(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】免疫応答を調節するためのメソポーラスシリカ組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/04 20060101AFI20220621BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20220621BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220621BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220621BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20220621BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220621BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220621BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20220621BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
A61K47/04
A61K45/06
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K38/19
A61K39/00 H
A61K9/10
A61K31/711
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2020124913
(22)【出願日】2020-07-22
(62)【分割の表示】P 2018196312の分割
【原出願日】2013-04-16
【審査請求日】2020-08-19
(32)【優先日】2012-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507244910
【氏名又は名称】プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェユン
(72)【発明者】
【氏名】リ ウェイウェイ アイリーン
(72)【発明者】
【氏名】ムーニー デイビッド ジェイ.
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-507859(JP,A)
【文献】国際公開第2011/130753(WO,A1)
【文献】Cancer Research,2011年,Vol.71, No.24 Suppl,Abstract nr P1-01-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 38/00-38/58
A61K 39/00-39/44
A61K 45/00-45/08
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫細胞を動員するサイトカインを含む免疫細胞動員化合物および抗原の少なくとも1つを含むメソポーラスシリカロッド(mesoporous silica rod)を含む、組成物。
【請求項2】
前記ロッドが直径2~50nm、直径5~25nm、直径5~10nm、または直径約8nmの孔を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ロッドが5μm~500μm、5μm~25μm、または80μm~120μmの長さを含む、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
サイトカインが、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド21(CCL-21)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド19(CCl-19)、またはFMS様チロシンキナーゼ3(Flt-3)リガンドからなる群より選択されるか、あるいは前記動員化合物がGM-CSFを含む、請求項1~3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
前記抗原が腫瘍抗原を含む、請求項1~4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
前記腫瘍抗原が、MAGE-1、MART-1/メランa、チロシナーゼ、ガングリオシド、gp100、GD-2、O-アセチル化GD-3、GM-2
、Sos1
、プロテインキナーゼC結合タンパク質、逆転写酵素タンパク質、AKAPタンパク質、VRK1、KIAA1735、T7-1、T11-3、T11-9、ホモサピエンステロメラーゼ
逆転写酵素(hTRT)、サイトケラチン-19
、CYFRA21-1
、扁平上皮癌抗原1
、扁平上皮癌抗原2
、卵巣癌抗原CA125
、1A1-3B
、KIAA0049
、ムチン1
、腫瘍関連ムチン
、癌関連ムチン
、多型性上皮ムチン
、PEMT
、エピシアリン
、腫瘍関連上皮膜抗原
、H23AG
、ピーナッツ反応性尿中ムチン
、乳癌関連抗原DF3
、CTCL腫瘍抗原se1-1、CTCL腫瘍抗原se14-3、CTCL腫瘍抗原se20-4、CTCL腫瘍抗原se20-9、CTCL腫瘍抗原se33-1、CTCL腫瘍抗原se37-2、CTCL腫瘍抗原se57-1、CTCL腫瘍抗原se89-1、前立腺特異的膜抗原、5T4癌胎児性栄養膜糖タンパク質、Orf73カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、MAGE-C1
、癌/精巣抗原CT7
、MAGE-B1抗原
、MAGE-XP抗原
、DAM10
、MAGE-B2抗原
、DAM6
、MAGE-2抗原、MAGE-4a抗原、MAGE-4b抗原、結腸癌抗原NY-CO-45、肺癌抗原NY-LU-12バリアントA、癌関連表面抗原、腺癌抗原ART1、傍腫瘍性関連脳-精巣癌抗原
、癌神経抗原(onconeuronal antigen)MA2
、傍腫瘍性神経抗原
、神経腫瘍学的腹側抗原(Neuro-oncological ventral antigen)2
、肝細胞癌抗
原520、腫瘍関連抗原CO-029、腫瘍関連抗原MAGE-X2、滑膜肉腫、Xブレイクポイント2、T細胞によって認識された扁平上皮癌抗原、血清学的に定義された結腸癌抗原1、血清学的に定義された乳癌抗原NY-BR-15、血清学的に定義された乳癌抗原NY-BR-16、クロモグラニンA
、副甲状腺分泌タンパク質1、DUPAN-2、CA19-9、CA72-4、CA 195、癌胎児性抗
原からなる群より選択される、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記腫瘍抗原が腫瘍細胞溶解物を含む、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
前記抗原が病原性微生物に由来
する、請求項1~4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
前記ロッドが、前記動員化合物および前記抗原を含む、請求項1~8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
前記ロッドが、免疫細胞活性化化合物を
さらに含む、請求項1~9のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
前記免疫細胞活性化化合物がTLRアゴニストを含
む、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記メソポーラスシリカロッドが修飾され
ている、請求項1~11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、免疫細胞動員化合物、免疫細胞活性化化合物、および抗原を含む、請求項1~12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項14】
前記免疫細胞動員化合物が、GM-CSFを含み、前記免疫細胞活性化化合物がCpG-ODNを含み、かつ前記抗原が腫瘍細胞溶解物を含む、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
免疫応答を誘導するための薬学的組成物の製造のための、メソポーラスシリカロッドを含む組成物の使用。
【請求項16】
前記メソポーラスシリカロッドが修飾され
ている、請求項15記載の組成物の使用。
【請求項17】
前記メソポーラスシリカロッドが免疫細胞活性化化合物を
さらに含む、請求項15または16記載の組成物の使用。
【請求項18】
免疫応答を誘導するための、請求項1~14のいずれか一項記載の組成
物。
【請求項19】
前記ロッドが、インサイチューで三次元骨格を形成するために自己組織化する、請求項15~1
7のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項20】
メソポーラスシリカロッドが、ワクチン抗原に対する全身性抗原特異的免疫応答を誘導するため、またはリンパ節にワクチン抗原特異的免疫細胞を戻すことを誘導するための、ワクチン抗原を含む、請求項15~
17、19のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項21】
前記免疫応答が、免疫細胞の活性化を含む、請求項15~
17、19、20のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項22】
前記免疫細胞が、樹状細胞、T細胞、およびB細胞からなる群より選択される、請求項21記載の組成物の使用。
【請求項23】
前記免疫応答が、樹状細胞の活性化、B細胞の活性化、抗原特異的樹状細胞の増殖の誘導、胚中心の形成の誘導、免疫細胞がリンパ節に戻ることの誘導、T細胞の増殖の誘導、TH1およびTH2抗体応答の誘導、濾胞性ヘルパーT細胞の増殖の誘導、ならびにCD4+ヘルパーT細胞の増殖の誘導からなる群より選択される、請求項15~
17、19~22のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項24】
薬学的組成物が、対象における腫瘍の治療のために用いられる、請求項15~
17、19~23のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項25】
前記ロッドが、免疫細胞動員化合物、免疫細胞活性化化合物、および抗原を含む、請求項15~
17、19~24のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項26】
前記免疫細胞動員化合物が、GM-CSFを含み、前記免疫細胞活性化化合物がCpG-ODNを含み、かつ前記抗原が腫瘍細胞溶解物を含む、請求項25記載の組成物の使用。
【請求項27】
メソポーラスシリカロッドの懸濁液を提供する段階、ならびに該ロッドをワクチン抗原、免疫細胞動員化合物、および免疫細胞活性化化合物の少なくとも1つと接触させる段階を含む、対象における免疫応答を誘導する組成物を製造する方法。
【請求項28】
前記ワクチン抗原が腫瘍細胞溶解物を含み、前記動員化合物がGM-CSFを含み、かつ前記活性化化合物がCpG ODNを含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記ロッドを、前記ワクチン抗原、前記動員化合物、または前記活性化化合物と接触させる段階の前に、該ロッドが、アミン、チオール、クロロ、およびホスホネートからなる群より選択される官能基により、またはグリコール酸または乳酸により修飾される、請求項26または27記載の方法。
【請求項30】
前記ロッドを、前記ワクチン抗原、前記免疫細胞動員化合物、または前記免疫細胞活性化化合物と接触させる段階を含む、請求項26~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
病原性微生物が、細菌、ウイルス、または真菌である、請求項8記載の組成物。
【請求項32】
TLRアゴニストが、
(i)病原体関連分子パターン(PAMP)を含むか、またはPAMPが細菌由来の免疫調節物質を含む、
(ii)核酸、脂質、二本鎖デオキシリボ核酸(DNA)、二本鎖リボ核酸(RNA)、またはリポポリサッカリドを含む、または、
(iii)TLR3アゴニスト、TLR9アゴニスト、モノホスホリルリピドA(MPLA)、リポポリサッカリド(LPS)、シトシン-グアノシンオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)、ポリ(エチレンイミン)縮合CpG-ODN(PEI-CpG-ODN)、ポリイノシン-ポリシチジン酸(ポリI:C)、PEIポリ(I:C)、ポリアデニル酸-ポリウリジル酸(ポリ(A:U))、およびPEI-ポリ(A:U) からなる群より選択されるアゴニストを含む、
請求項11記載の組成物。
【請求項33】
前記メソポーラスシリカロッドが、アミン、チオール、クロロ、およびホスホネートからなる群より選択される官能基で修飾されている、請求項12記載の組成物。
【請求項34】
前記メソポーラスシリカロッドが、グリコール酸または乳酸で修飾されている、
請求項33記載の組成物。
【請求項35】
前記メソポーラスシリカロッドが、アミン、チオール、クロロ、およびホスホネートからなる群より選択される官能基で修飾されている、請求項16記載の組成物の使用。
【請求項36】
前記メソポーラスシリカロッドが、グリコール酸または乳酸で修飾されている、
請求項35記載の組成物の使用。
【請求項37】
前記免疫細胞活性化化合物がTLRアゴニストを含む、請求項17記載の組成物の使用。
【請求項38】
TLRアゴニストが
(i)病原体関連分子パターン(PAMP)を含むか、またはPAMPが細菌由来の免疫調節物質を含む、
(ii)核酸、脂質、二本鎖デオキシリボ核酸(DNA)、二本鎖リボ核酸(RNA)、またはリポポリサッカリドを含む、または、
(iii)TLR3アゴニスト、TLR9アゴニスト、モノホスホリルリピドA(MPLA)、リポポリサッカリド(LPS)、シトシン-グアノシンオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)、ポリ(エチレンイミン)縮合CpG-ODN(PEI-CpG-ODN)、ポリイノシン-ポリシチジン酸(ポリI:C)、PEIポリ(I:C)、ポリアデニル酸-ポリウリジル酸(ポリ(A:U))、およびPEI-ポリ(A:U) からなる群より選択されるアゴニストを含む、
請求項37記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の支援
本発明は、国立衛生研究所によって付与された助成番号R01DE019917に基づく政府の支援によりなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、生体適合性の注射用組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
大部分の細胞ベースの治療などのエクスビボでの細胞操作を必要とするワクチンは、低下したリンパ節ホーミングおよび制限された効果を引き起こす。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、以前のアプローチに関連する問題および欠点に対する解決を提供する。したがって、本発明は、免疫細胞動員化合物および免疫細胞活性化化合物を含むメソポーラスシリカ(MPS)ロッド(mesoporous silica (MPS) rod)を含む組成物を特徴とする。ロッドは、直径2~50nmの孔、例えば、直径5~25nmの孔または直径5~10nmの孔を含む。好ましい態様において、ロッドは、直径約8nmの孔を含む。マイクロロッドの長さは、5μm~500μmの範囲である。1つの例において、ロッドは、5~25μmの長さ、例えば10~20μmの長さを含む。他の例において、ロッドは、50μm~250μmの長さを含む。活発な細胞動員は、高いアスペクト比を有するものとして特徴付けられたMPS微粒子、例えば80μm~120μmの長さを有するロッドにより達成された。
【0005】
例示的な免疫細胞動員化合物は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む。動員化合物の他の例には、例えば、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド21(CCL-21、GenBankアクセッション番号:(aa) CAG29322.1 (GI:47496599)、(na) EF064765.1 (GI:117606581)、これらは本明細書に組み入れられる)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド19(CCL-19、GenBankアクセッション番号:(aa) CAG33149.1 (GI:48145853)、(na) NM_006274.2 (GI:22165424)、これらは本明細書に組み入れられる)からなる群より選択されるケモカイン、およびFMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)リガンド(GenBankアクセッション番号:(aa) AAI44040 (GI:219519004)、(na) NM_004119 (GI:121114303)、これらは本明細書に組み入れられる)が含まれる。
【0006】
免疫細胞活性化化合物は、TLRアゴニストを含む。そのようなアゴニストは、例えば細菌由来の免疫調節物質などの感染模倣組成物などの、病原体関連分子パターン(PAMP)を含む(これは危険シグナルとしても知られている)。TLRアゴニストは、核酸または脂質組成物を含む(例えば、モノホスホリルリピドA(MPLA))。1つの例において、TLRアゴニストは、シトシン-グアノシンオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)、PEI-CpG-ODNなどのポリ(エチレンイミン)(PEI)縮合オリゴヌクレオチド(ODN)、または二本鎖デオキシリボ核酸(DNA)などのTLR9アゴニストを含む。例えば、装置は、5μg、10μg、25μg、 50μg、100μg、250μg、または500μgのCpG-ODNを含む。他の例において、TLRアゴニストは、ポリイノシン-ポリシチジン酸(ポリI:C)、PEIポリ(I:C)、ポリアデニル酸-ポリウリジル酸(ポリ(A:U))、PEI-ポリ(A:U)、または二本鎖リボ核酸(RNA)などのTLR3アゴニストを含む。リポポリサッカリド(LPS)もこの目的のために有用である。
【0007】
免疫応答を産生するために、組成物は、望まれる免疫応答のための抗原を含む。例えば、組成物は、腫瘍抗原を含む。好ましい態様において、抗原は、腫瘍細胞溶解物(例えば、治療される対象から採取された腫瘍生検試料に由来するもの)を含む。対象は、好ましくはヒト患者であるが、組成物/システムはまた、例えば、イヌおよびネコなどのコンパニオン動物、ウマなどのパフォーマンス動物(performance animal)、およびウシ、雄ウシ、ヒツジ、ヤギなどの家畜の治療などの獣医学的使用のためにも使用される。
【0008】
樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞は、MPS装置を介して輸送され、すなわち、細胞は装置に恒久的にとどまらない。免疫細胞は、抗原に遭遇し活性化されるが、装置に動員され装置内に一時的に存在する。その後、DCのような免疫細胞は、リンパ節に戻る。それらは、MPS装置ではなく、例えば流入領域リンパ節などのリンパ節に蓄積する。リンパ節に蓄積された細胞は、抗原に対する強力な細胞性応答および液性応答を生じるワクチン抗原に対する免疫応答をさらに増加させる。
【0009】
したがって、ワクチン抗原に対する全身性抗原特異的免疫応答を誘導する方法は、上記のMPS組成物を対象に投与する段階を含む。組成物は、シリンジに充填され、レシピエントの体内に注射される。例えば、少量(例えば50~500μl、例えば150μl)が皮下投与される。典型的には、投与後2日までに装置(MPS組成物)に細胞が浸潤し、投与後5~7日までに流入領域リンパ節が、装置からリンパ節組織に移動した細胞により膨張し、それらは蓄積して抗原特異的応答をさらに増加させる。したがって、組成物は、リンパ節に免疫細胞を戻すことを誘導するために有用である。MPS組成物は、ワクチン治療後に除去される必要がない。組成物は、それが分解する投与部位で体内に残る可能性がある。例えば、MPS粒子は、時間と共にマクロファージによって消費され、その後体内から除去される。
【0010】
ワクチンを製造する方法は、メソポーラスシリカロッドの懸濁液を提供する段階、ロッドをワクチン抗原、免疫細胞動員化合物、および免疫細胞活性化化合物と接触させる段階を含む。ワクチン抗原は腫瘍細胞溶解物を含み、動員化合物はGM-CSFを含み、活性化化合物はCpG ODNを含む。いくつかの場合に、ロッドは、ロッドをワクチン抗原、動員化合物、または活性化化合物の1つもしくは複数の化合物と接触させる段階の前に、グリコール酸または乳酸で修飾される。任意で、MPS組成物/装置は、MPSロッド、免疫細胞動員化合物、および免疫細胞活性化化合物(任意で、グリコール酸または乳酸により修飾される)により作製され、貯蔵され、ならびに/または使用部位に輸送され、その後、患者特異的な腫瘍抗原調製物または溶解物が、例えば患者への投与の1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、または48時間前などの投与前に、ロッド懸濁物に添加される。
【0011】
MPS組成物に負荷される化合物は、加工または精製される。例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または他の物質が、精製および/または単離される。具体的には、本明細書に使用されるように、「単離された」または「精製された」核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、他の細胞物質、または組換え技術によって産生された場合には培養培地、または化学的に合成された場合には化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。精製された化合物は、対象化合物が重量(乾燥重量)にして少なくとも60%である。好ましくは、調製物は、対象化合物が重量にして少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも99%である。例えば、精製された化合物は、所望の化合物が重量にして少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、98%、99%、または100%(w/w)である。純度は、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)解析などの任意の適当な標準的な方法によって測定される。精製または単離されたポリヌクレオチド(リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA))は、その天然に生じる状態でそれに隣接する遺伝子または配列を含まない。精製されたとは、例えば感染物質または毒性物質の欠如などのヒト対象に投与するために安全である安定性の程度も規定する。腫瘍抗原の場合に、抗原は、腫瘍細胞溶解物などの精製または加工された調製物であってもよい。
【0012】
同様に、「実質的に純粋な」とは、天然に付随する成分から分離されたヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。典型的には、ヌクレオチドおよびポリペプチドは、それらが重量にして少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、または99%でさえあって、それらが天然に付随するタンパク質および天然に生じる有機分子を含まない場合に、実質的に純粋である。
【0013】
低分子は、2000ダルトン未満の質量の化合物である。低分子の分子質量は、好ましくは1000ダルトン未満であり、より好ましくは600ダルトン未満であり、例えば、化合物は、500ダルトン未満、400ダルトン未満、300ダルトン未満、200ダルトン未満、または100ダルトン未満である。
【0014】
「を含む(including)」、「を含む(containing)」、または「によって特徴付けられる」と同義である「含む(comprising)」との移行的用語は、包括的またはオープンエンドなものであり、追加の記載されていない要素または方法段階を排除しない。これに対して、「からなる(consisting of)」との移行的用語は、請求項に特定されていない如何なる要素、段階、または成分をも排除する。「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の範囲を、特定された物質または段階および本発明の「基本的および新規の特徴に実質的に影響しないもの」に限定する。
【0015】
[本発明1001]
免疫細胞動員化合物および免疫細胞活性化化合物を含むメソポーラスシリカロッド(mesoporous silica rod)を含む、組成物。
[本発明1002]
前記ロッドが直径2~50nmの孔を含む、本発明1001の組成物。
[本発明1003]
前記ロッドが直径5~25nmの孔を含む、本発明1001の組成物。
[本発明1004]
前記ロッドが直径5~10nmの孔を含む、本発明1001の組成物。
[本発明1005]
前記ロッドが直径約8nmの孔を含む、本発明1001の組成物。
[本発明1006]
前記ロッドが5μm~500μmの長さを含む、本発明1001の組成物。
[本発明1007]
前記ロッドが5μm~25μmの長さである、本発明1001の組成物。
[本発明1008]
前記ロッドが80μm~120μmの長さを含む、本発明1001の組成物。
[本発明1009]
前記動員化合物が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド21(CCL-21)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド19(CCl-19)、またはFMS様チロシンキナーゼ3(Flt-3)リガンドを含む、本発明1001の組成物。
[本発明1010]
前記動員化合物がGM-CSFを含む、本発明1001の組成物。
[本発明1011]
抗原をさらに含む、本発明1001の組成物。
[本発明1012]
前記抗原が腫瘍抗原を含む、本発明1011の組成物。
[本発明1013]
前記抗原が腫瘍細胞溶解物を含む、本発明1011の組成物。
[本発明1014]
本発明1001の組成物を対象に投与する段階を含む、ワクチン抗原に対する全身性抗原特異的免疫応答を誘導する方法。
[本発明1015]
ワクチン抗原に対する全身性抗原特異的免疫応答を誘導するため、またはリンパ節にワクチン抗原特異的免疫細胞を戻すことを誘導するための、免疫細胞動員化合物、免疫細胞活性化化合物、およびワクチン抗原を含むメソポーラスシリカロッドを含む組成物の使用。
[本発明1016]
メソポーラスシリカロッドの懸濁液を提供する段階、該ロッドをワクチン抗原、免疫細胞動員化合物、および免疫細胞活性化化合物と接触させる段階を含む、ワクチンを製造する方法。
[本発明1017]
前記ワクチン抗原が腫瘍細胞溶解物を含み、前記動員化合物がGM-CSFを含み、かつ前記活性化化合物がCpG ODNを含む、本発明1016の方法。
[本発明1018]
前記ロッドを、前記ワクチン抗原、前記動員化合物、または前記活性化化合物と接触させる段階の前に、該ロッドがグリコール酸または乳酸により修飾される、本発明1016の方法。
本発明の他の特徴および利点は、その好ましい態様である以下の説明および請求項の記載から明らかであろう。定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料が使用され得るが、適切な方法および材料は以下に記載される。本明細書に引用される全ての外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に引用されたアクセッション番号により示されるGenbankおよびNCBIの提出は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に引用される全ての他の公開された文献、文書、原稿、および科学論文は、参照により本明細書に組み入れられる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および例は、説明することのみを目的としており、限定することを意図してはいない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、MPSロッドのSEM画像である。これらのロッドのランダムスタッキングおよび自己組織化は、細胞浸潤を可能にする三次元空間を生じる。
【
図2】
図2は、異なる長さのMPSロッドに依存する表面マーカー発現を示す棒グラフである。100μgの異なる長さのMPSロッドを骨髄由来の樹状細胞と共に18時間インキュベートした。炎症のマーカーとして、活性化細胞の割合を、細胞表面受容体であるCD11c(DCマーカー)、MHCII(抗原提示マーカー)およびCD86(共刺激受容体)を染色することによって決定した。ロッドの炎症特性は、長さの増加と共に増加した。望ましい骨格(scaffold)は、(PLG骨格対照と同様に)炎症特性を示すため、30~100μmまたは120μmのロッドを以下の実験で使用した。
【
図3A】
図3は、マウスにおけるMPSロッドの効果を示す一連の画像である。
図3Aは、5mgのローダミン標識MPSロッドをC57bl/6jマウスに皮下注射した7日後に切除された骨格注射部位を示す写真である。皮下ポケットは、ロッドが局在化され、三次元微小環境を生じるために自己組織化されることを示す。
【
図3B】
図3は、マウスにおけるMPSロッドの効果を示す一連の画像である。
図3Bは、骨格部位への細胞浸潤を示す切除された骨格部位のSEM画像である。
【
図3C】
図3は、マウスにおけるMPSロッドの効果を示す一連の画像である。
図3Cは、生細胞の動員を示す、MPS骨格から分離された生細胞/死細胞の画像を示す。
【
図4】
図4Aは、MPSロッドからのGM-CSF放出を示す線グラフである。1μgのGM-CSFをMPSロッドに負荷し、0.1%のBSA/PBS中でインキュベートした。上清を一定期間ごとに回収し、ELISA(R&D)を用いてGM-CSFを測定した。GM-CSFは、MPSロッドから連続的に放出される。
図4Bは、インビトロでのMPSと骨髄由来樹状細胞(BMDC)の共培養における表面マーカー発現を示す棒グラフである。100μgの未修飾MPSロッド、アミン修飾MPSロッド、チオール修飾MPSロッド、クロロ修飾MPSロッド、およびホスホネート修飾MPSロッドを10
6/mlのBMDCと共に18時間インキュベートした。その後、細胞をMHCクラスIIおよび共刺激分子CD86の発現に対して解析した。MPS により刺激されたBMDCのMHCIIおよびCD86の発現の増加は、MPSロッドが炎症性であり、この特性が表面修飾MPSロッドによって調節されたことを示す。
【
図5】
図5Aは、GM-CSFを負荷したMPSロッドによるCDの動員を示す棒グラフである。1μg/マウスGM-CSFを負荷した5mg/マウスMPSロッド、またはこれを負荷していない5mg/マウスMPSロッドを皮下注射した。骨格部位由来の細胞を回収し、CD11c受容体(DCマーカー)を染色した。GM-CSFを負荷したMPS骨格は、ブランクMPS骨格よりもより多くのDCを動員することができた。
図5Bは、DCの表面マーカー発現を示す棒グラフである。GM-CSFおよびCpG-ODNを負荷したMPS骨格は、CpG-ODN無しのものより、より多くのDCを活性化した。
【
図6】
図6A~Bは、骨格部位でのB220+細胞の割合(
図6A)または骨格部位でのB220+細胞の総数(
図6B)を示す棒グラフである。1μg/マウスGM-CSF、100μgのCpG-ODN、および130μgのオボアルブミンを負荷した5mg/マウスMPSロッド、またはこれらを負荷していない5mg/マウスMPSロッドを皮下注射した。骨格部位由来の細胞を一定期間ごとに回収し、B220受容体(B細胞マーカー)を染色した。GM-CSF、CpG-ODN、およびOvaを負荷したMPS骨格は、3日目までにより多くのB細胞を動員することができた。
【
図7A】
図7Aは、フローサイトメトリー散布図である。GM-CSF、CpG-ODN、およびモデル抗原であるオボアルブミンを負荷したMPS骨格は、流入領域リンパ節(dLN)に戻った抗原特異的DCの増殖を誘導した。dLN細胞を樹状細胞マーカーCD11c、およびマーカーMHC-I-SIINFEKLで染色した。マーカーMHC-I-SIINFEKLは、オボアルブミンタンパク質の一部であるペプチド配列SIINFEKLがMHC-I複合体の細胞表面に提示されることを示す。
【
図7B】
図7Bは、DC表面のMHC-I-SIINFEKL(SEQ ID NO: 1)マーカーの存在を示す棒グラフである。GM-CSF、CpG-ODN、およびモデル抗原であるオボアルブミンを負荷したMPS骨格は、流入領域リンパ節(dLN)に戻った抗原特異的DCの増殖を誘導した。dLN細胞を樹状細胞マーカーCD11c、およびマーカーMHC-I-SIINFEKLで染色した。マーカーMHC-I-SIINFEKLは、オボアルブミンタンパク質の一部であるペプチド配列SIINFEKLがMHC-I複合体の細胞表面に提示されることを示す。
【
図7C】
図7Cは、DC表面のMHC-I-SIINFEKL(SEQ ID NO: 1)マーカーの存在を示す棒グラフである。GM-CSF、CpG-ODN、およびモデル抗原であるオボアルブミンを負荷したMPS骨格は、流入領域リンパ節(dLN)に戻った抗原特異的DCの増殖を誘導した。dLN細胞を樹状細胞マーカーCD11c、およびマーカーMHC-I-SIINFEKLで染色した。マーカーMHC-I-SIINFEKLは、オボアルブミンタンパク質の一部であるペプチド配列SIINFEKLがMHC-I複合体の細胞表面に提示されることを示す。
【
図8】
図8A~Bは、MPS骨格による胚中心の形成を示す棒グラフである。GM-CSF、CpG-ODN、およびモデル抗原であるオボアルブミンを負荷したMPS骨格は、胚中心を誘導し、dLNの活性化および抗原刺激B細胞に戻ることができた。dLN細胞を、体細胞突然変異およびアイソタイプスイッチの工程において活性化されるB細胞のみを存在させる胚中心の形成を調べるために、B220(B細胞マーカー)およびGL7(胚中心マーカー)で染色した。
【
図9】
図9A~Bは、GM-CSF、CpG-ODN、およびモデル抗原であるオボアルブミンを負荷したMPS骨格が、モデル抗原を特異的に認識することができるCD8
+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の増殖を誘導することができたことを示す棒グラフである。脾細胞をCD8(キラーT細胞マーカー)に対し、およびT細胞がMHCI複合体に提示された特異的抗原を認識することができるかどうかを示すMHCI四量体SIINFEKL抗体で染色した。
【
図10】
図10A~Cは、GM-CSF、CpG-ODN、およびモデル抗原であるオボアルブミンを負荷したMPS骨格が、dNLおよび脾臓の抗原特異的CD8+ CTLのクローン増殖を誘導することができたことを示すヒストグラムである。OT-Iマウス由来の注射された脾細胞は、細胞追跡色素であるCFSEで染色された。その蛍光は、細胞分裂ごとに半分になる。完全に負荷されたワクチン群における脾臓およびdNLのCFSE染色脾細胞の弱い蛍光は、ova特異的CTL増殖を示す。
【
図11】
図11A~Cは、GM-CSF、CpG-ODN、およびモデル抗原であるオボアルブミンを負荷したMPS骨格が、dLNおよび脾臓の抗原特異的CD4+ THのクローン増殖を誘導することができたことを示すヒストグラムである。OT-IIマウス由来の注射された脾細胞は、細胞追跡色素であるCFSEで染色された。その蛍光は、細胞分裂ごとに半分になる。完全に負荷されたワクチン群および抗原群のみを負荷したMPSにおける脾臓およびdLNのCFSE染色脾細胞の弱い蛍光は、ova特異的CD4+ TH細胞増殖を示す。
【
図12】
図12A~Bは、抗体力価が、抗体-血清溶液が希釈され、検出可能な量の抗体を依然として含むことができる程度として規定されることを示すヒストグラムである。抗オボアルブミン血清抗体を滴定した。GM-CSF、CpG-ODN、およびovaを負荷したMPS骨格は、強力かつ長期間のTH1およびTH2抗体応答を誘発した。OVAのみを負荷したMPSは、MPSの物質自体のアジュバント能力を示す強力なTH2応答を誘発することができる。
【
図13】
図13A~Bは、制御され持続された様式で、GM-CSFがMPS微粒子から放出されることを示す線グラフである。A)1μgのGM-CSFを5mgのMPSロッドに負荷し、0.1%のBSA/PBS中でインキュベートした。上清を一定期間ごとに回収し、ELISA(R&D)を用いてGM-CSFを測定した。GM-CSFは、少量ではあるがMPSロッドから連続的に放出された。B)1μgのGM-CSFを、OVAおよびCpGを含む5mgのMPSロッドに負荷した。その後、それをC57BL/6jマウスに皮下注射した。様々な時点で、注射された粒子骨格の周囲の組織を採取し、GM-CSFレベルを解析した。GM-CSFのレベルは、1週間を通して維持された。
【
図14A】
図14Aは写真である。高いアスペクト比のMPS微粒子が、より多くの細胞を動員する。
図14Aは、10μm~20μmの長さまたは80μm~120μmの長さのいずれかであるMPS微粒子のSEM画像を示す。より長いロッドが、ロッド間でより大きな面積または空間を有する組成物を生じた。
【
図14B】
図14Bは写真である。高いアスペクト比のMPS微粒子が、より多くの細胞を動員する。
図14Bは、マウスから採取されたMPS組成物を示す。5μgのMPS微粒子をマウスに皮下注射し、注射後7日目に骨格部位を採取した。
【
図14C】
図14Cは棒グラフである。高いアスペクト比のMPS微粒子が、より多くの細胞を動員する。
図14Cは、骨格から単離された細胞の計数を示す棒グラフである。高いアスペクト比のMPS微粒子が、より多くの細胞を動員した。
【
図15】
図15A~Bは棒グラフである。樹状細胞(DC)は、GM-CSFに対する応答としてMPS微粒子に動員される。MPS微粒子は、GM-CSF(0ng、500ng、1000ng、3000ng)で負荷され、マウスに皮下注射された。注射後7日目に骨格を採取し、フローサイトメトリーを用いて解析した。
図15Aは、動員されたCD11c+CD11b+DCがGM-CSF用量の増加と共に増加することを示す。
図15Bは、動員された成熟CD11c+MHCII+DCもDCもGM-CSF用量の増加と共に増加することを示す。
【
図16】
図16は、GM-CSFが流入領域LNへの動員されたDCの輸送を増加させることを示す棒グラフである。MPS微粒子は、Alexa 647標識オボアルブミン(OVA)、またはAlexa 647標識OVAおよび1μgのGM-CSFで負荷され、マウスに皮下注射された。注射後7日目に流入領域リンパ節(dLN)を採取し、フローサイトメトリーを用いて解析した。抗原(OVA)の添加により、骨格に輸送されたAlexa 647+CD11c+DCおよび取り込まれたOVAが軽度に増加する。しかし、GM-CSFの添加は、骨格からdLNへのDC輸送を著しく増加させる。
【
図17-1】
図17A~Cは散布図である。MPS微粒子骨格からのCpG-ODNの局所的送達は、活性化DCの循環を増加させる。MPS微粒子は、1μgのGM-CSF、300μgのOVA、および100μgのCpG-ODNで負荷された。その後、それらをマウスに皮下注射した。注射後7日目にdLNを採取し、解析した。LN細胞をCD11cおよびCD86で染色した。MPS骨格から局所的に放出されるCpG-ODNの添加は、dLNにおける活性化成熟DCの割合および数をさらに増加させる。
【
図17-2】
図17Dは棒グラフである。MPS微粒子骨格からのCpG-ODNの局所的送達は、活性化DCの循環を増加させる。MPS微粒子は、1μgのGM-CSF、300μgのOVA、および100μgのCpG-ODNで負荷された。その後、それらをマウスに皮下注射した。注射後7日目にdLNを採取し、解析した。LN細胞をCD11cおよびCD86で染色した。MPS骨格から局所的に放出されるCpG-ODNの添加は、dLNにおける活性化成熟DCの割合および数をさらに増加させる。
【
図18-1】
図18A~Cは写真である。タンパク質は、制御され持続された様式で、MPS微粒子骨格から放出される。緩衝液中またはMPS微粒子に負荷されたAlexa 647標識オボアルブミンをマウスの側腹部に皮下注射した。様々な時点で、相対蛍光をIVISを用いて測定した。緩衝液中のものを注射した場合、タンパク質は1日未満で注射部位から拡散する。しかし、MPS微粒子に負荷されたものの場合、タンパク質は維持された様式で、例えば1週間を通じて(2日、3日、4日、5日、7日、またはそれ以上の日数)、局所的骨格部位から放出される。
【
図18-2】
図18Dは棒グラフである。タンパク質は、制御され持続された様式で、MPS微粒子骨格から放出される。緩衝液中またはMPS微粒子に負荷されたAlexa 647標識オボアルブミンをマウスの側腹部に皮下注射した。様々な時点で、相対蛍光をIVISを用いて測定した。緩衝液中のものを注射した場合、タンパク質は1日未満で注射部位から拡散する。しかし、MPS微粒子に負荷されたものの場合、タンパク質は維持された様式で、例えば1週間を通じて(2日、3日、4日、5日、7日、またはそれ以上の日数)、局所的骨格部位から放出される。
【
図19】
図19A~Bは、抗体力価を示す線グラフである。抗体力価は、抗体-血清溶液が希釈され、検出可能な量の抗体を依然として含むことができる程度として規定される。マウスは、300μgのOVA、100μgのCpG-ODN、および1μgのGM-CSFを可溶性形態または5mgのMPS微粒子に負荷された形態でワクチン接種された。抗オボアルブミン血清抗体を滴定する。GM-CSF、CpG-ODN、およびovaを負荷したMPS骨格は、IgG2aおよびIgG1抗体がそれぞれ高力価であることによって示されるように、強力かつ長期間のTH1およびTH2抗体応答を誘発することができる。より印象的に、この応答は、1回の注射によるワクチン接種後、200日を超えて提示される。この応答を米国でヒトへの使用を認可された唯一のアジュバントである水酸化アルミニウムを用いて送達されたOVAと比較した。MPSワクチンは、低分子サイトカイン、タンパク質、およびDNAを負荷する能力のために、TH1およびTH2抗体応答の両方を誘導することができるが、ミョウバン(alum)により誘導される応答は完全にTH2に偏る。MPSワクチンは非常に用途が広く、特異的免疫応答を誘導するために容易に細かく調製され制御される。
【
図20-1】
図20Aは、MPSワクチンでのワクチン接種が濾胞性ヘルパーT細胞の増殖を誘導することを示す散布図である。OT-II脾細胞をCFSEで染色し、Thy 1.1+レシピエントマウスに養子移入した。その後、レシピエントマウスをMPSおよびリゾチーム、MPSおよびOVA、ならびにGM-CSFおよびCpGを含む完全型のワクチンでワクチン接種した。ワクチン接種の3日後、dLNを採取し、養子移入細胞を解析した。MPSおよびOVAでワクチン接種されたマウス、ならびに完全型のワクチンでワクチン接種されたマウスは、濾胞性ヘルパーT細胞の強力な集団を生じたことが示される。濾胞性ヘルパーT細胞は、完全機能的抗原特異的抗体を分泌する形質細胞を分化させ成熟させるために、B細胞を「助ける(helping)」直接的原因である細胞である。
【
図20-2】
図20B~Dは、MPSワクチンでのワクチン接種が濾胞性ヘルパーT細胞の増殖を誘導することを示す散布図である。OT-II脾細胞をCFSEで染色し、Thy 1.1+レシピエントマウスに養子移入した。その後、レシピエントマウスをMPSおよびリゾチーム、MPSおよびOVA、ならびにGM-CSFおよびCpGを含む完全型のワクチンでワクチン接種した。ワクチン接種の3日後、dLNを採取し、養子移入細胞を解析した。MPSおよびOVAでワクチン接種されたマウス、ならびに完全型のワクチンでワクチン接種されたマウスは、濾胞性ヘルパーT細胞の強力な集団を生じたことが示される。濾胞性ヘルパーT細胞は、完全機能的抗原特異的抗体を分泌する形質細胞を分化させ成熟させるために、B細胞を「助ける(helping)」直接的原因である細胞である。
【
図21】
図21A~Dは、MPSワクチンでのワクチン接種がCD4+ヘルパーT細胞のクローン増殖を誘導することを示す線グラフである。OT-II脾細胞をCFSEで染色し、Thy 1.1+レシピエントマウスに養子移入した。その後、レシピエントマウスをMPSおよびリゾチーム、MPSおよびOVA、ならびにGM-CSFおよびCpGを含む完全型のワクチンでワクチン接種した。ワクチン接種の3日後、dLNを採取し、養子移入細胞を解析した。MPSおよびOVAの両方、ならびに完全型のワクチンは、全身性抗原特異的応答を示すCD4+ヘルパーT細胞の強力なクローン増殖を誘導したことが示される。
【
図22】
図22A~Bは、MPS微粒子のグリコール酸または乳酸の修飾が、生物活性GM-CSFの放出を助けることを示す線グラフである。1μgのGM-CSFを5mgのグリコール酸または乳酸で修飾されたMPSロッドに負荷し、0.1%のBSA/PBS中でインキュベートした。上清を一定期間ごとに回収し、ELISA(R&D)を用いてGM-CSFを測定した。未修飾のMPS微粒子から放出されたGM-CSFと比較して、グリコール酸および乳酸の修飾は、20倍を超える生物活性GM-CSFの累積放出を増加させる。
【
図23】
図23A~Dは、グリコール酸で修飾されたMPSが、動員されたDCおよび成熟DCの割合を増加させることを示す散布図である。5mgの未修飾またはグリコール酸で修飾されたMPS微粒子が、1μgのGM-CSFで37Cで1時間負荷され、マウスに皮下注射された。7日後に骨格を採取し、解析した。修飾されたMPSが、動員されたCD11c+CD11b+DCの割合をほぼ2倍にし、CD11c+CD86+成熟DCの割合をさらに著しく増加させることは明らかである。これらの結果は、MPS微粒子の大きな表面修飾能力が、免疫応答をより強力に誘導するために、動員細胞の表現型をさらに操作することが可能であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
注射可能なMPSベースのマイクロロッドは、インビボで三次元骨格を形成するためにランダムに自己組織化する。このシステムは、免疫細胞を動員して一時的に収容し、それらに抗原を提示し、それらを危険シグナルによって活性化するために、サイトカインを放出するように設計される。該構造における細胞の動員および一時的な収容または提示の後、これらの免疫細胞は、装置構造から移動し、リンパ節に戻る。したがって、組成物は、装置を介した輸送の結果として、変更され/調節された免疫活性化の状態の内外で輸送/循環する細胞内のものである。
【0018】
著しく増加した抗原特異的樹状細胞の集団は、リンパ節、および装置の投与の結果としてリンパ節の濾胞性ヘルパーT細胞の関与によって助けられる胚中心の形成において見出された。また、脾臓における抗原認識CD8+ CTLの集団は、著しく増強されることが見出された。システムはまた、抗原特異的なCD4およびCD8 T細胞の両方のクローン増殖を誘導する。細胞免疫応答の著しい増幅に加えて、高レベルかつ永続的な抗体の産生、およびバランスのとれたTH1/TH2応答が検出された。
【0019】
免疫細胞の輸送および再プログラミングを調節するための注射可能なメソポーラスシリカマイクロロッドベースの骨格システムの重要な要素は、以下を含む:
・MPSマイクロロッドのアスペクト比(100ミクロンの長さによる10nmの断面積)は、それらの取り込みを阻害し、したがって、三次元構造の局在化の形成を可能にする。
・8nmの孔サイズは、制御され持続的な様式での拡散を介して送達され得る低分子の吸着を可能にする。
・体積に対する高い表面面積の比は、様々なサイトカイン、危険シグナル、および抗原の負荷の制御を可能にする。
・MPSマイクロロッドの炎症特性は、他の炎症性サイトカインを必要とせずに、免疫細胞の動員を促進する。
・MPSロッドの特性、およびタンパク質がロッドに結合する方法を調節する、MPSロッドの表面化学修飾の能力における多用途性。
・GM-CSFの制御放出は、骨格の部位への免疫細胞の輸送を調節することができる。
・CpG-ODNの制御放出は、動員された樹状細胞を活性化する。
・固定されたタンパク質抗原は、骨格の部位で動員された免疫細胞によって取り込まれる。
【0020】
約5~10nm、例えば8nmの孔サイズは、低分子、および例えばGM-CSFなどの大きなタンパク質(直径約3nmの分子)に対する負荷効率のために最適であることが見出された。
【0021】
緩衝液に懸濁されたマイクロロッドの皮下注射の後、ロッドは三次元構造にランダムに積み重なり、ロッドの末端は互いに物理的接触を形成し、マイクロ空間は接触の間に形成される。
【0022】
MPS
メソポーラスシリカナノ粒子は、ミセルロッドで作製された鋳型とオルトケイ酸テトラエチルを反応させることによって合成される。その結果、規則的配列の孔で充填されるナノサイズのスフィアまたはロッドが収集される。その後、鋳型は、適切なpHに調整された溶媒で洗浄することによって除去され得る。別の技術において、メソポーラス粒子は、単純なゾルゲル法または噴霧乾燥法を用いて合成することができた。オルトケイ酸テトラエチルはまた、追加のポリマー単量体(鋳型として)と共に使用される。他の方法は、参照によって本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第20120264599号および同第20120256336号に記載されているものを含む。
【0023】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、マクロファージ、T細胞、肥満細胞、内皮細胞、および線維芽細胞によって分泌されたタンパク質である。具体的には、GM-CSFは、白血球成長因子として機能するサイトカインである。GM-CSFは、顆粒球および単球を産生するために幹細胞を刺激する。単球は、血流を出て、組織に移動し、その後マクロファージにおいて成熟する。
【0024】
本明細書に記載される骨格装置は、装置に宿主であるDCを誘引するために、GM-CSFポリペプチドを含み、これを放出する。意図されるGM-CSFは、内因性の供給源から単離されるか、またはインビボもしくはインビトロで合成される。内因性GM-CSFポリペプチドは、健常なヒト組織から単離される。合成GM-CSFポリペプチドは、例えば哺乳類または培養されたヒト細胞系などの宿主生物または宿主細胞に鋳型DNAをトランスフェクションまたは形質転換することによって、インビボで合成される。または、合成GM-CSFポリペプチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の当技術分野で認識されている方法(Sambrook, J.、Fritsch, E.F.およびManiatis, T.、Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY, Vol. 1, 2, 3 (1989)、これは参照により本明細書に組み入れられる)によって、インビトロで合成される。
【0025】
GM-CSFポリペプチドは、インビボでのタンパク質安定性を増加させるために修飾される。または、GM-CSFポリペプチドは、程度の差はあるが免疫原性とするために操作される。内因性成熟ヒトGM-CSFポリペプチドは、報告によれば、23位のアミノ酸残基(ロイシン)、27位のアミノ酸残基(アスパラギン)、および39位のアミノ酸残基(グルタミン酸)でグリコシル化される(米国特許第5,073,627号を参照のこと)。本発明のGM-CSFポリペプチドは、グリコシル化状態に関してこれらのアミノ酸残基の1つまたは複数で修飾される。
【0026】
GM-CSFポリペプチドは組換え体である。または、GM-CSFポリペプチドは、哺乳類GM-CSFポリペプチドのヒト化誘導体である。GM-CSFポリペプチドが由来する例示的な哺乳類の種は、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、フェレット、ネコ、イヌ、サル、または霊長類を含むが、これらに限定されない。好ましい態様において、GM-CSFは組換えヒトタンパク質(PeproTech、カタログ番号300-03)である。または、GM-CSFは組換えマウスタンパク質である(PeproTech、カタログ番号315-03)。最後に、GM-CSFは組換えマウスタンパク質のヒト化誘導体である。
【0027】
ヒト組換えGM-CSF(PeproTech、カタログ番号300-03)は、以下のポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)によってコードされる。
【0028】
マウス組換えGM-CSF(PeproTech、カタログ番号315-03)は、以下のポリペプチド配列(SEQ ID NO: 3)によってコードされる。
【0029】
ヒト内因性GM-CSFは、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_000758およびSEQ ID NO: 4)によってコードされる。
【0030】
ヒト内因性GM-CSFは、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NP_000749.2およびSEQ ID NO: 5)によってコードされる。
【0031】
シトシン-グアノシン(CpG)オリゴヌクレオチド(CpG-ODN)配列
CpG部位は、その長さに沿って直鎖状配列の塩基においてグアニンヌクレオチドの次にシステインヌクレオチドが生じるデオキシリボ核酸(DNA)の領域である(「p」はそれらの間のリン酸結合を示し、それらをシトシン-グアニン相補塩基対形成から区別する)。CpG部位は、遺伝子発現をサイレンシングするために細胞が使用する幾つかの内因性メカニズムの一つであるDNAメチル化において、極めて重要な役割を有する。プロモーター要素におけるCpG部位のメチル化は、遺伝子サイレンシングを引き起こし得る。癌の場合に、腫瘍抑制遺伝子がしばしばサイレンシングされ、癌遺伝子または癌誘発遺伝子が発現されることが知られている。腫瘍抑制遺伝子(これは癌形成を阻害する)のプロモーター領域におけるCpG部位は、メチル化されることが示されているが、癌遺伝子のプロモーター領域におけるCpG部位は、特定の癌において低メチル化または非メチル化される。TLR-9受容体は、DNAにおいて非メチル化CpG部位に結合する。
【0032】
本明細書に記載されるワクチン組成物は、CpGオリゴヌクレオチドを含む。CpGオリゴヌクレオチドは、内因性の供給源から単離されるか、またはインビボもしくはインビトロで合成される。内因性CpGオリゴヌクレオチドの例示的な供給源は、微生物、細菌、真菌、原虫、ウイルス、カビ、または寄生虫を含むが、これらに限定されない。または、内因性CpGオリゴヌクレオチドは、哺乳類の良性または悪性新生物腫瘍から単離される。合成CpGオリゴヌクレオチドは、宿主生物に鋳型DNAをトランスフェクションまたは形質転換することによって、インビボで合成される。または、合成CpGオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の当技術分野で認識されている方法(Sambrook, J.、Fritsch, E.F.およびManiatis, T.、Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY, Vol. 1, 2, 3 (1989)、これは参照により本明細書に組み入れられる)によって、インビトロで合成される。
【0033】
CpGオリゴヌクレオチドは、樹状細胞による細胞取り込みのために提示される。例えば、裸のCpGオリゴヌクレオチドが使用される。「裸の(naked)」との用語は、追加の置換を有さない、単離された内因性または合成ポリヌクレオチド(またはオリゴヌクレオチド)を記載するために使用される。他の態様において、CpGオリゴヌクレオチドは、細胞取り込み効率を増加させるために、1つまたは複数の化合物に結合される。代替としてまたは追加で、CpGオリゴヌクレオチドは、骨格および/または樹状細胞内でオリゴヌクレオチドの安定性を増加させるために、1つまたは複数の化合物に結合される。CpGオリゴヌクレオチドは、任意で、細胞取り込みの前に濃縮される。例えば、CpGオリゴヌクレオチドは、樹状細胞への細胞取り込み効率を増加させる陽イオンポリマー、ポリエチルイミン(PEI)を用いて濃縮される。
【0034】
CpGオリゴヌクレオチドは、複数のクラスに分けることができる。例えば、本発明の組成物、方法、および装置に含まれる例示的なCpG-ODNは、刺激性、中性、または抑制性である。「刺激性」との用語は、TLR9を活性化するCpG-ODN配列のクラスを記載する。「中性」との用語は、TLR9を活性化しないCpG-ODN配列のクラスを記載する。「抑制性」との用語は、TLR9を阻害するCpG-ODN配列のクラスを記載する。「TLR9を活性化する」との用語は、TLR9が細胞内シグナル伝達を開始する工程を記載する。
【0035】
刺激性CpG-ODNは、免疫刺激性活性において相違する3つの型、A、B、およびCにさらに分けることができる。A型刺激性CpG ODNは、ホスホジエステル中心CpG含有パリンドロームモチーフおよびホスホロチオエート3'ポリ-Gストリングによって特徴付けられる。TLR9の活性化の後、これらのCpG ODNは、形質細胞様樹状細胞(pDC)から高レベルのIFNα産生を誘導する。A型CpG ODNは、TLR9依存性NF-κBシグナル伝達を弱く刺激する。
【0036】
B型刺激性CpG ODNは、1つまたは複数のCpGジヌクレオチドを有する完全なホスホロチオエート骨格を含む。TLR9の活性化の後、これらのCpG-ODNは、B細胞を強力に活性化する。A型CpG-ODNに対して、B型CpG-ODNは、IFNα分泌を弱く刺激する。
【0037】
C型刺激性CpG ODNは、A型およびB型の特徴を含む。C型CpG-ODNは、完全なホスホロチオエート骨格およびCpG含有パリンドロームモチーフを含む。A型CpG ODNと同様に、C型CpG ODNは、pDCから強力なIFNα産生を誘導する。B型CpG ODNと同様に、C型CpG ODNは、強力なB細胞刺激を誘導する。
【0038】
例示的な刺激性CpG ODNは、ODN 1585、ODN 1668、ODN 1826、ODN 2006、ODN 2006-G5、ODN 2216、ODN 2336、ODN 2395、ODN M362(全てInvivoGen)を含むが、これらに限定されない。本発明はまた、前記CpG ODNの任意のヒト化バージョンを含む。好ましい態様において、本発明の組成物、方法、および装置は、ODN 1826(5'から3'の配列が
であり、ここでCpG要素は太字である。SEQ ID NO: 10)を含む。
【0039】
TLR9を刺激しない中性または対照CpG ODNが、本発明に含まれる。これらのODNは、それらの刺激性対応物と同じ配列を含むが、CpGジヌクレオチドの代わりにGpCジヌクレオチドを含む。
【0040】
本発明に含まれる例示的な中性または対照CpG ODNは、ODN 1585対照、ODN 1668対照、ODN 1826対照、ODN 2006対照、ODN 2216対照、ODN 2336対照、ODN 2395対照、ODN M362対照(全てInvivoGen)を含むが、これらに限定されない。本発明はまた、前記CpG ODNの任意のヒト化バージョンを含む。
【0041】
抗原
本明細書に記載される組成物、方法、および装置は、腫瘍抗原または他の抗原を含む。抗原は、そのような装置が投与された対象において防御免疫を誘発し、または治療的免疫応答を産生させる。好ましい腫瘍抗原は、腫瘍細胞溶解物である(例えば、Ali et. al.、2009、Nature Materials 8, 151-158を参照のこと;これは参照により本明細書に組み入れられる)。例えば、腫瘍全体または腫瘍生検試料は、ヒト患者(または非ヒト動物)から抽出され、細胞外基質を分解するためにコラゲナーゼを用いて消化される。その後、腫瘍細胞は、細胞を液体N2中で凍結した後に温浴中で融解する、3サイクルの凍結融解工程を受ける。この工程は、その後GM-CSFおよびCpG ODNと同時にMPS粒子上に負荷される、腫瘍抗原を産生させる。例えば、腫瘍細胞溶解物抗原のワクチン用量は、1×106腫瘍細胞から得られる量である。MPS粒子の製造後、粒子は、例えばPBSなどの生理学的に許容される緩衝液中に懸濁され、ロッドの懸濁液に、動員化合物(例えばGM-CSF)、活性化化合物(例えばCpG)、および抗原が添加される。混合物は室温で一晩振盪され、その後、約4時間、凍結乾燥される。投与の前に、ロッドは再び緩衝液中に懸濁され、懸濁液は1mlのシリンジ(18ゲージ針)に充填される。典型的なワクチン用量は、1回の注射当たり150μlの混合物である。
【0042】
本発明の組成物、方法、および装置に含まれる例示的な癌抗原は、生検から抽出された腫瘍溶解物、放射線照射腫瘍細胞、MAGEシリーズの抗原(MAGE-1は一例である)、MART-1/メランa、チロシナーゼ、ガングリオシド、gp100、GD-2、O-アセチル化GD-3、GM-2、MUC-1、Sos1、プロテインキナーゼC結合タンパク質、逆転写酵素タンパク質、AKAPタンパク質、VRK1、KIAA1735、T7-1、T11-3、T11-9、ホモサピエンステロメラーゼ酵素(hTRT)、サイトケラチン-19(CYFRA21-1)、扁平上皮癌抗原1(SCCA-1)、(タンパク質T4-A)、扁平上皮癌抗原2(SCCA-2)、卵巣癌抗原CA125(1A1-3B)(KIAA0049)、ムチン1(腫瘍関連ムチン)、(癌関連ムチン)、(多型性上皮ムチン)、(PEM)、(PEMT)、(エピシアリン)、(腫瘍関連上皮膜抗原)、(EMA)、(H23AG)、(ピーナッツ反応性尿中ムチン)、(PUM)、(乳癌関連抗原DF3)、CTCL腫瘍抗原se1-1、CTCL腫瘍抗原se14-3、CTCL腫瘍抗原se20-4、CTCL腫瘍抗原se20-9、CTCL腫瘍抗原se33-1、CTCL腫瘍抗原se37-2、CTCL腫瘍抗原se57-1、CTCL腫瘍抗原se89-1、前立腺特異的膜抗原、5T4癌胎児性栄養膜糖タンパク質、Orf73カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、MAGE-C1(癌/精巣抗原CT7)、MAGE-B1抗原(MAGE-XP抗原)(DAM10)、MAGE-B2抗原(DAM6)、MAGE-2抗原、MAGE-4a抗原、MAGE-4b抗原、結腸癌抗原NY-CO-45、肺癌抗原NY-LU-12バリアントA、癌関連表面抗原、腺癌抗原ART1、傍腫瘍性関連脳-精巣癌抗原(癌神経抗原(onconeuronal antigen)MA2;傍腫瘍性神経抗原)、神経腫瘍学的腹側抗原(Neuro-oncological ventral antigen)2(NOVA2)、肝細胞癌抗原遺伝子520、腫瘍関連抗原CO-029、腫瘍関連抗原MAGE-X2、滑膜肉腫、Xブレイクポイント2、T細胞によって認識された扁平上皮癌抗原、血清学的に定義された結腸癌抗原1、血清学的に定義された乳癌抗原NY-BR-15、血清学的に定義された乳癌抗原NY-BR-16、クロモグラニンA;副甲状腺分泌タンパク質1、DUPAN-2、CA19-9、CA72-4、CA 195、癌胎児性抗原(CEA)を含むが、これらに限定されない。精製された腫瘍抗原は、単独または互いに組み合わせて使用される。
【0043】
システムはまた、病原性微生物(例えば、細菌、ウイルス、真菌)などの他の抗原に対する免疫応答を産生するために有用である。
【0044】
以下の材料および方法が、本明細書に記載されるデータを生成するために使用された。
【0045】
MPS骨格の製造
プルロニックP-123(Sigma-Aldrich)界面活性剤を、室温で1.6M HCl中に溶解し、40℃加熱した。42mmolのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)(Sigma-Aldrich)を加え、撹拌しながら(600 rpm)40℃で20時間加熱した。その後、組成物を100℃に24時間加熱した。ロッド粒子を濾過により回収し、室温で風乾した。粒子をエタノール/HCl(500パートのEtOH に対して5パートのHCl)中で一晩80℃で抽出した。または、粒子を100%エタノール中で4時間550℃で焼成した。MPS組成物は、動員および/または活性化化合物を添加する前または後、ならびに抗原を添加する前または後の使用のために、保存および出荷されてもよい。例えば、抗原が、患者から採取された生検試料から作製された腫瘍細胞溶解物である場合、それは、患者に投与する直前にMPS粒子に加工および添加されてもよい。
【0046】
完全なワクチン組成物のために、1μg/マウスGM-CSF、100μg/マウスCpG-ODN、および130μg/マウスオボアルブミンタンパク質をdH2O中の5 mg/マウスMPSと共に12時間インキュベートし、12時間凍結乾燥し、150μl/マウスPBS中に再懸濁し、18G針を用いて皮下注射した。
【0047】
MPSロットからのGM-CSFおよびCpG-ODNの放出動態を決定するために、放射性I標識組換えヒトGM-CSFをトレーサーとして使用し、標準放出試験を行った。同様に、PBS中に放出されたCpG-ODNの量をナノドロップ装置(ND1000, Nanodrop Technologies)を用いた吸光度読み取り値によって決定した。
【0048】
MPS微粒子の修飾
標準1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)化学を、グリコール酸または乳酸のカルボン酸を活性化するために使用する。MPS粒子は、アミンプロピルシランを用いて修飾されたアミンである。その後、2つの成分を反応させるために室温で一晩共に混合する。その後、粒子を風乾させる。その後、得られたグリコール酸および/または乳酸で修飾された粒子をGM-CSFまたは上記のような他の化合物と接触させる。
【0049】
インビトロDC活性化アッセイ法
マウス樹状細胞(DC)は、20ng/ml GM-CSFを用いて骨髄細胞から分化された。分化されたDCを106/mlで、100μg/mlのMPS粒子と共に18時間インキュベートし、フローサイトメトリーを用いてCD11c(ebiosciences, San Diego, CA)、CD86(ebiosciences, San Diego, CA)およびMHCクラス-II(ebiosciences, San Diego, CA)の発現について解析した。
【0050】
MPS骨格へのDC動員およびリンパ節への移動の解析
MPS骨格を動物から回収し、ロッド由来の細胞を機械的に分離することによって消化した。APC結合CD11c(樹状細胞マーカー)、FITC結合MHCクラス-II、およびPE結合CD86(B7、同時刺激分子)染色を、DCおよび白血球の動員解析のために使用した。細胞は、アイソタイプ対照を用いて陽性のフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、アロフィコシアニン(APC)、およびフィコエリトリン(PE)に従ってゲート制御され、各表面抗原に陽性の細胞染色の割合が記録された。
【0051】
リンパ節における抗原特異的DCの存在を決定するために、流入領域リンパ節(dLN)を採取し、APC結合CD11cおよびPE結合SIINFEKL-MHCクラス-I(ebiosciences, San Diego, CA)を用いて解析した。
【0052】
抗原特異的CD8+脾臓T細胞の解析
脾臓を採取し、消化した。赤血球を溶解した後、脾細胞をPE-CY7結合CD3(ebiosciences, San Diego, CA)、APC結合CD8(ebiosciences, San Diego, CA)、およびPE結合SIINFEKL(SEQ ID NO: )MHCクラス-I四量体(Beckman Coulter)を用いて解析した。SIINFEKLは、オボアルブミンに由来するペプチド[OVA(257-264)]である。
【0053】
CD4+またはCD8+ T細胞クローン増殖の解析
OT-II(CD4に対する)またはOT-I(CD8に対する)トランスジェニックC57bl/6マウス(Jackson Laboratories)に由来する脾臓を採取、消化、貯蔵し、細胞トレーサー、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で染色した。20×106個の染色された脾細胞/マウスを、免疫化の2日後にC57bl/6(Jackson Laboratories)マウスに静脈内注射した。dLNおよび脾臓を、静脈内注射の4日後に回収し、PE結合CD8またはCD4マーカーを用いて解析した。
【0054】
抗OVA液性応答の特徴付け
血液血清を、オボアルブミンを被覆したプレートを用いたELISAによって、IgG1およびIgG2a抗体に対して解析した。抗体滴定は、ELISA OD読み取り値が>0.3(ブランク)での最低血清希釈として規定された。
【0055】
他の態様
本発明はその詳細な説明と共に記載されるが、先の記載は説明することを意図しており、特許請求の範囲によって示される発明の範囲を制限するものではない。他の局面、利点、および改変は、特許請求の範囲の範囲内である。
【0056】
本明細書に引用される特許および科学論文は、当業者に利用可能な知識を確立するものである。本明細書に引用される全ての米国特許および公開された米国特許出願または公開されていない米国特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に引用される全ての公開された外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に引用されたアクセッション番号により示されるGenbankおよびNCBIの提出は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に引用される全ての他の公開された文献、文書、原稿、および科学論文は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0057】
本発明は、その好ましい態様の参照と共に特に示されかつ記載されているが、形式および詳細における様々な変更が、特許請求の範囲によって包含される発明の範囲から逸脱することなくそれらの中で行われてもよいことが当業者に理解されるであろう。
【配列表】