(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】センサ装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20220621BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G06F3/041 512
G06F3/041 522
G06F3/044 120
(21)【出願番号】P 2017186422
(22)【出願日】2017-09-27
【審査請求日】2020-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120363
【氏名又は名称】久保田 智樹
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴之
(72)【発明者】
【氏名】中屋 秀雄
【審査官】木村 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-168121(JP,A)
【文献】特開2009-289235(JP,A)
【文献】特表2015-522893(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0147141(US,A1)
【文献】国際公開第2016/006396(WO,A1)
【文献】特開2013-045209(JP,A)
【文献】特開2016-091467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元状に複数のセンサが配置されたセンサアレイと、
複数の前記センサから信号を読み出す読み出し回路と、
前記読み出し回路を制御し、複数の前記センサから読み出した信号に基づいて、前記センサアレイの中の前記信号の変化が生じた位置座標を検出する制御演算部と、
を備え、前記制御演算部は、
前記センサアレイにおいて1次走査を行い、
前記1次走査で読み出された複数の信号に基づいて、前記位置座標が含まれる次の走査領域を設定し、
前記走査領域において前記1次走査よりも走査間隔が小さい2次走査を行い、
前記センサアレイの全領域又は前記走査領域において同時に読み出された複数の前記センサからの信号の平均を基準信号として算出し、
前記1次走査で読み出された信号と前記2次走査で読み出された基準信号とを比較し、ノイズレベルが所定値以上であるか否かを判定し、
前記ノイズレベルが所定値以上である場合、前記2次走査で読み出された信号を、前記基準信号を用いて補正し、
前記補正された信号に基づいて、前記位置座標を検出
し、
前記制御演算部は、
前記2次走査で読み出された複数の信号に基づいて、位置座標を含む第3の走査領域を設定し、
前記第3の走査領域において、前記第3の走査領域内の複数のセンサのすべてを順次走査する3次走査を実行するように構成される
センサ装置。
【請求項2】
前記制御演算部は、前記センサアレイの全領域又は前記走査領域に配置された複数の前記センサを加算して読み出し、読み出された信号の大きさを、読み出した前記センサの総数で除算して前記基準信号を算出する
請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記センサは、静電容量方式である
請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記制御演算部は、前記2次走査で読み出された複数の信号に基づいて、
【数1】
(ここで、Gは信号の変化が生じた重心であり、S(P
ij)は、座標P
ijに配置されたセンサーから読み取られた信号であり、P
ijは、i番目の行とj番目の列の座標である。Σは、スキャン領域内のすべての座標P
ijの合計である。)
の方程式に従って、前記信号の変化が生じた重心を算出する
請求項1から3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記制御演算部は、
前記センサアレイにおいて、行及び列を間引きながら前記1次走査を行い、
前記1次走査で読み出された複数の信号に基づいて、前記位置座標が含まれる前記走査領域を設定し、
前記走査領域において、前記1次走査よりも走査間隔が小さい2次走査を行う
請求項1から4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記走査領域は、前記1次走査で読み出された信号の大きさが所定値以上又は最大である前記センサを中心とする、所定の大きさの矩形領域である
請求項5に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記2次走査における行の間引き間隔は、前記センサにより検知可能な前記センサアレイの行範囲よりも小さく、
前記2次走査における列の間引き間隔は、前記センサにより検知可能な前記センサアレイの列範囲よりも小さい
請求項5又は6に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記制御演算部は、
前記センサアレイにおいて、所定の第1走査ブロックごとに前記1次走査を行い、
前記1次走査で読み出された複数の信号に基づいて、前記位置座標が含まれる前記第1走査ブロックを選択し、
前記第1走査ブロックを含む前記走査領域において、前記第1走査ブロックよりも小さい所定の第2走査ブロックごとに前記2次走査を行う
請求項1から4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記読み出し回路は、前記センサアレイの同一列の複数の前記センサから1以上の行を選択して信号を加算する行選択回路を列ごとに有する
請求項8に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記読み出し回路は、各列の前記行選択回路によって選択された複数の前記センサから1以上の列を選択して信号を加算する列選択回路を有する
請求項9に記載のセンサ装置。
【請求項11】
2次元状に複数のセンサが配置されたセンサアレイと、
複数の前記センサから信号を読み出す読み出し回路と、
前記読み出し回路を制御し、複数の前記センサから読み出した信号に基づいて、前記センサアレイの中の前記信号の変化が生じた位置座標を検出する制御演算部と、
を備えたセンサ装置の制御方法であって、前記制御演算部において、
前記センサアレイにおいて1次走査を行うステップと、
前記1次走査で読み出された複数の信号に基づいて、前記位置座標が含まれる次の走査領域を設定するステップと、
前記走査領域において前記1次走査よりも走査間隔が小さい2次走査を行うステップと、
前記センサアレイの全領域又は前記走査領域において同時に読み出された複数の前記センサからの信号の平均を基準信号として算出するステップと、
前記1次走査で読み出された信号と前記2次走査で読み出された基準信号とを比較し、ノイズレベルが所定値以上であるか否かを判定するステップと、
前記ノイズレベルが所定値以上である場合、前記2次走査で読み出された信号を、前記基準信号を用いて補正するステップと、
前記補正された信号に基づいて、前記位置座標を検出するステップと
、
前記2次走査で読み出された複数の信号に基づいて、位置座標を含む第3の走査領域を設定するステップと、
前記第3の走査領域において、前記第3の走査領域内の複数のセンサのすべてを順次走査する3次走査を実行するステップと
を有する制御方法。
【請求項12】
2次元状に複数のセンサが配置されたセンサアレイと、
複数の前記センサから信号を読み出す読み出し回路と、
前記読み出し回路を制御し、複数の前記センサから読み出した信号に基づいて、前記センサアレイの中の前記信号の変化が生じた位置座標を検出する制御演算部と、
を備えたセンサ装置において、コンピュータを、
前記センサアレイにおいて1次走査を行う手段と、
前記1次走査で読み出された複数の信号に基づいて、前記位置座標が含まれる次の走査領域を設定する手段と、
前記走査領域において前記1次走査よりも走査間隔が小さい2次走査を行う手段と、
前記センサアレイの全領域又は前記走査領域において同時に読み出された複数の前記センサからの信号の平均を基準信号として算出する手段と、
前記1次走査で読み出された信号と前記2次走査で読み出された基準信号とを比較し、ノイズレベルが所定値以上であるか否かを判定する手段と、
前記ノイズレベルが所定値以上である場合、前記2次走査で読み出された信号を、前記基準信号を用いて補正する手段と、
前記補正された信号に基づいて、前記位置座標を検出する手段と
前記2次走査で読み出された複数の信号に基づいて、位置座標を含む第3の走査領域を設定する手段と、
前記第3の走査領域において、前記第3の走査領域内の複数のセンサのすべてを順次走査する3次走査を実行する手段と
して機能させるプログラム。
【請求項13】
請求項
12に記載のプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサ装置及びその制御方法に関し、特にセンサアレイの読み出し速度の高速化技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユーザーによるタッチ操作の位置座標を検出することが可能なタッチパネルは、直感的な操作を実現する優れたユーザーインターフェースとして、ディスプレイや携帯端末に広く利用されている。例えば、特許文献1に記載のタッチパネルでは、2次元状に配置された複数のセンサから出力される信号に基づいてタッチ操作の位置座標を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-120418号公報
【文献】特開2017-049659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年のディスプレイや携帯端末の大型化に伴い、タッチパネルも大型化している。しかし、特許文献1のタッチパネルでは、2次元状に配置された複数のセンサを順に走査しているため、センサアレイに配置されたセンサの総数が多くなると、センサアレイの読み出しに時間を要し、タッチパネルの反応速度が低下してしまうという課題があった。
【0005】
また、センサアレイの読み出し速度を高速化するために、センサアレイを間引いて走査したり、所定の領域ごとに走査したりすると、領域ごとに特有のノイズが重畳されてしまう。また、時間的に変化するランダムノイズがセンサアレイに重畳されることもある。センサからの信号にこのようなノイズが含まれると、タッチ操作の位置座標の検出精度が低下してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、2次元状に複数のセンサが配置されたセンサアレイと、複数の前記センサから信号を読み出す読み出し回路と、前記読み出し回路を制御し、複数の前記センサから読み出した信号に基づいて、前記センサアレイの中の前記信号の変化が生じた位置座標を検出する制御演算部と、を備え、前記制御演算部は、前記センサアレイにおいて1次走査を行い、前記1次走査で読み出された複数の信号に基づいて、前記位置座標が含まれる次の走査領域を設定し、前記走査領域において前記1次走査よりも走査間隔が小さい2次走査を行い、前記センサアレイの全領域又は前記走査領域において同時に読み出された複数の前記センサからの信号の平均を基準信号として算出し、前記2次走査で読み出された信号を、前記基準信号を用いて補正し、前記補正された信号に基づいて、前記位置座標を検出するセンサ装置が提供される。
【0007】
本発明の別観点によれば、2次元状に複数のセンサが配置されたセンサアレイと、複数の前記センサから信号を読み出す読み出し回路と、前記読み出し回路を制御し、複数の前記センサから読み出した信号に基づいて、前記センサアレイの中の前記信号の変化が生じた位置座標を検出する制御演算部と、を備えたセンサ装置の制御方法であって、前記制御演算部において、前記センサアレイにおいて1次走査を行うステップと、前記1次走査で読み出された複数の信号に基づいて、前記位置座標が含まれる次の走査領域を設定するステップと、前記走査領域において前記1次走査よりも走査間隔が小さい2次走査を行うステップと、前記センサアレイの全領域又は前記走査領域において同時に読み出された複数の前記センサからの信号の平均を基準信号として算出するステップと、前記2次走査で読み出された信号を、前記基準信号を用いて補正するステップと、前記補正された信号に基づいて、前記位置座標を検出するステップとを有する制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、センサアレイの読み出し速度を高速化しつつ、ノイズを低減することが可能なセンサ装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るセンサ装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2A】第1実施形態に係るセンサ装置の制御方法を模式的に示す第1の図である。
【
図2B】第1実施形態に係るセンサ装置の制御方法を模式的に示す第2の図である。
【
図2C】第1実施形態に係るセンサ装置の制御方法における信号補正処理を模式的に示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るセンサ装置における読み出し回路の構成を模式的に示す図である。
【
図4】第1実施形態に係るセンサ装置におけるセンサの電極の形状の例を示す図である。
【
図5】従来のセンサ装置においてセンサアレイから読み出される信号のタイミングチャートである。
【
図6A】第1実施形態に係るセンサ装置においてセンサアレイから読み出される信号の第1のタイミングチャートである。
【
図6B】第1実施形態に係るセンサ装置においてセンサアレイから読み出される信号の第2のタイミングチャートである。
【
図7】第1実施形態に係るセンサ装置の制御方法を示すフローチャートである。
【
図8】第1実施形態に係るセンサ装置のセンサから出力される信号の実測値を示す図である。
【
図9】第2実施形態に係るセンサ装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、各図において同一、又は相当する機能を有するものは、同一符号を付し、その説明を省略又は簡潔にすることもある。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るセンサ装置の構成を模式的に示すブロック図である。本実施形態のセンサ装置は、センサアレイ1、読み出し回路2、及び制御演算部3を備えて構成される。
図1に示すセンサ装置は、例えばディスプレイや携帯端末用のタッチパネルとして適用され得る。
【0012】
センサアレイ1は、2次元状に配置され、ユーザーによるタッチ走査を受け付ける複数のセンサ10を有している。センサ10は、原理的にユーザーによるタッチ操作を検出可能なものであればよい。以下の説明では、センサ10が、電極を有する自己容量型や相互容量型の静電容量方式であって、静電容量の変化を測定してタッチ操作の位置座標を検出することを想定する。
【0013】
読み出し回路2は、センサアレイ1から信号出力線11を介して信号を読み出す。本実施形態の読み出し回路2は、センサアレイ1の行及び列を間引きながら、或いは所定の走査ブロックごとに走査を行うことが可能な構成を有している。読み出し回路2の具体的な構成については、後で
図3を用いて説明する。
【0014】
制御演算部3は、マイクロプロセッサ及びメモリを備えた半導体ICである。制御演算部20は、不図示の記憶部に記録されたプログラムを実行して読み出し回路2を制御し、センサアレイ1から読み出した複数の信号に基づいて、ユーザーによるタッチ操作の位置座標を検出する。制御演算部20は、典型的には、センサアレイ1や読み出し回路2とは別の基板に実装されるが、制御演算部20は、センサアレイ1又は読み出し回路2と同じ基板に実装されてもよい。
【0015】
なお、
図1には便宜上、センサアレイ1の4行×4列の計16のセンサ10のみを図示したが、一般的なセンサアレイ1は更に多くのセンサ10を有している。特に大型のディスプレイ用のセンサアレイ1には、数万を超えるセンサ10を有するものもある。
【0016】
前述のように、従来のセンサ装置の制御方法では、2次元状に配置された複数のセンサ10を順に走査している。このため、センサアレイ1に配置されたセンサ10の総数が多くなると、センサアレイ1の読み出しに時間を要し、タッチパネルの反応速度が低下してしまうという課題があった。
【0017】
しかし、ユーザーにより同時にタッチされる面積は、仮に10ポイント程度のマルチタッチが行われた場合であってもセンサアレイ1の面積に比べると十分に小さい。従って、タッチパネルのようなセンサ装置においては必ずしもセンサアレイ1の全領域を順に走査する必要はない。そこで、本実施形態では、センサアレイ1の走査を、全領域において行う粗い走査と、タッチ操作が含まれる一部領域において行う細かい走査と、に分けることで、センサアレイ1の読み出し速度を高速化させる。
【0018】
図2Aは、第1実施形態に係るセンサ装置の制御方法を模式的に示す第1の図である。以下では、
図2A(a)に示すタッチ操作の位置座標P0を、本実施形態のセンサアレイ1の第1の読み出し方法を用いて検出する場合の例について、
図2A(b)~
図2A(d)を参照しながら説明する。
【0019】
なお、
図2Aには便宜上、12行×12列の計144のセンサ10を有するセンサアレイ1を示しているが、本実施形態ではセンサ10の数は特に制限されない。但し後述するように、本実施形態のセンサアレイ1の読み出し方法は、センサアレイ1に配置されたセンサ10の総数が多い場合に、特に優れた効果が得られる。
【0020】
まず、制御演算部3は、
図2A(b)に矢印で示すように、センサアレイ1の行及び列を間引きながら、
図2A(b)に斜線で示す複数のセンサ10を粗く走査する第1の走査を行う。
図2A(b)は、第1の走査における行の間引き間隔a1、及び列の間引き間隔b1がともに3である場合の例を示している。ここで、間引き間隔の値はセンサ10の配置間隔を単位とした値であり、以下の説明でも同様である。
【0021】
第1の走査における行の間引き間隔a1、及び列の間引き間隔b1は、間引きする場合であっても少なくともタッチ操作の有無がセンサアレイ1の全領域において検知可能となるように、下式(A1)を満たすように設定される。
a1 < a0、
b1 < b0 (A1)
【0022】
上式(A1)では、センサ10により検知可能なセンサアレイ1の行範囲a0、及び列範囲b0を用いた。例えば
図2A(b)では、行範囲a0、及び列範囲b0はともに4以上である。ここで、行範囲の値及び列範囲の値はセンサ10の配置間隔を単位とした値であり、以下の説明でも同様である。
【0023】
続いて、制御演算部3は、第1の走査で読み出した信号の大きさが所定値以上又は最大であるセンサ10の位置座標P1を検出する。そして、制御演算部3は、位置座標P1を中心とする所定の大きさの矩形領域を、次の第2の走査を行う第2走査領域R2として設定する。第2走査領域R2にはユーザーによるタッチ操作の位置座標P0が含まれる。
【0024】
図2A(b)では、第2走査領域R2の大きさを5行×5列としたが、第2走査領域R2の行範囲は、第1の走査における行の間引き間隔a1を用いて2×a1+1以下であればよい。また、第2走査領域R2の列範囲は、第1の走査における列の間引き間隔b1を用いて2×b1+1以下であればよい。
【0025】
次に、制御演算部3は、
図2A(c)に矢印で示すように、第2走査領域R2において、第1の走査よりも小さい間引き間隔で行及び列を間引きながら、
図2A(c)に斜線で示す複数のセンサ10を細かい走査間隔で走査する第2の走査を行う。この際、第2の走査では、前の第1の走査で読み出したセンサ10の走査は省略してもよい。
図2A(c)は、第2の走査における行の間引き間隔a2、及び列の間引き間隔b2がともに1である場合の例を示している。
【0026】
第2の走査における行の間引き間隔a2、及び列の間引き間隔b2は、下式(A2)を満たすように設定される。
a2 < a1、
b2 < b1 (A2)
【0027】
続いて、制御演算部3は、第2の走査で読み出した信号の大きさが所定値以上又は最大であるセンサ10の位置座標P2を検出する。そして、制御演算部3は、位置座標P2を中心とする所定の大きさの矩形領域を、次の第3の走査を行う第3走査領域R3として設定する。第3走査領域R3にはユーザーによるタッチ操作の位置座標P0が含まれる。
【0028】
図2A(c)では、第3走査領域R3の大きさを3行×3列としたが、第3走査領域R3の行範囲は、第2の走査における行の間引き間隔a2を用いて2×a2+1以下であればよい。また、第3走査領域R3の列範囲は、第2の走査における列の間引き間隔b2を用いて2×b2+1以下であればよい。
【0029】
次に、制御演算部3は、
図2A(d)に示すように、第3走査領域R3において間引きなしに、
図2A(d)に斜線で示す複数のセンサ10を順に走査する第3の走査を行う。この際、第3の走査では、前の第2の走査で読み出したセンサ10の走査は省略してもよい。
【0030】
続いて、制御演算部3は、第3の走査で読み出した複数の信号のセンサアレイ1における2次元分布に基づいて、
図2A(a)に示したユーザーによるタッチ操作の位置座標P0を検出する。この際、制御演算部3は、ユーザーによるタッチ操作の重心Gを下式(A3)で算出して、タッチ操作の位置座標P0をセンサ10の配置間隔よりも小さい精度で検出する。
G=Σ(S(P
ij)・P
ij)/ΣS(P
ij) (A3)
【0031】
ここで、重心G及び位置座標Pijはベクトルである。信号S(Pij)は、位置座標Pijに配置されたセンサ10から読み出した信号値であり、位置座標Pijの添え字は、センサ10の行番号i及び列番号jを表している。Σは、第3走査領域R3内の全ての位置座標Pijにおける和を表している。
【0032】
このように、本実施形態のセンサアレイ1の第1の読み出し方法は、まず、センサアレイ1において、行及び列を間引きながら粗い走査(第1の走査)を行う。そして、粗い走査で読み出した複数の信号に基づいて次の走査領域を設定し、設定した走査領域においてより小さい間引き間隔で行及び列を間引きながら、或いは間引きなしに、細かい走査(第2、第3の走査)を行う。
【0033】
これにより、例えば
図2Aに示したセンサアレイ1の読み出し方法では、従来のようにセンサアレイ1の12×12のセンサ10を順に走査する代わりに、第1~第3の走査においてそれぞれ9のセンサ10を走査するだけでよい。特に、前の走査で読み出したセンサ10を、次の走査で走査しない場合は、第2~第3の走査においてそれぞれ8のセンサ10を走査するだけでよい。この結果、センサアレイ1を読み出す際に走査するセンサ10の数を(9+8+8)/(12×12)≒1/6に低減することができる。
【0034】
より一般的には、センサアレイ1にM×Nのセンサ10が配置されている場合は、従来のようにセンサアレイ1のM×Nのセンサ10を順に走査する代わりに、第1の走査では(M/a1)×(N/b1)のセンサ10を走査するだけでよい。また、第2~第3の走査では、それぞれ8のセンサ10を走査するだけでよい。この結果、センサアレイ1を読み出す際に走査するセンサ10の数を下式(A4)のように低減することができる。
{(M/a1)×(N/b1)+8+8}/(M×N)
=1/(a1×b1) + 16/(M×N) (A4)
【0035】
センサアレイ1に配置されたセンサ10の総数M×Nが多くなると、上式(A4)の第2項は、第1項に対して相対的に無視できる。従って、本実施形態のセンサアレイ1の読み出し方法は、センサアレイ1に配置されたセンサ10の総数が多い場合に、特に優れた効果が得られる。
【0036】
また、上式(A4)における行の間引き間隔a1、及び列の間引き間隔b1は、上式(A1)に示したように、センサ10により検知可能なセンサアレイ1の行範囲a0、及び列範囲b0より規定される。従って、センサ10により検知可能なセンサアレイ1の行範囲a0、及び列範囲b0が大きいほど、センサアレイ1を読み出す際に走査するセンサ10の数を低減することができる。
【0037】
図2Aでは、ユーザーにより同時に操作されるタッチの数が1つであるシングルタッチの場合の例を示したが、ユーザーにより同時に操作されるタッチの数が複数であるマルチタッチの場合でも、本実施形態の手法を適用することが可能である。
【0038】
図2Bは、第1実施形態に係るセンサ装置の制御方法を模式的に示す第2の図である。以下では、
図2B(a)に示すタッチ操作の位置座標P0を、本実施形態のセンサアレイ1の第2の読み出し方法を用いて検出する場合の例について、
図2B(b)~
図2B(d)を参照しながら説明する。
【0039】
なお、
図2Bには便宜上、12行×12列の計144のセンサ10を有するセンサアレイ1を示しているが、本実施形態ではセンサ10の数は特に制限されない。但し後述するように、本実施形態のセンサアレイ1の読み出し方法は、センサアレイ1に配置されたセンサ10の総数が多い場合に、特に優れた効果が得られる。
【0040】
まず、制御演算部3は、
図2B(b)に示すように、太い枠の矩形で示す所定の第1走査ブロックを単位として、第1走査ブロックごとにセンサアレイ1を粗く走査する第1の走査を行う。この際、読み出し回路2は、第1走査ブロックに含まれるセンサ10から出力される信号を加算して読み出す。
図2B(b)は、第1走査ブロックの行範囲c1、及び列範囲d1がともに4である場合の例を示している。ここで、行範囲の値及び列範囲の値はセンサ10の配置間隔を単位とした値であり、以下の説明でも同様である。
【0041】
第1走査ブロックの行範囲c1、及び列範囲d1は、下式(B1)を満たすように設定される。ここで、センサアレイ1にはM行×N列のセンサ10が配置されているものとする。
c1 < M、
d1 < N (B1)
【0042】
続いて、制御演算部3は、第1の走査で読み出した信号の大きさが所定値以上又は最大である第1走査ブロックを選択する。そして、制御演算部3は、
図2B(b)に示すように、選択した第1走査ブロックを含む所定の領域を、次の第2の走査を行う第2走査領域R2として設定する。第2走査領域R2にはユーザーによるタッチ操作の位置座標P0が含まれる。
【0043】
図2B(b)では、第2走査領域R2の大きさを8行×8列としたが、第2走査領域R2の行範囲は、選択した第1走査ブロックの行範囲c1以上であればよい。また、第2走査領域R2の列範囲は、選択した第1走査ブロックの列範囲d1以上であればよい。
【0044】
次に、制御演算部3は、
図2B(c)に示すように、太い枠の矩形で示す第1走査ブロックよりも小さい所定の第2走査ブロックを単位として、第2走査ブロックごとに第2走査領域R2を細かく走査する第2の走査を行う。この際、読み出し回路2は、第2走査ブロックに含まれるセンサ10から出力される信号を加算して読み出す。
図2B(c)は、第2走査ブロックの行範囲c2、及び列範囲d2がともに2である場合の例を示している。
【0045】
第2走査ブロックの行範囲c2、及び列範囲d2は、下式(B2)を満たすように設定される。
c2 < c1、
d2 < d1 (B2)
【0046】
続いて、制御演算部3は、第2の走査で読み出した信号の大きさが所定値以上又は最大である第2走査ブロックを選択する。そして、制御演算部3は、
図2B(c)に示すように、選択した第2走査ブロックを含む所定の領域を、次の第3の走査を行う第3走査領域R3として設定する。第3走査領域R3にはユーザーによるタッチ操作の位置座標P0が含まれる。
【0047】
図2B(c)では、第3走査領域R3の大きさを4行×4列としたが、第3走査領域R3の行範囲は、選択した第2走査ブロックの行範囲c2以上であればよい。また、第3走査領域R3の列範囲は、選択した第2走査ブロックの列範囲d2以上であればよい。
【0048】
次に、制御演算部3は、
図2B(d)に示すように、第3走査領域R3に配置されたセンサ10を順に走査する第3の走査を行う。
【0049】
続いて、制御演算部3は、第3の走査で読み出した複数の信号のセンサアレイ1における2次元分布に基づいて、
図2B(a)に示したユーザーによるタッチ操作の位置座標P0を検出する。この際、制御演算部3は、ユーザーによるタッチ操作の重心Gを下式(B3)で算出して、タッチ操作の位置座標P0をセンサ10の配置間隔よりも小さい精度で検出する。
G=Σ(S(P
ij)・P
ij)/ΣS(P
ij) (B3)
【0050】
ここで、重心G及び位置座標Pijはベクトルである。信号S(Pij)は、位置座標Pijに配置されたセンサ10から読み出した信号値であり、位置座標Pijの添え字は、センサ10の行番号i及び列番号jを表している。Σは、第3走査領域R3内の全ての位置座標Pijにおける和を表している。
【0051】
このように、本実施形態のセンサアレイ1の第2の読み出し方法は、まず、センサアレイ1において、所定の走査ブロックごとに粗い走査(1次走査、第1の走査)を行う。そして、粗い走査で読み出した複数の信号に基づいて次の走査領域を設定し、設定した走査領域においてより小さい走査ブロックごとに細かい走査(2次走査、第2及び第3の走査)を行う。
【0052】
これにより、例えば
図2Bに示したセンサアレイ1の読み出し方法では、従来のようにセンサアレイ1の12×12のセンサ10を順に走査する代わりに、第1~第3の走査においてそれぞれ9、16、16の走査ブロック又はセンサ10を走査するだけでよい。この結果、センサアレイ1を読み出す際に走査する走査ブロック又はセンサ10の数を(9+16+16)/(12×12)≒1/3に低減することができる。
【0053】
より一般的には、センサアレイ1にM×Nのセンサ10が配置されている場合は、従来のようにセンサアレイ1のM×Nのセンサ10を順に走査する代わりに、第1の走査では(M/c1)×(N/d1)の走査ブロックを走査するだけでよい。また、第2~第3の走査では、それぞれ16の走査ブロック又はセンサ10を走査するだけでよい。この結果、センサアレイ1を読み出す際に走査する走査ブロック又はセンサ10の数を下式(B4)のように低減することができる。
{(M/c1)×(N/d1)+16+16}/(M×N)
=1/(c1×d1) + 32/(M×N) (B4)
【0054】
センサアレイ1に配置されたセンサ10の総数M×Nが多くなると、上式(B4)の第2項は、第1項に対して相対的に無視できる。従って、本実施形態のセンサアレイ1の読み出し方法は、センサアレイ1に配置されたセンサ10の総数が多い場合に、特に優れた効果が得られる。
【0055】
図2Bでは、ユーザーにより同時に操作されるタッチの数が1つであるシングルタッチの場合の例を示したが、ユーザーにより同時に操作されるタッチの数が複数であるマルチタッチの場合でも、本実施形態の手法を適用することが可能である。
【0056】
図2Cは、第1実施形態に係るセンサ装置の制御方法における信号補正処理を模式的に示す図である。本実施形態では、第1~第3の走査に加えて、信号補正を行うための基準信号を取得する第4の走査を行う。以下では、第4の走査を第1~第3の走査の後に行う場合について説明するが、第4の走査は、第1~第3の走査の前に行ってもよい。
【0057】
制御演算部3は、第1~第3の走査を行った後に、
図2C(a)に斜線で示す複数のセンサ10を同時に読み出す第4の走査を行う。そして、第4の走査で同時に読み出した複数のセンサ10からの信号の平均を基準信号S0として算出する。より具体的には、制御演算部3は、センサアレイ1に配置された複数のセンサ10を加算して読み出し、読み出した信号の大きさを、読み出したセンサ10の総数で除算して基準信号S0を算出する。
【0058】
そして、制御演算部3は、第3の走査で読み出した信号S3を下式(C1)により補正し、補正後の信号Sの分布に基づいて、ユーザーによるタッチ操作の重心Gを上式(A3)又は上式(B3)で算出する。
S = S3-S0 (C1)
【0059】
なお、
図2C(a)では、センサアレイ1の全領域で第4の走査を行ったが、
図2C(b)又は
図2C(c)に示すように、
図2Aに示した第2走査領域R2又は第3走査領域R3において第4の走査を行ってもよい。或いは、
図2Bに示した第2走査領域R2又は第3走査領域R3において第4の走査を行ってもよい。
【0060】
これにより、走査領域ごとに特有のノイズが重畳されてしまう場合でも、走査領域において基準信号を算出することでノイズを相殺することができる。また、時間的に変化するランダムノイズがセンサ10に重畳される場合でも、センサアレイ1の全領域において基準信号を算出することでノイズを相殺することができる。
【0061】
更に、
図2Cに示した方法では、第1~第3の走査に加えて、第4の走査を1回行うだけで、第3の走査で読み出した信号S3に含まれるノイズを低減することできる。このため、センサアレイ1の読み出し速度を高速化しつつ、ノイズを低減することが可能なセンサ装置及びその制御方法を提供することができる。
【0062】
図3は、第1実施形態に係るセンサ装置における読み出し回路2の構成を模式的に示す図である。本実施形態の読み出し回路2は、複数の行選択回路21、及び列選択回路22を有して構成される。読み出し回路2は、読み出した信号のノイズを低減するためのフィルタ回路等を更に有していてもよい。
【0063】
行選択回路21は、センサアレイ1の列ごとに設けられており、信号出力線11を介して同一列の複数のセンサ10に接続されている。また、列選択回路22は、複数の行選択回路21に接続されている。行選択回路21及び列選択回路22は、行又は列を選択するためのスイッチ回路、選択した信号を加算する加算回路、及び選択したセンサ10から出力される信号を増幅する増幅回路をそれぞれ有している。
【0064】
制御演算部3は、行選択回路21及び列選択回路22と接続されており、行選択回路21及び列選択回路22を制御してセンサアレイ1の行及び列を選択する。
【0065】
行選択回路21は、センサアレイ1の同一列の複数のセンサ10から、1以上の行を選択して信号を加算する。また、列選択回路22は、各列の行選択回路21によって選択された複数のセンサ10から、1以上の列を選択して信号を加算する。列選択回路22は、例えば、行選択回路21と同様の選択回路を含んで構成される。制御演算部3は、行選択回路21及び列選択回路22により選択されたセンサ10から、信号を順に読み出す。
【0066】
図4は、第1実施形態に係るセンサ装置におけるセンサ10の電極の形状の例を示す図である。上述の
図1~
図3では、センサ10の電極の形状が
図4(a)に示すような四角形であることを想定したが、本実施形態のセンサ10の電極はこのような形状に限定されない。例えば
図4(b)~
図4(h)に示すような、それぞれ、ダイヤモンド、クロス、三角形、ステップ、凹凸、H形、Fish boneの電極形状であってもよい。
【0067】
また、センサ10は、必ずしも上述の説明のように、センサアレイ1に行列状に配置されていなくてもよい。センサ10は、センサアレイ1に概ね2次元状に配置されて、
図3に示した読み出し回路2により読み出される構成を有していればよい。実際のセンサアレイ1におけるセンサ10のレイアウトは、ユーザーによるタッチ操作の位置座標の検出精度を向上させるために、例えば特許文献2に記載されるように様々に工夫され得る。
【0068】
図5は、従来のセンサ装置においてセンサアレイ1から読み出される信号のタイミングチャートである。
図5には、従来のセンサ装置においてセンサアレイ1の第1行~第6行、及び第1列~第6列のセンサ10から読み出される信号を示している。読み出される信号の行番号は第1列のみに示している。
【0069】
従来のセンサ装置では、シフトレジスタ等を用いて、
図5に示すように、センサアレイ1の第1行第1列から順に走査が行われる。なお、
図5では、同一行の信号が同じタイミングで並列に読み出されるように図示されているが、実際には、順に読み出しが行われる。このため、従来のセンサ装置の制御方法では、センサアレイ1に配置されたセンサ10の総数が多くなると、センサアレイ1の走査期間Tが大きくなり、タッチパネルの反応速度が低下してしまう。
【0070】
しかし、ユーザーにより同時にタッチされる面積は、仮に10ポイント程度のマルチタッチが行われた場合であってもセンサアレイ1の面積に比べると十分に小さい。従って、タッチパネルのようなセンサ装置においては必ずしもセンサアレイ1の全領域を順に走査する必要はない。そこで、本実施形態では、センサアレイ1の走査を、全領域において行う粗い走査と、タッチ操作が含まれる一部領域において行う細かい走査と、に分けることで、センサアレイ1の読み出し速度を高速化させる。
【0071】
図6A及び
図6Bは、第1実施形態に係るセンサ装置においてセンサアレイ1から読み出される信号のタイミングチャートである。
図6Aと
図6Bには、
図2Aと
図2Bに示したセンサ装置の制御方法を用いた場合に、センサアレイ1の第1行~第6行、及び第1列~第6列のセンサ10から読み出される信号をそれぞれ示している。読み出される信号の行番号は各信号の上に示している。
【0072】
本実施形態のセンサ装置では、
図2A及び
図2Bで説明したように、第1~第3の走査に分けてセンサアレイ1の走査が行われる。また、
図2Cに示したように、その後第4の走査が行われる。第1~第4の走査は、
図6A及び
図6Bに示す走査期間T1~T4においてそれぞれ行われる。なお、
図6A及び
図6Bでは、同一行の信号が同じタイミングで並列に読み出されるように図示されているが、実際には、順に読み出しが行われる。
【0073】
図6A及び
図6Bに示すタイミングチャートでは、
図2A及び
図2Bで説明したように、従来のセンサ装置におけるセンサアレイ1の走査期間Tに対して、上式(A4)又は上式(B4)のように走査期間T1~T3が短縮される。これにより、センサアレイ1に配置されたセンサ10の総数が多い場合でも、センサアレイ1の走査期間Tを小さくして、センサアレイ1の読み出し速度を高速化することができる。
【0074】
図7は、第1実施形態に係るセンサ装置の制御方法を示す第1のフローチャートである。以下では、
図2Aに示したセンサ装置の第1の制御方法について、
図7を参照しながら説明する。
【0075】
まず、制御演算部3は、センサアレイ1の行及び列を間引きながら第1の走査を行う(ステップS101)。第1の走査では、センサアレイ1の全領域を粗く走査する。続いて、制御演算部3は、第1の走査で読み出した複数の信号に基づいて、ユーザーによるタッチ操作の位置座標P0が含まれる第2走査領域R2を、次の第2の走査を行う走査領域として設定する(ステップS102)。
【0076】
次に、制御演算部3は、第2走査領域R2において第1の走査よりも小さい間引き間隔で第2の走査を行う(ステップS103)。第2の走査では、第2走査領域R2を細かく走査する。続いて、制御演算部3は、第2の走査で読み出した複数の信号に基づいて、ユーザーによるタッチ操作の位置座標P0が含まれる第3走査領域R3を、次の第3の走査を行う走査領域として設定する(ステップS104)。
【0077】
次に、制御演算部3は、第3走査領域R3において間引きなしに第3の走査を行う(ステップS105)。
【0078】
次に、制御演算部3は、センサアレイ1の全領域を同時に読み出す第4の走査を行う(ステップS106)。そして、制御演算部3は、第4の走査において同時に読み出した複数のセンサ10からの信号の平均を基準信号として算出する(ステップS107)。
【0079】
次に、制御演算部3は、第3の走査で読み出した信号と第4の走査で読み出した基準信号を比較し、ノイズレベルが所定値以上であるか否かを判定する(ステップS108)。ノイズレベルが所定値以上である場合(Yes)は、ステップS109へ進み、第3の走査で読み出した信号を上式(C1)で補正する(ステップS109)。一方、ノイズレベルが所定値未満である場合(No)は、ステップS110へ進む。
【0080】
次に、制御演算部3は、第3の走査で読み出した信号又は補正後の信号に基づいて、ユーザーによるタッチ操作の重心Gを、上式(A3)又は上式(B3)により算出する(ステップS110)。
【0081】
なお、ステップS108の判定処理は、ノイズが小さい場合にステップS109の信号補正処理を省略して、制御演算部3の負荷を軽減するためのものである。従って、制御演算部3の処理能力に余裕がある場合は、ステップS108の判定処理を省略して、信号補正処理を常に行うようにしてもよい。
【0082】
このように、本実施形態のセンサ装置の第1の制御方法は、センサアレイ1において、行及び列を間引きながら粗い走査(1次走査、第1の走査)を行う。そして、粗い走査で読み出した複数の信号に基づいて次の走査領域を設定し、設定した走査領域においてより小さい間引き間隔で行及び列を間引きながら、或いは間引きなしに、細かい走査(2次走査、第2及び第3の走査)を行う。
【0083】
このような構成によれば、センサアレイ1の読み出し速度を高速化しつつ、ノイズを低減することが可能なセンサ装置及びその制御方法を提供することができる。特に本実施形態のセンサ装置及びその制御方法は、センサアレイ1に配置されたセンサ10の総数が多い場合に優れた効果が得られる。
【0084】
次に、
図2Bに示したセンサ装置の第2の制御方法について、同様に
図7を参照しながら説明する。
【0085】
まず、制御演算部3は、センサアレイ1において、所定の第1走査ブロックを単位として、第1走査ブロックごとに第1の走査を行う(ステップS101)。第1の走査では、センサアレイ1の全領域を粗く走査する。続いて、制御演算部3は、第1の走査で読み出した複数の信号に基づいて、ユーザーによるタッチ操作の位置座標P0が含まれる第1走査ブロックを選択する。そして、選択した第1走査ブロックを含む所定の領域を次の第2の走査を行う第2走査領域R2として設定する(ステップS102)。
【0086】
次に、制御演算部3は、第2走査領域R2において、第1走査ブロックよりも小さい所定の第2走査ブロックを単位として、第2走査ブロックごとに第2の走査を行う(ステップS103)。第2の走査では、第2走査領域R2を細かく走査する。続いて、制御演算部3は、第2の走査で読み出した複数の信号に基づいて、ユーザーによるタッチ操作の位置座標P0が含まれる第2走査ブロックを選択する。そして、選択した第2走査ブロックを含む所定の領域を次の第3の走査を行う第3走査領域R3として設定する(ステップS104)。
【0087】
次に、制御演算部3は、第3走査領域R3に配置されたセンサ10を順に走査する第3の走査を行う(ステップS105)。
【0088】
次に、制御演算部3は、センサアレイ1の全領域を同時に読み出す第4の走査を行う(ステップS106)。そして、制御演算部3は、第4の走査において同時に読み出した複数のセンサ10からの信号の平均を基準信号として算出する(ステップS107)。
【0089】
次に、制御演算部3は、第3の走査で読み出した信号と第4の走査で読み出した基準信号を比較し、ノイズレベルが所定値以上であるか否かを判定する(ステップS108)。ノイズレベルが所定値以上である場合(Yes)は、ステップS109へ進み、第3の走査で読み出した信号を上式(C1)で補正する(ステップS109)。一方、ノイズレベルが所定値未満である場合(No)は、ステップS110へ進む。
【0090】
次に、制御演算部3は、第3の走査で読み出した信号又は補正後の信号に基づいて、ユーザーによるタッチ操作の重心Gを、上式(A3)又は上式(B3)により算出する(ステップS110)。
【0091】
なお、ステップS108の判定処理は、ノイズが小さい場合にステップS109の信号補正処理を省略して、制御演算部3の負荷を軽減するためのものである。従って、制御演算部3の処理能力に余裕がある場合は、ステップS108の判定処理を省略して、信号補正処理を常に行うようにしてもよい。
【0092】
このように、本実施形態のセンサ装置の第2の制御方法は、センサアレイ1において、所定の走査ブロックごとに粗い走査(第1の走査)を行う。そして、粗い走査で読み出した複数の信号に基づいて次の走査領域を設定し、設定した走査領域においてより小さい走査ブロックごとに細かい走査(第2、第3の走査)を行う。
【0093】
このような構成によれば、センサアレイ1の読み出し速度を高速化しつつ、ノイズを低減することが可能なセンサ装置及びその制御方法を提供することができる。特に本実施形態のセンサ装置及びその制御方法は、センサアレイ1に配置されたセンサ10の総数が多い場合に優れた効果が得られる。
【0094】
図8は、第1実施形態に係るセンサ装置のセンサ10から出力される信号の実測値を示す図である。
図8(a)には、上式(C1)の補正を行う前の信号S3の波形を示しており、
図8(b)には、上式(C1)の補正を行った後の信号S=S3-S0の波形を示している。横軸は、
図6に示した走査期間Tを単位とするフレーム数を示している。縦軸は、センサ10から出力される信号の大きさを規格化して示している。
【0095】
図8(a)に示す補正前の信号S3には、時間的に変化するランダムノイズが重畳されている。センサ10から出力される信号にこのようなノイズが含まれると、タッチ操作の位置座標の検出精度が低下してしまう。一方、
図8(b)に示す補正後の信号Sでは、時間的に変化するランダムノイズが上式(C1)の補正によって相殺されて低減されていることが分かる。
【0096】
図8(a)に示す補正前の信号S3は、ノイズの振幅(最大値-最小値)の平均値が32であったが、
図8(b)に示す補正後の信号Sは、ノイズの振幅(最大値-最小値)の平均値が5であった。すなわち、本実施形態のセンサ装置では、ノイズが5/32≒1/6に低減されていることが確認された。
【0097】
以上のように、本実施形態のセンサ装置は、粗い走査で読み出した複数の信号に基づいて走査領域を設定し、走査領域において粗い走査よりも細かい走査を行う。そして、センサアレイの全領域又は走査領域において同時に読み出した複数の前記センサからの信号の平均を基準信号として算出し、細かい走査で読み出した信号を、基準信号を用いて補正して、タッチ操作の位置座標を検出する。
【0098】
このような構成によれば、走査領域ごとに特有のノイズが重畳されてしまう場合でも、走査領域で算出した基準信号を用いてノイズを相殺することができる。また、時間的に変化するランダムノイズがセンサ10に重畳される場合でも、センサアレイ1の全領域で算出した基準信号を用いてノイズを相殺することができる。この結果、センサアレイ1の読み出し速度を高速化しつつ、ノイズを低減することが可能なセンサ装置及びその制御方法を提供することができる。
【0099】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係るセンサ装置の構成を模式的に示すブロック図である。本実施形態のセンサ装置は、センサアレイ1、垂直走査回路2a、読み出し回路2b、及び制御演算部3を備えて構成される。
図9に示す本実施形態のセンサ装置は、第1実施形態のセンサ装置と比較して、読み出し回路2の代わりに、垂直走査回路2a及び読み出し回路2bを備えている点を特徴としている。
【0100】
従来の垂直走査回路や読み出し回路は、シフトレジスタ等を用いて構成され、センサアレイの行及び列を順に走査していた。一方、
図9に示す本実施形態の垂直走査回路2aは、センサアレイ1の行を間引きながら、或いは所定の行範囲を単位として、走査を行うことが可能な構成を有している。また、本実施形態の読み出し回路2bは、センサアレイ1の列を間引きながら、或いは所定の列範囲を単位として、走査を行うことが可能な構成を有している。
【0101】
より具体的には、本実施形態の垂直走査回路2a及び読み出し回路2bは、
図3A及び
図3Bに示したような行選択回路21や列選択回路22を有して構成される。その他の構成については第1実施形態と同じであるので説明は省略する。
【0102】
このような構成によっても、第1実施形態と同様に、センサアレイ1の走査を、全領域において行う粗い走査と、タッチ操作が含まれる一部領域において行う細かい走査と、に分けて、センサアレイ1の読み出し速度を高速化させることができる。
【0103】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0104】
センサ10は、静電容量方式以外にも、例えば圧力に応じて抵抗値が変化する感圧導電ゴム等を利用した圧力センサであってもよい。この場合、圧力センサはアクティブマトリックスとされ、
図9に示した第2実施形態の構成により制御され得る。また、タッチセンサ以外に、温度センサや湿度センサ等を更に有してもよい。
【0105】
また、上述の実施形態では、3回の第1~第3の走査を行う場合の例を示したが、本発明では走査の回数は特に限定されない。例えば、第2の走査を省略してもよいし、第2の走査において、走査領域を段階的に小さくしながら複数回の走査を行ってもよい。或いは、第3の走査を省略して、第2の走査で読み出した複数の信号に基づいてタッチ操作の位置座標を検出してもよい。
【0106】
上述の実施形態の1以上の機能を実現するためのプログラムも本発明の範疇に含まれる。当該プログラムは、ネットワーク又は記録媒体を介してシステム又は装置に供給され得る。そのシステム又は装置に含まれるコンピュータにおいて、1以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することにより上述の実施形態の1以上の機能が実現され得る。また、上述の実施形態の1以上の機能は、ASIC、FPGA等の回路により実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 :センサアレイ
2、2b :読み出し回路
2a :垂直走査回路
3 :制御演算部
10 :センサ
11 :信号出力線
20 :制御演算部
21 :行選択回路
22 :列選択回路