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特許7092493クレーンによるクレーン動作の補助を行う方法及びクレーン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】クレーンによるクレーン動作の補助を行う方法及びクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20220621BHJP
   B66C 23/683 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B66C13/22 Z
B66C23/683 A
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017243393
(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2018118852
(43)【公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】10 2016 015 388.1
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597120075
【氏名又は名称】リープヘル-ヴェルク エーインゲン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Liebherr-Werk EhingenGmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボーナッカー ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ケンツェルマン マックス
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-073892(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0160016(US,A1)
【文献】特開2016-130179(JP,A)
【文献】特開2001-295256(JP,A)
【文献】特開2007-204236(JP,A)
【文献】特開2004-001987(JP,A)
【文献】特開2014-162607(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0221799(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00 - 15/06
B66C 23/00 - 23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に移動可能であるメインブーム、ラフィングジブ及びデリックブームを含むクレーンのクレーンブームシステムの動作の補助を行う方法において、
上記クレーンの状況に依存する停止姿勢の自律起動、設置面に依存する上記クレーンブームシステムの自律的な設置若しくは分解、又は、フックブロックの組付若しくは取外しのための組付姿勢の自律起動という、特定のクレーン機能をユーザが予め選択すると、補助制御モジュールは、上記クレーンブームシステムの少なくとも1つの目標姿勢を決定し、
上記クレーンブームシステムの目標姿勢を達成するために必要なクレーン動作を決定し、
ーザ確認の後、間接的に又は直接にクレーンコントローラで決定されるクレーン動作の実行のために上記メインブーム、ラフィングジブ及びデリックブームを移動させるように特定のクレーンアクチュエータを作動させる
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
実行された上記クレーン動作のモニタリング及び/又は調節が行われ、
特に上記クレーンの現在姿勢又は該クレーンの条件がそれぞれ、1つ以上の角度センサ及び/又は荷重測定装置及び/又は距離センサ及び/又はリミットスイッチ及び/又は光学システムによって決定され、
測定された値の境界値及び/又は許容荷重表及び/又は許される取付領域の順守の点検が行われる
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
上記目標姿勢の決定は、例えば、理論的な旋回角度及び/若しくは理論的な作業半径の提示によって並びに/又は特に経度及び緯度による座標の地理的入力値によって、上記ユーザが目標姿勢を直接入力することによって行われる
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
目標姿勢の入力は、所定の目標姿勢の選択で行われ、
上記所定の目標姿勢は、それよりも前に手動で始められたクレーン姿勢、特に荷重除去及び/又は荷重支持のための起動姿勢である
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
ユーザが停止姿勢の自律起動機能を選択すると、
上記補助制御モジュールが、現在及び/又は将来の気象データを決定し、
特に、予想される風速及び/又は風向について照会し、最適な停止姿勢に基づいて好ましくは目標姿勢を計算し、
及び/又は、内部又は外部のデータバンクに対する照会によって気象データを決定することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項に記載の方法において、
上記気象データは、クレーンのセンサによって決定され、又は、外部情報サーバからダウンロードされる
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項又はに記載の方法において、
上記気象データは、停止姿勢における変化について調べられ、
必要であれば、新しい目標姿勢又は停止姿勢が決定されて起動される
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項からのいずれか1つに記載の方法において、
ユーザが自律的な組立又は分解の機能を選択すると、
パラメータ及び/又は情報の照会が、組立又は分解プロセスのシーケンスの計算のために行われ、
特に、現在のブーム構成に関するパラメータ及び/又は、例えばブームの先端の支持用のトロリーカートなどの、考えら得るいずれの補助手段の使用も記録され、
及び/又は、支持地盤の許容荷重に関する情報が決定される
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項に記載の方法において、
上記パラメータ及び/又は情報の照会に基づいて、上記クレーンブームシステムの組立又は分解のための少なくとも1つの可能な目標姿勢がそれぞれ決定され、
好ましくは、第1の目標姿勢が初めに決定され、その結果、最終的な目標姿勢達成のためのさらなる目標姿勢が決定される
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項又はに記載の方法において、
組立又は分解プロセスの実行に関する付加的なユーザ仕様が、1つ以上の目標姿勢、特に使用するバラストの量及び/又は支持面から上記ラフィングジブを持ち上げるタイミング及び/又は上記デリックブームの組立に関する目標姿勢の決定のために考慮される
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から1のいずれか1つに記載の方法において、
上記クレーン動作の決定は、ユーザ仕様に依存する上記目標姿勢を達成するために最適化され、
特に、仕様は、上記クレーン動作の長さ、及び/又は、上記クレーン動作の間に生じるクレーン構造に対する荷重及び/又はバラストを少なくした動作及び/又は行われている加速プロセスの最小化の最適化に関連し得る
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から1のいずれか1つに記載の方法において、
上記目標姿勢を達成するための上記クレーン動作は、それぞれ、クレーン旋回機構と上記クレーンブームシステムの起伏動作用駆動ユニットとのそれぞれに対する制御コマンドに分けられ得る
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から1のいずれか1つに記載の方法を実行するための手段を有する
ことを特徴とするクレーン用の補助制御モジュール。
【請求項14】
請求項1から1のいずれか1つに記載の方法を実行するのためのクレーンコントローラ装置及び少なくとも1つの補助制御モジュールを有する
ことを特徴とするクレーン、特に移動式クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は相対的に移動可能である少なくとも2つのブーム要素を有するクレーンによる、クレーン動作の補助を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブームシステムを有するクレーンは、従来より知られている。この種のクレーンを設置するときに、ブームシステムのブーム要素は、ある取付状態から完結した設置状態に移り変わる。このことにより、取付状態は、例えば、ブームシステムが、広げられたサポート又はベースの表面上に実質的に延長された状態となり得る。クレーンは、この状態では、いかなるクレーン作業も行うことができない。クレーンは、ブームシステムを完全に組み立てた後に、クレーン動作を開始することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ブームシステムの組立を行うことは、複雑な連続した動作をすることを意味する。そして、特に、クレーンが安全に移動可能な動作通路は、非常に幅が狭い。場合によっては、わずかな逸脱でさえも、傾きやクレーン構造への損害につながり得る。このために、特に、クレーンを組み立てることは、必要となるクレーン動作の実行に応じ、経験豊かなオペレータの人材及び長い時間の消費を必要とする。
【0004】
この課題は、クレーンの組立又は設置のときだけに生じるわけではない。同様の難局につながり得る付加的なクレーン動作の場合も考えられる。このため、そのような場合もクレーン人員補助の解決は望ましい。
【0005】
本発明の課題は、好ましくは例外的な状況で、特定のクレーン姿勢の開始を許容することができるクレーンの補助システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴に表される方法によって解決される。この方法の有利な実施形態は、主要な請求項の従属クレームに記載されている。
【0007】
本発明による方法は、クレーンによるクレーン動作補助の実行のために提案される。すなわち、クレーンは、例えばメインブーム及びラフィングジブの形で、相対的に移動可能である少なくとも2つのブーム要素を備えている。メインブームは、連結式の細長いブームを有するラッフィングクレーンタワーであってもよい。相対的に移動可能であるブーム要素の場合、必要に応じ、メインブーム及びラフィングジブと同様にデリックブームを含んでいてもよい。したがってこの点について、目標姿勢は、クレーンの荷重側目標姿勢だけでなく、バラスト側目標姿勢であってもよい。
【0008】
さらにまた、本発明によれば、補助制御モジュールは、ユーザによる起動の後、ブームシステムの少なくとも1つの目標姿勢を決定するものとして利用され得る。目標姿勢となるために必要なクレーン動作は、目標姿勢に依存して決定され、ユーザによる解放の後、特定のクレーンアクチュエータは、補助制御モジュールによるクレーン動作実行のために間接的に操作されるか又はクレーンコントローラによって直接作動される。
【0009】
補助制御モジュールは、従来のクレーンコントローラの構成要素となり得る。又は、補助制御モジュールは、外部モジュールとして設計されることができ、それはクレーンコントローラに接続され得る。補助制御モジュールは、クレーンに必ずしも固定して設けられる必要はなく、クレーンと別の遠隔コントローラの形で、例えば、別々の構成要素として操作されてもよく、この場合、クレーンコントローラを有する適切な通信インターフェイスが必要である。
【0010】
所望の目標姿勢が予め補助制御モジュールで決定されることは、本発明にとって重要である。補助制御モジュールは、目標姿勢をこれに依存して達成するために必要なクレーン動作を決定する。特に、補助制御モジュールは、それによって適切にクレーンアクチュエータを起動することができるように、必要なクレーン動作を特定のクレーンアクチュエータのための対応する制御コマンドに分けることができる。必要なクレーン動作の決定後、能動的な解放をクレーン操作者によって再び指示することができる。例えば、この解放は、接触式及び/又は光学式センサによって行われ得る。クレーン操作者は、したがってまず最初に補助制御モジュールへのコントローラからの能動的な転送によって現在の動作条件を評価しなければならず、最後に、半自律コントローラに対する能動的な解放を指示しなければならない。
【0011】
クレーン動作実行の間、クレーンコントローラによって実行されるクレーン動作のモニタリングが同時に行われてもよい。クレーンが通常の作業領域にある場合、通常の荷重トルク制限が適用され得る。ここで、クレーンの、特にブームシステムの現在の姿勢又は現在の条件は、それぞれ、通常のクレーンセンサによって決定され、そして、対応する許容荷重表の順守がモニタリングされる。これは、荷重を有する場合と有さない場合とのいずれの場合のクレーン動作にも適用できる。
【0012】
クレーンセンサが個々のブーム要素の角位置検出のための1つ以上の角度センサを備えていると有利である。1つ以上の荷重測定装置及び/又は距離センサ及び/又はリミットスイッチ又は他のいかなる光学的検出システムであっても、それぞれ同様に有利である。角度センサを使用する場合、可能な限りクレーンの角度に基づくモニタリングをする。この場合、例えば、上に述べた角度センサで、又は、他のセンサで測定された値は、モニタリング及び順守のために、対応する境界値と直接照合され得る。許容荷重表のモニタリングのための最大作業半径への面倒な転換は必要でない。角度ベースの方法は、荷重モーメント装置(LMD)がこれらの状況において作動中でないので、負の角度さえもコントローラにおいて、ブームの設置状況をモニタリングできる、という効果がある。
【0013】
「モニタリング」という言葉は、単に実行される自律的なクレーン動作だけでなく、クレーンアクチュエータの実際の能動的な調節のモニタリングという意味もある。クレーン動作の決定において、動作を始めるときに前もって難局を回避するために、補助制御モジュールは、好ましくは、いかなるモニタリング方法又は境界値若しくは許容荷重表をも考慮しなければならない。
【0014】
目標姿勢の決定は、様々な方法で行われ得る。最も単純な方法は、ユーザによる所望の目標姿勢の直接の入力によって行われる。一例として、クレーン操作者は、ブームの理論的な旋回角度及び/又は理論的な作業半径の設定又は地理座標入力値を入力すること(特に経度及び緯度を設定すること)によって、補助制御モジュールに要求される目標姿勢をそれぞれ間接的に入力することができる。
【0015】
代わりにクレーン操作者によって予め定められた目標姿勢を選択することで、目標姿勢の入力が行われてもよい。このことにより、例えば、クレーン操作者はクレーンと一体に設けたデータバンクに対して可能な目標姿勢について参照することができる。予め定められた目標姿勢は、それよりも前の履歴に左右され得る。つまり、例えば荷重支持又は荷重解放のためのクレーン姿勢のような、クレーン姿勢が、手動で又は自動的にデータバンクで定期的に設定される。
【0016】
また、クレーン操作者が目標姿勢を入力するのではなく、特定のクレーン機能を選択するだけでもよい。その場合、補助制御モジュールは、自動的に特定の目標姿勢を決定する。クレーンの状況に依存する停止姿勢の自律起動は、1つの考えられるサポートされたクレーン機能であり得る。設置面に依存する自律的なクレーンの設置又は分解は、付加的なクレーン機能であり得る。好ましくはブームシステムにフックブロックを組付又は取り外しすることの、特定の取付姿勢の自律起動が、それぞれ同様に考えられる。
【0017】
対応するクレーン機能の選択の後、補助制御モジュールは、独立してクレーン機能の実行のために最適である少なくとも1つの目標姿勢を決定する。それは、引き続いて起こるユーザによる解放の後、独立して始められる。
【0018】
停止姿勢の自律起動のための機能を選択すると、補助制御モジュールは、まず最初に現在の及び/又は将来の気象データをダウンロードすることができ、それに基づいてクレーンの最適停止姿勢を決定することができる。それぞれ、クレーンに一体に設けたセンサによって、又は、内部若しくは外部のデータバンクによって、この気象データをダウンロードすることが考えられる。例えば、補助制御モジュールは、通信インターフェイスによって、いかなる所望の外部情報サーバからでも気象データをダウンロードすることができる。最適目標姿勢の決定は、気象データによって計算され得るか又は気象データとの比較を通じて利用できるデータバンクからダウンロードすることによって決定され得る。最適な駐車姿勢は、風向、風荷重、その他に応じて変化し、最新の状況に応じて新しく決定されなければならない。理想的には、気象データは、クレーンの停止姿勢の間、その変化がチェックされる。極度の気象状況によって、例えば、駐車姿勢を変えることが必要となり得るか又は、ブームシステムを分解することが必要となり得る。
【0019】
ブームシステムの自律的な組立又は分解機能を選択すると、まず最初に補助制御モジュールによって、パラメータ及び/又は情報照会が実施され得る。組立又は分解プロセスのシーケンスの計算は、ダウンロードされるパラメータ又は情報を基礎として、その後実行され得る。可能性のあるパラメータは、準備されるブーム構成のための情報を含み得る。任意の補助手段(例えばブームの先端を支持するためのトロリーカート)を、組立プロセスに利用できるかどうかが加えて照会される。例えば、これは、クレーン上のカメラによって、自動的に決定され得る。
【0020】
支持地盤の許容荷重に関する情報は、同様に考慮され得る。
【0021】
上に述べたパラメータの1つ以上は、動作シーケンスの計算に含まれ得る。それによって、1つ以上の目標姿勢は、クレーン操作状態成立のために実施されなければならない動作シーケンスのために決定される。メインブーム及びジブブームの起動シーケンスである、角度位置及び特定の角度の変化は、個々に決定されなければならない。
【0022】
加えて、自律的な組立又は分解プロセスを実行する前に、補助制御モジュールの1つ以上の目標姿勢の決定の考慮に入れられるプロセスに関し、ユーザが、仕様又は選択を指示することができるようにしてもよい。ユーザは、例えば、使用するバラストの量及び/又は拡張ブームで支持面からラフィングジブを起立させるタイミングの、対応する選択を起動することができる。
【0023】
選択されたいずれの目標姿勢をも達成するために、補助制御モジュールによるクレーンの動作の決定は、考えられるどのようなユーザ仕様にも対応して基本的に最適化され得る。これは、上述したクレーン機能の実行において考慮されることができ、場合によっては、対応する目標姿勢の直接の入力にも対応して考慮され得る。いくつかの考えられる仕様は、クレーン動作の距離及び/又はクレーン動作の間に生じるクレーン構造の荷重に関し、及び/又は、バラストを少なくした動作、及び/又は、例えば行われている加速プロセスの最小化に関し、決定されたクレーン動作の最適化ができるようにすることであってもよい。
【0024】
それぞれ、目標姿勢を達成するために必要なクレーン動作は、クレーン旋回機構に対する制御コマンドと、ブームシステムの起伏動作用駆動ユニットに対する制御コマンドとに分けられるのが望ましい。したがって、補助制御モジュールは、目標姿勢を達成するためのいくつかのアクチュエータの同時又は経時的な起動を可能にする。上述した駆動部に加え、必要に応じ、制御は他の駆動部にも拡張され得る。
【0025】
上記本発明の方法に加え、本発明は、同様に本発明に係る方法の実行のための手段を有するクレーン用の補助制御モジュールに関する。このように、本発明に係る方法によって上述したものと同じ補助制御モジュールは、同様の効果及び特徴が得られる。このため、同様な説明は省略する。
【0026】
最後に本発明は、本発明に係るクレーンコントローラ及び少なくとも1つの補助制御モジュールを有するクレーン、特に移動式クレーンに関する。
【0027】
本発明の付加的な効果及び特性は、図において表される実施形態によって、以下においてさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】クレーンによるクレーン動作の補助を行う、本発明に係る方法の実施形態を示す図である。
図2】追加デリックブームを有するクレーンによるクレーン動作の補助を行う、本発明に係る方法の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
クレーンによるクレーン動作の補助を行う、本発明に係る方法の実施形態を図1を用いて以下に説明する。本実施形態のクレーンは、例えばラフィングジブ、細長いブーム、その他と協働するメインラッフィングブーム及びラッフィング拡張ブームを含む。本発明に係る方法は、主にクレーンを自動で組み立てること、すなわち、ブームシステムを自動で組み立てることに役立つが、他のクレーン動作のために適用されてもよい。
【0030】
開始点は、すでに利用可能なタイプのクレーン上のセンサ、特に角度センサであり、それによって、ブーム要素の個々の姿勢が正確に決定され得る。例えば、ピンの角度(すなわち水平に対するラフィングジブの角度)によって、正確にメインブームの角度(すなわち水平に対するメインブームの角度)と同様に、中間の角度(すなわち両方のブーム要素の間の角度)を決定することができる。実際のブーム姿勢の、この正確な検出によって、クレーン操作者は、荷重の有無にかかわらず、許容荷重表の範囲内だけでなく、許容荷重表の範囲外でも、ブームシステムの組立又は分解において、クレーン動作の半自律動作へ切り替えることができる。クレーンは、それから特定の規模に応じて所望の目標姿勢に最適に変化させられる。クレーン操作者は、特に、自律的なクレーン動作がクレーン構造に対してできるだけ穏やかに実行されるように、クレーン動作ができるだけバラストを少なくして行われるように、クレーン動作ができるだけ高速度によって実行されるように、必要な組立時間の最小化が目指されるように、又は、クレーン要素をできるだけ少なく起動して工程を短くするように、仕様を作成できる。
【0031】
自律的な組立を行う本発明に係る方法の実行のために、参照は、主として補助制御モジュールに対して行われる。補助制御モジュールは、既存のクレーンコントローラの構成要素であってもよいし、外部要素としてクレーンに実装されてもよいし、インターフェイスによって接続される外部要素であってもよい。オペレータによる補助制御モジュールの起動の後、組立又は分解プロセスのシーケンスの計算パラメータの照会が実行される。加えて、必要であれば、例えば、ブームの先端がトロリーカートによって可動に支持されるかどうか、又は、支持地盤の許容荷重がどれくらい高いかなどの、ブーム構成に関する情報をパラメータから作成することができる。トロリーカートの存在は、クレーン上のカメラによって、自動的に認識され得る。
【0032】
補助制御モジュールは、利用可能な情報を用いて付加的な目標姿勢から可能な第1の目標姿勢を決定し、その結果、必要に応じ、クレーンがその実際のクレーン動作を開始することができる最終的な目標姿勢の達成のための付加的な目標姿勢を決定する。異なる目標姿勢の1つの実施形態は、許容荷重表のLMD領域達成のためのステップ1、2、3及び4の図から推定され得る。ステップ1の間、ブームシステムは、ほとんど延長されてベース姿勢に位置し、ブームシステムは地面にほぼ完全に位置する。このため、ラフィングジブは、トロリーカートによって支持される。
【0033】
ステップ2の実行のために、3つの異なる手順があり、それらはクレーン設置面に依存する。ケース1によれば、中間の長さのラフィングジブが載置され、その結果、メインブームとラフィングジブとの間の最小の中間角度に達するまで、メインブームを十分遠くに起立させることができる。ケース2において、短いラフィングジブが準備され、その結果、メインブームは、ラフィングジブが水平に対して最小のピン角度(負の角)を有するように十分に起立される。ケース3の、特に長いラフィングジブの場合、メインブームは、まず最初にメインブームの最大角度で組み立てられる。
【0034】
ここで、ケース1及び2において、次の目標姿勢は、メインブームの最大角度の位置に起立されているだけのメインブームで構成され、それにより、ラフィングジブが地面から起立される。ステップ4の達成のために、ラフィングジブは、ほとんど水平姿勢となるように、対応して調節される。このため、メインブームの角度は、不変のままである。
【0035】
しかしながら、方法の実行は、図2に示すような別のクレーン設置面によっても可能である。ここでのクレーンは、メインブームと、図1のケース1と同様のラッフィング形式で接続された短いラフィングジブとを含む。対応するデリックバラストを有するデリックブームがされに設けられている。方法実行のために、メインブーム及びラフィングジブの相対的な姿勢に加え、デリックブームの及び/又はデリックバラストの現在の姿勢が同様に考慮されなければならない。ステップ1~4の異なる目標姿勢は、基本的に図1のケース1におけるステップ1~4のそれぞれに対応する。
【0036】
図1及び図2に示す方法の実行のために、個々に必要なクレーン動作は、補助制御モジュールによって、そして、特に、特定の組立構成、すなわち、デリックバラストを含む任意のデリックブームに取り付けられるラフィングジブ、ラフィングジブ用の補助カートの使用、又は、ユーザによって特定される組立プロセスに対する方針に依存して行われる。個々の目標姿勢の決定は、クレーン構成及びユーザ仕様の探知によって、補助制御モジュール内部で決定される。ここで、目標姿勢は、以下のパラメータから計算されることができ、又は、データバンクのメモリに格納されるデータと比較して読み出されることができる。補助制御モジュールによるスイッチ要素の能動的な解放で、新しい姿勢のために必要な動作は、旋回機構と、メインブーム及び先端ブームを起伏させるための又はデリックブームの起動のための駆動ユニットとに関してそれぞれ出される制御コマンドに分けられる。クレーン側モニタリングは、クレーンに存在する利用可能なデータ、許容荷重表又はそれらの取付領域及び、角度センサ、荷重測定装置、距離センサ、リミットスイッチ及び光学システムからなり得るクレーンに存在するセンサの状況の範囲内で行われる。クレーン操作者は、現在の動作条件を評価し、補助制御モジュールに対して制御の能動的な受け渡しによる、半自律制御用の解放を行わなければならない。この解放は、触覚センサ及び追加の光学センサによって行われ得る。
【0037】
モニタリングのための姿勢識別は、特定の角度の直接測定によって発生する。ブームシステム組立の間、測定角度のための対応する境界値がクレーンコントローラ及びクレーン動作に存在する、角度に基づくモニタリングが、測定値の直接比較によってモニタリングされ得る、又は、介入が制御によって行われ得るのが、特に好ましい。
【0038】
特に自動組立において、本発明に係る方法は、大きな利点を提供する。自動組立において、メインマストの起立工程の間、通常は荷重表の端の値に到達し、これは、概して、安定せず、「フリンジ(外縁)」を有し、そのポイントは、荷重及び補間法の反復的な判定によって説明される。クレーン動作によって荷重が表の端の値に接近すると、スイッチオフが行われる。その結果、クレーン操作者が次のクレーン動作のための正しい決定をすることは、非常に困難であることが多い。しかしながら、補助制御モジュールは、この問題を解決するために、修正動作に自動的に導くことができる。このことにより、組立プロセスの間、例えば中間の角度修正すなわち、メインブームとラッフィングジブとの間の角度の修正が行われる。その結果、ブームシステムは、許容荷重表の端の値からより大きく離れた値で、工程をできるだけ安全に終了させることができる。
【0039】
本発明の補助制御モジュールによって、クレーン運転台の駐車姿勢のためのブーム姿勢の半自律の起動は、自動組立に加え、その目的のための、例えば特定の許容荷重表において指定されているよりも可能な限り速い風速時のための、良好な姿勢にクレーンを動かすために、運転休止モードへ移行することもできる。
【0040】
このように、クレーンに設けられているセンサ及びそれらの測定値が、最適姿勢の決定のために用いられる。最適姿勢の決定は、前もって計算されるか又は実行中に計算されるデータによって行われる。加えて、その姿勢における現在の気象データ、若しくは、予想される気象について、又は、ブームシステムの必要な分解についての決定のためのデータは、照会によって得られ得る。オペレータによる補助制御モジュールの起動後、クレーンの駐車姿勢を維持すべき場合に予想される風速について照会することが行われる。可能な目標姿勢は、補助制御モジュールによる照会によって決定される。目標姿勢の決定は、クレーン上の計算によって、そうでなければ、クレーン上のデータバンクに格納されたデータによって行われ得る。いずれの目標姿勢も可能でない場合、ブームの分解が必要になり得る。
【0041】
また、補助制御モジュールが行うスイッチ要素による能動的な解放の後、新しい姿勢達成のために旋回機構に対する制御コマンドと、ブーム起伏動作用駆動ユニットに対する制御コマンドとがそれぞれ発せられる。ここで、クレーン側モニタリング又はドライブの調節は、角度ベースの方法によって行われ得る。
【0042】
第3の変形例として、荷重あり及び荷重無しで、半自律の最初のブーム姿勢は、許容荷重表内で補助システムによって実施され得る。異なるモードの選択によって、補助制御モジュールは、異なる動作を調節して適応させることができる。そこで、動作時間の減少及び構造への荷重の減少のために付加される動作が与えられる。荷重支持又は荷重除去のための姿勢データの使用が行われてもよい。オペレータによる補助制御モジュールの起動の後、目標姿勢の照会が行われる。姿勢情報は、旋回角度及び/若しくは作業半径を通じ、並びに/又は、ユーザによる経度及び緯度からなる地理座標の入力によって設けられ得る。
【0043】
スイッチ要素による能動的な解放の後、新しい姿勢のために必要な動作は、制御ユニットによって、旋回機構に対する制御コマンドとブーム起伏動作用駆動ユニットに対する制御コマンドとに分けられる。
図1
図2