(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/54 20100101AFI20220621BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20220621BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L33/60
(21)【出願番号】P 2018001196
(22)【出願日】2018-01-09
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井出 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】梁 吉鎬
(72)【発明者】
【氏名】小池 恭太郎
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 紀子
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-012545(JP,A)
【文献】特開2017-220661(JP,A)
【文献】特開2017-050321(JP,A)
【文献】特表2016-510177(JP,A)
【文献】特開2012-142410(JP,A)
【文献】特開2015-220446(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104112810(CN,A)
【文献】特開2007-157805(JP,A)
【文献】特開2011-134829(JP,A)
【文献】特開2011-204790(JP,A)
【文献】特開2001-277510(JP,A)
【文献】特開2011-192968(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0005245(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配された発光素子と、
前記基板と前記発光素子との間に挟まれ且つ前記発光素子へのカソード電極をなす第1の金属層及び前記発光素子へのアノード電極をなす第2の金属層を有する接合層と、
前記発光素子の側面を環状に覆い、前記基板に面しかつ前記発光素子の前記側面から離れるに従って前記基板との距離が大きくなる曲面形状又は平面形状の底面を有する樹脂体と、を有
し、
前記樹脂体の外周側面及び前記底面上には、反射膜が設けられ、
前記反射膜は、前記基板と前記発光素子との間において前記第1の金属層に接続されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記樹脂体は、前記発光素子からの放出光に対して反射性を有する樹脂材料からなることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記発光素子上に配され、蛍光体を有する透光板を有し、
前記樹脂体は、前記透光板の側面を覆っていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば発光ダイオードなどの発光素子を含む発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光装置は、例えば、端子や配線などが設けられた基板と、当該基板上に実装された少なくとも1つの発光素子とを含む。また、当該発光素子は、例えば、接合材を介して当該基板に接合され、樹脂などで封止されている。例えば、特許文献1には、基板上に半導体層を有する発光素子と、蛍光物質を有しかつ当該発光素子の表面を包囲する透光性モールド部材とを有する発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光装置は、例えば車両用灯具に用いられる場合などを考慮すると、種々の過酷な環境下でも安定して動作することが好ましい。例えば、発光素子と実装用の基板とが確実に接合されることで装置全体として十分な機械的強度が確保されていることが好ましい。また、例えば、発光素子と当該基板上の配線とが確実に電気的に接続され、端子間の短絡や導通不良などが確実に防止されていることが好ましい。また、例えば、発光装置は、所望の領域に適切かつ十分な光を供給することを考慮すると、高い光取り出し効率及び配光性を有することが好ましい。
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、発光素子と基板とが確実に接合され、高い動作安定性を有する発光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による発光装置は、基板と、接合層を介して基板上に配された発光素子と、発光素子の側面を環状に覆い、基板に面しかつ発光素子の側面から離れるに従って基板との距離が大きくなる曲面形状又は平面形状の底面を有する樹脂体と、を有することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2A】実施例1に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図2B】実施例1に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図2C】実施例1に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図2D】実施例1に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図3A】比較例に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図3B】比較例に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図4】実施例1の変形例1に係る発光装置の断面図である。
【
図5】実施例1の変形例2に係る発光装置の上面図である。
【
図6】実施例1の変形例3に係る発光装置の断面図である。
【
図7】実施例1の変形例4に係る発光装置の断面図である。
【
図9A】実施例2の変形例に係る発光装置の断面図である。
【
図9B】実施例2の変形例に係る発光装置の上面図である。
【
図10A】実施例3に係る発光装置の部分断面図である。
【
図10B】実施例3に係る発光装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0009】
図1Aは、実施例1に係る発光装置10の断面図である。また、
図1Bは、発光装置10の模式的な上面図である。なお、
図1Aは、
図1BのV-V線に沿った断面図である。
図1A及び
図1Bを用いて、発光装置10の構成について説明する。まず、発光装置10は、実装基板(基板又は第1の基板)11と、実装基板11上に実装された発光素子20と、発光素子20上に配置された透光板30と、を有する。
【0010】
実装基板11は、例えば、発光素子20への給電用の金属配線(図示せず)が設けられたほぼ平坦な実装面を有する。発光素子20は、実装基板11の当該実装面上に固定されている。また、本実施例においては、発光装置10は、実装基板11と発光素子20との間に設けられて、実装基板11と発光素子20とを互いに接合する接合層12を有する。すなわち、発光素子20は、接合層12を介して実装基板11上に配されている。
【0011】
発光素子20は、例えば、発光ダイオードなどの半導体発光素子である。発光素子20は、例えば、支持基板(第2の基板)21及び支持基板21上に支持された光半導体層22を含む。図示していないが、光半導体層22は、例えば、n型半導体層(第1の半導体層)と、活性層(発光層)と、p型半導体層(第2の半導体層)とが積層された構造を有する。
【0012】
本実施例においては、発光素子20は、光半導体層22側から実装基板11に接合されている。すなわち、発光素子20は、フリップチップ実装によって実装基板11に実装されている。従って、本実施例においては、実装基板11上に光半導体層22が形成され、光半導体層22上に支持基板21が形成されている。支持基板21は、光半導体層22から放出された光に対して透光性を有する。例えば、支持基板21は、光半導体層22の結晶成長に用いられる基板、例えばサファイア基板からなる。
【0013】
透光板30は、接着層(図示せず)を介して発光素子20(本実施例においては支持基板21における光半導体層22とは反対側の表面)に接着されている。また、透光板30は、光半導体層22から放出された光に対して透光性を有する。透光板30は、例えば平板形状のガラスプレートからなる。従って、本実施例においては、光半導体層22から放出された光は、支持基板21及び透光板30を介して外部に取り出される。すなわち、発光装置10においては、透光板30の上面が光取り出し面として機能する。
【0014】
また、
図1Bに示すように、本実施例においては、発光素子20の支持基板21及び光半導体層22は、矩形の上面形状を有する。また、本実施例においては、透光板30は、発光素子20の支持基板21とほぼ同一の矩形の上面形状を有する。
【0015】
なお、透光板30は、蛍光体を含んでいてもよい。例えば、透光板30は、蛍光体粒子を含有する樹脂板であってもよいし、単結晶の蛍光体プレートであってもよい。例えば、本実施例においては、発光素子20は青色領域にピーク波長を有する窒化物系半導体からなる光半導体層22を有し、透光板30は、YAG蛍光体を有する蛍光体プレートである。従って、本実施例においては、発光装置10は、白色光を外部に出射する。
【0016】
また、本実施例においては、接合層12は、金属層からなる。具体的には、
図1A及び
図1Bに示すように、接合層12は、金属材料からなる第1の金属層12Aと、金属材料からなりかつ第1の金属層12Aから絶縁された第2の金属層12Bとを含む。例えば、第1及び第2の金属層12A及び12Bは、実装基板11と発光素子20の光半導体層22との間において間隙をおいて互いに離間する金属層からなる。例えば、第1及び第2の金属層12A及び12Bの各々は、Au層又はAuSn層からなる。
【0017】
また、本実施例においては、第1の金属層12Aは、発光素子20における光半導体層22のn型半導体層に接続されたカソード電極(第1の電極層)として機能する。また、第2の金属層12Bは、光半導体層22のp型半導体層に接続されたアノード電極(第2の電極層)として機能する。また、接合層12の第1及び第2の金属層12A及び12Bは、それぞれ実装基板11上のカソード端子及びアノード端子(それぞれ図示せず)に接続されている。
【0018】
次に、発光装置10は、発光素子20及び透光板30の側面を環状に覆う樹脂体40を有する。本実施例においては、樹脂体40は、発光素子20からの放出光に対して反射性を有する樹脂、例えば白色樹脂からなる。従って、発光素子20からの放出光は、樹脂体40によって、その大部分が透光板30に向かって反射される。従って、樹脂体40を有することで発光装置10の光取り出し効率が向上する。
【0019】
また、本実施例においては、樹脂体40は、発光素子20及び透光板30の側面を完全に覆い、閉じた環状体(帯状体)を形成する樹脂膜である。また、樹脂体40は、発光素子20の側面及び透光板30の側面に密着して接触している。また、
図1A及び
図1Bに示すように、本実施例においては、樹脂体40は、発光素子20及び透光板30に接触する素子接触面S1と、外部(例えば外部雰囲気中)に露出する外部露出面S2とを有する。
【0020】
また、
図1Aに示すように、本実施例においては、樹脂体40の素子接触面S1は、樹脂体40の内周側面をなす。また、本実施例においては、樹脂体40は発光素子20及び透光板30の側面のみを覆い、素子接触面S1は発光素子20及び透光板30の側面のみに接触している。
【0021】
また、本実施例においては、樹脂体40の外部露出面S2は、樹脂体40の外周側面をなす側面S21と、実装基板11に面して樹脂体40の底部端面(実装基板11側の外周端面)をなす底面S22と、樹脂体40の上部端面(底部端面とは反対側の外周端面)をなす上面S23とからなる。また、外部露出面S2の底面S22は、素子接触面S1(すなわち発光素子20の側面)から離れるに従って実装基板11との距離が大きくなる凹面形状を有する。本実施例においては、底面S22の全体が凹面として形成されている。
【0022】
次に、
図2A~
図2Dを用いて、発光装置10の製造方法について説明する。
図2Aは、透光板30及び接合層12が形成された発光素子20が並置された仮基板19の断面図である。
図2Bは、熱硬化性樹脂40Lが塗布された仮基板19の断面図である。
図2Cは、隣接する発光素子20間で切断された仮基板19の断面図である。また、
図2Dは、実装基板11に接合された発光素子20の断面図である。
【0023】
まず、支持基板21となるサファイア基板上に光半導体層22となる半導体膜をエピタキシャル成長させる。次に、当該半導体膜上に接合層12となる金属膜を形成し、当該サファイア基板及び半導体膜を切断し、複数の発光素子20を作製する。そして、仮基板19上に複数の透光板30を互いに離間して並置した後、透光板30上に支持基板21側から発光素子20を接着する(
図2A)。
【0024】
次に、仮基板19の発光素子20から露出した表面上に熱硬化性樹脂40Lを塗布する。この時、熱硬化性樹脂40Lが発光素子20の上面及び接合層12に達しないように、また、表面張力によってのみ発光素子20の側面全体が覆われるように、熱硬化性樹脂40Lの塗布量を調節する。続いて、仮基板19を加熱し、熱硬化性樹脂40Lを硬化させる、これによって、隣接する発光素子20間に凹部(凹面)が形成された状態で熱硬化性樹脂40Lが硬化する(
図2B)。
【0025】
続いて、発光素子20を囲むように所定の領域で仮基板19を切断する。これによって、切断後に残存した熱硬化性樹脂40Lが樹脂体40となる(
図2C)。続いて、仮基板19とは別に、実装基板11を用意する。そして、発光素子20を接合層12側から実装基板11上に配置する。そして、実装基板11を加熱することで、接合層12を溶融させ、発光素子20を実装基板11に接合する(
図2D)。例えばこのようにして、発光装置10を作製することができる。
【0026】
ここで、樹脂体40及びその底面S22(凹面)について説明する。上記したように、発光素子20の実装基板11への接合時には、実装基板11及び発光素子20のみならず、樹脂体40も加熱される。また、樹脂体40は、発光素子20(支持基板21及び光半導体層22)よりも高い熱膨張率を有する。従って、樹脂体40は、当該加熱時には発光素子20よりも大きな体積増加を行う。特に、樹脂体40は、外部に開放された外部露出面S2が広がるように大きく形状変化(膨張)を行う。
【0027】
本願の発明者らは、この樹脂体40の熱膨張が発光素子20の実装基板11への接合不良をもたらす可能性があること、及び樹脂体40の実装基板11側に露出した底面S22が凹面形状を有することでこの接合不良が防止できることを見出した。
図3A及び
図3Bを用いて、樹脂体が実装基板11との距離が均一な底面を有する場合に起こり得る接合時の不良について説明する。
【0028】
図3Aは、比較例として、発光素子20の実装基板11側の表面と同一高さを有する平面形状の底面を有する樹脂体110が形成された発光素子20と、この発光素子20が接合される前の実装基板11とを示す断面図である。また、
図3Bは、比較例に係る発光装置100の断面図である。
【0029】
まず、
図3Aに示すように、例えば光取り出し効率及び配光性を高める目的で発光素子20の側面に樹脂体110を形成する場合、樹脂体110は発光素子20の側面上に形成されていればよく、樹脂体110の全体形状については考慮する必要性は低い。従って、例えば樹脂体110のように、一定の厚みを持って発光素子20の側面を環状に取り囲む形状となることが想定される。この場合、樹脂体110の底面は、
図3Aに示すような平坦な形状となるか、又は実装基板11との距離が小さくなる凸形状となる。
【0030】
しかし、このような形状の樹脂体110は、実装基板11に接合される際の加熱工程において膨張する。そして、樹脂体110の実装基板11側に露出した底面は、実装基板11に向かう方向に膨張する。また、一般に、樹脂体110に用いられる樹脂材料は、接合層12に用いられる金属材料及び発光素子20に用いられる半導体材料よりも熱膨張率が高い。従って、
図3Bに示すように、樹脂体110は、加熱前には実装基板11から離間していても、加熱時には実装基板11に当たる場合がある。
【0031】
この場合、膨張した樹脂体110が接合層12を実装基板11から浮き上がらせる可能性がある。従って、接合層12が実装基板11に十分に密着せず、発光素子20と実装基板11とが十分な強度で接合されない場合がある。
【0032】
本願の発明者らは、この不具合の可能性に着目した。そして、本願の発明者らは、この不具合を予防するために、例えば
図2C又は
図2Dに示すように、加熱時に樹脂体40と実装基板11とが接触する可能性がある部分である底面S22に逃げを形成することを検討した。すなわち、本願の発明者らは、開放された膨張部である樹脂体40の底面S22と実装基板11との間の距離を大きく確保することで上記した不具合が防止されることを見出した。
【0033】
これによって、加熱時に樹脂体40が膨張した場合でも樹脂体40と実装基板11とが接触することが抑制され、発光素子20が確実に実装基板11に接合される。従って、このような樹脂体40を有する発光装置10は、発光素子20と実装基板11とが確実に接合され、また、確実に発光素子20が実装基板11に電気的に接続される。従って、発光素子20と実装基板11とが確実に接合され、高い動作安定性及び光取り出し効率を有する発光装置10を提供することができる。
【0034】
なお、本実施例においては、樹脂体40が白色樹脂からなる場合について説明したが、樹脂体40は他の樹脂材料から構成されていてもよい。例えば、樹脂体40は、発光素子20からの放出光に対して透光性を有する樹脂材料から構成されていてもよい。樹脂体40は、発光素子20の側面を覆うことで、発光素子20、例えば発光素子20の光半導体層22を保護することができる。従って、樹脂体40は、光反射性の樹脂材料のみならず、光透過性の樹脂材料から構成されていてもよい。
【0035】
また、本実施例においては、樹脂体40が白色樹脂からなり、発光素子20及び透光板30の側面を完全に覆う場合について説明した。これによって、発光装置10は、例えば、発光部と非発光部との境界での明暗の差が明確となることが要求されるような用途に好適な構成となる。しかし、樹脂体40は、例えば発光装置10の用途や目的に応じて、発光素子20及び透光板30の側面の適切な範囲を覆うように構成されることができる。
【0036】
また、本実施例においては、樹脂体40の外部露出面S2が、側面S21、底面S22及び上面S23を有する場合について説明したが、樹脂体40の構成はこれに限定されない。樹脂体40は、凹面形状の底面S22を有していればよい。例えば、側面S21及び上面S23は、凹面形状を有していてもよいし、凸面形状を有していてもよいし、凹凸面を有していてもよい。また、側面S22及び上面S23が区別されず、側面S22から上面S2が連続的に形成されていてもよい。
【0037】
また、本実施例においては、樹脂体40が凹面形状の底面S22を有する場合について説明した。しかし、底面S22は、素子接触面S1(発光素子20の側面)から離れるに従って実装基板11との距離が大きくなるような表面形状を有していればよい。
【0038】
図4は、実施例1の変形例1に係る発光装置10Aの断面図である。発光装置10Aは、樹脂体40Aの構成を除いては、発光装置10と同様の構成を有する。発光装置10Aにおいては、樹脂体40Aは、発光素子20及び透光板30の側面に接触する素子接触面S1と、外部に露出する外部露出面S2Aとを有する。
【0039】
また、樹脂体40Aの外部露出面S2Aは、樹脂体40の外部露出面S2と同様の側面S21及び上面S23を有する。一方、樹脂体40Aの外側表面S2Aは、樹脂体40の底面S21に代えて、平面形状の底面S24を有する。本変形例においては、樹脂体40Aの底面S24は、実装基板11に向かって先細りとなるテーパ面からなる。
【0040】
本変形例においても、樹脂体40Aは、実装基板11に面し、かつ発光素子20の側面から離れるに従って実装基板11との距離が大きくなる底面S24を有する。従って、発光素子20と実装基板11とが確実に接合され、高い動作安定性を有する発光装置10Aを提供することができる。
【0041】
また、本実施例においては、発光装置10が透光板30を有する場合について説明した。しかし、発光装置10は、透光板30を有していなくてもよい。透光板30は、発光装置10の用途や目的に応じて任意に設けられ、また任意の態様を有することができる。例えば、透光板30は、蛍光体を含んでいなくてもよい。また、透光板30は、湿度による素子劣化を抑制する保護膜としての機能を有していてもよい。
【0042】
また、透光板30は、例えば、光散乱材を含んでいてもよい。これによって、発光素子20に形成される電極パターンを外部から視認されにくくすることができる。また、透光板30は、例えば、曲面形状の上面を有していてもよい。これによって、透光板30にレンズ機能を持たせることができる。
【0043】
また、樹脂体40の底面S22は他の表面形状を有していてもよい。
図5は、実施例1の変形例2に係る発光装置10Bの断面図である。発光装置10Bは、透光板30を有していない点、及び樹脂体40Bの構成を除いては、発光装置10と同様の構成を有する。
【0044】
本変形例においては、発光素子20における支持基板21の上面が光取り出し面として機能する。また、樹脂体40Bは、発光素子20のみを環状に覆い、発光素子20の側面のみに接触する素子接触面S1Aを有する。
【0045】
また、樹脂体40Bは、外部に露出する外部露出面S2Bを有し、外部露出面S2が凸面形状の底面S22を有する。本変形例においては、樹脂体40Bは、実装基板11に面し、発光素子20の側面から離れるに従って実装基板11との距離が大きくなる凸面形状の底面S25を有する。樹脂体40Bが凸面形状の底面S25を有する場合でも、素子接触面S1Aから外側に向かって樹脂体40Bが実装基板11から離れていればよい。
【0046】
すなわち、樹脂体40、40A及び40Bに示すように、発光素子20の側面から離れるに従って実装基板11との距離が大きくなる曲面形状又は平面形状の底面S22、S24又はS25が設けられていればよい。これによって、発光素子20と実装基板11とが確実に接合され、高い動作安定性を有する発光装置10、10A及び10Bを提供することができる。
【0047】
また、本実施例においては、接合層12が金属層からなり、接合層12が発光素子20への給電を行う電極として機能する場合について説明した。しかし、接合層12の構成はこれに限定されない。
図6は、実施例1の変形例3に係る発光装置10Cの断面図である。発光装置10Cは、接合層13、発光素子20A及び透光板30Aの構成を除いては、発光装置10と同様の構成を有する。
【0048】
本変形例においては、接合層13は、樹脂材料からなる樹脂層である。また、発光素子20Aは、接合層13上に形成された支持基板21A及び支持基板21A上に形成された光半導体層22Aを有する。すなわち、発光素子20Aは、支持基板21A側から実装基板11に接合された構造を有する。
【0049】
また、本変形例においては、発光素子20Aは、光半導体層22A上に形成され、光半導体層22Aのn型半導体層に接続されたn側電極(カソード電極)23及びp型半導体層に接続されたp側電極(アノード電極)24を有する。また、発光素子20は、光半導体層22Aの上面及びn側電極23及びp側電極24の側面を覆い、光半導体層22Aの一部の上面上に開口部を有する絶縁層25を有する。また、透光板30は、発光素子20Aにおける絶縁層25の開口部に形成されている。
【0050】
本変形例においては、n側電極23及びp側電極24は、絶縁層25から露出しており、例えばボンディングワイヤを介して実装基板11の配線に接続されている。すなわち、本変形例においては、接合層13が発光素子20Aへの電極を兼ねず、発光素子20Aが接合層13を経由せずに給電される場合に相当する。
【0051】
本変形例においても、発光装置10Cは、発光素子20Aの側面を環状に覆う樹脂体40を有する。また、樹脂体40は、実装基板11に面する凹面形状の底面S22を有する。従って、発光素子20Aと実装基板11とが確実に接合され、高い動作安定性を有する発光装置10Cを提供することができる。
【0052】
また、
図7は、実施例1の変形例4に係る発光装置10Dの断面図である。発光装置10Dは、発光素子20Bの構成を除いては、発光装置10Cと同様の構成を有する。発光装置10Dにおいては、発光素子20Bは、接合層13上に形成された支持基板21Bと、支持基板21B上に形成されたn側電極23A、p側電極24A及び絶縁層25Aとを有する。また、発光素子20Bは、n側電極23A、p側電極24A及び絶縁層25A上に形成された光半導体層22Bを有する。
【0053】
本変形例においては、支持基板21Bと光半導体層22Bとの間にn側電極23A及びp側電極24Aが形成されている。本変形例においては、支持基板21Bは、光半導体層22Bの結晶成長に用いられる基板とは別の基板からなる。発光素子20Bは、当該結晶成長用の基板上に光半導体層22B及び電極を形成した後、支持基板21Bとなる別の基板に光半導体層22Bを貼り替えることで作製することができる。
【0054】
また、本変形例においては、透光板30Bは、発光素子20Bの光半導体層22Bの全面上に形成されている。なお、本実施例においても、発光装置10Dは、発光素子20B及び透光板30Bの側面を環状に覆い、凹面形状の底面S22を有する樹脂体40を有する。
【0055】
発光装置10Dのように発光素子20B及び透光板30Bが構成されている場合でも、樹脂体40を有することで、例えば発光装置20Cと同様に、接合不良を抑制して高い動作安定性を得ることができる。
【0056】
このように、本実施例及びその変形例においては、例えば、発光装置10、10A又は10Bは、実装基板(基板)11と、接合層12又は13を介して実装基板11に配された発光素子20と、発光素子20の側面を環状に覆い、実装基板11に面して発光素子20の側面から離れるに従って実装基板11との距離が大きくなる曲面形状又は平面形状の底面S22、S24又はS25を有する樹脂体40、40A又は40Bを有する。従って、発光素子20と実装基板11とが確実に接合され、高い動作安定性を有する発光装置を提供することができる。
【実施例2】
【0057】
図8Aは、実施例2に係る発光装置50の断面図であり、
図8Bは、発光装置50の上面図である。
図8Aは、
図8BのW-W線に沿った断面図である。
図8A及び8Bを用いて、発光装置50について説明する。
【0058】
発光装置50は、樹脂体40の外部露出面S2上に設けられた反射膜51を有する点を除いては、発光装置10と同様の構成を有する。反射膜51は、発光素子20からの放出光に対して反射性を有する材料、例えば金属材料からなる。
【0059】
本実施例においては、反射膜51は、樹脂体40の側面(外周側面)S21及び底面S22上に形成されている。一方、反射膜51は樹脂体40の上面S23には形成されておらず、樹脂体40の上面S23は外部に露出している。従って、発光素子20の側面は、樹脂体40及び反射膜51に取り囲まれている。
【0060】
本実施例においては、発光素子20からの放出光を確実に透光板30から外部に取り出すことを考慮した場合に好適な構成となる。例えば、樹脂体40としての光反射性樹脂の反射率は、金属材料に比べれば低い場合が多い。従って、発光素子20からの放出光が樹脂体40を透過して透光板30に入射しない場合がある。また、樹脂体40として光透過性樹脂を形成した場合、さらに多くの光が樹脂体40の側方に出射されることとなる。
【0061】
ここで、例えば車両用灯具など、所定の領域にのみ光が照射されることが求められるような用途の場合、樹脂体40のみでは所望の配光性を得ることができず、他の光学系が複雑化することが想定される。従って、高い配光性を得ることを考慮すると、ほとんどの光が透光板30の上面から取り出されることが好ましい。
【0062】
これに対し、本実施例においては、発光装置50は、樹脂体40の側面S21及び底面S22上に反射膜51を有する。従って、発光素子20から放出された光、樹脂体40を透過した光、及び発光素子20と透光板30との界面で反射された光は、反射膜51によって透光板30に向けて反射されることとなる。従って、大部分の光が透光板30上から取り出され、高い配光性及び光取り出し効率を得ることができる。
【0063】
また、反射膜51は、樹脂体40の底面S22、すなわち凹面形状の部分にも設けられている。従って、当該底面S22上の反射膜51によって反射された光は、透光板30に向かって進む可能性が高い。従って、例えば複数回反射されることによる光の減衰が抑制され、強度を保った光が確実に透光板30に進み、外部に取り出される可能性が高い。
【0064】
なお、本実施例においては、反射膜51が樹脂体40の底面S22上に設けられる場合について説明したが、反射膜51の構成はこれに限定されない。樹脂体40の底面S22上においては、反射膜51は任意に設けられることができる。すなわち、反射膜51は、樹脂体40の底面S22上の一部又は全部に設けられることができ、また、底面S22上には設けられていなくてもよい。
【0065】
例えば、接合層12が電極を兼ねる導電性材料からなり、反射膜51が導電性材料からなる場合、樹脂体40の底面S22上に反射膜51が設けられないことによって、接合層12と反射膜51とが離間する。これによって、接合層12と反射膜51とが近接又は接触することによる電極間の短絡を未然に防止することができる。
【0066】
また、例えば、反射膜51は、樹脂体40の底面S22における側面S21側の領域のみに形成されていてもよい。この場合、反射膜51は、樹脂体40の側面S21から底面S22の一部の領域に亘って形成される。この場合においては、底面S22での反射率を向上させつつ、接合層12と反射膜51とが近接又は接触することによる電極間の短絡を未然に防止することができる。
【0067】
また、樹脂体40の側面S21上についても、用途及び目的に応じて、任意の領域に反射膜51が設けられることができる。例えば、樹脂体40の層厚、例えば素子接触面S1から側面S21までの長さが大きい場合、反射膜51は側面S21上に設けられず、底面S22上にのみ設けられている場合でも、十分な反射特性及び光取り出し効率を得ることができる場合がある。
【0068】
換言すれば、反射膜51は、樹脂体40の側面(外周側面)S21上の少なくとも一部に設けられるか、又は、底面S22上の少なくとも一部に設けられるか、又はその両方に設けられることができる。これによって、例えば、種々の用途に応じた光学特性を得ることができる。
【0069】
また、本実施例においては、反射膜51は、樹脂体40の上面S23上には形成されていない。これによって、樹脂体40に入射した光は、樹脂体40の上面S23からも取り出されることとなる。従って、例えば、反射膜51の内側全体が光取り出し面となり、高い光取り出し効率及び配光性に加え、広い光取り出し面を得ることができる。
【0070】
なお、反射膜51は、金属材料からなる場合に限らず、発光素子20からの放出光に対して反射性を有する材料から構成されていればよい。例えば、反射膜51は、光反射性を重視した樹脂材料及び/又はその多層膜から構成されていてもよい。
【0071】
また、反射膜51は、例えば透光板30が蛍光体を有する場合においてその混色性を優先する場合には、樹脂体40の上面S23上に形成されていてもよい。これによって、透光板30を介してのみ光が取り出されることとなり、確実に透光板30内の蛍光体によって混色された光が取り出される。従って、高い色均一性を有する光を取り出すことができる。
【0072】
このように、本実施例においては、樹脂体40の側面S21上、又は底面S22上の少なくとも一部には、光反射膜51が設けられている。従って、発光素子20と実装基板11とが確実に接合され、高い動作安定性及び光取出し効率及び配光性を有する発光装置50を提供することができる。
【0073】
図9Aは、実施例2の変形例に係る発光装置50Aの断面図であり、
図9Bは、発光装置50Aの上面図である。
図9Aは、
図9BのX-X線に沿った断面図である。
図9A及び
図9Bを用いて、発光装置50Aについて説明する。
【0074】
発光装置50Aは、光反射膜52の構成を除いては、発光装置50と同様の構成を有する。本変形例においては、光反射膜52は、接合層12の第1の金属層12A、すなわち発光素子20のカソード電極に接続されている。
【0075】
本変形例においては、光反射膜52は、発光素子20と実装基板11との間において第1の金属層12Aに接続されている。より具体的には、光反射膜52は、樹脂体40の底面S22上から接合層12の第1の金属層12Aまで発光素子20上を伸長して第1の金属層12Aに接続された接続部52Aを有する。例えば、光反射膜52は、光反射膜51に接続部52Aが追加された場合に相当する構成を有する。
【0076】
ここで、発光装置50Aは、接合層12が発光素子20への電極を兼ねており、反射膜52が金属膜からなる場合に好適な構成例となる。本変形例においては、接合層12が発光素子20への電極として機能する第1及び第2の金属層12Bからなり、金属材料からなる反射膜52がカソード側電極として機能する第1の金属層12Aに接続されている。
【0077】
そのため、金属からなる反射膜52は、発光素子20に電圧が印加された場合には、陰圧がかかることより陽イオン化されにくくなる。その結果、反射膜52は、酸化されにくくなる(陽イオン化した金属に酸素が結合することを抑制することができる)。すなわち、反射率の高い状態を維持することができる。
【0078】
このように、本変形例においては、反射膜52がカソード電極として機能する第1の金属層12Aに接続されている。従って、本変形例においては、反射膜52に低電位側の電位(例えば接地電位)が印加される。従って、上記した反射膜52の酸化が抑制され、種々の環境下でも安定して動作する発光装置50Aとなる。
【0079】
換言すれば、発光装置50Aは、発光素子20と実装基板11との間において発光素子20と実装基板11とを互いに接合する接合層12を有する。また、接合層12は、発光素子20へのカソード電極をなす第1の金属層12A及び発光素子20へのアノード電極をなす第2の金属層12Bを有する。
【0080】
また、反射膜52は、金属膜からなり、また、樹脂体40の側面S21及び底面S22上に設けられている。また、反射膜52は、発光素子20と実装基板11との間において第1の金属層12Aに接続されている。従って、発光素子20と実装基板11とが確実に接合され、高い動作安定性、高い光取出し効率及び配光性を有する発光装置50Aを提供することができる。
【実施例3】
【0081】
【0082】
発光装置60は、実装基板61上に並置された複数の発光素子20及び当該発光素子20の各々に設けられた樹脂体40及び反射膜51を有する点を除いては、実施例2に係る発光素子50と同様の構成を有する。本実施例においては、発光装置60は、実装基板61と、実装基板61上に1列に整列して配置された3つの発光素子20とを有する。また、本実施例においては、発光装置60は、発光素子20の各々上に配された透光板30を有する。
【0083】
また、発光装置60は、各々が、発光素子20の各々の側面を環状に覆い、実装基板61に面して発光素子20の各々の側面から離れるに従って実装基板61との距離が大きくなる凹面形状の底面S22を有する複数(3つ)の樹脂体40を有する。
【0084】
また、本実施例においては、樹脂体40の各々は、発光素子20に接触する素子接触面S1及び外部に露出する外部露出面S2を有する。また、樹脂体40の外周側面をなす側面S21、実装基板11に面する底面S22及び底面S22とは反対側の上面S23を有する。また、樹脂体40の各々の側面S21及び底面S22上には反射膜51が設けられている。
【0085】
本実施例においては、発光装置60が複数の発光素子20を有する。例えば、発光装置60は、複数の発光素子20の各々が互いに異なる照射範囲(配光範囲)に光を出射する構成を有し、例えば車両用灯具に用いられる構成を有する。また、本実施例においては、複数の発光素子20はそれぞれ独立して点消灯するように構成されている。従って、発光装置60によって照射される照射範囲は、発光素子20の各々の点消灯の組み合わせに応じて変化する。
【0086】
発光装置60においては、消灯中(非導通状態)の発光素子20に対応する照射範囲が点灯中(導通状態)の発光素子20からの光によって照射されること、いわゆる光のクロストークが生ずることは好ましくない。
【0087】
これに対し、本実施例においては、複数の発光素子20の側面が樹脂体40及び反射膜51によって覆われている。従って、クロストークの発生を抑制し、かつ高い光取出し効率及び配光性を有する発光装置60となる。
【0088】
なお、透光板30は蛍光体を有していてもよい。発光装置60が発光素子20の各々上に配され、蛍光体を有する透光板30を有することで、例えば白色光を出射する発光装置となる。この場合も、樹脂体40が発光素子20及び透光板30の側面を覆うことで、良好な接合性に加え、高い光取り出し効率を得ることができる。しかし、発光装置60は透光板30を有していなくてもよい。
【0089】
また、反射膜51に代えて反射膜52が設けられていてもよい。また、透光板30及び反射膜51は設けられなくてもよい。また、発光素子20の各々に代えて、発光素子20A又は20Bが設けられていてもよい。また、接合層12は発光素子20への電極として機能しなくてもよい。また、樹脂体40は、凹面形状の底面S22に代えて、平面形状の底面S24又は凸面形状の底面S25を有していてもよい。
【0090】
上記したように、本実施例においては、発光装置60は、実装基板(基板)61及び実装基板61上に接合層12を介して配された複数の発光素子20と、の複数の発光素子20の各々の側面を環状に覆う樹脂体40と、を有する。また、樹脂体40の各々は、実装基板61に面して発光素子20の各々の側面から離れる方向に従って実装基板61との距離が大きくなる曲面形状又は平面形状の底面S22、S24又はS25を有する。従って、発光素子20と実装基板61とが確実に接合され、高い動作安定性、高い光取出し効率及び配光性を有する発光装置60を提供することができる。
【符号の説明】
【0091】
10、10A、10B、10C、10D、50、50A、60 発光装置
11、61 実装基板(基板)
20、20A、20B 発光素子
40、40A、40B 樹脂体
S22、S24、S25 底面
51、52 反射膜