(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ハイドロゲル薬物送達インプラント
(51)【国際特許分類】
A61K 9/06 20060101AFI20220621BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20220621BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220621BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220621BHJP
A61L 29/14 20060101ALI20220621BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20220621BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20220621BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20220621BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220621BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220621BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
A61K9/06
A61K38/02
A61K39/395 N
A61K47/10
A61L29/14 300
A61L29/16
A61L31/14 300
A61L31/16
A61P9/00
A61P27/02
A61P37/02
(21)【出願番号】P 2017531184
(86)(22)【出願日】2015-12-10
(86)【国際出願番号】 US2015064975
(87)【国際公開番号】W WO2016094646
(87)【国際公開日】2016-06-16
【審査請求日】2018-12-06
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-03
(32)【優先日】2014-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512156316
【氏名又は名称】インセプト・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】INCEPT,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ジャレット
(72)【発明者】
【氏名】ラミ・エル-ハイエク
(72)【発明者】
【氏名】アマルプリート・エス・ソーニー
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】藤原 浩子
【審判官】原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-533225(JP,A)
【文献】国際公開第2014/039012(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0071462(US,A1)
【文献】国際公開第2013/086015(WO,A1)
【文献】Journal of Controlled Release, 2003, Vol.91, p.299-313
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物医学的持続放出組成物であって、
ハイドロゲルまたはキセロゲルである第1の生分解性材料および治療剤を含む粒子の集合であって、前記第1の生分解性材料が、生分解前に、
pH7.4のリン酸緩衝液の生理溶液中で測定されるときに前記治療剤の放出速度を有する、粒子の集合と、
第2の
生分解性材料のハイドロゲルまたはキセロゲルの中に前記粒子の集合を少なくとも部分的に包み込むハイドロゲルまたはキセロゲルである第2の生分解性材料であっ
て、前記治療剤の50%w/w放出で測定されるときに前記治療剤の前記放出速度を20%以下だけ遅延させる、治療剤を含まない第2の
生分解性材料と
を含む、生物医学的持続放出組成物。
【請求項2】
前記第2の材料の固形分が、前記
第1の材料の固形分よりも低く、前記第2の材料の前記固形分が、
平衡含水量で測定されて、約2.5%~約20%w/wの範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第2の材料でできている前記ハイドロゲルが、共有結合的に架橋されていて、少なくとも3000Daである架橋間の分子量を
有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記治療剤の前記50%w/w放出で測定されるときに前記放出速度の前記遅延が10%以下で
ある、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記治療剤がタンパク質である、請求項2~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1の材料が、第1の官能基を含む第1の前駆体と、第2の官能基を含む第2の前駆体とを含み、前記第1の官能基および前記第2の官能基が共有結合的な架橋を形成し、
前記第2の材料が、第3の官能基を含む第3の前駆体と、第4の官能基を含む第4の前駆体とを含み、前記第3の官能基および前記第4の官能基が共有結合的な架橋を形成し、第1~第4の官能基が、反応前に、求電子基および求核基からなる群から選択される、
請求項2~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1~第4の前駆体が、共有結合的に架橋される前に水溶性である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
治療剤を含むキセロゲルまたはハイドロゲル粒子
であって、生分解前に、pH7.4のリン酸緩衝液の生理溶液中で測定されるときに前記治療剤の放出速度を有する、前記キセロゲルまたはハイドロゲル粒子、
生理溶液中で前記キセロゲルまたはハイドロゲル粒子の周囲を包み込むハイドロゲルを形成するためのハイドロゲル前駆体組成物であり、
前記包み込むハイドロゲルは、前記治療剤の50%w/w放出で測定されるときに前記治療剤の前記放出速度を20%以下だけ遅延させ、前記包み込むハイドロゲルは治療剤を含まない、ハイドロゲル前駆体組成物であり、並びに
前記キセロゲルまたはハイドロゲル粒子および前記ハイドロゲル前駆体組成物の混合物を供給するためのアプリケーター、
前記ハイドロゲル前駆体組成物のための溶媒、及び
前記キセロゲルまたはハイドロゲル粒子および前記ハイドロゲル前駆体組成物の混合物を送達するためのニードル
の1つ以上、
を含む、システムであって、
前記ハイドロゲル前駆体組成物が、第1の官能基を含む第1の前駆体と、第2の官能基を含む第2の前駆体とを含み、生理溶液中で前記第1の官能基および前記第2の官能基が共有結合的な架橋を形成し、前記第1及び第2の前駆体が、共有結合的に架橋される前に水溶性である、システム。
【請求項9】
前記キセロゲル又はハイドロゲル粒子をハイドロゲル前駆体組成物と混合し、ハイドロゲル前駆体を架橋して、包み込むハイドロゲルが前記キセロゲル又はハイドロゲル粒子の周囲に形成する、請求項8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2014年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/089,994号明細書に対する優先権を主張し、この特許出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
技術分野は、身体を治療(又は処置もしくは処理)する組成物に関し、周囲のハイドロゲル中に配置されている治療剤を有する、薬学的に許容できる共有結合的に架橋されたハイドロゲル粒子の集合を含む薬学的に許容できるインプラント系を含む。
【背景技術】
【0003】
背景
時間と共に治療上有効な用量で薬物を送達するインプラントは、多くの分野で有用である。制御された薬物放出の科学は、それが包含する科学的専門分野の範囲及びその応用の範囲の両方の観点から様々である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】治療剤を含むハイドロゲル粒子を封入するハイドロゲルを製造する方法の概略図である。
【
図2】
図1の実施形態からの治療剤の放出を示す概略図である。
【
図3】眼内に配置された
図1のハイドロゲルなどのハイドロゲルがある眼を描写する。
【
図5】コーティングにより起こされる放出の遅延を示す2つの曲線を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
詳細な説明
ハイドロゲル(またはヒドロゲル)の粒子は、時間と共に治療剤を送達する治療剤の制御放出に使用される。一般に、粒子は、薬剤の放出が望まれる部位に配置されることがあり、ハイドロゲルがその部位で生理液と反応するにつれて薬剤が放出される。眼などの部分では、眼内、その上、又はその内部の空間が限られているため、ハイドロゲル中の高濃度の薬剤が望ましい。空間が限られていない部位でさえ、治療の体積を必要最低限の空間の近く保つことは、送達系を最適にするはずである。しかし、本発明者らは、特定の量の余分のハイドロゲルをこれらの系に加えることが役立つことを見出した。ハイドロゲルは、好ましくは、送達される薬剤を含まない。
【0006】
例として
図1~2を参照すると、ハイドロゲル(又はヒドロゲル(hydrogels))100又はオルガノゲル(organogels)100’は、治療剤104の周囲での前駆体102の架橋により形成される。ハイドロゲル100又はオルガノゲル100’は、粒子としても、微粒子に加工されるより大きいハイドロゲル/オルガノゲルとしても形成され得る。ハイドロゲル100又はオルガノゲル100’は、直接使用しても、キセロゲルに製造しても、他の方法で加工して粒子108を形成してもよく、それはハイドロゲル又はキセロゲルである。ハイドロゲル110(又はオルガノゲル)は、粒子108の周囲の前駆体102により形成される。ハイドロゲル110(又はオルガノゲル)は、後に再水和されるキセロゲルへと製造することができる。ハイドロゲル粒子108中の薬剤は、ハイドロゲルが水溶液中にあるときに放出され、キセロゲル(xerogels)は水溶液に曝されるとハイドロゲルになる。ハイドロゲル粒子は、ハイドロゲル110中への治療剤104の外側への拡散を与える。ハイドロゲル110は、放出速度を変えないか、又は薬剤の放出速度の最小限の変化を与える。手短に言うと、使用時、ハイドロゲル108はエクスビボ(ex vivo)で形成され、ハイドロゲル110はエクスビボで形成されるか、又はインサイチュ(in situ)で形成され得る。用語インサイチュとは、ハイドロゲルが使用される意図される使用部位、例えば、患者の組織上を意味する。ハイドロゲルは体内で生理液と反応して、時間と共に薬剤を放出する。
【0007】
図5は、2組の制御放出プロファイルを描写する。被覆された試料は破線で示されており、薬剤の放出を遅延させる。遅延は、被覆された試料対被覆されていない試料の放出プロファイル間の時間である。遅延パーセンテージは、所与の累積放出パーセンテージで、非被覆試料からの累積放出に要する時間により割ったその時点での遅延を測定することにより計算できる。これらは仮説の曲線である。実際のデータはプロファイルの変動を示すと期待され得る。しかし、当業者は、正確な測定を決定するための被覆試料と非被覆試料とを正確に比較するための量のデータを容易に生成できる。
【0008】
被覆及び非被覆の放出プロファイルの類似性を定量化する種々の方法がある。一般に、曲線の最も早い部分及び最も遅い部分での放出は総放出量のわずかな部分のみを含み得るため、累積放出パーセンテージの限定された範囲にわたってプロファイルを調べることが役立ち得る。したがって、選択肢は、放出される薬剤の所与の累積パーセンテージ、例えば50%での放出速度を評価することを含む。他の選択肢は、いくつかの他の点、例えば10~90パーセントであり得る。当業者は、この範囲内の全ての範囲及び値、例えば20%、25%、33%、60%、67%などが企図及び支持されることを直ちに認識するであろう。別の選択肢は、範囲全体、例えば10%~90%にわたる遅延(最大遅延、平均(average)遅延、平均(mean)遅延)を測定することである。当業者は、この範囲内の全ての範囲及び値、例えば20%~60%、10%~50%、33%~67%、15%~95%が企図及び支持されることを直ちに認識するであろう。
【0009】
さらなる実施形態において、ハイドロゲル又はハイドロゲルになるキセロゲルを含む第1材料は、ハイドロゲル、キセロゲル、又は生理液若しくは他の水溶液への曝露時に互いに架橋することによりハイドロゲルになる前駆体である第2材料により被覆される。前駆体のコーティングは、乾燥していても、粉末として堆積していても、メルトでも、結合剤又は他の賦形剤、例えば、可塑剤、塩、滑沢剤などと混合されていてもよい。
【0010】
前駆体材料
ハイドロゲルは前駆体から製造される。前駆体は、結果として生じるハイドロゲルに望まれる性質を考慮して選択される。ハイドロゲル及び/又はオルガノゲルの製造に使用するための種々の好適な前駆体がある。用語前駆体は、架橋されてハイドロゲル又はオルガノゲルマトリックスを形成する分子を指す。治療剤又は充填剤などの他の材料がハイドロゲル又はオルガノゲル中に存在することがあるが、それらは前駆体ではない。用語マトリックスは、ハイドロゲル、オルガノゲル、及びキセロゲルに当てはまる。そのようなマトリックスには、溶媒含量が約20%w/wを超えるマトリックスもある。当業者は、パーセンテージがw/wであり、溶媒がハイドロゲルには水でありオルガノゲルには有機液体であるとして、20%~99%、80%~95%、少なくとも50%などを含む、明示された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることを直ちに認識するであろう。
【0011】
前駆体は有機溶媒に溶解して、オルガノゲルが製造され得る。オルガノゲルは、三次元架橋されたネットワークに捉えられた液体有機相で構成される非結晶性、非ガラス質の固体材料である。液体は、例えば、有機溶媒、鉱油、又は植物油でよい。溶媒の溶解度及び容積は、オルガノゲルの弾性及び堅さにとって重要な特性である。或いは、前駆体分子は、それ自体で、それ自体の有機マトリックスの形成が可能なことがあり、第3の有機溶媒の必要性が除かれる。オルガノゲルから溶媒(使用される場合)を除去すると、キセロゲル、乾燥したゲルが与えられる。キセロゲルは、例えば、凍結乾燥により形成され、高い多孔性(少なくとも約20%、大きい表面積及び小さい細孔径を有し得る。親水性材料により形成されるキセロゲルは、水溶液に曝されるとハイドロゲルを形成する。高細孔度キセロゲルは、より密なキセロゲルよりも急速に水和する。ハイドロゲルは水に溶けず、その構造内にかなりの部分の(20%を超える)水を保持する。実際、90%を超える含水量もしばしば知られている。ハイドロゲルは、水溶性分子を架橋して、基本的に無限の分子量のネットワークを形成することにより形成され得る。高含水量のハイドロゲルは、典型的には、柔らかく柔軟な材料である。米国特許出願公開第2009/0017097号明細書、米国特許出願公開第2011/0142936号明細書、及び米国特許出願公開第2012/0071865号明細書に記載されるハイドロゲル及び薬物送達系は、本明細書に提供される指針に従うことにより、本明細書の材料及び方法と共に使用するために改変でき、これらの引用文献は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれ、矛盾のある場合には本明細書が優先する。
【0012】
オルガノゲル及びハイドロゲルは、天然ポリマーからでも、合成ポリマーからでも、生合成ポリマーからでも形成できる。天然ポリマーは、グリコシミノグリカン(glycosminoglycans)、多糖類、及びタンパク質を含み得る。グリコサミノグリカンのいくつかの例には、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸、硫酸コンドロイチン、キチン、ヘパリン、ケラタン硫酸、ケラト硫酸、及びその誘導体がある。一般に、グリコサミノグリカンは、天然源から抽出され、精製され、誘導体化される。しかし、それらは、合成により製造されることも、細菌などの修飾された微生物により合成されることもある。これらの材料は、自然には可溶性の状態から、部分的に可溶性若しくは水膨潤性、又はハイドロゲル状態に合成により修飾できる。この修飾は、連結又はカルボキシル及び/若しくはヒドロキシル若しくはアミン基などのイオン化可能若しくは水素結合可能な官能基の、より疎水性の他の基による置換などの種々の周知の技法により達成できる。
【0013】
例えば、ヒアルロン酸上のカルボキシル基は、アルコールによりエステル化されて、ヒアルロン酸の溶解度を低下させる。そのようなプロセスは、ヒアルロン酸製品の種々の製造業者(Genzyme Corp.,Cambridge,MAなど)により利用されて、ハイドロゲルを形成するヒアルロン酸系のシート、繊維、及び布地が形成される。他の天然の多糖類、例えば、カルボキシメチルセルロース又は酸化再生セルロース、天然ゴム、寒天、アグロース(agrose)、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、フコイダン、ファーセレラン、ラミナラン、イバラノリ、キリンサイ、アラビアゴム、ガッチゴム、カラヤゴム、トラガカントゴム、ローカストビーンゴム、アルビノグラクタン(arbinoglactan)、ペクチン、アミロペクチン、ゼラチン、プロピレングリコールなどのポリオールと架橋されたカルボキシメチルセルロースガム又はアルギネートガムなどの親水コロイドなども、水性の環境と接触するとハイドロゲルを形成する。
【0014】
合成オルガノゲル又はハイドロゲルは、生物学的安定性でも生分解性でもあり得る。生物学的安定な親水性ポリマー性材料の例は、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリラート)、ポリ(電解質錯体)、加水分解性又は他の方法で分解可能な結合と架橋されたポリ(酢酸ビニル)、及び水膨張性N-ビニルラクタムである。他のハイドロゲルには、カーボポール(登録商標)として知られる親水性ハイドロゲル、酸性カルボキシポリマー(カルボマー樹脂は、C10-C30アルキルアクリラートにより変性された、高分子量、アリルペンタエリスリトール架橋されたアクリル酸系ポリマーである)、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、スターチグラフトコポリマー、アクリラートポリマー、エステル架橋ポリグルカンがある。そのようなハイドロゲルは、例えば、Etesの米国特許第3,640,741号明細書、Hartopの米国特許第3,865,108号明細書、Denzingerらの米国特許第3,992,562号明細書、Manningらの米国特許第4,002,173号明細書、Arnoldの米国特許第4,014,335号明細書、及びMichaelsの米国特許第4,207,893号明細書に記載されており、全て参照により本明細書に組み込まれるが、矛盾のある場合には本明細書が優先する。
【0015】
ハイドロゲル及びオルガノゲルは前駆体から製造できる。前駆体は、互いに架橋する。架橋は、共有結合によっても、物理的結合によっても形成できる。物理的結合の例は、イオン結合、前駆体分子セグメントの疎水性会合、及び前駆体分子セグメントの結晶化である。前駆体を反応するように誘発して、架橋されたハイドロゲルを形成できる。前駆体は重合性のことがあり、常にではないが多くの場合に重合性の前駆体である架橋剤を含む。そのため、重合性前駆体は、互いに反応してマトリックス及び/又は反復単位からできたポリマーを形成する官能基を有する前駆体である。前駆体はポリマーであり得る。
【0016】
前駆体の一部は、例えば、付加重合とも称される連鎖成長重合により反応し、二重又は三重化学結合を組み込んでいるモノマーの連結を含む。これらの不飽和モノマーは、分解し他のモノマーと結合して反復鎖を形成できる余分な内部結合を有する。モノマーは、他の基と反応してポリマーを形成する少なくとも1つの基を有する重合性分子である。マクロモノマー(又はマクロマー)は、それがモノマーとして作用することを可能とする少なくとも1つの反応性基を多くの場合に末端に有するポリマー又はオリゴマーである。各マクロモノマー分子は、反応性基の反応によりポリマーに結合する。したがって、2つ以上のモノマー又は他の官能基を有するマクロモノマーは、共有結合性の架橋を形成する傾向がある。付加重合は、例えば、ポリプロピレン又はポリ塩化ビニルの製造に関与している。付加重合の1タイプがリビング重合である。
【0017】
前駆体の一部は、例えば、モノマーが縮合反応により結合する場合に起こる縮合重合により反応する。典型的には、これらの反応は、アルコール、アミン又はカルボン酸(又は他のカルボキシル誘導体)官能基を組み込んでいる分子を反応させることにより達成できる。アミンがカルボン酸と反応すると、アミド又はペプチド結合が形成され、水が放出される。縮合反応の一部は、例えば、本明細書に明確に開示されている内容と矛盾しない範囲で参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,958,212号明細書にある通り、求核アシル置換に従う。前駆体の一部は、連鎖成長機構により反応する。連鎖成長ポリマーは、反応中心を有するモノマー又はマクロモノマーの反応により形成されるポリマーであると定義される。反応中心は、化学化合物が関与する反応の開始剤であるその化合物内の特定の位置である。連鎖成長ポリマー化学作用において、これは成長鎖の成長点である。反応中心は、通常、本質的にアニオン性又はカチオン性であるラジカルであるが、他の形態もとり得る。連鎖成長系にはフリーラジカル重合があり、開始、成長、及び停止のプロセスを含む。開始は、ラジカル開始剤、例えば、有機ペルオキシド分子から作られる、成長に必要なフリーラジカルの生成である。停止は、ラジカルがさらなる成長を妨げるように反応するときに起こる。最も通常の停止の方法は、2つのラジカル種が互いに反応して単一の分子を形成するカップリングによるものである。前駆体の一部は、逐次成長機構により反応し、モノマーの官能基間の逐次反応により形成されたポリマーである。ほとんどの逐次成長ポリマーは、縮合ポリマーと分類されるが、全ての逐次成長ポリマーが縮合物を放出するわけではない。モノマーは、ポリマーでも小分子でもよい。ポリマーは、多くの小分子(モノマー)を規則的なパターンで合わせることにより形成された高分子量分子である。ポリマーの分子量は、特記されない限り、重量平均分子量を指す。オリゴマーは、約20未満のモノマー性反復単位を有するポリマーである。小分子は、一般に、約2000ダルトン未満の分子を指す。このように、前駆体は、アクリル酸又はビニルカプロラクタムなどの小分子であることも、アクリラートによりキャップされたポリエチレングリコール(PEG-ジアクリラート)などの重合性基を含むより大きい分子であることも、本明細書に明確に開示されている内容と矛盾しない範囲で参照により全体として本明細書にそれぞれ組み込まれるDunnらの米国特許第4,938,763号明細書、Cohnらの米国特許第5,100,992号明細書及び米国特許第4,826,945号明細書、又はDeLucaらの米国特許第4,741,872号明細書及び米国特許第5,160,745号明細書のものなど、エチレン型不飽和基を含む他のポリマーでもあり得る。
【0018】
共有結合的に架橋されたハイドロゲルを形成するには、前駆体は共有結合的に架橋されなければならない。一般に、ポリマー性前駆体は、2点以上で他のポリマー性前駆体と接続するポリマーであり、各点は、同じ又は異なるポリマーへの連結である。少なくとも2つの反応中心(例えば、フリーラジカル重合において)を有する前駆体は、各反応基が異なる成長ポリマー鎖の形成に関係し得るため、架橋剤として作用できる。反応中心を有さない官能基の場合、とりわけ、架橋には、前駆体タイプの少なくとも1つの上に3つ以上のそのような官能基が必要である。例えば、多くの求電子求核反応は、求電子官能基及び求核官能基を消費するため、前駆体が架橋を形成するには第3の官能基が必要である。そのため、そのような前駆体は、3つ以上の官能基を有することがあり、2つ以上の官能基を有する前駆体により架橋され得る。架橋された分子は、イオン結合又は共有結合によっても、物理的な力によっても、他の引力によっても架橋され得る。しかし、共有結合の架橋は、典型的には、反応物生成物設計において安定性及び予測可能性を与える。
【0019】
いくつかの実施形態において各前駆体は多官能性であり、それは、1つの前駆体にある求核官能基が別の前駆体にある求電子官能基と反応して共有結合を形成できるように、それが2つ以上の求電子官能基又は求核官能基を含むことを意味する。前駆体の少なくとも1種は、3つ以上の官能基を含むため、求電子求核反応の結果として、前駆体は結合して、架橋されたポリマー性生成物を形成する。
【0020】
前駆体は、生物学的に不活性で親水性の部分、例えばコアを有し得る。分岐鎖ポリマーの場合、コアは、コアから伸びるアームに結合する分子の隣接部分を指し、アームは官能基を有し、それは多くの場合に分岐の末端にある。親水性分子、例えば前駆体又は前駆体部分は、水溶液に少なくとも1g/100mLの溶解度を有する。親水性部分は、例えば、ポリエーテル、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシド(PPO)、コ-ポリエチレンオキシドブロック又はランダムコポリマーなどのポリアルキレンオキシド、及びポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(ビニルピロリジノン)(PVP)、ポリ(アミノ酸、デキストラン、又はタンパク質であり得る。前駆体は、ポリアルキレングリコール部分を有することがあり、ポリエチレングリコール系であり得、ポリマーの少なくとも約80重量%又は90重量%はポリエチレンオキシド反復を含む。ポリエーテル及びより詳細にはポリ(オキシアルキレン)又はポリ(エチレングリコール)又はポリエチレングリコールは一般的に親水性である。当技術分野で通常である通り、用語PEGは、ヒドロキシル末端基の有無にかかわらずPEOを指すように使用される。
【0021】
前駆体は、高分子(又はマクロマー)でもあり得、これは千~数百万の範囲の分子量を有する分子である。しかし、ハイドロゲル又はオルガノゲルは、約1000Da以下(或いは、2000Da以下)の小分子としての前駆体の少なくとも1種により製造され得る。高分子は、小分子(約1000Da以下/200Da以下の)と組み合わせて反応する場合、好ましくは小分子より分子量で少なくとも5~50倍であり、好ましくは約60,000Da未満である。当業者は、明示された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることを直ちに認識するであろう。より好ましい範囲は、架橋剤よりも分子量で約7~約30倍の高分子であり、最も好ましい範囲は、重量で約10~20倍の差である。さらに、5,000~50,000の高分子の分子量が有用であり、7,000~40,000の分子量又は10,000~20,000の分子量も同様である。反応の完了のための拡散率など、小分子を有することに特定の利点がある。
【0022】
特定のマクロマー性前駆体は、明確に開示されている内容と矛盾しない範囲で参照により本明細書に全体として組み込まれるHubbellらの米国特許第5,410,016号明細書に記載された架橋性、生分解性、水溶性マクロマーである。これらのマクロマーは、少なくとも1つの分解性領域により分離している少なくとも2つの重合性基を有するという特徴がある。
【0023】
合成前駆体が使用できる。合成は、天然にはなく、通常、ヒトにもない分子を指す。いくつかの合成前駆体は、アミノ酸を含まず、天然にあるアミノ酸配列を含まない。いくつかの合成前駆体は、天然にはなく、通常、ヒトの体内にないポリペプチド、例えば、ジ-、トリ-、又はテトラ-リジンである。いくつかの合成分子はアミノ酸残基を有するが、連続する1、2、又は3個を有するのみであり、アミノ酸又はそのクラスターは、非天然のポリマー又は基により分離している。そのため、多糖類又はそれらの誘導体は合成ではない。
【0024】
或いは、天然のタンパク質又は多糖類、例えば、コラーゲン、フィブリン(フィブリノーゲン)、アルブミン、アルギナート、ヒアルロン酸、及びヘパリンは、これらの方法による使用のために改変され得る。これらの天然分子は、化学的デリビティゼーション(derivitization)、例えば、合成ポリマー装飾をさらに含み得る。天然分子は、その自然の求核剤によっても、例えば、本明細書に明確に開示される内容と矛盾しない範囲で参照により本明細書にそれぞれ組み込まれる米国特許第5,304,595号明細書、米国特許第5,324,775号明細書、米国特許第6,371,975号明細書、及び米国特許第7,129,210号明細書にある通り、それが官能基により誘導体化された後でも架橋できる。天然は、天然にみられる分子を指す。天然ポリマー、例えばタンパク質又はグリコサミノグリカン、例えば、コラーゲン、フィブリノーゲン、アルブミン、及びフィブリンは、求電子官能基を有する反応性前駆体種を使用して架橋できる。通常、体内に見られる天然のポリマーは、体内に存在するプロテアーゼによりタンパク質分解的に分解する。そのようなポリマーは、そのアミノ酸上にあるアミン、チオール、又はカルボキシルなどの官能基により反応することも、誘導体化されて活性化可能な官能基を有することもある。天然のポリマーがハイドロゲルに使用され得るが、そのゲル化時間及び最終的な機械的性質は、追加の官能基の適切な導入及び好適な反応条件、例えばpHの選択により制御されなければならない。
【0025】
前駆体は、生じるハイドロゲルが、必要な量の水、例えば、少なくとも約20%を保持する場合に疎水性部分と共に製造され得る。いくつかの場合、前駆体は、親水性部分も有するためにそれでもなお水溶性である。他の場合、前駆体は水に分散する(懸濁液)が、それでもなお反応可能であり架橋された材料を形成する。いくつかの疎水性部分は、複数のアルキル、ポリプロピレン、アルキル鎖、又は他の基を含み得る。疎水性部分を有する一部の前駆体は、商品名PLURONIC F68、JEFFAMINE、又はTECTRONICで販売されている。疎水性分子又はコポリマーなどの疎水性部分は、その分子(例えば、ポリマー又はコポリマー)を凝集させて、ミセル若しくは疎水性領域が水性連続相中にあるミクロ相を形成するほど十分に疎水性なもの、又はそれのみで試験される場合、pHが約7~約7.5で温度が摂氏約30~約50度の水の水溶液から沈殿するか、若しくはその中で他の方法で相を変えるほど十分に疎水性であるものである。
【0026】
前駆体の一部がデンドリマー又は他の高度に分岐された材料であり得ることを念頭に置くと、前駆体は、例えば2~100個のアームを有することがあり、各アームは末端を有する。ハイドロゲル前駆体上のアームは、架橋性官能基をポリマーコアに接続する直鎖の化学基を指す。いくつかの実施形態は、3~300個のアームを有する前駆体である。当業者は、明示された範囲内の全ての範囲及び値、例えば4~16、8~100、又は少なくとも6アームが企図されることを直ちに認識するであろう。
【0027】
例えば、ハイドロゲルは、例えば、第1組の官能基を有するマルチアームの前駆体及び第2組の官能基を有する低分子量前駆体から製造できる。例えば、6アーム又は8アームの前駆体は、親水性アーム、例えば、末端が一級アミンになっているポリエチレングリコールを有し得、アームの分子量は約1,000~約40,000である。当業者は、明示された範囲内の全範囲及び値が企図されることを直ちに認識するであろう。そのような前駆体は、比較的小さい前駆体、例えば、少なくとも約3つの官能基、又は約3~約16個の官能基を有する、約100~約5000、又は約800、1000、2000、又は5000以下の分子量を有する分子と混合され得る。当業者は、これらの明確に示された値の間の全範囲及び値が企図されることを直ちに認識するであろう。そのような小さい分子は、ポリマーでも非ポリマーでもよく、天然でも合成でもよい。
【0028】
デンドリマーでない前駆体を使用できる。樹枝状分子は、原子が中心コアから放射状に広がる多くのアーム及びサブアーム中に配置されている、高度に分岐した放射対称ポリマーである。デンドリマーは、対称性と多分散性との両方の評価に基づいたその構造完全性の程度という特徴があり、合成に特別な化学プロセスが必要である。したがって、当業者は、デンドリマー前駆体を非デンドリマー前駆体から容易に区別できる。デンドリマーは、典型的には所与の環境中でのその成分ポリマーの溶解度に依存し、その周囲の溶媒又は溶質、例えば、温度、pH、又はイオン量の変化によって大幅に変わり得る形状を有する。
【0029】
前駆体は、例えば、米国特許出願公開第2004/0086479号明細書及び米国特許出願公開第2004/0131582号明細書、並びにPCT公報国際公開第07005249号パンフレット、国際公開第07001926号パンフレット、及び国際公開第06031358号パンフレット、又はその米国対応特許にあるようにデンドリマーであり得る。デンドリマーは、例えば、米国特許出願公開第2004/0131582号明細書及び米国特許出願公開第2004/0086479号明細書並びにPCT公報国際公開第06031388号パンフレット及び国際公開第06031388号パンフレットにあるように多官能性前駆体として有用であり、US及びPCT出願のそれぞれは、本明細書に明確に開示されている内容と矛盾しない範囲で参照により本明細書に全体として組み込まれる。デンドリマーは高秩序で、高い表面積対体積比を有し、起こり得る官能化のための多くの末端基を示す。実施形態は、デンドリマーでない多官能性前駆体を含む。
【0030】
いくつかの実施形態は、5残基以下のオリゴペプチド配列、例えば、少なくとも1つのアミン、チオール、カルボキシル、又はヒドロキシル側鎖を含むアミノ酸から基本的になる前駆体を含む。残基は、天然又はその誘導体化されたアミノ酸である。そのようなオリゴペプチドの骨格は、天然でも合成でもよい。いくつかの実施形態において、2つ以上のアミノ酸のペプチドは合成の骨格と合わせられて前駆体を作る。そのような前駆体の特定の実施形態は、約100~約10,000又は約300~約500の範囲の分子量を有する。当業者は、これらの明確に示された範囲の間の全範囲及び値が企図されることを直ちに認識するであろう。
【0031】
前駆体は、メタロプロテイナーゼ及び/又はコラゲナーゼによる付着を受けやすい配列を含まないことを含む、導入の部位に存在する酵素により切断可能なアミノ酸配列を含まないように調製され得る。さらに、前駆体は、全アミノ酸を含まないようにも、約50、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは又は1を超えるアミノ酸のアミノ酸配列を含まないようにも製造できる。前駆体は非タンパク質でよく、それは、それらが天然のタンパク質でなく、天然のタンパク質を切断することにより製造できず、合成材料をタンパク質に加えることにより製造できないことを意味する。前駆体は、非コラーゲン、非フィブリン、非フィブリノーゲン、及び非アルブミンでよく、それは、それらがこれらのタンパク質の1つでなく、これらのタンパク質の1つの化学的誘導体でないことを意味する。非タンパク質前駆体の使用及びアミノ酸配列の制限された使用は、免疫反応を回避するため、望まれない細胞認識を回避するため、及び天然源から誘導されたタンパク質の使用に関連する危険を回避するために有用になり得る。前駆体は、非糖類(糖類を含まない)でも基本的に非糖類でもよい(w/wで前駆体分子量の約5%を超える糖類を含まない。そのため、前駆体は、例えば、ヒアルロン酸、ヘパリン、又はゲランを除外し得る。前駆体は、非タンパク質と非糖類との両方にもなり得る。本明細書での用語タンパク質は、ポリペプチドを指す広い用語である。用語タンパク質断片は、野生型タンパク質の完全な配列未満を指すように使用され得る。前駆体又は治療剤はタンパク質断片であり得る。
【0032】
ペプチドは前駆体として使用され得る。一般に、より大きい配列(例えば、タンパク質)が使用され得るが、約10残基未満のペプチドが好ましい。当業者は、これらの明確な範囲内の全ての範囲及び値、例えば1~10、2~9、3~10、1、2、3、4、5、6、又は7が含まれることを直ちに認識するであろう。アミノ酸の一部は、求核基(例えば、一級アミン又はチオール)又は必要に応じて求核基若しくは求電子基(例えば、カルボキシル又はヒドロキシル)を組み込むように誘導体化できる基を有する。合成により製造されたポリアミノ酸ポリマーは、通常、それらが天然に存在せず、天然の生体分子と同一とならないように操作されている場合、合成であると考えられる。
【0033】
オルガノゲル及びハイドロゲルの一部は、ポリエチレングリコール含有前駆体により製造される。ポリエチレングリコール(PEG、高分子量で存在する場合にはポリエチレンオキシドとも称される)は、反復基(CH2CH2O)nを有し、nが少なくとも3であるポリマーを指す。そのため、ポリエチレングリコールを有するポリマー性前駆体は、直線に連続して互いに結合したこれらの反復基の少なくとも3つを有する。ポリマー又はアームのポリエチレングリコール含量は、ポリエチレングリコール基間に他の基がある場合でも、ポリマー又はアーム上のポリエチレングリコール基の全てを合計することにより計算される。そのため、少なくとも1000MWのポリエチレングリコールを有するアームは、少なくとも1000MWの合計に十分なCH2CH2O基を有する。当技術分野における通常の術語である通り、ポリエチレングリコールポリマーは、必ずしも末端がヒドロキシル基である分子を指さない。分子量は、記号kを使用して、1000を単位に略記され、例えば15Kは15,000分子量、すなわち15,000ダルトンを意味する。NH2は、アミン末端を指す。SGは、グルタル酸スクシンイミジルを指す。SSは、コハク酸スクシンイミジルを指す。SAPは、アジピン酸スクシンイミジルを指す。SAZは、アゼライン酸スクシンイミジルを指す。SS、SG、SAP及びSAZは、水中で加水分解により分解するエステル基を有するスクシンイミジルエステルである。このように、加水分解性又は水分解性は、水が過多にあると、分解を媒介する酵素又は細胞が全く存在しなくてもインビトロで自然に分解する材料を指す。分解の時間は、肉眼により判断して材料の事実上の消失を指す。トリリジン(LLLとも略される)は合成トリペプチドである。PEG及び/又はハイドロゲル、並びにそれを含む組成物は、薬学的に許容できる形態で提供でき、それは高度に精製され、混在物、例えばパイロジェンを含まないことを意味する。
【0034】
ハイドロゲル(又はヒドロゲル)の構造
ハイドロゲルの構造及びハイドロゲルの前駆体の物質組成は、その性質を決める。前駆体因子には、生体適合性、水溶性、親水性、分子量、アーム長さ、アーム数、官能基、架橋間の距離、分解性などの性質がある。溶媒の選択、反応スキーム、反応物濃度、固形分(solids content)などを含む反応条件の選択もハイドロゲルの構造及び性質をもたらす。特定の性質又は性質の組み合わせを達成するための種々の方法があり得る。他方で、性質の一部は互いに拮抗し、例えば、もろさは、架橋間の距離又は固形分が増加するにつれて増加し得る。強さは、架橋数の増加により増加し得るが、膨潤はそれにより減少し得る。特定の性質の達成を、関与する前駆体の一般的な種類に単に基づいて仮定すべきではないように、同じ材料を使用して、非常に異なる機械的性質及び性能を有する幅広い範囲の構造を有するマトリックスを製造できることを当業者は認識するであろう。
【0035】
ハイドロゲルの分子ストランド間の空間(マトリックス)は、分子の拡散速度を含む、いくつかのハイドロゲルの性質に影響する。架橋密度は、架橋剤として使用される前駆体及び他の前駆体の全体の分子量の選択、並びに1前駆体分子あたりに利用可能な官能基の数により制御できる。200などのより低い架橋間分子量は、500,000などのより高い架橋間分子量に比べてはるかに高い架橋密度を与える。当業者は、この範囲内の全範囲及び値、例えば200~250,000、500~400,000などが企図及び支持されることを直ちに認識するであろう。架橋密度は、架橋剤及び官能性ポリマーの溶液の全体の固形分パーセントによっても制御できる。架橋密度を制御するさらに別の方法は、求電子官能基に対する求核官能基の化学量論を調整することによる。1対1の比率は、最高の架橋密度をもたらす。架橋可能な部位間の距離がより長い前駆体は、一般的により柔らかく、しなやかで、弾力性のあるゲルを形成する。そのため、ポリエチレングリコールなどの水溶性セグメントの長さが増加すると、弾力性が増加して望ましい物性をもたらす傾向がある。そのため、特定の実施形態は、2,000~100,000の範囲の分子量を有する水溶性セグメントを有する前駆体を対象とする。当業者は、明示された範囲内の全ての範囲及び値、例えば5,000~35,000が企図されることを直ちに認識するであろう。このように、実施形態は、架橋間分子量が少なくとも2000、少なくとも4000、又は2000~250,000である材料(オルガノゲル、ハイドロゲル、キセロゲル、第2の材料のエンベロープ若しくはコーティング内に配置される(第1の)材料、又はエンベロープに使用される(第2の)材料)を含む。当業者は、例えば、以下:3000、5000、10,000、50,000、100,000のいずれもが上限又は下限として利用可能であるとして、明示された範囲の間の全範囲及び値が企図されることを直ちに認識するであろう。ハイドロゲル(又はハイドロゲルを生じるキセロゲル若しくはオルガノゲル)の固形分は、その機械的性質及び生体適合性に影響することがあり、競合する要件間のバランスを反映している。比較的低い固形分、例えば、約2.5%~約20%が有用であり、当業者は、この範囲が、その間の全範囲及び値、例えば、約2.5%~約10%、約5%~約15%、又は約15%未満を含んでいることを直ちに認識するであろう。固形分及び架橋間距離は、水中の材料の平衡含水量で測定される。このため、実施形態は、約2.5%~約20%の固形分を有する材料(オルガノゲル、ハイドロゲル、キセロゲル、第2の材料のエンベロープ若しくはコーティング内に配置される(第1の)材料、又はエンベロープに使用される(第2の)材料)を含む。当業者は、明示された範囲の間の全範囲及び値が企図されることを直ちに認識するであろう。固形分パーセンテージは、平衡含水量で測定されたw/wである。
【0036】
遅延が制御又は最小限にされるように材料を構成する一方法は、薬剤の拡散の異なる速度を有するハイドロゲルを設計することである。多くの場合、薬剤の分子量(MW)は、支配的な変数である。ハイドロゲルの性質を拡散と関係付ける手法がいくつかある。これらには、自由体積理論、流体力学理論、障害理論、組み合わせ理論、及びメッシュサイズ、ふるいの条件(sieving terms)、鎖間の隙間の分布などのパラメーターがある(Amsden,Macromolecules(1998)31:8382-8395)。しかし、実際には、ハイドロゲルを、その架橋間の種々の距離をもって製造し、特定の分子について試験して、所望の拡散速度を与えるハイドロゲルを作ることができる。一般に、分子の大きさに比べて大きい架橋間距離は高い拡散速度を与え、分子の大きさに比べて小さい架橋間距離はゆっくりした拡散を与え、分子よりも小さい架橋間距離は基本的に拡散を与えない。分子の分子量は、一般に、その大きさの有用な尺度である。重要になり得る他の因子があり、それらがハイドロゲルを作る際に説明され得る:例えば、親和力又は電荷対電荷などの分子とハイドロゲルとの間の相互作用及び分子の疎水性などの溶媒効果。
【0037】
したがって、実施形態は、
ハイドロゲル又はキセロゲルである第1の生分解性材料(biodegradable material)および治療剤(therapeutic agent)を含む粒子の集合(又は集合体)(collection)であって、第1の材料が、生分解前に、生理溶液(又は生理学的な溶液)(physiological solution)中で測定されるときに治療剤の放出の第1速度を有する、粒子の集合と、
(生分解前に)所定量だけ放出を遅らせ、任意選択で、薬剤が粒子から第2のハイドロゲルへと拡散する時間まで治療剤を含まないハイドロゲル又はキセロゲルである第2の材料と
を含む、患者に使用するための生物医学的持続放出システム(又は生物医学的持続放出系もしくはバイオメディカル持続放出システム(biomedical sustained release system))を含む。所定量の放出は、例えば
図5にすでに記載された通り、制御放出プロファイルを参照して説明できる。ハイドロゲルからの放出速度は、溶液がハイドロゲルと比べて非常に大きいために薬剤が溶液中に蓄積せず、放出の実効速度を減少させないほど十分に大過剰の生理溶液中においてインビトロで測定される。試験用の溶液は、当技術分野において通常である通り、生理的条件に浸透圧を調整したpH7.4のリン酸緩衝液である。また、pH7.2は、特に眼組織環境を模倣するためにしばしば利用される。
【0038】
種々の治療剤が本明細書に記載され、それらは、これらの系に組み込むことができる。それらの大きさは周知であるか、容易に決定される。それらの放出速度は容易に確認できる。薬物は、本明細書に具体的に述べられるものでも、約450kDa未満又は200Da~約450kDaの範囲の分子量を有する薬剤でもよい。当業者は、この範囲内の全範囲及び値、例えば、約500Da~約250kDa、約10kDa~約180kDa、約205kDa以下、約100kDa~約255kDaなどが企図及び支持されることを直ちに認識するであろう。放出速度は、埋め込みの時点での系の状態を反映する。系は生分解性であり得、相対速度は分解が起こるにつれて時間と共に変化し得る。しかし、第2の材料を通る放出速度は非常に高いため、それは分子の通過を許し、送達プロセスの制御にとって必須ではない。ハイドロゲルのエンベロープ内部の粒子及び粒子中の薬剤の状態が、薬剤の放出にとって支配的である。エンベロープは放出の速度に影響し得るが、付随的であるに過ぎない。
【0039】
実際、第2の材料は、インビボで少なくとも部分的に第1のハイドロゲルを被覆するハイドロゲルであり、生体適合性において役割がある。ハイドロゲル粒子が、薬剤、具体的には、インビボ試験の動物モデルに固有のものでないタンパク質によりロードされた場合、生体適合性の欠如を示すいくつかの望まれない生物学的作用を引き起こしたことが観察された。しかし、同じ材料がハイドロゲルにより被覆されると、生体適合性が増加した。ウサギの眼は、非常に感受性が高いモデルであり、これらの効果を証明するために使用された。特定の理論に拘束されないが、マクロファージ又は他の免疫系細胞が、第2の材料の一体型(monolithic)コーティングよりも粒子に対して反応性があったことが理論付けられる。粒子は、シート様のコーティングと比べてより大きい表面積を有し、細胞、ウイルス、又は組織表面により類似している。さらに又は代わりに、粒子は薬剤を含んでいたが、薬剤分子の全てをその全体として被覆していないこともあり得、そのため、ハイドロゲルが分解する前に免疫系細胞がそれらと相互作用し得た。外側の包んでいるハイドロゲルは、全細胞を中に入れないが、薬剤を粒子から迅速且つ自由に拡散させるような大きさに作られている。用語封入は、使用される場合、注射又は他の方法で患者中に配置される粒子の全ての上にコーティングを配置することを指す。明らかである通り、実施形態は、第2の材料を、第1の材料(粒子など)に比べて、分子量、固形分、架橋間距離、及びインビボでの残留の1つ以上に関してより低い値を有するように選択することを含む。第1の材料(ハイドロゲルなど)は粒状の形態でよく、本明細書の他の箇所に記載されている特定のサイズ範囲又は分布を有する粒子の集合であり得る。粒子は薬物送達には有用であるが、例えば、医療用インプラント、埋め込み可能な材料、ロッド、少なくとも1mmの寸法を有するロッド、涙点プラグなど、他の物体(objects)は被覆され得る。
【0040】
実施例1は、インサイチュで形成されたハイドロゲルコーティングの治療剤の放出速度の比較を示す。この試験において、急速に分解するハイドロゲル粒子を使用した。これらは、薬剤の通過を許すように意図されたハイドロゲルコーティング中に粒子を封入する効果が試験されるように、簡便には、治療剤放出の高い速度を与えた。小さいが処理しやすい放出速度の差が観察され、両方の製剤は1週間未満で完全に放出した。これは、緩徐放出用に設計された粒状ハイドロゲル系タンパク質送達系では、比較的高放出のハイドロゲルを重ね合わせて、組み合わせた系を製造できることを示す。実施例2において、実施例1の封入ハイドロゲルが、生体適合性の向上に重要な効果を有したことが観察された。封入ハイドロゲルにより被覆されたハイドロゲル粒子は、網膜周囲でOTX-14と比べて著しく低い炎症を示した(表2)。
【0041】
官能基
共有結合性の架橋の前駆体は、患者の外側又はインサイチュで互いに反応して共有結合により材料を形成する官能基を有する。官能基は、一般的に、フリーラジカル、付加、及び縮合重合を包含する広い分類である重合性であり、並びに求電子求核反応の基もある。重合反応の種々の態様が本明細書の前駆体の項で議論される。
【0042】
そのため、いくつかの実施形態において、前駆体は、重合分野で使用される光開始若しくはレドックス系により活性化される重合性基又は求電子官能基、例えば、本明細書に明確に開示されている内容と矛盾しない範囲でそれぞれ参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第5,410,016号明細書若しくは米国特許第6,149,931号明細書にあるカルボジイミダゾール、塩化スルホニル、クロロカーボネート、n-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、又はスルファスクシンイミジルエステルを有する。求核官能基は、例えば、アミン、ヒドロキシル、カルボキシル、及びチオールであり得る。別のクラスの求電子剤は、例えば米国特許第6,958,212号明細書にある通りのアシルであり、それは、とりわけポリマーを反応させるマイケル付加のスキームを記載している。
【0043】
アルコール又はカルボン酸などの特定の官能基は、生理的条件(例えば、pH7.2~11.0、37℃)下でアミンなどの他の官能基と通常反応しない。しかし、そのような官能基は、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの活性化基を使用することにより、反応性を高めることができる。特定の活性化基には、カルボニルジイミダゾール、塩化スルホニル、アリールハライド、スルホスクシンイミジルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、エポキシド、アルデヒド、マレイミド、イミドエステルなどがある。N-ヒドロキシスクシンイミドエステル又はN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHS)基は、タンパク質又はアミン含有ポリマー、例えば、アミノ末端ポリエチレングリコールの架橋に有用な基である。NHS-アミン反応の利点は、反応速度が好都合であることであるが、ゲル化速度はpH又は濃度により調整できる。NHS-アミン架橋反応は、副生成物としてN-ヒドロキシスクシンイミドの形成をもたらす。N-ヒドロキシスクシンイミドのスルホン化又はエトキシ化形態は、比較的高い水への溶解度を有し、そのため、身体からの迅速なクリアランスを有する。NHS-アミン架橋反応は、水溶液中、及び緩衝液、例えば、リン酸緩衝液(pH5.0~7.5)、トリエタノールアミン緩衝液(pH7.5~9.0)、又はホウ酸緩衝液(pH9.0~12)、又は炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH9.0~10.0)の存在下で実施できる。NHS系架橋剤及び官能性ポリマーの水溶液は、NHS基と水との反応のため、好ましくは架橋反応の直前に作られる。これらの基の反応速度は、これらの溶液をより低いpH(pH4~7)に保つことにより遅くさせることができる。緩衝液はまた、体内に導入されるハイドロゲルに含めてよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、求核前駆体と求電子前駆体との両方が架橋反応に使用される限り、各前駆体は、求核官能基のみ又は求電子官能基のみを含む。そのため、例えば、架橋剤がアミンなどの求核官能基を有する場合、官能性ポリマーは、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの求電子官能基を有し得る。他方で、架橋剤がスルホスクシンイミドなどの求電子官能基を有する場合、官能性ポリマーは、アミン又はチオールなどの求核官能基を有し得る。例えば、タンパク質、ポリ(アリルアミン)、又はアミン末端二官能性若しくは多官能性のポリ(エチレングリコール)などの官能性ポリマーを使用できる。
【0045】
一実施形態は、それぞれ2~16個の求核官能基を有する反応性前駆体種及びそれぞれ2~16個の求電子官能基を有する反応性前駆体種を有する。当業者は、明示された範囲内の全ての範囲及び値、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16個の基が企図されることを直ちに認識するであろう。
【0046】
官能基は、例えば、求核剤と反応可能な求電子剤、特定の求核剤、例えば一級アミンと反応可能な基、生体液中で材料とアミド結合を形成する基、カルボキシルとアミド結合を形成する基、活性化された酸官能基、又はこれらの組み合わせでよい。官能基は、例えば、強い求電子官能基であり得、これは、pH9.0の室温室圧の水溶液中で一級アミンと共有結合を有効に形成する求電子官能基及び/又はマイケルタイプ反応により反応する求電子基を意味する。強い求電子剤は、マイケルズ(Michaels)タイプ反応に関与しないタイプのことも、マイケルズタイプ反応に関与するタイプのこともある。
【0047】
マイケルタイプ反応は、求核剤の共役不飽和系に対する1,4付加反応を指す。付加機構は純粋に極性であり得るか、ラジカル様中間体状態により進行し得る。ルイス酸又は適切に設計された水素結合種が触媒として作用し得る。用語コンジュゲーションは、炭素-炭素、炭素-ヘテロ原子、若しくはヘテロ原子-ヘテロ原子の多重結合と単結合とが交互にあることと、合成ポリマー若しくはタンパク質などの高分子への官能基の連結との両方を指し得る。マイケルタイプ反応は、本明細書に明確に開示されている内容と矛盾しない範囲であらゆる目的のために参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,958,212号明細書において詳細に議論されている。
【0048】
マイケルズタイプ反応に関与しない強い求電子剤の例は、スクシンイミド、スクシンイミジルエステル、又はNHS-エステルである。マイケルタイプ求電子剤の例は、アクリラート、メタクリラート、メチルメタクリラート、及び他の不飽和重合性基である。
【0049】
開始系
前駆体の一部は開始剤を使用して反応する。開始剤基は、フリーラジカル重合反応を開始することができる化学基である。例えば、それは別の成分としても、前駆体上のペンダント基としても存在し得る。開始剤基には、熱開始剤、光活性化可能な開始剤、及び酸化還元(レドックス)系がある。長波UV及び可視光光活性化可能な開始剤には、例えば、エチルエオシン基、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン基、他のアセトフェノン誘導体、チオキサントン基、ベンゾフェノン基、及びカンファキノン基がある。熱反応性開始剤の例には、4,4’アゾビス(4-シアノペンタン酸)基、及びベンゾイルペルオキシド基の類似物がある。Wako Chemicals USA,Inc.,Richmond,Vaから利用可能なV-044などのいくつかの市販の低温フリーラジカル開始剤を使用して、体温でフリーラジカル架橋反応を開始して、ハイドロゲルコーティングを上述のモノマーと共に形成できる。
【0050】
金属イオンをレドックス開始系における酸化剤又は還元体として使用できる。例えば、二価の鉄イオンをペルオキシド又はヒドロペルオキシドと組み合わせて使用して重合を開始することも、重合系の一部として使用することもできる。この場合、二価の鉄イオンは還元体として作用するであろう。或いは、金属イオンは、酸化体として作用し得る。例えば、セリウムイオン(セリウムの4+原子価状態)は、カルボン酸及びウレタンを含む種々の有機基と相互作用して、電子を金属イオンへと除去し、開始ラジカルを有機基上に残す。そのような系では、金属イオンは酸化剤として作用する。いずれの役割でも潜在的に好適な金属イオンは、遷移金属イオン、ランタニド、及びアクチニドのいずれでもあり、それらは少なくとも2つの容易に利用可能な酸化状態を有する。特に有用な金属イオンは、1つのみの電荷の違いにより別れている少なくとも2つの状態を有する。これらのうち、最も普通に使用されるのは、三価鉄/二価鉄;二価銅/一価銅;四価セリウム/三価セリウム;三価コバルト/二価コバルト;バナジデートV対IV;ペルマンガナート;及び三価マンガン/二価マンガンである。過酸化水素、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、クミルペルオキシドを含むペルオキシド及びヒドロペルオキシドなどの過酸素(Peroxygen)含有化合物を使用できる。
【0051】
開始剤系の例は、ある溶液中の過酸素化合物と別の溶液中の遷移金属などの反応性イオンとの組み合わせである。この場合、重合の外部開始剤は全く必要なく、重合は、2つの相補的な反応性官能基含有部分が利用部位で相互作用すると、自然に、外部エネルギーを加えたり外部エネルギー源を使用したりせずに進行する。
【0052】
コーティングとしての前駆体
実施形態は、水溶液に曝されるとインサイチュでハイドロゲルを形成する前駆体の少なくとも部分的なコーティングを有する医療用装置を含む。用語医療用装置は広く、薬物送達装置、薬物の送達のための薬物デポ(drug depots)、眼内薬物デポ(intraocular drug depot)、埋め込み装置(implantable)、プロテーゼ、及び生理液と接触するように製造された物体を包含する。例は、涙点プラグ、眼内薬物デポ、又は医療用装置に使用される繊維であり、プラグ又は繊維は完全又は部分的に前駆体により被覆されている。コーティングを施す方法は、被覆される装置又は部分を、コーティングを形成するポリマー又は複数のポリマー(前駆体)のメルトに浸漬することを含む。例えば約100℃以下の温度で融解するポリマーは、溶媒がない状態で融解する。プラグ又はその一部はメルトに浸漬される。メルトは放冷されて固体になり、37℃で固体のままである。プラグをメルトに浸漬する代わりに、メルトを他の方法で、例えば刷毛で塗る、ロール塗り(rolling)、プラグ上にメルトを落とすなどで加えることができる。用語メルトは、ポリマーに関連して、液体状態であるが溶媒に溶けているのではないポリマー、又はその溶媒のように作用するポリマーを指す。いくつかの他の材料がメルト中に存在し得るが、それらはメルトの溶媒ではない。少量の溶媒が、メルト中のかなりの部分のポリマーを溶かすには有効でない濃度、例えば、総重量あたり10重量%以下で存在し得ることが認識されている。当業者は、重量%/総重量を指して、下記:0.1、0.2.、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のいずれもが上限又は下限として利用可能であるとして、明示された範囲の間の全範囲及び値が企図されることを直ちに認識するであろう。メルトの融点の調整に役立つ作用物質がメルト中に存在してよい。例えば、ポリマー間の会合力を低下させる作用物質の添加を追加して融点を下げることができる。そのような作用物質は、非溶媒でも溶媒でもよい。そのような作用物質は、例えば、総重量あたり10重量%以下で添加され得る。当業者は、重量%/総重量を指して、下記:0.1、0.2.、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のいずれもが上限又は下限として利用可能であるとして、明示された範囲の間の全範囲及び値が企図されることを直ちに認識するであろう。また、分岐鎖のポリマーの使用を利用して解温度を調整できる。
【0053】
涙点プラグ又は他の装置を損傷なしに浸漬するのに妥当な温度で融解するポリマーの例にはPEGがあり、融点はPEGのMWと関係している。約8,000MWのPEGが試験されており、有用である。PEGの他のMWは、例えば、約2,000~約100,000である(ポリマーのMWは、特記されない限り重量平均分子量を指す)。一般に、ポリマー又はポリマーの混合物は、所望の融解温度及び目標溶解時間を設定するように選択される。
【0054】
涙点プラグ又は他の装置に前駆体コーティングを施す方法は、涙点プラグ又は他の装置を、涙点プラグのための溶媒でない溶媒に溶解している状態の、コーティングを形成するポリマーを含む溶液に曝すことを含む。溶媒は、一般には、非水性であり、有機溶媒である。有機溶媒の例は、炭酸ジメチル、ジメチルホルムアミド ジメチルスルホキシド、n-メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、N-ジシクロヘキシルカルボジイミドである。使用可能な他の溶媒は、アルコール類:エタノール、イソプロパノール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールである。
【0055】
前駆体コーティングを、水を使用して製造し、コーティング材料を溶解させ、溶液を作って、それをプラグに噴霧して水溶性コーティングを作ることができ、これは流動床と呼ばれるプロセスである。別の構成は、非水性溶媒に溶解して非水溶液を形成するコーティング材料を使用できる。
【0056】
前駆体コーティングはメルトである必要はない。前駆体は、好適な溶媒中に配置されてプラグ又は他の装置に施されることも、乾燥した形態で施されることもある。コーティングは、賦形剤、例えば、結合剤、非反応性材料又は非反応性ポリマー、可塑剤、緩衝剤、可視化剤、染料、又は塩を含み得る。
【0057】
可視化剤
可視化剤は、キセロゲル/ハイドロゲル中で粉末として使用できる。それは、ハイドロゲルを施す使用者が、物体が有効量の作用物質を含んだときに物体を観察できるように、ヒトの眼に検出可能な波長で光を反射又は発する。画像化のために機械的補助が必要な作用物質は、本明細書ではイメージング剤と称され、例には、放射線不透過造影剤及び超音波造影剤がある。いくつかの生体適合性可視化剤は、FD&Cブルー1番、FD&Cブルー2番、及びメチレンブルーがある。これらの作用物質は、好ましくは、最終的な求電子-求核反応性前駆体種ミックス中に、0.05mg/mlを超える濃度で、好ましくは少なくとも0.1~約12mg/mlの濃度範囲で、より好ましくは0.1~4.0mg/mlの範囲で存在するが、可視化剤の溶解度の限界までのより高い濃度も潜在的には利用され得る。可視化剤は、キセロゲル/ハイドロゲルの分子ネットワークに共有結合でき、そのため、患者に使用した後、ハイドロゲルが加水分解して溶解するまで可視化を保つ。可視化剤は、FD&Cブルー染料3及び6、エオシン、メチレンブルー、インドシアニングリーン、又は合成縫合糸に通常みられる着色染料など、医療用埋め込み型医療装置における使用に好適な種々の非毒性の着色物質のいずれからも選択できる。NHS-フルオレセインなどの反応性の可視化剤を使用して、可視化剤をキセロゲル/ハイドロゲルの分子ネットワークに組み込むことができる。可視化剤は、いずれの反応性前駆体種、例えば、架橋剤又は官能性ポリマー溶液と共に存在してもよい。好ましい着色物質は、ハイドロゲルに化学結合することも化学結合しないこともある。
【0058】
生分解(biodegradation)
オルガノゲル及び/又はキセロゲル及び/又はハイドロゲルは、生理溶液中で水和すると、ハイドロゲルがその機械的強度を失って最終的には過剰な水中で水分解性基の加水分解によりインビトロで消散することにより、測定可能な水分解性のハイドロゲルが形成されるように形成できる。この試験は、細胞又はプロテアーゼにより推進される分解とは対照的なプロセスである、加水分解により推進されるインビボの溶解を予想するものである。しかし、興味深いことに、ポリ無水物又は分解して酸性成分になる従来使用される他の分解性の材料は、組織に炎症を起こす傾向がある。しかし、ハイドロゲルはそのような材料を排除でき、ポリ無水物、無水物結合、又は分解して酸若しくは二酸になる前駆体を含まないことがある。用語水中での溶媒和による分解は、水への溶解とも称され、これはマトリックスが徐々に溶解状態になるプロセスであり、共有結合的に架橋された材料及び水に不溶な材料では起こり得ないプロセスである。
【0059】
例えば、SG(グルタル酸N-ヒドロキシスクシンイミジル)、SS(コハク酸N-ヒドロキシスクシンイミジル)、SC(炭酸N-ヒドロキシスクシンイミジル)、SAP(アジピン酸N-ヒドロキシスクシンイミジル)又はSAZ(アゼライン酸N-ヒドロキシスクシンイミジル)などの求電子基を使用でき、加水分解的に不安定なエステル結合を有する。ピメリン酸エステル、スベリン酸エステル、アゼライン酸エステル、又はセバシン酸エステル結合などのより直線的な疎水性結合も使用でき、これらの結合は、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、又はアジピン酸エステル結合よりも分解性が低い。分岐鎖の、環式の、又は他の疎水性結合も使用できる。ポリエチレングリコール及び他の前駆体は、これらの基と共に調製され得る。架橋されたハイドロゲル分解は、水分解性材料が使用される場合、生分解性セグメントの水により推進される加水分解により進行し得る。エステル結合を含むポリマーは、所望の分解速度を与えるように含まれてよく、分解速度を増加又は減少させるためにエステルの近くで基が追加又は引き去られる。このように、分解性セグメントを使用して、数日~数か月の所望の分解プロファイルを有するハイドロゲルを構築することが可能である。ポリグリコラートが生分解性セグメントとして使用される場合、例えば、架橋されたポリマーは、ネットワークの架橋密度次第で、約1~約30日で分解するように製造できる。同様に、ポリカプロラクトン系の架橋されたネットワークは、約1~約8か月で分解するように製造できる。分解時間は、一般的に、使用される分解性セグメントの種類により様々であり、以下の順序:ポリグリコラート<ポリラクタート<ポリトリメチレンカーボナート<ポリカプロラクトンである。このように、分解性セグメントを使用して、数日~数か月の所望の分解プロファイルを有するハイドロゲルを構築することが可能である。いくつかの実施形態は、隣接するエステル基を含まず、且つ/又は前駆体の1つ以上に1アームあたりにわずか1つのエステル基のみを有する前駆体を含む。エステルの数及び位置の制御は、ハイドロゲルの均一な分解を支援し得る。
【0060】
オルガノゲル及び/又はキセロゲル及び/又はハイドロゲル及び/又は前駆体中の生分解性結合は、水分解性でも酵素的に分解性でもよい。例示的な水分解性生分解性結合には、グリコリド、dl-ラクチド、l-ラクチド、ジオキサノン、エステル、カーボナート、及びトリメチレンカーボナートのポリマー、コポリマー及びオリゴマーがある。例示的な酵素的に生分解性の結合には、メタロプロテイナーゼ及びコラゲナーゼにより切断可能なペプチド結合がある。生分解性結合の例には、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルト炭酸エステル)、ポリ(無水物)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(炭酸エステル)、及びポリ(ホスホン酸エステル)のポリマー及びコポリマーがある。
【0061】
生体適合性架橋マトリックスが生分解性又は吸収性であることが望まれる場合、官能基間に生分解性結合(又は1つのみの生分解性結合、例えばエステル)が存在する1種以上の前駆体を使用できる。生分解性結合は、任意選択で、マトリックスの製造に使用される1種以上の前駆体の水溶性コアとしても作用し得る。各手法で、生分解性結合は、生じた生分解性生体適合性架橋ポリマーが所望の期間で分解又は吸収されるように選択され得る。
【0062】
薬剤によるハイドロゲル/キセロゲル/オルガノゲルのローディング;粒子としての調製
ハイドロゲル又はオルガノゲルを治療剤と共に製造する一手法は、薬剤の周囲にそれを形成することである。例えば、第1の前駆体が溶媒-タンパク質混合物に加えられ、それに続いて、第1の前駆体との反応性がある第2の前駆体が加えられて架橋が形成する。溶媒中でのマトリックスの形成後、溶媒が除去されて、キセロゲルが形成され得る。可能性があるプロセスには、例えば、非溶媒による沈殿、窒素スウィープ乾燥、真空乾燥、凍結乾燥(freeze-drying)、熱と真空の組み合わせ、及び凍結乾燥(lyophilization)がある。融解した前駆体が第3の溶媒なしで使用される場合、溶媒除去プロセスを利用する必要はない。冷却されると、材料は、ゴム状の固体(Tgより上の場合)、半剛体の半結晶性材料(Tmより下で、Tgより上の場合)又は剛性のガラス質固体(Tgより下の場合)を形成する。これらの材料は、有機溶媒から形成されたキセロゲルより密度が高い。他の材料、例えば、治療剤、緩衝剤塩、可視化剤の粒子で満たされると、固体粒子が細孔を作りそれを満たすため、それらは非常に多孔性になり得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、薬剤又は複数の薬剤は、前駆体が反応するときに別の相に存在する。別の相は、油(水中油型乳液)、又は非混和性溶媒、リポソーム、ミセル、生分解性ビヒクルなどであり得る。活性薬剤が存在し得る生分解性ビヒクルには、微粒子、ミクロスフィア、ミクロビーズ、マイクロペレットなどの封入ビヒクルがあり、活性薬剤が、ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボナート)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)-コ-ポリ(グリコール酸)、ポリ(オルトカーボナート)、ポリ(カプロラクトン)、フィブリン糊又はフィブリンシーラントのような架橋された生分解性ハイドロゲルネットワーク、シクロデキストリン、モレキュラーシーブなどのようなかご型及び捕捉分子などのポリマー及びコポリマーなどの生体浸食性(bioerodable)又は生分解性ポリマー中に封入されている。ポリ(ラクトン)及びポリ(ヒドロキシ酸)のポリマー及びコポリマーから製造されたミクロスフィアが生分解性封入ビヒクルとして特に好ましい。治療剤又は封入された治療剤は、溶解状態でも懸濁状態でも存在し得る。薬剤の一部は溶解性が高い一方、他のものは実際的に水溶液に不溶であり、水性溶媒に曝されるとそれ自体の相を形成する。
【0064】
治療剤は、ハイドロゲル/オルガノゲル/キセロゲル内で、例えば粉末として固体粒状形態であり得る。例えば、固相にある水溶性生物製剤(例えば、タンパク質)が粉砕又は他の方法で微細粉末に形成されて、それが、マトリックスが形成されるときに前駆体に加えられる。キセロゲル中のタンパク質又は他の水溶性生物製剤は、全て固相にあることも、全て結晶性であることも、部分的に結晶性であることも、基本的に結晶を含まないこともある(90w/w%を超えて結晶を含まないことを意味する。当業者は、明示された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることを直ちに認識するであろう)。タンパク質の粉末は、1種以上のタンパク質から製造された粉末を指す。同様に、水溶性生物製剤の粉末は、1種以上の水溶性生物製剤でできた粒子を有する粉末である。それらを含む粉末及び/又はキセロゲル及び/又はオルガノゲル及び/又はハイドロゲルは、封入材料を含まないことがあり、リポソーム、ミセル、又はナノカプセルの1つ以上を含まないことがある。さらに、結合剤、非ペプチド性ポリマー、界面活性剤、油、脂、蝋、疎水性ポリマー、4つのCH2基より長いアルキル鎖を含むポリマー、リン脂質、ミセル形成性ポリマー、ミセル形成性組成物、両親媒物質、多糖類、3つ以上の糖の多糖類、脂肪酸、及び脂質の1つ以上を含まないタンパク質粒子又は水溶性生物製剤粒子が製造され得る。凍結乾燥された、噴霧乾燥された、又は他の方法で加工されたタンパク質は、凍結乾燥又はタンパク質の調製に利用される他のプロセスに抗してタンパク質を安定化させるため、トレハロースなどの糖類と共に製剤されることが多い。これらの糖類は、オルガノゲル/キセロゲルプロセスの間、粒子中に残っていてよい。粒子は、約20%~約100%(乾燥w/w)のタンパク質を含むように製造できる。当業者は、明示された範囲内の全ての範囲及び値、例えば、約50%~約80%又は少なくとも90%又は少なくとも約99%が企図されることを直ちに認識するであろう。変性なしでタンパク質を加工及び送達することに寄与するいくつかの因子が制御され得る。タンパク質は粉末として調製でき、粉末の粒径は最終的なハイドロゲル/オルガノゲル/キセロゲル粒子のサイズに照らして選択される。タンパク質のための有機溶媒は、タンパク質が有機溶媒により溶媒和されず、タンパク質と適合性があるように選択され得る。別の因子は酸素であり、酸素の排除は変性を回避するために加工において有用である。別の因子は化学反応である。これらは、タンパク質が埋め込まれるときまで、タンパク質を固相中に保ち、タンパク質を溶解させる溶媒がないように保つことにより回避され得る。
【0065】
オルガノゲル又はハイドロゲルは、形成されて次いで粒子状にされ、それがその後処理されて、有機又は水性の溶媒又は複数の溶媒が除去されて、キセロゲルが形成し得る。注射剤の形態には、オルガノゲル又はハイドロゲルは、冷浸され、均質化され、押し出され、ふるわれ、細断され、さいの目に切られ、又は他の方法で粒状形態にされ得る。或いは、オルガノゲル又はハイドロゲルは、液滴としても、懸濁しているタンパク質粒子を含む成形品としても形成され得る。そのような粒子を製造する一プロセスは、分解されて粒子を作る材料を作ることを含む。一技法は、オルガノゲル又はハイドロゲルをタンパク質粒子と共に調製し、例えばボールミル中、又は乳鉢と乳棒とでそれを粉砕することを含む。マトリックスは、ナイフ又はワイヤーにより細断することも、さいの目に切ることもできる。又はマトリックスは、ブレンダー又はホモジェナイザー中で切り刻むことができる。別のプロセスは、オルガノゲルをメッシュに押し通し、断片を回収し、望まれるサイズに達するまでそれを同じメッシュ又は別のメッシュに通すことを含む。
【0066】
生物製剤の粒子又はオルガノゲルの粒子又はキセロゲルの粒子は、種々の方法により、所望のサイズ範囲及びサイズの分布を有する集合に分離できる。非常に精密な分粒の制御が利用可能であり、サイズは1ミクロン未満~数mmの範囲になり、粒径の平均及び範囲が狭い分布と共に制御可能である。当業者は、明示された範囲内の全ての範囲及び値、例えば、約0.1~約10μm又は約1~約30μmが企図されることを直ちに認識するであろう。約1~約500ミクロンは、有用であるそのような別の範囲であり、サイズは範囲全体に及び、範囲内の1つの値で平均サイズを有し、標準偏差が平均値の周辺に集中し、例えば、約1%~約100%である。粒子を分粒する簡単な方法は、特別注文又は標準化された篩メッシュサイズを利用することである。粒径を測定する別の方法は、Coulter LS 200などのレーザー回折式粒径分布測定装置によるものであり、それは、食塩水などの液体中で懸濁しているときに粒子を分析する。用語粒子は広く、球体、円板、及び不規則な形状の粒子を含む。回転楕円面状粒子は、最長中心軸(粒子の幾何学的中心を通る直線)が他の中心軸の長さの約2倍以下である粒子を指し、粒子は、文字通りに球状であるか、又は不規則な形状を有する。棒状粒子は、最短の中心軸の長さの約2倍を超える縦方向の中心軸を有する粒子を指す。実施形態は、インビボで異なる分解速度を有する複数の粒子の集合を製造することと、集合を混合して所望の分解性能を有する生体材料を製造することとを含む。
【0067】
粒子は、特定の平均体積、平均中間体積又は体積の特定の範囲に入るサイズの分布(少なくとも95%w/wの粒子がその範囲内に分布している)を有する集合として調製できる。実施形態は、平均体積、平均中間体積、又は約0.02μm3~約2mm3のサイズ分布の1つ以上を有する粒子の集合である。当業者は、この範囲内の全範囲及び値、例えば0.025μm3~1mm3、0.03μm3~1.5mm3などが企図及び支持されることを直ちに認識するであろう。さらに、粒子の集合の全体積及び/又はヒトの注射のための系におけるハイドロゲルの全ての全体積は、約0.005~約2.5ミリリットル(ml)の値を有し得る。当業者は、この範囲内の全範囲及び値、例えば0.005~1ml、0.1ml~1.5mlなどが企図及び支持されることを直ちに認識するであろう。粒子は、0.01ミクロン~2mmの直径(対称的でない場合、最長の寸法を指す)を有し得る。当業者は、明示された範囲の間の全範囲及び値が、例えば、下記:1、5、10、20、50、又は100ナノメートル、0.1、0.2、0.5、1、10、20、30、40、50、100、200、300、500、1000ミクロン、1、1.5、又は2mmのいずれかを上限又は下限として利用可能として企図されることを直ちに認識するであろう。薬物送達の標的にされた眼の種々の構造中などの特定の組織において、薬物送達デポによる占有に利用可能な体積は限られている。例えば、上脈絡膜腔は、約100μlまで、又は空間の形状に共形である場合には200μlまでのデポを含み得る。同様に、デポが視軸を侵害しない限り、100μl又は200μlまでが硝子体液に注射可能である。他の部位、例えば結膜下送達は、組織が拡張して収容できるため、より大きいデポを収容できる。
【0068】
或いは、粒子の代りに、ハイドロゲル/オルガノゲル/キセロゲルは、医療用装置又は医療用インプラントとして、又はその一部として形成され得る。装置は、体内でも体の上にでも使用できる。インプラントは、少なくとも部分的に体内に埋め込まれることも、体内に完全に埋め込まれることもある。装置の例は、涙点プラグ、棒状の物体、薬物送達装置、パッチ、及び血管内又は血管外であるが、血管又は関連構造(例えば、外膜)の少なくとも一部分と接触する薬物デポである。ハイドロゲル/オルガノゲル/キセロゲルは、装置と共に使用するためにエクスビボで形成され、例えば、形成され凍結乾燥されてキセロゲルを製造することも、例えば、水溶液に曝されるとインビボでハイドロゲルを形成する少なくとも部分的な前駆体のコーティングを与えることによりインサイチュで形成されることもある。
【0069】
投与
実施形態は、ハイドロゲル及び/又はキセロゲル粒子の周囲でのインサイチュ重合により形成されたハイドロゲルであり、粒子は治療剤を含んでいる。インサイチュで形成されたハイドロゲルは粒子を包み、それらを封入し得る。粒子が包み込むハイドロゲルと良好に混合されている場合、粒子は全てそのコーティングを帯び、そのため封入される。他の場合、粒子は患者内に配置され、次いでハイドロゲルが施され、その結果、粒子の部分的なコーティングのみが存在することがある。
【0070】
使用時、ハイドロゲル粒子は前駆体と混合され、患者内の意図される使用部位に注射される。前駆体は互いに反応して、包み込むハイドロゲルを形成する。粒子は、薬剤の第1の拡散率をもって製造することができ、包み込むハイドロゲルは、第2の拡散率をもって製造できる。ニードル、カニューレ、トロカール、噴霧器、又は他のアプリケーターが利用できる。ハイドロゲル及び/又はキセロゲルの投与は、事前の、使用時点前後の又は使用時点での水和も含み得る。又はキセロゲルは、水和なしで埋め込まれてインサイチュで水和され得る。
【0071】
本明細書に記載される材料を使用して、薬物又は他の治療剤(例えば、イメージング剤又はマーカー)を送達できる。使用の一様式は、キセロゲル/ハイドロゲル粒子と他の材料(例えば、治療剤、緩衝剤、加速剤、開始剤)の混合物を、ニードル、マイクロニードル、カニューレ、カテーテル、又は中空のワイヤーに通して部位に加えることである。混合物は、例えば、手作業で制御されるシリンジ又は機械的に制御されるシリンジ、例えばシリンジポンプを使用して送達できる。或いは、デュアルシリンジ又は多筒式シリンジ又はマルチルーメン系を使用して、キセロゲル/ハイドロゲル粒子を、部位又は部位の近くで、水和用流体及び/又は他の薬剤と混合できる。例えば、眼内など、部位によっては慎重な投与プロセスが必要である。微細針及び/又は限定された長さのニードルを使用できる。作業は、有用である場合、拡大して、ステレオスコープにより、誘導画像化(guided imaging)と共に、又はロボットにより(例えば、Eindhoven University of Technologyにより記載の通り)実施できる。前駆体溶液及び粒子の集合は、小ゲージニードルによる手作業の注射用の大きさ及び潤滑性をもって製造できる。押しつぶされて約40~約100ミクロンの直径の回転楕円面状粒子になった親水性ハイドロゲルは、30ゲージのニードルにより手作業で注射するには十分小さい。高い容量オスモル濃度を有する溶媒及び/又は容量オスモル濃度を増加させる浸透剤(osmolar agent)を使用して、粒子/溶液がニードルを容易に通るようにできる。
【0072】
ハイドロゲル及び/又はオルガノゲル及び/又はキセロゲルの投与は、対象とする部位に直接実施できる。本発明の実施形態は、眼又は眼の近くの投与を含む。哺乳類の眼の構造は、3つの主要な層又は被膜:線維膜、血管膜、及び神経膜に分けることができる。線維膜、別名眼球強膜は、角膜及び強膜からなる眼球の最外層である。強膜は、角膜(眼の透明な前面部分)から眼の後面の視神経に延びている。強膜は、きつく詰め込まれたコラーゲン繊維から構成された、約70%の水を含む、繊維質で弾性がある保護組織である。線維膜の上に結膜がある。結膜は、強膜(眼の白い部分)を覆う膜であり、まぶたの内面を覆っている。結膜は、典型的には、3つの部分に分けられる:(a)まぶたの内側を覆っている結膜である眼瞼結膜又は瞼結膜;眼瞼結膜は、上結膜円蓋及び下結膜円蓋で折り返されて、眼球結膜になる;(b)結膜円蓋:まぶたの内側部と眼球が合わさるところの結膜;及び(c)球結膜又は眼球結膜:強膜の上で眼球を覆っている結膜。結膜のこの領域は固く結合しており、眼球運動と共に動く。結膜は、強膜を効果的に取り囲み、覆い、且つ強膜に付着する。それは、細胞組織及び結合組織を有し、幾分弾性があり、除いたり、細かく裂いたり、他の方法で取り除いて、強膜の表面部分を露出することができる。
【0073】
血管膜、別名眼球血管膜は、虹彩、毛様体、及び脈絡膜を含む中間の血管付きの層である。脈絡膜は、網膜と強膜との間にある。脈絡膜は、網膜細胞に酸素を供給して呼吸の老廃物を除去する血管を含む。脈絡膜は、眼の前方に向かって毛様体と接続し、眼の後方で視神経の縁と結合している。神経膜、別名眼球神経膜は、網膜を含む内部感覚器官(inner sensory)である。網膜は、感光性の桿体及び錐体細胞並びに関連するニューロンを含む。網膜は比較的なめらかな(しかし湾曲した)層である。それは、異なっている2つの点;中心窩及び視神経乳頭を有する。中心窩は、レンズのまさに反対にある網膜のくぼみであり、錐体細胞が密に詰まっている。中心窩は黄斑の一部である。視神経乳頭は、視神経が網膜を突き抜けその内側で神経細胞と結合している網膜上の点である。哺乳類の眼は、2つの主なセグメント:前部及び後部にも分けることができる。前部は、前眼房及び後眼房からなる。
【0074】
角膜及びレンズは、光線を一点に集めて網膜上に焦点を合わせることを補助する。虹彩の後ろにあるレンズは凸であり、第2の体液(humour)を通して網膜上に光の焦点を合わす弾力のある円盤である。それは、チン小帯として知られる提靭帯の環により毛様体に結合している。虹彩は、レンズと第1の体液との間にあり、線維性血管性組織及び筋繊維の着色された環である。光は、最初に虹彩の中心、瞳孔を通らなくてはならない。光は目に入り、角膜を通り、2つの体液のうちの第1の房水へと入る。眼の屈折力全体のおよそ2/3は、一定の曲率を有する角膜に由来する。房水は、角膜を眼のレンズと結び付ける透明な塊であり、角膜の凸形状を維持するのに役立ち(レンズでの光の集中に必要である)、角膜内皮に栄養を与える。後部は、水晶体の後ろで網膜の前にある。それは前部硝子体膜並びに硝子体液、網膜、及び視神経を含むその後ろの構造を含む。
【0075】
図3は、眼300の断面であり、光学的に透明で光を虹彩304に通し、レンズ306に貫かせる角膜302を描写している。前眼房308は角膜302の下にあり、後眼房310は虹彩304とレンズ306との間にある。毛様体312はレンズ306に接続している。強膜314の上にある結膜312である。硝子体316は、ゼリー状の硝子体液を含み、硝子体管318はその中にある。中心窩320は黄斑中にあり、網膜322は脈絡膜324上にある。眼300での種々の送達点が描写されている。一領域は局所的に350である。別の領域は、352、354、及び356で示される硝子体内である。部位352、356は、レンズ焦点部分の外であり、356は、網膜の縁で眼の内部の端と接触している。部位358は眼の外で、強膜上にある。使用時、例えば、シリンジ、カテーテル(図示せず)又は他の装置は、ハイドロゲル108、110、又はハイドロゲル108及び前駆体102の送達に使用される。前駆体が送達される場合、それらは、意図される使用部位においてインサイチュでハイドロゲル110を形成するように選択される。治療剤はハイドロゲルから放出される。
【0076】
他の部位も選択できる。薬物送達デポが形成され得る部位には、前眼房、後眼房、硝子体、強膜上、結膜下、角膜又は結膜の表面上、強膜上、強膜中、強膜の下、又は強膜と結膜下との間で結膜の下で結膜に接している部位、眼瞼若しくは瞼結膜の上又は下、まぶた内、上結膜円蓋、下結膜円蓋、眼球結膜、及び結膜円蓋がある。さらなる部位は、脈絡膜中、脈絡膜と強膜との間、網膜と脈絡膜との間、又はこれらの組み合わせである。
【0077】
ハイドロゲルは、治療されている病状のための薬剤を送達するのに適した部位に配置できる。投与量の選択、インプラントのサイズ及び位置は、反復投与間の時間、患者の快適さ又はコンプライアンス、及び標的組織で受け入れられる用量などの因子により影響される。一般に、後眼部疾患は、例えば、局所、全身性、眼内及び結膜下送達経路を利用して薬物により治療できる。全身性及び局所(点眼剤及び非付着性材料を指す)送達モダリティーは、後部の疾病を治療するための治療薬物レベルを送達することを満たしていない。これらの薬物送達の方法は、眼内及び全身系の固有の解剖学的な障壁により拡散及び薬物希釈の問題に直面し、多大な患者副作用(1日あたり複数の投薬による)、劣ったバイオアベイラビリティ及びコンプライアンスの問題を起こす。結膜下、強膜、脈絡膜上、眼球後方又はテノン嚢下の配置を利用する眼科用ハイドロゲルインプラントの眼球周囲薬物送達は、局所及び全身経路に比べてより安全で増大した網膜への薬物送達系を与える可能性がある。例えば、デキサメタゾン及びトリアミシノロン(triamicinolone)アセトニドのようなステロイドをハイドロゲル前駆体と混合して、徐放性薬物インプラントを形成できる。次いで、液体ハイドロゲルをインサイチュでテノン嚢下に注射でき、そこで、一定又は調整可能な放出プロファイルの薬物を3~4か月の期間にわたって送達できる。侵襲性が最低限である処置を、医師のオフィスで又は局所麻酔下の白内障手術後に実施して慢性の後眼部疾患を治療できる。
【0078】
いくつかの実施形態において、レトラクターを使用してまぶたが固定され、使用者は、下位角膜縁(inferior limbus)/鼻側輪部(nasal limbus)から約5~6mmの結膜中にボタン穴状小切開を作り、テノン嚢を通って、露出した強膜まで結膜を切開する。次に、23ゲージのブラントカニューレ86(例えば、長さ15mm)を、開口部を通して挿入し、液体薬物インプラントを意図される使用部位で注射する。次いで、カニューレを除去し、結膜を焼灼装置により閉じる。三次元的な完全性を有するハイドロゲルインプラントの一利点は、それが細胞浸潤に抵抗し、局所投与された薬物が貪食されて部位から時期尚早に除かれるのを防ぐことが可能である傾向がある点である。代わりに、それは送達されるまで適所に留まる。対照的に、微粒子、リポソーム、又はペグ化されたタンパク質は、生物学的に有効になる前に細網内皮系により体から迅速に除かれる傾向がある。
【0079】
後部眼疾病(posterior segment eye diseases)において治療量の薬物を網膜に送達することは依然として課題である。抗VEGF剤の硝子体腔への硝子体内注射は、黄斑変性などの慢性の加齢関連疾病を停止し、場合によっては逆転させる見込みを示したが、これらの技法及び処置には、危険性と副作用とがないわけではない。治療剤の硝子体腔への硝子体内投与は、白内障、眼内炎及び網膜剥離を起こし得る。この形態の療法では、多くの患者が12か月の期間にわたって抗VEGF薬の眼内注射を毎月受けることが必要であり、そのため、感染、硝子体嵌頓及び網膜剥離の危険性が増す。ハイドロゲル粒子を含むインサイチュハイドロゲル生分解性薬物インプラントを対象とする実施形態は、後眼部疾患の効果的な代替治療を与え、反復される硝子体内注射と関連する通常の副作用を減少させると期待される。硝子体中の据え付け(implacement)では、例えば、ハイドロゲル前駆体及びハイドロゲル粒子が、毛様体扁平部切開により網膜下カニューレを使用して角膜縁の約2.5mm後部で硝子体中に注射され、それは、必要に応じて、切開又は他の方法で結膜を除いた後に実施できる。次いで、25、27又は30ゲージ網膜下カニューレ94(又は他の適切なカニューレ)が挿入され、眼球内で所望の標的部位に配置されて、そこで流動性前駆体が導入されて、ハイドロゲルがインサイチュで形成される。次いで、前駆体は吸収性ゲルになり、所望の標的部位に付着する。
【0080】
インサイチュハイドロゲル薬物送達インプラントの薬物デポは、例えば、約1~約3か月の範囲の制御された長期の薬物放出のために設計でき;任意選択で、例えば、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、及び嚢胞様黄斑(cystoid macular)を含む後部の疾病の治療を対象とし得る。装置は、種々の病態のための様々な種類の治療剤の薬物ペイロードを運ぶことができ、そのいくつかには、例えば、ステロイド、抗生物質、NSAIDS及び/若しくは抗血管新生剤、又はこれらの組み合わせがある。インサイチュインプラント実施形態は、慢性の後眼部疾患の治療における強力な治療剤の効能及び薬物動態を改善でき、いくつかの方法で患者副作用を最低限にする。第1に、インプラントは、特定の疾病部位で硝子体腔中に配置できるため、局所又は全身経路を回避し、それにより薬物のバイオアベイラビリティを増加させる。第2に、インプラントは、特定の標的組織部位で長期間にわたり局所の治療濃度を維持する。第3に、種々の従来の系と比べて、硝子体内注射の数が大幅に減少されるため、感染、網膜剥離、及び硝子体内の薬物が眼の下壁に向かって移動して中央硝子体又は黄斑の部分からなくなるまで起こり得る一過性視力障害(硝子体内に漂う白色斑点)の患者の危険性が減少する。従来の注射薬のボーラス剤は、硝子体中で形成し、分散するまで硝子体液を追い出す。分散には、通常、相当な時間がかかり、その理由は、硝子体液の粘性が非常に高いからである。そのため、ボーラス剤は、特にそれが突然の加速に反応して眼の周囲で動くとき、例えば、患者が立ち上がったり、頭を速く回したりするときに視力を妨害する。
【0081】
ハイドロゲルは、結膜の存在の有無にかかわらず、強膜組織内にも、その上にも、その下にも形成できる。ハイドロゲルは、強膜又は他の組織に粘着性であり、そこで、意図される組織を通る薬物拡散を促進し、又は安定なデポを与えて必要に応じて治療剤を誘導するように配置される。いくつかの実施形態において、組織が強膜から持ち上げられて強膜の特定の領域にハイドロゲルの埋め込み又は注射のために接近できるように、眼の結膜は除去され、冷浸され、切開され、又は裂かれ得る。他の実施形態において、ハイドロゲルは、脈絡膜中又はその上に注射される。ハイドロゲルはインサイチュで形成され、それが標的部位上に層を作り、標的部位に粘着する。いくつかの実施形態において、ハイドロゲルの非粘着性を増大させるために、ハイドロゲルは、少なくとも50%、75%、80%、90%、又は99%w/wの水溶性前駆体で構成される(水又は溶媒又は非ハイドロゲル成分の重量を無視するために、親水性前駆体の重量を測定し、全前駆体の重量で割ることにより計算される)。いくつかの実施形態において、そのような親水性前駆体は、実質的にポリエチレンオキシドを含む。いくつかの実施形態において、細胞有糸分裂、細胞遊走、又はマクロファージの遊走若しくは活性化を含む生物学的な機構により媒介される組織粘着を低減する薬物、例えば、抗炎症剤、抗有糸分裂剤、抗生物質、パクリタキセル、マイトマイシン、又はタキソールが含まれる。
【0082】
いくつかの実施形態において、ニードル又はカテーテル又はトロカールにより結膜に穴をあけることも、貫くこともでき、前駆体が強膜と結膜との間の空間又は眼内の他の空間に導入され得る。いくつかの場合では、結膜に穴をあけて、組織間の自然の潜在空間、例えば脈絡膜上潜在空間にアクセスでき、それが前駆体で満たされる。他の場合、前駆体が導入できるように、潜在的又は実際の空間が、組織層間の粘着を壊すニードル、トロカール、スプレッダーなどにより機械的に作られる。結膜は、有用な量の前駆体が導入され、又はそのような自然若しくは作られた空間に押し込まれるのを可能にする十分な弾力性を有する。同様に、硝子体中ハイドロゲル形成の場合、比較的大きい体積が利用可能である。したがって、いくつかの場合、量は、約0.001~約5mlである。当業者は、明示された範囲内の全ての範囲及び値、例えば、約1ml、約0.005、0.01、0.025、又は0.05ml、又は0.002ml~約1又は2.5mlが企図されることを直ちに認識するであろう。
【0083】
さらに、ハイドロゲルが眼球内と眼球周囲のいずれに存在しようと、ハイドロゲルの除去も、インプラントが硝子体腔中に配置されている場合の硝子体切除カッター、インプラントが強膜表面上に配置されている場合のマニュアルI/Aシリンジ及びカニューレ、又は洗浄/吸引ハンドピースのいずれを使用しても容易に達成される。これは、いくつかの従来の非吸収性インプラントの除去に必要な主要な外科手術と対照をなす。
【0084】
いくつかの態様において、ハイドロゲルのインサイチュ形成は、ハイドロゲルを所定の位置でゲル化させるか、又は架橋させるため、ニードル又はカニューレの除去時にニードルの管を通ってゲルが戻って流れ出ることがなく、切開部位を通って眼球外に拡散することがない。このように形成された形状安定なハイドロゲルは、効果的に薬物を送達でき、十分に制御されたサイズ、形状、及び表面積を有利に有し得る。既に形成された材料の代りに可溶性又は流動性前駆体を使用できるため、小さいニードルを使用して材料を注射できる。対照的に、導入時に急速且つ堅く架橋しない代替材料は、切開部から戻って流れ出る傾向がある。また、共有結合により架橋しない材料は、断続的に再編成し、材料の一部又は全てが流れ出るため、クリープ又は浸出を起こしやすい。
【0085】
送達のための薬物又は他の治療剤
治療剤には、例えば、炎症性又は異常な血管の状態から生じ得る病態、網膜静脈閉塞症、地図状萎縮、色素性網膜炎、網膜芽細胞腫などを治療するための薬剤がある。
【0086】
治療剤は、例えば、抗血管新生であるもの、抗VEGFであるもの、VEGFR1を遮断するもの、VEGFR2を遮断するもの、VEGFR3を遮断するもの、抗PDGF、抗血管新生、スニチニブ、E7080、Takeda-6d、チボザニブ、レゴラフェニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、アキシチニブ、ニンテダニブ、セジラニブ、バタラニブ、モテサニブ、マクロライド、シロリムス、エベロリムス、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、イマチニブ(グリーベック)ゲフィニチブ(イレッサ)、トセラニブ(パラディア)、エルロチニブ(タルセバ)、ラパチニブ(タイケルブ)ニロチニブ、ボスチニブ、ネラチニブ、ラパチニブ、バタラニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、セマクサニブ、トセラニブ、バンデタニブであり得る。
【0087】
治療剤は、高分子、例えば、抗体又は抗体断片を含み得る。治療用の高分子は、VEGF阻害剤、例えばラニビズマブ、市販のルセンティス(商標)中の有効成分を含み得る。VEGF(血管内皮細胞成長因子)阻害剤は、眼の硝子体液中に放出されると、異常な血管の退縮及び視力の改善を起こすことができる。VEGF阻害剤の例には、ルセンティス(商標)(ラニビズマブ)、アイリーア(商標)(アフリベルセプト又はVEGFトラップ)、アバスチン(商標)(ベバシズマブ)、マクジェン(商標)(ペガプタニブ)がある。血小板由来成長因子(PDGF)阻害剤、例えば、フォビスタ(商標)、抗PGDFアプタマーも送達できる。
【0088】
治療剤は、コルチコステロイド及びそのアナログなどの小分子も含み得る。例えば、治療用コルチコステロイドは、トリマシナロン(trimacinalone)、トリマシナロンアセトニド、デキサメタゾン、デキサメタゾン酢酸エステル、フルオシノロン、フルオシノロン酢酸エステル、又はそのアナログの1つ以上を含み得る。或いは、又は組み合わせで、治療剤の小分子は、例えば、アキシチニブ、ボスチニブ、セジラニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、セマクサニブ、スニチニブ、トセラニブ、バンデタニブ、又はバタラニブの1つ以上を含むチロシンキナーゼ阻害剤を含み得る。
【0089】
治療剤は、抗VEGF治療剤を含み得る。抗VEGFの療法及び薬剤を特定の癌の治療において及び加齢黄斑変性において使用できる。本明細書に記載される実施形態による使用に好適な抗VEGF治療剤の例には、ベバシズマブ(アバスチン(商標))などのモノクローナル抗体若しくはラニビズマブ(ルセンティス(商標))などの抗体誘導体、又はラパチニブ(タイケルブ(商標))、スニチニブ(スーテント(商標))、ソラフェニブ(ネクサバール(商標))、アキシチニブ、若しくはパゾパニブなど、VEGFにより刺激されるチロシンキナーゼを阻害する小分子の1つ以上がある。
【0090】
治療剤は、シロリムス(商標)(ラパマイシン)、コパキソン(商標)(グラチラマー酢酸塩)、オセラ(Othera)(商標)、補体C5aRブロッカー、毛様体神経栄養因子、フェンレチニド又はレオフェレシス(Rheopheresis)の1つ以上など、ドライ型AMDの治療に好適な治療剤を含み得る。
【0091】
治療剤は、REDD14NP(クォーク(Quark))、シロリムス(商標)(ラパマイシン)、ATG003;リジェネロン(商標)(VEGFトラップ)又は補体阻害剤(POT-4)の1つ以上など、ウェット型AMDの治療に好適な治療剤を含み得る。
【0092】
治療剤は、ベバシズマブ(モノクローナル抗体)、BIBW 2992(EGFR/Erb2を標的にする小分子)、セツキシマブ(モノクローナル抗体)、イマチニブ(小分子)、トラスツズマブ(モノクローナル抗体)、ゲフィチニブ(小分子)、ラニビズマブ(モノクローナル抗体)、ペガプタニブ(小分子)、ソラフェニブ(小分子)、ダサチニブ(小分子)、スニチニブ(小分子)、エルロチニブ(小分子)、ニロチニブ(小分子)、ラパチニブ(小分子)、パニツムマブ(モノクローナル抗体)、バンデタニブ(小分子)、又はE7080(VEGFR2/VEGFR2を標的とする、Esai,Co.から市販の小分子)の1つ以上などのキナーゼ阻害剤を含み得る。
【0093】
治療剤は、種々のクラスの薬物を含み得る。薬物には、例えば、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、抗癌薬、抗生物質、抗炎症薬(例えば、ジクロフェナク)、鎮痛剤(例えば、ブピバカイン)、カルシウムチャネル遮断剤(例えば、ニフェジピン)、抗生物質(例えば、シプロフロキサシン)、細胞周期阻害剤(例えば、シンバスタチン)、タンパク質(例えば、インスリン)がある。治療剤は、例えば、ステロイド、NSAIDS、抗生物質、鎮痛剤、血管内皮細胞成長因子(VEGF)の阻害剤、化学療法剤、抗ウイルス薬を含む複数のクラスの薬物を含み得る。NSAIDSの例は、イブプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メファナム酸(mefanamic acid)、サルサレート、スリンダク、トルメチンナトリウム、ケトプロフェン、ジフルニサル、ピロキシカム、ナプロキセン、エトドラク、フルルビプロフェン、フェノプロフェンカルシウム、インドメタシン、セロキシブ(celoxib)、ケトロラック、及びネパフェナクである。薬物自体は、小分子、タンパク質、RNA断片、タンパク質、グリコサミノグリカン、炭水化物、核酸、無機及び有機の生物活性のある化合物であり得、具体的な生物活性薬剤には、酵素、抗生物質、抗新生物剤、局所麻酔、ホルモン、血管新生剤、抗血管新生剤、成長因子、抗体、神経伝達物質、向精神薬、抗癌薬、化学療法薬、生殖器に影響する薬物、遺伝子、及びオリゴヌクレオチド、又は他の構成があるが、これらに限定されない。
【0094】
治療剤は、タンパク質又は他の水溶性生物製剤を含み得る。これらには、ペプチド及びタンパク質がある。本明細書での用語タンパク質は、少なくとも約5000ダルトンのペプチドを指す。本明細書での用語ペプチドは、あらゆる大きさのペプチドを指す。用語オリゴペプチドは、約5000ダルトンまでの質量を有するペプチドを指す。ペプチドには、治療用のタンパク質及びペプチド、抗体、抗体断片、短鎖可変断片(scFv)、成長因子、血管新生因子、及びインスリンがある。他の水溶性生物製剤は、炭水化物、多糖類、核酸、アンチセンス核酸、RNA、DNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びアプタマーである。
【0095】
治療剤は、示された病態を治療する方法又は示された病態を治療するための組成物を製造する方法の一部として使用できる。例えば、AZOPT(ブリンゾラミド眼科用懸濁剤)を高眼圧又は開放隅角緑内障の患者の眼内圧亢進の治療の治療に使用できる。ポビドン-ヨウ素眼科用液剤中のベタジンを眼球周囲領域の準備をすること(prepping)及び眼表面の洗浄に使用できる。ベトプティック(ベタキソロールHCl)を、眼内圧を下げるために又は慢性開放隅角緑内障及び/若しくは高眼圧に使用できる。シロクサン(シプロフロキサシンHCl眼科用液剤))を使用して、感受性のある微生物の株により起こる感染症を治療できる。ナタシン(ナタマイシン眼科用懸濁剤)を真菌性眼瞼炎、結膜炎、及び角膜炎の治療に使用できる。ネバナック(ネパンフェナック(Nepanfenac)眼科用懸濁剤)を白内障手術に関連する疼痛及び炎症の治療に使用できる。トラバタン(トラボプロスト眼科用液剤)を、眼内圧亢進を下げるために使用できる - 開放隅角緑内障又は高眼圧。FML FORTE(フルオロメトロン眼科用懸濁剤)を眼瞼及び眼球結膜、角膜及び眼球前部のコルチコステロイド反応性炎症の治療に使用できる。ルミガン(ビマトプロスト眼科用液剤)を、眼内圧亢進を下げるために使用できる - 開放隅角緑内障又は高眼圧。プレド・フォルテ(酢酸プレドニゾロン)を眼瞼及び眼球結膜、角膜及び眼球前部のステロイド反応性炎症の治療に使用できる。プロピン(ジピベフリン塩酸塩)を慢性開放隅角緑内障における眼内圧の制御に使用できる。レスタシス(シクロスポリン眼科用乳剤)を使用して、患者、例えば、乾性角結膜炎と関連する眼炎症を有する患者の涙液産生を増加させることができる。アルレックス(ALREX)(エタボン酸ロテプレドノール眼科用懸濁剤)を季節性アレルギー性結膜炎の一時的な緩和に使用できる。ロテマックス(エタボン酸ロテプレドノール眼科用懸濁剤)を眼瞼及び眼球結膜、角膜及び眼球前部のステロイド反応性炎症の治療に使用できる。マクジェン(ペガプタニブナトリウム注射液)を血管新生(ウェット型)加齢黄斑変性の治療に使用できる。オプティバール(アゼラスチン塩酸塩)をアレルギー性結膜炎と関連する眼の痒みの治療に使用できる。キサラタン(ラタノプロスト眼科用液剤)を使用して、例えば、開放隅角緑内障又は高眼圧を有する患者の眼内圧亢進を低下させることができる。ベチモール(チモロール眼科用液剤)を、高眼圧又は開放隅角緑内障を有する患者の眼内圧亢進の治療に使用できる。ラタノプロストは、遊離酸形態のプロドラッグであり、プロスタノイド選択的FP受容体作動剤である。ラタノプロストは、緑内障患者の眼内圧を下げ、副作用がほとんどない。ラタノプロストは、水溶液に対して溶解度が比較的低いが、溶媒蒸発を利用して典型的にミクロスフィアの製造に利用される有機溶媒には容易に溶ける。
【0096】
送達のための治療剤のさらなる実施形態には、標的ペプチドとインビボで特異的に結合して、標的ペプチドと天然の受容体又は他のリガンドとの相互作用を防ぐものがある。例えば、アバスチンは、VEGFと結合する抗体である。また、アフリベルセプトは、VEGFを捕捉するVEGF受容体の一部を含む融合タンパク質である。IL-1受容体の細胞外ドメインを利用するIL-1トラップも公知である。トラップは、IL-1が細胞表面の受容体に結合し活性化させるのを阻止する。送達のための薬剤の実施形態には、核酸、例えば、アプタマーがある。ペガプタニブ(マクジェン)は、例えば、ペグ化された抗VEGFアプタマーである。粒子とハイドロゲルの送達プロセスの利点は、アプタマーが放出されるまでインビボ環境から保護されることである。送達のための薬剤のさらなる実施形態には高分子薬物があり、これは、古典的な小分子薬物よりも著しく大きい薬物を指す用語であり、すなわちオリゴヌクレオチド(アプタマー、アンチセンス、RNAi)、リボザイム、遺伝子治療核酸、組換え型ペプチド、及び抗体などの薬物である。
【0097】
一実施形態は、アレルギー性結膜炎のための医薬品の延長放出を含む。例えば、ケトチフェン、抗ヒスタミン剤及び肥満細胞安定剤は、粒子中に与えられて、アレルギー性結膜炎を治療する有効量で本明細書に記載される通り眼に放出され得る。季節性アレルギー性結膜炎(SAC)及び通年性アレルギー性結膜炎(PAC)はアレルギー性結膜疾患である。症状には、かゆみ及びピンクから赤色の眼がある。これらの2つの眼の状態は肥満細胞により媒介される。症状を改善する非特異的な処置には、従来、冷湿布、代用涙液による洗眼、及びアレルゲンの回避がある。治療は、従来、抗ヒスタミン肥満細胞安定剤、二重機構抗アレルゲン剤、又は局所抗ヒスタミン剤からなる。コルチコステロイドは有効であり得るが、副作用のため、春季角結膜炎(VKC)及びアトピー性角結膜炎(AKC)などのより重症な形態のアレルギー性結膜炎のために控えられている。
【0098】
オキシフロキサシン(Oxifloxacin)は、ベガモックス中の有効成分であり、眼の細菌感染の治療又は予防に使用するために認可されたフルオロキノロンである。用量は、典型的には0.5%液剤の一滴であり、1週間以上の期間で1日3回投与される。VKC及びAKCは、好酸球、結膜線維芽細胞、上皮細胞、肥満細胞、及び/又はTH2リンパ球が結膜の生化学的特徴及び組織構造を悪化させる慢性アレルギー性疾患である。VKC及びAKCは、アレルギー性結膜炎を抑制するために使用される医薬により治療できる。浸透剤は作用物質であり、やはり本明細書に記載されるゲル、ハイドロゲル、オルガノゲル、キセロゲル、及び生体材料に含めることができる。これらは、意図される組織への薬物の浸透を支援する作用物質である。浸透剤は、組織に対して必要に応じて選択でき、例えば、皮膚用の浸透剤、鼓膜用の浸透剤、眼用の浸透剤である。
【0099】
眼の病態
本明細書に記載される材料を使用して、薬物又は他の治療剤(例えば、イメージング剤又はマーカー)を眼又は近くの組織に送達できる。病態のいくつかは、後眼部疾患である。用語後眼部疾患は、努力傾注分野の当業者により認識されており、一般的に、網膜、黄斑又は脈絡膜の脈管構造及び完全性に影響を与え、視力障害、視覚喪失、又は失明をもたらす後部のあらゆる眼疾患を指す。後部の病態は、年齢、外傷、外科的介入、及び遺伝因子により生じ得る。いくつかの後眼部疾患は、加齢黄斑変性(AMD)嚢胞様黄斑浮腫(CME)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、後部ぶどう膜炎、及び糖尿病性網膜症である。いくつかの後眼部疾患は、黄斑変性又は糖尿病性網膜症など、望ましくない血管新生又は血管の増殖から生じる。これら及び他の病態の薬物治療選択肢は、本明細書の他の箇所でさらに議論される。
【0100】
キット
ハイドロゲル/キセロゲル粒子の周囲にハイドロゲルを製造するキット又は系は、治療剤を含むハイドロゲル/キセロゲル粒子が、包み込むハイドロゲルを製造するための前駆体と共にキットに保存されるように調製され得る。それらと組み合わせてアプリケーターを使用できる。キットは、医学的に許容できる条件を利用して製造され、薬学的に許容できる無菌状態、純度及び調製を有する成分を含む。溶媒/溶液は、キット中にでも個別にでも提供でき、或いは成分は溶媒と事前に混合され得る。キットは、混合及び/又は送達用のシリンジ及び/又はニードルを含み得る。キット又は系は、本明細書に述べられる成分を含み得る。
【実施例】
【0101】
前駆体の一部は、naxxKpppfffの命名法により呼ばれる、ここで、nはアームの数であり、xxは分子量(MW)であり、pppはポリマーであり、fffは官能性末端基である。例えば、8a15KPEGSAPは、15,000g/mol=15KPEGのMWを有する8アームのポリエチレングリコール(PEG)を指す。アジピン酸スクシンイミジルはSAPである。グルタル酸スクシンイミジルはSGである。PEGはポリエチレンオキシドを指し、末端がOH基のこともそうでないこともある。
【0102】
実施例1:インサイチュで形成されたハイドロゲルコーティングの治療剤の放出速度に対する比較。
材料薬剤:ハイドロゲル粒子内に捉えられたモノクローナル抗体(Mab)ベバシズマブ(MW 149kDa)。8a15KSS=8アームのポリエチレングリコール、MW 15,000Da、各アームはコハク酸スクシンイミジル末端基で終わっている。8a20KNH2=8アームのポリエチレングリコール、MW 20,000Da、各アームは遊離のアミン(塩でない)末端基で終わっている。4a20KSAZ=4アームのポリエチレングリコール、MW 20,000Da、各アームはアゼライン酸スクシンイミジル末端基で終わっている。8a20KNH3+Cl-=8アームのポリエチレングリコール、MW 15,000Da、各アームはアンモニウム塩酸塩末端基で終わっている。粒状ハイドロゲル系タンパク質送達系:急速に分解する8a15KSS/8a20KNH2を内部ハイドロゲル粒子からの迅速なタンパク質放出のために使用した。封入コーティング(「エンベロープ」):インサイチュで形成された4a20KSAZ/8a20KNH2ハイドロゲル。
【0103】
方法
ベバシズマブ(1.136g;27%活性)の噴霧乾燥された粉末を3.5mlの8a20KNH2溶液に懸濁させ(DMC中11.4%)、15分間超音波処理し、次いで3.5mlの8a15KSS溶液と混合し(DMC中8.6%)、DMC中のバルクの8a15KSS/8a20KNH2オルガノゲルを15秒以内に形成した。次いで、オルガノゲルバルクを室温で2時間硬化させ、粒径を小さくすると、DMC中のオルガノゲル粒子のスラリーが生じた。次いで、ベバシズマブ(Bvcz)にロードされたオルガノゲル粒子を乾燥させると、Bvczキセロゲルロード粒子が形成した。
【0104】
「エンベロープなし」Bvczキセロゲル粒子の個々の試料を混合し、1%HA溶液で再水和すると(4時間)、Bvczハイドロゲル粒子(10%Bvcz;10%8a15KSS/8a20KNH2;80%の1%HA溶液)が形成した。試料を(21G2ニードルを使用して)風袋を量ったバイアルに注入し秤量した(15試料:68.2;37.1;36.8;37.6;38.5;43.7;47.5;28.0;39.5;39.3;42.8;42.4;36.1;70.5;77.6mg)。次いで、個々の試料を30mlのPBS(1×;pH7.4)に放出し、1;2;3及び9日で引き揚げた(3試料/時点)。
【0105】
「エンベロープ」インサイチュで形成されたハイドロゲルエンベロープを有するBvczキセロゲル粒子を、再水和及び混合のためにシリンジを利用して調製した。シリンジAは、Bvczキセロゲル粒子(88.0mg)及び乾燥4a20KSAZポリマー(15.3mg)を含む。シリンジBは、0.4%HA溶液(567.5mg)を含む。シリンジCは、211mgのpH9.4緩衝液(21.5mg/ml四ホウ酸ナトリウム十水和物;7.1mg/ml二塩基性リン酸ナトリウム)中の3.2%8a20KNH3+Cl-を有する。インサイチュで形成されたハイドロゲルエンベロープを有するBvczキセロゲル粒子試料は、シリンジA及びBを混合し、次いで内容物をシリンジCと混合して粒子周囲にエンベロープを形成することにより、個別のキット(7試料)を使用して調製した。
【0106】
個々の試料をPBS pH7.4放出媒体に移して、Bvczの放出速度プロファイルを決定し、エンベロープがない場合のプロファイルと比較した。緩衝液を42、68、100、119、142及び288時間で交換した。
【0107】
次いで、「インサイチュで形成された」ハイドロゲルエンベロープを有する場合と有さない場合とのキセロゲル粒子からのBvczの持続放出を比較するインビトロ速度試験を試験した(
図4)。コーティングエンベロープは、インビトロ放出実験を通して完全なままであり、そのため、タンパク質はエンベロープを横切って通るように押し進められ、放出媒体に到達した。
【0108】
実施例2:エンベロープのあるハイドロゲル粒子とないハイドロゲル粒子の硝子体中忍容性比較。
封入ハイドロゲル(「エンベロープ」)のあるハイドロゲル製剤とないハイドロゲル製剤とをインビボで試験した。OTX-13は、エンベロープのある粒子を指し、OTX-14はエンベロープのない粒子を指す。
【0109】
材料。8a5KSG=8アームのポリエチレングリコール、MW 5,000Da、各アームは、グルタル酸スクシンイミジル末端基で終わっている。8a10KSG=8アームのポリエチレングリコール、MW 10,000Da、各アームは、グルタル酸スクシンイミジル末端基で終わっている。8a5KNH2=8アームのポリエチレングリコール、MW 5,000Da、各アームは、遊離アミン(塩でない)末端基で終わっている。4a20KSAZ=4アームのポリエチレングリコール、MW 20,000Da、各アームはアゼライン酸スクシンイミジル末端基で終わっている。8a20KNH3+Cl-=8アームのポリエチレングリコール、MW 15,000Da、各アームは、アンモニウム塩酸塩末端基で終わっている。
【0110】
方法
8a5KNH2(DMC中30%)と8a5KSG(DMC中30%)とのアリコートを、シリンジを使用して1:1の比率で混合して、DMC中のバルクの8a5KSG/8a5KNH2オルガノゲルを形成した。次いで、オルガノゲルバルクを室温で2時間硬化し、次いで粒径を小さくすると、オルガノゲル粒子のDMC中のスラリーが生じた。次いで、DMC中の生じた空のオルガノゲル粒子を乾燥させると、8a5KSG/8a5KNH2キセロゲルの空の粒子が形成した。8a5KNH2(DMC中20%)と8a10KSG(DMC中40%)とのアリコートを、シリンジを使用して1:1の比率で混合して、DMC中のバルクの8a10KSG/8a5KNH2オルガノゲルを形成した。次いで、オルガノゲルバルクを室温で2時間硬化し、次いで粒径を小さくすると、オルガノゲル粒子のDMC中のスラリーが生じた。次いで、DMC中の生じた空のオルガノゲル粒子を乾燥させると、8a10KSG/8a5KNH2キセロゲルの空の粒子が形成した。
【0111】
OTX-14(エンベロープなし)を、8a5KSG/8a5KNH2(72.8mg)及び8a10KSG/8a5KNH2(48.5mg)キセロゲルの空の粒子をシリンジA中に量り取り、プロビスク(519.3mg;1%HA)をシリンジB中に量り取り、次いでシリンジAとBを混合すると、OTX-14が硝子体内注射のために用意された。
【0112】
OTX-13(エンベロープ)を、8a5KSG/8a5KNH2(58.7mg)及び8a10KSG/8a5KNH2(42.4mg)キセロゲルの空の粒子並びに4a20KSAZ(16.2mg)をシリンジA中に量り取り、希釈したプロビスク(664.3mg;PBS pH7.4中0.41%HA)をシリンジB中に充填し、8a20KNH3+Cl-(257mg;pH10.0緩衝液中3.2%:21.5mg/ml四ホウ酸ナトリウム十水和物;7.1mg/ml二塩基性リン酸ナトリウム)をシリンジCに充填することにより調製した。個々の注射液を、シリンジA及びBと1分間混合し、次いでシリンジCと10秒間混合して反応を開始することにより調製した。この時点で、混合物を硝子体内注射のための100μlシリンジに移す。25μlを注射した。注射されたウサギを28日目及び56日目に屠殺し、眼を収集し、組織病理学により分析した。組織を0~5の半定量的なスケールで異常に関して評点した。
【0113】
【0114】
OTX-13の硝子体内注射は、両方の時点でOTX-14と比べて硝子体眼房中の炎症をわずかに減少させた。両方の製剤は、注射した試験材料周囲で類似の典型的には最低限の炎症を硝子体眼房中に起こしたか、硝子体眼房中に散在するマクロファージとして観察された。稀に、そのような炎症は最小限に網膜又は強膜中に広がった。OTX-13は、OTX-14と比べて網膜周囲で顕著に少ない炎症を示した(表2:0.1~0.2と比べた0.02~0.03)。
【0115】
【0116】
OTX-13及びOTX-14の硝子体内注射は、硝子体眼房中の埋め込まれた材料周囲で類似の典型的には最低限の線維症を起こした。OTX-13の平均スコアは、両方の時点でOTX-14と比べてわずかに減少している。
【0117】
OTX-13及びOTX-14の硝子体内注射は、類似の典型的には最低限の上皮過形成及び炎症を鋸状縁のちょうど前の上皮で起こした。OTX-13の平均スコアは、両方の時点でOTX-14と比べてわずかに異なっていた。
【0118】
【0119】
さらなる議論(又は開示)
1a.ハイドロゲルまたはキセロゲルである第1の生分解性材料および治療剤を含む粒子の集合であって、
第1の材料が、生分解前に、生理溶液中の治療剤の放出速度を有する、粒子の集合と、
少なくとも部分的に粒子の集合を被覆するハイドロゲルまたはキセロゲルである第2の材料と
を含む、患者に使用するための生物医学的持続放出システム(又は生物医学的持続放出系)。或いは、第1のハイドロゲル又はキセロゲル材料を含むインプラント、医療用装置、薬物デポ、眼内薬物デポ、繊維、キセロゲル繊維、プロテーゼ、生理液と接触するように製造された物体又は生体材料は、第2の材料で被覆される。同様に、
第1の生分解性材料および治療剤を含む粒子の集合であって、第1の材料が、ハイドロゲルまたはキセロゲルであり、生分解前に、生理溶液中で測定されるときに治療剤の放出速度を有する、粒子の集合と、
粒子の集合を少なくとも部分的に被覆するハイドロゲルまたはキセロゲルである第2の材料と
を含む、患者に使用するための生物医学的持続放出システム(又は生物医学的持続放出系)。放出は、例えば数日~数か月、例えば6日~365日になり得る。当業者は、明示された範囲の間の全範囲及び値が、例えば、下記:6、14、30、60、90、120、180、240、300、又は360日のいずれも上限又は下限として利用可能であるとして企図されることを直ちに認識するであろう。
【0120】
1b.ハイドロゲルまたはキセロゲルである第1の生分解性材料および治療剤であって、第1の材料が、生分解前に、生理溶液中で測定されるときに治療剤の放出速度を有する、第1の生分解性材料および治療剤と、
第1の材料を少なくとも部分的に被覆するハイドロゲルまたはキセロゲルである第2の材料であって、治療剤の50%w/w放出で測定されるときに治療剤の放出速度を20%以下だけ遅延させる第2の材料と
を含む、患者に使用するための生物医学的持続放出システム(又は生物医学的持続放出系)。或いは、第1のハイドロゲルまたはキセロゲル材料を含むインプラント、医療用装置、薬物デポ、眼内薬物デポ、繊維、キセロゲル繊維、プロテーゼ、生理液と接触するように製造された物体又は生体材料は、少なくとも部分的に第2の材料で被覆される。
【0121】
1c.第1の材料および第2の材料がキセロゲルである、請求項1bに記載の系。
【0122】
1d.第2の材料が、生理溶液に応じて、互いに反応して、共有結合的に架橋されたハイドロゲルを形成する前駆体を含む、請求項1bに記載の系。
【0123】
1e.第1の材料が桿状(rod-shape)であり、涙点プラグ(punctal plug)であり、眼内薬物デポ又は眼内インプラントであり、1~10mmの範囲内の寸法を有するか、又は一体型(又はモノリシック)(シングルピース)医療用インプラントであるか、又はこれらの組み合わせである、1b~1dのいずれかに記載の系。
【0124】
2.第2の材料が、治療剤の50%w/w放出で測定されるときに治療剤の放出速度を20%以下だけ遅延させる、1(1a、1b、1cなどを指す)に記載の系。
【0125】
3.第2の材料の固形分が、粒子または他の被覆された物体の固形分よりも低く、約2.5%~約20%の範囲内であり、その間の全範囲及び値、例えば、約2.5%~約10%、約5%~約15%、又は約10%未満~20%を含む、1又は2に記載の系。
【0126】
4.ハイドロゲルが、共有結合的に架橋されていて、第2の材料の架橋間の分子量が粒子又は他の被覆された物体の架橋間の距離よりも低く、少なくとも2000、少なくとも4000、又は2000~250,000である、1~3のいずれかに記載の系;当業者は、明示された範囲の間の全範囲及び値が、例えば、下記:3000、5000、10,000、50,000、100,000のいずれも上限又は下限として利用可能であるとして企図されることを直ちに認識するであろう。
【0127】
5.治療剤が約200Da~約400kDaの範囲内の分子量を有するか、又は治療剤が約250kDa以下の分子量(MW)を有する、1~4のいずれかに記載の系。或いは、薬剤は、約205kDa以下のMWを有する。
【0128】
6a.放出速度の遅延が、治療剤の50%w/w放出で測定されるときに10%以下である、1~5のいずれかに記載の系。或いは、約15%、約5%、又は約1%以下である。
【0129】
6b.放出速度が時間経過による治療剤の治療剤の放出の累積パーセンテージ(w/w)のグラフとして記載され、遅延が10%~50%w/w累積放出間のグラフの全ての点で約20%以下である、1~5のいずれかに記載の系。或いは、遅延は、約1%、約5%、又は約10%以下である。
【0130】
6c.放出速度が時間経過による治療剤の治療剤の放出の累積パーセンテージ(w/w)のグラフとして記載され、遅延が0%~90%w/w累積放出間のグラフの全ての点で約20%以下である、1~5のいずれかに記載の系。或いは、遅延は、約1%、約5%、約10%、又は約15%以下である。
【0131】
7.第2の材料が第1の材料及び粒子の集合を封入している、1~6のいずれかに記載の系。
【0132】
8.治療剤が粒子から第2のハイドロゲルへと拡散するときまで第2の材料が治療剤を含まない、1~7のいずれかに記載の系。
【0133】
9.第2の材料中の治療剤の拡散速度が、治療剤が第1の材料を通る拡散の速度の約4倍~約20倍の範囲内である、1~8のいずれかに記載の系。
【0134】
10.治療剤が少なくとも約1000Daのタンパク質を含む、1~9のいずれかに記載の系。
【0135】
11.治療剤が水溶性の生物製剤(water soluble biologic)を含む、1~10のいずれかに記載の系。
【0136】
12.水溶性の生物製剤が少なくとも約10,000ダルトンの分子質量(molecular mass)を有するタンパク質であり、糖がタンパク質と会合(又は結合)する、11に記載の系。
【0137】
13a.治療剤がタンパク質であり、第1のハイドロゲルがタンパク質の固体粒子を含む、1~12のいずれかに記載の系。
【0138】
13b.治療剤がアプタマー(aptamer)であり、第1のハイドロゲルがアプタマーの固体粒子を含む、1~12のいずれかに記載の系。
【0139】
14.治療剤が、フルオロキノロン、モキシフロキサシン、トラボプロスト、デキサメタゾン、抗生物質、又は前庭毒(vestibulotoxin)からなる群から選択される、1~12のいずれかに記載の系。
【0140】
15.治療剤が、小分子薬物、タンパク質、核酸、又は成長因子を含む、1~12のいずれかに記載の系。
【0141】
16.治療剤が、抗VEGF薬を含む、1~12のいずれかに記載の系。
【0142】
17.集合中の粒子が、約4μm3~約4mm3である体積を有する、1~12のいずれかに記載の系。或いは、約1ミクロン~約1.5mm直径の直径又は5~500ミクロン直径の直径を有する。
【0143】
18.集合中の粒子が、約0.02μm3~約1mm3である平均体積を有する、1~12のいずれかに記載の系。
【0144】
19.約0.005~約0.2ミリリットルの総体積を有する、1~12のいずれかに記載の系。
【0145】
20.粒子の集合が、第2の材料内に分散している、1~12のいずれかに記載の系。
【0146】
21.約0.005~0.1ミリリットルの総体積および約0.1~約10,000ミクロンの厚さを有する単一の塊(mass)である、20に記載の系。当業者は、この範囲内の全範囲及び値が企図及び支持されることを直ちに認識するであろう。
【0147】
22.第1の材料及び第2の材料が水により加水分解的に生分解性(biodegradable)である、1~21のいずれかに記載の系。
【0148】
23.第1の材料及び第2の材料が合成のものである、1~22のいずれかに記載の系。
【0149】
24.第1の材料が、第1の官能基を含む第1の前駆体と、第2の官能基を含む第2の前駆体とを含み、第1の官能基および第2の官能基が共有結合的な架橋を形成し、
第2の材料が、第3の官能基を含む第3の前駆体と、第4の官能基を含む第4の前駆体とを含み、第3の官能基および第4の官能基が共有結合的な架橋を形成する、1~23のいずれかに記載の系。
【0150】
25.第1~第4の官能基が、反応前に、求電子基および求核基からなる群から選択される、24に記載の系。
【0151】
26.求電子基がスクシイミド(succimide)、スクシンイミドエステル、n-ヒドロキシスクシンイミド、マレイミド、スクシナート、ニトロフェニルカーボナート、アルデヒド、ビニルスルホン、アジド、ヒドラジド、イソシアナート、ジイソシアナート、トシル、トレシル、又はカルボニルジイミダゾールを含む、25に記載の系。
【0152】
27.求核基が、一級アミンまたは一級チオールを含む、25に記載の系。
【0153】
28.第1~第4の前駆体が、共有結合的に架橋する前に水溶性である、24~27のいずれかに記載の系。
【0154】
29.第1~第4の前駆体が合成のものである、24~28のいずれかに記載の系。
【0155】
30.第1~第4の前駆体がそれぞれ5つ以下のアミノ酸を有する、24~29のいずれかに記載の系。
【0156】
31.第1~第4の前駆体が親水性ポリマーである、24~30のいずれかに記載の系。
【0157】
32.第1~第4の前駆体の少なくとも1つが、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、及びそのブロックコポリマーからなる群から選択されるポリマーを含む、24~31のいずれかに記載の系。
【0158】
33.第1~第4の前駆体の少なくとも1つが、アルギネート、ゲラン、コラーゲン、及び多糖(又はポリサッカリド)からなる群から選択されるポリマーを含む、24~32のいずれかに記載の系。
【0159】
34.患者、任意選択で眼の疾病を有する患者を治療する方法であって、
ハイドロゲルまたはキセロゲルである第1の生分解性材料および治療剤を含む粒子の集合を提供することであって、第1の材料が、生分解前に、生理溶液中で測定されるときに治療剤の放出速度を有する、提供することと、
少なくとも部分的に粒子の集合を被覆する第2のハイドロゲルを、意図される使用部位において、任意選択で眼又は眼の近くにおいて患者の組織上にインサイチュで形成することと
を含む方法。治療剤は放出されて患者を治療する。
【0160】
35.第2の材料は、治療剤が50%w/w放出で測定されるときに治療剤の放出速度を20%以下だけ遅延させる、34に記載の方法。
【0161】
36.第2の材料の固形分が、粒子又は他の被覆された物体の固形分よりも低く、パーセンテージがw/wであるとして、約2.5%~約20%の範囲内であり、その間の全範囲及び値、例えば、約2.5%~約10%、約5%~約15%、又は約10%未満~20%を含む、34又は35に記載の方法。
【0162】
37.ハイドロゲルが、共有結合的に架橋されており、第2の材料の架橋間の分子量が、粒子又は他の被覆された物体の固形分よりも低く、少なくとも2000、少なくとも4000、又は2000~250,000である、34~36のいずれかに記載の方法;当業者は、明示された範囲の間の全範囲及び値が、例えば、下記:3000、5000、10,000、50,000、100,000のいずれも上限又は下限として利用可能として企図されることを直ちに認識するであろう。
【0163】
38.第2のハイドロゲルが、上脈絡膜腔で形成される、34~37のいずれかに記載の方法。
【0164】
39.治療剤が、約400kDa以下の分子量(MW)を有する、34~38のいずれかに記載の方法。或いは、治療剤は、約250kDa以下のMWを有する。
【0165】
40a.放出速度の遅延は、治療剤が50%w/w放出で測定されるときに10%以下である、34~39のいずれかに記載の方法。或いは、約15%、約5%、又は約1%以下である。
【0166】
40b.放出速度が時間経過による治療剤の治療剤の放出の累積パーセンテージ(w/w)のグラフとして記載され、遅延が10%~50%w/w累積放出間のグラフの全ての点で約10%以下である、34~39のいずれかに記載の方法。或いは、遅延は、約1%、約5%、約20%、又は約10%以下である。
【0167】
40c.放出速度が時間経過による治療剤の治療剤の放出の累積パーセンテージ(w/w)のグラフとして記載され、遅延が10%~90%w/w累積放出間のグラフの全ての点で約20%以下である、34~39のいずれかに記載の方法。或いは、遅延は、約1%、約5%、約10%、又は約15%以下である。
【0168】
41.第2の材料が第1の材料及び粒子の集合を封入し、かつ/または第2の材料が、治療剤が粒子から第2のハイドロゲルへと拡散するときまで治療剤を含まない、34~40のいずれかに記載の方法。
【0169】
42.第2の材料中の治療剤の拡散速度が、治療剤が第1の材料を通る拡散の速度の約4倍~約20倍の範囲内である、34~41のいずれかに記載の方法。
【0170】
43.治療剤が、少なくとも約1000Daのタンパク質を含み、かつ/または治療剤が水溶性生物製剤を含む、34~42のいずれかに記載の方法。
【0171】
44.水溶性生物製剤が、少なくとも約10,000ダルトンの分子質量を有するタンパク質であり、糖がタンパク質と会合する、34~43のいずれかに記載の方法。
【0172】
45.治療剤が、タンパク質であり、第1のハイドロゲルがタンパク質の固体粒子を含むか、または治療剤がアプタマーであり、第1のハイドロゲルがアプタマーの固体粒子を含む、34~44のいずれかに記載の方法。
【0173】
46.治療剤が、フルオロキノロン、モキシフロキサシン、トラボプロスト、デキサメタゾン、抗生物質、又は前庭毒からなる群から選択される、34~45のいずれかに記載の方法。
【0174】
47.治療剤が、小分子薬、タンパク質、核酸、又は成長因子を含む、34~46のいずれかに記載の方法。
【0175】
48.治療剤が、抗VEGF又は抗血管新生の薬物を含む、34~47のいずれかに記載の方法。
【0176】
49.集合中の粒子が、約4μm3~約4mm3である体積を有する、34~48のいずれかに記載の方法。或いは、約1ミクロン~約1.5mm直径、又は5~500ミクロン直径の直径を有する。
【0177】
50.集合中の粒子が、約400μm3~約4mm3である平均体積を有する、34~49のいずれかに記載の方法。
【0178】
51.約0.005~約2.5ミリリットルの総体積を有する、34~50のいずれかに記載の方法。
【0179】
52.粒子の集合が、第2の材料内に分散している、34~51のいずれかに記載の方法。
【0180】
53.約0.005~0.1ミリリットルの総体積および約0.1~約10,000ミクロンの厚さを有する単一の塊である、34~52のいずれかに記載の方法。当業者は、この範囲内の全範囲及び値が企図及び支持されることを直ちに認識するであろう。
【0181】
54.第1の材料及び第2の材料が水により加水分解的に生分解性である、34~53のいずれかに記載の方法。
【0182】
55.第1の材料及び第2の材料が合成のものである、34~54のいずれかに記載の方法。
【0183】
56.第1の材料が、第1の官能基を含む第1の前駆体と、第2の官能基を含む第2の前駆体とを含み、第1の官能基および第2の官能基が共有結合的な架橋を形成し、
第2の材料が、第3の官能基を含む第3の前駆体と、第4の官能基を含む第4の前駆体とを含み、第3の官能基および第4の官能基が共有結合的な架橋を形成する、34~55のいずれかに記載の方法。種々の前駆体及び官能基は、同一でも互いに異なっていてもよい。
【0184】
57.第1~第4の官能基が、反応前に、求電子基及び求核基からなる群から選択される、56に記載の方法。
【0185】
58.求電子基が、スクシイミド、スクシンイミドエステル、n-ヒドロキシスクシンイミド、マレイミド、スクシナート、ニトロフェニルカーボナート、アルデヒド、ビニルスルホン、アジド、ヒドラジド、イソシアナート、ジイソシアナート、トシル、トレシル、又はカルボニルジイミダゾールの1つ以上であるように独立に選択される、56又は57に記載の方法。
【0186】
59.求核基が、一級アミン又は一級チオールを含む、56又は57に記載の方法。
【0187】
60.第1~第4の前駆体が、共有結合的に架橋される前に水溶性である、56に記載の方法。
【0188】
61.第1~第4の前駆体が合成のものである、56~60のいずれかに記載の方法。
【0189】
62.第1~第4の前駆体がそれぞれ5つ以下のアミノ酸を有する、56~60のいずれかに記載の方法。
【0190】
63.第1~第4の前駆体が親水性ポリマーである、56~60のいずれかに記載の方法。
【0191】
64.第1~第4の前駆体の少なくとも1つが、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、及びそのブロックコポリマーからなる群から選択されるポリマーを含む、56~60のいずれかに記載の方法。
【0192】
65.第1~第4の前駆体の少なくとも1つが、アルギネート、ゲラン、コラーゲン、及び多糖からなる群から選択されるポリマーを含む、56~60のいずれかに記載の方法。
【0193】
66.患者の組織が治療されるか、又はハイドロゲルが組織上にインサイチュで形成される、56~65のいずれかに記載の方法。組織には、例えば、眼、涙点、眼内、結膜下、強膜、脈絡膜上、眼球後方、テノン嚢下配置が含まれる。
【0194】
67.上記1~33のいずれかに記載の系または34~66のいずれかに記載の方法を含む、患者の眼の疾病又は他の病態を治療するための系の使用。
【0195】
68.治療剤を患者に(制御可能に放出して)送達するための1~33のいずれかに記載の系または34~66のいずれかに記載の方法の使用。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
患者を治療する方法であって、
ハイドロゲルまたはキセロゲルである第1の生分解性材料および治療剤を含む粒子の集合を提供することであって、前記第1の材料が、生分解前に、生理溶液中で測定されるときに前記治療剤の放出速度を有することと、
少なくとも部分的に前記粒子の集合を被覆する第2のハイドロゲルを前記患者の組織上にインサイチュで形成することであって、前記治療剤がその後に放出されて前記患者を治療することと
を含む方法。
(態様2)
前記第2の材料の固形分が、前記粒子の固形分よりも低く、約2.5%~約20%w/wの範囲内である、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記ハイドロゲルが、共有結合的に架橋されていて、前記第2の材料の架橋間の分子量が、前記粒子または他の被覆された物体の固形分よりも低く、少なくとも2000Daである、態様1または2に記載の方法。
(態様4)
前記第2の材料は、前記治療剤が50%w/w放出で測定されるときに前記治療剤の前記放出速度を20%以下だけ遅延させる、態様1~3のいずれか1項に記載の方法。
(態様5)
前記第2の材料は、前記治療剤が前記粒子から前記第2のハイドロゲルへと拡散するときまで前記治療剤を含まない、態様1~4のいずれか1項に記載の方法。
(態様6)
前記治療剤がタンパク質である、態様1~4のいずれか1項に記載の方法。
(態様7)
前記粒子が、約1~約100ミクロンの直径の範囲内である直径を有する、態様1~6のいずれか1項に記載の方法。
(態様8)
シリンジまたはカテーテルが、前駆体の存在下で前記粒子の集合を送達するために使用され、前記前駆体が前記粒子を被覆し、前記ハイドロゲルをインサイチュで形成する、態様1~7のいずれか1項に記載の方法。
(態様9)
前記組織が眼であり、前記ハイドロゲルが前記眼内で形成される、態様1~8のいずれか1項に記載の方法。
(態様10)
患者に使用するための生物医学的持続放出システムであって、
ハイドロゲルまたはキセロゲルである第1の生分解性材料および治療剤を含む粒子の集合であって、前記第1の材料が、生分解前に、生理溶液中で測定されるときに前記治療剤の放出速度を有する、粒子の集合と、
前記粒子の集合を少なくとも部分的に被覆するハイドロゲルまたはキセロゲルである第2の材料であって、前記治療剤の50%w/w放出で測定されるときに前記治療剤の前記放出速度を20%以下だけ遅延させる第2の材料と
を含む、生物医学的持続放出システム。
(態様11)
前記第2の材料の固形分が、前記粒子の固形分よりも低く、前記第2の材料の前記固形分が、約2.5%~約20%w/wの範囲内である、態様10に記載のシステム。
(態様12)
前記ハイドロゲルが、共有結合的に架橋されていて、前記第2の材料の架橋間の分子量が前記粒子の架橋間の距離よりも低く、少なくとも3000である、態様10または11に記載のシステム。
(態様13)
前記治療剤の前記50%w/w放出で測定されるときに前記放出速度の前記遅延が10%以下である、態様11または12に記載のシステム。
(態様14)
前記治療剤がタンパク質である、態様11~13のいずれか1項に記載のシステム。
(態様15)
前記第1の材料が、第1の官能基を含む第1の前駆体と、第2の官能基を含む第2の前駆体とを含み、前記第1の官能基および前記第2の官能基が共有結合的な架橋を形成し、
前記第2の材料が、第3の官能基を含む第3の前駆体と、第4の官能基を含む第4の前駆体とを含み、前記第3の官能基および前記第4の官能基が共有結合的な架橋を形成する、
態様11~14のいずれか1項に記載のシステム。
(態様16)
前記第1~第4の官能基が、反応前に、求電子基および求核基からなる群から選択される、態様15に記載のシステム。
(態様17)
前記第1~第4の前駆体が、共有結合的に架橋される前に水溶性である、態様15または16に記載のシステム。
(態様18)
患者に使用するための生物医学的持続放出システムであって、
ハイドロゲルまたはキセロゲルである第1の生分解性材料および治療剤であって、前記第1の材料が、生分解前に、生理溶液中で測定されるときに前記治療剤の放出速度を有する、第1の生分解性材料および治療剤と、
前記第1の材料を少なくとも部分的に被覆するハイドロゲルまたはキセロゲルである第2の材料であって、前記治療剤の50%w/w放出で測定されるときに前記治療剤の放出速度を20%以下だけ遅延させる第2の材料と
を含む、生物医学的持続放出システム。
(態様19)
前記第1の材料および前記第2の材料がキセロゲルである、態様18に記載のシステム。
(態様20)
前記第2の材料が、生理溶液に応じて、互いに反応して、共有結合的に架橋されたハイドロゲルを形成する前駆体を含む、態様18または19に記載のシステム。
(態様21)
眼内薬物デポである、態様19または20に記載のシステム。
(態様22)
患者に治療剤を送達するための、態様11~20のいずれか1項に記載のシステムの使用。