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特許7092434実質的に一定のエネルギーを有する多色光子ビームを発生させるための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】実質的に一定のエネルギーを有する多色光子ビームを発生させるための装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/35 20060101AFI20220621BHJP
   H01S 3/30 20060101ALI20220621BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20220621BHJP
   G01N 21/65 20060101ALI20220621BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G02F1/35 502
H01S3/30
H01S3/00 A
G01N21/65
G01N21/01 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018538572
(86)(22)【出願日】2017-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-28
(86)【国際出願番号】 FR2017050126
(87)【国際公開番号】W WO2017125693
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2019-12-26
(31)【優先権主張番号】1650522
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505351201
【氏名又は名称】セントレ ナシオナル デ ラ ルシェルシェ シエンティフィーク
(73)【特許権者】
【識別番号】517032277
【氏名又は名称】ユニベルシテ ド リモージュ
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ロウ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】パグノー ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】クルパ カタルツィナ
(72)【発明者】
【氏名】シャラビー バドル
(72)【発明者】
【氏名】ラブルイェレ アレクシス
(72)【発明者】
【氏名】トネッロ アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】クデルク ヴィンセント
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-112788(JP,A)
【文献】特表2013-545974(JP,A)
【文献】特開2015-118245(JP,A)
【文献】特表2014-532894(JP,A)
【文献】特表2010-515940(JP,A)
【文献】特表2009-535666(JP,A)
【文献】特表2008-532323(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0309325(US,A1)
【文献】MUSSOT A., et al.,"Generation of a broadband single-mode supercontinuum in a conventional dispersion-shifted fiber by use of a subnanosecond microchip laser",Optics Letters,2003年10月01日,Vol.28, No.19,pp.1820-1822
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-1/39
H01S 3/00-3/30
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子の多色ビームを発生させるための装置(DG)であって、前記装置(DG)は、
ある波長を有する一次光子を供給することができるパルス・レーザ光源(SL)と、
前記一次光子に作用して、選択された偏光を有する収束された入力ビームを供給することができる成形手段(MM)と、
前記入力ビームから、複数の波長を有する二次光子を含む多色出力ビームを生成するように配置された光ファイバー(FO)と、を備え、
前記パルス・レーザ光源(SL)は、ラマン変換のカスケードから生じる種々の波長を有する二次光子を引き起こすように、時間的非対称性を有するパルス状の前記一次光子を供給することができ、さらに、前記パルス・レーザ光源(SL)は、それらのそれぞれの波長に応じて時間にわたり広がる、前記ラマン変換の飽和領域における前記二次光子の非線形発生を引き起こす光ファイバー(FO)のメートル当たりの出力密度を供給することができ、そして、実質的に一定に分布するエネルギーを有する広帯域スペクトルの出力ビームを形成する、ことを特徴とする、装置。
【請求項2】
光ファイバー(FO)のメートル当たりの前記出力密度は、0.2kW/μm/mより高いことを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
時間にわたる広がりにおけるそれらの差に等しい持続時間のパルスの形態を取るフィルタリングされた出力ビームを供給するために、前記光ファイバー(FO)の下流に取り付けられ、かつ予め定められた間隔に含まれる波長を有する二次光子のみを通過させることができるフィルタリング手段を備えることを特徴とする、請求項1及び2のいずれか1項に記載の装置。
【請求項4】
前記光ファイバー(FO)と前記成形手段(MM)との間に、前記入力ビームの前記時間的非対称性を増すことができる非対称化手段を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記光ファイバー(FO)は単一モード光ファイバーであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記パルス・レーザ光源(SL)は、数百ナノ秒と数十ナノ秒との間に含まれる持続時間を有するパルス状の前記一次光子を供給することができることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
i)前記入力ビームを受け取ることができ、前記光ファイバー(FO)の入口に堅く締結されるダイクロイック入口ミラー(ME)と、ii)前記出力ビームを供給することができる出口ミラー(MS)とを含む共振キャビティ(CR)を備えることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記光ファイバー(FO)は希土類イオンでドープされること、及び、二次光子への変換の増加を可能にするように前記一次光子の発生の増幅を引き起こすために、前記希土類イオンと相互作用するための補助光子を、前記光ファイバー(FO)に注入することができる補助レーザ光源(SLA)を備えることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記光ファイバー(FO)は、前記二次光子への変換の増加を引き起こすように、前記光ファイバー(FO)内の非線形効果を助長することができるイオンでドープされることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
試料分析システムであって、試料を分析するための多色出力ビームを供給することができる、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも1つの発生装置(DG)を備えることを特徴とする、システム。
【請求項11】
前記試料の分析を、多重コヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱によって行うことができることを特徴とする、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
時間的検出器を備えることを特徴とする、請求項11記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光子の多色ビームを発生させるための装置、及びそのような装置を使用する分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ある特定の分野、例えば、試料(場合により医療試料)の分析の分野などにおいては、大きなスペクトル幅、典型的には数十ナノメートルから数百ナノメートル、にわたって実質的に連続的に分布する波長を有する光子のビームを供給するレーザ光源に対する必要性が存在する。そのような多色光源は連続光源と呼ばれることが多い。
【0003】
当業者には既知であるように、これらの光源は非線形効果を伴う光-物質相互作用に基づいて生産される。それらは、「一次」波長を有する「一次」光子を供給する少なくとも1つのパルス・レーザ光源、及び、一次光子から、複数の「二次」波長を有する二次光子を含んだ出力ビームを生成するための微細構造光ファイバーを備えることが多い。語句「微細構造光ファイバー」は、本明細書では、一般にはシリカ製であって、その内部に、光-物質相互作用を増し、それ故に、多数の二次波長への一次波長の変換を高めるための光量を閉じ込めることを意図した定められた微細構造体が存在する、光ファイバーを意味すると理解される。例えば、これらの微細構造体は、光ファイバー内の光の伝播の方向に横向きに配置されたブラッグの回折格子を形成することができ、光によって見られる分散関係を修正することができる。
【0004】
そのような微細構造光ファイバーを使用する光源は、有利なことに、近紫外(又はUV)(約350nm)から中赤外(典型的には5μm)まで広がるスペクトル幅を有する安定な放射を得ることを可能にする。シリカ製の微細構造光ファイバーは、例えば、2.4μmまでの赤外に限定される。
【0005】
しかしながら、非線形微細構造光ファイバーは小さいコア直径を有し、従って、エネルギーの高い閉じ込めの存在において、それらの材料の損傷の域値に非常に急速に達する。それ故に、微細構造光ファイバーを使用するこれらの光源は、高い出力エネルギーを得るのを可能にしない。加えて、標準的な分散領域における微細構造光ファイバーのポンピングは、誘導ラマン効果による変換スペクトルの不連続な発生を引き起こす。最後に、ピコ秒及びナノ秒励起レジームにおける異常分散領域における波長の変換はソリトン効果によって支配され、この効果は使用されるパルスの時間的プロファイルの時間領域において区別される種々異なる位置で発生される出力ビームの種々の二次波長を妨げるスペクトログラムを引き起こす。これらの条件下では、これらの光源を、ある特定の用途、例えば、多重コヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱(CARS)などのために、蛍光放射の分光学的分析の実施を加えることなしに、使用することは不可能である。この多重CARS顕微分光法は、特に、試料中の特定の化学種を識別して位置を突き止めるためのイメージングの分野で使用される。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、特にこの状況を改善することである。
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、光子の多色ビームを発生させるための装置であって、少なくとも1つの波長を有する一次光子を供給することができるパルス・レーザ光源と、一次光子に作用して、選択された偏光を有する収束された入力ビームを供給することができる成形手段と、入力ビームから、複数の波長を有する二次光子を含む多色出力ビームを作り出すように配置された光ファイバーと、を備えた装置を提供する。
【0008】
この発生装置は、そのパルス・レーザ光源が、ラマン変換のカスケードから生じる種々の波長を有して実質的に一定に分布するエネルギーを有する広帯域スペクトル出力ビームを形成する二次光子を誘発するような、時間的非対称性を有するパルス状の一次光子を供給することができることを特徴とする。
【0009】
次に、非線形効果によって生成される各々の二次波長は、ポンプ・パルス(一次光子)の持続時間の間に特定の到達時間を有し、これが単一遅延によって特徴付けられることを可能にする。二次光子の時間にわたるこの分布は、ポンプ・パルスの非対称性によって助長された非線形動的応答の結果である。
【0010】
従って、時間的非対称なパルスでポンプされた非微細構造光ファイバー(例えば、大きいコアの標準的な光ファイバー(HI 980光ファイバーなど))を使用することにより、スペクトルの振幅が実質的に一定なエネルギーの光子の連続体を得ることが可能である。
【0011】
本発明による装置は、別々に又は組み合わせて実施することができる他の特徴を有することができ、具体的には、
・パルス・レーザ光源は、それらそれぞれの波長に依存して時間的に広がる二次光子の非線形発生を引き起こす、光ファイバーのメートル当たりの出力密度を供給することができ、
・例えば、光ファイバーのメートル当たりの出力密度は、0.2kW/μm/mより高くすることができ、
・パルス・レーザ光源は、時間にわたる広がりにおけるそれらの差に等しい持続時間のパルスの形態を取るフィルタリングされた出力ビームを供給するために、光ファイバーの下流に取り付けられ、かつ、予め定められた間隔に含まれる波長を有する二次光子のみを通過させることができるフィルター手段を備えることができ、
・装置は、光ファイバーと成形手段との間に、入力ビームの時間的非対称性を増すことができる、非対称化手段を備えることができ、
・光ファイバーは、単一モード・ファイバー又は実際にはマルチモード・ファイバーとすることができ、
・パルス・レーザ光源は、数百ナノ秒と数十ナノ秒との間を含む持続時間を有するパルス状の一次光子を供給することができ、
・パルス・レーザ光源は、入力ビームを受け取ることができるダイクロイック入口ミラー、及び出力ビームを供給することができる出口ミラーを備える共振キャビティを備えることができ、
・光ファイバーは希土類イオンでドープすることができる。この場合、装置はまた、二次光子への変換の増加を可能にするように一次光子の増幅を引き起こすために、希土類イオンと相互作用するための補助光子を、光ファイバー内に注入することができる補助レーザ光源を備えることができ、
・変形例として、光ファイバーは、二次光子への変換の増加を引き起こすために、光ファイバー内の非線形効果を助長することができるイオンでドープすることができる。
【0012】
本発明はまた、上記のタイプの少なくとも1つの発生装置を備え、試料を分析するための多色出力ビームを供給することができる、試料分析システムを提供する。
【0013】
例えば、そのようなシステムは、多重コヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱(又はCARS)を用いて試料を分析することができる。この場合、このシステムはまた、時間的検出器を備えることができる。
【0014】
本発明は、単に例として与えられる以下の説明を、添付の図面を参照しながら読むことによってよりよく理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による発生装置の第1の実施形態を図式的及び機能的に示す。
図2】本発明の一実施形態による発生装置の出力ビームの出力(dB単位のP)の、波長(nm単位のλ)の関数としての変化の一例を、プロットによって図式的に示す。
図3】本発明の一実施形態による発生装置の、時間及び波長領域における出力ビームの出力の変化の一例を、プロットによって図式的に示す。
図4】本発明による発生装置の第2の実施形態を図式的及び機能的に示す。
図5】本発明による発生装置の第3の実施形態を図式的及び機能的に示す。
図6】本発明による発生装置の第4の実施形態を図式的及び機能的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の目的は、特に、そのエネルギー(又は出力)が実質的に一定に分布する光子FSの多色ビームを発生させるための装置DGを提供することである。
【0017】
以下で、試料分析システム(オプションとして医療試料を分析するための)の部分を形成するための、非限定的な例として、発生装置DG(TG)が考察される。しかし、本発明はこのタイプのシステムに限定されない。具体的には、本発明は、実質的に一定のエネルギー(又は出力)の、光子の多色ビームを発生することができる少なくとも1つの装置を備えることが必要な任意のシステムに関する。
【0018】
さらに、分析システムは、以下で、非限定的な例として、多重コヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱(又は多重CARS顕微分光法)を用いて試料を分析することができることが考察される。そのような試料は、例えば、血液試料とすることができる。しかし、本発明はこのタイプの分析に限定されない。
【0019】
一般に、本発明は多くの分野に関係し、具体的にはバイオ・フォトニクス(及び具体的には細胞診断)、コヒーレンス・トモグラフィー、フロー・サイトメトリー、(例えば、空港警備のための)遠隔での化学元素のスクリーニング、個々人(例えば、医療分野における)の検査、爆発物の検出、及び、バクテリアの検出に関係する。
【0020】
図1及び図4図6は、本発明による発生装置DGの4つの非限定的な実施形態を図式的に示す。
【0021】
図示されるように、(発生)装置DGは、少なくとも1つのパルス・レーザ光源SL、成形手段MM、及び微細構造のない光ファイバーFOを備える。
【0022】
パルス・レーザ光源(又はポンプ・レーザ)SLは、以下で「一次波長」と呼ばれる波長を有する「一次」光子と呼ばれるものを供給することができる。この一次(又はポンプ)波長は、用途の必要条件、及びそれ故に所望のスペクトル帯に応じて選択される。従って、これは場合により、赤外(若しくはIR)領域、可視領域、又は紫外(若しくはUV)領域に属することになる。これらの一次光子はまた、例えば、赤外波長とその二次高調波のような1つ又はそれ以上の領域に属することができる。
【0023】
加えて、パルス・レーザ光源SLは、時間的非対称性を有するパルス状の一次光子を供給することができる。この時間的非対称性の利点については以下で戻ることになる。
【0024】
例えば、このパルス・レーザ光源SLは、高いピーク出力を供給することができる。この場合、これは、恐らく、例えば、10ps~10nsの範囲のパルスを有する1064nmにおける光子を生成するNd:YAGレーザを備えるであろう。
【0025】
この時間的非対称性は、レーザ光源SLのレーザ・キャビティの中に導入される飽和性吸収体によって、及びこのレーザ・キャビティ内のレーザ利得の変動の動的応答によって得ることができる。パルスの立ち上がり前部は、レーザ利得及び吸収体の飽和速度によって設定され、他方、立ち下がり前部は、レーザ利得の減少の動的応答及び飽和性吸収体の再開によって制御される。飽和及び再開の動的応答が異なるので、非対称的なパルスが得られる。
【0026】
成形手段MMは、選択された偏光を有する収束された入力ビームFEを供給するために一次光子に作用することができる。この偏光(又は場の振動の方向)はレーザ光源SLによって設定される。これは、ある特定の非線形効果を助長するために、レーザ光源SLのレーザ・キャビティの外部の半波長板又は4分の1波長板によって回転させるか又は修正することができる。光ファイバーFOに対する偏光の向き/修正は、従って最終的スペクトルを(適度に)修正することを可能にする。
【0027】
例えば、及び図示されるように、これらの成形手段MMは、一次光子の伝播の方向に関してパルス・レーザ光源SLの下流に、選択された偏光を一次光子に与えることができる少なくとも1つの波長板LPと、一次光子を光ファイバーFOの入口に収束させることができる収束レンズLFとを備えることができる。波長板LPは収束レンズLFの後ろに配置することができることに留意されたい。例えば、及びレーザ光源SLによって供給される初期の偏光に基づいて、波長板LPによって与えられる偏光は、円、楕円又は直線形とすることができる。
【0028】
光ファイバーFOは入力ビームFEを受け取ることができ、入力ビームFEから、複数の波長を有する「二次」光子と呼ばれる光子を含む多色出力ビームFSを生成するように準備される。例えば、及び非限定的に図示されるように、光ファイバーFOの入口端部は、入口を介して収束された入力ビームFEを受け取る結合手段MCに堅く締結することができる。これらの結合手段MCは、例えば、収束された入力ビームFEを光ファイバーFOの入口端部のコアにより正確に再収束する役割を有するマイクロレンズ・カップラの形態を取ることができる。
【0029】
この光ファイバーFOは、非線形微細構造光ファイバーよりも大きいコアを有するために、標準的なタイプであることが好ましい。これは、例えば、シリカ又は別の材料、例えばテルル化合物、カルコゲン化合物、又はフッ素含有ガラスなどで作製することができ、オプションとしてドープすることができる。これは、例えば、HI 980又はHI 1060光ファイバーとすることができる。
【0030】
以下で説明する効果を得るために、(レーザ光源SLの)ポンプ波長に関して、及び装置DGによって発生される出力スペクトルの大部分に関して、正常分散域にあることが必要であることに留意されたい。特に、異常分散域においては、ソリトン効果がスペクトル-時間分布に悪影響を及ぼす。
【0031】
パルス・レーザ光源SLによって供給されるパルスの時間的非対称性は、光ファイバーFOの内部に、ラマン変換のカスケードから生じる種々の波長を有し、実質的に一定に分布するエネルギーを有する広帯域スペクトルの出力ビームFSを形成する、「二次」光子と呼ばれる光子を誘発することができる。
【0032】
次に、各々の波長は、初期レーザ・パルス内の単一時間遅延によって識別することを可能にする到達時間を有する。
【0033】
光ファイバーFOのコア内の一次及び二次光子の伝播、並びに、これらの一次及び二次光子の、種々のストークス波へのラマン変換による「複製」は、伝播中に、ストークス線のスペクトルの均一な広がりを引き起こし、それによって、広い波長範囲にわたるエネルギーの釣り合いの取れた再分布、及び従って、出力ビームFSの二次光子のどの波長であっても実質的に一定のエネルギーの獲得、を可能にする。換言すれば、発生装置DGは、(超)平坦スペクトルの多色レーザ光源である。
【0034】
図2は、発生装置DGの出力ビームFSの出力(dB単位)の、波長λ(nm単位)の関数としての変化の一例を示す。見ることができるように、ここで、エネルギー領域において特に平坦であり、従って多くの用途、特に多重CARS顕微分光法、に良く適したスペクトルが得られる。
【0035】
図3は、時間領域(ns単位)及び波長領域(nm単位)における、発生装置DGの出力ビームの出力の変化の一例を示す。この例は、単一時間遅延によって識別するのを可能にする、出力ビームFSの波長の時間的広がりを示す。見ることができるように、二次光子のスペクトル-時間分布は、ポンプ・パルス(一次光子)の持続時間の間に得られる。
【0036】
パルス・レーザ光源SLは、それらそれぞれの波長に応じて時間にわたり広がる二次光子の非線形発生を引き起こす、光ファイバーFOのメートル当たりの出力密度を供給するパルス状の一次光子を供給することができることに留意されたい。従って、非対称性はスペクトル-時間プロット内に得られる。
【0037】
この場合、過飽和領域における非線形ラマン効果の減少の動的応答が、従来技術の微細構造ファイバー装置において得られるものとは根本的に異なるスペクトル-時間放射分布を得ることを可能にする。具体的には、スペクトルの各々の波長は、出現の異なる時間によって識別することができる。二次光子発生遅延は、二次光子のそれぞれの波長の関数である広がりを有し、例えば光ダイオード及びオシロスコープを備える時間的検出器により、分光学的分析を行うことを可能にする。この時間にわたる広がりは、レーザ光源SLによって供給されるポンプ・パルスの持続時間の間の、過飽和領域におけるラマン変換によって開始される。
【0038】
例えば、スペクトルのプロファイルを制御するのを可能にする光ファイバーFLのメートル当たりのこの出力密度は、約1nsの持続時間のパルスに対して0.2kW/μm/mより高くなるように選択することができる。好ましくは、0.3kW/μm/mより高くなるように選択することがさらに好ましい。具体的には、そのような出力密度は、時間にわたる波長の広がりを伴う超平坦スペクトルの獲得に好都合のラマン効果の飽和を引き起こすことを可能にする。この広がり時間は、初めのポンプ・パルスの全持続時間を超えないことに留意されたい。
【0039】
この時間にわたる広がりは、有利なことに、選択され且つ可変の持続時間のパルスの形態を取る出力ビームFSを供給するための発生装置DGを可能にすることができる。具体的には、それに、その光ファイバーFOの下流に予め定められた間隔に含まれる波長を有する二次光子のみを通過させることができるフィルタリング手段を、加えることによって、発生装置DGは、この間隔の限界に等しい波長の二次光子の、時間にわたる広がりの差に等しい持続時間のパルスの形態を取るフィルタリングされた出力ビームFSを供給することができる。従って、用途の必要条件に応じて、ナノ秒又はピコ秒又はさらにはフェムト秒のオーダーのパルスを得ることが可能である。
【0040】
図4の第2の例に非限定的に示されるように、発生装置DGはまた、その光ファイバーFOとその成形手段MMとの間に、入力ビームFEの時間的非対称性を増すことができる(能動又は受動)非対称化手段MDを備えることができる。具体的には、これは時間にわたる広がりを増加させることを可能にする。
【0041】
例えば、これらの非対称化手段MDは、「飽和性吸収」手段又は「逆飽和性吸収」手段と呼ばれるものとすることができる。具体的には、それで、立ち上がり前部は飽和性吸収体(又は逆吸収体)の飽和に依存し、他方、立ち下がり前部は、飽和性吸収体(又は逆吸収体)の平衡状態への戻りに依存する。換言すれば、その開放及びその閉鎖の間の飽和性吸収体(又は逆吸収体)の異なる振る舞いが、各々のパルスの時間的プロファイルの非対称性を引き起こす。
【0042】
また、光ファイバーFOは単一モード・ファイバーであることが好ましいことに留意されたい。しかし、1つの変形の実施形態において、光ファイバーはマルチモード・ファイバーとすることができる(特に、より多くの出力の通過を可能にするために)。
【0043】
また、パルス・レーザ光源SLは、数百ナノ秒~数十ナノ秒の間を含む持続時間を有するパルス状の一次光子を供給することができることに留意されたい。より短い持続時間に対しては、分散の効果が障害となり、より長い持続時間に対しては、高いピーク出力を有するパルスを得ることが困難になる。
【0044】
さらに、図5の第3の例において非限定的に示されているように、発生装置DGはまた、その光ファイバーFOを収容する共振キャビティCRを備えることができることに留意されたい。この共振キャビティCRは、非線形変換の増幅を引き起こすことができる二次光子振動を可能にする。このキャビティは長い一次パルスと共に使用することが好ましい。そのような共振キャビティCRは、一方で、入力ビームFEを受け取ることができ、例えば、光ファイバーFOの入口に堅く締結されるダイクロイック入口ミラーMEと、他方で、例えば、光ファイバーFOの出口に堅く締結され、出射ビームFSを供給することができる出口ミラーMSとを備えることができる。
【0045】
さらに、光ファイバーFOは、希土類イオンでドープすることができることに留意されたい。この場合、図6の第4の例に非限定的に示されるように、発生装置DGは、光子の発生の増幅を引き起こすために希土類イオンと相互作用するのを意図した補助光子を、光ファイバーFOに注入することができる補助レーザ光源SLAを備えることができ、この一次光子の増幅が、次に、二次光子への変換を増すことを可能にする。例えば、補助レーザ光源SLAの放射波長は、イットリウム(Yb)及びエルビウム(Er)イオンに対して980nmに、又はネオジム(Nd)イオンに対して808nmに等しくすることができる。
【0046】
ファイバー内の一次光子の増幅はまた、パルスの立ち上がり前部及び立ち下がり前部を異なる仕方で増幅することにより、一次光子の非対称性を増加させるか又は減少させることができる。この機構は、パルスの種々の部分によって生ずる差分レーザ利得飽和に依存する。
【0047】
変形例として、光ファイバーFOは、二次光子への変換の増加を引き起こすために、内部の非線形効果を助長することができるイオンでドープすることができる。これらのイオンは、例えばゲルマニウムイオンとすることができる。
【0048】
本発明は幾つかの利点を有し、その中で、
・使用される光ファイバーのコアの断面積が、非線形微細構造光ファイバーのコアの断面積より遥かに大きいために高いスペクトル出力密度を有する(超)連続体を得ることを可能にし、
・微細構造光ファイバーに基づく(超)連続光源におけるエネルギー揺らぎの問題を解決することを可能にし、
・広帯域放射のコヒーレンスであって、一般に、微細構造光ファイバーに基づく(超)連続光源の中のソリトン伝播によって低下させられるコヒーレンス、を改善することを可能にし、
・横方向周期構造を有するものよりも安価な光ファイバーを使用することを可能にし、
・特定のスペクトル-時間分布を得ることを可能にする。
【0049】
本発明は、図面及び前述の説明において詳しく示され説明された。後者は例証であり、例として与えられ、本発明をこの説明にのみ限定するものではないと考えられるべきである。多くの異なる実施形態が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6