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  • -吊りタイプの動物飼育ラック 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】吊りタイプの動物飼育ラック
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/03 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
A01K1/03 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018244073
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020103107
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000222956
【氏名又は名称】東洋熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】杉田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】内山 憲一
(72)【発明者】
【氏名】溝下 真治
(72)【発明者】
【氏名】柳原 茂
(72)【発明者】
【氏名】石野 史子
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-95004(JP,A)
【文献】特開2014-226086(JP,A)
【文献】登録実用新案第3022196(JP,U)
【文献】登録実用新案第3161514(JP,U)
【文献】特開平2-305507(JP,A)
【文献】国際公開第2014/181911(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00 - 1/035
A47B 55/00 - 55/06
A47F 7/00 - 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼育動物を収容するためのケージが収容されるべき棚空間と、
該棚空間の左右両側を塞ぐ側板と、
前記棚空間の上下両側を塞ぐ棚板と、
前記棚空間の後側を塞ぐ後板と、
前記棚空間の上側の前記棚板から下方に延びて前記ケージの上部を受容できる幅にて左右方向に複数配設されている仕切り板と、
該仕切り板から離間した位置にて前記後板から前方に向かって延び且つ前記ケージの鍔部が載置されるべき略棒形状のガイドレールとを備えたことを特徴とする吊りタイプの動物飼育ラック。
【請求項2】
前記ガイドレールは断面が円形状であることを特徴とする請求項1に記載の吊りタイプの動物飼育ラック。
【請求項3】
前記仕切り板を挟んで両側に配された前記ガイドレールはその前端側にて互いに連結されて平面視にて略U字形状の連結部を有し、
前記仕切り板は前側から後側に向けて切欠かれた溝を有し、
前記連結部は前記溝内にて保持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の吊りタイプの動物飼育ラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物を飼育しているケージが棚内に吊られて収容されている吊りタイプの動物飼育ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
動物飼育ラックとしては、陰圧一方向タイプと、給排気タイプのものが知られている(例えば特許文献1及び2参照)。これらはいずれもケージと称されるプラスティック容器内に飼育動物を収容し、このケージを複数収容する棚のようなものである。特許文献1に示す陰圧一方向タイプの動物飼育ラックは、棚の後面に備わる排気口からケージ内の空気を直接吸引することにより、棚に収容されているケージ内を陰圧とし、ケージ前面の開口部における気流を陰圧一方向流れに維持するものである。特許文献2に示す給排気タイプの動物飼育ラックは、棚の前面から給気された空気の一部をケージ内に吹き込み、吹き込んだ空気を背面から押し出してケージ内を換気するとともに、ケージ内を微陽圧に維持することによりケージ周囲の空気がケージ内に流入することを防御するものである。ケージから押し出された空気は、ラック後面の排気チャンバに備わる排気口から中央に備えられた排気ファンにより吸引されて大気に排気される。どちらのタイプも、ケージ内の動物からの臭気やアレルギー性物質等を棚前面の室内に漏らすことなく、空調又は浄化された室内空気をケージ内に供給して実験動物を飼育するものである。
【0003】
また一方で、動物飼育ラックにはケージ収容方式として置きタイプと吊りタイプのものが知られている。吊りタイプは特許文献1に示すように、上側の棚板から奥行き方向のケージ両側に垂れ壁(仕切り板)を設け、この垂れ壁下端の係止片にケージの鍔部を引っかけるものである。この吊りタイプでは、ケージ下面は下側の棚板から離間している。吊りタイプの場合、ケージ上部の空間は左右方向にて仕切られているので、気流の制御がしやすいというメリットがある。置きタイプは特許文献3に示すように、下側の棚板にケージを載置してラック内に収容するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-95004号公報
【文献】特開平7-203794号公報
【文献】特開平8-228623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吊りタイプの場合、上述したように垂れ壁下端から横方に突出する係止片を設け、ここにケージの鍔部を引っかける構造となっており、このとき、鍔部の左右側面は垂れ壁に必ずしも密着しているわけではないので、鍔部の左右側面と垂れ壁との間には隙間が生じ、この隙間に対応した位置の係止片の全長に亘って餌屑や床敷粉末、動物由来の体毛等の塵埃が堆積する。このような係止片の上面に塵埃等が堆積すると、ケージを取り出した際には係止片を清掃する必要が生じ、その際はラックの奥まで手を伸ばして係止片の上面全長に亘って拭き取らなければならず、清掃作業性に問題があった。吊りタイプはケージの下側に隙間ができているため、棚板の清掃は置きタイプよりもやりやすい。したがって係止片の清掃作業性が向上すれば、吊りタイプの清掃は格段にやりやすくなる。
【0006】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、吊りタイプのラックであってもケージを引っかける部分に塵埃等が堆積することを防止し、清掃作業性を格段に高めることができる吊りタイプの動物飼育ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明では、飼育動物を収容するためのケージが収容されるべき棚空間と、該棚空間の左右両側を塞ぐ側板と、前記棚空間の上下両側を塞ぐ棚板と、前記棚空間の後側を塞ぐ後板と、前記棚空間の上側の前記棚板から下方に延びて前記ケージの上部を受容できる幅にて左右方向に複数配設されている仕切り板と、該仕切り板から離間した位置にて前記後板から前方に向かって延び且つ前記ケージの鍔部が載置されるべき略棒形状のガイドレールとを備えたことを特徴とする吊りタイプの動物飼育ラックを提供する。
【0008】
好ましくは、前記ガイドレールは断面が円形状である。
【0009】
好ましくは、前記仕切り板を挟んで両側に配された前記ガイドレールはその前端側にて互いに連結されて平面視にて略U字形状の連結部を有し、前記仕切り板は前側から後側に向けて切欠かれた溝を有し、前記連結部は前記溝内にて保持されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケージの鍔部が載置されるガイドレールと仕切り板とは離間しているので、ケージ上部の空間に舞い上がる塵埃等は仕切り板に沿ってこの離間した隙間からそのまま下側の棚板上に落下する。したがって仕切り板やガイドレール上に塵埃が堆積されることはなく、作業者は棚空間内の後方向に手を伸ばして清掃する必要がなくなる。このため、吊りタイプのラックであってもケージを引っかける部分に塵埃等が堆積することを防止し、清掃作業性を格段に高めることができる。
【0011】
また、ガイドレールにはケージの鍔部が載置されるので塵埃等が堆積することはないが、万が一、鍔部がずれる等してガイドレールの一部がむき出しになっていたとしても、ガイドレールの断面形状が円形状であるためその上面に塵埃等が堆積しにくく、したがってガイドレール上への塵埃等の堆積を防止できる。また鍔部への接触面積を減少させることができるので(円形状の接点で接することになる)、ケージの着脱時の滑りが良くなり、操作が容易になる。
【0012】
また、ガイドレールに連結部を設けて2本のガイドレールを一体とすることで、強度を向上させることができる。またこの連結部を仕切り板前部の溝内に保持することで、ガイドレールが片持ちとなることを防止し、したがって長期間ケージの重量に耐えることができ、ラック全体としての長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る吊りタイプの動物飼育ラックの概略正面図である。
図2】ケージが棚空間内に収容されている状態の概略正面図である。
図3図2の概略側面図である。
図4】ガイドレールを上側から見たときの概略図である。
図5】仕切り板前部の、略U字形状の連結部を保持するための溝を示す概略図である。
図6】ストッパの別の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まずは本発明に係る動物飼育ラック1の構成について概略を説明する。図1図3に示すように、本発明に係る動物飼育ラック1は、例えばマウスやラット等の飼育動物(不図示)を収容するためのケージ2を複数収容するためのものである。このケージ2は、動物飼育ラック1の上下方向に複数並べて配設されている棚空間3内に収容される。棚空間3は前面が開口し、その左右両側を側板4で、上下両側を棚板5で、後側を後板6でそれぞれ塞がれている。別の言い方をすれば、棚板5は上下方向に隣り合う棚空間3を仕切って且つ間隔を存して上下方向に平行に配されている。そして、棚板5の左右両側は側板4にて塞がれている。ケージ2は棚空間の開口した前側から出し入れされる。
【0015】
棚空間3の後側には、後板6と一体となっている筐形状の排気チャンバ12が配設されている。後板6には、排気チャンバ12が各棚空間3と通じるように排気口13が開口して設けられている。この排気口13は、棚空間3の後側に位置して空気を吸引して排気チャンバ12に排気するためのものである。排気口13はそれぞれの棚空間3の後側の上部に左右方向に間隔を存して並べて複数個配設されている。なお、排気口13の入口側は除毛フィルタ等のフィルタ(不図示)にて覆われていてもよい。このフィルタにより飼育動物の体毛等が排気チャンバ12内に流入することを防止できる。
【0016】
棚空間3の上側の棚板5からは、仕切り板7が鉛直下方に延びるようにして形成されている。この仕切り板7は棚空間3の左右方向に対して間隔を存して複数配設されている。その間隔は、ケージ2の上部を受容できる幅、すなわちケージ2の左右方向の幅よりも幅広に設定されている。より具体的には、ケージ2にケージトップ9が取り付けられているときはケージトップ9よりも幅広に設定されている。これにより、ケージ2は左右の仕切り板7の間に収容可能である。ケージ2は上部が開口した容器形状であり、その開口周縁は外方に広がって鍔部8が形成されている。仕切り板7があることで、ケージ2の上部は上部棚板5、仕切り板7および後板6にて仕切られた状態となり、排気口13から吸引されることで、棚空間3内は陰圧一方向の気流が確保される。なお、ケージ2の上部には飼育動物の逃亡防止のための網形状のケージトップ9が取り付けられ、ケージ2の上側はこのケージトップ9にて覆われている。なお、ケージトップ9は金網形状にて全体を形成されているが、材質としては金属の他、樹脂を用いてもよい。しかしながら強度及びオートクレーブ滅菌時の耐熱性を考慮すると金属製が好ましい。
【0017】
仕切り板7からはケージストッパ14が突出して形成されている。このケージストッパ14はケージ2が不用意に、あるいは地震時に棚内から飛び出てしまうことを防止するためのものであり、ケージ2の鍔部8をラック1の前側から押えるためのものである。ケージ2を棚内に収容する際は、このケージストッパ14を鍔部8が乗り越えるようにして収容される。また、動物飼育ラック1にはキャスタ15が備わっている。このため、動物飼育ラック1は部屋のレイアウト変更等に応じて適宜移動可能である。また、動物飼育ラック1の下部には、キャスタ15の他に脚部となる固定脚16も備わっている。この固定脚16は、上下方向に伸長可能なアジャスタ機構を有している。動物飼育ラック1の位置を固定する場合は、固定脚16をキャスタ15よりも下方向に長くすればよい。
【0018】
また、図4を参照すれば明らかなように、後板6からは、前方に向かってガイドレール10が延びている。ガイドレール10は仕切り板7の左右両側に形成され、この仕切り板7に沿って延びている。このガイドレール10は略棒形状であり、鍔部13が載置されるべきものである。そして、ガイドレール10は仕切り板7から離間した位置に配され、したがってその間には隙間11が形成されている。ガイドレール10は金属製であり、後板6にガイドレールの断面形状に対応した穴を開け、差し込んで固定される。
【0019】
上述した構成によれば、ケージ2の鍔部8が載置されるガイドレール10と仕切り板7とは離間し、隙間11が形成されているので、ケージ2上部の空間に舞い上がる塵埃等は仕切り板7に沿ってこの離間した隙間11からそのまま下側の棚板5上に落下する。したがって仕切り板7の一部やガイドレール10上に塵埃が堆積されることはなく、作業者は棚空間3内の後方向に手を伸ばして清掃する必要がなくなる。このため、吊りタイプのラック1であってもケージ2を引っかける部分に塵埃等が堆積することを防止し、清掃作業性を格段に高めることができる。なお、塵埃等が鍔部8やケージトップ9上に堆積したとしても、これらの塵埃等はケージ2を棚空間3から出してしまえば容易に手元にて清掃することができるので、清掃作業性に影響を与えることはない。また、塵埃等が棚板5の上面に堆積したとしても、ケージ2は吊られているので棚板5の上面には遮るものが何もなく、作業者は容易に拭き取り作業をすることができる。この観点からも、塵埃等が隙間11から落下したとしても清掃作業に影響を与えることはない。
【0020】
ガイドレール10の断面は円形状である。ガイドレールにはケージの鍔部が載置されるので塵埃等が堆積することはないが、万が一、鍔部がずれる等してガイドレールの一部がむき出しになっていたとしても、ガイドレールの断面形状が円形状であるため、その上面に塵埃等が堆積しにくくなる。したがってガイドレール10上への塵埃等の堆積を防止できる。このような観点から、断面形状は楕円でも真円でもよいが、塵埃が上面を滑って落下されやすいことから真円形状が好ましい。またガイドレール10の断面を円形状とすることで、ケージ2が載置された際に鍔部8への接触面積を減少させることができるので(円形状の接点で接することになる)、ケージ2の着脱時の滑りが良くなり、操作が容易になる。
【0021】
また、仕切り板7を挟んで両側に配されたガイドレール10は、その前端側にて互いに連結部17にて連結されている。連結部17は平面視にて略U字形状に湾曲しているので、ガイドレール10は全体として略U字形状となっている。このようにガイドレール10に連結部17を設けて2本のガイドレール10を一体とすることで、強度を向上させることができる。そして、図5に示すように、仕切り板7には溝18が形成されている。この溝18は、仕切り板7の前側から後側に向けて、すなわち前端面を切欠いて形成されている。上述した連結部17は、この溝18内にて保持されている。なお、溝18の前端には下側から突出した係止片21が備わり、ガイドレール10の飛び出しを防止している。このように、連結部17を仕切り板7の溝18内に保持することで、ガイドレール10が片持ちとなることを防止できる。このため、長期間ケージ2の重量に耐えることができ、ラック1全体としての長寿命化を図ることができる。
【0022】
なお、図3を参照すれば明らかなように、ケージ2の前後方向の位置決めは、後板6に形成されたストッパ19にて行われる。ストッパ19はケージトップ9が当接する高さに形成され、後板6から前方に突出し、ここにケージトップ9が当接することで前後方向の位置決めがなされる。ストッパ19はその上部がカバー部20として形成されている。カバー部20はその上面が前方にいくに従って下側に傾斜する傾斜面として形成されている。このようにストッパ19にカバー部20を設けることで、ストッパ19に塵埃等が堆積することを防止できる。すなわち、カバー部20の傾斜面により塵埃等はここに溜まり難く、上面を滑り落ち易い。カバー部20は少なくとも鍔部8の上方まで延びている。カバー部20の上面を滑り落ちた塵埃等は、鍔部8か、あるいはケージ2内に落下する。したがって清掃のためにストッパ19(カバー部20)は拭き取り易くなるとともに、棚板5への落下も防止して清掃作業性を格段に向上させることができる。
【0023】
ただ、上述したように、棚板5の拭き取り作業はそれほど大変なものではない。したがって図6に示すように積極的に棚板5に塵埃等を落下させるような構造としてもよい。図6の例では、ストッパ19のカバー部20は鍔部8の上方まで延びずに、ケージトップ9に当接する位置の鉛直上方までしか延びていない。この位置まではカバー部20の上面は前側に向けて下方に傾斜している。このような構成とすれば、カバー部20上面を滑り落ちる塵埃等は鍔部8に落下せずにケージ2とストッパ19との間の隙間から棚板5上に落下する。このようにストッパ19のカバー部20の突出長さを変更することで、塵埃等をケージ2内や鍔部8に落下させるか、あるいは棚板5上に落下させるかを選択することができる。どちらを採用しても、カバー部20の上面が傾斜しているのでここへの塵埃等の堆積は少なくなり、清掃作業性は向上する。
【符号の説明】
【0024】
1:動物飼育ラック、2:ケージ、3:棚空間、4:側板、5:棚板、6:後板、7:仕切り板、8:鍔部、9:ケージトップ、10:ガイドレール、11:隙間、12:排気チャンバ、13:排気口、14:ケージストッパ、15:キャスタ、16:固定脚、17:連結部、18:溝、19:ストッパ、20:カバー部、21:係止片
図1
図2
図3
図4
図5
図6