(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】粉末流動改善用添加剤
(51)【国際特許分類】
C08L 101/14 20060101AFI20220621BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20220621BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20220621BHJP
C01B 33/40 20060101ALI20220621BHJP
C01B 33/22 20060101ALI20220621BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C08L101/14
C08L91/06
C08K3/34
C01B33/40
C01B33/22
C08L33/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020100723
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0068018
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520206276
【氏名又は名称】トンド ニュー テック シーオー., エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】DONG DO NEW TECH CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ナクチョン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン シンジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジテク
【審査官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1528470(KR,B1)
【文献】特開平01-315426(JP,A)
【文献】特開平02-088695(JP,A)
【文献】特開平11-012583(JP,A)
【文献】特開2002-137337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性高吸水性樹脂と、ポリマーワックスとを含
み、
前記ポリマーワックスは、ポリエチレンワックスであり、
前記ポリエチレンワックスは、軟化点が95~110℃であり、140℃での粘度が100~300cpsである、粉末流動改善用添加剤。
【請求項2】
タルク粒子をさらに含む、請求項1に記載の粉末流動改善用添加剤。
【請求項3】
前記アニオン性高吸水性樹脂は、複数個のアニオン性高吸水性樹脂の一次粒子が凝集して形成された多相の二次粒子であり、前記アニオン性高吸水性樹脂の一次粒子の境界面に前記タルク粒子が位置し、下記の関係式1および関係式2を満たす複合粒子である、請求項2に記載の粉末流動改善用添加剤。
[関係式1]
500<D
2/D
1<2,000
(前記D
1は、タルク粒子の平均粒径であり、D
2は、アニオン性高吸水性樹脂の乾燥状態の平均粒径である。)
[関係式2]
2,000<D
3/D
1<15,000
(前記D
1は、タルク粒子の平均粒径であり、D
3は、アニオン性高吸水性樹脂に5分間脱イオン水を吸収させた後、膨潤したアニオン性高吸水性樹脂の平均粒径である。)
【請求項4】
前記アニオン性高吸水性樹脂は、カルボキシル基を含むアクリル系重合体およびこれらの塩から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物である、請求項1に記載の粉末流動改善用添加剤。
【請求項5】
前記ポリマーワックスおよびアニオン性高吸水性樹脂の重量比は、1:2~20である、請求項1に記載の粉末流動改善用添加剤。
【請求項6】
前記粉末流動改善用添加剤は、カチオン性シリケート、カチオン性ゼオライト、カチオン性ベントナイト、カチオン性カオリナイト、カチオン性ディッカイト、カチオン性酸性白土およびカチオン性海緑石から選択されるいずれか一つまたは二つ以上のイオン交換性粒子をさらに含む、請求項1に記載の粉末流動改善用添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末流動改善用添加剤に関する。詳細には、粉末状の原料に存在する水分を効果的に吸収して凝集を防止し、流動性を向上させる粉末流動改善用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野において使用される粉末状原料、例えば、火力発電所で使用される石油コークス(petroleum cokes)や石炭などは、高い吸湿性を有するが、これらの湿気の除去処理は、工程において非常に重要である。
【0003】
具体的には、石油コークスは、燃料効率を高めるために、微粉砕機(pulverizer)を用いて粉砕した粉末状が使用されるが、これは、気孔が多く、内部の水分が漏れ難いという特性がある。
【0004】
そのため、梅雨時や湿度の高い環境に露出し空気中の水分を吸収する場合、石油コークスの粒子間の凝集性および付着性が強くなり、互いにからみ合うという問題が生じる。また、水分を含む石油コークスが給炭管に流入されて給炭管の内側軸管部に付着しやすく、付着する石油コークスの累積に伴い、焼却炉の効率が著しく減少し、安定性が低下するという問題がある。
【0005】
石炭は、水分含有量が多いほど品質が低下する。高水分の低品質石炭は、石炭取り扱い設備、例えば、石炭運送設備、スクリーン、粉砕機、給炭機などの詰まりをもたらし、発電運営停止の障害を誘発する。それだけでなく、これを燃消させる場合、不完全燃焼および潜熱損失によってボイラーの熱効率が減少するという問題がある。特に、循環流動層発電所では、石炭を常温で移送し炉内(in‐pile)に注入するが、高水分の低品質石炭が石炭取り扱い設備の詰まりをもたらし深刻な問題を誘発するため、一般的に、水分の含量を12%以下に維持して管理している。
【0006】
かかる粉末状原料の吸湿性による問題を解決するために、粉末状原料を燃焼して水分を空気中に排出する方式を採択しているが、この場合、熱による原料の変質を誘発することがあり、融点が低いか、高温に敏感な原料の場合には、かかる技術を適用し難いという欠点がある。
【0007】
また、熱風乾燥装置を使用するか、給炭機にハンマーを設置することで、水分によって凝集した原料を除去している方式も採択しているが、これは、さらなる装置または工程を追加しなければならず、そのため、工程コストが増加するという問題がある。
【0008】
したがって、粉末状原料の変質を誘発しないとともに、迅速かつ効率的に水分の除去が可能であり、特に、石油コークスおよび石炭に適用し、これらの凝集を防止し、流動性を向上させることができる添加剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国登録特許公報10‐1114522号(2012.02.02)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、空気中の水分を吸収することで、粉末状原料が凝集しないようにし、移送時に流動性を向上させる粉末流動改善用添加剤を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、石油コークスまたは石炭などの粉末に添加することで、移送時に移送管に付着するか移送管が詰まることを防止し、前記粉末の安定した供給が可能な粉末流動改善用添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するための本発明は、アニオン性高吸水性樹脂と、ポリマーワックスとを含む粉末流動改善用添加剤を提供する。
【0013】
本発明の一態様において、前記粉末流動改善用添加剤は、タルク粒子をさらに含むことができる。
【0014】
本発明の一態様において、前記アニオン性高吸水性樹脂は、複数個のアニオン性高吸水性樹脂の一次粒子が凝集して形成された多相の二次粒子であり、前記アニオン性高吸水性樹脂の一次粒子の境界面にタルク粒子が位置し、下記の関係式1および関係式2を満たすことができる。
[関係式1]
500<D2/D1<2,000
(前記D1は、タルク粒子の平均粒径であり、D2は、アニオン性高吸水性樹脂の乾燥状態の平均粒径である。)
[関係式2]
2,000<D3/D1<15,000
(前記D1は、タルク粒子の平均粒径であり、D3は、アニオン性高吸水性樹脂に5分間脱イオン水を吸収させた後、膨潤したアニオン性高吸水性樹脂の平均粒径である。)
【0015】
本発明の一態様において、前記複合粒子は、アニオン性高吸水性樹脂100重量部に対して、タルク粒子を5~25重量部含むことができる。
【0016】
本発明の一態様において、前記タルク粒子は、平均粒径が1~800nmであってもよい。
【0017】
本発明の一態様において、前記複合粒子は、アニオン性高吸水性樹脂を粉砕して、一次粒子を製造するステップと、前記一次粒子とタルク粒子を撹拌して、前記一次粒子の表面にタルク粒子を吸着させるステップと、前記タルク粒子が吸着された複数個の一次粒子を凝集させて、二次粒子を製造するステップとにより製造され得る。
【0018】
本発明の一態様において、前記アニオン性高吸水性樹脂は、カルボキシル基を含むアクリル系重合体およびこれらの塩から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0019】
本発明の一態様において、前記ポリマーワックスおよびアニオン性高吸水性樹脂の重量比は、1:2~20であってもよい。
【0020】
本発明の一態様において、前記ポリマーワックスは、ポリエチレンワックスであってもよい。
【0021】
本発明の一態様において、前記ポリエチレンワックスは、軟化点が95~110℃であり、140℃での粘度が100~300cpsであってもよい。
【0022】
本発明の一態様において、前記粉末流動改善用添加剤は、陽イオン交換容量が30~600meq/100gであるイオン交換性粒子をさらに含むことができる。
【0023】
本発明の一態様において、前記イオン交換性粒子は、カチオン性シリケート、カチオン性ゼオライト、カチオン性ベントナイト、カチオン性カオリナイト、カチオン性ディッカイト、カチオン性酸性白土およびカチオン性海緑石から選択されるいずれか一つまたは二つ以上のカチオン性無機粒子であってもよい。
【0024】
本発明の一態様において、前記イオン交換性粒子は、粉末流動改善用添加剤100重量部に対して、5~15重量部含むことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明による粉末流動改善用添加剤は、粉末状の原料に存在する水分を迅速に吸収するだけでなく、水分によって膨潤する粉末流動改善用添加剤の間、または前記添加剤と粉末状の原料との間の凝集を最小化し、原料の流動性を向上させるという効果を有する。
【0026】
また、本発明による粉末流動改善用添加剤は、粉末状原料の流動性を著しく向上させることで、保管環境および気象条件によって引き起こされる原料の品質の低下を防止するという効果を有する。
【0027】
また、本発明による粉末流動改善用添加剤は、粉末状原料の移送時に、空気中の水分の吸収による流動化速度の減少および移送管の詰まりを防止し、工程安定性を確保するという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施例および比較例による凝集度実験結果((a)実施例1、(b)比較例1)を写真で示す図である。
【
図2】本発明の実施例による流動化速度を測定する移送測定試験装置を写真で示す図である。
【
図3】本発明の実施例による流動化速度測定過程((a)→(b)→(c))を写真で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を含む具体例または実施例により、本発明をより詳細に説明する。ただし、下記の具体例または実施例は、本発明を詳細に説明するための一つの参照であって、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な形態に具現され得る。
【0030】
また、他に定義されない限り、すべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者の一人が一般的に理解している意味と同じ意味を有する。本発明で説明に使用される用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限することを意図しない。
【0031】
また、明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形態は、文脈で特別な指示がない限り、複数形態も含むことを意図し得る。
【0032】
また、本発明の明細書で特別な言及なしに使用された単位は、重量を基準とし、一例として%または比の単位は重量%または重量比を意味する。
【0033】
また、本発明の明細書で他の定義がない限り、重合体の分子量は、重量平均分子量を意味する。
【0034】
また、本発明の明細書で他の定義がない限り、粒子の平均粒径は、粒度分析装置を介して得られたD50を意味する。
【0035】
また、本発明の明細書で使用される数値範囲は、下限値と上限値とその範囲内でのすべての値、定義される範囲の形態と幅で論理的に誘導される増分、二重限定されたすべての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限のすべての可能な組み合わせを含む。
【0036】
本発明は、粉末状の原料に存在する水分を効果的に吸収することで、水分による凝集を防止し、流動性を向上させる粉末流動改善用添加剤に関する。
【0037】
本発明による粉末流動改善用添加剤は、アニオン性高吸水性樹脂およびポリマーワックスを含む。本発明の粉末流動改善用添加剤は、著しく優れた吸水性を有することで、粉末状の原料、具体例として、吸湿性を有する粉末状の材料、火力発電所で使用される石油コークスまたは石炭のような粉末状原料の凝集を防止し、流動性を向上させる効果に優れる。
【0038】
本発明で使用する用語「石油コークス」は、石油処理過程で得られた高沸点炭化水素分類物(残渣石油コークス)の固体熱分解生成物およびタールサンド処理過程の固体熱分解生成物をいずれも含むものであり、かかる炭化生成物は、未加工のか焼された沈床および流動層石油コークスを含む。
【0039】
前記残渣石油コークスは、例えば、高比重の残渣原油の改質に使用されるコークス化工程によって誘導され得、前記タールサンド石油コークスは、例えば、オイルサンドの改質に使用されるコークス化工程によって誘導され得るが、これに制限されるものではない。
【0040】
また、本発明で使用する用語「石炭」は、地質時代の生物が堆積、埋沒された後、熱と圧力の作用を受けて変質生成された黒褐色の可燃性鉱物の通称であり、一般的に、炭素含有量によって分類される泥炭(peat)、亜炭(lignite)、褐炭(brown coal)、瀝青炭(bituminous coal)および無煙炭(anthracite)だけでなく、製鉄用および火力発電用として使用されるコークス(coking coal)、すなわち、強粘結炭、部分強粘結炭、弱粘結炭および部分弱粘結炭をいずれも含む。
【0041】
本発明の一態様において、前記粉末流動改善用添加剤は、タルク粒子をさらに含むことができ、前記タルク粒子をアニオン性高吸水性樹脂およびポリマーワックスとともに使用する場合、他の無機粒子を使用することに比べ、本発明が目的とする粉末状原料の流動性の向上および迅速な流動化速度を与える効果をより容易に奏することができる。
【0042】
本発明の一態様において、前記アニオン性高吸水性樹脂は、複数個のアニオン性高吸水性樹脂の一次粒子が凝集して形成された多相(multiphase)の二次粒子であり、前記アニオン性高吸水性樹脂の一次粒子の境界面にタルク粒子が位置し、下記の関係式1および関係式2を満たす複合粒子であってもよい。
[関係式1]
500<D2/D1<2,000
(前記D1は、タルク粒子の平均粒径であり、D2は、アニオン性高吸水性樹脂の乾燥状態の平均粒径である。)
[関係式2]
2,000<D3/D1<15,000
(前記D1は、タルク粒子の平均粒径であり、D3は、アニオン性高吸水性樹脂に5分間脱イオン水を吸収させた後、膨潤したアニオン性高吸水性樹脂の平均粒径である。)
【0043】
前記複合粒子は、具体的には、アニオン性高吸水性樹脂の一次粒子の境界面にタルク粒子が位置した形態であり、複数個の一次粒子が凝集して形成された多相の二次粒子からなる複合粒子であってもよい。
【0044】
特に、本発明のポリマーワックスを前記の関係式1および関係式2を満たす複合粒子とともに使用することによって、粉末流動改善用添加剤の吸水性が著しく向上し、粉末状の原料、具体例として吸湿性を有する粒子形態のプラスチック材料、火力発電所で使用される石油コークスまたは石炭のような粉末状原料の凝集を防止し、流動性を向上させる効果に優れる。
【0045】
本発明のアニオン性高吸水性樹脂は、アニオン性官能基を含む高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)として固体粉末状である。これは、水に入ると、瞬間的に水を吸収し膨潤してゲル化する性質を有する。この際、「膨潤(swell)」は、水分がアニオン性高吸水性樹脂によって吸収されるうちに発生するアニオン性高吸水性樹脂のサイズ成長を意味する。前記アニオン性高吸水性樹脂は、アニオン性官能基を含む1種または2種以上の単量体を重合した後、乾燥して得ることができ、乾燥後に得られたアニオン性高吸水性樹脂は、アニオン性高吸水性樹脂の一次粒子が凝集し、より大きい二次粒子の形態で存在することができる。また、前記二次粒子は、公知のロールミル(roll mill)、ビーズミル(beads mill)などの粉砕機を使用し、一次粒子に粉砕することができる。
【0046】
本発明の一態様において、前記アニオン性高吸水性樹脂は、カルボキシル基を含むアクリル系重合体およびこれらの塩から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。前記アニオン性高吸水性樹脂は、カルボキシル基を官能基として含む繰り返し単位を高分子の主鎖に含み、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの塩からなる群から選択されるいずれか一つ以上の単量体から由来した繰り返し単位を含むアクリル系重合体であってもよい。すなわち、前記のアクリル酸、メタクリル酸およびこれらの塩がそれぞれ重合されて、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸塩およびポリメタクリル酸塩に製造され得、本発明によるアニオン性高吸水性樹脂の好ましい物質として使用され得る。
【0047】
また、前記アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの塩は、重合されてホモポリマーの形態のアクリル系重合体として使用され得るが、他の単量体、例えばデンプン、ゼラチン、多価アルコールおよびグリコール系化合物などから由来した共単量体と共重合されてアクリル系共重合体の形態で使用されることもできる。
【0048】
本発明の一態様によるアニオン性高吸水性樹脂は、複数のアニオン性高吸水性樹脂の一次粒子が凝集して多相に形成された二次粒子であり、水に不溶性であり、粒子内に多量の水を吸収して膨潤し、圧力を加えても水を放出せず、固体形態を維持できる特性を有することができる。
【0049】
本発明のアニオン性高吸水性樹脂およびタルク粒子を含む複合粒子の構造は、より具体的には、アニオン性高吸水性樹脂の一次粒子の境界面にタルク粒子が位置し、かかるアニオン性高吸水性樹脂の一次粒子が二つ以上、すなわち、複数個が凝集して形成された多相の二次粒子からなり得る。
【0050】
また、下記の関係式1および関係式2を満たす複合粒子をポリマーワックスとともに使用することによって、吸湿性を有する粉末状の原料よりも迅速に水を吸収することで、原料の吸水を防止することは言うまでもなく、以降、水を吸収して膨潤したアニオン性高吸水性樹脂の間、アニオン性高吸水性樹脂とポリマーワックスとの間の凝集が最小化するという効果がある。
【0051】
[関係式1]
500<D2/D1<2,000
(前記D1は、タルク粒子の平均粒径であり、D2は、アニオン性高吸水性樹脂の乾燥状態の平均粒径である。)
【0052】
[関係式2]
2,000<D3/D1<15,000
(前記D1は、タルク粒子の平均粒径であり、D3は、アニオン性高吸水性樹脂に5分間脱イオン水を吸収させた後、膨潤したアニオン性高吸水性樹脂の平均粒径である。)
【0053】
関係式2において、前記アニオン性高吸水性樹脂1gを脱イオン水に5分間浸漬する場合、アニオン性高吸水性樹脂の重量に対して、脱イオン水を100~500倍、具体的には300~500倍吸収して膨潤し得るが、これに制限されるものではない。
【0054】
また、前記の関係式1は、具体的には800~1,500、より具体的には1,000~1,300を満たすことができ、前記の関係式2は、具体的には5,000~12,000、より具体的には7、000~10,000を満たすことができるが、これに制限されるものではない。前記範囲で関係式1および関係式2を同時に満たす複合粒子を使用する場合、粉末流動改善用添加剤の吸水性および粉末状の材料、具体的には、石油コークスまたは石炭のような粉末状原料の凝集防止の効果が著しく向上する。特に、湿度の高い環境で保管しても粉末状原料の間の凝集および品質低下なしに高品質の粉末状原料の提供が可能であり、移送時にも吸湿による流動化速度の減少および移送管の詰まりを防止することができる面でより効果的である。
【0055】
本発明の一態様において、前記アニオン性高吸水性樹脂の平均粒径は、100~1,000μm、具体的には150~850μm、より具体的には300~700μmであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0056】
また、前記タルク粒子は、平均粒径が1~800nm、具体的には5~600nm、より具体的には10~500nmであってもよく、前記範囲のタルク粒子をアニオン性高吸水性樹脂とともに使用して前記の関係式1および関係式2を満たす複合粒子で製造することによって、前記の関係式1および関係式2を効果的に満たすことができる。特に、前記平均粒径の範囲を有するタルク粒子を使用することによって、アニオン性高吸水性樹脂の一次粒子の境界面に、より効果的かつ均一にタルク粒子が分布され得、製造される複合粒子の膨潤度を著しく向上させることができる。
【0057】
本発明の一態様において、前記複合粒子は、アニオン性高吸水性樹脂100重量部に対して、タルク粒子を1~40重量部、具体的には2~30重量部、より具体的には5~25重量部含むことができるが、これに制限されるものではない。前記範囲のタルク粒子を使用してアニオン性高吸水性樹脂の一次粒子の境界面に位置させることで、製造される複合粒子の吸水量が極大化するとともに、粉末状原料に流動化を与える効果に優れ、原料の運搬性および流動化速度を著しく向上させる。
【0058】
本発明の一態様による複合粒子の製造方法は、アニオン性高吸水性樹脂を粉砕して、一次粒子を製造するステップと、前記一次粒子とタルク粒子を撹拌して、前記一次粒子の表面にタルク粒子を吸着させるステップと、前記タルク粒子が吸着された複数個の一次粒子を凝集させて、二次粒子を製造するステップとを含む。
【0059】
本発明の一態様による複合粒子は、具体的には、一次粒子に粉砕されたアニオン性高吸水性樹脂を水で膨潤させ、タルク粒子を投入および撹拌して前記一次粒子の表面にタルク粒子を吸着させた後、これを乾燥して、一次粒子が複数個凝集して形成された多相の二次粒子に製造することができる。より具体的には、例えば、アニオン性官能基を含む単量体を重合してから乾燥し、アニオン性高吸水性樹脂の一次粒子が凝集して形成された多相の二次粒子からなるアニオン性高吸水性樹脂を製造する。製造されたアニオン性高吸水性樹脂を公知のロールミル(roll mill)、ビーズミル(beads mill)などの粉砕機を使用して平均粒径10μm以下の一次粒子に粉砕し、これを水に投入して膨潤した後、タルク粒子を添加して撹拌する。これにより膨潤したアニオン性高吸水性樹脂の一次粒子の表面にタルク粒子が静電相互作用により効果的に吸着され得る。次に、これを乾燥することで、一次粒子の表面にタルク粒子が物理的吸着により位置した、アニオン性高吸水性樹脂の一次粒子が複数個凝集された形態のアニオン性高吸水性樹脂に製造可能であるが、前記製造方法に制限されない。
【0060】
本発明のポリマーワックスは、粉末状原料の間の空間で水分を複合粒子の方向に押し出し、吸水による粉末流動改善用添加剤の粘度の上昇を防止することができる。前記ポリマーワックスは、好ましくは500~50,000g/mol、より具体的には1,000~20,000g/molの重量平均分子量を有することができるが、これに制限されるものではない。
【0061】
前記ポリマーワックスとしては、具体例として、ポリエチレンワックス(polyethylene wax)、ポリプロピレンワックス(polypropylene wax)、ポリテトラフルオロエチレンワックス(polytetrafluoroethylene wax)、ポリテトラフルオロエチレン/ポリエチレンワックス(polytetrafluoroethylene/polyethylene wax)およびポリエチレン/アミドワックス(polyethylene/amide wax)から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0062】
本発明の一態様において、前記ポリマーワックスとしては、500~50,000g/mol、より具体的には1,000~20,000g/molの重量平均分子量を有するポリエチレンワックスを使用することができるが、これに制限されない。
【0063】
特に、前記ポリエチレンワックスを複合粒子とともに使用する場合、前記複合粒子の吸水速度がより向上するだけでなく、膨潤した複合粒子の表面の粘度を下げて、高い流動性を維持する効果に優れる。
【0064】
また、本発明のポリエチレンワックスは、軟化点が95~110℃であり、140℃での粘度が100~300cps、具体的には軟化点が100~108℃であり、140℃での粘度が130~250cpsであってもよい。前記範囲の軟化点および粘度を有するポリエチレンワックスを複合粒子とともに使用する場合、複合粒子の膨潤性および吸水速度がさらに向上し、多量の水分を迅速に吸収する面でより効果的である。
【0065】
特に、前記ポリエチレンワックスを使用することによって、複合粒子が高い吸水速度を示し、具体的には0.01~3mL/秒、より具体的には0.1~1mL/秒の優れた吸収速度を有するが、これに制限されない。
【0066】
また、前記ポリマーワックスの平均粒径は、0.1~100μm、具体的には10~50μmであってもよいが、これに制限されない。
【0067】
本発明の一態様において、前記ポリマーワックスおよび複合粒子の重量比は、1:2~20、具体的には1:4~10であってもよいが、これに制限されない。前記範囲の重量比を有するポリマーワックスおよびアニオン性高吸水性樹脂、好ましくはポリマーワックスおよび複合粒子を使用して粉末流動改善用添加剤を製造する場合、吸水による粘度の上昇の防止効果が著しく上昇する。これにより、粉末状原料に対して優れた長期保管安定性を与え、移送時にも凝集および吸着なしに安定して移送管を迅速に通過させることができ、効果的である。
【0068】
本発明の一態様において、前記粉末流動改善用添加剤は、イオン交換性粒子をさらに含むことができる。前記イオン交換性粒子は、水分子と交換可能なカチオンを有し、陽イオン交換容量(Cation Exchange Capacity、CEC)が30~600meq/100g、具体的には50~500meq/100gであってもよいが、これに制限されるものではない。前記範囲の陽イオン交換容量を有するイオン交換性粒子を含む場合、粉末流動改善用添加剤の分散性が向上し、粉末状の原料の間の凝集を最小化して、原料の流動性をより向上させるのに非常に効果的である。
【0069】
前記イオン交換性粒子は、カチオン性無機粒子であってもよく、具体的には、例えば、カチオン性シリケート、カチオン性ゼオライト、カチオン性ベントナイト、カチオン性カオリナイト、カチオン性ディッカイト、カチオン性酸性白土およびカチオン性海緑石から選択されるいずれか一つまたは二つ以上のカチオン性無機粒子であってもよいが、これに制限されない。また、前記カチオンとしてナトリウム、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、クロム、チタン、パラジウム、ゲルマニウムおよびガリウムなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上のカチオンが挙げられるが、これに制限されない。
【0070】
特に、本発明の複合粒子およびポリエチレンワックスとともに前記イオン交換性粒子として、ナトリウム型ベントナイト(Na‐ベントナイト)またはゼオライト(Na‐ゼオライト)を使用する場合、粉末流動改善用添加剤の水分吸着力および最大膨潤度がより向上する効果がある。具体的には、前記イオン交換性粒子は、層間(interlayer)カチオンが存在する層状構造の無機粒子として、水分子が吸収されることによってイオン交換性粒子内のカチオンイオンとの交換反応が生じ、体積が膨張し、優れた吸収能を示す。
【0071】
前記イオン交換性粒子は、平均粒径が1~300μm、具体的には10~150μmであってもよく、粉末流動改善用添加剤100重量部に対して、1~30重量部、具体的には5~15重量部で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0072】
また、本発明の粉末流動改善用添加剤は、粉末状原料の流動性をさらに向上させるために無機粒子をさらに含むことができる。前記無機粒子としては、例えば、酸化珪素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、アンチモン酸亜鉛(ZnSb2O6)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アンチモン(Sb2O5)、酸化ニオブ(Nb2O3)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化スズ(SnO2)および酸化ジルコニウム(ZrO2)などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合粒子を使用することができるが、これに制限されるものではない。前記無機粒子は、平均粒径が1~200μmであってもよく、全粉末流動改善用添加剤100重量部に対して、1~20重量部で添加され得るが、これに制限されるものではない。
【0073】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより詳細に説明する。ただし、下記実施例および比較例は、本発明をより詳細に説明するための一つの例示であって、本発明は下記実施例および比較例によって制限されるものではない。
【0074】
(評価)
(1)凝集度
試験用シリンダ(高さ210mm、直径60mm)に試験試料を入れて突き棒で試料をならした後、試験用シリンダの側面に設置されたロック装置を解除した後、シリンダを除去した時に試験試料の円柱形態が維持されるか否かを確認し、形態が維持されていると×、形態が維持されていないと○で表記した。この際、ならし工程は、シリンダに試料を完全に充填してからならした時にシリンダの全高さの約35%にした。
【0075】
(2)流動化速度
図2の移送測定試験装置を用いて、
図3のように移送速度を測定した。移送測定試験装置は、内部の底面を基準として投入角度が51゜であるものを使用した。前記移送用測定試験装置の内部に投入される試料の量をすべての試料が試験装置の外部に抜けるのにかかる時間で分けた値で測定した。
【0076】
[製造例]
ロールミル(roll mill)を用いて、平均粒径450μmのポリアクリル酸塩を粉砕し、平均粒径5.0μmのポリアクリル酸塩の一次粒子を製造した。次いで、粉砕したポリアクリル酸塩の一次粒子を水に投入し、5分間撹拌して膨潤させた後、前記ポリアクリル酸塩100重量部に対して、平均粒径450nmのタルク15重量部を投入した。これを10分間撹拌してポリアクリル酸塩の一次粒子の表面にタルク粒子を吸着させた後、沈殿物を取り出し、完全に乾燥して、表面にタルク粒子が吸着されて位置した一次粒子が凝集された複合粒子を製造した。製造された複合粒子を顕微鏡で観察した結果、表面にタルク粒子が位置したポリアクリル酸塩の一次粒子が複数個凝集して形成された多相の二次粒子に製造されたことを確認し、粒度分析装置(HORIBA、LA‐950 Laser Particle Size Analyzer)により複合粒子の平均粒径(D50)を分析した結果、585μmであることを確認した。
【0077】
また、製造された複合粒子を5分間脱イオン水に浸漬してから取り出し、膨潤した高吸水性樹脂の大きさを分析した結果、平均粒径が3,150μmであった。
【0078】
これにより、下記の関係式1のD2/D1値が1,300であり、関係式2のD3/D1値が7,000であることを確認した。
【0079】
[比較製造例]
平均粒径450μmのポリアクリル酸塩100重量部および平均粒径450nmのタルク15重量部をミキサ装置で混合し、混合粒子を製造した。
【0080】
[実施例1]
5.6mmのふるいを通過した石油コークスを110℃の乾燥装置で24時間完全に乾燥した。乾燥した石油コークス50gに蒸留水10gを投入し、濡れた石油コークスを製造した。
【0081】
次いで、軟化点が103℃であり、140℃での粘度が180cpsであるポリエチレンワックス(平均粒径:25μm)10gと、平均粒径450μmのポリアクリル酸塩90gをミキサ装置に投入して混合し、粉末流動改善用添加剤を製造した。次に、濡れた石油コークスに前記製造された粉末流動改善用添加剤を入れて混合した後、凝集度および流動化速度を評価し、その結果を表1に記載した。また、
図1の(a)の結果により、試験試料の円柱形態が維持されず、簡単に崩壊したことを確認した。
【0082】
[実施例2]
前記実施例1で、粉末流動改善用添加剤の製造時に、平均粒径450nmのタルク粒子13.5gをさらに添加した以外は同様に実施して凝集度および流動化速度を評価し、その結果を表1に記載した。
【0083】
[実施例3]
前記実施例1で、ポリアクリル酸塩の代わりに前記製造例の複合粒子を使用した以外は同様に実施して凝集度および流動化速度を評価し、その結果を表1に記載した。また、凝集度評価の結果、試験試料の円柱形態が維持されず簡単に崩壊しただけでなく、シリンダの側面に残っている残余物がないことを確認した。
【0084】
[実施例4]
前記実施例3で陽イオン交換容量が63.9meq/100gであるNa‐ベントナイト((株)東海化学)を10重量部さらに投入して粉末流動改善用添加剤を製造した以外は、同様に実施して凝集度および流動化速度を評価し、その結果を表1に記載した。また、凝集度評価の結果、試験試料の円柱形態が維持されず簡単に崩壊し、シリンダの側面に残っている残余物がなく、シリンダの全高さに対して崩壊され残っている石油コークスの高さが最も低いことを確認した。
【0085】
[比較例1]
前記実施例1でポリエチレンワックスを使用していない以外は同様に実施して凝集度および流動化速度を評価し、その結果を表1に記載した。また、
図1の(b)の結果により、試験試料の円柱形態がそのまま維持され、流動化が容易でないことを確認した。
【0086】
[比較例2]
前記実施例1でポリエチレンワックスの代わりに、軟化点が125℃であり、重量平均分子量が105,000g/molであるポリエチレン(LUTENE CB2030 、LG化学)を使用した以外は同様に実施して凝集度および流動化速度を評価し、その結果を表1に記載した。
【0087】
[比較例3]
前記実施例1でポリエチレンワックスの代わりに、重量平均分子量が95,000g/molであるポリジメチルシロキサン(sigma‐aldrich)を使用した以外は同様に実施して凝集度および流動化速度を評価し、その結果を表1に記載した。
【0088】
[比較例4]
前記実施例1でポリエチレンワックスの代わりに、重量平均分子量が192,000g/molであるポリスチレン(sigma‐aldrich)を使用した以外は同様に実施して凝集度および流動化速度を評価し、その結果を表1に記載した。
【0089】
[比較例5]
前記実施例1でポリエチレンワックスの代わりに、重量平均分子量が350,000g/molであるポリメチルメタクリレート(sigma‐aldrich)を使用した以外は同様に実施して凝集度および流動化速度を評価し、その結果を表1に記載した。
【0090】
【0091】
前記表1に示されているように、実施例1~4は比較例1~5に比べ、凝集度が低く、試料の移送速度が速いことを確認した。
【0092】
具体的には、実施例1~4は、濡れた石油コークスの凝集なしに優れた流動性を示す一方、比較例1~5は、試料の円柱形態がそのまま維持され、移送測定試験装置を抜けるのに時間が相当かかり、流動性が相対的に低いことを確認した。