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特許7092516車両用前照灯ユニットの出射光色の調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】車両用前照灯ユニットの出射光色の調整方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/04 20060101AFI20220621BHJP
   B60Q 1/14 20060101ALI20220621BHJP
   F21S 41/64 20180101ALI20220621BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220621BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220621BHJP
【FI】
B60Q1/04 Z
B60Q1/14 E
F21S41/64
G02F1/13 505
F21Y115:10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018030013
(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公開番号】P2019142413
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】杉山 貴
(72)【発明者】
【氏名】丸山 剛
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-236902(JP,A)
【文献】特開2006-236923(JP,A)
【文献】特開2013-105747(JP,A)
【文献】特開2013-023182(JP,A)
【文献】特開2012-247448(JP,A)
【文献】実開昭50-003479(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
B60Q 1/14
F21S 41/00
G02F 1/13
F21W 102/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色LEDと、黄色蛍光体を組み合わせた白色LED光源と、
自車両の前方の情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部により得られた情報に基づいて自車両の前方に対して選択的な照射パターンを決定する照射パターン演算部と、
前記照射パターン演算部により決定された前記照射パターンに基づき液晶素子に電圧を印加する電圧印加部と、
前記電圧印加部からの電圧に基づいて各光制御領域の透過率を変化する前記液晶素子と、
前記光源から出射して前記液晶素子で透過制御された光の配光制御を行う投射光学系と、を有する車両用前照灯ユニットにおいて、
前記液晶素子の透過スペクトルのピーク波長は、前記液晶素子に印加される電圧の高さの変化に応じて推移し、
前記車両用前照灯ユニットから出射される光の色を前記液晶素子に印加する電圧の高さの変化により生じる前記液晶素子の透過スペクトルのピーク波長の推移により調整すること
を特徴とする車両用前照灯ユニットの出射光色の調整方法。
【請求項2】
それぞれが独立の光源を有する複数の灯具を備え、
前記光源は、青色LEDと、黄色蛍光体を組み合わせた白色LED光源であり、
前記複数の灯具のうちの少なくとも1つが自車両の前方の情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部により得られた情報に基づいて自車両の前方に対して選択的な照射パターンを決定する照射パターン演算部と、
前記照射パターン演算部により決定された前記照射パターンに基づき液晶素子に電圧を印加する電圧印加部と、
前記電圧印加部からの電圧に基づいて各光制御領域の透過率を変化する前記液晶素子と、
前記光源から出射して前記液晶素子で透過制御された光の配光制御を行う投射光学系と、を有する車両用前照灯ユニットにおいて、
前記液晶素子の透過スペクトルのピーク波長は、前記液晶素子に印加される電圧の高さに応じて推移し、
前記複数の灯具から出射される光の色を前記液晶素子に印加する電圧を調整し、
前記液晶素子の透過スペクトルのピーク波長を、印加される電圧の高さに応じて推移させることで同じ色になるように調整することを特徴とする車両用前照灯ユニットの出射光色の調整方法。
【請求項3】
光源と、
自車両の前方の情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部により得られた情報に基づいて自車両の前方に対して選択的な照射パターンを決定する照射パターン演算部と、
液晶素子の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出される温度と前記液晶素子に印加する電圧の関係を予め記憶した記憶部と、
前記照射パターン演算部により決定された前記照射パターン、及び、前記温度検出部により検出される温度と前記記憶部に記憶された関係、に基づき前記液晶素子に電圧を印加する電圧印加部と、
前記電圧印加部からの電圧に基づいて各光制御領域の透過率を変化する前記液晶素子と、
前記光源から出射して前記液晶素子で透過制御された光の配光制御を行う投射光学系と、を有する車両用前照灯ユニットにおいて、
前記温度検出部により検出される温度と前記記憶部に記憶された関係に基づいて前記液晶素子に印加する電圧を決定することにより前記車両用前照灯ユニットから出射される光の色を調整することを特徴とする車両用前照灯ユニットの出射光色の調整方法。
【請求項4】
光源と、
自車両の前方の情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部により得られた情報に基づいて自車両の前方に対して選択的な照射パターンを決定する照射パターン演算部と、
前記照射パターン演算部により決定された前記照射パターンに基づき液晶素子に電圧を印加する電圧印加部と、
前記電圧印加部からの電圧に基づいて各光制御領域の透過率を変化する前記液晶素子と、
前記光源から出射して前記液晶素子で透過制御された光の配光制御を行う投射光学系と、を有する車両用前照灯ユニットにおいて、
前記車両用前照灯ユニットから出射される光の色を検出する色検出部を有し、
前記色検出部により検出される光の色と予め記憶された色データとを比較して前記車両用前照灯ユニットから出射される光の色を常に所定の色に保つように前記液晶素子に印加する電圧を調整することを特徴とする車両用前照灯ユニットの出射光色の調整方法。
【請求項5】
それぞれが独立の光源を有する複数の灯具を備え、
前記複数の灯具のうちの少なくとも1つが自車両の前方の情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部により得られた情報に基づいて自車両の前方に対して選択的な照射パターンを決定する照射パターン演算部と、
前記照射パターン演算部により決定された前記照射パターンに基づき液晶素子に電圧を印加する電圧印加部と、
前記電圧印加部からの電圧に基づいて各光制御領域の透過率を変化する前記液晶素子と、
前記光源から出射して前記液晶素子で透過制御された光の配光制御を行う投射光学系と、を有する車両用前照灯ユニットにおいて、
前記複数の灯具のそれぞれから出射される光の色を個別に検出する色検出部を有し、
前記それぞれの色検出部により検出される光の色同士を比較し、前記複数の灯具から出射される光の色を同じ色に保つように前記液晶素子に印加する電圧を調整することを特徴とする車両用前照灯ユニットの出射光色の調整方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用前照灯ユニットの出射光色の調整方法であって、
前記液晶素子に印加される電圧の高さは少なくとも3以上の段階を持っていること
を特徴とする車両用前照灯ユニットの出射光色の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶素子を用いた車両用前照灯ユニットの出射光色の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用前照灯として、前方の車両の状態に応じて自車両の前照灯の走行灯(ドライビングビーム)の点灯を制御するもの(ADB:Adaptive Driving Beam)が知られている。
【0003】
かかる車両用前照灯は、前方に車両が存在する場合に、例えばその車両の部分だけ照明がカットされるように自車両の前照灯の配光状態を制御する。このような車両用前照灯の先行例は、例えば特開平7-108873号公報(特許文献1)に開示されている。
【0004】
上記のような先行例の車両用前照灯は、自車の前方の所定位置(例えばフロントウィンドウ中央上部)にカメラを設置し、そのカメラによって撮像された対象車両(先行車または対向車)の車体、もしくは尾灯や前照灯の位置を画像処理によって検出する。そして、検出された先行車や対向車の部分に自車両の走行灯による光が照射されないように配光制御が行われる。
【0005】
また、特開平6-191346号公報(特許文献2)に、前照灯の配光状態を制御するために液晶素子を利用することが開示されている。
【0006】
図8は特許文献2に開示された自動車前照灯システムであり、図中において80は光源、81は投射部、82は投射部81を構成する反射鏡、83は同じ投射部81を構成するコリメータレンズ、84は光学像を形成する光シャッター、85は紫外線カットフィルタ、86は対向車検知センサー、87は光シャッター駆動回路部、88は配光制御回路、89は姿勢変化検知センサー、90は速度センサー、91はステアリング回転角検知センサーである。なお、本実施例では光シャッター84に備えられた、光学像を形成するための光透過率可変素子として液晶を用いている。
【0007】
上記のような構成要素からなる自動車前照灯システムにおいて、これら構成要素間の関係とその動作を説明する。
【0008】
光源80から放射された光は反射鏡82によって略平行光となり、光シャッター84を照射し、光シャッター84に形成された光学像をコリメータレンズ83を通して前方道路へ投射する。
【0009】
対向車検知センサー86、姿勢変化検知センサー89、速度センサー90、ステアリング回転角検知センサー91の検知信号を受けた配光制御回路88によって、自車の俯仰角と走行速度と進行の方位とさらには対向車の有無とに対応して、所望のビームの基本軸のレベリングとビーム配光とビーム強度が計算される。
【0010】
計算された結果は出力信号として光シャッターの駆動回路部87に入力され、光シャッター駆動回路部87で光シャッター84に所望の光学像を形成するマトリックス信号に変換され出力される。これにより光シャッター84は所定のビームの基本軸の位置を基準に所定の配光のビームを前方道路に照射するための光学像を形成し、光シャッター84に形成されたこの光学像はコリメータレンズ83によって前方道路へ投射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平7-108873号公報
【文献】特開平6-191346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、灯具からの出射光の色(白色光)は光源によって決まるが、光源の色は製造条件(製造ロット)による個体間に差があることや周囲温度や寿命などにより個体内でも変化してしまうことが知られている。特に発光ダイオード(LED)のような半導体発光素子を用いた白色光源は例えば青色の発光素子と黄色の蛍光体の組み合わせであるため、発光素子のみならず蛍光体の特性変化も合されるため光源の色の差や変化が大きくなる。
【0013】
このような光源を用いた灯具からの出射光色は灯具が単独で使用される場合には、気にならず変化したとしても気付かないことが多い。しかし、複数の灯具が並んだ状態で使用される場合は、灯具間の白色光の色の差が見た目などで気になることが多い。また複数の灯具で路面配光を分けて作成している場合には、見た目の他にも各灯具による配光の境目などで白色光の色が不連続になってしまうという課題が生じる。このような光源白色光の色の差は灯具製造初期の段階では小さくても使用を重ねるうちに拡大して行くことが多い。
【0014】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたものであり、その目的とするところは、光源白色光の差や変化を液晶素子を利用して補正し所定の色の白色光を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、青色LEDと、黄色蛍光体を組み合わせた白色LED光源と、自車両の前方の情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部により得られた情報に基づいて自車両の前方に対して選択的な照射パターンを決定する照射パターン演算部と、前記照射パターン演算部により決定された前記照射パターンに基づき液晶素子に電圧を印加する電圧印加部と、前記電圧印加部からの電圧に基づいて各光制御領域の透過率を変化する前記液晶素子と、前記光源から出射して前記液晶素子で透過制御された光の配光制御を行う投射光学系と、を有する車両用前照灯ユニットにおいて、前記液晶素子の透過スペクトルのピーク波長は、前記液晶素子に印加される電圧の高さの変化に応じて推移し、前記車両用前照灯ユニットから出射される光の色を前記液晶素子に印加する電圧の高さの変化により生じる前記液晶素子の透過スペクトルのピーク波長の推移により調整することにより前記課題を解決している。
【0016】
この方法によれば、液晶素子に印加する電圧を変えた時の液晶素子の透過スペクトルの変化を利用して光源からの光のスペクトルを調整することにより白色とみなせる範囲内ではあるが車両用前照灯ユニットから出射される光の色を調整することができる。
【0017】
また、本発明の請求項2に記載された発明は、それぞれが独立の光源を有する複数の灯具を備え、前記光源は、青色LEDと、黄色蛍光体を組み合わせた白色LED光源であり、前記複数の灯具のうちの少なくとも1つが自車両の前方の情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部により得られた情報に基づいて自車両の前方に対して選択的な照射パターンを決定する照射パターン演算部と、前記照射パターン演算部により決定された前記照射パターンに基づき液晶素子に電圧を印加する電圧印加部と、前記電圧印加部からの電圧に基づいて各光制御領域の透過率を変化する前記液晶素子と、前記光源から出射して前記液晶素子で透過制御された光の配光制御を行う投射光学系と、を有する車両用前照灯ユニットにおいて、前記液晶素子の透過スペクトルのピーク波長は、前記液晶素子に印加される電圧の高さに応じて推移し、前記複数の灯具から出射される光の色を前記液晶素子に印加する電圧を調整し、前記液晶素子の透過スペクトルのピーク波長を、印加される電圧の高さに応じて推移させることで同じ色になるように調整することにより前記課題を解決している。
【0018】
この方法によれば、液晶素子に印加する電圧を変えた時の液晶素子の透過スペクトルの変化を利用して光源からの光のスペクトルを調整することにより、他の灯具から出射される光の色と揃えることができる。複数の灯具が並んで配置されている車両用前照灯ユニットにおいて特に有益な発明である。
【0019】
また、本発明の請求項3に記載された発明は、光源と、自車両の前方の情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部により得られた情報に基づいて自車両の前方に対して選択的な照射パターンを決定する照射パターン演算部と、液晶素子の温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部により検出される温度と前記液晶素子に印加する電圧の関係を予め記憶した記憶部と、前記照射パターン演算部により決定された前記照射パターン、及び、前記温度検出部により検出される温度と前記記憶部に記憶された関係、に基づき前記液晶素子に電圧を印加する電圧印加部と、前記電圧印加部からの電圧に基づいて各光制御領域の透過率を変化する前記液晶素子と、前記光源から出射して前記液晶素子で透過制御された光の配光制御を行う投射光学系と、を有する車両用前照灯ユニットにおいて、前記温度検出部により検出される温度と前記記憶部に記憶された関係に基づいて前記液晶素子に印加する電圧を決定することにより前記車両用前照灯ユニットから出射される光の色を調整することにより前記課題を解決している。
【0020】
この方法によれば、使用する光源と液晶素子の温度依存性(温度変化に対する特性値の変化)の個体間差は少ないと考えられるため、温度依存性に応じて予め各温度に対する液晶素子への印加電圧が設計値として決められている一つのテーブル(記憶部に記憶された関係)を使用しても良い。また、光源や液晶素子の特性の個体間差を考えると初期の状態で所定値からずれている場合があるが、その場合は初期の状態でテーブルを補正してそれを用いればさらに効果的である。
【0021】
また、本発明の請求項4に記載された発明は、光源と、自車両の前方の情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部により得られた情報に基づいて自車両の前方に対して選択的な照射パターンを決定する照射パターン演算部と、前記照射パターン演算部により決定された前記照射パターンに基づき液晶素子に電圧を印加する電圧印加部と、前記電圧印加部からの電圧に基づいて各光制御領域の透過率を変化する前記液晶素子と、前記光源から出射して前記液晶素子で透過制御された光の配光制御を行う投射光学系と、を有する車両用前照灯ユニットにおいて、前記車両用前照灯ユニットから出射される光の色を検出する色検出部を有し、前記色検出部により検出される光の色と予め記憶された色データとを比較して前記車両用前照灯ユニットから出射される光の色を常に所定の色に保つように前記液晶素子に印加する電圧を調整することにより前記課題を解決している。
【0022】
この方法によれば光源色の経時変化にも対処できる。
【0023】
また、本発明の請求項5に記載された発明は、それぞれが独立の光源を有する複数の灯具を備え、前記複数の灯具のうちの少なくとも1つが自車両の前方の情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部により得られた情報に基づいて自車両の前方に対して選択的な照射パターンを決定する照射パターン演算部と、前記照射パターン演算部により決定された前記照射パターンに基づき液晶素子に電圧を印加する電圧印加部と、前記電圧印加部からの電圧に基づいて各光制御領域の透過率を変化する前記液晶素子と、前記光源から出射して前記液晶素子で透過制御された光の配光制御を行う投射光学系と、を有する車両用前照灯ユニットにおいて、前記複数の灯具のそれぞれから出射される光の色を個別に検出する色検出部を有し、前記それぞれの色検出部により検出される光の色同士を比較し、前記複数の灯具から出射される光の色を同じ色に保つように前記液晶素子に印加する電圧を調整することにより前記課題を解決している。また、本発明の請求項6に記載された発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用前照灯ユニットの出射光色の調整方法であって、前記液晶素子に印加される電圧の高さは少なくとも3以上の段階を持っていることを特徴とする。
【0024】
この方法によっても光源色の経時変化にも対処できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、車両用前照灯ユニットの出射光色の調整方法として、光源と、自車両の前方の情報を取得する情報取得部と、情報取得部により得られた情報に基づいて自車両の前方に対して選択的な照射パターンを決定する照射パターン演算部と、照射パターン演算部5により決定された照射パターンに基づき液晶素子に電圧を印加する電圧印加部と、電圧印加部からの電圧に基づいて各光制御領域の透過率を変化する液晶素子と、光源から出射して液晶素子で透過制御された光の配光制御を行う投射光学系と、を有する構成とした。
【0026】
これにより、車両用前照灯ユニットから出射される光の色を液晶素子に印加する電圧により調整することにより、光源白色光の差や変化を液晶素子を利用して補正し所定の色の白色光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用前照灯ユニットの模式図である。
図2】光源のスペクトル特性である。
図3】液晶素子の印加電圧に対する透過スペクトル変化を示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る車両用前照灯ユニットの模式図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係る車両用前照灯ユニットの模式図である。
図6】本発明の第4の実施形態に係る車両用前照灯ユニットの模式図である。
図7】本発明の第5の実施形態に係る車両用前照灯ユニットの模式図である。
図8】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明の好適な実施形態を図1図7を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0029】
図1に本発明の第1の実施形態に係る車両用前照灯ユニットの模式図を示している。
【0030】
光源(1)は、青色光を発する青色LEDと青色LEDからの青色光に励起されて青色光の補色となる黄色光の蛍光を発する黄色蛍光体とを組み合わせた白色LEDである。
【0031】
平行光学系(2)は凸レンズを使用し、凸レンズの焦点付近に光源(1)を配置することにより光源(1)からの出射光を凸レンズで平行光に成形して液晶素子(3)に入射する。
【0032】
液晶素子(3)は垂直配向型の液晶セル(3a)を使用し、液晶セル(3a)の両側には偏光子(3b)が直交コルの関係で配置されており、電圧無印加時に遮光状態で電圧印加時に透過状態で電圧応答可能な液晶素子である。
【0033】
液晶素子(3)は複数の光制御領域、本実施形態では鉛直方向6分割、水平方向48分割のマトリクス状の288個の光制御領域を持ち、液晶素子(3)に接続された電圧印加部(4)により1/6dutyの単純マトリクス駆動されている。
【0034】
自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための液晶素子(3)の個々の光制御領域の状態は、電圧印加部(4)に接続された照射パターン演算部(5)によって選択制御されている。照射パターン演算部(5)には自車両の前方の情報を取得するカメラなどの情報取得部(8)が接続されている。液晶素子(3)で制御した光源(1)からの出射光は投射光学系(6)を通して車両前方へ光照射を行う。
【0035】
なお、情報取得部(8)以外は筐体(7)に収容されている。また、情報取得部(8)はフロントウィンドウ中央上部に設置されているが、これは衝突防止ブレーキシステムなどで使用されるカメラなどの情報所得部との供用ができるためであり、独自のカメラなどを利用する場合は筐体(7)内部に設けても良い。
【0036】
そこで、車両用前照灯ユニットが選択的な光照射を行っている時は、情報取得部(8)から得た自車両の前方の情報、例えば対向車の情報などから照射パターン演算部(5)において対向車に対する配光を遮光する照射パターンを決定し、その照射パターンを実現するための液晶素子(3)の個々の光制御領域に電圧印加部(4)から電圧を印加する制御方法が適用可能である。
【0037】
本実施形態の液晶素子(3)は、電圧無印加時に遮光状態で電圧印加時に透過状態で電圧応答可能な液晶素子であるので、対向車に対する光制御領域のみ液晶素子(3)にオフ電圧を印加して、その他の光制御領域にはオン電圧を印加すればよい。実際の走行時は前方の状況が時間とともに変化するため、液晶素子(3)の複数の光制御領域の透過/遮光状態も時間とともに変化させ、選択的な光照射のパターンを時間とともに変化させることになる。
【0038】
図2は、光源(1)のスペクトル特性を示している。図2より、波長450nm付近の青色LEDからの出射光と、青色LEDからの青色光により励起された波長500nmから620nm付近の黄色蛍光体からの蛍光との加法混色による白色光となっている。
【0039】
図3は、液晶素子(3)の印加電圧に対する透過スペクトル変化を示している。図3から分るように、液晶素子(3)の透過スペクトルは波長に対して平らではなく波長依存性を持っており、印加電圧が低いうちは短波長側の方が透過率が高く電圧上昇に従って全体的に透過率が高くなるが、ある電圧で透過スペクトルはピークを持つようなり、電圧上昇に従ってピークが長波長側に移動して行く。
【0040】
上述の状態を青色LEDの波長と黄色蛍光体の波長に注目してみてみると、電圧上昇に従って先ずは青色LEDの波長でピークを迎え透過率が最大になり、次いで黄色蛍光体の波長でピークを迎え透過率が最大になる。それぞれの波長の透過率はピークを迎えた後は、その後の電圧上昇で透過率は減少する。
【0041】
このように、液晶素子(3)を出射する光源(1)のスペクトルの青色LEDの波長の透過率と黄色蛍光体の波長の透過率の比率は、液晶素子(3)への印加電圧の値により変化させることができる。このことは即ち、車両用前照灯ユニットから出射される光の色を調整することができることを示しており、本発明ではこのことを積極的に利用して、白色とみなせる範囲内ではあるが車両用前照灯ユニットから出射される光の色を調整することができる。
【0042】
図4に本発明の第2の実施形態に係る車両用前照灯ユニットの模式図を示している。
【0043】
第2の実施形態の上記第1の実施形態との違いは、車両用前照灯ユニットがハイビーム用灯具とロービーム用灯具により形成されているということである。
【0044】
本実施形態では、ハイビーム用灯具が液晶素子を有し自車両の前方に対して選択的な光照射を行い、ロービーム用灯具は通常のロービーム光照射を行う例である。本実施形態ではハイビーム配光をハイビーム用灯具とロービーム用灯具の両方からの照射光を足して作成する。
【0045】
ハイビーム用灯具(H)は、青色光を発する青色LEDと青色LEDからの青色光に励起されて青色光の補色となる黄色光の蛍光を発する黄色蛍光体とを組み合わせた白色LED光源(1H)を有し、平行光学系(2H)は凸レンズを使用し、凸レンズの焦点付近に光源(1H)を配置することにより光源(1H)からの出射光を凸レンズで平行光に成形して液晶素子(3)に入射する。
【0046】
液晶素子(3)は垂直配向型の液晶セル(3a)を使用し、液晶セルの両側には偏光子(3b)が直交コルの関係で配置されており、電圧無印加時に遮光状態で電圧印加時に透過状態で電圧応答可能な液晶素子である。
【0047】
液晶素子(3)は複数の光制御領域、本実施形態では鉛直方向4分割、水平方向48分割のマトリクス状の192個の光制御領域を持ち、液晶素子(3)に接続された電圧印加部(4)により1/4dutyの単純マトリクス駆動されている。液晶素子(3)で制御した光源(1H)からの出射光は投射光学系(6H)を通して車両前方へ光照射を行う。
【0048】
なお、ロービーム用灯具(L)は従来のプロジェクションタイプの灯具と同じであるため光学系等の詳細は省略する。
【0049】
自車両の前方に対して選択的な光照射を行うためハイビーム用灯具(H)の液晶素子(3)の個々の光制御領域の状態は、電圧印加部(4)に接続された照射パターン演算部(5)によって選択制御されている。
【0050】
ロービーム灯具(L)も照射パターン制御部(5)により点灯のオンオフ制御が行われる(ただし、ほとんどのケースでロービーム灯具はオン状態である)。
【0051】
照射パターン制御部(5)には自車両の前方の情報を取得するカメラなどの情報取得部(8)が接続されている。ハイビーム用灯具(H)での液晶素子(3)で制御した光源(1H)からの出射光は投射光学系(6H)を通して車両前方へ光照射され、ロービーム灯具(L)から光照射と足し合わされて車両前方に対して光照射を行う。
【0052】
なお、情報取得部(8)以外は筐体(7)に収容される。また、情報取得部(8)はフロントウィンドウ中央上部に設置されているが、これは衝突防止ブレーキシステムなどで使用されるカメラなどの情報所得部との供用ができるためであり、独自のカメラなどを利用する場合は筐体(7)内部に設けても良い。
【0053】
そこで、車両用前照灯ユニットが選択的な光照射を行っている時は上記第1の実施形態と同様に、情報取得部(8)から得た自車両の前方の情報、例えば対向車の情報などから照射パターン演算部(5)において対向車に対する配光を遮光する照射パターンを決定し、その照射パターンを実現するための液晶素子(3)の個々の光制御領域に電圧印加部(4)から電圧を印加する制御方法が適用可能である。
【0054】
本実施形態の液晶素子(3)は、電圧無印加時に遮光状態で電圧印加時に透過状態で電圧応答可能な液晶素子であるので、対向車に対する光制御領域のみ液晶素子(3)にオフ電圧を印加して、その他の光制御領域にはオン電圧を印加すればよい。実際の走行時は前方の状況が時間とともに変化するため、液晶素子の複数の光制御領域の透過/遮光状態も時間とともに変化させ、選択的な光照射のパターンを時間とともに変化させることになる。
【0055】
本実施態様では車両用前照灯ユニットのうちハイビーム用灯具(H)が上記選択的な光照射を行いロービーム用灯具(L)から光照射と足し合わせられ形で選択的な光照射を行うことができる。
【0056】
本発明の第2の実施形態の特徴的な制御は、ハイビーム用灯具(H)からの出射光の色を、ロービーム灯具(L)からの出射光の色と同じになるように、液晶素子(3)に印加される電圧を調整することにある。液晶素子(3)の印加電圧の変化によりハイビーム用灯具(H)からの出射光の色が変化する原理は上記第1の実施形態で説明したものと同じである。
【0057】
図5に本発明の第3の実施形態に係る車両用前照灯ユニットの模式図を示している。
【0058】
第3の実施形態の上記第1の実施形態との違いは、液晶素子の近傍に温度検出部(9)を有するということである。
【0059】
液晶素子(3)は印加電圧によって図3に示すような透過スペクトル変化を起こすが、印加電圧による変化ほど大きくはないが温度変化でも透過率が変化することが知られている。これは温度上昇に伴って液晶の複屈折が小さくなるためであり、温度上昇に対する透過スペクトル変化(ピークのシフト)の方向は電圧上昇に対する方向と逆である。
【0060】
また、光源として使用している白色LEDも温度上昇に伴って発光色が変化することが知られている。これは高温になるほど蛍光体の励起光率が下がるためであり、高温になるほど発光色は青みを帯びるようになる。したがって、液晶素子と白色LEDの特性変化によって車両用前照灯ユニットの照射光の色は温度上昇に伴って青みを帯びるようになる。
【0061】
本発明の第3の実施形態の特徴的な制御は、温度検出部(9)により検出される温度に基づいて液晶素子(3)に印加する電圧を決定することにより車両用前照灯ユニットから出射される光の色を調整し一定に保つことである。
【0062】
使用する光源と液晶素子の温度依存性(温度変化に対する特性値の変化)の個体間差は少ないと考えられるため、温度依存性に応じて予め各温度に対する液晶素子(3)への印加電圧が設計値として決められている一つのテーブル(記憶部(照射パターン演算部(5)の中に含まれる;図示せず)に記憶された関係)を使用することができる。また、光源や液晶素子の特性の個体間差を考えると初期の状態で所定値からずれている場合があるが、その場合は初期の状態でテーブルを補正してそれを用いればさらに効果的である
【0063】
図6に本発明の第4の実施形態に係る車両用前照灯ユニットの模式図を示している。
【0064】
第4の実施形態の第1の実施形態との違いは、車両用前照灯ユニットから出射される光の色を検出する色検出部(10)を有するということである。
【0065】
本発明の第4の実施形態の特徴的な制御は、色検出部(10)により検出される色データと所定の色データを比較し、液晶素子(3)に印加する電圧を決定することにより車両用前照灯ユニットから出射される光の色を調整し一定に保つことである。
【0066】
車両用前照灯ユニットから出射される光の色を常時センシングしているために温度変化による白色LEDの光源色や液晶素子の透過スペクトル変化に対してもリアルタイムで補正できる特徴を有する。
【0067】
図7に本発明の第5の実施形態に係る車両用前照灯ユニットの模式図を示している。
【0068】
第5の実施形態の第2の実施形態との違いは、ハイビーム用灯具(H)とロービーム灯具(L)から出射される光の色を検出する色検出部(10)を有するということである。
【0069】
本発明の第5の実施形態の特徴的な制御は、ハイビーム用灯具(H)とロービーム灯具(L)それぞれに配置された色検出部(10)により検出される色データ同士を比較し、液晶素子(3)に印加する電圧を決定することによりハイビーム用灯具(H)とロービーム灯具(L)それぞれから出射される光の色を同じ色に保つことである。
【0070】
ハイビーム用灯具(H)とロービーム灯具(L)それぞれから出射される光の色を常時センシングしているために温度変化による白色LEDの光源色や液晶素子の透過スペクトル変化に対してもリアルタイムで補正できる特徴を有する。
【0071】
上記第1の実施形態~第5の実施形態で使用した液晶素子は垂直配向型であるが、本発明はこれに限定される訳ではなく、TN型、STN型などあらゆる種類の液晶素子の適用が可能である。ただし、液晶素子のそれぞれの型やモード(ノーマリーホワイトかノーマリーブラックか)によって印加電圧に対する透過スペクトルの波長に対する変化の方向が異なることがあるので注意を要する。また、ノーマリーホワイトモードの液晶素子に対しての色調整はオフ電圧の調整により行うことになる。
【0072】
また、光源として青色LEDに黄色蛍光体を組み合わせた白色LEDを用いた場合を説明したが、本発明はLED光源に限定されるものではなく、白熱電球、ハロゲン電球、放電灯など様々な白色光源に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1… 光源
2… 平行光学系
3… 液晶素子
3a… 液晶セル
3b… 偏光子
4… 電圧印加部
5… 照射パターン演算部
6… 投射光学系
7… 筐体
8… 情報取得部
9… 温度検出部
10… 色検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8