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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】冷凍食材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/36 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
A23L3/36 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018153665
(22)【出願日】2018-08-17
(65)【公開番号】P2020025528
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】393004513
【氏名又は名称】平林産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】平林 京子
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-069927(JP,A)
【文献】国際公開第2010/150497(WO,A1)
【文献】特開平11-314737(JP,A)
【文献】特開2017-077958(JP,A)
【文献】冷凍きのこ 冷凍野菜, ファームtoキッチン 平林産業株式会社[online], 2015年9月15日, [検索日:2022年3月23日], retrieved from the internet <URL:https://web.archive.org/web/20150905104918/http://farm-to-kitchen.co.jp/services/frozen-mushroom/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の食材を個別に分離した状態で冷凍するため、スチーム工程と、洗浄工程と、脱水工程と、移載工程と、冷凍工程と、を含み、
前記スチーム工程は、個別に分離された前記食材をスチーミングする工程であり、
前記洗浄工程は、前記スチーム工程で蒸された前記食材を水洗する工程であり、
前記脱水工程は、前記洗浄工程で前記食材に付着した水分を除去する工程であり、多数本のローラを並列したローラコンベアによって前記食材を搬送し、前記食材に付着した水分を隣り合ったローラとローラとの間から滴下し、
前記冷凍工程は、前記食材を瞬間冷凍用の液体中で瞬間冷凍する前段冷凍工程と、瞬間冷凍された前記食材を急速冷凍用の流体のシャワーで急速冷凍する後段冷凍工程と、を含み、
前記移載工程は、前記脱水工程から前記冷凍工程までの工程であって、脱水された前記食材を前記冷凍工程での前記瞬間冷凍用の液体の上方から前記瞬間冷凍用の液体中への落下を含む工程である、
冷凍食材の製造方法。
【請求項2】
前記移載工程は、前記脱水工程の後に第1の速度で前記食材を搬送する前段移載工程と、前記第1の速度よりも速い第2の速度で、前段移載工程で搬送された前記食材を前記冷凍工程まで搬送する後段移載工程と、を含んでいる、
請求項1に記載の冷凍食材の製造方法。
【請求項3】
前記スチーム工程は、前記食材を殺菌するまで加熱する、
請求項1に記載の冷凍食材の製造方法。
【請求項4】
前記冷凍工程は、前記瞬間冷凍用の液体として液体窒素を使用し、前記急速冷凍用の流体として液体窒素又は気体窒素を使用する、
請求項1乃至のうちいずれか1項に記載の冷凍食材の製造方法。
【請求項5】
前記前段冷凍工程は、搬送されてくる前記食材が落下して、瞬間冷凍用の液体中で前記食材を瞬間冷凍する、
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の冷凍食材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の食材が分離された状態で冷凍され得る冷凍食材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の食材を個別に分離した状態で冷凍するための技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、個別凍結食品の製造方法が記載されている。
【0003】
この個別凍結食品の製造方法は、所定の温度では凍結しない浸漬液に複数の食品を浸漬する浸漬工程と、浸漬液に浸漬された複数の食品を容器に収容し、この容器を封緘する封緘工程と、容器に収容された複数の食品を凍結させる凍結工程と、を含む。浸漬液は、凍結工程における凍結温度で凝固しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-129492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された個別凍結食品の製造方法は、容器に収容された複数の食品を凍結するときに、容器内の浸漬液が凍結しないため、複数の食品が個別に分離した状態として凍結することができる。浸漬液は、食品衛生上、許容され得る液体から選択される。しかし、食品に付着した浸漬液は、解凍された食品の味や触感を悪化させるおそれがある。
【0006】
本発明は、複数の食材が個別に分離された状態で冷凍され、解凍後の食材における味や触感への影響を抑制し得る冷凍食材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る冷凍食材の製造方法は、
複数の食材を個別に分離した状態で冷凍するため、スチーム工程と、洗浄工程と、脱水工程と、移載工程と、冷凍工程と、を含み、
前記スチーム工程は、個別に分離された前記食材をスチーミングする工程であり、
前記洗浄工程は、前記スチーム工程で蒸された前記食材を水洗する工程であり、
前記脱水工程は、前記洗浄工程で前記食材に付着した水分を除去する工程であり、
前記冷凍工程は、前記食材を瞬間冷凍用の液体中で瞬間冷凍する前段冷凍工程と、瞬間冷凍された前記食材を急速冷凍用の流体のシャワーで急速冷凍する後段冷凍工程と、を含み、
前記移載工程は、前記脱水工程から前記冷凍工程までの工程であって、脱水された前記食材を前記冷凍工程での前記瞬間冷凍用の液体の上方から前記瞬間冷凍用の液体中への落下を含む工程である。
【0008】
本発明に係る冷凍食材の製造方法の一態様として、
前記移載工程は、前記脱水工程の後に第1の速度で前記食材を搬送する前段移載工程と、前段移載工程で搬送された前記食材を前記冷凍工程まで前記第1の速度よりも速い第2の速度で搬送する後段移載工程と、を含んでいる。
【0009】
本発明に係る冷凍食材の製造方法の他態様として、
前記スチーム工程は、前記食材を殺菌するまで加熱する。
【0010】
本発明に係る冷凍食材の製造方法の異なる他態様として、
前記脱水工程は、多数本のローラを並列したローラコンベアによって前記食材を搬送し、前記食材に付着した水分を隣り合ったローラとローラとの間から滴下する。
【0011】
本発明に係る冷凍食材の製造方法の異なる他態様として、
前記冷凍工程は、前記瞬間冷凍用の液体として液体窒素を使用し、前記急速冷凍用の流体として液体窒素又は気体窒素を使用する。
【0012】
本発明に係る別の冷凍食材の製造方法は、
複数の食材を個別に分離した状態で冷凍するための冷凍工程を含み、
前記冷凍工程は、搬送されてくる前記食材が落下して、瞬間冷凍用の液体中で前記食材を瞬間冷凍する前段冷凍工程と、瞬間冷凍された前記食材を急速冷凍用の流体のシャワーで急速冷凍する後段冷凍工程と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の食材が個別に分離された状態で冷凍され、解凍後の食材における味や触感への影響を抑制し得る冷凍食材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る冷凍食材の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
図2】本発明に係る冷凍食材の製造方法によって冷凍された冷凍食材を商品として出荷する工程を示す工程図である。
図3】本発明に係る冷凍食材の製造方法の一実施形態であって、原材料ほぐし工程からスチーム工程までの概要を示す概略図である。
図4】本発明に係る冷凍食材の製造方法の一実施形態であって、洗浄工程から選別工程までの概要を示す概略図である。
図5】本発明に係る冷凍食材の製造方法の一実施形態であって、脱水工程から移載工程までの概要を示す概略図である。
図6】本発明に係る冷凍食材の製造方法の一実施形態であって、冷凍工程の概要を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る冷凍食材の製造方法の一実施形態について図1乃至図6を参照して説明する。図1は、本発明に係る冷凍食材の製造方法の一実施形態を示す工程図である。図2は、本発明に係る冷凍食材の製造方法によって冷凍された冷凍食材を商品として出荷する工程を示す工程図である。図3は、本発明の冷凍食材の製造方法の一実施形態であって、原材料ほぐし工程からスチーム工程までの概要を示す概略図である。図4は、本発明の冷凍食材の製造方法の一実施形態であって、洗浄工程から選別工程までの概要を示す概略図である。図5は、本発明の冷凍食材の製造方法の一実施形態であって、脱水工程から移載工程までの概要を示す概略図である。図6は、本発明の冷凍食材の製造方法の一実施形態であって、冷凍工程の概要を示す概略図である。
【0016】
本発明に係る一実施形態の冷凍食材の製造方法は、ブナシメジ(ヒラタケ)や本シメジ(シメジ)、エノキタケ、マイタケのようなキノコ、あるいは、タマネギやトマトやカボチャ、ブロッコリ、枝豆、エンドウマメのような野菜、あるいは、小魚やホタテ貝、イカ、エビのような魚介類などの原材料を冷凍するもので、複数の工程を含んでいる。本実施形態では、原材料としてブナシメジ1を冷凍する方法について説明する。ブナシメジ1は、多数本が束なり、石突きが一体となった束生(くそせい)の状態で生育している。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の冷凍食材の製造方法は、原材料ほぐし工程S110と、スチーム工程S120と、洗浄工程S130と、選別工程S140と、脱水工程S150と、移載工程(前段移載工程S161と後段移載工程S162)と、冷凍工程(前段冷凍工程S171と後段冷凍工程S172)と、を経てブナシメジ1を冷凍する。図2に示すように、冷凍されたブナシメジ1は、小分け計量工程S201と、袋詰め工程S202と、異物検査工程S203と、出荷工程S204と、を経て商品として出荷される。
【0018】
原材料ほぐし工程S110は、採取されて束生の状態にあるブナシメジ1の石づちを作業者が除去することで、分離した個別のブナシメジ1にほぐす工程である。図3に示すように、原材料ほぐし工程S110は、束生の状態のブナシメジ1がコンベア10上に載せられた後、個別のブナシメジ1に分離されるようにしてもよいし、カゴ(図示せず)に入れられた束生の状態のブナシメジ1が分離されてコンベア10上に載せられるようにしてもよい。分離されたブナシメジ1は、図示したような1本ずつのブナシメジ1だけでなく、大小様々の2本以上の束状のブナシメジ1も含まれる。
【0019】
分離された個別のブナシメジ1(以下、主として単に「ブナシメジ1」として説明する。)は、コンベア10によってスチーム工程S120へ搬送される。なお、図面中のブナシメジ1は、イメージしやすいように起立姿勢で描かれているが、実際は横臥姿勢で搬送される。
【0020】
スチーム工程S120は、ブナシメジ1をスチーミングすることで、殺菌する工程である。図3に示すように、スチーム工程S120では、コンベア10が貫通するチャンバ20を使用する。チャンバ20は、コンベア10を貫通させるための入口と出口(ともに採番せず)とを有している。チャンバ20は、95℃~100℃の水蒸気を噴出する加湿装置(図示せず)を備えている。
【0021】
スチーム工程S120において、コンベア10によって搬送されているブナシメジ1がチャンバ20内を移動する。このブナシメジ1は、チャンバ20内で100秒~150秒程度、水蒸気が吹き付けられることで、殺菌される。スチーム工程S120において、ブナシメジ1が、ボイルでなく、スチーミングされることで、冷凍されたブナシメジ1は、解凍されたときに、ドリッピングしないようにすることができる。殺菌されたブナシメジ1は、コンベア10によって洗浄工程S130へ搬送される。
【0022】
図4に示すように、洗浄工程S130では、洗浄液30を貯留するための洗浄槽31が使用される。洗浄液30としては、例えば、真水が使用される。コンベア10が、洗浄槽31の上面の一方から洗浄槽31内に沈降し、洗浄槽31の底部側を一方側から他方側へ移動し、洗浄槽31の上面の他方から洗浄槽31外へ上昇する。このコンベア10は、洗浄液30中を移動しているブナシメジ1が浮上しないようにする荒目網状のカバー(図示せず)などで覆われる。
【0023】
洗浄工程S130において、ブナシメジ1は、洗浄液30に浸漬された状態となる。ブナシメジ1は、異物が付着していない状態で洗浄液30中から浮上し、コンベア10によって選別工程S140へ搬送される。
【0024】
選別工程S140は、作業者が、洗浄されたブナシメジ1をコンベア10上で選別し、規格外のブナシメジ1や、異物が除去されなかったブナシメジ1、傷が入ったブナシメジ1、曲がっているブナシメジ1を不合格品として排除する工程である。選別工程S140でのブナシメジ1の搬送速度は、選別の作業ができる程度に低速度とされている。商品として出荷できるブナシメジ1は、合格品として次の脱水工程S150へ搬送される。
【0025】
脱水工程S150は、洗浄工程S130でブナシメジ1に付着した水分を自然滴下する工程である。図5に示すように、脱水工程S150では、ローラコンベア11が使用される。ローラコンベア11は、周方向に回転するローラ11aを備え、多数本のローラ11aが搬送方向に並列され、ブナシメジ1を搬送する。隣り合ったローラ11aのピッチは、ブナシメジ1の軸部の直径よりも狭くされる。こうすることで、ブナシメジ1がローラ11aと同じ向きに置かれても、ブナシメジ1がローラ11a間から落下しない。
【0026】
ブナシメジ1は、複数本のローラ11a上に載せられることで、ローラコンベア11間から水分が滴下する。後の工程である前段冷凍工程S171で使用する冷凍槽71との位置関係から、脱水工程S150のローラコンベア11は、上り勾配の斜路とされている。
【0027】
脱水工程S150のローラコンベア11の下流端は、冷凍槽71の上面よりも上側に位置する。したがって、脱水工程S150のローラコンベア11は、勾配を上るようにブナシメジ1を上昇させる。ローラ11aの表面には、滑り止めが施されていてもよい。
【0028】
ブナシメジ1は、隣り合ったローラ11aに架け渡される状態となって搬送するため、ブナシメジ1に付着した水分がローラ11aとローラ11aとの間から滴下し、ブナシメジ1が当初の形状のまま脱水した状態となって、移載工程S161,S162へ搬送される。
【0029】
移載工程S161,S162は、脱水工程S150の後にブナシメジ1を搬送する前段移載工程S161と、前段移載工程S161で搬送されたブナシメジ1を冷凍工程S171,S172で使用される冷凍槽71まで搬送する後段移載工程S162との2工程を含んでいる。
【0030】
図5に示すように、移載工程S161,S162でブナシメジ1を搬送するコンベア10は、ベルトコンベア12が使用される。ベルトコンベア12は、一対のプーリ12aと、このプーリ12aに掛け渡された無端ベルト12bとを備えている。前段移載工程S161でのベルトコンベア12は、速度V1でブナシメジ1を搬送する。速度V1は、脱水工程S150においてブナシメジ1を搬送する速度と同じとされている。前段移載工程S161のベルトコンベア12の下流端は、後段移載工程S162のベルトコンベア12の上流端の上側に位置している。前段移載工程S161での下流端まで移動したブナシメジ1は、後段移載工程S162へ移される。
【0031】
後段移載工程S162でのベルトコンベア12は、速度V2でブナシメジ1を搬送する。速度V1よりも速度V2のほうが速くされている。こうすることで、前段移載工程S161でのベルトコンベア12上のブナシメジ1の間隔よりも、後段移載工程S162でのベルトコンベア12上のブナシメジ1の間隔が拡げられる。
【0032】
後段移載工程S162のベルトコンベア12の下流端は、後の工程の前段冷凍工程S171で使用する冷凍槽71の上面の上方に位置している。ブナシメジ1は、後段移載工程S162のベルトコンベア12の下流端で前段冷凍工程S171のベルトコンベア12の上流端へバラバラに離れて落下する。
【0033】
冷凍工程は、図6に示すように、ブナシメジ1を瞬間冷凍する前段冷凍工程S171と、瞬間冷凍されたブナシメジ1を急速冷凍する後段冷凍工程S172との2工程を含んでいる。
【0034】
前段冷凍工程S171は、液体窒素70(沸点は1気圧あたり-196℃である。)などの瞬間冷凍用の液体(以下、「液体窒素70」という。)によってブナシメジ1をバラバラに離れた状態で瞬間冷凍する工程である。液体窒素70は、-190℃程度で貯留タンク90に溜められている。貯留タンク90から冷凍槽71まで第1のパイプ91が配管されている。冷凍槽71内には、前段側コンベア72と、後段側コンベア73とが設置される。
【0035】
前段側コンベア72の上流端は、後段移載工程S162で使用するコンベアの下流端と対向するように、冷凍槽71内に設置される。前段側コンベア72の下流端は、冷凍槽71の底側中央に配置される。したがって、前段側コンベア72は、下向きに傾斜した方向で、液体窒素70内でブナシメジ1を沈めるように搬送する。
【0036】
後段側コンベア73の上流端は、前段側コンベア72の下流端に連続する。後段側コンベア73の下流端は、冷凍槽71の上面から突出する。後段側コンベア73は、底面側から上面の他方側へ上向きに傾斜した姿勢でブナシメジ1を浮上するように搬送する。両コンベア72,73とも、搬送しているブナシメジ1が途中で浮上しないようにするカバー(図示せず)が覆われている。
【0037】
図6に示すように、前段冷凍工程S171では、後段移載工程S162のコンベア10の下流端からバラバラに離れて落下してきたブナシメジ1が前段側コンベア72の上流端に降下する。前段側コンベア72の上流端は、冷凍槽71に貯留された-190℃程度の液体窒素70の液面よりも上側にあるが、前段側コンベア72が進行することで、前段側コンベア72上のブナシメジ1は、液体窒素70中に降下していく。
【0038】
ブナシメジ1は、液体窒素70中を前段側コンベア72によって貯留槽の底面側へバラバラに離れた状態で進行し、その後、後段側コンベア73に移動してバラバラに離れた状態で浮上する。ブナシメジ1が液体窒素70中に漬かっている時間は、例えば10秒である。ブナシメジ1は、この前段冷凍工程S171によって表面が瞬間的に冷凍され、後段冷凍工程S172へ搬送される。
【0039】
後段冷凍工程S172は、ブナシメジ1を急速冷凍する工程である。図6に示すように、後段冷凍工程S172では、トンネルフリーザ80を使用する工程である。トンネルフリーザ80は、コンベア10を覆うハウジング81と、ハウジング81内に設置されたノズル82と、ハウジング81内の温度を計測する温度センサ(以下、「第1の温度センサ」という。)83と、ハウジング81外に出たブナシメジ1の温度を計測する温度センサ(以下、「第2の温度センサ」という)84と、ハウジング81内に気流を生じさせる吸気ファン85とを備えている。
【0040】
ハウジング81の上流側の天板には、ブナシメジ1をコンベア10上に載せるための投入口となる入口81aが設けられている。ハウジング81内のコンベア10の上流端は、入口81aによって、後段冷凍工程S172で使用する後段側コンベア73の下流端と対向する。ハウジング81の下流側の側板には、コンベア10上のブナシメジ1を取り出すための出口81bが設けられている。コンベア10の下流端は、ハウジング81の外側に位置している。
【0041】
ノズル82は、ハウジング81の天井に設置され、ローラコンベア11に搬送されているブナシメジ1に向けて液体窒素70又は気体窒素などの急速冷凍用の流体(以下、「液体窒素70」として説明する。)をシャワーで噴射する。液体窒素70は、貯留タンク90に接続された第2のパイプ92から供給される。この液体窒素70によって、ハウジング81内が-40℃程度に調整される。
【0042】
第1の温度センサ83は、ハウジング81内の上流側、中流側、下流側の各天板付近に設置される。第2の温度センサ84は、ハウジング81の外側で、コンベア10の下流端の上方に設置される。第2の温度センサ84は、例えば非接触型赤外線放射温度計が採用され、ブナシメジ1の温度を非接触で計測する。
【0043】
吸気ファン85は、ハウジング81内の下流側に配置され、ハウジング81内で気流を生じさせる。第1の温度センサ83及び第2の温度センサ84によって計測された温度に基づいて、ハウジング81内が所期の-40℃程度の温度になるように吸気ファン85が強く又は弱く作動する。ハウジング81内の第1の温度センサ83及び出口81b付近の第1の温度センサ83によって、ハウジング81内のコンベア10の速度が変更されたり、ノズル82から噴射する液体窒素70の量が変更されたりする。
【0044】
後段側コンベア73上のブナシメジ1は、下流端まで移動するとバラバラに離れた状態で落下して、ハウジング81の入口81aからハウジング81内のコンベア10の上流端に降下し、後段冷凍工程S172へバラバラに離れた状態で搬送される。
【0045】
後段冷凍工程S172では、ハウジング81内においてコンベア10上のブナシメジ1が例えば15分程度かけて移動する。このとき、ブナシメジ1は、天井に設置されたノズル82から噴射される液体窒素70のシャワーを浴びる。ハウジング81内は、第1の温度センサ83と吸気ファン85とによって、斑(むら)なく-40℃程度に調整されている。ハウジング81内の温度が高めの箇所では、ノズル82から多めの液体窒素70が噴射される。ハウジング81内の温度が低めの箇所では、ノズル82から少なめの液体窒素70が噴射される。
【0046】
液体窒素70のシャワーは、ブナシメジ1に吹き付ける前に気化する。したがって、ブナシメジ1は、気体の液体の窒素が付着しないで内部まで凍結する。このようにして、分離した個々のブナシメジ1は、前段冷凍工程S171によって表面が瞬間冷凍され、後段冷凍工程S172によって内部まで急速冷凍されることで、細菌や酵素の働きが抑えられ、素材の品質を維持したまま長期間保存できるものとなる。
【0047】
図2に示すように、後段冷凍工程S172によって冷凍されたブナシメジ1は、小分け計量工程S201、袋詰め工程S202、異物検査工程S203、出荷工程S204へ移行する。
【0048】
小分け計量工程S201は、大小様々なブナシメジ1の重量を個別に計量する工程である。計量されたブナシメジ1は、袋詰め工程S202へ送られる。
【0049】
袋詰め工程S202は、業務用の大パック(例えば2kg)や一般消費者向けの小パック(例えば150gや400g)などユーザに応じた量のブナシメジ1を袋に詰める工程である。個々のブナシメジ1は、重量が異なるため、複数本のブナシメジ1の合計の重量が所定の重量になるようにブナシメジ1が組み合わされ、袋詰めされる。袋には、商品名や製造者、製造年月日、内容量などの商品情報を記載したラベルが貼付される。
【0050】
袋詰めされた複数本のブナシメジ1は、異物検査工程S203へ送られる。異物検査工程S203では、まず、ブナシメジ1を詰めた袋内に金属が混入していないかどうかの金属探知が行われる。次に、異物検査工程S203では、金属が検知されなかった袋について、ブナシメジ1を詰めた袋内に異物が混入していないかどうかのX線検査が行われる。この異物検査によって異物が検出されなかった袋は、商品として出荷工程S204へ送られる。
【0051】
出荷工程S204は、商品が食品卸商社やスーパーマーケットなどに仕分けして出荷する工程である。飲食店でも家庭でも、ブナシメジ1が袋から取り出される。ブナシメジ1は、個別に分離した状態で冷凍されているため、必要な量のブナシメジ1を袋から取り出し、複数のブナシメジ1が固まらないで調理することができる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形改良などは本発明に含まれる。
【0053】
例えば、前記実施形態では、原材料はブナシメジとして説明した。しかし、原材料は、本シメジ(シメジ)、エノキタケ、マイタケのようなキノコ、あるいは、タマネギやトマトやカボチャ、ブロッコリ、枝豆、エンドウマメのような野菜、あるいは、小魚やホタテ貝、イカ、エビのような魚介類などであってもよい。
【0054】
前記実施形態では、原材料ほぐし工程S110と、スチーム工程S120と、洗浄工程S130と、選別工程S140と、脱水工程S150と、前段移載工程S161と後段移載工程S162と、前段冷凍工程S171と後段冷凍工程S172と、を含むとした。しかし、本発明は、全ての工程を必ずしも含まなくてもよいし、工程を入れ替えてもよい。
【0055】
例えば、原材料が野菜や魚介類のように束生の状態でないときは、当然ながら原材料ほぐし工程S110は含まれない。また、前記実施形態では、脱水工程S150の後に前段移載工程S161へ移行したが、前段移載工程S161が脱水工程S150に含まれるようにしてもよい。また、選別工程S140は、原材料ほぐし工程S110の後に移行してもよい。
【0056】
前記実施形態では、脱水工程S150において、後工程で使用する冷凍槽71よりも高くなるように、ローラコンベア11が勾配を有する斜路とされた。しかし、冷凍槽71を浅くしたり、冷凍槽71を埋め込んだりすることで、脱水工程S150のローラコンベアS11は水平路としてもよい。
【0057】
前記実施形態では、脱水工程S150においてローラコンベア11を使用した。しかし、脱水工程S150でも、メッシュベルトのような水滴を滴下させることができれば、各種のベルトを使用してもよい。また、脱水工程S150以外では、ベルトコンベアを使用したが、ローラコンベア11を使用してもよい。
【0058】
前記実施形態では、冷凍工程S171,S172で使用する液体70として液体窒素70を採用した。しかし、冷凍工程S171,S172では、充分に低温なブライン液などを使用してもよい。
【0059】
以上まとめると、本発明が適用される冷凍食材の製造方法は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される冷凍食材の製造方法は、
複数の食材(ブナシメジ1)を個別に分離した状態で冷凍するため、スチーム工程S120と、洗浄工程S130と、脱水工程S150と、移載工程S161,S162と、冷凍工程S171,S172と、を含み、
前記スチーム工程S120は、個別に分離された前記食材(ブナシメジ1)をスチーミングする工程であり、
前記洗浄工程S130は、前記スチーム工程S120で蒸された前記食材(ブナシメジ1)を水洗する工程であり、
前記脱水工程S150は、前記洗浄工程S130で前記食材(ブナシメジ1)に付着した水分を除去する工程であり、
前記冷凍工程S171,S172は、前記食材(ブナシメジ1)を瞬間冷凍用の液体70中で瞬間冷凍する前段冷凍工程S171と、瞬間冷凍された前記食材(ブナシメジ1)を急速冷凍用の流体70のシャワーで急速冷凍する後段冷凍工程S172と、を含み、
前記移載工程S161,S162は、前記脱水工程S150から前記冷凍工程S171までの工程であって、脱水された前記食材(ブナシメジ1)を前記冷凍工程S171での前記瞬間冷凍用の液体70の上方から前記瞬間冷凍用の液体70中への落下を含む工程である。
【0060】
この冷凍食材の製造方法によれば、移載工程S161、S162から冷凍工程S171,S172への移行において、個々に分離した食材(ブナシメジ1)が瞬間冷凍用の液体中にバラバラに落下することで、食材(ブナシメジ1)を個々に分離したままに個別瞬間冷凍(IQF;Individual Quick Frozen)することができる。個別瞬間冷凍された食材(ブナシメジ1)は、個々に分離した状態で内部まで冷凍されるため、褐変を防止し、酸素を死活させ、解凍後のドリップの生成を防止し、長期保存を可能とし、破損を低減し、使いたい分だけ使う、すなわち、必要な量だけ調理することができるといった利便性に富んだ食材となる。
【0061】
本発明に係る冷凍食材の製造方法の一態様において、
前記移載工程S161,S162は、前記脱水工程S150の後に第1の速度V1で前記食材を搬送する前段移載工程S161と、前記第1の速度V1よりも速い第2の速度V2で、前段移載工程で搬送された前記食材を前記冷凍工程S171,S172まで搬送する後段移載工程S162と、を含んでいる。
【0062】
この冷凍食材の製造方法によれば、前段移載工程S161での速度V1よりも後段移載工程S162での速度V2が速くされることにより、コンベア10上を搬送されている食材(ブナシメジ1)の間隔が前段移載工程S161よりも後段移載工程S162で拡げられ、冷凍工程S171で瞬間冷凍用の液体70中に間隔をあけて落下する。
【0063】
本発明に係る冷凍食材の製造方法の一態様において、
前記スチーム工程S120は、前記食材(ブナシメジ1)を殺菌するまで加熱する。
【0064】
この冷凍食材の製造方法によれば、食材(ブナシメジ1)がスチーム工程S120において加熱されることで、食材中の微生物を死滅させ、食材を変質させないようにすることができる。
【0065】
本発明に係る冷凍食材の製造方法の一態様において、
前記脱水工程S150は、多数本のローラ11aを並列したローラコンベア11によって前記食材を搬送し、前記食材に付着した水分を隣り合ったローラ11aとローラ11aとの間から滴下する。
【0066】
この冷凍食材の製造方法によれば、ローラコンベア11によって食材(ブナシメジ1)が搬送されるだけでなく、多数本のローラ11a間から食材(ブナシメジ1)に付着した水分が滴下され、食材(ブナシメジ1)を変形させることなく、脱水することができる。
【0067】
本発明に係る冷凍食材の製造方法の一態様において、
前記冷凍工程S171,S172は、前記瞬間冷凍用の液体として液体窒素70を使用し、前記急速冷凍用の流体として液体窒素70又は気体窒素を使用する。
【0068】
この冷凍食材の製造方法によれば、瞬間冷凍用の液体として液体窒素70を使用し、急速冷凍用の流体として液体窒素70又は気体窒素を使用することにより、食材(ブナシメジ1)を瞬時に冷凍することができる。
【0069】
即ち、本発明が適用される異なる冷凍食材の製造方法は、
複数の食材を個別に分離した状態で冷凍するための冷凍工程S171,S172を含み、
前記冷凍工程S171,S172は、搬送されてくる前記食材が落下して、瞬間冷凍用の液体中で前記食材(ブナシメジ1)を瞬間冷凍する前段冷凍工程S171と、瞬間冷凍された前記食材を急速冷凍用の流体のシャワーで急速冷凍する後段冷凍工程S172と、を含む、
【0070】
この冷凍食材の製造方法によれば、個々に分離した食材(ブナシメジ1)が瞬間冷凍用の液体中にバラバラに落下することで、食材(ブナシメジ1)を個々に分離したままで瞬間冷凍することができる。瞬間冷凍された食材(ブナシメジ1)は、個々に分離された状態で急速冷凍される。その結果、食材(ブナシメジ1)は、個々に分離したままの状態で、内部まで冷凍される。個々に分離した状態で内部まで冷凍された食材(ブナシメジ1)は、必要な量だけ取り出して調理することでできる食材となる。
【符号の説明】
【0071】
S110・・・原材料ほぐし工程
S120・・・スチーム工程
S130・・・洗浄工程
S140・・・選別工程
S150・・・脱水工程
S161・・・前段移載工程
S162・・・後段移載工程
S171・・・前段冷凍工程
S172・・・後段冷凍工程
1・・・・・・食材(ブナシメジ)
10・・・・・コンベア
11・・・・・ローラコンベア
11a・・・・ローラ
30・・・・・洗浄液
31・・・・・洗浄槽
32・・・・・シャワー装置
70・・・・・冷凍用の液体(液体窒素)
71・・・・・冷凍槽
72・・・・・前段側コンベア
73・・・・・後段側コンベア
80・・・・・トンネルフリーザ
81・・・・・ハウジング
82・・・・・ノズル
83・・・・・第1の温度センサ
84・・・・・第2の温度センサ
85・・・・・吸気ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6