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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】アレイコイル及び磁気共鳴撮像装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220621BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
A61B5/055 355
G01N24/00 570C
G01N24/00 580F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018075596
(22)【出願日】2018-04-10
(65)【公開番号】P2019180851
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大竹 陽介
(72)【発明者】
【氏名】五月女 悦久
(72)【発明者】
【氏名】越智 久晃
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-324028(JP,A)
【文献】特表2006-525075(JP,A)
【文献】特開平05-261081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
夫々が被検体からの磁気共鳴信号を受信するように調整されたコイルユニットを複数備え、
各コイルユニットが、
可撓性を有し所定長の線状導体からなる第1のコイルエレメント及び第2のコイルエレメントと、
前記第1のコイルエレメントと前記第2のコイルエレメントとの間に直列に挿入され、前記磁気共鳴信号を検出する信号検出部と
前記第1のコイルエレメント及び前記第2のコイルエレメント上を移動可能に設けられた周波数調整用導体と、を備え、
前記周波数調整用導体は、前記第1のコイルエレメント及び前記第2のコイルエレメントの一部を覆う導体シートであり、
前記第1のコイルエレメント及び前記第2のコイルエレメントは、一端が前記信号検出部に接続されると共に他端が開放端であり、
前記第1のコイルエレメント及び前記第2のコイルエレメントを湾曲させて前記第1のコイルエレメントの開放端側及び前記第2のコイルエレメントの開放端側の少なくとも一部の領域を互いに一定の間隔をあけて隣り合うように配置することにより、隣り合う領域を電磁気的に結合させて機能させるアレイコイル。
【請求項2】
前記第1のコイルエレメント及び前記第2のコイルエレメントが、同一の長さを有し、前記信号検出部以外の領域において互いに隣り合って配置されるように、第1のコイルエレメント及び第2のコイルエレメントの開放端側が夫々湾曲されている請求項1記載のアレイコイル。
【請求項3】
前記第1のコイルエレメント及び前記第2のコイルエレメントが、互いに異なる長さを有し、前記第1のコイルエレメント又は前記第2のコイルエレメントの少なくとも一方が、前記信号検出部と隣り合って配置されるように、第1のコイルエレメント及び第2のコイルエレメントの開放端側が夫々湾曲されている請求項1記載のアレイコイル。
【請求項4】
前記第1のコイルエレメント及び前記第2のコイルエレメントが、リング形状に湾曲されている請求項1記載のアレイコイル。
【請求項5】
前記第1のコイルエレメント及び前記第2のコイルエレメントが、8字形状に湾曲されている請求項1記載のアレイコイル。
【請求項6】
前記第1のコイルエレメント及び前記第2のコイルエレメントが、矩形状に湾曲されている請求項1記載のアレイコイル。
【請求項7】
複数の前記コイルユニット間において、隣り合うコイルユニットの前記第1のコイルエレメント及び前記第2のコイルエレメント同士が、同一面内において、互いに部分的に重なり合うように配置されている請求項1記載のアレイコイル。
【請求項8】
静磁場を形成する静磁場形成部と、
傾斜磁場を形成する傾斜磁場形成部と、
前記静磁場に配置された検査対象にRF磁場を照射する送信RFコイルと、
前記検査対象からの核磁気共鳴信号を検出する受信RFコイルと、
前記受信RFコイルが検出した核磁気共鳴信号を処理する信号処理部と、を備え、
前記受信RFコイルが、請求項1乃至請求項の何れか1項記載のアレイコイルである磁気共鳴撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴撮像(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置に関り、特に高周波磁場(RF磁場:Radio Frequency磁場)を照射して核磁気共鳴信号を検出するRFコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、空間的に均一な磁場(静磁場)中に置かれた被写体に対しRF磁場を照射して核磁気共鳴を起こし、発生する核磁気共鳴信号を検出し、検出した信号に画像処理を施すことで断面画像を取得する。
MRI装置において、被写体にRF磁場を照射したり、被写体から発生する核磁気共鳴信号を検出したりする装置をRFコイルと呼ぶ。核磁気共鳴信号を検出する受信用RFコイルは、核磁気共鳴信号と同じ周波数で共振するように調整されることにより核磁気共鳴信号を受信するようになっている。そして、受信用RFコイルは、高い感度を得るために被検体により近く、かつ、被検体の診断部位に沿って配置されることが好ましい。
【0003】
受信用RFコイルを構成するコイルユニットは、例えば、図14に示すように可撓性を有するコイルエレメント、コイルエレメントに挿入される各回路、すなわち、コイルエレメントに流れた電流を検出する信号検出回路、RFコイルの共振周波数を調整するための複数のキャパシタからなる周波数調整回路、及び送信用RFコイルとの磁気結合を防止する磁気結合防止回路を備えている。コイルユニットは、コイルエレメントに挿入されたキャパシタによって共振回路を形成させ、核磁気共鳴信号を効率よく取得するため磁気共鳴信号と同じ周波数に調整されている。そして、画像取得時は、コイルエレメントを撓ませて被検体の診断部位に沿うように配置することで受信感度を向上させている。
【0004】
ところが、図14のコイルユニットでは、信号検出回路、周波数調整回路、磁気結合防止回路やキャパシタの夫々が外部からの衝撃による破損を防止するためにハードカバーで覆われている。つまり、図14のコイルユニットは、ハードカバーを要する回路がコイルエレメント中に点在するため、コイルユニットの柔軟性を阻害してしまう。また、多チャンネル化に伴って実装される電子部品数が増加するため、ハードカバーもさらに増加してしまうことから、軽量化することができない。
【0005】
一方、例えば、特許文献1には、コイルエレメントとして同軸ケーブルを適用することで柔軟性を確保したRFコイルが開示されている。特許文献1のRFコイルでは、同軸ケーブルをコイルエレメントとして活用するだけでなく、同軸ケーブル自体が有するキャパシタ成分を用い、同軸ケーブルの種類や長さ等を適宜定めることによって周波数調整を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4820022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたRFコイルにおいても、周波数調整回路は必要となるため、周波数調整回路に対してカバーを装着する必要があり、軽量化や柔軟性の向上が充分とは言い難い。また、同軸ケーブルの種類にも制限があり、かつ、設計するRFコイルのチャネル数や、被検体のサイズなども考慮すると、実現できるコイルの大きさおよびその周波数調整にも制限がある。従って、特許文献1のRFコイルにおいては任意の大きさのRFコイルの周波数調整が困難なことがある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みて成されたものであり、高い柔軟性を有し、軽量でありながら容易に周波数調整を行うことができるアレイコイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、夫々が被検体からの磁気共鳴信号を受信するように調整されたコイルユニットを複数備え、各コイルユニットが、可撓性を有し所定長の線状導体からなる第1のコイルエレメント及び第2のコイルエレメントと、前記第1のコイルエレメントと前記第2のコイルエレメントとの間に直列に挿入され、前記磁気共鳴信号を検出する信号検出部と、を備え、前記第1のコイルエレメント及び前記第2のコイルエレメントは、一端が前記信号検出部に接続されると共に他端が開放端であり、前記第1のコイルエレメント及び前記第2のコイルエレメントを湾曲させて前記第1のコイルエレメントの開放端側及び前記第2のコイルエレメントの開放端側の少なくとも一部の領域を互いに一定の間隔をあけて隣り合うように配置することにより、隣り合う領域を電磁気的に結合させて機能させるアレイコイルを提供する。
【0010】
また、本発明の他の態様は、静磁場を形成する静磁場形成部と、傾斜磁場を形成する傾斜磁場形成部と、前記静磁場に配置された検査対象にRF磁場を照射する送信RFコイルと、前記検査対象からの核磁気共鳴信号を検出する受信RFコイルと、前記受信RFコイルが検出した核磁気共鳴信号を処理する信号処理部と、を備え、前記受信RFコイルが、上述したアレイコイルである磁気共鳴撮像装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い柔軟性を有し、軽量でありながら容易に周波数調整を行うことができるアレイコイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るMRI装置の外観図であり、それぞれ(a)は水平磁場方式のMRI装置、(b)は、オープン型の垂直磁場方式のMRI装置の外観図である。
図2】MRI装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係るMRI装置における送信RFコイルと受信RFコイルの接続を説明するための説明図である。
図4】(a)は、送信RFコイルとして用いる鳥かご型RFコイルの構成を示す図であり、(b)は、送信RFコイルの送受間磁気結合防止回路の一例を示す図である。
図5】は、受信RFコイルとして用いるアレイコイルに適用されるコイルユニットの一実施形態を示す図である。
図6】(a)は図5のコイルユニットのコイルエレメントを延ばした状態を示す参考図であり、(b)は、(a)においえ信号検出部が信号を検出した際にコイルエレメントに生じる電圧分布を示すグラフであり、(c)は図5のコイルユニットにおけるコイルエレメントがキャパシタ成分として機能する場合の例を示す参考図であり、(d)は、(c)のコイルユニットの等価回路を示す。
図7図5のコイルユニットを複数設けてマルチチャンネル化したアレイコイルの一部を示す参考図である。
図8図5のコイルユニットにおいて、コイルエレメントの長さを変更した場合の参考図である。
図9】周波数調整用導体として導体シートを設けたコイルエレメントの参考図である。
図10】シミュレーションの際の被検体とコイルユニットとの配置位置関係を示す参考図である。
図11図5のコイルユニットの感度測定に係るシミュレーション結果を示し、(a)は、本実施形態に係るコイルユニットのコイル中心を通るXY平面の感度分布であり、(b)は従来のコイルユニットのコイル中心を通るXY平面の感度分布であり、(c)は(a)及び(b)のコイル中心を通るY方向ラインプロファイルである。
図12】本実施形態の変形例に係るコイルユニットを示す参考図である。
図13】(a)は、図12に示すコイルユニットの等価回路を示す参考図であり、(b)は従来のコイルユニットの等価回路を示す参考図である。
図14】従来のコイルユニットを示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係るRFコイル(アレイコイル)を適用するMRI装置について図面を参照して説明する。以下、各実施形態乃至実施例に係る図面おいて、同一の構成には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
<MRI装置の全体構成>
まず、本実施形態に係るRFコイルを適用可能なMRI装置について説明する。
図1は、MRI装置の一例に係る外観を示している。特に、図1(a)は、ソレノイドコイルによって静磁場を生成するトンネル型磁石110を用いた水平磁場方式のMRI装置100である。
【0015】
図1(b)は、開放感を高めるために磁石111を上下に分離したオープン型の垂直磁場方式のMRI装置101である。これらのMRI装置100、101は、検査対象(被写体)103を載置するテーブル102を備える。被写体103はテーブルに載置された状態で、磁石110、111によって均一な磁場(静磁場)が発生している検査空間に配置される。なお磁石110、111は、静磁場を形成する静磁場形成部を構成する。
【0016】
このようなMRI装置には、複数のコイルユニットを有する所謂多チャンネルRFコイルを適用することができ、本実施形態に係るRFコイルも上記した水平磁場方式のMRI装置100、垂直磁場方式のMRI装置101のいずれも適用可能である。
図1に示すMRI装置は一例であり、本発明は装置の形態やタイプを問わず、公知の各種のMRI装置を用いることができる。以下の説明において、水平磁場方式及び垂直磁場方式に共通する座標系として、静磁場方向をz方向、それに垂直な2方向を、それぞれx方向及びy方向とする座標系090を用いる。
【0017】
以下、本実施形態では水平磁場方式のMRI装置を適用した場合を例に、MRI装置100の概略構成を説明する。
図2に示すように、MRI装置100は、水平磁場方式のマグネット(静磁場磁石)110、傾斜磁場コイル131、送信RFコイル151、受信RFコイル161、傾斜磁場電源132、シムコイル121、シム電源122、RF磁場発生器152、受信器162、磁気結合防止回路駆動装置180、計算機(PC)170、シーケンサ140、及び表示装置171を備える。なお、102は、検査対象(被写体)103を載置するテーブルである。
【0018】
傾斜磁場コイル131は、傾斜磁場電源132に接続され、傾斜磁場を発生させる。傾斜磁場コイル131及び傾斜磁場電源132は、傾斜磁場を形成する傾斜磁場形成部を構成する。シムコイル121は、シム電源122に接続され、磁場の均一度を調整する。送信RFコイル151は、RF磁場発生器152に接続され、被写体103にRF磁場を照射(送信)する。
【0019】
受信RFコイル161は、受信器162に接続され、被写体103からの核磁気共鳴信号を受信する。ここで、本実施形態に係る受信RFコイル161として、複数のコイルユニットからなる多チャンネルRFコイル(以下、アレイコイルという)を適用している。以下の説明において、アレイコイルを構成するコイルユニットの数とチャンネル数は一致するとして取り扱う。受信RFコイル161としてのアレイコイルの詳細は、後述する。
【0020】
磁気結合防止回路駆動装置180は、磁気結合防止回路(後述)に接続される。なお、磁気結合防止回路は、送信RFコイル151及び受信RFコイル161にそれぞれ接続される、送信RFコイル151と受信RFコイル161との間の磁気結合を防止する回路である。
【0021】
シーケンサ140は、傾斜磁場電源132、RF磁場発生器152、磁気結合防止回路駆動装置180に命令を送り、それぞれ動作させる。命令は、計算機(PC)170からの指示に従って送出する。また、計算機(PC)170からの指示に従って、受信器162で検波の基準とする磁気共鳴周波数をセットする。例えば、シーケンサ140からの命令に従って、RF磁場が、送信RFコイル151を通じて被写体103に照射される。RF磁場を照射することにより被写体103から発生する核磁気共鳴信号は、受信RFコイル161によって検出され、受信器162で検波が行われる。
【0022】
計算機(PC)170は、MRI装置100全体の動作の制御、各種の信号処理を行う。例えば、受信器162で検波された信号をA/D変換回路を介して受信し、画像再構成などの信号処理(画像再構成部の機能)を行う。その結果は、表示装置171に表示される。検波された信号や測定条件は、必要に応じて、記憶媒体に保存される。また、予めプログラムされたタイミング、強度で各装置が動作するようシーケンサ140に命令を送出させる。さらに、静磁場均一度を調整する必要があるときは、シーケンサ140により、シム電源122に命令を送り、シムコイル121に磁場均一度を調整させる。
【0023】
<送信RFコイル及び受信RFコイルの概要>
上述したようにMRI装置には、送信RFコイル151と受信RFコイル161の2種類のRFコイルが用いられる。送信RFコイル151と受信RFコイル161は、一つのRFコイルが両方を兼ねることもできるし、それぞれ別個のRFコイルを用いることもできる。
【0024】
以下、送信RFコイル151と受信RFコイル161とが別個のRFコイルであり、送信RFコイル151が鳥かご型形状を有するRFコイル(鳥かご型RFコイル)、受信RFコイル161が複数のRFコイルからなるマルチチャネルアレイコイルである場合を例に、RFコイルの詳細を説明する。
【0025】
まず、送信RFコイル151として用いる鳥かご型RFコイル300及び受信RFコイル161として用いるアレイコイル400の配置と、鳥かご型RFコイル300、アレイコイル400、RF磁場発生器152、受信器162、及び、磁気結合防止回路駆動装置180の接続態様とを、図3を用いて説明する。
【0026】
図3に示すように、鳥かご型RFコイル300は、外観が略円柱状(楕円柱や多角形柱を含む)の形状を有し、略円柱の軸が、磁石110の中心軸(Z方向の軸)と同軸となるよう配置される。被写体103は、鳥かご型RFコイル300の内側に配置される。そして、アレイコイル400は、鳥かご型RFコイル300内に、被写体103に近接して配置される。また、上述のように、鳥かご型RFコイル300は、RF磁場発生器152に接続される。アレイコイル400は、受信器162に接続される。
【0027】
さらに、鳥かご型RFコイル300には、アレイコイル400との磁気結合を防止する磁気結合防止回路210が備えられ、アレイコイル400には、鳥かご型RFコイル300との磁気結合を防止する磁気結合防止回路220が備えられる。これらを送受間磁気結合防止回路と呼ぶ。送受間磁気結合防止回路により、上述するような配置において、互いに磁気結合することなく、RF磁場の送信と核磁気共鳴信号の受信とが可能となる。
【0028】
[送信RFコイル]
次に、本実施形態の送信RFコイル151として用いる鳥かご型RFコイル300について図4を用いて説明する。
本実施形態の鳥かご型RFコイル300は、励起対象元素の共鳴周波数(磁気共鳴周波数)が共振周波数となるよう調整され、当該磁気共鳴周波数のRF磁場を照射する。本実施形態では、水素原子核の励起が可能な、水素原子核の磁気共鳴周波数f0に調整される。以後、照射するRF磁場の磁気共鳴周波数をf0とする。
【0029】
図4(a)は、本実施形態の鳥かご型RFコイル300の構成を説明するためのブロック図である。本図に示すように、本実施形態の鳥かご型RFコイル300は、複数の直線導体301と、各直線導体301の端部を接続する端部導体302と、端部導体302に挿入されるキャパシタ303と、を備える。
【0030】
また、鳥かご型RFコイル300は、二つの入力ポート311、312を備える。第一の入力ポート311と第二の入力ポート312とには、位相が90度異なった送信信号が入力され、効率よく被写体103にRF磁場が加えられるよう構成される。
さらに、本実施形態の鳥かご型RFコイル300では、受信RFコイル161(アレイコイル400)との間の磁気結合を防止する送受間磁気結合防止回路210が、鳥かご型RFコイル300の直線導体301に直列に挿入される。
【0031】
送受間磁気結合防止回路210は、例えば、図4(b)に示すように、直線導体301に直列に挿入されたPINダイオード211で構成することができ、その両端に、制御用信号線212が接続される。制御用信号線212は磁気結合防止回路駆動装置180に接続される。制御用信号線212には、高周波の混入を避けるためチョークコイル(不図示)が挿入されることが望ましい。
【0032】
PINダイオード211は、通常は高抵抗(オフ)を示し、PINダイオード211の順方向に流れる直流電流の値が一定値以上となると概ね導通状態(オン)となる特性を持つ。本実施形態ではこの特性を利用し、磁気結合防止回路駆動装置180から出力される直流電流によりPINダイオード211のオン/オフを制御する。すなわち、高周波信号送信時には、制御用信号線212を介して、PINダイオード211を導通状態とする制御電流を流し、鳥かご型RFコイル300を送信RFコイル151として機能させる。また、核磁気共鳴信号受信時には、制御電流を停止し、鳥かご型RFコイル300を高インピーダンス化し、開放状態とする。
【0033】
このように、本実施形態では、磁気結合防止回路駆動装置180からの直流電流(制御電流)を制御することにより、高周波信号送信時には鳥かご型RFコイル300を送信RFコイル151として機能させ、核磁気共鳴信号受信時には、開放状態として受信RFコイル161であるアレイコイル400との磁気結合を除去する。
【0034】
[受信RFコイル]
次に、本実施形態の受信RFコイル161について、図5及び図6を用いて説明する。
図5は、受信RFコイル161としてのアレイコイルを構成する一つのコイルユニットを示す。コイルユニット500は、可撓性を有する線状導体からなる第1のコイルエレメント501A及び第2のコイルエレメント501Bと、第1のコイルエレメント501A及び第2のコイルエレメント501Bの間に挿入された磁気共鳴信号を検出する信号検出部502と、を備えている。
【0035】
第1のコイルエレメント501Aは、一端が信号検出部502に接続され、他端が開放端となっている。同様に、第2のコイルエレメント501Bも一端が信号検出部502に接続され、他端が開放端となっている。第1のコイルエレメント501Aの開放端及び第2のコイルエレメント501Bの開放端は、夫々絶縁されている。また第1のコイルエレメント501Aと第2のコイルエレメント501Bの長さの和は磁気共鳴周波数の波長の2/1以下となっている。
【0036】
コイルユニット500は、第1のコイルエレメント501A及び第2のコイルエレメント501B(以下、第1のコイルエレメント501A及び第2のコイルエレメント501Bの双方を指し示す場合に、「コイルエレメント501」という)と信号検出部502とにより、リング形状を有したダイポールアンテナを構成している。
アレイコイルを構成する各コイルユニット500は核磁気共鳴信号の受信が可能となるよう調整され、それぞれが1つのチャンネルとして機能する。各コイルユニットが受信した信号は、それぞれ、受信器162に送られる。
【0037】
図5に示す例において、第1のコイルエレメント501A及び第2のコイルエレメント501Bがほぼ同じ長さを有しており、信号検出部502はコイルエレメント501の略中央部に位置する。第1のコイルエレメント501Aの開放端側の領域及び第2のコイルエレメントの開放端側の領域は、互いに信号検出部502の近傍まで湾曲されてリング形状を成し、第1のコイルエレメント501Aと第2のコイルエレメント501Bとは、信号検出部502以外の領域において互いに隣り合うように配置されている。コイルエレメント501では、この隣り合う領域が電磁気的に接合して機能する。
【0038】
コイルエレメント501としては、例えば、導線を絶縁体で被覆したケーブル等を適用することができる。この場合、コイルエレメント501の隣り合う領域において、互いの絶縁体同士が接触するように重ねて配置することもできる。この他、コイルエレメント501をその両開放端が一定の距離を持って隣り合うように湾曲させて配置することもできる。
【0039】
続いて、このように構成されたコイルユニット500によって、磁気共鳴周波数で共振し、磁気共鳴信号の受信の原理について説明する。
なお、ここでは相反定理より、コイルユニット500の感度は,コイルユニット500に単位電力のRF信号を印加した場合に発生する磁場強度と等価であることを用い、コイルユニット500の信号検出部502にRF信号を印加した場合の動作により本コイルユニット500の動作原理を説明する。
【0040】
図6(a)は、コイルユニット500において、リング形状に湾曲したコイルエレメント501を延ばした状態を示している。つまり、コイルユニット500は、信号検出部502を挟んで一端に第1のコイルエレメント501と他端に第2のコイルエレメント50Bが設けられ、信号検出部502を中心として左右対称にコイルエレメント501が延びるダイポールアンテナとなっている。第1のコイルエレメント501Aの開放端をPortA(図6(a)の右側)、第2のコイルエレメント501Bの開放端をPortB(図6(a)の左側)とする。
【0041】
コイルユニット500において、信号検出部502にRF信号を印可すると、コイルエレメント501には、図6(b)に示すような電圧分布と電流分布が生じる。具体的には、第1のコイルエレメント501Aの開放端と第2のコイルエレメントの開放端には電流が流れないため高い電圧がかかり、一端にはプラスの電圧を生じ、他端にはマイナスの電圧を生じる。図6(a)の例では、PortBがプラス、PortAがマイナスとなっている。各開放端において最も高い電圧が生じ、各開放端から信号検出部502に近づくほど電圧が低くなるような分布となっている。一方、第1のコイルエレメント501Aと第2のコイルエレメント501Bとには同じ向きの電流が流れている。
【0042】
このため、リング形状に湾曲させたコイルエレメント501においては、コイルエレメント501の互いに隣り合うように配置された領域間に電位差、すなわち、線間容量が生じ、これがキャパシタ成分(Cc1)として機能する。同時に第1のコイルエレメント501Aと第2のコイルエレメント501Bに流れた電流はそれぞれ磁場Φ1、Φ2を生じ、これが同調して磁気的にも結合する。本実施形態では線間容量が支配的な値となるため、実質的に図6(c)のような回路となる。その結果、本実施形態のコイルユニットは図6(d)に示すような等価回路で表すことができる。なお、線間容量は、第1のコイルエレメント501Aと第2のコイルエレメント501Bの配置位置によって調整することができる。
【0043】
コイルエレメント501は、図6(d)に示すように、インダクタンス成分を持つ導体部分と、それに挿入されるキャパシタとして機能し、LC共振回路を構成することができる。これにより、コイルユニット500が磁気共鳴周波数と同じ周波数で共振することで磁気共鳴信号の取得が可能となる。
【0044】
図5に戻り、信号検出部502は、コイルエレメント501が受信した被検体からの磁気共鳴信号を検出するために、信号検出回路503と磁気結合防止回路504とを備えている。信号検出回路503は、第1のキャパシタCmと、第1のインダクタLmと、信号増幅器505とを備え、第1のインダクタLmと信号増幅器505とが直列に接続され、第1のインダクタLm及び信号増幅器505と第1のキャパシタCmとは互いに並列に接続されている。また、第1のキャパシタCmは、コイルエレメント501に直列に接続されている。
【0045】
また、信号検出回路503における第1のキャパシタCmと第1のインダクタLmと信号増幅器505からなる並列共振回路は、受信RFコイル161の共振周波数に合致させるように調整することでコイルユニット間の磁気結合を防止する磁気結合防止回路を形成する。
【0046】
磁気結合防止回路504は、第2のキャパシタCd、第2のインダクタLd、及びスイッチとしてのダイオードDを備えている。磁気結合防止回路504において、第2のインダクタLdとダイオードDとが直列に接続され、第2のインダクタLd及びダイオードDに対して第2のキャパシタCdが並列に接続されている。また、第2のキャパシタCdは、コイルエレメント501に直列に接続されている。
【0047】
ダイオードDは、磁気結合防止回路駆動装置180に接続され、第2のインダクタLdとダイオードDとからなる並列共振回路は、ダイオードDがONの時にコイルユニットの共振周波数と合致させるように調整することで、送信RFコイル151と受信RFコイル161との間の磁気結合を防止する。磁気結合防止回路504が動作していない時は、当該コイルユニット500が受信コイルとして動作する。
【0048】
信号増幅器505から見た回路が、MRI装置の磁気共鳴周波数で共振するように調整され、磁気共鳴信号を受信するように調整される。信号検出部502は、信号増幅器505が接続された場合にノイズが最小となるような入力インピーダンスに調整される。
なお、アレイコイルにおいて、多チャンネル化して複数のコイルユニットを設ける際には、互いに磁気結合しないようにコイルエレメント501の一部が重なるように配置する(図7参照)。
【0049】
続いて、このように構成されたコイルユニット500における、各回路素子の調整手順について説明する。
以下の説明においては、一例として、コイルユニット500が静磁場強度3T(テスラ)における水素の原子核の磁気共鳴周波数128MHz(f0=128MHz)で共振するように調整していることとする。また、第1のコイルエレメント501A及び第2のコイルエレメント501Bは、直径1mm、第1のコイルエレメント501A及び第2のコイルエレメント501Bの合計長さ35cmの線状導線であり、第1のコイルエレメント501Aと第2のコイルエレメント501Bの間の中心位置に信号検出部502が挿入されていることとする。
【0050】
コイルユニット500において、第1のコイルエレメント501Aの開放端側の領域及び第2のコイルエレメント501Bの開放端側の領域は一部の領域が隣り合うように配置され、円形のリング形状に湾曲され、その直径を11cmとする。具体的にはコイルエレメント501がほぼ2ターンのループを成すように配置されている。コイルエレメント同士が隣り合う領域間のギャップは2mmとする。
【0051】
このようなコイルユニット500において、信号増幅器505から見たコイルユニット500の共振周波数が磁気共鳴信号と同調する128MHzに調整すると共に、ノイズを最小化させるためにコイルユニット500の入力インピーダンスが50Ωになる様に調整する。
【0052】
具体的には、第2のキャパシタCdの値を調整して共振周波数を128MHzに調整する。併せて、第1のキャパシタCmの値を調整してコイルの入力インピーダンスを50Ωに調整する。ここで、一般的に、第1のキャパシタCmの値を下げるとインピーダンスが高くなり、第1のキャパシタCmの値を上げるとインピーダンスが低くなる。そこで、第2のキャパシタCdと第1のキャパシタCmの値について調整を交互に繰り返して最終的に共振周波数が128MHzに、インピーダンスが50Ωになる様に調整する。
【0053】
続いて、第2のキャパシタCdの値に合わせて、磁気結合防止回路504の駆動時にコイルユニット500が開放になる様に第2のインダクタLdを調整する。さらに、第1のキャパシタCmの値に合わせて、プリアンプを使用した磁気結合防止回路の第1のインダクタLmを調整する。
【0054】
本実施形態に係るコイルユニット500、つまり、直径1mm、長さ35cmの線状導線からなる第1のコイルエレメント501A及び第2のコイルエレメント501Bを湾曲させ、直径11cm、コイルエレメント同士が隣り合う領域のギャップは2mmのリング形状のコイルユニット500においては、第1のキャパシタCmの値は180pF、第2のキャパシタCdの値は18pFである。
【0055】
このように調整することにより、本実施形態に係るコイルユニット500が磁気共鳴信号を受信可能とすることができる。また、送信コイルとも磁気結合せず、受信コイル同士の磁気結合も生じない。
【0056】
なお、上述のように、本実施形態に係るコイルユニット500において、共振周波数の調整は第2のキャパシタCdの値を調整して行ったがこれに限定されない。この他の調整手法として、例えば、第1のコイルエレメント501Aと第2のコイルエレメント501Bとが隣接している領域間のギャップを変更して共振周波数を変更しても良い。
【0057】
また、図8に示すように、コイルエレメント501の長さを短くして隣り合う領域を減少させることにより共振周波数を変更しても良い。このような調整手法を用いることで、任意のサイズのコイルユニットを作成することが可能になる。
【0058】
また、図9に示すように、周波数調整用導体として導体シート600を適用して共振周波数を調整することもできる。図9に示すように、コイルユニット500に、コイルエレメント501に接しないように導体シート600を巻き付けて配置する。これにより、コイルユニット500のコイルエレメント間に生じているキャパシタCc1に加え、PortB側と導体シート600間に生じるキャパシタ成分Cc2とPortA端側と導体シート600間に生じるキャパシタ成分Cc3とにより、キャパシタの合成容量が変化するため、共振周波数を変化させることができる。
【0059】
さらに、コイルエレメント501は位置によって電圧が異なるため、導体シートを設ける位置によってキャパシタ成分Cc2及びキャパシタ成分Cc3各容量は変化し得る。従って、コイルユニット500に設ける導体シート600の位置を適宜変更することによってキャパシタの合成容量を変えることができる。つまり、導体シートをコイルエレメント501上でスライドさせることにより周波数を調整することができる。
【0060】
また、導体シート600とコイルエレメント501との距離を変えることによっても、キャパシタの合成容量を変化させることができ、延いては共振周波数を調整することができる。
このように、導体シート600をコイルエレメント上に移動可能に配置することで、可逆的に再現良く共振周波数を調整することができるため、コイルユニットの作製が容易になる。
【0061】
続いて、本実施形態に係るコイルユニット500と図14に示す従来のコイルユニットとの感度比較を行ったシミュレーション結果について説明する。
図10に示すように、被写体103の上部にコイルユニット500を配置して感度を測定する。
比較対象である、従来のコイルユニット(図14参照)において、コイルエレメントの重量は本実施形態に係るコイルユニット500と同様の重さになるように直径1.4mmの導線を適用した。
【0062】
図10に示すように、被写体103の上部にコイルユニット500を配置して感度を測定し、測定した結果である感度分布を図11に示す。図11(a)は本実施形態に係るコイルユニットのコイル中心を通るXY平面の感度分布であり、図11(b)は従来のコイルユニットのコイル中心を通るXY平面の感度分布である。図11(c)は、図11(a)及び図11(b)のコイル中心を通るY方向ラインプロファイルであり、実線が本実施形態に係るコイルユニットの感度分布プロファイルを示し、破線が従来のコイルユニット感度分布プロファイルを示す。
【0063】
図11に示すシミュレーション結果から、本実施形態に係るコイルユニットが従来のコイルユニットよりも優れた感度を有していることがわかる。これは、二つのコイルエレメント501A,502Bが電磁気的に効率よく結合し損失が低下したためである。
【0064】
このように、本実施形態に係るコイルユニットによれば、図14に示す従来のコイルユニットに比して、キャパシタをコイルエレメントに挿入していないことから、回路保護のためのハードカバーを設ける必要がなく、ハードカバーによって重量化したり、コイルエレメントの柔軟性が損なわれたりすることはない。
【0065】
従って、従来のコイルユニットより軽量化することができると共に、柔軟性も向上する。また、シミュレーション結果からもわかるように、本実施形態に係るコイルエレメントは、従来のコイルユニットに比して、同等またはそれ以上の感度で精度よく磁気共鳴信号を受信することができる。
【0066】
特に、例えば、コイルエレメント501に導線を絶縁体で被覆したケーブル等を適用した場合は、隣り合うコイルエレメント同士の距離が常に一定に保持されるため、共振周波数の変動が小さくなり安定して磁気共鳴信号を受信することができる。この際のケーブル内の導線は、必ずしも1本の導線である必要はなく、複数本の導線を撚った撚り線であってもよく、この場合にはコイルの柔軟性が向上する。また絶縁体を選択することで線間容量や、その損失を最適化できる。例えば、フッ素を絶縁体とすれば低損失の線間容量を形成することができる。
【0067】
また、コイルエレメントとして2芯ケーブルを用いることもできる。2芯ケーブルの二つの芯のうち、2芯ケーブルの一端において一方の芯を信号検出部に接続すると共に、2芯ケーブルの他端において他方の芯を信号検出部に接続する。これにより2芯ケーブルを適用しながら、上述した本実施形態に係るコイルユニットと同様の回路構成を得ることができる。このように2芯ケーブルを適用した場合には、コイルエレメントを隣接させる工程が不要になり、コイル作製の再現性が向上し、コイルユニットの作製が容易となる。
【0068】
上述してきた実施形態等においては、コイルエレメントに導線を適用することを主として説明したが、必ずしも線状の導線でなくてもよく、また導線の断面が略円形である必要もない。例えば、シート乃至はリボン形状の導体あってもよく、コイルエレメントとして適用する導体の太さ、径、幅等を適宜選択することによってコイルエレメント間に生じる線間容量を調整することができ、延いては共振周波数を調整することができる。
【0069】
また、第1のコイルエレメント501Aと第2のコイルエレメント501Bの長さは等しいとして説明したが、必ずしも等しくなくてもよく、リング形状のエレメントの信号検出部502以外の領域でエレメントの野一部領域が隣接していればよい。
【0070】
さらに、コイルユニットは、図5等に示すようなほぼ円形のリンク形状に限られない。コイルエレメントの一部をキャパシタとして機能させるように、コイルエレメントの開放端同士に隣り合う領域を形成するように湾曲又は屈曲させることにより、例えば、矩形状、8の字形状のバタフライコイル等目的に応じたコイル形状を選択することができる。
【0071】
なお、本実施形態に係るコイルユニットは、本実施形態に係るコイルユニットを複数備えたアレイコイルを形成することができる他、例えば、図14の従来のコイルユニットと組み合わせたアレイコイルを構成することもできる。様々なコイルを組み合わせることで、被写体に応じた最適なアレイコイルを構成するようにコイルユニットを適用することができる。
【0072】
(変形例)
以下、上述した実施形態の変形例について図12を用いて説明する。
上述した実施形態では、コイルユニット500は、同じ長さを有する第1のコイルエレメント501Aと第2のコイルエレメント501Bとの間に信号検出部502を挿入し、第1のコイルエレメント501A及び第2のコイルエレメント501Bの開放端側を夫々湾曲させて信号検出部502以外の領域において互いに隣り合うようなリング形状としている。つまり、信号検出部502が、コイルエレメント501の中心に位置している。
【0073】
これに対し、本変形例は、互いに長さの異なる第1のコイルエレメント501Aと第2のコイルエレメント501Bとの間に信号検出部502を挿入し、第1のコイルエレメント501A及び第2のコイルエレメント501Bの開放端側を夫々湾曲させることにより、第1のコイルエレメント501A又は第2のコイルエレメント502Bの一部領域が信号検出部502と隣り合うようなリング形状とする。
【0074】
より具体的には、図12に示す例では、コイルユニットについて、第2のコイルエレメント501Bとして第1のコイルエレメント501Aよりも短いものを適用する。そして、第1のコイルエレメント501A及び第2のコイルエレメント501Bの開放端側を夫々湾曲させ、第1のコイルエレメント501Aの一部領域が信号検出部502と隣り合い、第1のコイルエレメント501Aの開放端と第2のコイルエレメント501Bの開放端とが対峙するように配置したリング形状とする。コイルエレメント同士が隣り合う領域には、上述した実施形態と同様に線間容量および磁場が生じ、結果的にキャパシタCc1が支配的に機能する。
【0075】
本変形例では、信号検出部502とコイルエレメントとが隣り合って配置されるため、キャパシタ成分が、信号検出部502を挟んで二つのキャパシタに分割される。これを、図12において、キャパシタCc11及びキャパシタCc12として示す。図12の等価回路を図13(a)に示す。比較として、図13(b)に図14の従来のコイルユニットの等価回路を示す。なお、図13の等価回路では、説明の便宜上、信号検出部502は、信号検出回路の第1のキャパシタCmのみを示し、その他の回路部品は図示を省略している。
【0076】
ここで、コイルユニットにおける磁気結合防止回路について説明する。
上述した実施形態に係るコイルユニット500(図5)及び従来のコイルユニット(図14)では、信号検出部502に受信コイルの磁気結合防止回路が含まれている。
【0077】
具体的には、図5に示すコイルユニット500において、第1のキャパシタCmと第1のインダクタLmと信号増幅器505とからなる並列共振回路は、コイルユニットと同じ周波数で共振するように調整されているためコイルエレメントから見ると第1のキャパシタCmは高インピーダンスとなっており、磁気結合防止回路として動作する。
【0078】
よって磁気結合が生じ、他のコイルユニットのコイルエレメントに磁気結合電流が生成されても、生成した電流は磁気結合防止回路としての第1のキャパシタCmと第1のインダクタLmと信号増幅器505とからなる並列共振回路により、第1のキャパシタCmの両端が高インピーダンスになっているため、電流が流れることができず磁気結合が生じない。
簡略的にこの磁気結合防止回路のインピーダンス(Zblock)は次式で表される。
【0079】
【数1】
【0080】
ここで、fは周波数、Zampは信号増幅器の入力インピーダンスの大きさである。
よって磁気結合防止回路の性能を高めるにはZampの値を小さくすることとCmの値を小さくすることによって実現される。
【0081】
図13(a)から判るように、本変形例に係るコイルエレメントの等価回路は、図13(b)に示す従来のコイルユニットの等価回路と異なり、信号増幅器505が接続される第1のキャパシタCmの両端から見た時のコイルユニットのインピーダンス周波数特性も異なる。
【0082】
第1のキャパシタCmとして同一のキャパシタを適用すると仮定した場合、図13(a)の回路では、Cc12の割合を大きくすることでコイルユニットの入力インピーダンスが下がる特性を有する。したがって、本変形例のようにコイルエレメントの一部の領域が隣り合って配置されている位置の中心部に信号検出部502を挿入した場合、コイルユニットの入力インピーダンスは低くなる。
【0083】
よって共にコイルユニットの入力インピーダンスを50Ωに調整する場合、本変形例に係るコイルユニットの入力インピーダンスを調整する第1のキャパシタCmの値を調整する必要がある。本構成においてはCmの値を小さくするとコイルユニットの入力インピーダンスが高くなる。よって、Cmの値を小さくする必要がある。その結果、従来のコイルユニットにおけるキャパシタの値Cmより低い値となる。
上記した(1)式から、低い容量の第1のキャパシタCmは高い磁気結合を提供することができるため、本変形例のコイルユニットは高い磁気結合防止性能を有する。
【0084】
このように本変形例によれば、コイルエレメントの一部領域と信号検出部502とを隣り合わせるように配置することにより、給電回路周辺の回路が変わるため第1のキャパシタCmの値が小さくなり、結果磁気結合防止性能が向上する。これにより、他のコイルユニットとの磁気結合が低減され、画像のSNRが上がる。また、磁気結合に耐性のあるコイルユニットとしたことにより、コイルユニットが変形した場合でもコイルユニットの性能が低下しにくくなる。
【符号の説明】
【0085】
090・・・座標系、100・・・MRI装置、101・・・MRI装置、102・・・テーブル、103・・・検査対象、110・・・磁石、111・・・磁石、121・・・シムコイル、122・・・シム電源、131・・・傾斜磁場コイル、132・・・傾斜磁場電源、140・・・シーケンサ、151・・・送信RFコイル、152・・・RF磁場発生器、161・・・受信RFコイル、162・・・受信器、170・・・計算機、171・・・表示装置、180・・・磁気結合防止回路駆動装置、210・・・送受間磁気結合防止回路、211・・・PINダイオード、212・・・制御用信号線、220・・・送受間磁気結合防止回路、221・・・PINダイオード、221・・・クロスダイオード、222・・・インダクタ、223・・・制御用信号線、300・・・鳥かご型RFコイル、301・・・直線導体、302・・・端部導体、303・・・キャパシタ、311・・・入力ポート、312・・・入力ポート、500・・・コイルユニット、501・・・コイルエレメント、501A・・・第1のコイルエレメント、501B・・・第2のコイルエレメント、502・・・信号検出部、503・・・信号増幅器、504・・・磁気結合防止回路、600・・・導体シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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