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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ファンド抽出装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/06 20120101AFI20220621BHJP
【FI】
G06Q40/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018153190
(22)【出願日】2018-08-16
(65)【公開番号】P2020027543
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100080953
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 克郎
(72)【発明者】
【氏名】前山 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】小室 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】神井 隆
(72)【発明者】
【氏名】小原沢 則之
【審査官】竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0130134(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0052079(US,A1)
【文献】隠れパッシブファンドを選ばない! 海外事例から見るアクティブファンド選別法,東証マネ部,日本,日本取引所グループ,2017年09月14日,[online],<URL:https://money-bu-jpx.com/news/article004729/>[検索日:2022年5月13日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のファンドそれぞれについて、複数のベンチマーク毎に、前記複数のファンドの構成が、前記複数のベンチマークの構成からどの程度乖離しているかを表す乖離度を算出する算出部と、
前記複数のベンチマークそれぞれについて算出された前記乖離度のうち少なくとも最小値に基づいて、前記複数のファンドそれぞれについて、どの程度アクティブに運用されているかを表すアクティブ度を判定する判定部と、
前記判定部により判定された前記アクティブ度に基づいて、前記複数のファンドから、前記複数のファンドの中で相対的にアクティブに運用されていると判定される1又は複数のファンドを抽出する抽出部と、
を備えるファンド抽出装置。
【請求項2】
公開されているファンドの中から、アクティブ運用に関する所定の条件を満たすファンドを、前記複数のファンドとして選択する選択部をさらに備える、
請求項1に記載のファンド抽出装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記複数のファンドのうち一つのファンドを構成する構成銘柄の割合と、前記複数のベンチマークのうち一つのベンチマークを構成する構成銘柄の割合との差に基づいて、前記一つのベンチマークに関する前記一つのファンドの前記乖離度を算出する、
請求項1又は2に記載のファンド抽出装置。
【請求項4】
前記複数のベンチマークは、複数の異なる特性に分類され、
前記算出部により算出された前記乖離度のうち最小値を与えるベンチマークの特性に基づいて、前記抽出部により抽出された前記1又は複数のファンドを、前記複数の異なる特性に分類する分類部をさらに備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載のファンド抽出装置。
【請求項5】
前記抽出部により抽出された前記1又は複数のファンドの構成に基づいて、アクティブ運用のインデックスを算出するインデックス算出部をさらに備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載のファンド抽出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンド抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、株式や債券等に投資するファンドについて、ファンドマネージャーの意思決定に基づいて構成銘柄及びその割合を決定するアクティブ運用や、特定のベンチマークに連動するように構成銘柄及びその割合を決定するパッシブ運用が行われている。
【0003】
投資ファンドの運用成績は、多角的に評価されている。例えば、下記特許文献1には、複数の評価項目に基づいて複数のファンドの相対評価を行うファンド評価システムであって、複数の評価項目の評価値である項目評価値をファンド識別情報に対応付けて格納するファンド評価格納部と、ファンド識別情報を当該ファンドが属する分類に対応付ける分類テーブルと、同一の分類に属する複数のファンドを一の母集団として、各々偏差値に変換する偏差値算出部とを備えるファンド評価システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-366740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
投資ファンドは、その特性に応じて分類されることがある。例えば、いわゆるバリュー運用という特性を有するファンドが知られている。そのようなファンドが、確かにバリュー運用という特性を有しているか否かは、ファンドの構成銘柄のPBR(Price Book-value Ratio、株価純資産倍率)等に基づいて検証することができる。
【0006】
しかしながら、アクティブ運用を行っているとされるファンドの中には、パッシブ運用に近いものが含まれていることがあり、運用の実体が様々に異なっている。そのため、アクティブ運用を行っているとされるファンドであっても、実体が伴うものであるかが必ずしも明らかでなかった。
【0007】
そこで、本発明は、アクティブ運用を行っている代表的なファンドを抽出することができるファンド抽出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るファンド抽出装置は、複数のファンドそれぞれについて、複数のベンチマーク毎に、複数のファンドの構成が、複数のベンチマークの構成からどの程度乖離しているかを表す乖離度を算出する算出部と、複数のベンチマークそれぞれについて算出された乖離度のうち少なくとも最小値に基づいて、複数のファンドそれぞれについて、どの程度アクティブに運用されているかを表すアクティブ度を判定する判定部と、判定部により判定されたアクティブ度に基づいて、複数のファンドから、複数のファンドの中で相対的にアクティブに運用されていると判定される1又は複数のファンドを抽出する抽出部と、を備える。
【0009】
この態様によれば、複数のベンチマークそれぞれについて算出された乖離度のうち少なくとも最小値に基づいてアクティブ度を判定することで、複数のベンチマークのうちファンドとの乖離が最も小さいベンチマークを基準として、そのファンドがどの程度アクティブに運用されているかを判定することができる。そのため、アクティブ運用の実体が必ずしも明らかでない場合であっても、アクティブ運用を行っている代表的なファンドを抽出することができる。
【0010】
また、上記態様において、公開されているファンドの中から、アクティブ運用に関する所定の条件を満たすファンドを、複数のファンドとして選択する選択部をさらに備えてもよい。
【0011】
この態様によれば、アクティブ運用を行っているとされる複数のファンドを選択して、その中から相対的にアクティブに運用されていると判定される代表的なファンドを抽出することができる。
【0012】
また、上記態様において、算出部は、複数のファンドのうち一つのファンドを構成する構成銘柄の割合と、複数のベンチマークのうち一つのベンチマークを構成する構成銘柄の割合との差に基づいて、一つのベンチマークに関する一つのファンドの乖離度を算出してもよい。
【0013】
この態様によれば、ファンドとベンチマークの構成銘柄の差のみならず、構成銘柄の割合の差に基づいて乖離度を算出することで、ファンドとベンチマークの乖離をより精度よく計量することができ、どの程度アクティブに運用されているかを表すアクティブ度をより精度良く判定することができる。
【0014】
また、上記態様において、複数のベンチマークは、複数の異なる特性に分類され、算出部により算出された乖離度のうち最小値を与えるベンチマークの特性に基づいて、抽出部により抽出された1又は複数のファンドを、複数の異なる特性に分類する分類部をさらに備えてもよい。
【0015】
この態様によれば、抽出されたファンドについて、アクティブに運用されているという特性だけでなく、複数の異なる特性を明らかにすることができ、複数の異なる特性毎にアクティブ運用を行っている代表的なファンドを抽出することができる。
【0016】
また、上記態様において、抽出部により抽出された1又は複数のファンドの構成に基づいて、アクティブ運用のインデックスを算出するインデックス算出部をさらに備えてもよい。
【0017】
この態様によれば、アクティブ運用のインデックスを算出することで、アクティブ運用を行っているとされる複数のファンドの成績を評価する基準とすることができる。また、算出したアクティブ運用のインデックスに連動するようにインデックスファンドを組成することで、比較的低報酬でアクティブ運用を行うファンドを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アクティブ運用を行っている代表的なファンドを抽出することができるファンド抽出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るファンド抽出装置の機能ブロックを示す図である。
図2】本実施形態に係るファンド抽出装置の物理的構成を示す図である。
図3】本実施形態に係るファンド抽出装置により抽出されるファンドの概要を示す図である。
図4】本実施形態に係るファンド抽出装置により実行される処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るファンド抽出装置10の機能ブロックを示す図である。ファンド抽出装置10は、選択部11、補正部12、算出部13、判定部14、抽出部15、分類部16、インデックス算出部17及び評価部18を備える。
【0022】
選択部11は、公開されているファンドの中から、アクティブ運用に関する所定の条件を満たすファンドを、算出部13による処理対象となる複数のファンドとして選択する。本例の場合、公開されているファンドは、ファンド抽出装置10と別体のファンドデータベースDB1に記憶されており、選択部11は、ファンドデータベースDB1からアクティブ運用に関する所定の条件を満たすファンドを選択する。もっとも、公開されているファンドに関する情報は、ファンド抽出装置10の記憶部に記憶されていてもよい。
【0023】
アクティブ運用に関する所定の条件は、アクティブ運用されているファンドを検索するための任意の条件であってよい。例えば、国内株式を保有するファンドの中からアクティブ運用されているファンドを選択する場合、アクティブ運用に関する所定の条件は、国内株式を保有するファンドから、ETF(Exchange Traded Funds)、インデックスファンド、確定拠出年金専用ファンド、SMA(Separately Managed Account)専用ファンド、業種特化ファンド、企業グループ特化ファンド及び直近決算日の保有有価証券明細データが存在しないファンド等を除外するという条件であってよい。
【0024】
アクティブ運用を行っているとされる複数のファンドを選択することで、その中から相対的にアクティブに運用されていると判定される代表的なファンドを抽出することができる。
【0025】
補正部12は、選択部11により選択されたファンドについて、株式分割や合併を考慮してファンドの構成銘柄及びその割合を補正する。ファンドがファミリーファンド方式の場合、補正部12は、マザーファンドの構成銘柄及びその割合に関する情報を、ベビーファンドの構成銘柄及びその割合として、ベビーファンドを算出部13による処理対象とする。また、補正部12は、ファンドの構成銘柄の評価額が決算日における額である場合、ファンドの決算日以後の株価変化率及び資本移動に関する情報に基づいて、直近の月末の評価額に補正する。
【0026】
算出部13は、選択部11により選択された複数のファンドそれぞれについて、複数のベンチマーク毎に、複数のファンドの構成が、複数のベンチマークの構成からどの程度乖離しているかを表す乖離度を算出する。本例の場合、複数のベンチマークは、ベンチマークデータベースDB2に記憶されている。具体的には、ベンチマークデータベースDB2には、「Value」と示されたバリュー運用のベンチマークB1と、「Growth」と示されたグロース運用のベンチマークB2と、「Non-Style Market」と示された市場ベンチマークB3と、「Non-Style Large」と示された大型株ベンチマークB4と、「Non-Style Small」と示された小型株ベンチマークB5と、が記憶されている。なお、これらのベンチマークは例示であり、ベンチマークデータベースDB2にはこれら以外のベンチマークが記憶されていてもよいし、これらのベンチマークのうち一部が記憶されていなくてもよい。また、ベンチマークに関する情報は、ファンド抽出装置10の記憶部に記憶されていてもよい。
【0027】
算出部13は、複数のファンドのうち一つのファンドを構成する構成銘柄の割合と、複数のベンチマークのうち一つのベンチマークを構成する構成銘柄の割合との差に基づいて、一つのベンチマークに関する一つのファンドの乖離度を算出する。例えば、ファンドデータベースDB1に記憶された銘柄に1~N(Nは銘柄数を表す自然数)の識別番号を付して、ファンドの構成割合をwi(wiはΣi=1 Ni=1を満たす実数)と表して、あるベンチマークの構成割合をqi(qiはΣi=1 Ni=1を満たす実数)と表すとき、算出部13は、Σi=1 N|wi-qi|/2によって乖離度を算出してよい。すなわち、乖離度は、複数のファンドのうち一つのファンドを構成する構成銘柄の割合と、複数のベンチマークのうち一つのベンチマークを構成する構成銘柄の割合との差の絶対値を、一つのファンドを構成する構成銘柄及び一つのベンチマークを構成する構成銘柄について総和し、2で割った値であってよい。このようにして算出される量は、アクティブシェアと称されている。アクティブシェアは、ファンドの構成銘柄及び構成割合がベンチマークの構成銘柄及び構成割合からどの程度乖離しているかを表す量である。なお、ファンドがベンチマークからどの程度乖離するかを表す量として、ファンドのリターンが、ベンチマークのリターンからどの程度乖離しているかを表すトラッキングエラーという量も知られている。アクティブシェアによって乖離度を算出する場合、ファンドとベンチマークの構成銘柄及びその割合が完全一致すると乖離度が0となり、ファンドとベンチマークの構成銘柄及びその割合が完全に不一致であると乖離度が1となる。算出部13は、選択部11により選択されたn個のファンドそれぞれについて、ベンチマークデータベースDB2に記憶されたm個のベンチマークとの間の乖離度を算出してよい。この場合、算出部13は、n×m個の乖離度を算出することとなる。
【0028】
このように、ファンドとベンチマークの構成銘柄の差のみならず、構成銘柄の割合の差に基づいて乖離度を算出することで、ファンドとベンチマークの乖離をより精度よく計量することができ、どの程度アクティブに運用されているかを表すアクティブ度をより精度良く判定することができる。
【0029】
判定部14は、複数のベンチマークそれぞれについて算出された乖離度のうち少なくとも最小値に基づいて、複数のファンドそれぞれについて、どの程度アクティブに運用されているかを表すアクティブ度を判定する。具体的には、判定部14は、一つのファンドに対して、複数のベンチマークそれぞれについて算出された乖離度のうち最小値をアクティブ度と判定してよい。例えば、一つのファンドについて、m個のベンチマークとの間の乖離度sk(k=1~m)が算出された場合に、mink(sk)をそのファンドのアクティブ度と判定してよい。もっとも、判定部14は、一つのファンドについて、m個のベンチマークとの間の乖離度が算出された場合に、最小の乖離度と、2番目に小さい乖離度との平均値に基づいて、アクティブ度を判定することとしてもよいし、最小の乖離度を引数に含む任意の関数によってアクティブ度を判定することとしてもよい。
【0030】
抽出部15は、判定部14により判定されたアクティブ度に基づいて、複数のファンドから、複数のファンドの中で相対的にアクティブに運用されていると判定される1又は複数のファンドを抽出する。例えば、抽出部15は、アクティブ度について上位200のファンドを、複数のファンドの中で相対的にアクティブに運用されていると判定される1又は複数のファンドとして抽出してよい。ここで、上位200という数値は例示であり、任意に選ぶことができる。また、抽出部15は、アクティブ度が上位10%のファンドを抽出することとしてもよい。ここで、上位10%という数値は例示であり、任意に選ぶことができる。
【0031】
このように、複数のベンチマークそれぞれについて算出された乖離度のうち少なくとも最小値に基づいてアクティブ度を判定することで、複数のベンチマークのうちファンドとの乖離が最も小さいベンチマークを基準として、そのファンドがどの程度アクティブに運用されているかを判定することができる。そのため、アクティブ運用の実体が必ずしも明らかでない場合であっても、アクティブ運用を行っている代表的なファンドを抽出することができる。
【0032】
分類部16は、算出部13により算出された乖離度のうち最小値を与えるベンチマークの特性に基づいて、抽出部15により抽出された1又は複数のファンドを、複数の異なる特性に分類する。ここで、複数のベンチマークは、複数の異なる特性に分類される。例えば、ベンチマークデータベースDB2に記憶されている5つのベンチマークは、その名称が表すように、バリュー運用のベンチマークB1であれば、バリュー運用という特性を有し、グロース運用のベンチマークB2であればグロース運用という特性を有し、市場ベンチマークB3であれば市場全体を代表するという特性を有し、大型株ベンチマークB4であれば大型株を代表するという特性を有し、小型株ベンチマークB5であれば小型株を代表するという特性を有する。分類部16は、あるファンドの特性を、そのファンドについて最小の乖離度を与えるベンチマークの特性として分類してよい。例えば、あるファンドについてベンチマークデータベースDB2に記憶されている5つのベンチマークとの間で乖離度を算出した結果、バリュー運用のベンチマークB1について算出された乖離度が最も小さい値であった場合、分類部16は、そのファンドの特性がバリュー運用の特性であると分類してよい。
【0033】
このように、本実施形態に係るファンド抽出装置10によれば、抽出されたファンドについて、アクティブに運用されているという特性だけでなく、複数の異なる特性を明らかにすることができ、複数の異なる特性毎にアクティブ運用を行っている代表的なファンドを抽出することができる。
【0034】
インデックス算出部17は、抽出部15により抽出された1又は複数のファンドの構成に基づいて、アクティブ運用のインデックスを算出する。インデックス算出部17は、抽出部15により抽出された1又は複数のファンドを構成する銘柄の保有数を合算することで、アクティブ運用のインデックスを算出してよい。その場合、インデックス算出部17は、抽出部15により抽出された1又は複数のファンドの純資産残高の中位点を算出し、純資産残高が中位点を超えるファンドについては、純資産残高を中位点に補正し、当該ファンドの銘柄保有数を補正した上で、アクティブ運用のインデックスを算出してもよい。このように純資産残高を補正することで、インデックスが、純資産残高が特に多いファンドに過度に影響されないようにすることができる。
【0035】
アクティブ運用のインデックスを算出することで、アクティブ運用を行っているとされる複数のファンドの成績を評価する基準とすることができる。また、算出したアクティブ運用のインデックスに連動するようにインデックスファンドを組成することで、比較的低報酬でアクティブ運用を行うファンドを提供することができる。
【0036】
評価部18は、アクティブ運用のインデックスを用いて、ファンドデータベースDB1に記憶されたファンドの成績を評価する。評価部18は、例えば、アクティブ運用のインデックスのリターンと、ファンドデータベースDB1に記憶されたファンドのリターンとを比較してファンドの成績を評価したり、アクティブ運用のインデックスのシャープレシオと、ファンドデータベースDB1に記憶されたファンドのシャープレシオとを比較してファンドの成績を評価したりしてよい。このように、アクティブ運用されている複数のファンドを代表する1又は複数のファンドを抽出し、抽出されたファンドに基づいてインデックスを算出することで、アクティブ運用に関する評価基準を得ることができ、アクティブ運用を行っているとされるファンドを評価することができる。
【0037】
なお、算出部13による乖離度の算出、判定部14によるアクティブ度の判定、抽出部15によるファンドの抽出、分類部16によるファンドの分類、インデックス算出部17によるアクティブ運用のインデックスの算出及び評価部18によるファンドの評価は、ファンドデータベースDB1に記憶されたファンドの構成銘柄及び構成割合に関する情報が更新される度に実行されてよい。ファンドの構成銘柄及び構成割合が変化すると、ファンドについて算出される乖離度が変化し、アクティブ度が変化する。そのため、最小の乖離度を与えるベンチマークが変化して分類部16による分類が変わったり、アクティブ度の上位ファンドが入れ替わってインデックスを構成するファンドが変わったりする場合がある。ファンドデータベースDB1に記憶されたファンドの構成銘柄及び構成割合に関する情報の更新は、例えば毎月行われてよい。
【0038】
図2は、本実施形態に係るファンド抽出装置10の物理的な構成を示す図である。ファンド抽出装置10は、ハードウェアプロセッサに相当するCPU(Central Processing Unit)10aと、メモリに相当するRAM(Random Access Memory)10bと、メモリに相当するROM(Read only Memory)10cと、通信部10dと、入力部10eと、表示部10fとを有する。これら各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。なお、本例ではファンド抽出装置10が一台のコンピュータで構成される場合について説明するが、ファンド抽出装置10は、複数のコンピュータを用いて実現されてもよい。
【0039】
CPU10aは、RAM10b又はROM10cに記憶されたプログラムの実行に関する制御やデータの演算、加工を行う制御部である。CPU10aは、アクティブ運用されているファンドを抽出するプログラム(ファンド抽出プログラム)を実行する演算装置である。CPU10aは、入力部10eや通信部10dから種々の入力データを受け取り、入力データの演算結果を表示部10fに表示したり、RAM10bやROM10cに格納したりする。
【0040】
RAM10bは、データの書き換えが可能な記憶部であり、例えば半導体記憶素子で構成される。RAM10bは、CPU10aが実行するアプリケーション等のプログラムやデータを記憶する。
【0041】
ROM10cは、データの読み出しのみが可能な記憶部であり、例えば半導体記憶素子で構成される。ROM10cは、例えばファームウェア等のプログラムやデータを記憶する。
【0042】
通信部10dは、ファンド抽出装置10を通信ネットワークに接続するインターフェースであり、例えば、有線又は無線回線のデータ伝送路により構成されたLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等の通信ネットワークに接続される。
【0043】
入力部10eは、ユーザからデータの入力を受け付けるものであり、例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルを含む。
【0044】
表示部10fは、CPU10aによる演算結果を視覚的に表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により構成される。
【0045】
運用分析プログラムは、RAM10bやROM10c等のコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよいし、通信部10dにより接続される通信ネットワークを介して提供されてもよい。ファンド抽出装置10では、CPU10aがファンド抽出プログラムを実行することにより、図1を用いて説明した様々な機能が実現される。なお、これらの物理的な構成は例示であって、必ずしも独立した構成でなくてもよい。例えば、ファンド抽出装置10は、CPU10aとRAM10bやROM10cが一体化したLSI(Large-Scale Integration)を備えていてもよい。
【0046】
図3は、本実施形態に係るファンド抽出装置10により抽出されるファンドの概要を示す図である。同図では、選択部11により選択されたアクティブ運用ファンドF1と、抽出部15により抽出された高アクティブファンドF2及び分類部16により分類された複数のファンドを示している。
【0047】
アクティブ運用ファンドF1は、ファンドデータベースDB1に記憶されているファンドの中から、アクティブ運用に関する所定の条件を満たすファンドとして選択部11により選択された複数のファンドである。
【0048】
高アクティブファンドF2は、判定部14により判定されたアクティブ度に基づいて、アクティブ運用ファンドF1から、アクティブ運用ファンドF1の中で相対的にアクティブに運用されていると判定される1又は複数のファンドを抽出部15により抽出することで得られる。判定部14は、アクティブ運用ファンドF1に含まれる複数のファンドについてアクティブ度を判定し、アクティブ度の四分位数を算出してよい。そして、抽出部15は、アクティブ度が第3四分位数より大きいファンド、すなわちアクティブ度が上位1/4に属するファンドを抽出してよい。同図では、アクティブ度が第2四分位数から第3四分位数までの間に属するファンドを中アクティブファンドF3と表し、アクティブ度が第1四分位数から第2四分位数までの間に属するファンドを低アクティブファンドF4と表し、アクティブ度が第1四分位数より小さいファンドを準パッシブファンドF5と表している。
【0049】
高アクティブファンドF2は、分類部16によって複数の異なる特性に分類される。「Value」と示されたバリュー運用ファンドF20は、高アクティブファンドF2のうち、乖離度の最小値を与えるベンチマークがバリュー運用のベンチマークB1であるものである。同様に、高アクティブファンドF2は、分類部16によって、「Growth」と示されたグロース運用ファンドF21、「Non-Style Market」と示された市場型ファンドF22、「Non-Style Large」と示された大型株ファンドF23及び「Non-Style Small」と示された小型株ファンドF24に分類される。
【0050】
また、高アクティブファンドF2のうち、保有銘柄の回転度が比較的高いベンチマークとの間で算出される乖離度が最も小さくなるファンドは、「高回転度」と示された高回転度ファンドF25aに分類され、保有銘柄の回転度が比較的低いベンチマークとの間で算出される乖離度が最も小さくなるファンドは、「低回転度」と示された低回転度ファンドF25bに分類される。
【0051】
高アクティブファンドF2のうち、保有銘柄のモメンタムが比較的高いベンチマークとの間で算出される乖離度が最も小さくなるファンドは、「高モメンタム」と示された高モメンタムファンドF26aに分類され、保有銘柄のモメンタムが比較的低いベンチマークとの間で算出される乖離度が最も小さくなるファンドは、「低モメンタム」と示された低モメンタムファンドF26bに分類される。
【0052】
高アクティブファンドF2のうち、保有銘柄のボラティリティが比較的高いベンチマークとの間で算出される乖離度が最も小さくなるファンドは、「高ボラティリティ」と示された高ボラティリティファンドF27aに分類され、保有銘柄のボラティリティが比較的低いベンチマークとの間で算出される乖離度が最も小さくなるファンドは、「低ボラティリティ」と示された低ボラティリティファンドF27bに分類される。
【0053】
高アクティブファンドF2のうち、保有銘柄のベータが比較的高いベンチマークとの間で算出される乖離度が最も小さくなるファンドは、「高ベータ」と示された高ベータファンドF28aに分類され、保有銘柄のベータが比較的低いベンチマークとの間で算出される乖離度が最も小さくなるファンドは、「低ベータ」と示された低ベータファンドF28bに分類される。
【0054】
高アクティブファンドF2のうち、信託報酬が比較的高いベンチマークとの間で算出される乖離度が最も小さくなるファンドは、「高報酬」と示された高報酬ベータファンドF29aに分類され、信託報酬が比較的低いベンチマークとの間で算出される乖離度が最も小さくなるファンドは、「低報酬」と示された低報酬ファンドF29bに分類される。
【0055】
さらに、分類部16によって分類されたバリュー運用ファンドF20から、上位500ファンドF20a、上位300ファンドF20b及び上位200ファンドF20cが抽出されてよい。ここで、抽出されるファンドは、アクティブ度に関する上位で500、上位300、上位200であってよい。このように、分類部16によって分類されたファンドの中からアクティブ度が上位のファンドを抽出することは、任意の特性のファンドについて行ってよい。
【0056】
また、高アクティブファンドF2以外に、中アクティブファンドF3、低アクティブファンドF4及び準パッシブファンドF5について、分類部16による分類を行ってもよい。
【0057】
図4は、本実施形態に係るファンド抽出装置10により実行される処理のフローチャートである。はじめに、ファンド抽出装置10は、選択部11によって、ファンドデータベースDB1に記憶されている全ファンドの中から、アクティブ運用に関する所定の条件を満たす複数のファンドを選択する(S10)。
【0058】
次に、補正部12によって、選択された各ファンドの構成銘柄及び構成割合を補正する(S11)。そして、算出部13によって、各ファンドについて、ベンチマーク毎に乖離度を算出する(S12)。
【0059】
判定部14は、各ファンドについて、複数のベンチマークについて算出された乖離度のうち少なくとも最小値に基づいて、アクティブ度を判定する(S13)。抽出部15は、アクティブ度が上位のファンドを高アクティブファンドとして抽出する(S14)。例えば、抽出部15は、アクティブ度が上位1/4のファンドを抽出してよい。
【0060】
分類部16は、乖離度のうち最小値を与えるベンチマークの特性に基づいて、抽出されたファンドを分類する(S15)。インデックス算出部17は、抽出されたファンドの構成銘柄を合算して、アクティブ運用のインデックスを算出する(S16)。ここで、インデックス算出部17は、分類部16による分類毎に、アクティブ運用のインデックスを算出してよい。
【0061】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
10…ファンド抽出装置、10a…CPU、10b…RAM、10c…ROM、10d…通信部、10e…入力部、10f…表示部、11…選択部、12…補正部、13…算出部、14…判定部、15…抽出部、16…分類部、17…インデックス算出部、18…評価部、DB1…ファンドデータベース、DB2…ベンチマークデータベース
図1
図2
図3
図4