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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】車両サスペンションシステム
(51)【国際特許分類】
   B60G 3/20 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
B60G3/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019537333
(86)(22)【出願日】2018-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2018050303
(87)【国際公開番号】W WO2018130475
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】17461502.1
(32)【優先日】2017-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519185579
【氏名又は名称】トリーゴ エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】バドウェイル、ラファル
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07717210(US,B2)
【文献】米国特許第03899037(US,A)
【文献】特表2013-530079(JP,A)
【文献】特開昭61-226301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンション手段を通じて車両シャーシ部と接続される操舵ナックルと、
第1の位置と第2の位置との間のアーチ形経路に沿った、前記車両シャーシ部に対する前記操舵ナックルの移動を可能にするように構成されているガイド手段と、
前記第1の位置と前記第2の位置との間の前記操舵ナックルの前記移動をもたらすように構成されている駆動手段と、
前記操舵ナックルの前記第1の位置と前記第2の位置との間で車両安定性の変化を補償するように構成されている安定性補償手段と
を備え、
前記ガイド手段は、
少なくとも1つの制御アームであって、前記少なくとも1つの制御アームの第1の末端を用いて、第1の接続箇所で前記操舵ナックルに対して回転可能に接続され、かつ前記少なくとも1つの制御アームの第2の末端を用いてヨークに旋回可能に取り付けられ、前記ヨークは軸Z2のまわりをさらに回転可能であり、前記第1の接続箇所は垂直車両軸Zに平行な軸Z1上に位置する、少なくとも1つの制御アームと、
第2の接続箇所で前記操舵ナックルに回転可能に接続され、かつ第3の接続箇所で前記車両シャーシ部に回転可能に接続される固定長のリジッドアームであって、前記第2の接続箇所は固定距離Aだけ前記軸Z1から離れており、前記第3の接続箇所は固定距離Bだけ前記軸Z2から離れており、前記固定距離Aおよび前記固定距離Bは、前記第1の位置と前記第2の位置との間での前記移動の際に前記車両シャーシ部に対する前記操舵ナックルの選択された角度方向をもたらすように選択され、前記固定距離Aおよび前記固定距離Bは、前記第1の位置と前記第2の位置との間での前記移動の際に不変である、リジッドアームと
を有し、
前記安定性補償手段は、前記操舵ナックルと連結される第1の端部と、第4の接続箇所で前記車両シャーシ部と接続される第2の端部とを含むショックアブソーバをさらに有し、前記第2の端部は長手方向車両軸Xに沿って前記第1の端部に対して変位し、前記第4の接続箇所の位置は、前記第1の位置と前記第2の位置との間の前記操舵ナックルの位置の変化に関連する前記ショックアブソーバの長さの変化を補償する制御方式で、前記車両シャーシ部に対して前記垂直車両軸Zに平行に移動可能である、
車両サスペンションシステム。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記ガイド手段が有する要素のうちの少なくとも1つを前記軸Z2のまわりに双方向に回転させるように適合されている駆動アセンブリを有する、請求項1に記載の車両サスペンションシステム。
【請求項3】
前記駆動アセンブリはナット・ネジ・アセンブリを有する、請求項2に記載の車両サスペンションシステム。
【請求項4】
前記駆動アセンブリはレバーで作動する、請求項2または3に記載の車両サスペンションシステム。
【請求項5】
前記固定距離Aおよび前記固定距離Bは一定である、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両サスペンションシステム。
【請求項6】
前記軸Z2は垂直車両軸Zに平行である、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両サスペンションシステム。
【請求項7】
前記第3の接続箇所は、ある制御方式で前記車両シャーシ部に対して移動可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両サスペンションシステム。
【請求項8】
前記第3の接続箇所は前記長手方向車両軸Xまたは横軸Yまたは垂直軸Zに平行に移動可能である、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両サスペンションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変輪距を有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる環境での車両の使用や、異なる速度での車両空力特性の調節や、異なる走行条件での車両安定性の調節を容易にすることによって車両の機能を強化するのに可変輪距アクスルが用いられている。
【0003】
たとえば、米国特許第6902022号には転換フロントエンドおよび可変輪距幅を有するトラクタが示されている。トラクタは、操舵可能で交換可能な前輪アセンブリと調節可能なリア輪距幅とを有する。取り外し可能な前輪アセンブリによって単輪前輪アセンブリと2輪前輪アセンブリとの容易な転換が可能になる。交換可能な前輪アセンブリと組み合わせて、調節可能な後輪輪距幅によってトラクタの旋回半径の変更が可能になる。本構成は、旋回半径がリア輪距の幅によって調節可能である、広い旋回半径の大型重量車両を明確に対象としている。
【0004】
一方、PCT出願W09950128号には、前輪または後輪が接続される各側に平行四辺形リンクを有することで、調整式の車輪の変位を可能にする短くて細い自動車が示されている。車両が前輪を通じて操舵され、また、前輪がその変位の程度にかかわりなく操舵されるのを可能にするように操舵機構が構成されるが、収縮位置で旋回の範囲が制限される。後輪は操舵不能である。
【0005】
米国特許出願第20060170171号には、傾斜可能なシャーシと、上記シャーシを傾斜させるために前輪の回転軸と交差して移動するように適合されている前輪とを有する車両が示されている。前輪は、高速時に傾斜するのを可能にするように、低速用の広い輪距と高速用の狭い輪距とに設定されるように構成されている可変輪距幅を有する。後輪は操舵不能であり、ホイールベースは前輪の増加した輪距幅の分だけ減少する。
【0006】
たとえば特許文献FR1504753、EP1533214、US2788858から、可変輪距幅を有する前輪と1つの後輪とを有し、すべての車輪が操舵可能であることが可能である産業用トラクタも知られている。しかし、前輪を旋回させ後輪を旋回させるのに別々の操舵手段が用いられている。さらに、車輪の操舵が前輪の輪距幅に応じていない。ホイールベースは一定であるか、前輪の増加した輪距幅の分だけ減少する。
【0007】
フランス特許出願第2844245A1号には、前輪と後輪との両方の、調節可能な輪距幅を用い、すべての車輪がその輪距幅にかかわりなく独立して旋回可能である車両が示されている。
【0008】
欧州特許第1066191B1号には、前輪の調節可能な輪距幅を用いるが、前輪がその輪距幅にかかわりなく旋回可能である可変輪距車両が示されている。後輪は旋回不能である。前輪が狭い輪距になっているとき、前輪を旋回させることによって車両が操舵され、後輪は常に旋回不能である。このために、シャーシの前部で前輪を旋回させるための余計なスペースを提供することが必要である。
【0009】
上記の車両のいくつかの欠点は、輪距幅の変更が専用のコストの高い液圧または電気手段を用いてもたらされるということである。この結果、車両の大きいかさばり、高い製造コストおよび相当な複雑さが生じる。
【0010】
本発明の目的は、コスト効率に優れた手段を利用して容易で安全な輪距幅変更を可能にする、可変輪距幅を用いる代替の車両サスペンションシステムを提供することである。具体的には、本発明の目的は、輪距幅を変更する際に車輪が車両シャーシに対して選択された向きを維持することを可能にするサスペンションを提供することである。本発明の別の目的は、サスペンションが収縮構成と伸長構成との間から移行する際にトー角の調節を可能にするサスペンションを提供することである。最後に、本発明は、荷重分布の変化に起因し、一方で収縮構成と伸長構成との間でのホイールベース寸法変化によって引き起こされる有効車輪サスペンション荷重の変化を打ち消す手段を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0011】
車両シャーシ部とサスペンション手段を通じて接続される操舵ナックルを備える車両サスペンションシステムであって、本サスペンションシステムは、第1の位置と第2の位置との間でのアーチ形経路に沿った車両シャーシ部に対する操舵ナックルの移動を可能にするように構成されているガイド手段と、第1の位置と第2の位置との間の操舵ナックルの移動をもたらすように構成されている駆動手段とを備え、ガイド手段は、第1の位置と第2の位置との間での移動の際に車両シャーシ部に対する操舵ナックルの選択された角度方向をもたらすように適合されている、車両サスペンションシステムが開示されている。
【0012】
車両サスペンションシステムは、操舵ナックルの第1の位置と第2の位置との間で車両安定性の変化を補償するように構成されている安定性補償手段を備えてもよい。
【0013】
ガイド手段は、少なくとも1つの制御アームであって、第1の接続箇所で操舵ナックルに対して回転可能にこの少なくとも1つの制御アームの第1の末端を用いて接続され、ヨークで旋回可能にこの少なくとも1つの制御アームの第2の末端を用いて取り付けられ、ヨークは軸Z2のまわりをさらに回転可能であり、第1の接続箇所は垂直車両軸Zに平行な軸上に位置する、少なくとも1つの制御アームと、第2の接続箇所で操舵ナックルに回転可能に接続され、第3の接続箇所で車両シャーシ部に回転可能に接続されるリジッドアームであって、第2の接続箇所は距離Aだけ軸Z1から離れており、第3の接続箇所は距離Bだけ軸Z2から離れており、距離AおよびBは、第1の位置と第2の位置との間での移動の際に車両シャーシ部に対する操舵ナックルの選択された角度方向をもたらすように選択される、リジッドアームとを備えてもよい。
【0014】
駆動手段は、ガイド手段が有する要素のうちの少なくとも1つを軸Z2のまわりに双方向に回転させるように適合されている駆動アセンブリを備えてもよい。
【0015】
駆動アセンブリはナット・ネジ・アセンブリを備えてもよい。
【0016】
駆動アセンブリはレバーで作動してよい。
【0017】
距離AおよびBは一定であってもよい。
【0018】
安定性補償手段は、操舵ナックルと連結される第1の端部と、第4の接続箇所で車両シャーシ部と接続される第2の端部とを有するショックアブソーバをさらに備えてもよく、第2の端部は長手方向車両軸Xに沿って第1の端部に対して変位する。
【0019】
接続箇所は、ある制御方式で車両シャーシ部に対して移動可能であってもよい。
【0020】
接続箇所は垂直車両軸Zに平行に移動可能であってもよい。
【0021】
軸Z2は垂直車両軸Zに平行であってもよい。
【0022】
接続箇所は、ある制御方式で車両シャーシ部に対して移動可能であってもよい。
【0023】
接続箇所は長手方向車両軸Xまたは横軸Yまたは垂直軸Zに平行に移動可能であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明のさらなる詳細および特徴、本発明のさらなる詳細および特徴の性質および様々な効果が、以下の図面に示されている好ましい実施の形態の以下の詳細な説明からより明らかになる。
【0025】
図1】第1の実施の形態に係る車両サスペンションシステムを等角図に示す。
【0026】
図2】第1の実施の形態に係る車両サスペンションシステムを上面図に示す。
【0027】
図3】第1の実施の形態に係る車両サスペンションシステムを側面図に示す。
【0028】
図4】第1の実施の形態の修正例を示す。
【0029】
図5】第2の実施の形態に係る車両サスペンションシステムを等角図に示す。
【0030】
図6a】サスペンションの広い構成と狭い構成との比較を示す。
図6b】サスペンションの広い構成と狭い構成との比較を示す。
【0031】
図7】駆動手段の例を示す。
図8】駆動手段の例を示す。
【0032】
図9】第3の実施の形態に係る車両サスペンションシステムを等角図に示す。
【0033】
図10図5の修正サスペンションシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
上述されているようなサスペンションシステムは、特許EP2388153またはEP2388179に示されているもののような可変輪距幅を用いる車両で用いることができる。車両が運転されるとき、前輪を広い軌跡に設定してもよく、前輪および/または後輪の旋回を制御するように構成されている操舵手段を通じて車両を制御することができる。このような「運転モード」によって優れた安定性が車両に提供される。車両シャーシに対する車輪のこの位置(したがって、車輪の操舵ナックルの位置)を第1の位置と称する場合がある。車両を狭いスペースに駐車するとき、前輪を狭い輪距に設定してもよく、後輪の旋回を制御するように構成されている操舵手段を通じて車両を制御することができる。このような「駐車モード」によって車両の狭い寸法と優れた操作能力とが提供される。したがって、車両を狭い駐車スペースに容易に駐車することができる。車両シャーシに対する車輪のこの位置(したがって、車輪の操舵ナックルの位置)を第2の位置と称する場合がある。より狭いフロント輪距幅の分だけホイールベースが短くなるとき、旋回半径が減少し、操作能力はさらに高められる。
【0035】
説明全体にわたって、一般的な車両方向、すなわち、長手方向車両方向X、側方車両方向Yおよび垂直車両方向Zを、本技術において一般的な仕方で用いる。これらの方向は、図1に示されている座標系として示されており、発明の様々な特徴を説明するのに用いられる。これらの方向は、サスペンションシステムが設置されることが意図されている車両の方向を表す。したがって、上記サスペンションシステムは、車両シャーシに対して特定の向きに設置されるように設計される。
【0036】
本発明に係る車両サスペンションシステムは、車両シャーシ部4とサスペンション手段を通じて接続される操舵ナックル1を備える。操舵ナックル1は、サスペンションシステムの残りと車輪14との間の橋渡し的要素として用いられる。操舵ナックル1の任意の移動の結果、車輪14の同様の移動が生じる。サスペンションシステムは、第1の位置と第2の位置との間でのアーチ形経路に沿った車両シャーシ部4に対する操舵ナックル1の移動を可能にするように構成されているガイド手段をさらに備える。サスペンションシステムは、第1の位置と第2の位置との間の操舵ナックル1の移動をもたらすように構成されている駆動手段をさらに備える。ガイド手段は、第1の位置と第2の位置との間の移動の際に車両シャーシ部4に対する操舵ナックル1の選択された角度方向をもたらすように適合されている。好ましくは、サスペンションシステムは、操舵ナックルの第1の位置と第2の位置との間で車両安定性の変化を補償するように構成されている安定性補償手段をさらに備える。
【0037】
図1は第1の実施の形態に係る車両サスペンションシステムを等角図に示す。ガイド手段は、リジッドアーム9と協働する制御アーム2を備える。より具体的には、車両サスペンションシステムは、ヨーク3に旋回可能に取り付けられる少なくとも1つの制御アーム2を通じて車両シャーシ部4と接続される操舵ナックル1を備える。車両シャーシ部4は、車両シャーシの任意の部分であり、サスペンションシステムの取り付け箇所としての役割を果たす。好ましくは、車両シャーシ部4はシャーシの剛体部分、たとえば車両フレームである。操舵ナックル1は第1のボールジョイントによって制御アーム2と第1の接続箇所5で接続される。ヨーク3は制御アーム2と車両シャーシ部4との間の中間部材としての役割を果たす。好ましくは、第1の実施の形態で示されているように、サスペンションシステムは、それぞれのヨーク3を通じて操舵ナックル1を車両シャーシと接続し、かつ並行して動作する2つの制御アーム2を備える。ヨーク3は、当技術分野において知られている方式で、制御アーム2が車両シャーシ部4に対して旋回することを可能にする。また、ヨーク3は車両シャーシ部4に対して回転可能に取り付けられることで、ヨーク3は(したがって、制御アーム2も)車両シャーシ部4に対して軸Z2のまわりを回転することができる。言い換えると、制御アーム2は車両シャーシ部4に対して2つの自由度を有する。操舵ナックル1は剛体部材9を通じて車両シャーシ部4とさらに接続されている。操舵ナックル1の垂直位置はショックアブソーバ13を通じて制御される。ショックアブソーバ13は、操舵ナックル1と連結される第1の端部16と、第4の接続箇所15で車両シャーシ部4と接続される第2の端部17とを備える。車両シャーシ部4に対する接続箇所15の位置は、車輪14の垂直位置、またはショックアブソーバ13のバネ要素にかかる荷重に影響する。接続箇所15の位置は一定であってもよく、またサスペンションの収縮運動の際に車輪14が車両の長手方向軸Xに沿って変位するのと同じ方向に、軸Z2に対して変位してもよい。このような場合、サスペンションの収縮運動の際に、接続箇所15と接続箇所5との距離は減少する。これにより、ホイールベースの関連する変化によって引き起こされる重量分布の変化によるショックアブソーバの長さの減少が補償され、したがって、収縮の際および収縮後に車両のシャーシの垂直位置を維持することが可能になる。
【0038】
いくつかの実施の形態では、接続箇所15の垂直位置と水平位置との両方が移動可能であってもよく、車両のシャーシに対する操舵ナックル1および車輪14の適切な位置決めを実現し、かつ/またはショックアブソーバ13のバネ要素にかかる荷重を制御するために、専用の制御手段によって制御されてもよい。このような垂直および/または水平位置の制御は、たとえば、第1の実施の形態に関連して、また、さらなる実施の形態に関連して図4に示すように、旋回可能アーム18に作用する適切な制御手段を通じて実現することができる。
【0039】
図2は第1の実施の形態に係る車両サスペンションシステムを上面図に示し、図3は第1の実施の形態に係る車両サスペンションシステムを側面図に示す。操舵ナックル1は、第2の接続箇所7で第2のボールジョイントによって剛体部材9と接続されている。操舵ナックル1が軸Z1のまわりを回転することが可能になる。好ましくは、軸Z1は垂直車両軸に平行である。第2の接続箇所7と軸Z1とは距離Aだけ互いから離れている。
【0040】
剛体部材9は第3のボールジョイントによって第3の接続箇所8を通じて車両シャーシ部4に接続されている。第3の接続箇所8は、ある制御方式で回転軸Z1に対して位置決めされてよく、その結果、第3の接続箇所8の位置は、制御アーム2とともにヨーク3が軸Z1のまわりを回転する際に、車両シャーシに対する操舵ナックル1の角度位置を定める。したがって、操舵ナックル1に取り付けられた車輪14の車両シャーシに対する角度方向を輪距幅が変化する際に制御することができる。
【0041】
具体的には、接続箇所8の位置は一定であってもよく、接続箇所8と回転軸Z2との間の距離Bが、接続箇所7と軸Z1との間の距離Aに等しくてもよい。このような実施の形態では、軸Z2のまわりのヨーク3の回転と無関係に、車輪14の角度方向は一定のままであることになる。
【0042】
他の実施の形態では、車輪14の角度方向と軸Z2のまわりを回転するヨーク3の角度方向との間の所望の依存関係を実現するために、距離AおよびBならびに接続箇所7および8の位置を様々な異なる方式で調節してもよい。具体的には、ヨーク3の任意の与えられた角度方向に対して回転軸Z1のまわりの車輪14の所望のトー角を確保するために、接続箇所8が長手方向車両軸Xおよび/または横軸Yおよび/または垂直軸Zに平行に移動可能であることが可能であり、これにより、車両が移動する際に、車輪の主水平軸Y1のまわりを回転する車輪の側方反力によって軸Z2のまわりのヨークの回転がサポートされる。言い換えると、可動接続箇所7および/または8によって、第1の位置と第2の位置との間で操舵ナックル1を移動させることと、第1の位置と第2の位置との間での移動の際に車両シャーシ部4に対する操舵ナックル1の選択された角度方向をもたらすこととの両方がさらに補助される。
【0043】
本出願で言及されている任意のボールジョイントは、2つの平面内の動き/2つの軸のまわりの回転を可能にする任意のジョイント、好ましくは球形ジョイントとして理解されることになる。ハイムジョイント(ローズジョイント)を用いることもできる。
【0044】
図5は第2の実施の形態に係る車両サスペンションシステムを等角図に示す。この例では、制御アーム2とヨーク3とが1つしかなく、サスペンションはマクファーソンストラットの形式で実施される。ただし、残りの要素は第1の実施の形態に類似しており、それに応じて動作する。この例では、第2の端部17はヨーク3を通じて車両シャーシ部4と接続されている。第2の端部17は、ヨーク3に直接接続することも、図10に示されているようにアーム18を通じて接続することもできる。
【0045】
図6a、図6bは、サスペンションの広い構成(操舵ナックルの第1の位置)と狭い構成(操舵ナックルの第2の位置)との比較を示す。好ましくは、駆動手段は、ガイド手段が有する要素のうちの少なくとも1つを軸Z2のまわりに双方向に回転させるように適合されている駆動アセンブリを備える。この実施の形態では、これはネジ12に沿って移動するナット部11である。好ましくは、ネジ12またはナット部11は電気モータによって駆動される。この駆動アセンブリは、ヨーク3に旋回可能に取り付けられている接続部材10を引いたり押したりし、これにより、軸Z2のまわりのヨーク3の回転がもたらされ、この結果、第1の位置と第2の位置との間の変更がもたらされる。
【0046】
広い構成と狭い構成との間の変更は、車輪14を直接駆動する電気駆動装置を用いて行なうこともできる。
【0047】
図7および図8は駆動手段のさらなる例を示す。
【0048】
図7では、駆動アセンブリはレバーで作動する。対称的に配置された2つのコネクタを接続する要素20が傾斜レバー21の回転によって車両の前または後に変位する。傾斜レバー21はその第1の末端によって要素20に取り付けられている。傾斜レバー21は固定回転軸のまわりを回転する。レバー21の第2の末端に取り付けられているバー22の動きによってレバー21の回転がもたらされる。
【0049】
図8では、駆動アセンブリは、可動要素に直接取り付けられている電気モータ23によって作動させられるナット・ネジ・アセンブリを備える。
【0050】
図9は第3の実施の形態に係る車両サスペンションシステムを等角図に示す。この実施の形態では、サスペンションは、1つの制御アーム2(ウイッシュボーン)と、ウイッシュボーンに対して実質的に平行に位置するロッド24とを利用する。このようなマルチリンクサスペンションは軽量であり、製造するのが容易である。これにより、制動中および加速中に所望の値の独立したスクラブ半径およびめざましいピッチ補償を得ることが可能になる。固定箇所間で長い距離を保ちつつ、車輪から生じる力を本体に伝達することができる。サスペンションの撓みに応じて、好ましいトー角およびキャンバ角を得ることも可能である。
【0051】
図7図9に示されている実施の形態のいずれも、可動アーム18および可動接続箇所15なしで、すなわち、第1の実施の形態と同様に、固定接続箇所15を用いて実施することもできることに留意するべきである。
[項目1]
サスペンション手段を通じて車両シャーシ部と接続される操舵ナックルと、
第1の位置と第2の位置との間のアーチ形経路に沿った、前記車両シャーシ部に対する前記操舵ナックルの移動を可能にするように構成されているガイド手段と、
前記第1の位置と前記第2の位置との間の前記操舵ナックルの前記移動をもたらすように構成されている駆動手段と、
前記操舵ナックルの前記第1の位置と前記第2の位置との間で車両安定性の変化を補償するように構成されている安定性補償手段と、
を備え、
前記ガイド手段は、
少なくとも1つの制御アームであって、前記少なくとも1つの制御アームの第1の末端を用いて、第1の接続箇所で前記操舵ナックルに対して回転可能に接続され、かつ前記少なくとも1つの制御アームの第2の末端を用いてヨークに旋回可能に取り付けられ、前記ヨークは軸Z2のまわりをさらに回転可能であり、前記第1の接続箇所は垂直車両軸Zに平行な軸Z1上に位置する、少なくとも1つの制御アームと、
第2の接続箇所で前記操舵ナックルに回転可能に接続され、かつ第3の接続箇所で前記車両シャーシ部に回転可能に接続されるリジッドアームであって、前記第2の接続箇所は距離Aだけ前記軸Z1から離れており、前記第3の接続箇所は距離Bだけ前記軸Z2から離れており、前記距離Aおよび前記距離Bは、前記第1の位置と前記第2の位置との間での前記移動の際に前記車両シャーシ部に対する前記操舵ナックルの選択された角度方向をもたらすように選択される、リジッドアームと、
を有し、
前記安定性補償手段は、前記操舵ナックルと連結される第1の端部と、第4の接続箇所で前記車両シャーシ部と接続される第2の端部とを含むショックアブソーバをさらに有し、前記第2の端部は長手方向車両軸Xに沿って前記第1の端部に対して変位し、前記第4の接続箇所の位置は、前記第1の位置と前記第2の位置との間の前記操舵ナックルの位置の変化に関連する前記ショックアブソーバの長さの変化を補償する制御方式で前記車両シャーシ部に対して移動可能である、
車両サスペンションシステム。
[項目2]
前記駆動手段は、前記ガイド手段が有する要素のうちの少なくとも1つを前記軸Z2のまわりに双方向に回転させるように適合されている駆動アセンブリを有する、請求項1に記載の車両サスペンションシステム。
[項目3]
前記駆動アセンブリはナット・ネジ・アセンブリを有する、請求項2に記載の車両サスペンションシステム。
[項目4]
前記駆動アセンブリはレバーで作動する、請求項2に記載の車両サスペンションシステム。
[項目5]
前記距離Aおよび前記距離Bは一定である、請求項1に記載の車両サスペンションシステム。
[項目6]
前記第4の接続箇所は前記垂直車両軸Zに平行に移動可能である、請求項1に記載の車両サスペンションシステム。
[項目7]
前記軸Z2は垂直車両軸Zに平行である、請求項1に記載の車両サスペンションシステム。
[項目8]
前記第3の接続箇所は、ある制御方式で前記車両シャーシ部に対して移動可能である、請求項1~7のいずれか一項に記載の車両サスペンションシステム。
[項目9]
前記第3の接続箇所は前記長手方向車両軸Xまたは横軸Yまたは垂直軸Zに平行に移動可能である、請求項8に記載の車両サスペンションシステム。


図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10