(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】液晶表示装置及び液晶表装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20220621BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G02F1/1337 520
G02F1/1343
(21)【出願番号】P 2017036775
(22)【出願日】2017-02-28
【審査請求日】2020-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120363
【氏名又は名称】久保田 智樹
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 治
(72)【発明者】
【氏名】安達 勲
(72)【発明者】
【氏名】河村 丞治
(72)【発明者】
【氏名】前田 強
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-105084(JP,A)
【文献】特開2002-287151(JP,A)
【文献】特開2001-318381(JP,A)
【文献】特開2005-208309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/1343
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板に対向する第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板とに挟まれた液晶層と、
前記第1の基板の前記液晶層側の面上に形成され、前記第1の基板と水平な面内に電界を形成可能に構成された複数の電極と、
前記複数の電極の直上に形成された第1の配向膜と、
前記複数の電極の間の前記第1の基板上に形成された第2の配向膜と、
前記第2の基板の前記液晶層側に形成された第3の配向膜と、
前記複数の電極間の前記第1の基板と前記第2の配向膜との間に形成された下地膜とを有し、
前記第1の配向膜のアンカリングエネルギーが、前記第2及び第3の配向膜のアンカリングエネルギーよりも小さく、
前記第2の配向膜が、前記第1の配向膜よりも前記複数の電極間の前記第1の基板上の領域との親和性が高く、
前記第2の配向膜が、前記第1の配向膜よりも前記下地膜との親和性が高いことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第2の配向膜が、前記複数の電極の間の前記第1の基板上に選択的に形成された重合相分離膜からなることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記下地膜が、未露光の感光性樹脂膜からなることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第1の配向膜が、露光された前記感光性樹脂膜からなることを特徴とする請求項3記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記複数の電極が、それぞれ線状電極であり、櫛歯電極を構成することを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1の配向膜のアンカリングエネルギーが、10
-6J/m
2以下であることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第2の配向膜のアンカリングエネルギーが、前記第3の配向膜のアンカリングエネルギーと等しいことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記複数の電極の主材料が、ITO、IZO、AZO、GZO及びATOのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
第1の基板と;前記第1の基板に対向する第2の基板と;前記第1の基板と前記第2の基板とに挟まれた液晶層と;前記第1の基板の前記液晶層側の面上に形成され、前記第1の基板と水平な面内に電界を形成可能に構成された複数の電極と;前記複数の電極の直上に形成された第1の配向膜と;前記複数の電極の間の前記第1の基板上に形成された第2の配向膜と;前記第2の基板の前記液晶層側に形成された第3の配向膜とを有し、前記第1の配向膜のアンカリングエネルギーが、前記第2及び第3の配向膜のアンカリングエネルギーよりも小さい液晶表示装置の製造方法であって、
前記第1の基板上に、前記複数の電極を形成する工程と、
前記複数の電極の直上に、前記複数の電極間の前記第1の基板上の領域よりも、光重合性材料との親和性が低い前記第1の配向膜を形成する工程と、
前記第1の基板と、前記第3の配向膜が形成された前記第2の基板との間に、液晶材料中に前記光重合性材料が混合された前記液晶層を挟む工程と、
光照射により前記液晶層中の前記光重合性材料を重合相分離させることにより、前記光重合性材料が重合相分離してなる重合相分離膜からなる前記第2の配向膜を前記複数の電極間の前記第1の基板上に選択的に形成する工程と
を有し、
前記第1の配向膜を形成する工程は、
前記第1の基板上及び前記複数の電極上に感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記複数の電極の直上の前記感光性樹脂膜を選択的に露光することにより、前記複数の電極間の前記第1の基板上に未露光の前記感光性樹脂膜からなる下地膜を形成するとともに、前記複数の電極の直上に、前記下地膜よりも前記光重合性材料との親和性が低い前記感光性樹脂膜からなる前記第1の配向膜を形成する工程とを有することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記光重合性材料が、紫外線重合性モノマーであることを特徴とする請求項
9に記載の液晶表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置及び液晶表装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの表示方式として、ガラス基板に形成された電極に電圧を印加して基板面と水平な方向の電界を形成することにより表示を制御するIPS(In-Plane Switching)方式が知られている。IPS方式では、液晶パネルの視野角方向によらず見かけの液晶分子の長さ(屈折率楕円体)がほぼ一定となるため視野角特性に優れる。
【0003】
液晶パネルでは、電界が印加されていない状態において液晶分子が所定の方向に沿って配向されるように、液晶分子の配向方向が強制されている。IPS方式の液晶パネルにおいて液晶分子の配向方向を強制するための方法としては、ラビング法、光配向法等が知られている。ラビング法は、基板上にポリイミド等からなる配向膜を形成し、その配向膜の表面を布で擦るものである。光配向法は、ポリイミド膜等からなる配向膜の表面に対して直線偏光の紫外線を照射することにより、配向膜の表面に異方性を持たせるものである。従来のIPS方式の液晶パネルにおいては、液晶組成物を挟持する一対の基板の内側のそれぞれに配向膜が形成される(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるような従来のIPS方式の液晶パネルでは、液晶層を挟持する一対の基板にそれぞれ形成された配向膜の配向方向に微妙なずれが生じることがある。配向膜の配向方向のずれは、例えば、ラビング処理の際のずれや、両基板の貼り合わせの際のずれに起因する。このような配向方向のずれが存在すると、電圧オフ時にも液晶層の液晶分子に微小なツイストが生じる。電源オフ時の液晶分子の微小なツイストは、黒表示での光漏れの原因となり、コントラスト比の低下を招く。また、従来のIPS方式の液晶パネルでは、基板面と水平な方向の横電界を形成するための櫛歯電極上には、電圧オン時に基板面に垂直な方向の縦電界が形成される。このため、液晶分子が横方向に十分にツイストせず、その結果、櫛歯電極上での光の透過が困難となり、液晶パネルの光透過率が低下することになる。すなわち、液晶パネルの開口率が低下することになる。
【0005】
そこで、特許文献2には、対向配置された一方の基板に弱アンカリング配向膜が形成され、他方の基板に強アンカリング配向膜が形成された液晶パネルが提案されている。特許文献2に記載された液晶パネルにおいて、弱アンカリング配向膜は、電界を印加したときの液晶分子の配向方向を拘束する拘束力が、強アンカリング配向膜よりも小さくなっている。このような構成により、特許文献2に記載された液晶パネルでは、光透過率の高い表示が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第2940354号公報
【文献】特開2016-170389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載された液晶パネルでは、対向配置された一方の基板に形成された弱アンカリング配向膜の全域でアンカリングエネルギーが小さくなっているため、電圧オフ時の復元力が弱くなっている。このため、電圧オフ時の応答性が低下し、電圧オフ時の応答時間(ターンオフ時間)τoffが長くなる。
【0008】
本発明は、光透過率及びコントラスト比を向上しつつ、電圧オフ時の応答性を改善することができる液晶表示装置を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような液晶表示装置を工程の複雑化を伴うことなく容易に製造することができる液晶表示装置の製造方法を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、第1の基板と、前記第1の基板に対向する第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板とに挟まれた液晶層と、前記第1の基板の前記液晶層側の面上に形成され、前記第1の基板と水平な面内に電界を形成可能に構成された複数の電極と、前記複数の電極の直上に形成された第1の配向膜と、前記複数の電極の間の前記第1の基板上に形成された第2の配向膜と、前記第2の基板の前記液晶層側に形成された第3の配向膜とを有し、前記第1の配向膜のアンカリングエネルギーが、前記第2及び第3の配向膜のアンカリングエネルギーよりも小さく、前記第2の配向膜が、前記第1の配向膜よりも前記複数の電極間の前記第1の基板上の領域との親和性が高いことを特徴とする液晶表示装置が提供される。
【0010】
本発明の他の観点によれば、第1の基板と;前記第1の基板に対向する第2の基板と;前記第1の基板と前記第2の基板とに挟まれた液晶層と;前記第1の基板の前記液晶層側の面上に形成され、前記第1の基板と水平な面内に電界を形成可能に構成された複数の電極と;前記複数の電極の直上に形成された第1の配向膜と;前記複数の電極の間の前記第1の基板上に形成された第2の配向膜と;前記第2の基板の前記液晶層側に形成された第3の配向膜とを有し、前記第1の配向膜のアンカリングエネルギーが、前記第2及び第3の配向膜のアンカリングエネルギーよりも小さい液晶表示装置の製造方法であって、前記第1の基板上に、前記複数の電極を形成する工程と、前記複数の電極の直上に、前記複数の電極間の前記第1の基板上の領域よりも、光重合性材料との親和性が低い前記第1の配向膜を形成する工程と、前記第1の基板と、前記第3の配向膜が形成された前記第2の基板との間に、液晶材料中に前記光重合性材料が混合された前記液晶層を挟む工程と、光照射により前記液晶層中の前記光重合性材料を重合相分離させることにより、前記光重合性材料が重合相分離してなる重合相分離膜からなる前記第2の配向膜を前記複数の電極間の前記第1の基板上に選択的に形成する工程とを有することを特徴とする液晶表示装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液晶表示装置において、光透過率を向上しつつ、電圧オフ時の応答性を改善することができる。また、本発明によれば、光透過率を向上しつつ、電圧オフ時の応答性を改善することができる液晶表示装置を工程の複雑化を伴うことなく容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による誘電率異方性が正(ポジ型)の液晶を用いた場合の液晶表示装置の構造を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による誘電率異方性が正(ポジ型)の液晶を用いた場合の液晶表示装置の電圧オフ時及び電圧オン時の液晶層における液晶分子の配向状態を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による液晶表示装置の製造方法を示す工程断面図(その1)ある。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態による液晶表示装置の製造方法を示す工程断面図(その2)ある。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態による液晶表示装置の製造方法を示す工程断面図(その3)ある。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態による液晶表示装置の製造方法を示す工程断面図(その4)ある。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態の変形例による誘電率異方性が正(ポジ型)の液晶を用いた場合の液晶表示装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[一実施形態]
本発明の一実施形態による液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法について
図1乃至
図6を用いて説明する。
【0014】
まず、本実施形態による液晶表示装置の構造について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、本実施形態による液晶表示装置の構造を示す断面図である。
図2は、本実施形態による液晶表示装置の電圧オフ時及び電圧オン時の液晶層における液晶分子の配向状態を模式的に示す断面図である。なお、
図1及び
図2は、ポジ型の液晶材料を用いて液晶層を構成した場合を例示している。
【0015】
本実施形態による液晶表示装置は、IPS方式の液晶パネルを有し、基板面と水平な方向の電界を形成することにより表示を制御するものである。
図1に示すように、本実施形態による液晶表示装置10は、IPS方式の液晶パネル12と、バックライトユニット14とを有している。
【0016】
液晶パネル12は、対向するように配置された一対の基板16、18を有している。基板16、18は、液晶層20を挟むように対向して配置されている。基板16、18は、画素を含む表示領域の周縁部に配されたシール材22により所定の間隔を空けて互いに貼り合わされている。シール材22により基板16、18の間に液晶層20を構成する液晶が封止されている。基板16、18は、それぞれ透光性を有する基板であれば特にその材料が限定されるものではないが、例えばガラス基板である。また、液晶層20を構成する液晶材料としては、例えば、誘電率異方性が正のネマティック液晶材料を用いることができ、また、誘電率異方性が負のネマティック液晶材料を用いることもできる。なお、
図1では、後述の線状電極24に対する電圧オフ時の液晶層20における液晶分子202を模式的に示している。
【0017】
例えば、基板16は、画素をスイッチングするための薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、TFT)、ゲートライン、ソースライン等が形成されたTFT基板になっている。基板18は、カラーフィルタ(Color Filter、CF)が形成されたCF基板になっている。
【0018】
基板16、18のうち、バックライトユニット14側の基板16の液晶層20側の面上には、複数の線状電極24が形成されている。複数の線状電極24は、互いに所定の間隔を空けて平行に配置されており、櫛歯電極を構成している。より具体的には、複数の線状電極24は、櫛歯状の画素電極及び櫛歯状の共通電極を構成している。
図1は、線状電極24の長手方向に直交する断面を示している。複数の線状電極24は、液晶層20と基板16の基板面と水平な方向の電界を形成可能、すなわち基板16と水平な面内に電界を形成可能に構成されている。
【0019】
線状電極24は、例えば88%の高い光透過率Tを有するITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極である。なお、線状電極24の主材料は、ITOに限定されるものではない。線状電極24は、透明導電膜又は高い光透過率を有する導電膜であることが望ましい。線状電極24の主材料としては、ITOの代わりに、例えば、IZO(Indium Zinc Oxide、T=85%)、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide、T=92%)を用いることができる。また、GZO(Gallium doped Zinc Oxide、T=92%)、ATO(Antimony Tin Oxide、T=87%)等を用いることもできる。
【0020】
液晶表示装置10の制御部(図示せず)は、基板16の線状電極24に電圧を印加して基板16の基板面と水平な方向の電界を形成して液晶層20の液晶分子を回転させることにより、液晶パネル12の表示を制御する。
【0021】
液晶パネル12には、基板16、18を挟み込むように、偏光板28、30が外側のそれぞれの面に設けられている。偏光板28、30の偏光軸の向きは、線状電極24に電圧が印加されたときにバックライトユニット14から照明される光が通過するように設定されている。例えば、偏光板28、30の偏光軸の向きは互いに直交している。なお、偏光板28、30の偏光軸の向きは、線状電極24に電圧が印加されたときにバックライトユニット14から照明される光が遮断されるように設定されていてもよい。
【0022】
基板18の液晶層20側の面には、液晶層20の全面にわたって、配向膜として、強アンカリング膜32が形成されている。強アンカリング膜32は、例えば、ラビング法による配向処理が行われたポリイミド膜からなるものである。強アンカリング膜32は、後述の基板16側の強アンカリング膜36とともに、線状電極24に対する電圧オフ時の液晶層20の液晶分子の配向を揃える。電圧オフ時の液晶層20の液晶分子の配向方向は、例えば、線状電極24の長手方向に沿った方向又は線状電極24の長手方向に対して所定の角度をなす方向である。
【0023】
一方、基板16と液晶層20との間において、基板16上に形成された複数の線状電極24の上には、配向膜として、弱アンカリング膜34が形成されている。弱アンカリング膜34は、複数の線状電極24の直上に形成されている。弱アンカリング膜34は、基板18側の強アンカリング膜32及び以下に述べる強アンカリング膜36よりもアンカリングエネルギーが小さい配向膜である。なお、強アンカリング膜32、36、弱アンカリング膜34にいうアンカリングは方位角方向のアンカリングに関するものであり、アンカリングエネルギーの大小関係は方位角方向のアンカリングエネルギーに関する大小関係である。弱アンカリング膜34は、互いに平行に配置された複数の線状電極24のそれぞれの直上に形成されている。弱アンカリング膜34は、樹脂膜からなるものあり、より具体的には、後述するように露光された感光性樹脂膜56aからなるものである。弱アンカリング膜34は、複数の線状電極24の間の基板16上の領域、より具体的に以下に述べる下地膜38よりも、以下に述べる強アンカリング膜36及び強アンカリング膜36を構成する材料との親和性が低いものである。
【0024】
弱アンカリング膜34が上に形成された線状電極24の間の基板16上には、配向膜として、強アンカリング膜36が形成されている。強アンカリング膜36と基板16との間には、下地膜38が形成されている。強アンカリング膜36及び強アンカリング膜36を構成するUV重合性モノマーは、弱アンカリング膜34との親和性よりも、複数の線状電極24の間の基板16上の領域の下地膜38との親和性が高いものである。
【0025】
下地膜38は、樹脂膜からなるものであり、より具体的には、後述するように未露光の感光性樹脂膜56からなるものである。強アンカリング膜36は、下地膜38に接するように下地膜38上に直接形成されている。強アンカリング膜36のアンカリングエネルギーは、例えば、強アンカリング膜32のアンカリングエネルギーと同程度となっている。
【0026】
強アンカリング膜36は、後述するように、液晶層20を構成する液晶材料中に混合された光重合性モノマーであるUV重合性モノマーが重合相分離してなる重合相分離膜からなるものである。複数の線状電極24の間の基板16上には、上述のように下地膜38が形成されている。強アンカリング膜36及びその材料となるUV重合性モノマーは、弱アンカリング膜34との親和性よりも下地膜38との親和性が高い。このため、強アンカリング膜36は、下地膜38上に選択的に形成されており、弱アンカリング膜34上には形成されていない。
【0027】
強アンカリング膜36を構成するUV重合性モノマーである重合性液晶は、液晶材料の中に混合されており、セルに注入後は、液晶材料と同様、基板18側の強アンカリング膜32の配向規制力により一定方向にホモジニアス配向している。
【0028】
セルにUVが照射されると、重合性液晶は重合を開始し、ある重合度に達した段階で液晶から相分離し始める。相分離した重合性液晶(液晶高分子)は、液晶層の配向乱れによるエネルギーの増加を最小限に抑えるために液晶/下地膜38界面に優先的に排出される。このとき、重合性液晶の重合物である液晶高分子は、周囲の液晶と同一の配向方向を維持したまま液晶/下地膜38界面に相分離し、下地膜38上には基板18上の強アンカリング膜32と同一方向に配向規制力を有する強アンカリング膜36が形成される。
【0029】
上述のように、基板18側では、配向膜として強アンカリング膜32が形成されている。一方、基板16側では、複数の線状電極24のそれぞれの直上に配向膜として弱アンカリング膜34が形成されている。また、基板16側では、複数の線上電極24間の基板16上に配向膜として強アンカリング膜36が形成されている。
【0030】
弱アンカリング膜34のアンカリングエネルギーは、強アンカリング膜32、36のアンカリングエネルギーよりも小さく、好ましくは10-6J/m2以下である。強アンカリング膜32、36のアンカリングエネルギーは、弱アンカリング膜34のアンカリングエネルギーよりも大きく、好ましくは10-4J/m2以上である。
【0031】
基板18と強アンカリング膜32との間には、カラーフィルタ40が設けられている。カラーフィルタ40は、カラーレジストのR(赤)/G(緑)/B(青)の3原色のパターン、ブラックマトリックス、保護膜等により構成され、バックライトユニット14から照明される光のうちR/G/Bの3原色の波長域の光を通過させる。
【0032】
バックライトユニット14は、液晶パネル12を照明する光を発する照明装置である。バックライトユニット14は、エッジライト方式であってもよいし、直下型方式であってもよい。なお、バックライトユニット14と液晶パネル12との間には、光拡散シートやプリズムシートが配置されていてもよい。
【0033】
本実施形態による液晶表示装置10は、基板16の基板面と水平な方向の横電界を形成し、液晶分子を液晶層20の面内で回転させて表示を制御するIPS方式のものである。しかし、仮に、上記の構成において、前述の特許文献1に記載される従来の構成のように線状電極24の直上を含む基板16側の全面に強アンカリング膜を形成した場合、線状電極24の直上の液晶分子を十分に回転させることができない。これは、電界を形成するための線状電極24の直上における電界の基板面に水平方向の成分が、強アンカリング膜の束縛に打ち勝って液晶分子を回転させることができる程に大きくないためである。したがって、この場合、白表示における光透過率が低下してしまう。
【0034】
一方、仮に、上記の構成において、前述の特許文献2に記載される従来の構成のように基板16側の全面に弱アンカリング膜を形成した場合、基板16側の配向規制力を弱めることで、高い光透過率を実現して白表示における十分な光透過率を確保しうる。しかしながら、この場合、線状電極24に対する電圧オフ時における液晶分子の復元力が低下するため、電圧オフ時の応答性が低下し、電圧オフ時の応答時間τoffが長くなる。
【0035】
上記従来の構成に対して、本実施形態による液晶表示装置10では、複数の線状電極24のそれぞれの直上に、アンカリングエネルギーが比較的に小さい弱アンカリング膜34が形成されている。弱アンカリング膜34が形成された線状電極24上では、強アンカリング膜36が形成された領域と比較して配向規制力が弱くなっている。このため、本実施形態による液晶表示装置10では、電界の横方向成分が小さい場合であっても、線状電極24の直上の液晶分子が回転するため、その線状電極24の直上においても十分な光透過率を確保することができる。これにより、本実施形態による液晶表示装置10は、光透過率を向上することができる。
【0036】
図2(a)は、線状電極24に対する電圧オフ時の液晶表示装置10の液晶層20における液晶分子202の配向状態を模式的に示している。
図2(a)に示す電圧オフ時において、液晶分子202は、
図2(a)の紙面裏面から紙面表面に向かう方向に沿って配向している。
【0037】
一方、
図2(b)は、線状電極24に対する電圧オン時の液晶表示装置10の液晶層20における液晶分子202の配向状態を模式的に示している。
図2(b)に示す電圧オン時において、液晶分子202は、線状電極24の直上に弱アンカリング膜34が形成されているため、液晶層20の面内で十分に回転している。このため、液晶表示装置10では、電圧オン時の光透過率を向上することができる。
【0038】
また、弱アンカリング膜34が形成されていることにより、線状電極24の直上では、基板16側での液晶分子の配向方向と基板18側での液晶分子の配向方向のずれによる電圧オフ時の液晶分子の微小ツイストを抑制することができる。これにより、黒輝度を低減することができ、光透過率の向上と相俟って、コントラスト比を向上することができる。
【0039】
さらに、本実施形態による液晶表示装置10では、線状電極24の間の基板16上に、強アンカリング膜36が形成されている。このように複数の線状電極24のそれぞれの直上以外の領域にアンカリングエネルギーが比較的に大きい強アンカリング膜36が形成されていることで、線状電極24に対する電圧オフ時における液晶分子の復元力はほとんど低下しない。したがって、本実施形態による液晶表示装置10は、特許文献2に記載されるように基板16側の全面に弱アンカリング膜が形成された従来の構成と比較して、電圧オフ時の液晶表示の応答性を改善することができ、電圧オフ時の応答時間τoffを短縮することができる。また、線状電極24間に形成された強アンカリング膜36は、基板18上の強アンカリング膜32と同一方向に配向規制力を有するため、 基板16側での液晶分子の配向方向と基板18側での液晶分子の配向方向のずれによる電圧オフ時の液晶分子の微小ツイストを抑制することができる。これにより、黒輝度を低減することができ、コントラスト比を向上することができる。
【0040】
また、後述するように、強アンカリング膜36は、インクジェット法等の特別の方法を用いることなく、液晶層20を構成する液晶材料に混合されたUV重合性モノマーの重合相分離により形成することができる。したがって、本実施形態による液晶表示装置10は、工程の複雑化を伴うことなく容易に製造することができる。
【0041】
こうして、本実施形態による液晶表示装置10は、光透過率及びコントラスト比を向上しつつ、電圧オフ時の応答性を改善することができ、液晶表示の明るさと応答性とを両立することができる。
【0042】
次に、本実施形態による液晶表示装置の製造方法について
図3乃至
図6を用いて説明する。
図2乃至
図6は、本実施形態による液晶表示装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0043】
まず、基板16の液晶層20側となる面上に、基板16の基板面と水平な方向に電界(横電界)を形成するための櫛歯電極として、例えばITOからなる透明導電膜50を形成する(
図3(a))。なお、基板16には、画素をスイッチングするためのTFT、ゲートライン、ソースライン等が形成されている。
【0044】
次いで、透明導電膜50上に、例えばスピンコート法によりネガ型のフォトレジスト材料を塗布してプリベークを行い、フォトレジスト膜52を形成する(
図3(b))。
【0045】
次いで、マスク54を用い、フォトレジスト膜52にマスク54のマスクパターンを露光する(
図3(c))。マスク54は、マスクパターンとして、複数の線状電極24のパターン542を有している。なお、露光光としては、フォトレジスト膜52の種類に応じて紫外光等を選択することができる。こうして、マスク54を用いた露光により、フォトレジスト膜52のうちのフォトレジスト膜52aにパターン542が露光される。
【0046】
次いで、フォトレジスト膜52を現像して未露光のフォトレジスト膜52を除去し、その後、ポストベークを行う。これにより、透明導電膜50上に、フォトレジスト膜52aが形成される(
図4(a))
【0047】
次いで、フォトレジスト膜52aをマスクとして、例えばウェットエッチングにより、透明導電膜50をエッチングしてパターニングする。これにより、透明導電膜50からなる複数の線状電極24を形成する(
図4(b))。
【0048】
次いで、例えば剥離液中に浸漬させたりすることにより、線状電極24上のフォトレジスト膜52aを除去する(
図4(c))。
【0049】
次いで、線状電極24上及び線状電極24の間の基板16上に、例えばスピンコート法により、感光性樹脂材料を塗布してプリベークを行い、感光性樹脂膜56を形成する(
図5(a))。感光性樹脂56は、露光された結果、アンカリングエネルギーが低下し、弱アンカリング材となるとともに、強アンカリング膜36及び強アンカリング膜36を構成する材料であるUV重合性モノマーとの親和性が低下するように設計されている。
【0050】
次いで、
図3(c)に示すフォトレジスト膜52の露光に用いたマスク54と同一のマスク54を用い、感光性樹脂膜56のうち、線状電極24上の感光性樹脂膜56aを選択的に露光する(
図5(b))。この際、線状電極24の間の基板16上の感光性樹脂膜56は、露光されずに未露光のままとなる。
【0051】
線状電極24上の感光性樹脂膜56aは、露光された結果、アンカリングエネルギーが低下し、弱アンカリング材となるとともに、強アンカリング膜36及び強アンカリング膜36を構成する材料であるUV重合性モノマーとの親和性が低下する。この結果、複数の線状電極24の間の基板16上の未露光の感光性樹脂膜56は、線状電極24上の感光性樹脂膜56aよりも、強アンカリング膜36及び強アンカリング膜36を構成する材料であるUV重合性モノマーとの親和性が高くなる。
【0052】
こうして、複数の線状電極24のそれぞれの直上に、露光された感光性樹脂膜56aからなる弱アンカリング膜34が形成されるとともに、線状電極24の間の基板16上に、未露光の感光性樹脂膜56からなる下地膜38が形成される(
図5(c))。下地膜38は、
図5(b)に示す露光の結果、線状電極24上の弱アンカリング膜34よりも、強アンカリング膜36及び強アンカリング膜36を構成する材料であるUV重合性モノマーとの親和性が高くなっている。すなわち、弱アンカリング膜34は、下地膜38よりも、強アンカリング膜36及びこれを構成する材料との親和性が低くなっている。
【0053】
一方、基板18上には、カラーフィルタ40を形成する。続いて、カラーフィルタ40上に、ポリイミド膜を形成する。続いて、ポリイミド膜に対して、例えば、ラビング法、光配向法等による配向処理を行う。こうして、カラーフィルタ40上に、ポリイミド膜からなる強アンカリング膜32を形成する(
図5(c))。
【0054】
次いで、以下のようにして、ODF(One Drop Fill)法により基板16、18間に液晶層20を封止するとともに、強アンカリング膜36を下地膜38上に選択的に形成する。
【0055】
まず、表示領域の周縁部における基板16、18のうちの一方の上に、紫外線硬化性樹脂からなるシール材22を塗布する。続いて、シール材22を塗布した基板16、18のうちの一方の上に液晶材料を滴下する。ここで、滴下する液晶材料には、強アンカリング膜36を構成する材料であるUV重合性モノマーを混合しておく。続いて、液晶材料が滴下された基板16、18のうちの一方と、基板16、18のうちの他方とをシール材22により貼り合わせる(
図6(a))。基板16、18間には、滴下した液晶材料からなる液晶層20が形成される。液晶層20中には、液晶分子202とともにUV重合性モノマー362が含まれている。
【0056】
基板16と基板18とを貼り合わせた
図6(a)に示す状態において、液晶層20における液晶分子202は、基板18側の強アンカリング膜32の配向規制力により、線状電極24の長手方向に沿って一軸配向する。液晶材料に混合されたUV重合性モノマー362も、液晶分子202が一軸配向する配向方向に沿って配向する。
【0057】
続いて、紫外光を照射することにより、シール材22を硬化させる。また、シール材22を硬化させるための紫外線を照射することにより、液晶層20中の光重合性材料であるUV重合性モノマー362が重合相分離する。ここで、弱アンカリング膜34よりも下地膜38の方がUV重合性モノマー362との親和性が高くなっている。このため、UV重合性モノマー362が重合相分離した重合体は、複数の線状電極24の間の下地膜38上に密着する一方、複数の線状電極24上の弱アンカリング膜34には密着しない。また、UV重合性モノマー362は、液晶分子202が一軸配向する配向方向に沿って配向した状態で重合相分離する。このため、UV重合性モノマー362が重合相分離した重合体は、ラビング法等による配向処理を必要とすることなく、液晶分子202に対する強い配向規制力を有するものとなる。このようにして、紫外線照射により液晶層20中のUV重合性モノマー362が重合相分離してなる強アンカリング膜36が下地膜38上に選択的に形成される(
図6(b))。なお、UV重合性モノマー362を重合相分離させるための紫外線照射は、シール材22を硬化させるための紫外線照射とは別個に行うこともできる。
【0058】
こうして、ODF法により、液晶材料からなる液晶層20を挟むように基板16と基板18とを貼り合わせて基板16、18間に液晶層20を封止するとともに、強アンカリング膜36を下地膜38上に選択的に形成する。
【0059】
以後、通常のプロセスにより、基板16、18への偏光板28、30の貼り付け、ドライバICの実装、バックライトユニット14の配置等を行う。こうして、
図1に示す本実施形態による液晶表示装置10が製造される。
【0060】
このように、本実施形態では、UV重合性モノマー362の重合相分離により、複数の線状電極24の間の下地膜38上に強アンカリング膜36を選択的に形成する。したがって、本実施形態では、インクジェット法等の特別の方法を用いることなく、弱アンカリング膜34が直上に形成された複数の線状電極24の間に強アンカリング膜36を選択的に形成することができる。したがって、本実施形態によれば、工程の複雑化を伴うことなく、
図1に示す液晶表示装置10を容易に製造することができる。
【0061】
このように、本実施形態によれば、液晶表示装置10において、光透過率及びコントラスト比を向上しつつ、電圧オフ時の応答性を改善することができる。また、本実施形態によれば、光透過率及びコントラスト比を向上しつつ、電圧オフ時の応答性を改善することができる液晶表示装置10を工程の複雑化を伴うことなく容易に製造することができる。
【0062】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例による液晶表示装置について
図7を用いて説明する。
図7は、本実施形態の変形例による液晶表示装置の構造を示す断面図である。
【0063】
上記
図1に示す液晶表示装置10では、線状電極24の間の下地膜38上に強アンカリング膜36が選択的に形成されていたが、これに限定されるものではない。強アンカリング膜36は、下地膜38を介することなく直接、複数の線状電極24の間の基板16上に選択的に形成することもできる。
【0064】
図7に示す変形例による液晶表示装置100では、強アンカリング膜36が、下地膜38を介することなく直接、線状電極24の間の基板16上に選択的に形成されている。
【0065】
例えば線状電極24の間に形成されている無機絶縁膜や有機絶縁膜は、弱アンカリング膜34よりも、強アンカリング膜36を構成する材料であるUV重合性モノマー362との親和性が高い。したがって、
図6(a)に示す状態において下地膜38が形成されておらず、複数の線状電極24の間に基板16が露出している場合も、複数の線状電極24の間に強アンカリング膜36を選択的に形成することができる。すなわち、紫外線照射により重合相分離したUV重合性モノマー362の重合体は、複数の線状電極24の間の無機絶縁膜や有機絶縁膜に密着する一方、複数の線状電極24上の弱アンカリング膜34には密着しない。このようにして、紫外線照射により液晶層20中のUV重合性モノマー362が重合相分離してなる強アンカリング膜36が複数の線状電極24の間の基板16上に選択的に直接形成される。
【0066】
なお、線状電極24の間に下地膜38が形成されておらず、線状電極24の直上に弱アンカリング膜34が形成された状態の基板16は、例えば次のようにして用意することができる。すなわち、
図4(c)に示すように線状電極24を形成した後、例えばインクジェット法等により、弱アンカリング膜34を線状電極24の上に選択的に形成することができる。また、感光性樹脂膜56としてネガ型のレジスト膜を用い、
図5(b)に示すように感光性樹脂膜56aを露光した後、線状電極24の間の未露光の感光性樹脂膜56を現像により除去することもできる。なお、弱アンカリング膜34の線状電極24上への形成方法は、これに限定されるものではない。
【0067】
以後、
図5(c)、
図6(a)及び
図6(b)と同様の工程等を行うことにより、
図7に示す液晶表示装置100を製造することができる。
【0068】
(評価結果)
次に、本実施形態による液晶表示装置の評価結果について説明する。
【0069】
実施例1及び比較例1、2による液晶表示装置のそれぞれについて、シミュレーションを行い、最大透過率Tmax、コントラスト比CR、電圧オフ時の応答時間τoff等を計算した。各実施例及び比較例による液晶表示装置のセルの構成は、以下のとおりである。
【0070】
実施例1のセル構成は、
図1に示す液晶表示装置10のセルに対応し、基板16側において、線状電極24の直上に弱アンカリング膜34が設けられ、線状電極24の間に強アンカリング膜36が設けられたものである。櫛歯電極は、幅3μmの線状電極24を10μmの間隔で配置したものとした。
【0071】
比較例1のセル構成は、
図1に示す液晶表示装置10のセルにおいて、基板16側において弱アンカリング膜34及び強アンカリング膜36が設けられていることに代えて、基板16側の全面に強アンカリング膜が設けられたものである。
【0072】
比較例2の構成は、
図1に示す液晶表示装置10のセルにおいて、基板16側において弱アンカリング膜34及び強アンカリング膜36が設けられていることに代えて、基板16側の全面に弱アンカリング膜が設けられたものである。
【0073】
実施例1及び比較例1、2のそれぞれについて、閾値電圧Vth、最大透過率Tmaxを与える電圧Vmax、最小透過率T0、最大透過率Tmax、コントラスト比CR、電圧オフ時の応答時間τoffを表1に示す。なお、閾値電圧Vthは、Tmaxの2%に相当する透過率を実現する電圧V2%と定義する。また、比較例1、2の最小透過率T0には実測値を用いた。実施例1の最小透過率T0は原理的に比較例2の最小透過率T0と同一値になると考えられるため、実施例1の最小透過率T0には比較例1の最小透過率T0の実測値を用いた。
【0074】
【0075】
表1に示されるように、実施例1では、最大透過率Tmaxが、基板16側の全面に強アンカリング膜を形成した比較例1の1.25倍に向上されている。また、実施例1では、コントラスト比CRが、比較例1の1.6倍に向上されている。また、実施例1では、基板16側の全面に弱アンカリング膜を形成した比較例2と比較して、電圧オフ時の応答時間τoffが63%短縮されている。
【0076】
上記評価結果により、実施例1では、光透過率を向上するとともに、電圧オフ時の応答性を改善することができたことわかる。
【0077】
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず、種々の変形が可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態では、複数の線状電極24を形成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。複数の線状電極24に代えて、種々の形状を有する電極を形成することができる。
【0079】
また、上記実施形態では、強アンカリング膜32として、ポリイミド膜からなる配向膜を形成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。強アンカリング膜32として、種々の材料からなる配向膜を形成することができる。
【0080】
また、上記実施形態では、光重合性モノマーとしてUV重合性モノマー362を用いてその重合相分離により強アンカリング膜36を形成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。UV重合性モノマー362のほか、種々の光重合性モノマーを用いてその重合相分離により強アンカリング膜36を形成することができる。また、強アンカリング膜36を形成するための材料は、光照射により重合する光重合性材料であればよい。光重合性材料は、光重合性モノマーのほか、UV重合性オリゴマー等の光重合性オリゴマーであってもよい。
【符号の説明】
【0081】
10…液晶表示装置
12…液晶パネル
16…基板
18…基板
20…液晶層
24…線状電極
32…強アンカリング膜
34…弱アンカリング膜
36…強アンカリング膜
38…下地膜