(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】分解組立自在傘
(51)【国際特許分類】
A45B 9/02 20060101AFI20220621BHJP
A45B 25/18 20060101ALI20220621BHJP
A45B 25/02 20060101ALI20220621BHJP
A45B 15/00 20060101ALI20220621BHJP
A45B 25/06 20060101ALI20220621BHJP
A45B 25/10 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
A45B9/02 C
A45B25/18 Z
A45B25/02 Z
A45B15/00
A45B25/02 B
A45B25/06 A
A45B25/06 B
A45B25/10
A45B25/18 F
(21)【出願番号】P 2018012862
(22)【出願日】2018-01-29
【審査請求日】2020-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】505058126
【氏名又は名称】株式会社サエラ
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 健
【審査官】関口 知寿
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3054405(JP,U)
【文献】特開2002-142824(JP,A)
【文献】実開昭49-031573(JP,U)
【文献】実開昭52-069362(JP,U)
【文献】実開平04-023418(JP,U)
【文献】特開2004-008726(JP,A)
【文献】実開平07-028416(JP,U)
【文献】特開2000-210112(JP,A)
【文献】特開2016-059456(JP,A)
【文献】特開平09-000326(JP,A)
【文献】特開2001-269209(JP,A)
【文献】登録実用新案第3130642(JP,U)
【文献】特開平07-095904(JP,A)
【文献】特開平06-125807(JP,A)
【文献】実開平05-091418(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45B 1/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中棒と、上ろくろと、石突と、下ろくろと、上ろくろ側端部に係止突起を備えた親骨と、下ろくろ側端部に係止突起を備えた受骨と、傘生地と、からなり、
前記上ろくろは、石突側を上にした状態で、親骨の端部の係止突起を上から挿入して下から支え端部を含む親骨が回動自在となるよう係止する親骨係止溝と、親骨係止溝から親骨端部が上抜けすることを防止するために親骨係止溝の上を端部を含む親骨を回動自在にふさぐねじ込み着脱自在な親骨抜抑止部と、を有し、
前記下ろくろは、石突側を下にした状態で、受骨の端部の係止突起を上から挿入して下から支え端部を含む受骨が回動自在となるよう係止する受骨係止溝と、受骨係止溝から受骨端部が上抜けすることを防止するために受骨係止溝の上を端部を含む受骨を回動自在にふさぐねじ込み着脱自在な受骨抜抑止部と、を有し、
前記傘生地は、上ろくろの親骨抜抑止部と、上ろくろ上部に着脱自在な石突との間で係止され、かつ、傘生地先端に設けられて親骨他端を収容可能な円筒形を成していると共に
親骨他端を挿入する側の一部が
半円筒状に形成されて親骨他端を円筒に差し込みやすくするための導入部として機能するつゆさきで親骨他端に係止され、他の部分では係止されていない
分解組立自在傘。
【請求項2】
中棒と、上ろくろと、石突と、下ろくろと、上ろくろ側端部に係止突起を備えた親骨と、下ろくろ側端部に係止突起を備えた受骨と、はプラスティック製である請求項1に記載の分解組立自在傘。
【請求項3】
前記傘生地は、ポリ塩化ビニル、POE(ポリオレフィン・エラストマー又はポリオキシエチレン)、APO(非晶質ポリオレフィン)、EVA(エチレン・ビニール・アセテート)、ポリエステルのいずれか一以上によって構成されている請求項1又は請求項2に記載の分解組立自在傘。
【請求項4】
前記プラスティックはその全部または一部がガラス繊維強化プラスティックである請求項2又は請求項2に従属する請求項3に記載の分解組立自在傘。
【請求項5】
前記親骨他端は、ガラス繊維強化プラスティックが露出しないようにカバーが設けられている請求項4に記載の分解組立自在傘。
【請求項6】
前記親骨と前記受骨との回動接続部は、両骨を離脱不能に支持する離脱不能支持部を有する請求項1から請求項5のいずれか一に記載の分解組立自在傘。
【請求項7】
中棒と、中棒に設けられるハンドルと、中棒に挿通される下ろくろと、中棒頂部に固定される上ろくろの親骨係止溝との第一組と、
親骨と受骨とからなる第二組と、
上ろくろの一部を構成する親骨抜抑止部の第三組と、
石突である第四組と、
傘生地である第五組と、からなり各部が請求項1から請求項6
のいずれか一に記載の分解組立自在傘のように構成された組立傘キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分解組立自在傘に関する。
【背景技術】
【0002】
近年傘も各種のデザインのものが出回っており、人の個性に応じて選択の幅が広がっている。しかしながらやはり売り場にて傘を選択する際にはある程度自身の趣味に合わない部分が出るもので、最も自身の趣味に近いデザインの傘を選択せざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば傘を組み立て式にして部品ごとに好みの物を選択可能とすることも考えられるが、オーダーメイドとなってしまうために高価になってしまうという欠点が想定される。一方部品を購入して自身で組み立てることも考えられるが、傘は複雑な構造をしており、特に親骨と受骨を上ろくろ、下ろくろに回動自在に組み立てることが困難である。この場合に傘の工場にある冶具などを用いて容易化することも考えられるが、冶具をも販売することになるとその分高価となり、やはりコスト問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はそのような課題を解決するため、冶具などを使わなくても一般人が容易に分解組立自在な構造と部品構成を持つ傘であり、オーダーメイドに通ずる部品の交換並びにマーカーその他の耐水性のペイントやステッカーほかを活用した傘生地やハンドルを中心に好みのデザインを得ることのできる傘を提供する。
【0006】
具体的に本発明では、上ろくろに親骨の端部を含む親骨を係止する親骨係止溝を備え、親骨係止溝から親骨端部が抜けすることを防止する着脱自在な親骨抜抑止部を有し、下ろくろに受骨の端部を含む受骨を係止する受骨係止溝と、受骨係止溝から受骨端部が抜けすることを防止する着脱自在な受骨抜抑止部を有することで、冶具や機械を必要とせず、分解組立自由であると同時に、機械的な強度を有する分解組立自在傘を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、冶具などを使わなくても一般人が容易に分解組み立て可能な傘を提供し、オーダーメイドに通ずるデザインほかの楽しみを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】石突を真下にした際の下ろくろの上方からの斜視図
【
図7】傘生地を外した状態で半開きの傘を逆さにした状態の側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本件発明の実施形態を説明する。
<実施形態1 概要>
【0010】
本発明の分解組立自在傘は、冶具や機械を使うことなく分解組立自在であり、かつ機械的な強度を備えた傘である。
<実施形態1 構成>
【0011】
本組立自在傘は、中棒と、上ろくろと、石突と、下ろくろと、親骨と、受骨と、傘生地と、からなる。以下各部の構成について説明する。なお
図1は傘を開いた状態の図であり、ほとんどすべての部品の構成と配置を確認することができ、
図2は
図1の傘を開いた状態の図から傘生地を除いたものである。
<実施形態1 各構成>
<実施形態1 中棒>
【0012】
<実施形態1 中棒 全般>
【0013】
中棒(0101)は傘の心棒を構成する部品である。中軸、シャフトともいう。中棒の上端には石突(0103)が備えられ、その下に親骨(0105)の端部を受ける上ろくろ(0102)を有し、下端には傘をさす場合に必要となるハンドル(手元ともいう)(0108)が、棒状の中軸に装着され、これを手で握り支えて傘をさすことができる。また、中棒の中間部、上ろくろとハンドルの間の部分、には中棒に装着され、上下できる下ろくろ(0104)があり、受骨(0106)の端部を支える。
【0014】
<実施形態1 中棒 素材>
【0015】
中棒の素材として以前は、堅牢性を求め組成密度の高い品種の木材が好まれて使われていたが、近年は鉄が使われている。さらに軽さを求め、アルミニウムやカーボンなどの素材も使用されることもあり、また繊維強化プラスティックも使われる。
【0016】
<実施形態1 中棒 サイズ>
【0017】
中棒の長さは、全長約80センチメートルだが、この数値に限定されない。前記中棒のハンドル部分は長さ約17.5センチメートル、直径約2.5センチメートル、それ以外の部分は、直径約1センチメートルであるが、この数値に限定されない。以上は大人向けの傘の数値例だが、子供用の傘ではどの数値も小さくなる。大人用の傘であれば、中棒のハンドル部分は長さが16.0センチメートルから19センチメートル程度が好ましく、中棒の直径は、2.0センチメートルから3.0センチメートル程度が好ましい。
【0018】
<実施形態1 中棒 その他>
【0019】
本発明の傘の中棒には従来の傘が備える上ハジキ、下ハジキのどちらもない。上ハジキは中棒の上方、上ろくろの下部で受骨を受け止める役割を持つものである。傘を広げる際、またはたたむ際に、バネを使用して機能する仕組みであるため、上ハジキで指を怪我することが多く、傘での事故の原因の一つとなっているが、本発明ではこれを有しないため、その心配がない。また中棒の下方に、通常の傘にある下ハジキを備えていない。下ハジキは、傘を閉じたまま固定する際に使用されるもので、これもバネを使用している。本発明では下ろくろの下端を押し込むことで、手元(ハンドル)の上部にある突起(0109)をまたぐことにより、固定される。
【0020】
前記ハジキとは通常の傘において、中棒から出ているでっぱりのことであり、上下2個あるものである。開いたときに上側にあるものは上ハジキと呼ばれ、傘を開いたとき落ちないようにとめておくものである。下側にある下ハジキは傘を閉じた際、自然に開かないようにするためのものである。
<実施形態1 上ろくろ>
<実施形態1 上ろくろ 全般>
【0021】
前記上ろくろ(0202
図2)は、親骨の端部が集まる中心部分であり、中棒に装着されているものである。石突(0201
図2)側を上にした状態で、親骨(0203
図2、0402
図4)の端部の係止突起(0401
図4)を上から挿入して下から支え端部を含む親骨が回動自在となるよう係止する親骨係止溝(0403
図4)と、親骨係止溝から親骨端部が上抜けすることを防止するため、親骨係止溝の上から、端部を含む親骨を回動自在にふさぐねじ込み着脱自在な親骨抜抑止部(0301
図3)とを有する。
【0022】
本実施形態の分解組立自在傘は、上ろくろに親骨係止溝と着脱自在な親指抜抑止部(0301
図3)、下ろくろに受骨係止溝(0501a
図5)と着脱自在な受骨抜防止部(0502a
図5)を有することにより、分解組立自在でありながら、傘として十分な機械的強度を備えることができる。
<実施形態1 上ろくろ 親骨係止溝>
【0023】
親骨係止溝(0303
図3)は、石突(0302
図3)側を上にした状態で、親骨の傘中心部寄り端部の係止突起(0401
図4)を上から挿入して下から支え、端部を含む親骨が回動自在となるよう係止するものである。親骨係止溝は、上ろくろの上部に親骨の本数分切られているもので、親骨の端部を一本ずつ上から差し込み回動自在にする構造となっている。
<実施形態1 上ろくろ 親骨抜抑止部>
【0024】
親骨抜抑止部(0301、0302)は、親骨係止溝から親骨端部が上抜けすることを防止するため、親骨係止溝の上を、端部を含む親骨を回動自在にふさぐねじ込み着脱自在なものである。
【0025】
図3は傘生地を取り除き、半閉じの状態の傘の上部である。中棒の上端には上ろくろがあり、石突をねじ込むねじ受(0302)や、その下に配置される親骨抜抑止部(0301)、親骨係止溝とそこに差し込まれている親骨(0303)などの構成を示している。
【0026】
図4は
図3をさらに上方から見たものである。親骨係止溝(0403)に差し込まれた親骨(0402)とその先端に備わる親骨先端係止突起部(0401)などの親骨の先端を係止し抜けを防止する構造を確認できる。
<実施形態1 上ろくろ その他>
【0027】
これまでの通常の傘における上下のろくろは針金を使い骨をとめており、針金が切れるとばらばらになるが、本発明では針金を使用しないため、その心配はない。また、通常上ろくろには中棒に固定するため釘が入っており、これが抜ける事故もあるが、本発明は釘を使用しないため、この心配もない。本発明では上ろくろは親骨休止溝に親骨を差し込み、親骨抜抑止部が親骨の上抜けすることを防止ししているがすべて樹脂製であり、下ろくろは受骨休止溝に受骨を指し込み、受骨抜抑止部が受骨の下抜けすることを防止しているがすべて樹脂製である。
<実施形態1 石突>
<実施形態1 石突 全般>
【0028】
石突(0103、0201)は傘の上部先端部分を指し、本発明では中棒の先端に設置されるねじ溝を備えるねじ受け(0302)にねじ込むことにより装着し、同時に傘生地の固定をする機能を有するものを指す。上ろくろ上側には、プラスティック製を含むが限定するものではない適切な素材の親骨抜抑止部(0301)が備わり、上ろくろの溝に差し込んである親骨の中棒側の先端部を溝から上抜けしないようにしているが、その親骨抜抑止部の上方外側から中棒に通すことが可能な孔の開いた傘生地(0107)が被さり覆い、その傘生地を石突が上から抑えて固定する構成となっている。
【0029】
子供の傘の先端による事故は後を絶たないと言われる。本発明では石突に関し、子供や成人の事故を防ぐために、金属の棒状のものではなく、プラスティック等の素材の、筒型ナットとすることが可能である。
<実施形態1 下ろくろ>
<実施形態1 下ろくろ 構成>
【0030】
ろくろは骨が集まる中心部分である。受骨が集まるところを下ろくろと呼ぶ。下ろくろは、石突側を下にした状態で、受骨の先端の係止突起を上から挿入して下から支え端部を含む受骨が回動自在となるよう係止する受骨の本数分切ってある受骨係止溝(0501a)と、受骨係止溝から受骨端部が上抜けすることを防止するため、受骨係止溝の上から、先端を含む受骨を回動自在にふさぐねじ込み着脱自在な受骨抜抑止部(0601)とからなる。
【0031】
図5は石突を下にして、下ろくろと受骨係止の構造を示している。
図5(a)は受骨が差し込まれていない状態で、差し込まれた状態が
図5(b)となっている。下ろくろの受骨を受ける受骨係止溝の上方側面にはねじ山が切られている。円筒状の受骨抜抑止部の内側面にもこれにかみ合うねじ山を切っておき、受骨抜抑止部を下ろくろの前記ねじ山にねじ込むことにより、受骨抜抑止部によって受骨係止溝に回動自在に配置された受骨の先端部分の上抜けを防止することができる。
【0032】
傘を閉じる際、下ろくろ内部のハンドル側は、プラスティックを等間隔に切り取ることにより係止突起を通過後ハンドルを抑えるバネ構造とすることが可能であり、これにより傘が開かないようにすることができる。
【0033】
受骨係止溝は、下ろくろの下側に受骨の本数分切られ、中棒側に集まる受骨の先端をここに一本ずつ差し込むことができる。受骨抜抑止部は、受骨係止溝の溝部分に差し込まれた受骨が抜けないよう抑える役割を持っている。
<実施形態1 親骨>
<実施形態1 親骨 全般>
【0034】
親骨は上ろくろの親骨係止溝に差し込まれる形で中棒に係止され、他端が外に張り出すことにより、傘生地を支える機能を持っている。また親骨の中間に備わる離脱不能支持部(0110)により下ろくろに係止される受骨と接続されている。この離脱不能支持部は親骨と受骨とを分離不能かつ回動自在に連結する。親骨と受骨とを別部品として組み合わせるニーズは多くないので、この部分は一体不可分に構成しても需要者が不満を感じることは極めて少ない。
<実施形態1 親骨 材質>
【0035】
親骨の材質は近年鉄が中心でメッキを施して使用していたが、錆の出やすいことや軽さを求めることなどから、現在ではカーボンファイバー、繊維強化プラスティックなども使われている。本発明では、錆が出ない、軽さ、費用の点から、繊維強化プラスティックを使用している。
<実施形態1 受骨>
<実施形態1 受骨 全般>
【0036】
受骨(0601)は中棒の下ろくろから親骨に置かれる離脱不能支持部(0110)までをつなぐ傘骨を指す。離脱不能支持部(0602)は親骨と受け骨のジョイント部分を指す。また親骨と受骨はハトメと呼ばれる部品により接続される。通常の傘はこの部分に金属を採用しているが、力がかかる部分であり、よく壊れ、また曲がることが多いとされる。本発明では、プラスティック部品を使用することが可能である。
<実施形態1 親骨 材質>
【0037】
受骨の材質は親骨同様に近年ではメッキを施した鉄が中心だったが、錆の出やすいことや軽さを求めることなどから現在ではカーボンファイバー、繊維強化プラスティックなども使われている。本発明では、錆が出ない、軽さ、費用の点から、繊維強化プラスティックを使用している。
<実施形態1 傘生地>
<実施形態1 傘生地 全般>
【0038】
傘生地(0107)は傘に使われる雨除けの生地を縫った状態のものを指す。カバーと呼ばれることもある。
図8は傘生地を外して平面に置いたものを上から見た図であり、外側を示している。
図8では中心の孔(0801)、つゆさき(0802)が配置されており、さらに閉じた傘が開かないように閉じるスナップボタン付きのベルト(0803)などが備わっている。
【0039】
本発明では分解組立てが一般人でも冶具なしに簡単にできることを利用して、傘生地を取り外し、別のデザインを施した傘生地に交換すること可能である。これによりオーダーメイドや着せ替えの楽しみと同様な楽しみを提供している。また、傘生地は離脱不能支持部と接着、ないし、縫い付け等によって固定されていない。これは、傘生地の装着、着せ替えを容易にするためである。
【0040】
なお傘生地に限らず、樹脂製の部材はどれもマーカーによる描画、彩色が可能であり、冶具や機械を必要とせずに分解組立ができることを利用して、傘全体を言わばキャンバス代用とした自由な描画、彩色を楽しむこともできる。
【0041】
つゆさき(0802
図8、0205
図2、0111
図1)は傘の親骨の外側の開く方の先端部分に配置される部材である。本発明では傘生地の外縁につゆさきを固定配置し、このつゆさきを親骨の端部に差し込むことにより、傘生地を傘に固定することが可能である。また、親骨の先端は丸まっており、つゆさきを簡単に着脱可能である。つゆさきを親骨の先端に着脱する際には親骨を多少撓ませて着脱するとよい。親骨がプラスティック製の場合(繊維強化プラスティックを含む)簡単に撓むので楽である。親骨の先端は、親骨が繊維強化プラスティックである場合には断面が露出しないように繊維を含まないプラスティック材料で被覆されていることが好ましい。つゆさきの素材もプラスティックが好ましい。より好ましくは柔軟性のあるプラスティックである。さらに、
図9(a)に示すように円筒径であり、かつ、一部が部分円筒になっており、親骨を円筒に差し込みやすくする導入部として機能させるとよい。
図9(a)のつゆさきをAを結ぶ線で切った場合の断面図が
図9(b)とある。
<実施形態1 傘生地 素材>
【0042】
雨傘・晴雨兼用傘・日傘に使われる素材は、主に雨傘で最も使われるポリエステル、生地の収縮があるナイロン、ポリエステルと綿の混紡で風合いをだすことのできるT/C、ビニール傘で使われるポリエチレンが一般的である。日傘だけなら、綿や麻などの素材も使われる。以前はPVC(=ポリ塩化ビニル)が使われたが、ダイオキシン問題で使われなくなり、ポリエチレンが主に使われるが、素材に傷が付きやすい、白濁しやすいなどの欠点も見られる。
<実施形態2 概要>
【0043】
本実施形態は前記傘生地(0107)の係止方法を示すものである。傘生地はその中心に中棒の直径大の孔が開いており、傘生地の中心部は上方から中棒の上端を通すように被され、上ろくろの親骨抑止部と、上ろくろ上部にねじ込み着脱自在な石突との間で係止される。一方傘生地先端にはつゆさきが設けられ、親骨他端を収容し係止する。傘生地は他の部分では係止されていない。
<実施形態2 つゆさきの装着>
【0044】
本特許の分解組立自在傘はつゆさき(0111)を備え、親骨他端への脱着が自在となっている。前記つゆさきは圧着等の方法で傘生地に装着される。これに対し、通常の長傘の場合、つゆさきは傘生地に直接縫い付けられている点が異なる。また折りたたみ傘の場合は、骨の他端に形状として孔が作られていて、この孔に傘生地を直接縫い付けていることが多い。
<実施形態3 概要>
【0045】
本実施形態は、請求項1又は請求項2の記載に加え、中棒、上ろくろ、石突、下ろくろ、上ろくろ側端部に係止突起を備えた親骨、下ろくろ側端部に係止突起を備えた受骨がプラスティック製となっている分解組立自在の傘である。
<実施形態3 素材と強度>
【0046】
部材をすべてプラスティックとすることにより、金属との選り分けが不要となるため、リサイクルへの対応をより容易に行うことができる。プラスティックの部材を使用する際懸念される強度の点については、構造上の工夫により十分な強度が得られる構造となっている。すなわち、親骨を上ろくろに切ってある溝の上側から挿入し、親骨抜抑止部と石突とで回動自在に係止される一方で、その親骨の中間部に装着される離脱不能支持部(0110)に固定される受骨は下ろくろの下側(上ろくろを上側にした状態での側)に切ってある溝の下側から挿入し係止部により回動自在に係止されることにより、プラスティック素材の弾力性を利用して、強度を高めており、これは既存の傘には見られない方法である。さらに材料として繊維強化プラスティックを使用することにより、強度を高めることが可能である。
<実施形態4 概要>
【0047】
本実施形態は、請求項1から請求項3のいずれか一以上により構成されていることに加え、前記傘生地は、ポリ塩化ビニール、POE(ポリオレフィン・エラストマー又はポリオキシエチレン)、APO(非晶質ポリオレフィン)、EVA(エチレン・ビニール・アセテート)、ポリエステルのいずれか一以上によって構成されている分解組立自在傘である。
【0048】
雨傘の生地は雨を防ぐためのものであり、それに適した素材が使用される。そして主に雨を防ぐため、傘生地にはさまざまな加工が施される。代表である防水加工は、通常生地の裏面に施されるもので、水を通さない。アクリルコーティングが多く、他にPU(=ポリウレタン)コーティングやシリコンコーティングなどがある。撥水加工は、主に生地の表面に施されるもので、防水加工とは異なり、水を弾かせるための加工となる。加工原料は主にフッ素系のものとなる。先の防水、撥水加工とはやや異なるUV加工は紫外線遮蔽率を上げる加工で、生地だけでもUVカットするが、UV加工することにより紫外線カット率数%向上せるものである。
<実施形態5 概要>
【0049】
本実施形態は、請求項1から請求項4のいずれか一に記載されていることに加え、前記プラスティックはその全部または一部がガラス繊維強化プラスティックである分解組立自在傘を示している。傘の骨にプラスティックを使用することによる製品強度への懸念に対応し、さらにガラス繊維強化プラスティックを使用することにより、傘の軽量化による扱いやすさの改良、骨の弾力性向上により強度を改善させることを意図している。また、ガラス繊維強化プラスティックを用いる部分は中棒、親骨、受骨のみであってもよい。他の部分は通常のプラスティックとしてもよい。
<実施形態5 素材>
【0050】
ガラス繊維強化プラスティックは、太さがおよそ20マイクロメートル未満のガラス繊維を束ね、その間に樹脂を浸み込ませて成形したもので、軽くて強い、さびない、高い電気絶縁性、断熱性、衝撃吸収性といった特性を持ち、経済的であるため、多くの用途で使われる。
<実施形態6概要>
【0051】
本実施形態は、請求項5に記載の形態に加え、前記親骨他端において、ガラス繊維強化プラスティックが露出しないようにカバーが被せられているものである。すなわち親骨は両端において、ガラス繊維強化プラスティックが露出しないような工夫がなされている。
<実施形態6 素材>
【0052】
ガラス繊維強化プラスティックは軽量であり、かつ弾力性に富むため、傘の部材に使用する条件を満たしている。一方でガラス繊維強化プラスティックは、ガラス繊維が露出しケガの原因となるというマイナス面もある。ガラス強化繊維プラスティック自体に比較的簡単に傷がつくため、その傷から見えない繊維が露出し、これに触れると指などをケガすることが多いとされる。本発明では、骨や中棒の両端の切断面においてガラス繊維強化プラスティックが露出する可能性が高いため、ガラス繊維強化プラスティックが露出しないようカバーを付ける工夫がなされており、消費者及び使用者の保護につながるものである。
<実施形態7概要>
【0053】
本実施形態は請求項1から請求項6のいずれか一に記載されていることに加え、前記親骨と前記受骨との回動接続部が、両骨を離脱不能に支持する離脱不能支持部(0110
図1)を備えている。離脱不能支持部は親骨の略中央に設置され、下ろくろにつながる受骨を支持している。
【0054】
図6は半開きの状態で傘生地のない傘を側面やや上方から見た図となっている。下ろくろ(0601)が受骨を支え、受骨はさらに離脱不能支持部(0602)により、親骨とも接合していることがわかる。
【0055】
図7は
図6と反対に半開きの状態で傘生地のない傘が石突を下に置かれたものを側面やや上方から見た図となっている。下ろくろ(0701)は中棒の中間よりに置かれ、ハンドル(0702)とその先端に備わる下ろくろ係止突起(0703)が配置される。下ろくろ係止突起は、リング状の部材でできており、下ろくろの中棒を挿通させる円管内面にリング状の出っ張りを緩く噛み込む構造を設けることで、傘を閉じた状態で下ろくろを半固定状態に保つことができる。
【0056】
離脱不能支持部により、傘の開閉が円滑になるだけでなく、開いてさす場合における風等に対する傘の耐久性を増加させ、構造的な安定性を与えている。
【0057】
親骨と受骨の接合部分である離脱不能支持部は、開閉時に最も負荷がかかる部位であるとされ、損傷しやすい箇所である。本発明ではプラスティックにより一定的に構成される構造となっており、金属に比べて損傷が少ないと考えられる。なお離脱不能支持部は、ダボと呼ばれることがある。
<実施形態7 素材>
【0058】
本発明の離脱不能支持部は樹脂素材だが、離脱不能支持部には他の素材も使われる。金属製の離脱不能支持部は金属素材のダボであり、親骨・受骨に対して後から取り付けるタイプとなり、小ロット生産に向いており、修理も比較的容易である。ただし金属のため錆が出やすく、バリ取りをしっかり行わない場合、例えば繊維強化プラスティックの骨を組み合わせた場合にはかえって骨が折れやすいという弱点がある。繊維強化プラスティック、通常のプラスティックの離脱不能支持部は金属の離脱不能支持部のように錆びることがなく、親骨・受骨と一体化して見えるため外観が洗練されて見える。その一方で樹脂の離脱不能支持部そのものが破損すると修理は難しく、傘骨全体もしくは親骨・受骨そのものを交換しなければならないこともある。
<実施形態8概要>
【0059】
本実施形態は、各部が請求項1から請求項7にあるように構成されていることに加え、中棒と、中棒に設けられるハンドルと、中棒に挿通される下ろくろと、中棒頂部に固定される上ろくろの親骨係止溝部分との第一組、親骨と受骨とからなる第二組、上ろくろの一部を構成する親骨抜抑止部の第三組、石突である第四組、傘生地である第五組からなる組立傘キットであることを示している。
<実施形態8 キットの利点>
【0060】
本実施形態は全5組からなるキットである。キットであることにより、また分解組立が容易であり自在であることを活用し、第五組の傘生地にデザインすることにより、オーダーメイド的な傘を容易に作成することができる。第一組のハンドルにも同様のデザインをすることにより、統一感のあるデザイン性を得ることができる。
【0061】
例えば傘生地だけにいくつかの色の円形のステッカーを貼ったり、または描いたりすることだけでも、デザインや色合いの変化を容易に実現でき、オーダーメイド的な、他にない傘を作り出すことが可能である。ハンドルも同様のデザインをすればさらに統一性のあるデザインとなるが、傘生地だけでも色目が変わることに、印象は大きく異なる。
【0062】
またキットであることから、例えば傘の一部が何らかの原因で壊れた際に、消費者は全体を買いなおす必要がなく、その壊れた部分、壊れた部分の組を交換することにより傘のリペアが可能になるという利点があり、当然費用も低くなる。冶具や機械が必要なく一般人が分解組立自在の傘である特徴から、リペアも容易に行うことができる。
【0063】
さらに廃棄物の観点から見ると、壊れた傘の全体を捨てるのではなく、一組あるいは数組を購入して交換することにより、傘をなおすことができ、廃棄物を傘全体一本ではなく、その交換した一組あるいは数組の部材のみに減らすことができる。このことは環境悪化を食い止めることにつながる。
【0064】
メンテナンスの観点から見た場合、5組に明確に分かれていることから、廃棄される部材の選別が簡単になり、その組を購入することにより交換ができることから、メンテナンスの容易性に寄与するものである。
【0065】
なお前記ハンドルは傘の持ち手のことであり、手元とも呼ばれる。本発明では溶着、接着その他の方法により、ハンドルは中棒にしっかり固定されている。長傘は中棒の径と手元の孔部の径が合わなければ取り付けられない。また強力な接着剤で固定するため、手元を簡単に取り替えることはできない。ただし折りたたみ式は固定方法にネジ式が多く、手元を取り替えることが可能である。
【0066】
本発明では、ハンドルの石突側に下ろくろの係止突起が備えられており、下ろくろの前記下ろくろのハンドル側先端部分が、この係止突起をまたぐことにより、下ろくろ逆進することができないことにより、傘が開くことはない構造となっている。
【0067】
ハンドルはプラスティック等の樹脂製であり、数色の油性マーカーを使うことにより、オリジナルの装飾を施すことが可能である。ハンドル色が白の場合描画、彩色が行いやすい。なお、マーカーとは、主にしるしをつけるための筆記具であり、ペン先が太めのフェルトペン(マーキングペン)のことをいう。油性マーカー(油性インク)は、プラスティックや金属などに描くことができ速乾性や乾いたあとの耐水性に優れ、幅広く使われている。
【符号の説明】
【0068】
中棒:0101
上ろくろ:0102、0202
石突:0103、0201
下ろくろ:0104、0601、0701
親骨:0105、0203、0402、0704
親骨係止溝:0303、0402
受骨:0106、0708
受骨係止溝:0501a
下ろくろねじ受け:0502a
受骨抜け抑止部:0503b
ハンドル:0108、0702
下ろくろ係止突起:0109、0703
傘生地:0107
親骨抜防止抑止部:0301、0403
上ろくろねじ受け:0302
つゆさき:0111、0205、0705
離脱不能支持部:0110、0204、0602、0706