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  • 特許-フロート式逆止弁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】フロート式逆止弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/04 20060101AFI20220621BHJP
   F16K 31/18 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
F16K15/04 C
F16K31/18 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018200499
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2020067136
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】廣谷 昌久
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-210534(JP,A)
【文献】実開平06-084075(JP,U)
【文献】特開2016-079995(JP,A)
【文献】特開2019-124301(JP,A)
【文献】特開2012-211654(JP,A)
【文献】特開2008-128416(JP,A)
【文献】特開平10-217990(JP,A)
【文献】特開平06-080192(JP,A)
【文献】実開昭59-137496(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/04
F16K 31/18
E03F 7/04
F16T 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる筒状に形成され、液体の流出孔が設けられた底壁を有するケーシングと、
前記底壁の内面から突出して設けられ且つ内部が前記流出孔と連通する円筒部を有する弁座部材と、
前記ケーシング内に収容され、前記円筒部の上端に着座して前記流出孔を閉鎖する一方、前記ケーシングの上部から流入した液体によって浮上し前記流出孔を開放するフロートとを備え、
前記円筒部には、内外を貫通する横孔が設けられている
ことを特徴とするフロート式逆止弁。
【請求項2】
請求項1に記載のフロート式逆止弁において、
前記横孔は、外周側から内周側へ向かって上方へ傾斜している
ことを特徴とするフロート式逆止弁。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフロート式逆止弁において、
前記横孔は、外周側の開口が、前記円筒部の最下部に設けられている
ことを特徴とするフロート式逆止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、フロート式逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
弁座部材の上方にフロートが設けられたフロート式逆止弁が、例えば特許文献1に開示されている。このフロート式逆止弁は、下部に弁座部材(通水片)が設けられた筒状のケーシングを備えている。弁座部材は、流通孔(通水孔部)の部分が上方へ突出している。ケーシング内には、弁座部材の上方に位置するフロートと、該フロートの周囲に位置しフロートの上下動をガイドするガイド部(案内筒)とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭52-3057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したフロート式逆止弁では、上下流方向を逆にして使用する、即ち上側を上流側とし下側を下流側として使用する場合がある。その場合、上流側から液体が流入すると、液体によってフロートが浮上し、液体が流通孔から下流側に排出される。そして、上流側から液体が流入しなくなると、ケーシング内の液位は徐々に低下し、その液位の低下に伴ってフロートが下降する。
【0005】
ここで、弁座部材が上方へ突出しているため、ケーシング内の液位は流通孔の開口位置以下には低下せず、流通孔の周囲に液体が溜まった状態になる。そうすると、フロートは弁座部材に着座し難くなる。そのため、閉弁性能が低下する虞がある。
【0006】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、閉弁性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願のフロート式逆止弁は、ケーシングと、弁座部材と、フロートとを備えている。前記ケーシングは、上下方向に延びる筒状に形成され、液体の流出孔が設けられた底壁を有している。前記弁座部材は、前記底壁の内面から突出して設けられ且つ内部が前記流出孔と連通する円筒部を有している。前記フロートは、前記ケーシング内に収容され、前記円筒部の上端に着座して前記流出孔を閉鎖するものである。また、前記フロートは、前記ケーシングの上部から流入した液体によって浮上し前記流出孔を開放するものである。そして、前記円筒部には、内外を貫通する横孔が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本願のフロート式逆止弁によれば、閉弁性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るフロート式逆止弁の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、実施形態に係る蓋の概略構成を示す平面図である。
図3図3は、実施形態に係る弁座部材の要部を示す断面図である。
図4図4は、実施形態に係るフロートユニットの概略構成を示す断面図である。
図5図5は、実施形態に係るフロートユニットの上板を示す平面図である。
図6図6は、その他の実施形態に係る弁座部材の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のフロート式逆止弁1(以下、単に逆止弁1とも言う。)は、工場等の床面(以下、設置面101と言う。)に設けられた排液口102(または排水口)に設置される。設置面101に零れたり排出されたりした汚水等の液体は、排液口102から排出される。
【0012】
本実施形態の逆止弁1は、排液口102の内部に設けられ、上流側(設置面101側)からの液体の流れは許容する一方、下流側からのガスの流れ(逆流)は阻止する。図1において、上側が上流側で下側が下流側である。即ち、本実施形態では、上下流方向は上下方向と一致している。
【0013】
逆止弁1は、ケーシング10と、弁座部材30と、フロートユニット40とを備えている。
【0014】
ケーシング10は、設置対象部である排液口102に固定され、内部を液体が流通する円筒状に形成されている。ケーシング10は、中心軸が上下方向に延びる状態で円形の排液口102に挿入されている。また、ケーシング10は、上流側端である上端面13が設置面101と面一となるように、排液口102に挿入されている。
【0015】
ケーシング10は、上から順に、大径部11および小径部12が形成されている。大径部11は、外径および内径が小径部12よりも大きい。ケーシング10は、下端部に底壁13を有している。底壁13の中央には、上下に貫通する液体の流出孔15が設けられている。また、底壁13の外面(下面)における中央には、下方へ突出する円筒状の突出部14が設けられている。突出部14の内部は、流出孔15の一部を構成している。
【0016】
ケーシング10の上部開口は、蓋20によって閉じられている。蓋20は、設置面101と面一となるように、ケーシング10の上端部に設けられている。図2に示すように、蓋20には多数の開口20aが設けられており、設置面101の液体は蓋20の開口20aからケーシング10内に流入する。
【0017】
弁座部材30は、ケーシング10内に設けられ、液体の流通孔33を有している。具体的に、弁座部材30は、円筒部31およびフランジ32を有し、底壁13の流出孔15に設けられている。
【0018】
円筒部31は、中心軸が上下方向に延びる円筒状に形成されており、内部が流通孔33となっている。図3にも示すように、円筒部31は、上部が底壁13の内面13a(上面)から上方へ突出する状態で流出孔15に挿入されている。つまり、弁座部材30の流通孔33は、流出孔15と同軸に設けられ、流出孔15と連通している。フランジ32は、円筒部31の外周面に一体形成されており、円筒部31の上下方向における途中に形成されている。
【0019】
本実施形態では、円筒部31のうち底壁13の内面13aから突出した部分が、本願の請求項に係る円筒部に相当する。
【0020】
底壁13の内面13aには、流出孔15の縁部が凹んで成る円環状の段差部13bが設けられている。弁座部材30は、フランジ32が段差部13bに嵌め込まれボルト35で固定されることにより、底壁13に取り付けられている。フランジ32は、上面32aが底壁13の内面13aと面一になるように設けられている。
【0021】
図4および図5にも示すように、フロートユニット40は、フロート41と、棒部材42と、上板43と、底板47とを有している。フロートユニット40は、ケーシング10内に着脱自在に取り付けられている。
【0022】
フロート41は、球状に形成されており、例えば金属製である。フロート41は、ケーシング10内における弁座部材30の上方に設けられている。つまり、ケーシング10内における底壁13の上方空間は、フロート41の収容室19となっている。
【0023】
フロート41は、弁座部材30に離着座して流通孔33(流出孔15)を開閉する弁体である。より詳しくは、フロート41は、円筒部31の上端に離着座する。つまり、フロート41は、弁座部材30から離座することで流通孔33(流出孔15)を開放し、弁座部材30に着座することで流通孔33(流出孔15)を閉鎖する。フロート41は、ケーシング10の上部から流入した液体が収容室19に溜まることによって、上昇(浮上)し弁座部材30から離座するように構成されている。
【0024】
棒部材42は、ケーシング10(収容室19)内において、フロート41の周囲に複数(本実施形態では、4本)設けられている。棒部材42は、上下方向に延びており、フロート41の上下動をガイドするガイド部を構成している。棒部材42は、横断面が円形に形成されている。
【0025】
上板43は、水平方向に延びる略円形の板状部材である。上板43は、棒部材42の上端に設けられている。具体的に、上板43は、4つの挿入孔43aが形成されており、該挿入孔43aに棒部材42の上端が挿入されている。そして、挿入された棒部材42の上端にナット44が締結されることで、上板43が棒部材42に取り付けられている。さらに、上板43には、フロートユニット40をケーシング10内に取り付けるためのボルト46の挿入孔43bが4つ形成されている。
【0026】
ケーシング10の内周面には、段差部17が設けられている。段差部17は、大径部11の内周面と小径部12の内周面との境界に形成される段差である。フロートユニット40は、上板43の外縁部が段差部17に載ることによって、上下方向の位置決めがされる。上板43の挿入孔43bにボルト46が挿入されて締結されることで、フロートユニット40がケーシング10に取り付けられる。こうして、フロートユニット40はケーシング10内に着脱自在に取り付けられる。
【0027】
上板43の上面には、2つのアイボルト45が締結されている。アイボルト45は、上板43の上面に設けられ、フロートユニット40を吊って上方へ取り外すための吊り部である。上記のアイボルト45の数量は、一例である。
【0028】
上板43には、中央に略矩形の開口43cが設けられ、上板43の外縁寄りに円弧状に形成された4つの開口43dが設けられている。これら開口43c,43dは、蓋20の開口20aから流入した液体が流通する。
【0029】
底板47は、フロートユニット40が上方へ取り外された際、フロート41が接することによって複数の棒部材42から抜け出ることを阻止するように構成されている。底板47は、棒部材42におけるフロート41の下方に位置する部分に設けられている。
【0030】
より詳しくは、底板47は、水平方向に延びる円形の板状部材である。底板47は、棒部材42の下端に設けられている。つまり、底板47は、4つの挿入孔47aが形成されており、該挿入孔47aに棒部材42の下端が挿入されている。そして、挿入された棒部材42の下端にナット49が締結されることで、底板47が棒部材42に取り付けられている。
【0031】
底板47には、中央に円形の開口47bが設けられている。この開口47bは、フロート41が弁座部材30に着座する際にフロート41の下半部の一部が通過可能な大きさである。また、開口47bは、フロート41の外径よりも小さい大きさである。この構成により、ケーシング10からフロートユニット40が上方へ取り外された際には、フロート41は底板47の開口47bに嵌って保持される。そのため、フロート41が棒部材42から抜け出る(落下する)ことを阻止することができる。
【0032】
図3に示すように、弁座部材30の円筒部31には、2つの横孔36が設けられている。横孔36は、円筒部31における底壁13の内面13aから突出した部分に設けられている。2つの横孔36は、円筒部31の内外を貫通する孔であり、互いに対向する位置に設けられている。つまり、横孔36は、ケーシング10内(収容室19)と流通孔33とを連通させる連通孔である。
【0033】
横孔36は、水平方向に延びている。横孔36は、外周側の開口(図3において右側の開口)が、ケーシング10内において円筒部31の最下部に設けられている。つまり、横孔36の外周側の開口は、底壁13の内面13aから突出している円筒部31における最下部に設けられている。
【0034】
上記のように構成された逆止弁1では、液体の流れがない場合、フロート41は弁座部材30に着座して流通孔33を閉鎖した状態(図1に実線で示す状態)になる。または、下流側からガスが逆流する場合、流通孔33はフロート41によって閉鎖されているため、ガスの逆流が防止される。
【0035】
また、上流側から液体がケーシング10内に流入した場合、液体はケーシング10内に貯留される。そして、ケーシング10内の液位が所定の高さになると、フロート41が上昇(浮上)し弁座部材30から離座する(図1に二点鎖線で示す状態)。これにより、流通孔33が開放されるので、液体は流出孔15から下流側に排出される。
【0036】
上流側から液体が流入しなくなると、ケーシング10内の液位は徐々に低下し、液位の低下に伴ってフロート41は下降する。その際、液体は流通孔33からだけでなく横孔36からも排出されるので、液体の排出量を稼ぐことができる。そのため、フロート41の下降動作が速くなる。これにより、いち早く流通孔33を閉鎖することができる。
【0037】
そして、液位が円筒部31の上端まで低下した後は、液体は横孔36から排出されるので、ケーシング10内の液位を円筒部31の上端よりも低い位置まで低下させることができる。つまり、液体が円筒部31の高さまで溜まったままになることを防止することができる。液体が円筒部31の上端まで溜まったままになると、フロート41が弁座部材30(円筒部31の上端)に着座し難くなるが、本実施形態ではそれを回避することができる。そのため、本実施形態では、確実にフロート41を弁座部材30に着座させることができ、流通孔33を閉鎖することができる。
【0038】
そして、液位が円筒部31の上端よりも低い所定位置まで低下すると、横孔36における液体の表面張力が液体の水頭圧よりも大きくなり、それ以上液体は横孔36から排出されなくなる。これにより、横孔36は液体によって封止(液封)される。そのため、下流側からガスが逆流しても、ガスが横孔36からケーシング10内に流入することを防止することができる。こうして、円筒部31に横孔36(連通孔)を設けたにも拘わらず、ガスの逆流を防止することができる。
【0039】
以上のように、上記実施形態の逆止弁1は、ケーシング10の底壁13の内面13aから突出して設けられ且つ内部が流出孔15と連通する円筒部31を有する弁座部材30を備えている。そして、円筒部31には、内外を貫通する横孔36が設けられている。
【0040】
上記の構成によれば、上流側から液体が流入しなくなった際、ケーシング10内の液位を円筒部31の上端よりも低い位置まで低下させることができる。そのため、確実にフロート41を弁座部材30に着座させることができ、流出孔15を閉鎖することができる。したがって、閉弁性能を向上させることができる。
【0041】
また、上記実施形態の逆止弁1では、横孔36は、外周側の開口が、ケーシング10内において円筒部31の最下部に設けられている。この構成によれば、確実にケーシング10内の液位を円筒部31の上端よりも低い位置まで低下させることができる。
【0042】
(その他の実施形態)
本願に開示の技術は、上記実施形態の逆止弁1において以下のように構成するようにしてもよい。
【0043】
例えば、上記実施形態の横孔36は、図6に示す横孔37のように形状を変更してもよい。横孔37は、上記実施形態と同様、円筒部31の内外を貫通する孔である。横孔37は、外周側から内周側へ向かって上方へ傾斜している。
【0044】
上記の構成によれば、液位を円筒部31の上端よりも低い位置まで低下させつつ、確実に横孔37を液体によって封止させることができる。そのため、ガスが横孔37からケーシング10内に流入することを確実に防止することができる。
【0045】
また、横孔36,37の数量は、上述したものに限らず、1つまたは3つ以上でもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本願に開示の技術は、フロート式逆止弁について有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 フロート式逆止弁
10 ケーシング
13 底壁
13a 内面
15 流出孔
30 弁座部材
31 円筒部
36 横孔
37 横孔
41 フロート
図1
図2
図3
図4
図5
図6