１０で得られる。

【0110】

一つの開口位置（またはクランプ位置）と別の位置との間でのハーフ部２０、３０の移動は、ツールまたはその他の器具を使うことなく簡潔かつ速やかに行われる。

【0111】

シャフト４１が電気モータ、すなわち、自動的に駆動するものに連結された場合、電気モータ等は、所望の開口位置（またはクランプ位置）でのハーフ部に自動的に配置するように構成された電子制御に関連付けられる。

【0112】

図８、図９、図１０ａ～図１０ｃは、別の好ましい形態によるクランプシステムを設けられたダイを示す。

【0113】

本形態において、複数の溝１９がベース１０の上側表面１３に得られ、互いに、かつダイの長手方向Ｘに平行である。溝１９は、ベース１０の長さの一部に、または好ましくは全体に延在する。

【0114】

一つ以上のクランプ歯２９、３９が、少なくとも一つの、いくつかの、または全ての第１の板２２および第２の板３２の下側表面２３、３３で得られる。

【0115】

ハーフ部２０、３０のクランプ位置では、ハーフ部の下側表面２３、３３がベース１０の上側表面１３に載っているとき、クランプ歯２９、３９は、溝１９のいくつかと係合する。

【0116】

クランプ歯の形状および溝の形状のそれぞれは、曲げ動作の間に発生された通常の力に対抗するために、ハーフ部２０、３０が、少なくとも互いから離れる方向への移動を拘束されるようにする。

【0117】

例えば、溝１９およびクランプ歯２９、３９は、ベース１０の上側表面１３およびハーフ部２０、３０の下側表面２３、３３に対して垂直に配置された平坦なゲージ表面１９ａ、２９ａ、３９ａを有する（図９参照）。

【0118】

クランプ歯のゲージ表面２９ａ、３９ａは、ダイの使用状態で、すなわち曲げている間、溝１９のそれぞれのゲージ表面１９ａに対して押し込む。

【0119】

好ましい実施形態によると、少なくともクランプ歯２９、３９は、そして好ましくは溝１９も、ゲージ表面と反対側の、クランプ歯の溝への挿入を容易にする、傾斜した側面１９ｂ、２９ｂ、３９ｂを有する。

【0120】

図９の例では、基礎は、第１のハーフ部２０のクランプ歯２９および第２のハーフ部３０のクランプ歯３９をそれぞれ受けるように意図された、溝の第１の配列１９１および第２の配列１９２を備える。

【0121】

配列１９１と配列１９２のゲージ表面１９ａおよび傾斜した側面１９ｂは、したがって、実質的に対称である。

【0122】

本発明によると、クランプ歯２９の間、クランプ歯３９の間の距離、すなわちピッチは、いくつかのクランプ歯を同じ数の溝に挿入できるように、一定であり、溝１９の間の距離と実質的に同一である。

【0123】

それぞれの配列１９１、１９２の溝１９の数は一般的に、少なくとも一つのユニットによるクランプ歯２９、３９の数に対して多い。このようにして、クランプ装置は、ダイの少なくとも二つの開口位置をとれる。好ましくは、溝は、二つ、三つまたはそれ以上の開口位置をとれるように多い。

【0124】

本発明によると、クランプシステムはまた、図１０ａから図１０ｃで全体的に符号７０で示された持ち上げシステムを備える。持ち上げシステムは、溝１９からクランプ歯２９、３９を外し、異なるクランプ位置から離れるまたは異なるクランプ位置へ向かうハーフ部が移動できるようにするために、ハーフ部２０、３０を持ち上げるように適合される。

【0125】

より詳細には、持ち上げシステムは、第１のハーフ部２０および第２のハーフ部３０の連続し、かつ隣接する板２２、３２の間に介在された連結部７１を備える。連結部７１のこの位置は、ベース１０の寸法およびダイ全体としての寸法を制限できるようにする。

【0126】

好ましい実施形態によると、連結部７１は、少なくとも一つの揺動誘導部７２、および少なくとも一つの板２２、３２と一体になった少なくとも一つのゲージ７３を備える。好適には、揺動誘導部７２は、ある点、好ましくは一つの端部７２ａで前述の連続する板２２、板３２の一方または両方にヒンジで連結される。このようにして、揺動誘導部７２は、待機位置（図１０ａ、図１０ｃ参照）から、持ち上げられた位置（図１０ｂ参照）へと振動できる。待機位置では、揺動誘導部７２はハーフ部２０、３０と係合しない。持ち上げられた位置では、揺動誘導部７２はハーフ部を持ち上げ、溝１９からクランプ歯２９、３９を外すためにゲージ７３と係合する。

【0127】

好ましくは、ゲージ７３は、摺動ベアリングまたはそれに類するもののような、ロール手段または摺動手段を備え、これは揺動誘導部により摩擦を減らし、ベース１０に対するハーフ部の移動を容易にする。

【0128】

図で示された揺動誘導部７２の、特にヒンジ点７４の配置、およびゲージ７３の配置は、実施形態の想定される例として考えられなければならない。

【0129】

クランプ歯の位置、形状および大きさに応じて、揺動誘導部７２の配置およびゲージ７３の配置は、図１０ａから図１０ｃで示された構成に対して変化できる。

【0130】

本発明によると、揺動誘導部の振動は、ベース１０に取り付けられたアクチュエータ７５によって制御される。アクチュエータは、ベース１０の上側表面１３の下で、ベース１０に組み込まれた本体７５ａ、および揺動誘導部７２に接触するように面を越えて突出するアクティブ移動部７５ｂを備える。アクチュエータ７５の上側への押し込みは、待機位置と持ち上げ位置との間での揺動誘導部７２の回転／振動を発生させる。

【0131】

アクチュエータ７５は好ましくは、空気圧式アクチュエータ、または代替的に油圧アクチュエータ、電気線形アクチュエータ、電磁アクチュエータ若しくは同等の装置である。

【0132】

説明の明確性のために、前述の図１０ａから図１０ｃでは、ハーフ部２０のみが示されている。反対側のハーフ部３０の持ち上げシステムの配置は、表示されているものに対して実質的に対称である。

【0133】

本発明によると、ダイ１は、ベース１０に対するハーフ部２０、３０の垂直運動（例えば回転）を防ぐように適合された拘束手段６０を設けられる。実際、曲げの間、それぞれのハーフ部２０、３０上の金属板によって加えられるパンチの力は、垂直成分と、実質的に水平な成分を有する。曲げ角度が小さくなるにつれて増加する、当該水平な力の成分は、ベースに対してハーフ部２０、３０を部分的に持ち上げて傾ける傾向がある。拘束手段は、パンチの非常に大きな曲げ応力の場合でも当該減少を防ぐように適合される。

【0134】

本発明の好ましい形態によると、拘束手段６０は、ベース１０の外側縁で拘束された一対のブラケット６１を備える。それぞれのブラケット６１は、一つ以上の板２２、３２の端部２２ｂ、３２ｂと、ベース１０の上側表面１３上に端部が実質的に載っている状態を保持するように、係合する。

【0135】

好ましくは、ブラケット６１は、恒久的に、または単に一時的にベース１０に（例えばねじ６３またはそれに類するものを用いて）固定された、実質的に平坦なシートを備える。シートは、ベース１０の上側表面に対して実質的に直角な位置、すなわち実質的に垂直な位置にある。シートは、複数の開口６２であって、第１の板２２および第２の板３２のそれぞれの端部２２ｂ、３２ｂがそこを通じて摺動できる複数の開口６２を有する。好ましくは、開口６２は、端部２２ｂ、３２ｂの幅と実質的に同等の幅を有する。このようにして、ダイ１が使用されるとき、端部の上側サイド２６、３６と摺動自在に係合する当接エッジ６２ａによって垂直方向にクランプされて保持されるが、端部２２ｂ、３２ｂは開口６２で摺動できる。

【0136】

ブラケット６１は、ワンピース（一部品）、またはベース１０とは独立して連結されたいくつかの部品で作られる。それぞれの部品は、一つ以上の開口６２を備えることができる。

【0137】

示されていないが、別の形態によると、シートは、実質的にハーフ部２０、３０の長さ全体に延在する単一の開口を形成する、アーチ形状の部材を備える。単一の連続する当接エッジは、端部２２ｂ、３２ｂの上側サイド２６、３６と接触している。

【0138】

図８に示された、好ましい形態によると、スペーサ２８ｂ、３８ｂは、板の任意の曲げを制限し、そして互いに完全な平行を保持するのに役立つように、板２２の端部２２ｂの間、板３２の端部３２ｂの間に介在される。

【0139】

本発明は単に、いくつかの好ましい実施形態による、説明および非限定的な目的のために記載されている。当業者は、多くの他の実施形態および形態を気付くが、全ては以下の特許請求の範囲内に含まれる。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6a】

【図6b】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10a】

【図10b】

【図10c】