(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】平板状ヒートパイプ用冷媒及び平板状ヒートパイプ
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20220621BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20220621BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20220621BHJP
H05K 7/20 20060101ALN20220621BHJP
【FI】
F28D15/02 104A
C09K5/04 Z
H01L23/46 B
H05K7/20 R
(21)【出願番号】P 2020172518
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2020-10-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520398490
【氏名又は名称】株式会社モナテック
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【氏名又は名称】末次 渉
(72)【発明者】
【氏名】中山 透
(72)【発明者】
【氏名】福永 倫康
【合議体】
【審判長】松下 聡
【審判官】槙原 進
【審判官】林 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-9752(JP,A)
【文献】国際公開第2014/102963(WO,A1)
【文献】特開平5-904(JP,A)
【文献】特開昭62-158778(JP,A)
【文献】登録実用新案第3170206(JP,U)
【文献】特開2009-236362(JP,A)
【文献】特許第6704545(JP,B1)
【文献】特開2013-249326(JP,A)
【文献】特開平8-259930(JP,A)
【文献】特開2000-241038(JP,A)
【文献】国際公開第2019/124359(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0077513(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱拡散板としての
、上板、複数の中板及び下板が積層、接合されて形成され、蒸気拡散通路及び毛細管流路から構成される内部空間を有する積層構造である平板状ヒートパイプに封入される
平板状ヒートパイプ用冷媒であって、
前記
平板状ヒートパイプ用冷媒は、水及び前記水が凍結したときの硬度を下げる変形抑制剤を備え、
前記変形抑制剤が1,4-ジオキサン又はジエチレングリコールジメチルエーテルであり、
前記変形抑制剤を0.5重量%以上含有
し、
前記平板状ヒートパイプ用冷媒が封入された前記平板状ヒートパイプについて行われる下記のヒートショック試験の前後にて、下記の熱抵抗測定方法で求められる前記平板状ヒートパイプの熱抵抗と銅板の熱抵抗との差の低下度合いが0.02K/W未満であるとともに、
前記平板状ヒートパイプ用冷媒が封入された前記平板状ヒートパイプについて行われる下記の高温放置試験の前後にて、下記の熱抵抗測定方法で求められる前記平板状ヒートパイプの熱抵抗と前記銅板の熱抵抗との差の低下度合いが0.02K/W未満である、
ことを特徴とする
平板状ヒートパイプ用冷媒。
<ヒートショック試験>
-20℃で30分間、25℃で10分間、100℃で30分間、25℃で10分間の順のサイクルを100サイクル行う。
<高温放置試験>
150℃で1,000時間放置する。
<熱抵抗の測定方法>
熱源、前記平板状ヒートパイプ又は前記銅板、ヒートシンクの順に積層配置し、前記熱源に電圧を加え、前記熱源の表面温度が定常状態になったときの温度を測定して式1から前記平板状ヒートパイプ又は前記銅板の熱抵抗を算出する。
熱抵抗=(T
S
-T
B
)/Qin[K/W] …(式1)
(式1中、Qinは入熱量[W]、T
S
は前記熱源の表面温度[K]、T
B
は定常状態での前記ヒートシンクのベースの複数箇所の温度の平均温度[K])
【請求項2】
前記1,4-ジオキサンを0.5~6.0重量%含有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の
平板状ヒートパイプ用冷媒。
【請求項3】
前記ジエチレングリコールジメチルエーテルを0.5~5.0重量%含有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の
平板状ヒートパイプ用冷媒。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の
平板状ヒートパイプ用冷媒が封入されている、
ことを特徴とする平板状ヒートパイプ。
【請求項5】
前記平板状ヒートパイプは銅を主成分とする、
ことを特徴とする請求項4に記載の平板状ヒートパイプ。
【請求項6】
前記平板状ヒートパイプは非金属素材を主成分とする、
ことを特徴とする請求項4に記載の平板状ヒートパイプ。
【請求項7】
積層構造である、
ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の平板状ヒートパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状ヒートパイプ用冷媒及び平板状ヒートパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
IC(半導体集積装置)等の発熱体では、発熱による動作不良を抑えるべく、ヒートパイプが用いられている。ヒートパイプとして、減圧下の密閉空間に冷媒を封入し、熱源からの熱で蒸気となった冷媒が拡散する蒸気拡散通路と、凝縮した冷媒を毛細管現象によって送る毛細管流路(ウィック)が設けられたものが開示されている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
ヒートパイプは、一般的に、熱伝導率の高い金属(例えば、銅)から構成され、また、封入される冷媒は蒸発熱の大きい水のほか、エタノールやメタノール、アセトン等が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-113232号公報
【文献】特開2009-236362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低温環境下では封入された冷媒が凍結するおそれがあり、冷媒が凍結すると体積膨張が起こるので、この負荷によって、ヒートパイプが変形するおそれがある。
【0006】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的はヒートパイプの変形を抑え得る平板状ヒートパイプ用冷媒及び平板状ヒートパイプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係る平板状ヒートパイプ用冷媒は、
熱拡散板としての、上板、複数の中板及び下板が積層、接合されて形成され、蒸気拡散通路及び毛細管流路から構成される内部空間を有する積層構造である平板状ヒートパイプに封入される平板状ヒートパイプ用冷媒であって、
前記平板状ヒートパイプ用冷媒は、水及び前記水が凍結したときの硬度を下げる変形抑制剤を備え、
前記変形抑制剤が1,4-ジオキサン又はジエチレングリコールジメチルエーテルであり、
前記変形抑制剤を0.5重量%以上含有し、
前記平板状ヒートパイプ用冷媒が封入された前記平板状ヒートパイプについて行われる下記のヒートショック試験の前後にて、下記の熱抵抗測定方法で求められる前記平板状ヒートパイプの熱抵抗と銅板の熱抵抗との差の低下度合いが0.02K/W未満であるとともに、
前記平板状ヒートパイプ用冷媒が封入された前記平板状ヒートパイプについて行われる下記の高温放置試験の前後にて、下記の熱抵抗測定方法で求められる前記平板状ヒートパイプの熱抵抗と前記銅板の熱抵抗との差の低下度合いが0.02K/W未満である、
ことを特徴とする。
<ヒートショック試験>
-20℃で30分間、25℃で10分間、100℃で30分間、25℃で10分間の順のサイクルを100サイクル行う。
<高温放置試験>
150℃で1,000時間放置する。
<熱抵抗の測定方法>
熱源、前記平板状ヒートパイプ又は前記銅板、ヒートシンクの順に積層配置し、前記熱源に電圧を加え、前記熱源の表面温度が定常状態になったときの温度を測定して式1から前記平板状ヒートパイプ又は前記銅板の熱抵抗を算出する。
熱抵抗=(T
S
-T
B
)/Qin[K/W] …(式1)
(式1中、Qinは入熱量[W]、T
S
は前記熱源の表面温度[K]、T
B
は定常状態での前記ヒートシンクのベースの複数箇所の温度の平均温度[K])
【0009】
また、前記1,4-ジオキサンを0.5~6.0重量%含有することが好ましい。
【0010】
また、前記ジエチレングリコールジメチルエーテルを0.5~5.0重量%含有することが好ましい。
【0011】
本発明の第2の観点に係る平板状ヒートパイプは、
本発明の第1の観点に係る平板状ヒートパイプ用冷媒が封入されている、
ことを特徴とする。
【0012】
また、前記平板状ヒートパイプは銅を主成分としていてもよい。
【0013】
また、前記平板状ヒートパイプは非金属素材を主成分としていてもよい。
【0014】
また、積層構造であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヒートパイプの変形を抑え得る平板状ヒートパイプ用冷媒及び平板状ヒートパイプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例において熱抵抗の測定に用いた装置の構成図である。
【
図2】実施例で作製した平板状で積層型であるヒートパイプの構造を示し、(A)、(B)、(C)はそれぞれ上板、中板、下板を示す写真、(D)は上板を一部除いた状態の写真、(E)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(ヒートパイプ用冷媒)
本実施の形態に係るヒートパイプ用冷媒は、ヒートパイプに封入されて用いられる。ヒートパイプ用冷媒は、ヒートパイプの吸熱側にて蒸発し、その蒸気が蒸気拡散通路を通じてヒートパイプの放熱側に移動する。放熱側にて、ヒートパイプ用冷媒の蒸気が冷却され、毛細管流路(ウィック)を通じて再び液相状態に戻る。液相に戻ったヒートパイプ用冷媒は再び吸熱側に移動する。このようなヒートパイプ用冷媒の相変態及び移動によって、熱の移動がなされ、ヒートパイプが設置される発熱体の熱を放散する。
【0018】
ヒートパイプ用冷媒は、水及び変形抑制剤を備えている。ヒートパイプ用冷媒の主成分は水であり、水は蒸発熱が大きく、多くの熱を吸収できるので冷媒として有用である。一方で、水は低温下では凍結して体積膨張する。特に、ヒートパイプの放熱部は毛管現象により水が集まる構造をしており、放熱部付近に水が溜まった状態で低温環境下におかれると、凍結による体積膨張でウィックを拡張させようとする負荷が生じ、この負荷によってヒートパイプが変形するおそれがある。
【0019】
変形抑制剤は、ヒートパイプ用冷媒中の水が凍結したときの硬度を下げる機能を発揮し、低温下で水が凍結するときでも所謂シャーベット状に留まるため、ヒートパイプの変形が抑制される。変形抑制剤は、具体的には、1,4-ジオキサン又はジエチレングリコールジメチルエーテルである。
【0020】
変形抑制剤は、ヒートパイプ用冷媒中に0.5重量%以上含有することが好ましい。変形抑制剤の含有量が少なすぎると、変形抑制効果が小さくなる。また、変形抑制剤の含有量が多いほど、変形抑制効果が大きくなると考えられる一方、多すぎる場合、変形抑制剤の蒸発熱が水よりも小さいことから、吸熱・放熱効果が低下するおそれがある。
【0021】
変形抑制剤が1,4-ジオキサンである場合、0.5~6.0重量%含有していることが好ましい。また、ジエチレングリコールジメチルエーテルの場合、0.5~5.0重量%含有していることが好ましい。
【0022】
1,4-ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテルは、銅との反応性が低いので、銅を主成分とするヒートパイプにて好適に使用できる。
【0023】
1,4-ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテルは、水への溶解性に優れるので、水に均一に分散し、均質なヒートパイプ用冷媒となる。また、1,4-ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテルは、沸点が水に近いので、水の蒸発、凝縮に伴う流路内の移動においてもヒートパイプ用冷媒の均質性が保たれる。
【0024】
(ヒートパイプ)
ヒートパイプは、上述したヒートパイプ用冷媒が封入されている。ヒートパイプは熱源に取り付けられて使用される。熱源としては、IC(半導体集積装置)、LSI(大規模集積回路装置)、CPU(中央処理装置)、LED素子、パワーデバイス等が想定される。
【0025】
ヒートパイプは、蒸気となった冷媒が拡散する蒸気拡散通路、及び、凝縮した冷媒を毛細管現象により送る毛細管流路から構成される内部空間を有し、この内部空間にヒートパイプ用冷媒が封入されている限り、形態について制限されない。
【0026】
ヒートパイプの形態として、例えば、積層構造のヒートパイプが挙げられる。積層構造のヒートパイプとしては、特許第5178274号公報や特開2019-113232号公報に開示されているような上板、複数の中板、及び、下板が積層、接合されて形成され、蒸気拡散通路及び毛細管流路から構成される内部空間を有する構造が挙げられる。
【0027】
また、ヒートパイプを構成する素材は、銅やアルミなど、熱伝導率の高い素材であり、銅であることが好ましい。ヒートパイプ用冷媒に含有する変形抑制剤が銅との反応性が低いため、ヒートパイプの吸熱・放熱効果が安定的に長期に渡って保たれる。なお、ヒートパイプの素材は上記に限定されるものではなく、熱伝導率が低い素材や非金属素材であってもよい。例えば特許第5178274号公報で開示されているような構成であれば、熱拡散板としての機能が期待される。
【実施例】
【0028】
後述するように種々の冷媒を封入した平板状のヒートパイプを作製し、下記の手法にて、ヒートショック試験、及び、高温放置試験を行った。そして、下記の評価方法にて、ヒートパイプ製作直後の熱抵抗、ヒートショック試験後の熱抵抗、高温放置試験後の熱抵抗、及び、ヒートショック試験後の外観について評価した。
【0029】
(ヒートショック試験)
ヒートショック試験は、下記の温度条件を1サイクルとして、1,000サイクル行った。
温度条件:-20℃(30分間)→25℃(10分間)→100℃(30分間)→25℃(10分間)
【0030】
(高温放置試験)
高温放置試験は、150℃の温度条件で1,000時間放置することにより行った。
【0031】
(熱抵抗の測定方法)
熱抵抗の測定には、
図1に示す装置構成を用いた。熱伝導性グリースを用い、熱源にヒートパイプ、ヒートシンクの順に積層して配置した。また、冷却ファンにより、強制空冷を行った。
熱源に電圧を加え、熱源の表面温度(T
S)が定常状態になったときの温度を測定した。また、定常状態でのヒートシンクのベースの複数箇所の温度を測定し、その平均温度(T
B)を算出した。
そして、式1を用い、ヒートパイプの熱抵抗を算出した。なお、式1中、Qinは入熱量[W]を表す。
熱抵抗(Rth)=(Ts-T
B)/Qin[K/W] …(式1)
【0032】
また、ヒートパイプと同じサイズの銅板を用い、上記と同様の測定を行った。そして、式1を用いて、銅板の熱抵抗を算出した。
そして、ヒートパイプの熱抵抗と銅板の熱抵抗との差をΔRthとして算出した。
【0033】
(製作直後の熱抵抗の評価方法)
上記の熱抵抗の測定方法において、ヒートパイプの熱抵抗と銅板の熱抵抗との差(ΔRth)が0.06K/W以上である場合には「○」、0.06K/W未満である場合には「×」と評価した。
【0034】
(ヒートショック試験後、及び、高温放置試験後の熱抵抗の評価方法)
上記の熱抵抗の測定方法において、試験後のヒートパイプの熱抵抗と銅板の熱抵抗との差(ΔRth)と製作直後のΔRthを比較し、低下度合いが0.02K/W未満である場合には「○」、0.02K/W以上である場合には「×」と評価した。
【0035】
(ヒートショック試験後の外観の評価方法)
製作直後の外観と比べて、目視で変化が認められなかった場合には「○」、膨らみなどの変化が認められた場合には「×」と評価した。
【0036】
(実験1)
純水に1,4-ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(以下、DEGDME)、エタノール、アセトンをそれぞれ添加した冷媒、及び、純水のみの冷媒を準備した。
これらの冷媒を注入、封止したヒートパイプをそれぞれ作製した(No.1-5)。なお、実験1において、作製したヒートパイプの構造は
図2に示す構造であり、市販されているFGHP(登録商標、四国計測工業株式会社)の「□50mm」(50mm×50mm、厚み2.2mm)の構造に準じている。
【0037】
作製したヒートパイプについて、上記の手法でヒートショック試験、及び、高温放置試験を行い、ヒートパイプ製作直後の熱抵抗、ヒートショック試験後の熱抵抗、高温放置後の熱抵抗、及び、ヒートショック試験後の外観について評価した。表1にその評価結果を示す。
【0038】
【0039】
1,4-ジオキサン、DEGDMEを添加した冷媒では、全ての評価項目において良好な結果を示した。エタノールを添加した冷媒では、高温放置後の熱抵抗の項目で不良であった。エタノールがヒートパイプの主成分である銅と反応したことが考えられる。また、アセトンを添加した冷媒、及び、純水では、ヒートショック試験後の外観、熱抵抗の項目で不良となった。以上の結果から、1,4-ジオキサン、及び、DEGDMEを純水に添加した冷媒は、ヒートパイプ用の冷媒として適していることがわかった。
【0040】
(実験2)
純水に1,4-ジオキサンを3.0重量%、1.0重量%、0.5重量%、0.1重量%添加した冷媒、及び、純水のみの冷媒を準備した。
これらの冷媒を注入、封止したヒートパイプをそれぞれ作製した(No.11-15)。なお、実験2において作製したヒートパイプの構造、サイズは、上記の実験1と同様である。
【0041】
作製したヒートパイプについて、上記の手法でヒートショック試験、及び、高温放置試験を行い、ヒートパイプ製作直後の熱抵抗、ヒートショック試験後の熱抵抗、高温放置後の熱抵抗、及び、ヒートショック試験後の外観について評価した。表2にその評価結果を示す。
【0042】
【0043】
1,4-ジオキサンの添加量が0.5重量%以上の場合、全ての項目において良好な結果を示したが、0.1重量%では、ヒートショック試験後の外観、熱抵抗が不良であった。したがって、1,4-ジオキサンを添加する場合、0.5重量%以上添加することが望ましいことがわかった。
【0044】
(実験3)
純水に1,4-ジオキサンを6.0重量%、4.0重量%、2.0重量%、0.1重量%添加した冷媒、及び、純水のみの冷媒を準備した。
これらの冷媒を注入、封止したヒートパイプをそれぞれ作製した(No.21-25)。なお、実験3において、作製したヒートパイプの構造は
図2に示す構造であり、市販されているFGHP(登録商標、四国計測工業株式会社)の「○120mm」(φ120mm、厚み2.2mm)の構造に準じている。
【0045】
作製したヒートパイプについて、上記の手法でヒートショック試験、及び、高温放置試験を行い、ヒートパイプ製作直後の熱抵抗、ヒートショック試験後の熱抵抗、高温放置後の熱抵抗、及び、ヒートショック試験後の外観について評価した。表3にその評価結果を示す。
【0046】
【0047】
実験2と同様、1,4-ジオキサンの添加量が0.1重量%の場合、ヒートショック試験後の外観、熱抵抗が不良であり、2.0重量%以上の場合では全ての評価項目で良好な結果を示した。
【0048】
(実験4)
DEGDMEを5.0重量%、3.0重量%、1.0重量%添加した冷媒、及び、純水のみの冷媒を準備した。
これらの冷媒を注入、封止したヒートパイプをそれぞれ作製した(No.31-34)。なお、実験4において、作製したヒートパイプの構造は
図2に示す構造であり、市販されているFGHP(登録商標、四国計測工業株式会社)の「□140mm」(140mm×140mm、厚み2.2mm)の構造に準じている。
【0049】
作製したヒートパイプについて、上記の手法でヒートショック試験、及び、高温放置試験を行い、ヒートパイプ製作直後の熱抵抗、ヒートショック試験後の熱抵抗、高温放置後の熱抵抗、及び、ヒートショック試験後の外観について評価した。表4にその評価結果を示す。
【0050】
【0051】
DEGDMEを添加した冷媒では、いずれの評価項目も良好であった。