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特許7092421ヘリコプター回転翼の翼型の決定方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ヘリコプター回転翼の翼型の決定方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B64C 3/14 20060101AFI20220621BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B64C3/14
B64C27/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021525694
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2020107732
(87)【国際公開番号】W WO2021077855
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】201911017404.0
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519291342
【氏名又は名称】南京航空航天大学
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】招 ▲啓▼▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】王 博
(72)【発明者】
【氏名】井 思梦
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 国▲慶▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 希
(72)【発明者】
【氏名】王 清
【審査官】岩本 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-070504(JP,A)
【文献】特開昭58-026699(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0001710(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110334449(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0256197(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3543108(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 3/14
B64C 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリコプター回転翼の翼型決定方法であって、
ラテンハイパーキューブサンプリング法を使用して、翼型サンプルポイントをランダムに生成するステップと、
前記翼型のサンプルポイントに基づいて、クラス形状変換法を使用して、翼型の上下翼面特性方程式を決定するステップと、
前記上下翼面特性方程式に従って、計算流体力学法を使用して前記翼型の動的特性をシミュレートし、揚力係数、抗力係数、モーメント係数が含まれる、前記翼型の流れ場特性を取得するステップと、
Krigingモデルを使用して、前記翼型のサンプルポイントと前記流れ場の特性との間のマッピング関係を確立し、最大尤度推定方法と期待値基準を使用して、前記マッピング関係をトレーニングし、トレーニング済みのマッピング関係を取得するステップと、
前記トレーニング済みのマッピング関係に従って、NSGA-IIアルゴリズムを使用して最適な翼型サンプルポイント(前記最適な翼型サンプルポイントは、最適な流れ場特性に対応する翼型サンプルポイントで、前記最適な流れ場特性には、最適な揚力係数、最適な抗力係数、および最適なモーメント係数が含まれる)を決定するステップと、
前記最適な翼型サンプルポイントから回転翼の翼型を決定するステップと、を含む
ことを特徴とするヘリコプター回転翼の翼型の決定方法。
【請求項2】
前記上下翼面の特性方程式は
【数1】
であり、
ここで、
【数2】
ψは翼型の上翼面上のポイントの無次元後の縦座標、ψは翼型の下翼面上のポイントの無次元後の縦座標、yは翼型の上翼面上のポイントの縦座標、yは翼型の下翼面上のポイントの縦座標、cは翼型弦長であり、
【数3】
ζは翼型上のポイントの無次元後の横座標、xは翼型上のポイントの横座標であり、
【数4】
Δzは翼型の上翼面の無次元後の後縁厚さ、Δzは翼型の下翼面の無次元後の後縁厚さ、yuTEは翼型の上翼面後縁ポイントの縦座標、ylTEは翼型の下翼面後縁ポイントの縦座標であり、
【数5】
C(ζ)は類関数、NとNはすべて定数であり、A は翼型上翼面の外形を制御する係数、A は翼型下翼面の外形を制御する係数、kは係数の番号であり、第j個の翼型サンプルポイントx については、
【数6】
iは変数の番号を示し、f( )は変換関数、nは係数の総個数、S(ζ)は形状関数であり、
【数7】
aは多項式の番号、bは多項式の次数であり、a=0,1,…,bであることを特徴とする請求項1に記載のヘリコプター回転翼の翼型の決定方法。
【請求項3】
前記上下翼面特性方程式に従って、計算流体力学法を使用して前記翼型の動的特性をシミュレートし、前記翼型の流れ場特性を取得するステップは、具体的には、
前記上下翼面特性方程式から翼型サンプルポイントの座標を決定し、
初期グリッドを決定し、前記初期グリッドは、前記翼型のサンプルポイントの座標から生成され、
前記初期グリッドに基づいて、Poisson方程式に基づく楕円方程式グリッド生成法を使用して、翼型の周りのC字型構造のボディフィットグリッドを生成し、前記Poisson方程式は
【数8】
であり、
ここで、(ξ,η)は計算的平面下での曲線座標系におけるポイントを示し、(ξ,η)と物理的平面下での直線座標系におけるポイント(ζ,ψ)とはマッピング関係が存在し、
【数9】
P(ξ,η)は直交性制御関数、Q(ξ,η)は密度制御関数であり、
前記C字型構造のボディフィットグリッド内の各グリッドセルの面積と各グリッドセルの体積を計算し、
前記面積、前記体積、保存変数、対流フラックス項、および粘性フラックス項から、流体制御方程式を決定し、前記流体制御方程式は
【数10】
であり、
ここで、tは物理的時間、Fは対流フラックス項、Fは粘性フラックス項、Ωはグリッドセルの体積、Sはグリッドセルの面積、Wは保存変数であり、
【数11】
ρは空気密度、Eは全エネルギー、Hは全エンタルピー、pは圧力の強さ、uはx軸方向の速度成分、vはy軸方向の速度成分、Vは相対運動速度、Vはグリッドの移動速度、(n,n)はグリッドセル表面単位法線ベクトル、τxxはx軸に垂直である平面に作用してx軸に沿った粘性応力成分、τxyはx軸に垂直である平面に作用してy軸に沿った粘性応力成分、τyyはy軸に垂直である平面に作用してy軸に沿った粘性応力成分、Θは粘性応力作用項、Θは熱伝導作用項であり、
前記流体制御方程式を解き、前記流体制御方程式の解は
【数12】
であり、
前記流体制御方程式の解から前記翼型の流れ場特性を計算することを特徴とする請求項1に記載のヘリコプター回転翼の翼型の決定方法。
【請求項4】
Krigingモデルを使用して、前記翼型のサンプルポイントと前記流れ場の特性との間のマッピング関係を確立し、最大尤度推定方法と期待値基準を使用して、前記マッピング関係をトレーニングし、トレーニング済みのマッピング関係を取得する前記ステップは、具体的には、
Krigingモデルを使用して、前記翼型サンプルポイントと前記流れ場の特性との間のマッピング関係を確立し、前記マッピング関係は
【数13】
であり、
ここで、C^(ハット)lは揚力係数の予測値、C^(ハット)dは抗力係数の予測値、C^(ハット)mはモーメント係数の予測値、Y(太字)は翼型サンプルポイントに対応する揚力係数Clで構成されたベクトル、Y(太字)は翼型サンプルポイントに対応する抗力係数Cdで構成されたベクトル、Y(太字)は翼型サンプルポイントに対応するモーメント係数Cmで構成されたベクトルであり、
【数14】
nsはサンプルポイント数量を示し、
【数15】
( ),…,f( )は既知の多項式関数、x(太字)、x(太字)及びx(太字)nsはすべて翼型サンプルポイントで構成されたベクトルであり、
【数16】
eはベクトル次元、iは変数の番号、jは翼型サンプルポイントの番号であり、
【数17】
とは揚力係数に対応する未知パラメータであり、とは
θliとpliは揚力係数に対応する未知パラメータであり、θliとpliとは
【数18】
を計算することで得られたものであり、
【数19】
【数20】
θdiとpdiは抗力係数に対応する未知パラメータであり、θdiとpdi
【数21】
を計算することで得られたものであり、
【数22】
【数23】
θmiとpmiは力矩モーメント係数に対応する未知パラメータであり、θmiとpmi
【数24】
を計算することで得られたものであり、
【数25】
最大尤度推定法を使用して、前記マッピング関係の未知パラメータを決定し、トレーニングされたマッピング関係を取得し
期待値基準を使用して、前記トレーニングされたマッピング関係を改善し、トレーニング済みのマッピング関係を取得することであることを特徴とする請求項1に記載のヘリコプター回転翼の翼型の決定方法。
【請求項5】
前記トレーニング済みのマッピング関係に従って、NSGA-IIアルゴリズムを使用して最適な翼型サンプルポイントを決定する前記ステップは、具体的には、
サイズNの初期集団をランダムに生成し、
前記トレーニング済みのマッピング関係を使用して、現世代集団の各個体に対応する揚力係数、抗力係数、およびモーメント係数を計算し、
現世代集団の個体に対応する揚力係数、抗力係数、モーメント係数に応じて、現世代集団のすべての個体を迅速に非支配にソートし、遺伝的アルゴリズムの選択、交叉、突然変異操作を通じて現世代の親集団を取得し、集団の代数は、遺伝的アルゴリズムの反復回数に等しく、
前記トレーニング済みのマッピング関係を使用して、現世代の親集団の各個体に対応する揚力係数、抗力係数、およびモーメント係数を計算し、
現世代の親集団の個体に対応する揚力係数、抗力係数、モーメント係数に従って、現世代の親集団のすべての個体の迅速な非支配ソートを実行し、遺伝的アルゴリズムの選択、交叉、および突然変異操作を通じて現世代の子集団を取得し、
前記現世代の親集団と前記現世代の子集団を組み合わせて、現世代の組み合わせされた集団を取得し、
前記トレーニング済みのマッピング関係を使用して、前記現世代の組み合わせされた集団の各個体に対応する揚力係数、抗力係数、およびモーメント係数を計算し、
現世代の組み合わせされた集団の個体に対応する揚力係数、抗力係数、モーメント係数に応じて、前記現世代の組み合わせされた集団のすべての個体を迅速に非支配にソートし、各非支配層の個体の混雑度を計算し、
迅速な非支配ソートの結果と前記個体混雑度に応じて、前記現世代の組み合わせされた集団から事前設定された条件を満たす個体を選択し、次世代の親集団を形成し、
前記次世代の親集団に対応する集団代数が、事前設定された最大反復回数と等しいかどうかを判断し、
そうでない場合、前記次世代の親集団を現世代の親集団として使用し、前記トレーニング済みのマッピング関係を使用して、現世代の親集団の各個体に対応する揚力係数、抗力係数、およびモーメント係数を計算することに戻り、
そうである場合、前記次世代の親集団の個体を最適な翼型サンプルポイントとして決定する
ことであることを特徴とする請求項1に記載のヘリコプター回転翼の翼型の決定方法。
【請求項6】
ヘリコプター回転翼の翼型の決定システムであって、
ラテンハイパーキューブサンプリング法を使用して、翼型サンプルポイントをランダムに生成するために用いられるサンプルポイント生成モジュールと、
モジュールは、前記翼型サンプルポイントに基づいて、クラス形状変換法を使用して、翼型の上下翼面特性方程式を決定するために用いられる翼面方程式決定モジュールと、
前記上下翼面特性方程式に従って、計算流体力学法を使用して前記翼型の動的特性をシミュレートし、揚力係数、抗力係数、モーメント係数が含まれる、前記翼型の流れ場特性を取得するために用いられる流れ場特性計算モジュールと、
Krigingモデルを使用して、前記翼型サンプルポイントと前記流れ場の特性との間のマッピング関係を確立し、最大尤度推定方法と期待値基準を使用して、前記マッピング関係をトレーニングし、トレーニング済みのマッピング関係を取得するために用いられるマッピング関係計算モジュールと、
前記トレーニング済みのマッピング関係に従って、NSGA-IIアルゴリズムを使用して最適な翼型サンプルポイント(前記最適な翼型サンプルポイントは、最適な流れ場特性に対応する翼型サンプルポイントで、前記最適な流れ場特性には、最適な揚力係数、最適な抗力係数、および最適なモーメント係数が含まれる)を決定するために用いられる多目的最適化モジュールと、
前記最適な翼型サンプルポイントから回転翼の翼型を決定するために用いられる翼型決定モジュールと、
を含むことを特徴とするヘリコプター回転翼の翼型の決定システム。
【請求項7】
前記上下翼面の特性方程式は
【数26】
であり、
ここで、
【数27】
であり、ψは翼型の上翼面上のポイントの無次元後の縦座標、ψは翼型の下翼面上のポイントの無次元後の縦座標、yは翼型の上翼面上のポイントの縦座標、yは翼型の下翼面上のポイントの縦座標、cは翼型弦長であり、
【数28】
ζは翼型上のポイントの無次元後の横座標、xは翼型上のポイントの横座標であり、
【数29】
Δzは翼型の上翼面の無次元後の後縁厚さ、Δzは翼型の下翼面無次元後の後縁厚さ、yuTEは翼型の上翼面後縁ポイントの縦座標、ylTEは翼型の下翼面後縁ポイントの縦座標であり、
【数30】
C(ζ)は類関数、NとNはすべて定数であり、A は翼型上翼面の外形を制御する係数、A は翼型下翼面の外形を制御する係数、kは係数の番号、第j個の翼型サンプルポイントx については、
【数31】
iは変数の番号を示し、f( )は変換関数、nは係数の総個数であり、S(ζ)は形状関数であり、
【数32】
aは多項式の番号、bは多項式の次数であり、a=0,1,…,bであることを特徴とする請求項6に記載のヘリコプター回転翼の翼型の決定システム。
【請求項8】
前記流れ場特性計算モジュールは、具体的には、
前記上下翼面特性方程式から翼型サンプルポイントの座標を決定するために用いられる座標決定ユニットと、
前記翼型サンプルポイントの座標から生成された初期グリッドを決定するために用いられる初期グリッド決定ユニットと、
前記初期グリッドに基づいて、Poisson方程式
【数33】
((ξ,η)は計算的平面下での曲線座標系におけるポイントを示し、(ξ,η)は物理的平面下での直線座標系におけるポイント(ζ,ψ)とマッピング関係が存在し、
【数34】
P(ξ,η)は直交性制御関数、Q(ξ,η)は密度制御関数)に基づく楕円方程式グリッド生成法を使用して、翼型の周りのC字型構造のボディフィットグリッドを生成するために用いられるボディフィットグリッド生成ユニットと、
前記C字型構造のボディフィットグリッド内の各グリッドセルの面積と各グリッドセルの体積を計算するために用いられるグリッドパラメータ計算ユニットと、
前記面積、前記体積、保存変数、対流フラックス項、および粘性フラックス項から、流体制御方程式
【数35】
(tは物理的時間、Fは対流フラックス項、Fは粘性フラックス項、Ωはグリッドセルの体積、Sはグリッドセルの面積、Wは保存変数)
【数36】
(ρは空気密度、Eは全エネルギー、Hは全エンタルピー、pは圧力の強さ、uはx軸方向の速度成分、vはy軸方向の速度成分、Vは相対運動速度、Vはグリッドの移動速度、(n,n)グリッドセル表面単位法線ベクトル、τxxはx軸に垂直である平面に作用しx軸に沿った粘性応力成分、τxyはx軸に垂直である平面に作用してy軸に沿った粘性応力成分、τyyはy軸に垂直である平面に作用してx軸に沿った粘性応力成分、Θは粘性応力作用項、Θは熱伝導作用項)を決定するために用いられる流体制御方程式決定ユニットと、
前記流体制御方程式を解く(解は
【数37】
)ために用いられる解くユニットと、
前記流体制御方程式の解から前記翼型の流れ場特性を計算するために用いられる流れ場特性決定ユニットと、
を含むことを特徴とする請求項6に記載のヘリコプター回転翼の翼型の決定システム。
【請求項9】
前記マッピング関係計算モジュールは、具体的には、
Krigingモデルを使用して、前記翼型サンプルポイントと前記流れ場の特性との間のマッピング関係
【数38】
(C^(ハット)lは揚力係数の予測値、C^(ハット)dは抗力係数の予測値、C^(ハット)mはモーメント係数の予測値、Y(太字)は翼型サンプルポイントに対応する揚力係数Clで構成されたベクトル、Y(太字)は翼型サンプルポイントに対応する抗力係数Cdで構成されたベクトル、Y(太字)は翼型サンプルポイントに対応するモーメント係数Cmで構成されたベクトル)
【数39】
(nsはサンプルポイント数量を示し)
【数40】
(f( ),…,f( )は既知の多項式関数、x(太字)、x(太字)及びx(太字)nsはすべて翼型サンプルポイントで構成されたベクトル)
【数41】
(eはベクトル次元、iは変数の番号、jは翼型サンプルポイントの番号)
【数42】
(θliとpliは揚力係数に対応する未知パラメータ、θliとpli
【数43】
を計算することで得られたものである)
【数44】
【数45】
(θdiとpdiは抗力係数に対応する未知パラメータ、θdiとpdi
【数46】
を計算することで得られたものである)
【数47】
【数48】
(θmiとpmiはモーメント係数に対応する未知パラメータ、θmiとpmi
【数49】
を計算することで得られたものである)
【数50】
を確立するために用いられるマッピング関係決定ユニットと、
最大尤度推定法を使用して、前記マッピング関係の未知パラメータを決定し、トレーニングされたマッピング関係を取得するために用いられる第一トレーニングユニットと、
期待値基準を使用して、前記トレーニングされたマッピング関係を改善して、トレーニング済みのマッピング関係を取得するために用いられる第二トレーニングユニットと、
を含むことを特徴とする請求項6に記載のヘリコプター回転翼の翼型の決定システム。
【請求項10】
前記多目的最適化モジュールは、具体的には、
サイズNの初期集団をランダムに生成するために用いられる初期集団生成ユニットと、
前記トレーニング済みのマッピング関係を使用して、現世代集団の各個体に対応する揚力係数、抗力係数、およびモーメント係数を計算するために用いられる第一計算ユニットと、
現世代集団の個体に対応する揚力係数、抗力係数、モーメント係数値のサイズに応じて、現世代集団のすべての個体を迅速に非支配にソートし、遺伝的アルゴリズムの選択、交叉、突然変異操作を通じて現世代の親集団を取得するために用いられ、集団の代数は、遺伝的アルゴリズムの反復回数に等しい第一ソートユニットと、
前記トレーニング済みのマッピング関係を使用して、現世代の親集団の各個体に対応する揚力係数、抗力係数、およびモーメント係数を計算するために用いられる第二計算ユニットと、
現世代の親集団の個体に対応する揚力係数、抗力係数、モーメント係数に従って、現世代の親集団のすべての個体の迅速な非支配ソートを実行し、遺伝的アルゴリズムの選択、交叉、および突然変異操作を通じて現世代の子集団を取得するために用いられる第二ソートユニットと、
前記現世代の親集団と前記現世代の子集団を組み合わせて、現世代の組み合わせされた集団を取得するために用いられる集団組み合わせユニットと、
前記トレーニング済みのマッピング関係を使用して、前記現世代の組み合わせされた集団の各個体に対応する揚力係数、抗力係数、およびモーメント係数を計算するために用いられる第三計算ユニットと、
現世代の組み合わせされた集団の個体に対応する揚力係数、抗力係数、モーメント係数に応じて、前記現世代の組み合わせされた集団のすべての個体を迅速で非支配にソートし、各非支配層の個体の混雑度を計算するために用いられる第三ソートユニットと、
迅速な非支配ソートの結果と前記個体混雑度に応じて、前記現世代の組み合わせされた集団から事前設定された条件を満たす個体を選択し、次世代の親集団を形成するために用いられる個体選択ユニットと、
前記次世代の親集団に対応する集団代数が、事前設定された最大反復回数と等しいかどうかを判断するために用いられ、そうでない場合、前記次世代の親集団を現世代の親集団として使用し、前記第二計算ユニットに戻り、そうである場合、前記次世代の親集団の個体を最適な翼型サンプルポイントとして決定する判断ユニットと、を含む
ことを特徴とする請求項6に記載のヘリコプター回転翼の翼型の決定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2019年10月24日に中国特許庁に提出され、出願番号201911017404.0、発明の名称「ヘリコプター回転翼の翼型の決定方法及びシステム」の中国特許出願の優先権を要求し、そのすべての内容は参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、回転翼の翼型設計の技術分野、特にヘリコプター回転翼の翼型の決定方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
回転翼は、ヘリコプターの主要な揚力と操縦部品であり、翼型の空力特性は、回転翼及びヘリコプターの空力性能及び操縦特性に重要な影響を及ぼす。ヘリコプターが前方に飛んでいるとき、回転翼ブレードは回転、フラップ、ピッチの変更を同時に行うため、ブレードのプロファイルは周期的に変化する流入フローと迎え角に直面することとなり、動的失速が後退側で発生し得るので、揚力の激減や抗力とモーメントの急増が起こることがあり、飛行に不利となる。したがって、回転翼環境での翼型の動的失速の発生を軽減または抑制することは、回転翼の空力性能と操縦性能を向上させるために非常に重要である。
【0004】
国内外でヘリコプター回転翼の翼型設計について既に多くの研究が行われ、米国のボーイングのVRシリーズ、フランスのOAシリーズ、ロシアのTsAGIシリーズなど、一部の航空先進国は対応するヘリコプター専用翼型ライブラリーを確立している。回転翼の翼型については、NASA、ONERA、ボーイングがそれぞれ独自の翼型設計指標を提案しており、国内外の研究者も多くの回転翼の翼型設計作業を行っている。しかしながら、これらの作業は主に翼型の静的特性と一定速度-可変迎え角状態での動的特性を考慮しており、現在でも、実際の回転翼環境では、可変流入フローと可変迎え角状態での回転翼について翼型設計を行うことはほとんどない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに基づいて、ヘリコプターの回転翼の翼型の決定方法及びシステムを提供する必要があり、回転翼の翼型の実際の作業環境を考慮して、可変流入フロー-可変迎え角の状態での翼型の空力特性を最適化し、この状態での動的失速特性を効果的に軽減できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の解決手段を提供する。
【0007】
ヘリコプター回転翼の翼型の決定方法であって、
ラテンハイパーキューブサンプリング法を使用して、翼型サンプルポイントをランダムに生成するステップと、
前記翼型サンプルポイントに基づいて、クラス形状変換法を使用して、翼型の上下翼面の特性方程式を決定するステップと、
前記上下翼面の特性方程式に従って、計算流体力学法を使用して前記翼型の動的特性をシミュレートし、揚力係数、抗力係数、モーメント係数が含まれる、前記翼型の流れ場特性を取得するステップと、
Krigingモデルを使用して、前記翼型のサンプルポイントと前記流れ場の特性との間のマッピング関係を確立し、最大尤度推定方法と期待値基準を使用して、前記マッピング関係をトレーニングし、トレーニング済みのマッピング関係を取得するステップと、
前記トレーニング済みのマッピング関係に従って、NSGA-IIアルゴリズムを使用して最適な翼型サンプルポイント(前記最適な翼型サンプルポイントは、最適な流れ場特性に対応する翼型サンプルポイントで、前記最適な流れ場特性には、最適な揚力係数、最適な抗力係数、および最適なモーメント係数が含まれる)を決定するステップと、
前記最適な翼型サンプルポイントから回転翼の翼型を決定するステップと、を含む。
【0008】
本発明はまた、ヘリコプター回転翼の翼型の決定システムを提供し、
ラテンハイパーキューブサンプリング法を使用して、翼型サンプルポイントをランダムに生成するために用いられるサンプルポイント生成モジュールと、
モジュールは、前記翼型のサンプルポイントに基づいて、クラス形状変換法を使用して、翼型の上下翼面の特性方程式を決定するために用いられる翼面方程式決定モジュールと、
前記上下翼面の特性方程式に従って、計算流体力学法を使用して前記翼型の動的特性をシミュレートし、揚力係数、抗力係数、モーメント係数が含まれる、前記翼型の流れ場特性を取得するために用いられる流れ場特性計算モジュールと、
Krigingモデルを使用して、前記翼型のサンプルポイントと前記流れ場の特性との間のマッピング関係を確立し、最大尤度推定方法と期待値基準を使用して、前記マッピング関係をトレーニングし、トレーニング済みのマッピング関係を取得するために用いられるマッピング関係計算モジュールと、
前記トレーニング済みのマッピング関係に従って、NSGA-IIアルゴリズムを使用して最適な翼型サンプルポイント(前記最適な翼型サンプルポイントは、最適な流れ場特性に対応する翼型サンプルポイントで、前記最適な流れ場特性には、最適な揚力係数、最適な抗力係数、および最適なモーメント係数が含まれる)を決定するために用いられる多目的最適化モジュールと、
前記最適な翼型サンプルポイントから回転翼の翼型を決定するために用いられる翼型決定モジュールと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0010】
本発明は、ヘリコプター回転翼の翼型の決定方法及びシステムを提供し、クラス形状変換法、ラテンハイパーキューブサンプリング法、計算流体力学法、Krigingモデルおよび多目的遺伝的アルゴリズムNSGA-IIアルゴリズムを組み合わせて、可変流入フロー-可変迎え角状態での翼型の動的特性に適する最適化決定方法が構築され、この方法またはシステムによって決定された最適化された翼型は、可変流入フロー-可変迎え角の状態で翼型の前縁渦の生成を効果的に抑制し、それによって、前縁渦が翼型の表面から移動および脱落するプロセス中に翼型の揚力、抗力、モーメントへの影響を回避し、揚力の激減と抗力及びモーメントの発散を回避し、翼型の動的空力特性を大幅に改善する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の実施例または従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、実施例に必要な図面を以下に簡単に紹介する。明らかに、以下の説明の図面は、本発明の実施例の一部にすぎない。当業者にとって、創造的な労力なしに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【0012】
図1】本発明の実施例におけるヘリコプター回転翼の翼型の決定方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施例におけるモーションネストグリッドの模式図である。
図3】本発明の実施例におけるNSGA-IIアルゴリズムの計算フローチャートである。
図4】本発明の実施例における翼型座標系と外形の模式図である。
図5】SC1095翼型と最適化された翼型の比較図である。
図6】SC1095翼型と最適化された翼型の揚力係数比較図である。
図7】SC1095翼型と最適化された翼型の抗力係数比較図である。
図8】SC1095翼型と最適化された翼型のモーメント係数比較図である。
図9】SC1095翼型と最適化された翼型の流線図比較図である。
図10】SC1095翼型と最適化された翼型の圧力係数分布曲線比較図である。
図11】本発明の実施例におけるヘリコプター回転翼の翼型の決定システムの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下は、本発明の実施例における添付の図面を参照して、本発明の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明する。明らかに、記載された実施例は、本発明の実施例の一部に過ぎず、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、創造的な作業なしに当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0014】
本発明の上記の目的、特徴および利点をより明白かつ理解可能にするために、本発明を、添付の図面および発明を実施するための形態を参照して、以下でさらに詳細に説明する。
【0015】
図1を参照すると、本実施例のヘリコプター回転翼の翼型の決定方法は、以下を含む。
【0016】
ステップS1:
ラテンハイパーキューブサンプリング法を使用して翼型サンプルポイントをランダムに生成する。
【0017】
前記ステップS1は、具体的には、ラテンハイパーキューブサンプリング法(Latin Hypercube Sampling、LHS)の方法を使用して翼型サンプルポイントの番号と変数の番号を表す翼型サンプルポイントx を生成することである。jは、翼型サンプルポイントの番号を示し、iは、変数の番号を示し、m個サンプルをn次元ベクトル空間で抽出すると仮定すると、ラテンハイパーキューブサンプリングのステップは、各次元を互いに重ならないm個間隔に分割して、各間隔を同じ確率になるようにするステップ(1)と、各次元の各間隔でランダムにポイントを抽出するステップ(2)と、次に、ステップ(2)で選択したポイントを各次元からランダムに抽出し、それらをベクトルに構成するステップ(3)と、を含む。
【0018】
ステップS2:
前記翼型サンプルポイントに基づいて、クラス形状変換法を使用して、翼型の上下翼面の特性方程式を決定する。このステップでは、クラス形状変換法(Class Shape Transformation、CST)を使用して、参照翼型のフィッティングとサンプルスペースでの翼型の生成を実現する。CST法に基づいて、翼型の上下翼面は次のように表すことができる。
【数1】
【0019】
ここで、
【数2】
ψは翼型の上翼面上のポイントの無次元後の縦座標、ψは翼型の下翼面上のポイントの無次元後の縦座標、yは翼型の上翼面上のポイントの縦座標、yは翼型の下翼面上のポイントの縦座標、cは翼型弦長であり、
【数3】
ζは翼型上のポイントの無次元後の横座標、xは翼型上のポイントの横座標、
【数4】
Δzは翼型の上翼面無次元後の後縁厚さ、Δzは翼型の下翼面無次元後の後縁厚さ、yuTEは翼型の上翼面後縁ポイントの縦座標、ylTEは翼型の下翼面後縁ポイントの縦座標、
【数5】
C(ζ)は類関数、NとNはすべて定数であり、丸いヘッドと鋭い後縁を備えた従来の翼型については、N=0.5、N=1、A は翼型上翼面の外形を制御する係数、A は翼型下翼面の外形を制御する係数、kは係数の番号、nは係数の総個数であり、S(ζ)は形状関数であり、この実施例では、バーンスタイン多項式(Bernstein polynomials)が形状関数として選択され、
【数6】
ここで、aは多項式の番号、bは多項式の次数であり、a=0,1,…,b。
係数A とA の大きさを調整することで、さまざまな翼型幾何外形を得ることができ、したがって、この係数を翼型最適化設計プロセスの設計変数として使用し、この係数を最適化して要件を満たす、最適化された翼型外形を得る。この実施例では、形状関数は6次バーンスタイン多項式を選択し、多項式の係数はつまり設計変数であり、新しい最適化された翼型は、この係数を最適化することによって得られる。
【0020】
参照翼型SC1095翼型をフィッティングすると、この翼型の多項式係数A とA を取得でき、k=0,1,…,6。LHS法で生成された上記の翼型サンプルポイントを使用して、サンプル翼型番号jの多項式係数(第j個サンプル翼型サンプルポイントx の場合)
【数7】
を得て、ここで、iは変数の番号を示し、f( )は変換関数である。上記の多項式係数を翼型の上下翼面特性方程式に代入すると、すべての翼型サンプルポイントの座標を取得できる。
【0021】
ステップS3:
前記上下翼面特性方程式に従って、計算流体力学法を使用して前記翼型の動的特性をシミュレートし、揚力係数、抗力係数、モーメント係数が含まれる、前記翼型の流れ場特性を取得する。
【0022】
このステップでは、(Computational Fluid Dynamics、CFD)方法を使用して、サンプルスペース内の翼型の動的特性をシミュレートし、シミュレーション状態として翼型の一般的な動作状態
【数8】
を選択し、Maはマッハ数であり、ωは翼型振動の角周波数を示し、tは物理的時間を示し、kは減少周波数を示し、Reはレイノルズ数である。
具体的には、
31)前記上下翼面特性方程式から翼型サンプルポイントの座標(ζ,ψ)を決定する。
32)初期グリッドを決定し、前記初期グリッドは、前記翼型のサンプルポイントの座標から生成される。
33)前記初期グリッドによれば、Poisson方程式に基づく楕円方程式グリッド生成法を使用して、翼型の周りのC字型構造のボディフィットグリッドを生成し、前記Poisson方程式は
【数9】
【0023】
ここで、(ξ,η)は計算的平面下での曲線座標系におけるポイントを示し、(ξ,η)と物理的平面下での直線座標系におけるポイント(ζ,ψ)とはマッピング関係が存在し、
【数10】
P(ξ,η)は直交性制御関数、Q(ξ,η)は密度制御関数である。グリッドの直交性は、P(ξ,η)を変更することで制御でき、グリッドの密度は、Q(ξ,η)を変更することで制御でき、上記のPoisson方程式を使用して、最終的に直交性と密度が計算要件を満たす翼型C字型構造のボディフィットグリッドを取得できる。この実施例は、モーションネストグリッド法を採用し、図2に示すように、翼型グリッドが背景グリッドにおいて回転することや平行移動することによって、流入する流速および迎え角の周期的変化を実現する。
34)この実施例では、RANS方程式の積分形式が、制御方程式を解くための回転翼流れ場として使用され、制御方程式を解くときは、最初に翼型グリッドポイントの座標を読み取り、グリッドセルの面積、体積、およびセル表面法線ベクトルを計算する必要がある。したがって、このステップでは、前記C字型構造のボディフィットグリッド内の各グリッドセルの面積と各グリッドセルの体積を計算する。
35)前記面積、前記体積、保存変数、対流フラックス項、および粘性フラックス項から、慣性座標系での積分形式の流体制御方程式(RANS方程式)を決定する。前記流体制御方程式は
【数11】
【0024】
ここで、tは物理的時間、Fは対流フラックス項、Fは粘性フラックス項、Ωはグリッドセルの体積、Sはグリッドセルの面積、Wは保存変数であり、
【数12】
ρは空気密度、Eは全エネルギー、Hは全エンタルピー、pは圧力の強さ、uはx軸方向の速度成分、vはy軸方向の速度成分、Vは相対運動速度、Vはグリッドの移動速度、(n,n)はグリッドセル表面単位法線ベクトル、τxxはx軸に垂直である平面に作用する、x軸に沿った粘性応力成分、τxyはx軸に垂直である平面に作用する、y軸に沿った粘性応力成分、τyyはy軸に垂直である平面に作用する、y軸に沿った粘性応力成分、Θは粘性応力作用項、Θは熱伝導作用項である。
36)前記流体制御方程式を解く。前記流体制御方程式の解
【数13】
前記流体制御方程式の解から前記翼型の流れ場特性を計算する。
【0025】
ステップS4:
Krigingモデルを使用して、前記翼型サンプルポイントと前記流れ場の特性との間のマッピング関係を確立し、最大尤度推定方法と期待値基準を使用して、前記マッピング関係をトレーニングし、トレーニング済みのマッピング関係を取得する。前記ステップS4は、具体的には以下を含む。
41)Krigingモデルを使用して、前記翼型サンプルポイントと前記流れ場の特性との間のマッピング関係を確立し、即ちx と揚力係数Cl、抗力係数Cdとモーメント係数Cmとの間のマッピング関係である。Krigingモデルによれば、未知のポイントxでの予測値C^(ハット)l、C^(ハット)d、C^(ハット)mは、サンプルポイントの線形の組み合わせとして表すことができる。
【数14】
【0026】
ここで、C^(ハット)lは揚力係数の予測値、C^(ハット)dは抗力係数の予測値、C^(ハット)mはモーメント係数の予測値、Y(太字)は翼型サンプルポイントに対応する揚力係数Clで構成されたベクトル、Y(太字)は翼型サンプルポイントに対応する抗力係数Cdで構成されたベクトル、Y(太字)は翼型サンプルポイントに対応するモーメント係数Cmで構成されたベクトルであり、
【数15】
nsはサンプルポイントの数量を示し、
【数16】
( ),…,f( )は既知の多項式関数、x(太字)、x(太字)及びx(太字)nsはすべて翼型サンプルポイントx で構成されたベクトルであり、
【数17】
eはベクトル次元、iは変数の番号、jは翼型サンプルポイントの番号であり、
【数18】
θliとpliは揚力係数に対応する未知パラメータであり、θliとpli
【数19】
を計算することで得られ、
【数20】
【数21】
θdiとpdiは抗力係数に対応する未知パラメータであり、θdiとpdi
【数22】
を計算することで得られ、
【数23】
【数24】
θmiとpmiはモーメント係数に対応する未知パラメータであり、θmiとpmi
【数25】
を計算することで得られ、
【数26】
42)最大尤度推定法を使用して、前記マッピング関係の未知パラメータを決定し、トレーニングされたマッピング関係を取得する。
43)期待値基準を使用して、トレーニング後の前記マッピング関係を改善して、トレーニング済みのマッピング関係を取得する。
【0027】
具体的には、モデルの予測精度を向上させるために、改善期待基準を採用し、Krigingモデルのトレーニングの過程で、収束条件が満たされるまで、期待される最大値と最適な目的関数値を持つ2つの新しいサンプルポイントを探してモデルのトレーニング最適化に追加する。C^(ハット)l(x(太字))を例として、C^(ハット)d(x(太字))、C^(ハット)d(x(太字))はC^(ハット)l(x(太字))と類似し、改善期待基準は、任意の予測点xでのCl(太字)^(ハット)(x(太字))が通常のランダム分布であり、つまり、
【数27】
を満たすと仮定すると、ここで、μは予測平均値、sは標準偏差である。計算空間では、任意の点の期待値は次の式で計算できる。
【数28】
【0028】
ここで、C^(ハット)lminはサンプルポイントにおける最小値、Φは標準正規分布関数、φは正規分布の密度関数である。期待されるE[I(x(太字))]の最大値を探すと、予測値が小さいポイント、またはモデル予測精度が低いポイントを見つけることができ、すべての補間プロセスについて、最適な改善ポイントx(太字)を常に見つけることができ、プロセスは以下のとおりである。(1)x(太字)をCST式に代入して、新しい翼型を生成し、(2)グリッドを生成し、(3)動的特性を計算し、(4)該翼型の関連データをサンプル翼型スペースに追加し、Krigingモデルを再構築し、(5)改善期待基準を使用してKrigingモデルをトレーニングし、最適な改善ポイントx(太字)を取得し、プロキシモデルの予測精度がターゲット要件を満たすまで、前のステップ(1)から(5)を繰り返し、これにより、x とCl、Cd、Cmとの間のマッピング関係が確立される。
【0029】
ステップS5:
前記トレーニング済みのマッピング関係に従って、NSGA-IIアルゴリズムを使用して最適な翼型サンプルポイント(前記最適な翼型サンプルポイントは、最適な流れ場特性に対応する翼型サンプルポイントで、前記最適な流れ場特性には、最適な揚力係数、最適な抗力係数、および最適なモーメント係数が含まれる)を決定する。
【0030】
前記ステップS5は、具体的には以下を含む。
501)サイズNの初期集団をランダムに生成する。
502)前記トレーニング済みのマッピング関係を使用して、現世代集団の各個体に対応する揚力係数、抗力係数、およびモーメント係数を計算する。
503)現世代集団の個体に対応する揚力係数、抗力係数、モーメント係数値のサイズに応じて、現世代集団のすべての個体を迅速で非支配にソートし、遺伝的アルゴリズムの選択、交叉、突然変異操作を通じて現世代の親集団を取得し、集団の代数は、遺伝的アルゴリズムの反復回数に等しい。
504)前記トレーニング済みのマッピング関係を使用して、現世代の親集団の各個体に対応する揚力係数、抗力係数、およびモーメント係数を計算する。
505)現世代の親集団の個体に対応する揚力係数、抗力係数、モーメント係数に従って、現世代の親集団のすべての個体について迅速な非支配ソートを実行し、遺伝的アルゴリズムの選択、交叉、および突然変異操作を通じて現世代の子集団を取得する。
506)前記現世代の親集団と前記現世代の子集団を組み合わせて、現世代の組み合わせされた集団を取得する。
507)前記トレーニング済みのマッピング関係を使用して、前記現世代の組み合わせされた集団の各個体に対応する揚力係数、抗力係数、およびモーメント係数を計算する。
508)現世代の組み合わせされた集団の個体に対応する揚力係数、抗力係数、モーメント係数値のサイズに応じて、前記現世代の組み合わせされた集団のすべての個体を迅速に非支配にソートし、各非支配層の個体の混雑度を計算する。
509)迅速な非支配ソートの結果と前記個体混雑度に応じて、前記現世代の組み合わせされた集団から事前設定された条件を満たす個体を選択し、次世代の親集団を形成する。
510)前記次世代の親集団に対応する集団代数が、事前設定された最大反復回数と等しいかどうかを判断する。そうでない場合、前記次世代の親集団を現世代の親集団として使用し、前記トレーニング済みのマッピング関係を使用して、現世代の親集団の各個体に対応する揚力係数、抗力係数、およびモーメント係数を計算することに戻り、そうである場合、前記次世代の親集団の個体を最適な翼型サンプルポイントとして決定する。
【0031】
上記の考えに基づいて、図3を参照すると、NSGA-IIアルゴリズムを使用して最適な翼型を見つける具体的なプロセスは次のとおりである。(1)サイズNの初期集団
【数29】
をランダムに生成し、(2)Krigingモデルによって確立されたマッピング関係を使用して、集団の各個体のCl、Cd、Cmを計算し、(3)Cl、Cd、Cm数値の大きさに基づいて、集団内の個体を非支配にソートし、遺伝的アルゴリズムの選択、交叉、および突然変異の3つの基本操作によって第1世代の親集団
【数30】
を取得し、(4)ステップ(2)と(3)を繰り返して、第2世代の子集団
【数31】
を取得し、(5)親の集団と子の集団を組み合わせ、(6)Krigingモデルによって確立されたマッピング関係に従って、組み合わせされた集団の各個体Cl、Cd、Cmを計算し、(7)Cl、Cd、Cmに従って迅速な非支配ソートを実行し、各非支配層の個体の混雑度を同時に計算し、(8)非支配的な関係と個体の混雑度に応じて、適切な個体を選択して新しい親集団
【数32】
を形成し、(9)ステップ(2)とステップ(3)を繰り返して、新しい子集団
【数33】
を取得し、(10)反復ステップ数が設定値に達するまでステップ(5)から(9)を繰り返し、最終的な最適な翼型サンプルポイントを取得する。
【0032】
ステップS6:前記最適な翼型サンプルポイントから回転翼の翼型を決定する。
【0033】
実際の応用では、上記のステップS1~S6を使用して、最終的に最適化された翼型は、大きな上翼面の前縁半径、上面の0.2c~0.4cの平坦な遷移、凹状の下面、およびテールのわずかな上向きの反りの特性を備え、最適化された翼型は、表1に示すデータに従って製造され、翼型の弦長は1である。
【0034】
【表1】
【0035】
翼型の座標系と外形図を図4に示す。図5はSC1095翼型と最適化された翼型の比較図である。図5から、最適化された翼型のキャンバーは、SC1095翼型より大きく、上翼面の前縁半径がSC1095翼型よりも大幅に大きく、最適化された翼型の上面の中央に平坦な遷移部があり、下面に明らかな凹状と後縁がやや上向きの特性を呈することがわかる。図6~8は、可変流入フロー-可変迎え角結合状態での2つの翼型の空力特性の比較図を示している。図6図8から、SC1095翼型と比較して、最適化された翼型の抗力とモーメント特性が大幅に改善され、抗力発散とモーメント発散の問題が軽減されていることがわかり、さらに、最適化された翼型の揚力係数のヒステリシスループ面積は大幅に小さく、最適化された翼型が回転翼環境での翼型の動的空力特性を効果的に改善し、動的失速の発生を抑制することができることを示している。図9図10は、可変流入フロー-可変迎え角結合状態での3つの迎え角での2つの翼型の流れ場特性の比較を示し、図9図10から、翼型のピッチングプロセス中に迎え角(α)が17.56°である場合、SC1095翼型と最適化された翼型の両方が後縁近くでのみ渦を生成し、翼型の前縁と中央では、流線は、翼型表面に密接していることがわかる。迎え角が18.00°に増加すると、SC1095翼型は前縁で渦を生成し、翼型が下がるとともに、前縁の渦が増加し、翼型表面から脱落するまで徐々に後縁に移動する。最適化された翼型は、外形の変化によって、前縁の逆圧力勾配を低減し、前縁渦の発生を抑制し、それによってより優れた動的特性を備えている。
【0036】
SC1095翼型と比較して、最適化された翼型はより優れた動的失速特性を備え、その理由は以下のとおりである。(1)最適化された翼型は上翼面の前縁半径が大きく、翼型の前縁の逆圧力勾配を効果的に緩和でき(図10(a)および10(b)を参照、最適化された翼型の前縁の負圧ピークは小さい)また、前縁渦の強度を弱め、さらに前縁渦の生成を抑制し(図9を参照、流線)、前縁渦の移動と脱落による揚力の急激な低下及び抗力とモーメントの発散という問題を緩和または回避でき、(2)最適化された翼型の上面の0.2c~0.4cの位置は平坦な遷移部であり、抗力発散とモーメント発散の発生を遅らせることができ、(3)最適化された翼型の下面の0.1c~0.7cの位置は、凹状になり、これにより、翼型のキャンバーが大きくなり、翼型の揚力が向上する。(4)最適化された翼型のわずかに上向きの後縁は、抗力とモーメントの発散を遅らせることができ、高い迎え角での気流の再付着特性を改善することができる。
【0037】
この実施例によって提供されるヘリコプター回転翼の翼型の決定方法は、可変流入フロー-可変迎え角の状態の下で、移動プロセス全体中に前縁渦の生成を抑制し、高迎え角で後縁近くにのみ渦を生成し、動的失速プロセスにおける翼型の揚力、抗力、およびモーメントに対する前縁渦の移動と脱落プロセスの影響が軽減される。
【0038】
本発明はまた、ヘリコプター回転翼の翼型決定のシステムを提供し、図11は本発明の実施例におけるヘリコプター回転翼の翼型の決定システムの構造模式図である。図11を参照すると、本実施例のヘリコプター回転翼の翼型の決定システムは、
ラテンハイパーキューブサンプリング法を使用して翼型サンプルポイントをランダムに生成するために用いられるサンプルポイント生成モジュール1101と、
前記翼型のサンプルポイントに基づいて、クラス形状変換法を使用して、翼型の上下翼面特性方程式を決定するために用いられる翼面方程式決定モジュール1102と、
前記上下翼面特性方程式に従って、計算流体力学法を使用して前記翼型の動的特性をシミュレートし、揚力係数、抗力係数、モーメント係数が含まれる、前記翼型の流れ場特性を取得するために用いられる流れ場特性計算モジュール1103と、
Krigingモデルを使用して、前記翼型サンプルポイントと前記流れ場の特性との間のマッピング関係を確立し、最大尤度推定方法と期待値基準を使用して、前記マッピング関係をトレーニングし、トレーニング済みのマッピング関係を取得するために用いられるマッピング関係計算モジュール1104と、
前記トレーニング済みのマッピング関係に従って、NSGA-IIアルゴリズムを使用して最適な翼型サンプルポイント(前記最適な翼型サンプルポイントは、最適な流れ場特性に対応する翼型サンプルポイントで、前記最適な流れ場特性には、最適な揚力係数、最適な抗力係数、および最適なモーメント係数が含まれる)を決定するために用いられる多目的最適化モジュール1105と、
前記最適な翼型サンプルポイントから回転翼の翼型を決定するために用いられる翼型決定モジュール1106と、を含む。
【0039】
本明細書の様々な実施例は、漸進的に記載され、各実施例は、他の実施例との違いに焦点を合わせ、様々な実施例間の同じまたは類似の部分を互いに参照することができる。実施例に開示されたシステムについては、実施例に開示された方法に対応するので、説明は比較的単純であり、関連情報は、方法部分の説明を参照することができる。
【0040】
本明細書では、特定の例を使用して、本発明の原理および実施形態を説明したが、上記の実施例の説明は、本発明の方法およびコアアイデアを理解するために提供されるものに過ぎない。同時に、当業者にとって、本発明のアイデアによれば、発明を実施するための形態および適用の範囲について変更をすることもある。要約すると、本明細書の内容は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11