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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】締結部を備えた装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/04 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
H02N2/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021008413
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】武田 和崇
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-288168(JP,A)
【文献】特開2015-158976(JP,A)
【文献】特開2005-016714(JP,A)
【文献】特開2009-163846(JP,A)
【文献】特開平08-025106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/00- 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と、
第2の部材と、
前記第1の部材および前記第2の部材を締結する締結部材と
を有する、締結部を備えた装置であって、
前記締結部材は、電圧の印加により伸縮するピエゾ素子を含む締結力調整機構を備え、
前記締結力調整機構は、前記第1の部材と前記第2の部材との間の加圧力が所定の値以上となった際に、前記ピエゾ素子に電圧を印加することで、前記締結部の締結力を調整する構成を有し、
前記締結部材が、
前記第1の部材と前記第2の部材との締結部を貫通するシャフト部と、前記第1の部材側に配された皿部とを含む皿付きシャフトと、
前記第1の部材と、前記皿部との間を固定する、前記第1の部材側に配される第1のシャフトカラーと、
前記第2の部材と、前記シャフト部との間を固定する、前記第2の部材側に配される底面部付きの第2のシャフトカラーと、
前記皿部と前記底面部との間に前記皿付きシャフトの軸方向に沿って配され、前記締結部を貫通する円筒状ピエゾ素子と、
を有することを特徴とする、締結部を備えた装置。
【請求項2】
前記ピエゾ素子が、電圧を印加した際に寸法が伸びることで前記締結部の締結力を調整する、請求項1に記載の締結部を備えた装置。
【請求項3】
さらに、前記第1の部材および前記第2の部材の温度を測定する温度測定手段を備えた請求項1または2に記載の締結部を備えた装置。
【請求項4】
前記皿部と、前記円筒状ピエゾ素子との間に、前記皿付きシャフトの軸方向に沿って、加熱手段を備えた第3のシャフトカラーを配する、請求項1~3のいずれか一項に記載の締結部を備えた装置。
【請求項5】
前記締結部材が、さらに、前記第2のシャフトカラーを前記皿付きシャフトの軸方向に移動可能とするばね部を備えた請求項1~4のいずれか一項に記載の締結部を備えた装置。
【請求項6】
第1の部材と、
第2の部材と、
前記第1の部材および前記第2の部材を締結する締結部材と
を有する、締結部を備えた装置であって、
前記締結部材は、電圧の印加により伸縮するピエゾ素子を含む締結力調整機構を備え、
前記締結力調整機構は、前記第1の部材と前記第2の部材との温度差が所定の値以上となった際に、前記ピエゾ素子に電圧を印加することで、前記締結部の締結力を調整する構成を有し、
前記締結部材が、
前記第1の部材と前記第2の部材との締結部を貫通するシャフト部と、前記第1の部材側に配された皿部とを含む皿付きシャフトと、
前記第1の部材と、前記皿部との間を固定する、前記第1の部材側に配される第1のシャフトカラーと、
前記第2の部材と、前記シャフト部との間を固定する、前記第2の部材側に配される底面部付きの第2のシャフトカラーと、
前記皿部と前記底面部との間に前記皿付きシャフトの軸方向に沿って配され、前記締結部を貫通する円筒状ピエゾ素子と、
を有することを特徴とする、締結部を備えた装置。
【請求項7】
第1の部材と、
第2の部材と、
前記第1の部材および前記第2の部材を締結する締結部材と
を有する、締結部を備えた装置であって、
前記締結部材は、電圧の印加により伸縮するピエゾ素子を含む締結力調整機構を備え、
前記締結力調整機構は、前記第1の部材および前記第2の部材のうちの少なくとも一方の温度に所定の値以上の変化が生じ、かつ、前記第1の部材と前記第2の部材との間の加圧力が所定の値以上となった際に、前記ピエゾ素子に電圧を印加することで、前記締結部の締結力を調整する構成を有し、
前記締結部材が、
前記第1の部材と前記第2の部材との締結部を貫通するシャフト部と、前記第1の部材側に配された皿部とを含む皿付きシャフトと、
前記第1の部材と、前記皿部との間を固定する、前記第1の部材側に配される第1のシャフトカラーと、
前記第2の部材と、前記シャフト部との間を固定する、前記第2の部材側に配される底面部付きの第2のシャフトカラーと、
前記皿部と前記底面部との間に前記皿付きシャフトの軸方向に沿って配され、前記締結部を貫通する円筒状ピエゾ素子と、
を有することを特徴とする、締結部を備えた装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結力調整機構を有する、締結部を備えた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部材が締結されている装置内に発熱部品が存在したり、外気温が大きく変化したりすることで、装置内に温度変化が生じると、各部材が熱膨張または熱収縮する。各部材の熱変化量(熱膨張量または熱収縮量)は、装置内の温度変化量や各部材を構成する材質に依存する。このため、締結されている部材同士に温度差が生じた場合や、温度差がない場合でも異なる材質の部材が締結されている場合には、温度変化によって締結される部材同士の熱変化量に差が生じ、それにより熱応力が発生する。そして、締結される部材間で、平面方向の熱応力が、締結力による摩擦力以上に負荷されると、スティックスリップ現象が発生し、音鳴りが起こる。音鳴りは、時に耳障りであったり、製品上は問題がなくとも、製品使用者を不安にさせたりすることがあるため、製品価値を下げる可能性がある。このため、製品価値向上の観点から、これまでに、スティックスリップ現象を抑制し、音鳴りを防ぐ様々な技術の開発が行われてきた。
【0003】
特許文献1では、熱膨張または熱収縮の変化が顕著である部分に隙間(クリアランス)を設け、部材同士の接触箇所を限定することで、スティックスリップ現象を抑制する方法を開示している。
【0004】
また、特許文献2および3では、締結面に潤滑剤を含む被膜を介在させることで、部材同士の熱膨張差をなくし、スティックスリップ現象を抑制する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-147612号公報
【文献】特開平10-184447号公報
【文献】特開2002-163921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、隙間を設け、部材同士の接触箇所を限定するため、当該接触箇所に締結力が集中し破損する恐れや、装置全体の締結力が低下する恐れがあった。また、部材の締結箇所でのスティックスリップ現象は抑制できない可能性があり、隙間を設けることができない製品、例えば、シールド部品などでは、適用自体難しい場合があった。
【0007】
特許文献2および3に記載の被膜を介在させる方法では、締結される部材間の温度差が大きい場合や、部材を構成する材質の線膨張係数(熱膨張率:coefficient of thermal expansion(CTE))が大きく異なる場合には、スティックスリップ現象を抑制できない場合があった。
【0008】
従って、スティックスリップ現象の発生を防ぐ新たな技術の開発が求められおり、さらに、近年、電子機器などの製品の小型化が進んでいることから、このような小型製品にも適用できる技術の開発が求められていた。
【0009】
本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、温度変化が生じた際に締結力の調整ができ、スティックスリップ現象の発生を防ぐ、小型製品にも適用可能な締結力調整機構を有する締結部を備えた装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の締結部を備えた装置の一態様は、第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材および前記第2の部材を締結する締結部材とを有し、前記締結部材は、電圧の印加により伸縮するピエゾ素子を含む締結力調整機構を備え、前記締結力調整機構は、前記第1の部材と前記第2の部材との間の加圧力が所定の値以上となった際に、前記ピエゾ素子に電圧を印加することで、前記締結部の締結力を調整することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の締結部を備えた装置の一態様は、第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材および前記第2の部材を締結する締結部材とを有し、前記締結部材は、電圧の印加により伸縮するピエゾ素子を含む締結力調整機構を備え、前記締結力調整機構は、前記第1の部材と前記第2の部材との温度差が所定の値以上となった際に、前記ピエゾ素子に電圧を印加することで、前記締結部の締結力を調整することを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の締結部を備えた装置の一態様は、第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材および前記第2の部材を締結する締結部材とを有し、前記締結部材は、電圧の印加により伸縮するピエゾ素子を含む締結力調整機構を備え、前記締結力調整機構は、前記第1の部材および前記第2の部材のうちの少なくとも一方の温度に所定の値以上の変化が生じ、かつ、前記第1の部材と前記第2の部材との間の加圧力が所定の値以上となった際に、前記ピエゾ素子に電圧を印加することで、前記締結部の締結力を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温度変化が生じた際に締結力の調整ができ、スティックスリップ現象の発生を防ぐ、小型製品にも適用可能な締結力調整機構を有する締結部を備えた装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】締結部を備えた装置の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明に係る締結部を備えた装置における締結部の構造の一例を示す概略部分断面図である。
図3図2に示す締結部の締結力が解除された状態を示す概略部分断面図である。
図4】本発明に係る締結部を備えた装置における締結部の構造の別の例を示す概略部分断面図である。
図5図4に示す締結部の締結力が解除された状態を示す概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、図1に、締結部を備えた装置の一例の概略断面図を示す。図1には、筐体100内に、第1の部材101である材質が金属のシールド部品と、第2の部材102である材質が金属のベースプレートと、これらの部材を締結する締結部材104(ボルトおよびナット)とが配置された締結部を備えた装置が記載されている。そして、当該装置では、第2の部材102に近接して発熱部品103が配置されている。
【0016】
ここで、例えば、寒冷地に置かれた状態で、当該装置の電源がONにされると、発熱部品103が発熱し、まず第2の部材102の温度が上昇する。この際、第1の部材101に温度が伝わるまでに時間がかかるため、第1の部材101と第2の部材102との間に温度差が発生し、両部材間でスティックスリップ現象による音鳴りが発生する場合があった。また、両部材の線膨張係数が大きく異なる場合には、この現象がより起こりやすくなる。
【0017】
しかしながら、本発明に係る締結部を備えた装置(以下、本装置と称することがある)では、ピエゾ素子を用いたアクチュエータを締結部に組み込み、ピエゾ素子に電圧を印加し、素子を伸縮させることで、締結部の締結力を調整できる。従って、本装置では、装置内で温度変化が生じた際、より具体的には、部材の熱変化(熱膨張など)が発生している間のみ、締結力を小さくすることで、締結部の平面方向を滑りやすくし、スティックスリップ現象を抑制し、音鳴りを防ぐことができる。このように、本装置では、締結力を装置の熱変化時に調整(例えば、熱膨張時に小さく)することで、スティックスリップ現象を起こさず締結部材が滑れるようにし、温度が安定した(例えば、熱膨張しきった)後に、再び締結力を戻すことができる。
【0018】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0019】
<締結部を備えた装置>
本装置は、図2に示すように、第1の部材1と、第2の部材2と、前記第1の部材1および前記第2の部材2を締結する締結部材とを有する。締結部材は、電圧の印加により伸縮するピエゾ素子5を含む締結力調整機構を備える。また、締結力調整機構は、第1の部材1と第2の部材2との間の加圧力が所定の値以上となった際に、ピエゾ素子5に電圧を印加することで、締結部の締結力を調整する。第1の部材1と第2の部材2との間の加圧力が増大する例としては、上述したように、両部材の間に温度差が生じた場合や、両部材の線膨張係数が大きく異なる場合に、両部材の熱変化量(例えば、熱膨張量、熱収縮量)の間に差が生じることが原因として考えられる。
【0020】
従って、本装置は、締結部、具体的には、第1の部材1と第2の部材2との間に、加圧力(締結力)を測定するための圧力測定手段(例えば、加圧計など)(不図示)を配置することができる。なお、図2および図4に示すような実施形態の場合は、第1の部材1と第1のシャフトカラー4との間や、第2の部材2と第2のシャフトカラー6との間に圧力測定手段を挟み込んで配置することもできる。そして、加圧力が所定値以上になった場合には、上記圧力測定手段の値が所定値より小さくなるように、ピエゾ素子に電圧を印加し、締結部の締結力を制御することができる。
【0021】
また、第1の部材1と第2の部材2との間に温度差が生じるような構成の装置の場合は、第1の部材1および第2の部材2の温度を測定する温度センサなどの温度測定手段(不図示)を備えることができる。このような構成の場合は、両部材の温度差が、両部材の間の加圧力に大きく影響する。このため、第1の部材1と第2の部材2との温度差が所定値以上となった場合に、加圧力が所定値以上になったと判断して、上記圧力測定手段の値が所定値より小さくなるように、ピエゾ素子に電圧を印加し、締結部の締結力を制御してもよい。なお、本装置では、ピエゾ素子に電圧を印加する際に、両部材の温度差と加圧力の両方をチェックした上で制御を行ってもよい。
【0022】
本装置では、第1および第2の部材の少なくとも一方で、温度測定手段により所定値(温度)以上の温度変化が検出され、かつ圧力測定手段により測定される両部材の間の加圧力が所定値以上であった場合に、ピエゾ素子に電圧を印加し締結部の締結力を制御してもよい。ここで、スティックスリップ現象は、一定値以上の加圧力と、平面方向(横方向)のずれが合わさった際に生じると考えられる。このため、まず、温度変化の検出により平面方向のずれを検知した後、加圧力が所定の値以上である場合にピエゾ素子に電圧を印加し、締結力を制御することで、より確実にスティックスリップ現象を抑制することができる。
【0023】
なお、上記締結力調整機構が稼働する際の第1の部材1と第2の部材2との具体的な温度差(℃)や両部材の温度変化量(℃)は、適用される装置の用途やスティックスリップ現象(音鳴り)の発生状況等から適宜設定することができ、特に限定されない。したがって、上記温度差および温度変化における所定値は、本発明の効果が得られる範囲で、適宜設定することができる。
また、上記締結力調整機構が稼働する際の加圧力の所定値および締結力の制御値も、適用される装置の用途やスティックスリップ現象(音鳴り)の発生状況等から、本発明の効果が得られる範囲で適宜設定することができ、特に限定されない。しかしながら、部材同士の締結力が完全にゼロとなり、締結が解除されると、第1の部材1と第2の部材2との間や、第2の部材2と第2のシャフトカラー6との間等に、図3および図5に示すように、隙間Aが生じる可能性がある。このため、装置内に温度変化が生じ、部材の熱膨張などが生じている場合であっても、締結部における締結力は完全に解除することなく、弱める(締結力を小さくする)ことで、スティックスリップ現象を抑制することが好ましい。このような制御方法を適用すれば、装置全体の締結力を維持することができ、電子機器や照明器具、シール部品など様々な装置に本発明を適用することができる。
【0024】
このように、本装置は、ピエゾ素子を用いた締付力調整機構を備えており、装置内に温度変化が生じた際、締結されている部材間の温度差および線膨張係数の差によって発生するスティックスリップ現象が原因で起こる音鳴りを防ぐことができる。
【0025】
図2図5に、本装置における締結部の構造、より具体的には、ピエゾ素子を用いた締結力調整機構の動作を説明するための概略部分断面図を示す。ここで、図2および図4は、本装置の2つの実施形態における第1の部材および第2の部材の締結状態を示す図であり、図3および図5は、本装置の2つの実施形態における第1の部材および第2の部材の締結が解除された(締結力がゼロの)状態を示す図である。
【0026】
図2に示す装置では、締結部材が、皿付きシャフト3と、第1のシャフトカラー4と、底面部6a付きの第2のシャフトカラー6と、円筒状ピエゾ素子5とを備える。締結部材は、この他に、ばね部7、ばね抑え8および印加線11を有することもできる。ここで、皿付きシャフト3は、第1の部材1と第2の部材2との締結部を貫通するシャフト部3aと、第1の部材側に配された皿部3bとを含む。
【0027】
また、第1のシャフトカラー4は、第1の部材1と、皿部3bとの間を固定するものであり、第1の部材側に配され、例えば、円筒形状を有する。このように、皿付きシャフト3の皿部3bと、第1の部材1との間には、円筒状の第1のシャフトカラー4をかませている。第1のシャフトカラー4を構成する材料は、スティックスリップ現象を抑制する観点から、円筒状ピエゾ素子5を構成する材料と線膨張係数が近い値であることが好ましい。
【0028】
さらに、第2のシャフトカラー6は、第2の部材2と、シャフト部3aとの間を固定し、前記第2の部材側に配され、底面部6aを有する。シャフト部3aは、底面部6aと接することで固定されている。より具体的には、皿付きシャフト3は、第1の部材1および第2の部材2の貫通孔(締結用の孔)に挿入されており、第2の部材2と接するように、底面部付き第2のシャフトカラー6が皿付きシャフト3に挿入されている。第2のシャフトカラー6を構成する材料は、スティックスリップ現象を抑制する観点から、円筒状ピエゾ素子5を構成する材料と線膨張係数が近い値であることが好ましい。
【0029】
また、第2のシャフトカラー6は、ばね部7(ばね)によって押さえつけられている。そして、ばね部7は、ばね抑え8に抑えられ、ばね抑え8は、皿付きシャフト3に固定されている。ばね部7は、第2のシャフトカラー6を皿付きシャフト3の軸方向に移動可能にしている。
【0030】
ピエゾ素子5は、皿部3bと底面部6aとの間に皿付きシャフト3の軸方向に沿って配され、締結部を貫通しており、その形状は例えば円筒状である。
【0031】
なお、ピエゾ素子5としては、電圧を印加した際に、厚さ方向(皿付きシャフトの軸方向)の寸法が縮むものを用いてもよいし、電圧を印加した際に厚さ方向の寸法が伸びるものを用いてもよい。例えば、図2に示す締結部において、円筒状ピエゾ素子5と第1のシャフトカラー4とばね部とを設ける代わりに、皿部3bと第1の部材1との間に、電圧印加により寸法が縮むピエゾ素子を配置し、部材の熱膨張時に電圧を印加することで、締結部の締結力を弱めてもよい。しかしながら、当該構成では、電圧非印加時である通常の締結時に、常にピエゾ素子に締結圧縮力がかかる。一方、電圧印加により寸法が伸びるピエゾ素子を用いた場合には、図2および図4に示すように、電圧非印加時には、ピエゾ素子5と他の部材(ここでは底面部6a)との間には、隙間Cが存在しており、ピエゾ素子に締結圧縮力がかかることはない。このため、ピエゾ素子の疲労強度の観点から、ピエゾ素子としては、電圧印加時にのみ圧力がかかり、圧力がかかる時間が限定される、電圧印加により寸法が伸びるものを用いることが好ましい。
【0032】
ここで、隙間Cは、図2に示す締結部では、皿部3bの裏面(第1の部材側の面)から底面部6aのおもて面(第2の部材側の面)までの距離(長さ)から、円筒状ピエゾ素子の軸方向の厚み(寸法)を引いたものである。一方、図4に示す締結部では、皿部の裏面から底面部の表面までの距離から、第3のシャフトカラー9と円筒状ピエゾ素子5の厚みを合わせた寸法を引いたものである。図2および図4に示す実施形態では、電圧を印加することにより、ピエゾ素子の寸法が軸方向に伸びることで、締結部の締結力を調整する(弱める)ため、電圧非印加時において隙間Cが存在するように各部材の寸法を調整することが好ましい。
【0033】
印加線11は、円筒状ピエゾ素子5に電圧を印加するためのものであり、第2のシャフトカラー6が有する貫通孔を通って、電源回路(不図示)へ接続されている。
【0034】
また、図4に示すように、皿部3bと、円筒状ピエゾ素子5との間に、皿付きシャフト3の軸方向に沿って、加熱用ヒータ等の加熱手段10を備えた第3のシャフトカラー9(内側シャフトカラー)を配してもよい。具体的には、第1の部材1と第2の部材2とを締結させる際に、皿付きシャフト3のシャフト部3aに、円筒状のピエゾ素子5と、第3のシャフトカラー9とを通して配置する。ここで、第3のシャフトカラー9は、スティックスリップ現象を抑制する観点から、第1の部材1および第2の部材2をそれぞれ構成する材料以上の線膨張係数を有する材料で構成されることが好ましい。第3のシャフトカラー9の周囲には、加熱手段10が巻き付けてあり、加熱手段10は、皿付きシャフト3の皿部3bの孔12を通って、電源回路(不図示)へ接続されている。
【0035】
次に、本装置における締結力調整機構に関して、図2および図4の締結部の締結状態(初期状態)を示す図を用いて、より詳しく説明する。
上述した通り、円筒状ピエゾ素子5と、底面部付き第2のシャフトカラー6の底面部6aとの間には、電圧非印加時には、長さCの隙間が設けられている。この状態で、円筒状ピエゾ素子5に電圧を印加すると、円筒状ピエゾ素子5の厚み方向の寸法が伸びる。なお、本装置では、スティックスリップ現象の抑制のために締結力を調整する際、締結力を弱めるのみで完全に解除することはない。しかしながら、電圧印加による円筒状ピエゾ素子5をはじめとした各部材の厚みの変化をより理解しやすくするために、図3および図5に、電圧を印加して締結部の締結を完全に解除した状態の図を示している。ここで、円筒状ピエゾ素子5の伸びを、符号Bとする。伸びBが隙間Cの長さを上回った場合には、ばね部7が押し下げられ、図3に示すように、隙間Aが生じ、締結部の締結が解除されることになる。本装置では、締結部の締結が解除されない範囲で、円筒状ピエゾ素子5に電圧を印加する。なお、隙間Aは以下の式(1)で表される。
隙間A=伸びB-隙間C 式(1)
【0036】
ここで、本装置は温度変化が起こる環境での使用を想定しているため、円筒状ピエゾ素子5以外にも、他の部材が温度変化により熱膨張または熱収縮することで、寸法の変化が起こる場合もある。なお、電圧を印加した際のピエゾ素子の伸びは、印加電圧にもよるが、通常、150V前後の印加電圧の場合、元の長さの0.1%オーダーとなる。一方、材料の熱膨張の特性値である線膨張係数(CTE)は、材質により異なるが、おおよそ0.001~0.01%オーダーである。熱膨張による伸びは、以下の式(2)で表される。
熱膨張での伸び=元の長さ×CTE×温度変化 式(2)
【0037】
装置内の温度変化が、数℃の範囲内であれば、ピエゾ素子の伸びに対して、熱膨張による各部材の伸びは無視できるレベルだが、数十℃~百数十℃の温度変化となると、無視できない可能性がある。このように、装置内の温度変化に伴う各部材(第1および第2の部材、第1および第2のシャフトカラー)の熱膨張が無視できないほど大きい場合は、図4に示すように、加熱手段10を備えた第3のシャフトカラー9を装置内に配置することが好ましい。
以下、図4に示す締結部について詳しく説明する。なお、締結部における各部材の熱膨張についてより理解しやすくするために、図5に、図4に示す締結部の締結が解除された状態を表す図を示す。
【0038】
この図5では、熱膨張による、第1の部材1と第2の部材2の伸びを符号F、第3のシャフトカラー9の伸びを符号D、第1のシャフトカラー4の伸びを符号E、底面部付き第2のシャフトカラー6の伸びを符号Gとしている。そして、上記熱膨張による各部材の伸びを考慮した場合、隙間Aは、以下の式(3)で表される。なお、図3に示す実施形態では、以下の式(3)において、符号Dを考慮しない。
隙間A=伸び(B+D)-伸び(E+F+G)-隙間C 式(3)
【0039】
ここで、円筒状ピエゾ素子5のCTEは低い値となるため、上記計算に含んでおらず、伸びBは、電圧印加による伸びのみとする。上述したように、第1のシャフトカラー4と底面部付き第2のシャフトカラー6のCTEが、円筒状ピエゾ素子5のCTEと近い値(低い値)であれば、隙間Aは、以下の式(4)で表される。
隙間A=伸び(B+D)-伸びF-隙間C 式(4)
【0040】
ここで、第3のシャフトカラー9は、第1の部材1や第2の部材2との間に隙間を挟んで配置されることから、これらの部材の温度が上昇した場合であっても温度が伝わらずに、第3のシャフトカラー9の伸びDが極端に小さくなる可能性がある。このような場合には、加熱用ヒータ10で第3のシャフトカラー9を個別に加熱することで、伸びDの調節が可能となる。
【0041】
なお、第1の部材1および第2の部材2と、第3のシャフトカラー9とのCTEが近い値であり、かつ第1および第2の部材の厚み寸法が、第3のシャフトカラー9の軸方向寸法と等しい場合、以下のことが言える。すなわち、第3のシャフトカラー9の温度を第1および第2の部材の平均温度と等しくすれば、伸びAは式(1)で表される。また、これらの寸法が等しくない場合でも、第3のシャフトカラー9の加熱温度を適宜調整することで、隙間Aは式(1)で表される。
【0042】
このように、円筒状ピエゾ素子に印加する電圧、および必要に応じて、第3のシャフトカラー9の加熱温度を適宜調整することで、締結部の締結力を所望の値に制御することができる。
【0043】
以上述べた通り、本装置により、締結力を自在に調整することが可能となり、温度変化時に発生するスティックスリップ現象に起因する音鳴りを抑制することができる。
【0044】
さらに、膨張時に締付力を可能な範囲で弱く制御することで、滑り方向の拘束を弱くすることができ、温度変化した際の線膨張係数の違いによっておこる各部材の反りを抑制することもできる。
【0045】
本発明は、締結箇所を有する装置全般(例えば、電子機器など)に適用できる。また、本発明は、製品サイズが100~200mm程度の小型装置であっても容易に適用することができる。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1、101 第1の部材
2、102 第2の部材
3 皿付きシャフト
3a シャフト部
3b 皿部
4 第1のシャフトカラー
5 ピエゾ素子
6 第2のシャフトカラー
6a 底面部
7 ばね部
8 ばね抑え
9 第3のシャフトカラー
10 加熱手段
11 印加線
12 孔
100 筐体
103 発熱部品
104 締結部材
【要約】
【課題】温度変化が生じた際に締結力の調整ができ、スティックスリップ現象の発生を防ぐ、小型製品にも適用可能な締結力調整機構を有する締結部を備えた装置の提供。
【解決手段】第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材および前記第2の部材を締結する締結部材とを有する、締結部を備えた装置であって、前記締結部材は、電圧の印加により伸縮するピエゾ素子を含む締結力調整機構を備え、前記締結力調整機構は、前記第1の部材と前記第2の部材との間の加圧力が所定の値以上となった際に、前記ピエゾ素子に電圧を印加することで、前記締結部の締結力を調整する、締結部を備えた装置。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5