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特許7092530酸性成分及びアンモニアを含有する廃水のアンモニアストリッピング処理装置及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】酸性成分及びアンモニアを含有する廃水のアンモニアストリッピング処理装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/20 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
C02F1/20 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018056963
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019166481
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】391018592
【氏名又は名称】月島環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】結城 智博
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 純
(72)【発明者】
【氏名】堀江 麻位
(72)【発明者】
【氏名】安達 太起夫
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-062958(JP,A)
【文献】特開昭52-003264(JP,A)
【文献】特開昭54-074803(JP,A)
【文献】特開平04-277074(JP,A)
【文献】特開昭53-016367(JP,A)
【文献】特開昭55-042239(JP,A)
【文献】特開2010-115606(JP,A)
【文献】特開昭61-093808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20
B01D 19/00 - 19/04
C02F 1/58 - 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性成分及びアンモニアを含有する廃水をアルカリ添加せずにアンモニアストリッピング処理する第1次ストリッピング処理手段と、
前記第1次ストリッピング処理手段での処理水に対して、アルカリを添加した状態でストリッピング部においてアンモニアストリッピング処理する第2次ストリッピング処理手段と、
を有し、
前記第1次ストリッピング処理手段のストリッピング部を構成する第1次ストリッピング塔、並びに前記第2次ストリッピング処理手段のストリッピング部を構成する第2次ストリッピング塔と、
前記廃水を前記第1次ストリッピング塔上部から流下させる第1次流下手段と、
前記第2次ストリッピング塔の下部からストリッピング用気体を前記第1次ストリッピング塔上部まで上昇させるストリッピング用気体供給手段と、
前記ストリッピング用気体を前記第1次ストリッピング塔の下部に導く連通手段と、
前記廃水を前記ストリッピング用気体と気液接触させて得た第1次処理水を、前記第2次ストリッピング塔の上部から流下させる第2次流下手段と、
を有し、
前記ストリッピング用気体供給手段が吹き込み管又はリボイラーであり、
前記第2次ストリッピング塔の上部と前記第1次ストリッピング塔の下部を連通するように前記連通手段が接続されており、前記ストリッピング用気体供給手段により、ストリッピング後のガスが第1次ストリッピング処理手段のストリッピングガスとして利用されるように、前記ストリッピング用気体を前記第2次ストリッピング塔の下部から前記第1次ストリッピング塔の上部まで上昇させることを特徴とする酸性成分及びアンモニアを含有する廃水のアンモニアストリッピング処理装置。
【請求項2】
第1次流下手段及び第2次流下手段のそれぞれ下方に気液接触効率を高める充填材を有する請求項1記載の酸性成分及びアンモニアを含有する廃水のアンモニアストリッピング処理装置。
【請求項3】
アンモニアストリッピング処理に使用するストリッピング用気体が、水蒸気、空気、アンモニアストリッピング処理後のガスの循環利用によるガス、のいずれか1つであること、または、これらのうち少なくとも2つ以上の混合ガスであり、ストリッピング温度を35℃以上で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載する酸性成分及びアンモニアを含有する廃水のアンモニアストリッピング処理装置。
【請求項4】
第1次ストリッピング処理手段のストリッピング部を構成する第1次ストリッピング塔、並びに第2次ストリッピング処理手段のストリッピング部を構成する第2次ストリッピング塔と、
酸性成分及びアンモニアを含有する廃水を前記第1次ストリッピング塔上部から流下させる第1次流下手段と、
前記第2次ストリッピング塔の下部からストリッピング用気体を前記第1次ストリッピング塔上部まで上昇させるストリッピング用気体供給手段と、
前記ストリッピング用気体を前記第1次ストリッピング塔の下部に導く連通手段と、
前記廃水を前記ストリッピング用気体と気液接触させて得た第1次処理水を、前記第2次ストリッピング塔の上部から流下させる第2次流下手段と、
を有し、
前記ストリッピング用気体供給手段が吹き込み管又はリボイラーであり、
前記第2次ストリッピング塔の上部と前記第1次ストリッピング塔の下部を連通するように前記連通手段が接続されており、前記ストリッピング用気体供給手段により、ストリッピング後のガスが第1次ストリッピング処理手段のストリッピングガスとして利用されるように、前記ストリッピング用気体を前記第2次ストリッピング塔の下部から前記第1次ストリッピング塔の上部まで上昇させる、酸性成分及びアンモニアを含有する廃水のアンモニアストリッピング処理装置を用いる、酸性成分及びアンモニアを含有する廃水のアンモニアストリッピング処理方法であって、
酸性成分及びアンモニアを含有する廃水をアルカリ添加せずに前記第1次ストリッピング処理手段のストリッピング部において第1次アンモニアストリッピング処理し、
第1次ストリッピング処理した後の処理水に対して、アルカリを添加した状態で前記第2次ストリッピング処理手段のストリッピング部において第2次アンモニアストリッピング処理する、
ことを特徴とする酸性成分及びアンモニアを含有する廃水のアンモニアストリッピング処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性成分及びアンモニアを含有する廃水のアンモニアストリッピング処理装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンモニア含有廃水のアンモニアストリッピング処理は、例えば特許文献1などにより公知である。
このアンモニアストリッピング処理は、アンモニアの酸解離指数がpKa=9.3であることから、効率よくストリッピング処理を行うために水酸化ナトリウム等の不揮発性アルカリを添加し、遊離アンモニアが過剰になるpH9.3以上好ましくはpH11以上で行われている。これを理由とともに技術内容をさらに説明する。
【0003】
廃水中に硫酸、塩酸、または炭酸などの酸が存在する系では、廃水(酸性成分及びアンモニアを含有する廃水)中のアンモニアと酸がアンモニウム塩を形成し、ストリッピング処理での妨害となる。このため水酸化ナトリウム等の不揮発性アルカリを酸と当量以上添加する必要があり、前処理で消費するアルカリの量が増加する。
【0004】
共存する酸が炭酸の場合、炭酸アンモニウムまたは炭酸水素アンモニウムは35~60℃で分解し、H2O+NH3+CO2となるため、アルカリを添加せずに放散を行うことは可能ではある。
【0005】
しかし、処理水中のアンモニアの濃度を低いレベル(例えば数100ppm以下)まで達成したい場合には効率的でなく、アルカリの添加が必要になる。効果的なアンモニアの放散を行うためにはpHを高い状況にする必要があり、その結果多量のアルカリを必要としていた。
例えば炭酸ナトリウム系水溶液のpHでみると、H2CO3水溶液で3~4.5程度、NaHCO3水溶液で8.4程度、Na2CO3水溶液で10.5~12程度であるため、アルカリとして水酸化ナトリウムを用いる場合、pH9.3以上とするには炭酸根に対し等モル以上、pH11以上とするには炭酸根に対し2倍モル程度以上のアルカリの添加が必要であった。
【0006】
従来技術のアンモニアストリッピング処理では、例えば図4に示すフローを採用することが考えられる。すなわち、アンモニア含有廃水10に対し、アルカリ11を添加し、pH調整槽12において廃水のpHを9.3以上好ましくは11以上に調整し、pH調整された廃水は、ポンプ13により、熱交換器14を通し、ストリッピング塔15よりポンプ16により系外に排出される処理水17と熱交換を行い、加熱した後、流路20を通してストリッピング塔15に導入する。
ストリッピング塔15内では、蒸気又は加熱空気などのストリッピング用気体18と気液接触し、廃水中のアンモニアは排気ガス19とし、ストリッピング塔15より上部排気する。また、アンモニア濃度が下がった処理水17はストリッピング塔15下部よりポンプ16により抜出し、前述の通り、導入廃水と熱交換器14により熱交換したのち、系外に排出する。接触効率向上のため、ストリッピング塔15内部には、不規則充填物などの充填材15aを充填することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許3667597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来技術例のように、酸性成分及びアンモニアを含有する廃水について、アンモニアストリッピングを行い、処理水のアンモニア濃度を効果的に低濃度に低減しようとする場合、炭酸根に対し一酸塩基としてモル換算で等モル以上、2倍モル近くのアルカリを添加する必要があり、結果として、多量のアルカリ添加が必要であった。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする主たる課題は、アンモニア含有廃水のアンモニアストリッピング処理に当り、廃水に対して添加するアルカリ使用量を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記アルカリ(例えば水酸化ナトリウム)使用量を低減する課題は、次の態様によって解決できる。
すなわち、酸性成分及びアンモニアを含有する廃水をアルカリ添加せず、又は全添加量の一部量を添加した状態でストリッピング部においてアンモニアストリッピング処理する第1次ストリッピング処理手段と、
第1次ストリッピング処理手段での処理水に対して、アルカリ全添加量又は残量を添加した状態でストリッピング部においてアンモニアストリッピング処理する第2次ストリッピング処理手段とを有する、
ことを特徴とする酸性成分及びアンモニアを含有する廃水のアンモニアストリッピング処理装置によって解決できる。
【0011】
上記態様において、第1次ストリッピング処理手段及び第2次ストリッピング処理手段のストリッピング部を共通としたストリッピング塔を使用できる。
そして、前記ストリッピング塔は上部に第1次ストリッピング処理手段を有し、下部に第2次ストリッピング処理手段を有し、
前記ストリッピング塔の下部からストリッピング用気体を前記ストリッピング塔上部まで吹き上げる吹き込み手段と、
前記廃水を前記ストリッピング塔上部から流下させる第1次流下手段と、
前記廃水を前記ストリッピング用気体と気液接触させて得た第1次処理水を、前記第1次ストリッピング処理手段の下方で流下させる第2次流下手段と、
を有する形態とすることができる。
【0012】
また、第1次ストリッピング処理手段のストリッピング部を構成する第1次ストリッピング塔、並びに第2次ストリッピング処理手段のストリッピング部を構成する第2次ストリッピング塔を有し、
前記廃水を前記第1次ストリッピング塔上部から流下させる第1次流下手段と、
前記第2次ストリッピング塔の下部からストリッピング用気体を前記第2次ストリッピング塔上部まで上昇させるストリッピング用気体供給手段と、
前記ストリッピング用気体を前記第1次ストリッピング塔の下部に導く連通手段と、
前記廃水を前記ストリッピング用気体と気液接触させて得た第1次処理水を、前記第2次ストリッピング塔の上部から流下させる第2次流下手段と、
を有する形態も提案される。
【0013】
他方で、第1次流下手段及び第2次流下手段のそれぞれ下方に気液接触効率を高める充填材を設けることができる。
【0014】
酸性成分及びアンモニアを含有する廃水のアンモニアストリッピング処理方法として、
酸性成分及びアンモニアを含有する廃水をアルカリ添加せず、又は全添加量の一部量を添加した状態で第1次ストリッピング部において第1次アンモニアストリッピング処理し、
第1次ストリッピング処理した後の処理水に対して、アルカリ全添加量又は残量を添加した状態で第2次ストリッピング部において第2次アンモニアストリッピング処理する、形態を提供する。
【0015】
ところで、アンモニアを含有する廃水中のアンモニウム塩のうち、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムの分解温度は200℃超であるが、炭酸アンモニウム又は炭酸水素アンモニウムは35~60℃付近で熱分解するため、アンモニア廃水中に炭酸が多量に存在する系では、前処理により廃水のpHを調整せずとも、ストリッピング塔に直接導入することで、廃水中の炭酸アンモニウムはアンモニアと二酸化炭素に分解するため、炭酸アンモニウムとして存在しているアンモニウム分は廃水中から分離が可能である(ただし、ストリッピング塔の保護上、廃水のpHは最低限、弱酸性からアルカリ側に調整する必要はある。)。
【0016】
他方で、アンモニアの平衡上、pH調整をせずに処理水のアンモニア濃度を、例えば日本の排水規制レベルまで削減することは、通常のアンモニア廃水中には、遊離アンモニアが少ない状況であることが多いため、ストリッピング塔の過剰設計を招き、実用性に乏しい。
そこで、本発明は、ストリッピング処理を、多段とした塔において実施するか、複数の塔を直列に連結した設備を用いることで、アルカリ消費量を減らし、なおかつ処理水のアンモニア濃度を排水規制値レベルまで削減する形態を提案するものである。
【0017】
例えば、炭酸アンモニアを含む廃水の場合、前段のストリッピング処理(第1次ストリッピング処理)では、廃水中の主に炭酸アンモニウムを除去する。脱炭酸アンモニウムされた廃水をアルカリ(例えば水酸化ナトリウム)でpH調整を行う。その後、後段でストリッピング処理(第2次ストリッピング処理)を行い、例えば日本の排水規制値レベルまで低減されたアンモニウム濃度の処理水を系外に排出する。
【0018】
直列複数塔に比べ単塔多段の方法は設置面積が少なくて済むことやダクトが不要なこと、総塔高さが低くなることなど、経済的に優位である。
ストリッピング塔上部に廃水を供給し、塔上部で脱炭酸のための第1次ストリッピング処理を行う。この時アンモニアも一部放散する。脱炭酸アンモニウムされた廃水を塔中段より抜出し、例えばpH調整槽(タンク)に受ける。pH調整槽にてpH調整の後、脱炭酸アンモニウム廃水をストリッピング塔中段に戻し、第2次ストリッピング処理を行う。
【0019】
アルカリ添加のためのpH測定は、塔中段から抜き出した液によることも可能であるが、より厳密な放散処理を行うためには処理水のpHを測定して制御することも可能である。
また、アルカリの多少の過剰使用を認め、酸等の濃度変動が小さい場合はpH管理せず一定量のアルカリを添加する方法でもよい。
【0020】
ストリッピング塔頂部から排出されるガスはCO2、NH3及び放散に用いたガス(水蒸気放散の場合は水蒸気)が主体であり、その後に、触媒を用いた分解設備、焼却炉などで無害化することができる。また、凝縮して炭酸アンモニウムを回収すること、硫酸又は硫酸酸性硫酸アンモニウム溶液に吸収することで硫酸アンモニウムとして回収することも可能である。
【0021】
上記態様によると、ストリッピング処理におけるアンモニア含有廃水のpH調整に使うアルカリの消費量を削減することができる。
処理水中のアンモニア濃度が十分に低減されるので、日本国内のみならず海外の排水排出基準(アンモニア性窒素)、N規制等も満足できる。
従来例においては、ストリッピング前のアルカリによるpH調整でアンモニア含有廃水中の炭酸は炭酸塩として液側で回収していた。
上記態様によると、炭酸を炭酸アンモニウムのままあるいは炭酸ガスとアンモニアガスとしてガス側に移行させることで、アルカリの消費量を削減できる。
それにより、河川放流に際してpH調整(中和)に必要な酸の消費量も低減できる。
また、既設ストリッピング処理設備を改良する場合、ストリッピング処理を行う上で必要な熱源は、既に用意されており、新たに外部から加熱する必要はなく、既設のストリッピング塔を延長し炭酸ストリッピング部を設けるだけであるので、設備規模も従来とほぼ同じとすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、ストリッピング処理におけるアンモニア含有廃水のpH調整に使うアルカリの消費量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施の形態の概要フロー図である。
図2】本発明の第2実施の形態の概要フロー図である。
図3】他の実施の形態の概要フロー図である。
図4】従来技術例の概要フロー図である。
図5】実験結果を示すグラフである。
図6】実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。
【0025】
図1図3は本発明の実施の形態の概要フロー図である。図4の従来技術例と同一又は同様であるものには同一符号を付した。
【0026】
本発明の実施の形態は、例えば図1に示すように、酸性成分及びアンモニアを含有する廃水10をアルカリ添加せず、又は全添加量の一部量を添加した状態でストリッピング部においてアンモニアストリッピング処理する第1次ストリッピング処理手段21と、第1次ストリッピング処理手段21での処理水に対して、アルカリ全添加量又は残量を添加した状態でストリッピング部においてアンモニアストリッピング処理する第2次ストリッピング処理手段24とを有するものである。
【0027】
実施の形態における「ストリッピング部」は、ストリッピング塔、廃水を流下させる流下手段、ストリッピング用気体をストリッピング塔上部まで上昇させるストリッピング用気体供給手段を有し、廃水とストリッピング用気体と気液接触させる領域又は部分を意味している。
【0028】
図1に示す第1の実施の形態では、第1次ストリッピング処理手段21及び第2次ストリッピング処理手段24のストリッピング部を共通としたストリッピング塔150を使用したものである。
【0029】
ストリッピング塔150の下部から、蒸気又は加熱空気などのストリッピング用気体18をストリッピング塔150上部まで上昇させるストリッピング用気体供給手段(吹き込み管、リボイラーなどを含む)と、処理されるべき廃水をストリッピング塔150上部から流下させる散液ノズルなどの第1次流下手段21Aと、廃水をストリッピング用気体18と気液接触させて得た第1次処理水を、第1次ストリッピング処理手段21の下方で流下させる第2次流下手段24Aと、を有する形態である。
【0030】
第1の実施の形態では、アンモニア含有廃水10を、アルカリ(例えば水酸化ナトリウム)添加せず、ポンプ13により、熱交換器14を通し加熱した後、流路20を通してストリッピング塔150に導入する。熱交換器14においては、ストリッピング塔150からポンプ16により系外に排出される処理水17と熱交換を行う。
ここで、本発明は、アルカリ使用量を低減する目的を有するから、廃水10にアルカリをまったく添加しない状態でストリッピング塔150へ供給するのが好ましいが、処理に必要とされる全添加量の一部のアルカリ量を廃水10に添加した状態でストリッピング塔150へ供給することもできる。この場合のアルカリ添加は、例えば図4の例のように実施することができる。
【0031】
ストリッピング塔150内では、第1次流下手段21Aから廃水が流下され、ストリッピング塔150内を上昇するストリッピング用気体18と気液接触が図られる。気液接触効率を高めるために、不規則充填物などの充填材21Bが充填されている。
【0032】
第1段階で気液接触が図られアンモニア及び酸性ガスのストリッピング処理がなされた第1次処理水は、充填材21Bの下方に設けられた分離手段により分離され、pH調整槽12に送られる。図示例の分離手段は、分散傘22及び分離筒23を有し、分離筒23外方に集水された第1次処理水は、管路25を介してpH調整槽12に供給される。そして、第1次処理水に対してアルカリ11が添加され、ポンプ26により管路27を介して、第2次ストリッピング処理手段24に供給される。
【0033】
ストリッピング塔150内において、アルカリ添加後の廃水は、第2次流下手段24Aから流下され、ストリッピング塔150内を上昇するストリッピング用気体18と気液接触が図られる。気液接触効率を高めるために、不規則充填物などの充填材24Bが充填されている。
【0034】
第2次ストリッピング処理手段24においては、pHが高い状況で処理が行われるので主にアンモニアのストリッピング処理がなされる。
かくして、第2次ストリッピング処理手段24及び第1次ストリッピング処理手段21によって、廃水に対してストリッピング処理がなされ、ストリッピング処理後のアンモニアは排気ガス19とし、ストリッピング塔150より上部排気される。排気ガス19のその後の処理は前述のとおりである。
他方で、アンモニア濃度が下がった処理水17はストリッピング塔150下部よりポンプ16により抜出し、前述の通り、導入廃水と熱交換器14により熱交換したのち、系外に排出される。
【0035】
上記の実施の形態による利点は次のとおりである。
1.第2次ストリッピング処理手段24によって、主にアンモニアがストリッピングされる。
ストリッピング後のガスは第1次ストリッピング処理手段21のストリッピングガスとして利用される。
2.従来技術例では、原廃水中の炭酸アンモニウム又は炭酸水素アンモニウムの炭酸分に対してアルカリを添加する必要があるので、アルカリ消費量は多い。
これに対して、実施の形態では、第1次ストリッピング処理手段21において、実質的にアルカリを添加しないで、アンモニア及び酸性ガスのストリッピング処理がなされ、結果として、炭酸アンモニウム又は炭酸水素アンモニウムが除去される。このように炭酸分が除去された第1次処理水に対してアルカリ添加を行う。
第1次処理水には、既に炭酸アンモニウム又は炭酸水素アンモニウムが除去され、その濃度はかなり低くなっている結果、その残留炭酸分に対して、必要とされる量のアルカリ(アンモニアを乖離させるためのアルカリ)量で足りるので、アルカリ消費量が少なくて足りる。
3.ストリッピング塔150下部からの処理水17については、その後の処理過程(図示せず)において、河川に放流するために、残留炭酸分に相当する少ない量のアルカリを中和するだけの酸の使用量で足りるので、中和用の酸の使用量をも低減できる。
4.添加するアルカリ量が少なくなるので、処理水の塩濃度が低くなる。
5.従来技術例においては、添加するアルカリが多くかつ塩濃度が高いので、結晶が析出する可能性が高い。
これに対し実施の形態では、第1次ストリッピング処理手段21ゾーンではアルカリ分がない又はごく少量であるので、結晶の析出は皆無である。
第2次ストリッピング処理手段24ゾーンではアルカリ分が少ないので、結晶が析出する可能性が低い。
6.第2次ストリッピング処理手段24ゾーンでストリッピングされたアンモニアガス成分は、炭酸アンモニウムが分解する35~60℃以上では炭酸ガスに対してはイナートとしてふるまうため、第1次ストリッピング処理手段21ゾーンでは実質的にストリッピング用ガス量の増大となり第1次ストリッピング処理手段21ゾーンでの炭酸ガスストリッピング効果の増大となる。
【0036】
図2に示す第2の実施の形態によっても上記の利点がもたらされる。
第2の実施の形態は、
第1次ストリッピング処理手段のストリッピング部を構成する第1次ストリッピング塔15A、並びに第2次ストリッピング処理手段のストリッピング部を構成する第2次ストリッピング塔15Bを有し、
前記廃水を前記第1次ストリッピング塔15A上部から流下させる第1次流下手段21Aと、
前記第2次ストリッピング塔15Bの下部からストリッピング用気体18を前記第2次ストリッピング塔15B上部まで上昇させるストリッピング用気体供給手段と、
前記ストリッピング用気体を前記第1次ストリッピング塔15Aの下部に導く連通手段28と、
前記廃水10を前記ストリッピング用気体と気液接触させて得た第1次処理水を、前記第2次ストリッピング塔15Bの上部から流下させる第2次流下手段24Aと、
を有するものである。
第2次ストリッピング塔15B上部まで上昇したストリッピング用気体は、連通手段28を介して前記第1次ストリッピング塔15A上部までさらに上昇していく。なお、連通手段28は、第1次ストリッピング塔15Aの充填材21Bの設置位置より低い位置に接続しており、第1次ストリッピング塔15Aの下部に溜まった処理液の液面位置より高い位置で接続していると、圧力損失を小さくでき、ランニングコストを低減できるため特に好ましい。
【0037】
図2に示す第2の実施の形態では、第1次ストリッピング塔15A下部からの第1次処理水は管路25を通してポンプ26AによってpH調整槽12に送られ、ここにアルカリ11が添加され、pH調整水はポンプ26により管路27を介して、第2次ストリッピング塔15Bに供給される。pH調整水は管路27Aによって返送することができる。
【0038】
前述のように、アルカリ添加のためのpH測定は、ストリッピング塔150の中段から抜き出した液、あるいは第2の実施の形態では、第1次ストリッピング塔15Aから抜き出した液について行うことも可能であるが、より厳密な放散処理を行うためには処理水17のpHを測定して制御することも可能である。たとえば、図3に示すように、処理水17のpH指示調節計30でのpH値に基づき、アルカリ添加量調整弁31を用いて添加量調整を行うことができる。
なお、アルカリの多少の過剰使用を認め、酸等の濃度変動が小さい場合はpH管理せず一定量のアルカリを添加する方法でもよい。
【0039】
上記実施の形態において、ストリッピング用気体として水蒸気、空気などに加え、他のものも使用できる。例えば、ストリッピング塔からの排気ガス(ストリッピングに使用した気体)を焼却又は酸化分解などの処理を行った場合、排気ガスがもっている熱を利用して、処理後の排気ガスを再度ストリッピング用気体として循環利用することができる。さらに、これらの混合したガスを利用することもできる。
また、実施の形態は2段放散の構成であるが、3段放散以上の構成とすることも可能である。
【0040】
酸としてH2SやHCNなどの弱酸系揮発性物質を共存し、あらかじめこれらを分離処理したい場合にも上述の手段を用い実施することができる。
2SやHCNなどの弱酸系揮発性物質は、通常は揮発性が高いが、水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加しpHが上昇すると、NaHS、Na2S、NaCNなどの形でHS-、S2-、CN-等のイオン化が促進され、その結果、ストリッピング処理によっても揮発せず、処理水中に残留することになる。
【0041】
特にH2SやHCN等は有害であり、処理水中に残留した場合、別途処理水の処理が必要になる。そこで、酸としてH2SやHCNなどの弱酸系揮発性物質を含有する廃水を上記実施形態の方法、すなわち酸性成分及びアンモニアを含有する廃水をアルカリ添加せず、又は全添加量の一部量を添加した状態でストリッピング部においてアンモニアストリッピング処理する第1次ストリッピング処理手段と、第1次ストリッピング処理手段での処理水に対して、アルカリ全添加量又は残量を添加した状態でストリッピング部においてアンモニアストリッピング処理する第2次ストリッピング処理手段により、これらの弱酸系揮発性物質をアンモニアとともにストリッピングガス側に移行させ、かつ本実施形態に続く排ガス処理に焼却又は酸化分解する方法を採用することにより安全かつ容易に分解することができる。
【0042】
次に実施例を示す。
実施例は、上記実施形態を模したビーカースケールで、蒸気による放散を想定した蒸留試験を実施した。蒸留試験は、単蒸留装置を使用し、次のように行った。
(原液条件)
NH4 : 12000 mg/kg
IC : 5800 mg/kg (CO3 2-換算で28978mg/kg)
初期pH: 8.7
【0043】
(比較例)
(1)原液500mlを丸底フラスコに仕込み、pHが11.5になるよう水酸化ナトリウム水溶液を添加後、沸騰石を10個程度加えヒーターで加熱した。
(2)留出液が30mlとなった時点で、留出液30mlと丸底フラスコ内の液30mlをそれぞれ採取した。その後加熱した純水を丸底フラスコに60ml加えた。これを1回の蒸留操作とする。
(3)(2)の操作を6回繰り返す。
【0044】
(実施例)
(1)原液500mlを丸底フラスコに仕込み、沸騰石を10個程度加えヒーターで加熱した。
(2)留出液が30mlとなった時点で、留出液30mlと丸底フラスコ内の液30mlをそれぞれ採取した。その後加熱した純水を丸底フラスコに60ml加えた。
(3)(2)の操作を3回繰り返す。
(4)3回目の蒸留操作終了後に、pHが11.5になるように水酸化ナトリウム水溶液を添加した。
(5)その後、(2)の操作を3回行った(蒸留操作4~6回目を行った)。
【0045】
上記試験の結果を表1、図5及び図6に示す。
【表1】
実施例と比較例のアンモニア除去率は6回目の蒸留操作後には同等になっており、水酸化ナトリウム使用量については明らかに実施例のほうが少なくなった。また、IC除去率については、実施例のほうが除去率が高くなっている。
よって、初めにアルカリを添加せずに放散し、その後アルカリを添加してアンモニアを放散することで、アルカリ使用量を抑えた効率の良いアンモニア放散ができることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、各種設備からの酸性成分及びアンモニアを含有する廃水に対して制限なく適用できる。
【符号の説明】
【0047】
10 廃水
11 アルカリ
12 pH調整槽
14 熱交換器
15A ストリッピング塔
15B ストリッピング塔
150 ストリッピング塔
18 ストリッピング用気体
21A 第1次流下手段
24A 第2次流下手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6