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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ローラチェーン軸継手
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/54 20060101AFI20220621BHJP
   F16H 55/30 20060101ALI20220621BHJP
   F16G 13/02 20060101ALI20220621BHJP
   F16G 13/06 20060101ALI20220621BHJP
   F16D 3/18 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
F16D3/54
F16H55/30 Z
F16G13/02 K
F16G13/06 F
F16G13/02 H
F16D3/18 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021190119
(22)【出願日】2021-11-24
【審査請求日】2021-11-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000240938
【氏名又は名称】片山チエン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】片山 惠嗣
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02227333(US,A)
【文献】特開2009-162369(JP,A)
【文献】特公昭43-001932(JP,B1)
【文献】英国特許出願公告第01225165(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 3/18、3/54
F16H 55/30
F16G 13/02、13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の回転軸間でトルクを伝達するローラチェーン軸継手において、
前記一対の回転軸のそれぞれに固定されるスプロケット(1,1)と、前記スプロケット(1,1)の両方に巻き掛けられるローラチェーン(2)とを備え、
前記ローラチェーン(2)は、所定の間隔をおいて対向する一対の内リンクプレート(3,3)と、前記一対の内リンクプレート(3,3)に軸方向両側から挟まれるローラ(4)とを貫通する継手ピン(6)が、その両端部をそれぞれ前記一対の内リンクプレート(3,3)の外側に配される外リンクプレート(5,5)に固定されることにより、前記内リンクプレート(3,3)と前記外リンクプレート(5,5)が順次連結されて、1本の環状とされるものであり、
前記ローラ(4)は、その軸方向の両端部が前記一対のスプロケット(1,1)のそれぞれの歯(1a,1a)と噛み合う係合部(4a,4a)となっており、
さらに、前記ローラ(4)は、前記両係合部(4a,4a)の間に、前記係合部(4a)よりも大径で、前記両スプロケット(1,1)の歯(1a,1a)同士の間に挟まれるスペーサ部(4b)が形成されていることを特徴とするローラチェーン軸継手。
【請求項2】
前記継手ピン(6)が樹脂製である請求項1に記載のローラチェーン軸継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、同軸に配置された一対の回転軸の間に組み込まれ、両回転軸間でトルクを伝達するローラチェーン軸継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ローラチェーン軸継手は、チェーンカップリングとも呼ばれ、同軸に配置された一対の回転軸の間に組み込まれ、両回転軸の軸心のずれを吸収しつつ両回転軸間でトルクを伝達できる軸継手として、一般の機械装置に広く使用されている。その構成は、一対の回転軸のそれぞれに固定されるスプロケットと、両スプロケットに巻き掛けられる2列ローラチェーンとで構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来のローラチェーン軸継手の一例を図4図6に示す。このローラチェーン軸継手は、一対のスプロケット51,51のそれぞれにローラチェーン52,52が巻き掛けられている。
【0004】
各ローラチェーン52は、図6に示すように、所定の間隔をおいて対向する一対の内リンクプレート53,53と、その一対の内リンクプレート53,53に軸方向両側から挟まれるローラ54と、各内リンクプレート53,53のそれぞれの外側に配される外リンクプレート55,55とに、両ローラチェーン52,52に共通の継手ピン56を挿通し、その継手ピン56の両端部をそれぞれ両ローラチェーン52,52の軸方向外側の外リンクプレート55,55に固定することにより、長手方向に交互に並ぶ内リンクプレート53と外リンクプレート55を順次連結して環状としたものであり、その継手ピン56によって互いに横方向に連結されている。
【0005】
そして、各スプロケット51がそれぞれ一対の回転軸(図示省略)の軸端部に固定され、各ローラチェーン52のローラ54がそれぞれスプロケット51の歯51aに噛み合うことにより、駆動側の回転軸に加えられたトルクが、その回転軸に固定された駆動側のスプロケット51から一方のローラチェーン52のローラ54と継手ピン56を経て、他方のローラチェーン52のローラ54、被駆動側のスプロケット51、被駆動側の回転軸の順に伝達されるようになっている。
【0006】
この構成によれば、各スプロケット51の歯51aとローラ54の噛み合いの遊び、各ローラチェーン52の構成部品間の隙間等によって、両回転軸の軸心のずれを吸収しつつトルク伝達を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-210102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したような従来のローラチェーン軸継手では、許容伝達トルクがローラチェーンの破断荷重とほぼ比例し、実質的にはトルク伝達経路の途中に介在している継手ピンの強度によって決定されるようになっている。このため、伝達しようとするトルクが高いほど大径の継手ピンを用いる必要があり、軸継手全体が大型化しやすいという問題がある。
【0009】
また、このようなローラチェーン軸継手は、2列のローラチェーンを共通の継手ピンで連結した構成となっているので、部品点数が多く、組み立てやメンテナンスの際は、継手ピンを両方のローラチェーンの各内リンクプレート、ローラ及び内側の外リンクプレートに通すときに、これらの部品を位置決めするのに手間がかかるという難点もある。
【0010】
そこで、この発明の課題は、従来よりも簡単な構成で、組み立てやメンテナンスが容易であり、高トルクを伝達できるローラチェーン軸継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明は、一対の回転軸間でトルクを伝達するローラチェーン軸継手において、前記一対の回転軸のそれぞれに固定されるスプロケットと、前記スプロケットの両方に巻き掛けられるローラチェーンとを備え、前記ローラチェーンは、所定の間隔をおいて対向する一対の内リンクプレートと、前記一対の内リンクプレートに軸方向両側から挟まれるローラとを貫通する継手ピンが、その両端部をそれぞれ前記一対の内リンクプレートの外側に配される外リンクプレートに固定されることにより、前記内リンクプレートと前記外リンクプレートが順次連結されて、1本の環状とされるものであり、前記ローラは、その軸方向の両端部が前記一対のスプロケットのそれぞれの歯と噛み合う係合部となっているローラチェーン軸継手の構成を採用した。
【0012】
上記の構成によれば、従来の2列ローラチェーンを用いたものに比べて、ローラ、内リンクプレート及び外リンクプレートの数が半減するため、部品点数が大幅に減少し、組み立てやメンテナンスの際に継手ピンを通す部品の位置決めを効率よく行うことができる。そして、ローラが駆動側のスプロケットの歯から被駆動側のスプロケットの歯に直接トルクを伝達することにより、継手ピンがトルク伝達経路から外れて、継手ピンよりも大径のローラの強度によって許容伝達トルクが実質的に決定されるようになるので、同一サイズの従来のものよりも高いトルクを伝達することができる。
【0013】
ここで、前記ローラを、前記両係合部の間に、前記係合部よりも大径で、前記両スプロケットの歯同士の間に挟まれるスペーサ部が形成されているものとすれば、ローラを直円筒状に形成する場合に比べて、ローラの強度が大きくなり、より高いトルクを伝達できるようになる。
【0014】
また、前記継手ピンは、トルク伝達経路から外れており、高い強度を必要とされないので、樹脂製として材料費のコストダウンを図ることもできる。
【発明の効果】
【0015】
この発明のローラチェーン軸継手は、上述のように、従来のものよりも部品点数の少ない簡単な構成で、組み立てやメンテナンスが容易であり、高トルクを伝達できるものである。したがって、組み立てやメンテナンスの際の作業時間や作業コストを低減できるし、軸継手全体の小型化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の実施形態を示すローラチェーン軸継手の正面断面図
図2図1のII-II線に沿った断面図
図3図1のローラチェーンの展開状態の要部の平面図
図4】従来のローラチェーン軸継手の正面断面図
図5図4のV-V線に沿った断面図
図6図4のローラチェーンの展開状態の要部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1図3に基づいて、この発明の実施形態を説明する。この実施形態のローラチェーン軸継手は、一対のスプロケット1,1と、両スプロケット1,1に巻き掛けられるローラチェーン2とを備え、軸端同士が対向する状態で同軸に配置された一対の回転軸(図示省略)のそれぞれにスプロケット1,1が固定されて、両回転軸間のトルク伝達を行うものである。なお、ここでいう同軸とは、一対の回転軸の端部同士が回転伝達可能に向かいあった状態を意味し、これは、一対の回転軸の軸心同士が完全に一直線上にある状態だけでなく、両者の軸心がわずかにずれた状態、わずかに屈曲した状態等も含む概念である。
【0018】
各スプロケット1は、径方向外側に突出する複数個の歯1aがボス部1bの一端の外周に周方向に沿って形成されたものであり、そのボス部1bに前記回転軸が挿通される軸孔1cが設けられている。そして、ボス部1bの一端同士が対向する姿勢で軸孔1cに回転軸を挿入され、その回転軸に図示省略したネジ等によって軸方向及び回転方向に相対移動不能に固定されている。なお、スプロケット1の回転軸に対する固定方法としては、キーやスプラインを採用することもできる。
【0019】
ローラチェーン2は、所定の間隔をおいて対向する一対の内リンクプレート3,3と、その一対の内リンクプレート3,3に軸方向両側から挟まれるローラ4と、各内リンクプレート3,3のそれぞれの外側に配される外リンクプレート5,5とに継手ピン6を挿通し、その継手ピン6の両端部をそれぞれ外リンクプレート5,5に固定することにより、長手方向に交互に並ぶ内リンクプレート3と外リンクプレート5を順次連結して1本の環状としたものである。その内リンクプレート3、ローラ4および外リンクプレート5は金属製であり、継手ピン6は樹脂で形成されている。
【0020】
なお、継手ピン6の両端部の外リンクプレート5,5への固定は、外リンクプレート5の外側へ突出する継手ピン6の端部を加締めるようにしている。ただし、ローラチェーン2を環状とする際の最後に連結する部分では、継手ピン6の一端部と外リンクプレート5の外側面との間に、隣り合う2つの継手ピン6を同時に抜け止めするクリップを装着している(図示省略)。
【0021】
ローラ4は、その軸心に継手ピン6を挿通するための孔を有する円筒状部材であり、外リンクプレート5,5に固定された継手ピン6に対して相対回転可能となっている。そして、その軸方向両端部が一対のスプロケット1,1のそれぞれの歯1a,1aと噛み合う係合部4a,4aとなっており、両係合部4a,4aの間に、係合部4aよりも大径で、両スプロケット1,1の歯1a,1a同士の間に挟まれるスペーサ部4bが形成されている。また、ローラ4の両端面は軸方向に直交する面方向を有するフラット面である。
【0022】
そして、各スプロケット1がそれぞれ前記一対の回転軸に固定され、ローラチェーン2のローラ4の両係合部4a,4aがそれぞれスプロケット1,1の歯1a,1aに噛み合うことにより、駆動側の回転軸に加えられたトルクが、その回転軸に固定された駆動側のスプロケット1からローラチェーン2のローラ4を経て、被駆動側のスプロケット1、被駆動側の回転軸の順に伝達されるようになっている。
【0023】
このローラチェーン軸継手は、上記の構成であり、前記一対の回転軸の間で、各スプロケット1の歯1aとローラ4の噛み合いの遊び、ローラチェーン2の構成部品間の隙間等によって、両回転軸の軸心のずれを吸収しつつトルク伝達を行うことができる。
【0024】
しかも、そのローラチェーン2は、一対のスプロケット1,1のそれぞれの歯1a,1aと噛み合う係合部4a,4aを両端に有するローラ4を備えたものであり、1列のみで両方のスプロケット1,1に巻き掛けられるので、従来の2列ローラチェーンを用いたものに比べて、ローラ4、内リンクプレート3,3及び外リンクプレート5,5の数が半減し、部品点数の大幅な減少が図れる。
【0025】
また、組み立てやメンテナンスの際には、ローラチェーン2の継手ピン6を通す部品の数が従来の2列ローラチェーンを用いたものの半分になるので、これらの部品の位置決めにかかる手間が従来よりも大幅に軽減され、効率よく作業を行うことができる。
【0026】
また、このローラチェーン軸継手では、ローラ4が駆動側のスプロケット1の歯1aから被駆動側のスプロケット1の歯1aに直接トルクを伝達するようになっており、従来のものと異なり、継手ピン6はトルク伝達に対して大きくは寄与しない。すなわち、継手ピン6よりも大径のローラ4の強度によって許容伝達トルクが実質的に決定されるので、同一サイズの従来のものよりも高いトルクを伝達することができる。一方、要求される許容伝達トルクが従来と同じ場合には、ローラ4の径を従来の継手ピンと同程度まで小さくして、軸継手全体を従来よりも小型化することもできる。
【0027】
ここで、ローラ4は、両係合部4a,4aの間に、係合部4aよりも大径のスペーサ部4bを設けて、ローラを直円筒状に形成する場合よりも強度が大きく、より高いトルクを伝達できるようにしている。
【0028】
なお、スペーサ部4bの幅は、前記各回転軸へのスプロケット1の固定位置等に応じて任意に変更することができる。例えば、従来のものでは、両スプロケットの歯同士の間に2枚の内リンクプレートと2枚の外リンクプレートが挟まれるため(図4図6参照)、その4枚のプレートの厚みの合計によって両スプロケット間の距離の下限値が決定されるが、このローラチェーン軸継手では、スペーサ部4bの幅を小さくして、従来よりもスプロケット1,1同士を接近させ、軸継手全体を軸方向に小型化することもできる。
【0029】
また、この実施形態では、トルク伝達経路から外れている継手ピン6を樹脂製とすることにより、材料費のコストダウンを図っている。
【0030】
なお、上述した実施形態のローラチェーン軸継手はローラチェーンに定期的に潤滑材を供給するタイプのものであるが、この発明は、スプロケットの歯とローラチェーンの全体を覆うケースの内部に潤滑材を保持するタイプのものにも、もちろん適用が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 スプロケット1a 歯
1b ボス部
1c 軸孔
2 ローラチェーン
3 内リンクプレート
4 ローラ
4a 係合部
4b スペーサ部
5 外リンクプレート
6 継手ピン
【要約】
【課題】従来よりも簡単な構成で、組み立てやメンテナンスが容易であり、高トルクを伝達できるローラチェーン軸継手を提供する。
【解決手段】一対の回転軸のそれぞれに固定されるスプロケット1,1と、そのスプロケット1,1の両方に巻き掛けられるローラチェーン2とを備え、ローラチェーン2は、一対の内リンクプレート3,3と、内リンクプレート3,3に軸方向両側から挟まれるローラ4とを貫通する継手ピン6が、その両端部をそれぞれ一対の内リンクプレート3,3の外側に配される外リンクプレート5,5に固定されることにより、内リンクプレート3,3と外リンクプレート5,5が順次連結されて、1本の環状とされるものであり、ローラ4は、その軸方向の両端部が一対のスプロケット1,1のそれぞれの歯1a,1aと噛み合う係合部4a,4aとなっているローラチェーン軸継手とした。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6