(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】加熱装置及び熱成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 51/42 20060101AFI20220621BHJP
B29C 51/46 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B29C51/42
B29C51/46
(21)【出願番号】P 2020167200
(22)【出願日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304050369
【氏名又は名称】株式会社浅野研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】寺本 一典
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-087977(JP,A)
【文献】特表2019-533588(JP,A)
【文献】特開2017-081127(JP,A)
【文献】特開2004-284152(JP,A)
【文献】特開2016-198994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00 - 51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを加熱する加熱装置において、
前記シートの上面を加熱する上側ヒータと、
前記シートの下面を加熱する下側ヒータと、
前記シートの前記上面の温度を計測する上側温度センサと、
前記シートの前記下面の温度を計測する下側温度センサと、
前記上側温度センサ及び前記下側温度センサの計測温度に基づいて、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータの温度を制御するヒータ制御部と、を備え、
前記ヒータ制御部は、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータによって前記シートの加熱を開始してから、前記上側温度センサ及び前記下側温度センサの計測温度が目標温度に到達するまでの間、前記上側温度センサ及び前記下側温度センサの計測温度のうち一方の計測温度を他方の計測温度に合わせるように、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータの温度を制御す
ること、
前記上側ヒータと前記下側ヒータとは、前記シートの加熱を開始するときの、前記上側ヒータと前記シートの前記上面との間の距離D1と、前記下側ヒータと前記シートの前記下面との間の距離D2とが、D1<D2の関係を満たすように設けられていることにより、前記シートが加熱されて前記下側ヒータ側に垂れて変形しても、前記シートと前記下側ヒータが接触することがないこと、
を特徴とする加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱装置であって、
前記ヒータ制御部は、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータによって前記シートの加熱を開始してから、前記上側温度センサ及び前記下側温度センサの計測温度が前記目標温度に到達するまでの間、前記上側温度センサ及び前記下側温度センサの計測温度のうち基準計測温度として設定された一方の計測温度を、他方の計測温度が追従するように、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータの温度を制御する加熱装置。
【請求項3】
請求項1に記載の加熱装置であって、
前記ヒータ制御部は、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータによって前記シートの加熱を開始してから、前記上側温度センサ及び前記下側温度センサの計測温度が前記目標温度に到達するまでの間、前記上側温度センサの計測温度と前記下側温度センサの計測温度とを比較して、高温または低温である方の計測温度を、他方の計測温度に合わせるように、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータの温度を制御する加熱装置。
【請求項4】
請求項1
乃至請求項3のいずれか一項に記載の加熱装置であって、
前記ヒータ制御部は、前記上側温度センサ及び前記下側温度センサの計測温度が前記目標温度に到達した後、前記上側温度センサ及び前記下側温度センサの計測温度を前記目標温度に保つように、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータの温度を制御する加熱装置。
【請求項5】
請求項1
乃至請求項4のいずれか一項に記載の加熱装置と、
前記加熱装置による加熱を行った前記シートを成形する成形装置と、を備える熱成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、及び、加熱装置を備える熱成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートを加熱する加熱装置が開示されている。さらには、加熱装置と、加熱装置による加熱を行ったシートを成形する成形装置と、を備える熱成形装置が開示されている。加熱装置は、シートの表面を加熱するヒーターと、シートの表面温度を計測する温度計測部と、ヒーターの温度を制御するヒータ制御部とを備える。ヒータ制御部は、計測される表面温度に応じて、ヒーターの温度を初期温度から順次低くなるよう制御する第一の温度制御手段と、第一の温度制御手段による制御で表面温度が目標温度となったときに、表面温度と目標温度との比較結果に応じて表面温度が目標温度に近づくようにヒーターの温度を制御するフィードバック制御を開始する、第二の温度制御手段と、を有する。第一の温度制御手段は、表面温度が目標温度よりも低い所定の温度を示す温度情報に達した場合にヒーターの温度を低下させる制御を、温度情報をより高い温度に変更して繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シートの上面を加熱する上側ヒータ(シートの上面よりも上側に配置された上側ヒータ)と、シートの下面を加熱する下側ヒータ(シートの下面よりも下側に配置された下側ヒータ)とによって、シートを加熱する場合、シートの上面側と下面側とを同等に加熱することが難しかった。より具体的には、上側ヒータ及び下側ヒータによってシートの加熱を開始してから、シートの上面の温度及び下面の温度が目標温度に到達するまでの期間における、シートの上面の温度変動(温度変化の推移)と下面の温度変動(温度変化の推移)とが大きく異なることがあった。
【0005】
このように、シートの上面の温度変動と下面の温度変動との違いが大きくなることで、加熱終了時のシートの上側部分(上側半分)と下側部分(下側半分)との間において、厚み方向の温度分布の違いが大きくなることがあった。すなわち、シートの上面から厚み方向中央までの温度分布と、シートの下面から厚み方向中央までの温度分布とが、大きく異なってしまうことがあった。さらには、加熱装置によって複数のシートを順に加熱した場合に、複数のシート間において、シートの上面の温度変動(温度変化の推移)及び下面の温度変動(温度変化の推移)が大きく異なる場合があり、加熱終了時のシート間において、シートの厚み方向の温度分布が大きく異なることがあった。
【0006】
このため、例えば、加熱装置によって熱可塑性のシートを加熱した場合には、加熱終了時のシートの上側部分(上側半分)と下側部分(下側半分)との間で軟化または溶融の程度の違いが大きくなることがあった。さらには、順次加熱した複数のシート間においても、シートの厚み方向の軟化または溶融の程度が大きく異なることがあった。このため、その後、成形装置によってシートを成形したときに、シート間におけるシートの変形具合(伸び具合)の違いが大きくなり、成形品の品質が安定しないことがあった。
【0007】
また、液状の熱硬化性樹脂を含浸させた炭素繊維シートを加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させて炭素繊維複合シートを形成した場合は、シートの上側部分(上側半分)と下側部分(下側半分)との間で、樹脂の硬化の程度の違いが大きくなることがあった。さらには、順次加熱した複数のシート間においても、シートの厚み方向における樹脂の硬化の程度が大きく異なることがあった。このため、炭素繊維複合シートの品質が安定しないことがあった。
【0008】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、加熱期間中におけるシートの上面の温度変動と下面の温度変動との違いを小さくすることができる加熱装置、及び、この加熱装置を備える熱成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、シートを加熱する加熱装置において、前記シートの上面を加熱する上側ヒータと、前記シートの下面を加熱する下側ヒータと、前記シートの前記上面の温度を計測する上側温度センサと、前記シートの前記下面の温度を計測する下側温度センサと、前記上側温度センサ及び前記下側温度センサの計測温度に基づいて、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータの温度を制御するヒータ制御部と、を備え、前記ヒータ制御部は、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータによって前記シートの加熱を開始してから、前記上側温度センサ及び前記下側温度センサの計測温度が目標温度に到達するまでの間、前記上側温度センサ及び前記下側温度センサの計測温度のうち一方の計測温度を他方の計測温度に合わせるように、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータの温度を制御する加熱装置である。
【0010】
上述の加熱装置は、シートの上面を加熱する上側ヒータと、シートの下面を加熱する下側ヒータとを備えている。上側ヒータと下側ヒータとは、シートを加熱するときに、上側ヒータがシートの上面の上方に位置し、下側ヒータがシートの下面の下方に位置するように設けられている。さらに、この加熱装置は、シートの上面の温度を計測する上側温度センサと、シートの下面の温度を計測する下側温度センサとを備えている。
【0011】
さらに、上述の加熱装置は、上側温度センサ及び下側温度センサの計測温度に基づいて、上側ヒータ及び下側ヒータの温度を制御するヒータ制御部を備えている。このヒータ制御部は、上側ヒータ及び下側ヒータによってシートの加熱を開始してから、上側温度センサ及び下側温度センサの計測温度が目標温度に到達するまでの間、上側温度センサ及び下側温度センサの計測温度のうち一方の計測温度を他方の計測温度に合わせるように、上側ヒータ及び下側ヒータの温度を制御する。
【0012】
このようにすることで、シートの加熱を開始してからシートの上面温度及び下面温度が目標温度に到達するまでの期間における、シートの上面の温度変動(温度変化の推移)と下面の温度変動(温度変化の推移)との違いを小さくすることができる。換言すれば、シートの上面温度及び下面温度が目標温度に到達するまでの加熱期間中、シートの上面の温度変動(温度変化の推移)と下面の温度変動(温度変化の推移)とを略同一にすることができる。
【0013】
これにより、加熱終了時のシートの上側半分と下側半分との間において、厚み方向の温度分布の違いが小さくなる。すなわち、シートの上面から厚み方向中央までの温度分布と、シートの下面から厚み方向中央までの温度分布との違いを小さくすることができる。さらには、加熱装置によって複数のシートを順に加熱した場合に、複数のシート間において、シートの上面の温度変動(温度変化の推移)及び下面の温度変動(温度変化の推移)の違いが小さくなり、複数のシート間において、シートの厚み方向の温度分布の違いも小さくなる。
【0014】
このため、例えば、上述の加熱装置によって熱可塑性のシートを加熱した場合には、シートの上側部分(上側半分)と下側部分(下側半分)との間で軟化または溶融の程度の違いを小さくすることができる。さらには、順次加熱した複数のシート間においても、シートの厚み方向の軟化または溶融の程度の違いを小さくすることができる。このため、その後、成形装置によってシートを成形したときに、シート間におけるシートの変形具合(伸び具合)の違いが小さくなり、成形品の品質が安定する。
【0015】
また、上述の加熱装置によって、液状の熱硬化性樹脂を含浸させた炭素繊維シートを加熱することで、熱硬化性樹脂を硬化させて炭素繊維複合シートを形成した場合は、シートの上側部分(上側半分)と下側部分(下側半分)との間で、樹脂の硬化の程度の違いを小さくすることができる。さらには、順次加熱した複数のシート間においても、シートの厚み方向における樹脂の硬化の程度の違いを小さくすることができる。このため、形成される炭素繊維複合シートの品質が安定する。
【0016】
さらに、前記の加熱装置であって、前記上側ヒータと前記下側ヒータとは、前記シートの加熱を開始するときの、前記上側ヒータと前記シートの前記上面との間の距離D1と、前記下側ヒータと前記シートの前記下面との間の距離D2とが、D1<D2の関係を満たすように設けられている加熱装置とすると良い。
【0017】
シートの上面を加熱する上側ヒータ(シートの上面よりも上側に配置された上側ヒータ)と、シートの下面を加熱する下側ヒータ(シートの下面よりも下側に配置された下側ヒータ)とによって、シート(例えば、熱可塑性樹脂からなるシート、あるいは、熱可塑性樹脂を含むシート)を加熱する場合、加熱によってシートが軟化または溶融することでシートが下方に垂れように変形することがある。この場合、加熱時間の経過に伴ってシートの軟化または溶融が進行するにしたがって、シートの上面が上側ヒータから遠ざかってゆき、反対に、シートの下面が下側ヒータに近づいてゆく。
【0018】
このことを考慮して、上述の加熱装置では、上側ヒータと下側ヒータとが、シートが加熱装置によって加熱される位置に配置されたとき(すなわち、シートの加熱を開始するとき)の、上側ヒータとシートの上面との間の距離D1と、下側ヒータとシートの下面との間の距離D2とが、D1<D2の関係を満たすように設けられている。このようにすることで、加熱によってシートが下方に垂れように変形する場合でも、当該シートが下側ヒータに接触することを防止することができると共に、上側ヒータと下側ヒータとによって当該シートを適切に加熱することができる。
【0019】
さらに、前記いずれかの加熱装置であって、前記ヒータ制御部は、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータによって前記シートの加熱を開始してから、前記上側温度センサ及び前記下側温度センサの計測温度が前記目標温度に到達するまでの間、前記上側温度センサ及び前記下側温度センサの計測温度のうち基準計測温度として設定された一方の計測温度を、他方の計測温度が追従するように、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータの温度を制御する加熱装置とすると良い。
【0020】
上述の加熱装置では、ヒータ制御部が、上側ヒータ及び下側ヒータによってシートの加熱を開始してから、上側温度センサ及び下側温度センサの計測温度が目標温度に到達するまでの期間中、上側温度センサ及び下側温度センサの計測温度のうち基準計測温度として設定された一方の計測温度を、他方の計測温度が追従するように、上側ヒータ及び下側ヒータの温度を制御する。換言すれば、ヒータ制御部は、上側温度センサ及び下側温度センサのうち基準温度センサとして設定された一方の温度センサの計測温度を、他方の温度センサの計測温度が追従するように、上側ヒータ及び下側ヒータの温度を制御する。
【0021】
具体的には、ヒータ制御部は、例えば、基準計測温度として設定された下側温度センサの計測温度を、上側温度センサの計測温度が追従するように、上側ヒータ及び下側ヒータの温度を制御する。あるいは、これとは反対に、基準計測温度として設定された上側温度センサの計測温度を、下側温度センサの計測温度が追従するように、上側ヒータ及び下側ヒータの温度を制御する。
【0022】
このようにすることで、シートの加熱を開始してからシートの上面温度及び下面温度が目標温度に到達するまでの期間における、シートの上面の温度変動(温度変化の推移)と下面の温度変動(温度変化の推移)との違いを小さくすることができる。換言すれば、シートの上面温度及び下面温度が目標温度に到達するまでの加熱期間中、シートの上面と下面との温度変動(温度変化の推移)を略同一にすることができる。
【0023】
これにより、加熱終了時のシートの上側部分(上側半分)と下側部分(下側半分)とにおいて、厚み方向の温度分布の違いが小さくなる。すなわち、シートの上面から厚み方向中央までの温度分布と、シートの下面から厚み方向中央までの温度分布との違いを小さくすることができる。さらには、加熱装置によって複数のシートを順に加熱した場合に、複数のシート間において、シートの上面の温度変動(温度変化の推移)及び下面の温度変動(温度変化の推移)の違いが小さくなり、複数のシート間において、シートの厚み方向の温度分布の違いも小さくなる。
【0024】
また、前記いずれかの加熱装置であって、前記ヒータ制御部は、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータによって前記シートの加熱を開始してから、前記上側温度センサ及び前記下側温度センサの計測温度が前記目標温度に到達するまでの間、前記上側温度センサの計測温度と前記下側温度センサの計測温度とを比較して、高温または低温である方の計測温度を、他方の計測温度に合わせるように、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータの温度を制御する加熱装置とすると良い。
【0025】
上述の加熱装置では、ヒータ制御部が、上側ヒータ及び下側ヒータによってシートの加熱を開始してから、上側温度センサ及び下側温度センサの計測温度が目標温度に到達するまでの期間中、上側温度センサの計測温度と下側温度センサの計測温度とを比較して、高温または低温である方の計測温度を、他方の計測温度に合わせるように、上側ヒータ及び下側ヒータの温度を制御する。具体的には、ヒータ制御部は、例えば、上側温度センサの計測温度と下側温度センサの計測温度とを一定時間毎に比較して、高温である方の計測温度を低温である方の計測温度に合わせるように、上側ヒータ及び下側ヒータの温度を制御する。あるいは、これとは反対に、低温である方の計測温度を高温である方の計測温度に合わせるように、上側ヒータ及び下側ヒータの温度を制御する。
【0026】
このようにすることで、シートの加熱を開始してからシートの上面温度及び下面温度が目標温度に到達するまでの期間における、シートの上面の温度変動(温度変化の推移)と下面の温度変動(温度変化の推移)との違いを小さくすることができる。換言すれば、シートの上面温度及び下面温度が目標温度に到達するまでの加熱期間中、シートの上面と下面との温度変動(温度変化の推移)を略同一にすることができる。
【0027】
これにより、加熱終了時のシートの上側部分(上側半分)と下側部分(下側半分)とにおいて、厚み方向の温度分布の違いが小さくなる。すなわち、シートの上面から厚み方向中央までの温度分布と、シートの下面から厚み方向中央までの温度分布との違いを小さくすることができる。さらには、加熱装置によって複数のシートを順に加熱した場合に、複数のシート間において、シートの上面の温度変動(温度変化の推移)及び下面の温度変動(温度変化の推移)の違いが小さくなり、複数のシート間において、シートの厚み方向の温度分布の違いも小さくなる。
【0028】
なお、上側ヒータ及び下側ヒータによってシートの加熱を開始してから、上側温度センサ及び下側温度センサの計測温度が目標温度に到達するまでの期間中、高温(低温)である方の計測温度は、上側温度センサの計測温度になるときもあるし、下側温度センサの計測温度になるときもある。すなわち、上側温度センサ及び下側温度センサの計測温度が目標温度に到達するまでの加熱期間中、上側温度センサの計測温度と下側温度センサの計測温度との高低の関係は、一定(常に一方が高温で他方が低温)ではなく、交互に高低が入れ替わる。
【0029】
さらに、前記いずれかの加熱装置であって、前記ヒータ制御部は、前記上側温度センサ及び前記下側温度センサの計測温度が前記目標温度に到達した後、前記上側温度センサ及び前記下側温度センサの計測温度を前記目標温度に保つように、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータの温度を制御する加熱装置とすると良い。
【0030】
上述の加熱装置では、ヒータ制御部が、上側温度センサ及び下側温度センサの計測温度が目標温度に到達した後、上側温度センサ及び下側温度センサの計測温度が目標温度に維持されるように、上側ヒータ及び下側ヒータの温度を制御する。このようにすることで、シートの上側半分と下側半分とにおいて、厚み方向の温度分布の違いをより一層小さくすることができる。すなわち、シートの上面から厚み方向中央までの温度分布と、シートの下面から厚み方向中央までの温度分布との違いを、より一層小さくすることができる。さらには、加熱装置によって複数のシートを順に加熱した場合に、複数のシート間において、シートの上面の温度変動(温度変化の推移)及び下面の温度変動(温度変化の推移)の違いがより一層小さくなり、複数のシート間において、シートの厚み方向の温度分布の違いもより一層小さくなる。
【0031】
本発明の他の態様は、前記いずれかの加熱装置と、前記加熱装置による加熱を行った前記シートを成形する成形装置と、を備える熱成形装置である。
【0032】
上述の熱成形装置は、前述の加熱装置を備えている。このため、加熱装置による加熱終了時のシートの上側半分と下側半分との間において、厚み方向の温度分布の違いが小さくなる。すなわち、シートの上面から厚み方向中央までの温度分布と、シートの下面から厚み方向中央までの温度分布との違いを小さくすることができる。さらには、加熱装置によって複数のシートを順に加熱した場合に、複数のシート間において、シートの上面の温度変動(温度変化の推移)及び下面の温度変動(温度変化の推移)の違いが小さくなり、複数のシート間において、シートの厚み方向の温度分布の違いも小さくなる。
【0033】
さらに、上述の熱成形装置は、前述の加熱装置による加熱を行ったシートを成形する成形装置を備えている。前述の加熱装置によって順次加熱を行った複数のシートを、成形装置によって順次成形することで、品質が安定した成形品(成形されたシート)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】実施形態1,2にかかる熱成形装置の概略構成図である。
【
図3】ヒータを構成するヒータ要素の平面図である。
【
図4】ヒータによるシートの加熱を説明する図である。
【
図5】実施形態1にかかるヒータ温度制御を説明する図である。
【
図6】実施形態2にかかるヒータ温度制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<実施形態1>
次に、本発明の実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、実施形態1にかかる加熱装置30及び熱成形装置1の概略構成図である。熱成形装置1は、加熱装置30と、成形装置40とを備えている。さらに、熱成形装置1は、シート供給装置81と、シート保持装置83と、搬送制御部51と、成形装置制御部53とを備えている。なお、搬送制御部51及び成形装置制御部53は、図示しないCPU等を含む回路部を有している。
【0036】
シート供給装置81及びシート保持装置83は、搬送制御部51の制御によって作動する。具体的には、シート供給装置81は、搬送制御部51の制御により、シート載置台85に載置されている複数のシート90(未成形シート91)から、1枚のシート90を取り出し、シート保持装置83に供給する。また、シート保持装置83は、シート供給装置81によって供給されたシート90を保持しつつ、搬送制御部51の制御によって加熱装置30へ搬送する。
【0037】
シート90は、熱可塑性のシートであり、具体的には、熱可塑性樹脂からなるシートである。なお、本実施形態1では、シート90として、カット状(枚葉型)のシートを使用する場合を例示して説明するが、これに限定されず、例えば、ロール状に巻き取られた長尺のシートを引き出して使用するようにしても良い。
【0038】
加熱装置30は、未成形シート91の上面91bを加熱する上側ヒータ10と、未成形シート91の下面91cを加熱する下側ヒータ20と、未成形シート91の上面91bの温度を計測する上側温度センサ13と、未成形シート91の下面91cの温度を計測する下側温度センサ23と、ヒータ制御部52とを備える(
図1参照)。なお、ヒータ制御部52は、図示しないCPU等を含む回路部を有している。
【0039】
この加熱装置30(上側ヒータ10と下側ヒータ20)は、ヒータ制御部52の制御によって作動し、未成形シート91(成形装置40によって成形される前のシート90)を加熱して軟化または溶融させる。上側ヒータ10と下側ヒータ20とは、未成形シート91が加熱装置30によって加熱される位置(
図4に示す位置)に配置されたときに、上側ヒータ10が未成形シート91の上面91bの上方に位置し、下側ヒータ20が未成形シート91の下面91cの下方に位置するように設けられている。
【0040】
ここで、上側ヒータ10について説明する。
図2は、上側ヒータ10の平面図であり、熱を放射する放熱部10b側から上側ヒータ10を平面視した図である。
図3は、上側ヒータ10を構成するヒータ要素11の平面図である。上側ヒータ10は、X方向(
図2において横方向)とY方向(
図2において縦方向)に隣接して配列された複数のヒータ要素11を有する。
図2に示す例では、上側ヒータ10は、X方向に6個のヒータ要素11が隣接して配置されたヒータ要素11の列が、Y方向に5列隣接して並ぶ態様で、合計30個のヒータ要素11を有する。これらのヒータ要素11によって、放熱部10bが構成されている。
【0041】
ヒータ要素11は、定格電圧での昇温速度が60[℃/秒]以上である急速応答可能な高速追従型ヒーターである。このヒータ要素11は、
図3に示すように、略八角形状の絶縁板15と、絶縁板15の表面に配置された蛇行形状のヒーターエレメント16とを有する。ヒーターエレメント16は、一方向に間隔を空けて並ぶ複数の発熱板17と、隣り合う発熱板17の端部を互い違いに連結する複数の連結板18とを備えている。各ヒータ要素11が発する熱量は、各ヒータ要素11に供給される電力量によって制御される。従って、上側ヒータ10の温度は、ヒータ要素11に供給される電力量によって制御される。なお、下側ヒータ20も、上述した上側ヒータ10と同様の構成を有する(
図2及び
図3参照)。
【0042】
上側温度センサ13は、放射温度計であり、上側ヒータ10の内部に配置されている。具体的には、上側温度センサ13は、平面視で、上側ヒータ10の中央領域に位置する4つのヒータ要素11に囲まれるようにして、上側ヒータ10の中央領域に設けられている(
図2参照)。この上側温度センサ13は、未成形シート91の上面91bの温度を計測して、シート上面温度T3として出力する。
【0043】
また、下側温度センサ23は、放射温度計であり、下側ヒータ20の内部に配置されている。具体的には、下側温度センサ23は、平面視で、下側ヒータ20の中央領域に位置する4つのヒータ要素11に囲まれるようにして、下側ヒータ20の中央領域に設けられている(
図2参照)。この下側温度センサ23は、未成形シート91の下面91cの温度を計測して、シート下面温度T4として出力する。
【0044】
また、上側ヒータ10に含まれる複数のヒータ要素11のうち、平面視で上側ヒータ10の略中央に位置する1つのヒータ要素11Bには、熱電対温度計14が取り付けられている。この熱電対温度計14は、ヒータ要素11Bの温度を検出して、上側ヒータ10の温度(上側ヒータ温度T1)として出力する。また、下側ヒータ20に含まれる複数のヒータ要素11のうち、平面視で下側ヒータ20の略中央に位置する1つのヒータ要素11Bには、熱電対温度計24が取り付けられている。この熱電対温度計24は、ヒータ要素11Bの温度を検出して、下側ヒータ20の温度(下側ヒータ温度T2)として出力する。
【0045】
ところで、熱可塑性のシート90を加熱すると、加熱によってシート90が軟化または溶融することでシート90が下方に垂れように変形する。より具体的には、加熱時間の経過に伴ってシート90の軟化または溶融が進行するにしたがって、シート90の上面90bが上側ヒータ10から遠ざかってゆき、反対に、シート90の下面90cが下側ヒータ20に近づいてゆく。
【0046】
このことを考慮して、本実施形態の加熱装置30では、
図4に示すように、上側ヒータ10と下側ヒータ20とが、未成形シート91が加熱装置30によって加熱される位置(
図4に示す位置、上側ヒータ10と下側ヒータ20との間の位置)に配置されたとき(すなわち、未成形シート91の加熱を開始するとき)に、上側ヒータ10(未成形シート91の上面91bと対向する放熱部10b)と未成形シート91の上面91bとの間の距離D1と、下側ヒータ20(未成形シート91の下面91cと対向する放熱部20b)と未成形シート91の下面91cとの間の距離D2が、D1<D2の関係を満たすように設けられている。詳細には、上側ヒータ10と下側ヒータ20とは、シート90の加熱を開始するときに、距離D1と距離D2とがD1<D2の関係を満たすように位置し、且つ、シート90の加熱期間中、互いの位置を変えることなくシート90を加熱する。このようにすることで、加熱によって下方に垂れように変形するシート90が下側ヒータ20に接触することを防止することができると共に、上側ヒータ10と下側ヒータ20とによってシート90をより適切に加熱することができる。なお、
図4は、上側ヒータ10と下側ヒータ20とによって未成形シート91の加熱を開始するときの、上側ヒータ10と下側ヒータ20と未成形シート91との位置関係を示す図である。
【0047】
成形装置40は、成形装置制御部53の制御によって作動し、加熱装置30によって加熱されて軟化した未成形シート91を成形する。この成形装置40は、成形品Mの形状に応じたキャビティ(不図示)が形成された上型41と、クランプ42と、上型41を保持する上テーブル(不図示)と、クランプ42を保持する下テーブル(不図示)と、上テーブルと下テーブルを昇降可能に保持する成形用テーブル駆動機構(不図示)と、上型41のキャビティ内に差圧を発生させる差圧供給機構(不図示)とを備えている。
【0048】
この成形装置40では、成形装置制御部53の制御により、以下のようにして未成形シート91を成形して、成形済シート92(成形品Mを含むシート90)を作製する。具体的には、加熱装置30による加熱によって軟化した未成形シート91が、上型41とクランプ42との間に搬入されると、離間位置に配置されていた上型41とクランプ42とが、成形用テーブル駆動機構の駆動によって近接位置に移動する。なお、離間位置は、上型41とクランプ42との距離が最も離れた位置である。また、近接位置は、上型41とクランプ42とが最も近接する位置であり、上型41とクランプ42とによって未成形シート91の成形が行われる位置である。
【0049】
上型41とクランプ42とが近接位置に配置されると、差圧供給機構によって上型41のキャビティ内に差圧を発生させて、この差圧によってシート90を上型41に密接させる。これにより、未成形シート91が、上型41のキャビティに応じた形状に変化して、成形済シート92(成形品Mを含むシート90)になる。その後、成形用テーブル駆動機構の駆動によって、上型41とクランプ42とを離間位置に移動させて、成形済シート92が取り出される。
【0050】
次に、本実施形態1のヒータ温度制御について、詳細に説明する。本実施形態1の熱成形装置1を構成する加熱装置30では、ヒータ制御部52が、上側温度センサ13及び下側温度センサ23の計測温度に基づいて、上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度を制御する。
【0051】
具体的には、ヒータ制御部52は、上側温度センサ13によって検出されたシート上面温度T3を入力し、入力したシート上面温度T3に基づいて、上側ヒータ10の温度を制御する。なお、ヒータ制御部52は、上側ヒータ10の各ヒータ要素11に供給する電力量を調節することによって、上側ヒータ10の温度を制御する。また、ヒータ制御部52は、熱電対温度計14によって検出される上側ヒータ温度T1を入力することで、上側ヒータ10の温度を検出する。
【0052】
また、ヒータ制御部52は、下側温度センサ23によって検出されたシート下面温度T4を入力し、入力したシート下面温度T4に基づいて、下側ヒータ20の温度を制御する。なお、ヒータ制御部52は、下側ヒータ20の各ヒータ要素11に供給する電力量を調節することによって、下側ヒータ20の温度を制御する。また、ヒータ制御部52は、熱電対温度計24によって検出される下側ヒータ温度T2を入力することで、下側ヒータ20の温度を検出する。
【0053】
このヒータ制御部52は、上側温度センサ13の計測温度(すなわち、シート上面温度T3)が目標温度Ttに到達するように、一定時間毎にシート上面温度T3を検出しつつ、上側ヒータ10の温度を制御する。さらに、ヒータ制御部52は、下側温度センサ23の計測温度(すなわち、シート下面温度T4)が目標温度Ttに到達するように、一定時間毎にシート上面温度T3を検出しつつ、上側ヒータ10の温度を制御する。なお、本実施形態1では、目標温度Ttは、130℃に設定されている。従って、本実施形態では、ヒータ制御部52によって制御される上側ヒータ10及び下側ヒータ20の加熱によって、未成形シート91の上面91bの温度が130℃にまで昇温すると共に、未成形シート91の下面91cの温度も130℃にまで昇温して、未成形シート91が軟化する。
【0054】
より具体的には、ヒータ制御部52は、上側ヒータ10及び下側ヒータ20によって未成形シート91(シート90)の加熱を開始してから、上側温度センサ13及び下側温度センサ23の計測温度(すなわち、シート上面温度T3及びシート下面温度T4)が目標温度Ttに到達するまでの間、上側温度センサ13及び下側温度センサ23の計測温度のうち一方の計測温度を他方の計測温度に合わせるように、上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度を制御しつつ、シート上面温度T3及びシート下面温度T4を目標温度Ttにまで昇温させる。
【0055】
詳細には、ヒータ制御部52は、上側ヒータ10及び下側ヒータ20によって未成形シート91(シート90)の加熱を開始してから、上側温度センサ13及び下側温度センサ23の計測温度(シート上面温度T3及びシート下面温度T4)が目標温度Ttに到達するまでの期間中、上側温度センサ13及び下側温度センサ23の計測温度のうち基準計測温度として設定された一方の計測温度を、他方の計測温度が追従するように、上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度を制御しつつ、シート上面温度T3及びシート下面温度T4を目標温度Ttにまで昇温させる。換言すれば、ヒータ制御部52は、上側温度センサ13及び下側温度センサ23のうち基準温度センサとして設定された一方の温度センサの計測温度を、他方の温度センサの計測温度が追従するように、上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度を制御して、シート上面温度T3及びシート下面温度T4を目標温度Ttにまで昇温させる。
【0056】
具体的には、本実施形態1では、下側温度センサ23の計測温度を基準計測温度として設定し、ヒータ制御部52は、未成形シート91の加熱を開始してから一定時間毎(例えば1秒毎)にシート上面温度T3とシート下面温度T4を検出して、
図5に示すように、基準計測温度として設定された下側温度センサ23の計測温度(すなわち、シート下面温度T4)を、上側温度センサ13の計測温度(すなわち、シート上面温度T3)が追従するように、一定時間毎に上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度を制御しつつ、シート上面温度T3及びシート下面温度T4を目標温度Ttにまで昇温させる。
【0057】
より具体的には、ヒータ制御部52は、一定時間毎(例えば1秒毎)にシート上面温度T3とシート下面温度T4を検出し、シート上面温度T3がシート下面温度T4に追いつくように、一定時間毎に上側ヒータ10の温度を制御する(上側ヒータ10の各ヒータ要素11に供給する電力量を調節する)。換言すれば、ヒータ制御部52は、一定時間毎に検出したシート下面温度T4を、未成形シート91の上面91bの新たな温度設定値にして、シート上面温度T3がこの温度設定値となるように、一定時間毎に上側ヒータ10の温度を制御する(上側ヒータ10の各ヒータ要素11に供給する電力量を調節する)。このとき、ヒータ制御部52は、シート下面温度T4が目標温度Ttに近づくように、下側ヒータ20の温度を制御する(下側ヒータ20の各ヒータ要素11に供給する電力量を調節する)。
【0058】
図5は、本実施形態1にかかるヒータ温度制御を説明する図であり、上側ヒータ10及び下側ヒータ20によって未成形シート91(シート90)の加熱を開始してから加熱を終了するまでの、上側ヒータ温度T1と下側ヒータ温度T2とシート上面温度T3とシート下面温度T4の温度変動(温度変化の推移)を示している。なお、
図5では、上側ヒータ温度T1を一点鎖線で示し、下側ヒータ温度T2を破線で示し、シート上面温度T3を太い実線で示し、シート下面温度T4を細い実線で示している。
【0059】
このように上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度を制御しつつ未成形シート91(シート90)を加熱することで、
図5に示すように、未成形シート91の加熱を開始してからシート上面温度T3及びシート下面温度T4が目標温度Ttに到達するまでの期間における、未成形シート91の上面91bの温度変動(温度変化の推移)と下面91cの温度変動(温度変化の推移)との違いを小さくすることができる。換言すれば、未成形シート91の加熱を開始してからシート上面温度T3及びシート下面温度T4が目標温度Ttに到達するまでの期間中、未成形シート91の上面91bの温度変動(温度変化の推移)と下面91cの温度変動(温度変化の推移)とを略同一にすることができる。
【0060】
これにより、加熱終了時のシート90(未成形シート91)の上側半分と下側半分との間において、厚み方向(
図4において上下方向)の温度分布の違いが小さくなる。すなわち、未成形シート91の上面91bから厚み方向中央部91dまでの温度分布と、未成形シート91の下面91cから厚み方向中央部91dまでの温度分布との違いを小さくすることができる。さらには、加熱装置30によって複数の未成形シート91を順に加熱した場合に、複数の未成形シート91間において、未成形シート91の上面91bの温度変動(温度変化の推移)及び下面91cの温度変動(温度変化の推移)の違いが小さくなり、複数の未成形シート91間において、未成形シート91の厚み方向の温度分布の違いも小さくなる。
【0061】
このため、本実施形態1では、加熱終了時のシート90(未成形シート91)の上側半分と下側半分とにおいて、軟化の程度(軟化具合)の違いが小さくなる(換言すれば、軟化具合が略同等になる)。さらには、加熱装置30によって順次加熱した複数のシート90間においても、シート90の厚み方向の軟化具合の違いも小さくなる。このため、その後、成形装置40によってシート90を成形したときに、シート90間におけるシート90の変形具合(伸び具合)の違いが小さくなり、成形品Mの品質が安定する(シート90の成形不良を低減することもできる)。
【0062】
さらに、本実施形態では、ヒータ制御部52は、
図5に示すように、上側温度センサ13及び下側温度センサ23の計測温度(すなわち、シート上面温度T3及びシート下面温度T4)が目標温度Ttに到達した後、上側温度センサ13及び下側温度センサ23の計測温度(シート上面温度T3及びシート下面温度T4)が目標温度Ttに維持されるように、上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度(すなわち、上側ヒータ温度T1と下側ヒータ温度T2)を制御する。
【0063】
このようにすることで、加熱終了時のシート90の上側半分と下側半分とにおいて、厚み方向の温度分布の違いをより一層小さくすることができる。すなわち、シート90の上面90bから厚み方向中央部90dまでの温度分布と、シート90の下面90cから厚み方向中央部90dまでの温度分布との違いを、より一層小さくすることができる。さらには、加熱装置30によって複数のシートを順に加熱した場合に、複数のシート90間において、シート90の上面90bの温度変動(温度変化の推移)及び下面90cの温度変動(温度変化の推移)の違いがより一層小さくなり、複数のシート90間において、シート90の厚み方向の温度分布の違いもより一層小さくなる。
【0064】
これにより、加熱終了時(成形前)のシート90(未成形シート91)の上側半分と下側半分とにおいて、軟化の程度(軟化具合)の違いをより一層小さくすることができる(換言すれば、軟化具合を略同等にできる)。さらには、加熱装置30によって順次加熱した複数のシート90間において、シート90の厚み方向の軟化具合の違いもより一層小さくなる。このため、その後、成形装置40によってシート90を成形したときに、シート90間におけるシート90の変形具合(伸び具合)の違いがより一層小さくなり、成形品Mの品質がより一層安定する(シート90の成形不良もより一層低減することもできる)。
【0065】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態2は、実施形態1と比較して、ヒータ制御部による上側ヒータ及び下側ヒータの温度制御が異なり、その他は同様である。従って、ここでは、実施形態1と異なる点を中心に説明し、同様な点については説明を省略または簡略化する。本実施形態2にかかる熱成形装置101は、
図1に示すように、実施形態1と同様の成形装置40と、実施形態1とは異なる加熱装置130とを備えている。本実施形態2の加熱装置130は、実施形態1の加熱装置30と比較して、ヒータ制御部152のみが異なり、その他は同様である。
【0066】
以下、本実施形態2のヒータ温度制御について、詳細に説明する。本実施形態2の熱成形装置101(加熱装置130)では、ヒータ制御部152が、上側温度センサ13及び下側温度センサ23の計測温度に基づいて、上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度を制御する。具体的には、ヒータ制御部152は、上側ヒータ10及び下側ヒータ20によって未成形シート91(シート90)の加熱を開始してから、上側温度センサ13及び下側温度センサ23の計測温度(すなわち、シート上面温度T3及びシート下面温度T4)が目標温度Ttに到達するまでの間、上側温度センサ13及び下側温度センサ23の計測温度のうち一方の計測温度を他方の計測温度に合わせるように、上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度を制御しつつ、シート上面温度T3及びシート下面温度T4を目標温度Ttにまで昇温させる。
【0067】
詳細には、ヒータ制御部152は、上側ヒータ10及び下側ヒータ20によって未成形シート91(シート90)の加熱を開始してから、上側温度センサ13及び下側温度センサ23の計測温度(シート上面温度T3及びシート下面温度T4)が目標温度Ttに到達するまでの期間中、上側温度センサ13の計測温度(シート上面温度T3)と下側温度センサ23の計測温度(シート下面温度T4)とを比較して、高温または低温である方の計測温度を、他方の計測温度に合わせるように、上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度を制御しつつ、シート上面温度T3及びシート下面温度T4を目標温度Ttにまで昇温させる。
【0068】
具体的には、本実施形態2では、
図6に示すように、上側ヒータ10及び下側ヒータ20によって未成形シート91の加熱を開始してから、シート上面温度T3及びシート下面温度T4が目標温度Ttに到達するまでの期間中、ヒータ制御部152は、上側温度センサ13の計測温度(シート上面温度T3)と下側温度センサ23の計測温度(シート下面温度T4)とを一定時間毎(例えば1秒毎)に比較して、高温である方の計測温度を低温である方の計測温度に合わせるように、上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度を制御しつつ、シート上面温度T3及びシート下面温度T4を目標温度Ttにまで昇温させる。
【0069】
より具体的には、ヒータ制御部52は、検出したシート上面温度T3とシート下面温度T4とを比較して、T3>T4であると判定した場合には、高温であるシート上面温度T3が、低温であるシート下面温度T4になるように、上側ヒータ10の温度を制御する(上側ヒータ10の各ヒータ要素11に供給する電力量を調節する)。このとき、ヒータ制御部52は、シート下面温度T4が目標温度Ttに近づくように、下側ヒータ20の温度を制御する(下側ヒータ20の各ヒータ要素11に供給する電力量を調節する)。
【0070】
これとは反対に、T3<T4であると判定した場合には、ヒータ制御部52は、高温であるシート下面温度T4が、低温であるシート上面温度T3になるように、下側ヒータ20の温度を制御する(下側ヒータ20の各ヒータ要素11に供給する電力量を調節する)。このとき、ヒータ制御部52は、シート上面温度T3が目標温度Ttに近づくように、上側ヒータ10の温度を制御する(上側ヒータ10の各ヒータ要素11に供給する電力量を調節する)。
【0071】
なお、本実施形態2では、
図6に示すように、シート上面温度T3及びシート下面温度T4が目標温度Ttに到達するまでの間、上側温度センサ13の計測温度(シート上面温度T3)が高温である方の計測温度になるときと、下側温度センサ23の計測温度(シート上面温度T3)が高温である方の計測温度になるときが、交互に繰り返されるように、ヒータ制御部152によって上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度が制御される。すなわち、シート上面温度T3及びシート下面温度T4が目標温度Ttに到達するまでの間、上側温度センサ13の計測温度(シート上面温度T3)と下側温度センサ23の計測温度(シート上面温度T3)との高低の関係が、一定(常に一方が高温で他方が低温)ではなく、交互に入れ替わるように、ヒータ制御部152によって上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度が制御される(
図6参照)。
【0072】
図6は、本実施形態2にかかるヒータ温度制御を説明する図であり、上側ヒータ10及び下側ヒータ20によって未成形シート91(シート90)の加熱を開始してから加熱を終了するまでの、上側ヒータ温度T1と下側ヒータ温度T2とシート上面温度T3とシート下面温度T4の温度変動(温度変化の推移)を示している。なお、
図6では、上側ヒータ温度T1を一点鎖線で示し、下側ヒータ温度T2を破線で示し、シート上面温度T3を太い実線で示し、シート下面温度T4を細い実線で示している。
【0073】
このように上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度を制御しつつ未成形シート91(シート90)を加熱することで、
図6に示すように、未成形シート91の加熱を開始してからシート上面温度T3及びシート下面温度T4が目標温度Ttに到達するまでの期間における、未成形シート91の上面91bの温度変動(温度変化の推移)と下面91cの温度変動(温度変化の推移)との違いを小さくすることができる。換言すれば、未成形シート91の加熱を開始してからシート上面温度T3及びシート下面温度T4が目標温度Ttに到達するまでの期間中、未成形シート91の上面91bの温度変動(温度変化の推移)と下面91cの温度変動(温度変化の推移)とを略同一にすることができる。
【0074】
これにより、加熱終了時のシート90(未成形シート91)の上側半分と下側半分との間において、厚み方向の温度分布の違いが小さくなる。すなわち、未成形シート91の上面91bから厚み方向中央部91dまでの温度分布と、未成形シート91の下面91cから厚み方向中央部91dまでの温度分布との違いを小さくすることができる。さらには、加熱装置130によって複数の未成形シート91を順に加熱した場合に、複数の未成形シート91間において、未成形シート91の上面91bの温度変動(温度変化の推移)及び下面91cの温度変動(温度変化の推移)の違いが小さくなり、複数の未成形シート91間において、未成形シート91の厚み方向の温度分布の違いも小さくなる。
【0075】
このため、本実施形態2でも、加熱終了時のシート90(未成形シート91)の上側半分と下側半分とにおいて、軟化の程度(軟化具合)の違いが小さくなる(換言すれば、軟化具合が略同等になる)。さらには、加熱装置130によって順次加熱した複数のシート90間においても、シート90の厚み方向の軟化具合の違いも小さくなる。このため、その後、成形装置40によってシート90を成形したときに、シート90間におけるシート90の変形具合(伸び具合)の違いが小さくなり、成形品Mの品質が安定する(シート90の成形不良を低減することもできる)。
【0076】
さらに、ヒータ制御部152は、
図6に示すように、上側温度センサ13及び下側温度センサ23の計測温度(すなわち、シート上面温度T3及びシート下面温度T4)が目標温度Ttに到達した後、上側温度センサ13及び下側温度センサ23の計測温度(シート上面温度T3及びシート下面温度T4)が目標温度Ttに維持されるように、上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度(すなわち、上側ヒータ温度T1と下側ヒータ温度T2)を制御する。
【0077】
このようにすることで、加熱終了時のシート90の上側半分と下側半分とにおいて、厚み方向の温度分布の違いをより一層小さくすることができる。さらには、加熱装置130によって複数のシート90を順に加熱した場合に、複数のシート90間において、シート90の上面90bの温度変動(温度変化の推移)及び下面90cの温度変動(温度変化の推移)の違いがより一層小さくなり、複数のシート90間において、シート90の厚み方向の温度分布の違いもより一層小さくなる。
【0078】
これにより、加熱終了時(成形前)のシート90(未成形シート91)の上側半分と下側半分とにおいて、軟化の程度(軟化具合)の違いをより一層小さくすることができる(換言すれば、軟化具合を略同等にできる)。さらには、加熱装置30によって順次加熱した複数のシート90間において、シート90の厚み方向の軟化具合の違いもより一層小さくなる。このため、その後、成形装置40によってシート90を成形したときに、シート90間におけるシート90の変形具合(伸び具合)の違いがより一層小さくなり、成形品Mの品質がより一層安定する(シート90の成形不良もより一層低減することもできる)。
【0079】
以上において、本発明を実施形態1,2に即して説明したが、本発明は前記実施形態1,2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0080】
例えば、実施形態1では、下側温度センサ23の計測温度を基準計測温度として設定し、上側ヒータ10及び下側ヒータ20によって未成形シート91の加熱を開始してから、シート上面温度T3及びシート下面温度T4が目標温度Ttに到達するまでの期間中、基準計測温度として設定された下側温度センサ23の計測温度(すなわち、シート下面温度T4)を、上側温度センサ13の計測温度(すなわち、シート上面温度T3)が追従するように、上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度を制御するようにした(
図5参照)。
【0081】
しかしながら、これとは反対に、上側温度センサ13の計測温度を基準計測温度として設定し、基準計測温度として設定された上側温度センサ13の計測温度(シート上面温度T3)を、下側温度センサ23の計測温度(シート下面温度T4)が追従するように、上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度を制御するようにしても良い。例えば、一定時間毎(例えば1秒毎)にシート上面温度T3とシート下面温度T4を検出し、シート上面温度T3がシート下面温度T4に追いつくように、一定時間毎に上側ヒータ10の温度を制御する(上側ヒータ10の各ヒータ要素11に供給する電力量を調節する)ようにしても良い。
【0082】
このように制御した場合でも、未成形シート91の加熱を開始してからシート上面温度T3及びシート下面温度T4が目標温度Ttに到達するまでの期間における、未成形シート91の上面91bの温度変動(温度変化の推移)と下面91cの温度変動(温度変化の推移)との違いを小さくすることができる。換言すれば、未成形シート91の加熱を開始してからシート上面温度T3及びシート下面温度T4が目標温度Ttに到達するまでの期間中、未成形シート91の上面91bの温度変動(温度変化の推移)と下面91cの温度変動(温度変化の推移)とを略同一にすることができる。
【0083】
また、実施形態2では、
図6に示すように、上側ヒータ10及び下側ヒータ20によって未成形シート91の加熱を開始してから、シート上面温度T3及びシート下面温度T4が目標温度Ttに到達するまでの期間中、上側温度センサ13の計測温度(シート上面温度T3)と下側温度センサ23の計測温度(シート下面温度T4)とを一定時間毎に比較して、高温である方の計測温度を低温である方の計測温度に合わせるように、上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度を制御するようにした。
【0084】
しかしながら、これとは反対に、低温である方の計測温度を高温である方の計測温度に合わせるように、上側ヒータ10及び下側ヒータ20の温度を制御するようにしても良い。例えば、検出したシート上面温度T3とシート下面温度T4とを比較して、T3>T4である場合に、低温であるシート下面温度T4が、高温であるシート上面温度T3になるように、下側ヒータ20の温度を制御する(下側ヒータ20の各ヒータ要素11に供給する電力量を調節する)ようにしても良い。これとは反対に、T3<T4である場合に、低温であるシート上面温度T3が高温であるシート下面温度T4になるように、上側ヒータ10の温度を制御する(上側ヒータ10の各ヒータ要素11に供給する電力量を調節する)ようにしても良い。
【0085】
このように制御した場合でも、未成形シート91の加熱を開始してからシート上面温度T3及びシート下面温度T4が目標温度Ttに到達するまでの期間における、未成形シート91の上面91bの温度変動(温度変化の推移)と下面91cの温度変動(温度変化の推移)との違いを小さくすることができる。換言すれば、未成形シート91の加熱を開始してからシート上面温度T3及びシート下面温度T4が目標温度Ttに到達するまでの期間中、未成形シート91の上面91bの温度変動(温度変化の推移)と下面91cの温度変動(温度変化の推移)とを略同一にすることができる。
【0086】
また、実施形態1,2では、加熱装置30(上側ヒータ10及び下側ヒータ20)の位置を固定し、位置が固定された加熱装置30にシート90を供給するようにした。しかしながら、これとは反対に、シート90の位置を固定し、加熱装置30(上側ヒータ10及び下側ヒータ20)を、シート90を加熱する位置まで移動させるようにしても良い。成形装置40についても同様である。
【0087】
また、実施形態1,2では、
図4に示すように、上側ヒータ10及び下側ヒータ20を、D1<D2の関係を満たすように設けた。しかしながら、本発明は、D1=D2とする場合、D1>D2とする場合にも適用することができる。
【0088】
また、実施形態1,2では、加熱装置30,130によって熱可塑性樹脂からなるシート90を加熱して軟化または溶融させる例を示したが、本発明の加熱装置は、このようなシートを加熱するものに限定されない。例えば、本発明の加熱装置は、液状の熱硬化性樹脂を含浸させた炭素繊維シートを加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させて炭素繊維複合シートを形成する場合にも適用することができる。
【0089】
この場合でも、シートの加熱を開始してからシート上面温度T3及びシート下面温度T4が目標温度Ttに到達するまでの期間における、シートの上面の温度変動(温度変化の推移)と下面の温度変動(温度変化の推移)との違いを小さくすることができる。さらには、複数のシートを順に加熱した場合に、複数のシート間において、シートの上面の温度変動(温度変化の推移)及び下面の温度変動(温度変化の推移)の違いが小さくなり、複数のシート間において、シートの厚み方向の温度分布の違いも小さくなる。これにより、シートの上側部分(上側半分)と下側部分(下側半分)との間で、熱硬化性樹脂の硬化の程度の違いを小さくすることができる。さらには、順次加熱した複数のシート間においても、シートの厚み方向における樹脂の硬化の程度の違いを小さくすることができる。これにより、形成される炭素繊維複合シートの品質を安定させることができる。
【符号の説明】
【0090】
1,101 熱成形装置
10 上側ヒータ
11 ヒータ要素
13 上側温度センサ
20 下側ヒータ
23 下側温度センサ
30,130 加熱装置
40 成形装置
52,152 ヒータ制御部
90 シート
90b,91b 上面
90c,91c 下面
91 未成形シート
92 成形済シート
D1 上側ヒータとシートの上面との間の距離
D2 下側ヒータとシートの下面との間の距離
Tt 目標温度