(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】静止誘導機器用積層鉄心
(51)【国際特許分類】
H01F 27/245 20060101AFI20220621BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20220621BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20220621BHJP
H01F 30/12 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H01F27/245 152
H01F27/24 H
H01F30/10 A
H01F30/12 A
(21)【出願番号】P 2018206549
(22)【出願日】2018-11-01
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】▲陦▼ 裕介
(72)【発明者】
【氏名】塩田 広
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-20811(JP,A)
【文献】特開平07-220942(JP,A)
【文献】特開2010-287756(JP,A)
【文献】特開2011-134794(JP,A)
【文献】特開2014-78639(JP,A)
【文献】特開2011-243792(JP,A)
【文献】特開平7-283036(JP,A)
【文献】実開昭52-85101(JP,U)
【文献】特開昭60-21510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/245
H01F 27/24
H01F 30/10
H01F 30/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の磁性材を複数枚積層して構成される上下の継鉄部を備えると共に、板状の磁性材を複数枚積層して構成され前記上下の継鉄部の両端部を上下に繋ぐ少なくとも2本の脚部を備え、それら継鉄部と脚部とが突合せ接合されることにより構成される積層鉄心であって、
前記継鉄部と脚部とが接合される接合面は、複数枚の磁性材から形成される凸部と複数枚の磁性材から形成される凹部とを交互に有し、前記継鉄部と脚部とは、前記凸部と凹部とが互いに噛合う形態で、突合せて構成されると共に、
それら凸部及び凹部間の突合せ接合部分に、シート状の磁気的絶縁物が、その突合せラインに沿って蛇腹状に曲折した形態で配置されてエアギャップが設けられ、
前記凸部を形成する磁性材の積層枚数と、前記凹部を形成する磁性材の積層枚数との関係が、前記磁気的絶縁物の厚みに対応して、前記凸部を形成する磁性材の積層枚数が前記凹部に比べて少なくされている静止誘導機器用積層鉄心。
【請求項2】
前記継鉄部と脚部との接合部分は傾斜状態で突合せられ、額縁状の接合とされる請求項1記載の静止誘導機器用積層鉄心。
【請求項3】
前記磁気的絶縁物の厚み寸法は、前記磁性材の1枚の厚み寸法に対応している、又は前記磁性材の1枚の厚み寸法の整数倍に対応している請求項1又は2記載の静止誘導機器用積層鉄心。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静止誘導機器用積層鉄心に関する。
【背景技術】
【0002】
静止誘導機器例えば変圧器の鉄心においては、ケイ素鋼板等の磁性材を複数枚積層して構成される積層鉄心が知られている(例えば特許文献1参照)。この積層鉄心においては、上下の継鉄部と、それらをつなぐ脚部との突合せ接合部分において、磁性材を交互にずらせながら積層することが行われる。更に、継鉄部と脚部とを接合する継ぎ目部分に、非磁性のシート部材が配置される。これにより、積層鉄心の継ぎ目部分にシート部材の厚みに相当するエアギャップが確保され、残留磁束密度を低減させて、励磁突入電流の抑制が図られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような積層鉄心のエアギャップ部分に非磁性のシート部材を設ける構成にあっては、シート部材の厚み寸法がギャップ寸法に該当し、そのギャップ寸法を調整することによって、磁気的特性を制御することが可能となる。ところが、上記特許文献1の構成では、積層された磁性材の板面同士が重なり合う部分にも、シート部材が配置されることになり、シート部材の厚み寸法に相当する隙間ができてしまう。そのため、磁性材同士間に無駄な隙間が発生し、積層鉄心の積層方向の大型化を招いてしまう不具合がある。特に、シート部材の厚み寸法が大きくなった場合に、隙間が大きくなってしまう。
【0005】
そこで、磁性材を積層して構成されるものであって、積層方向の大型化を招くことなく、磁気的特性を制御するための適切なエアギャップを設けることが可能な静止誘導機器用積層鉄心を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る静止誘導機器用積層鉄心は、板状の磁性材を複数枚積層して構成される上下の継鉄部を備えると共に、板状の磁性材を複数枚積層して構成され前記上下の継鉄部の両端部を上下に繋ぐ少なくとも2本の脚部を備え、それら継鉄部と脚部とが突合せ接合されることにより構成される積層鉄心であって、前記継鉄部と脚部とが接合される接合面は、複数枚の磁性材から形成される凸部と複数枚の磁性材から形成される凹部とを交互に有し、前記継鉄部と脚部とは、前記凸部と凹部とが互いに噛合う形態で、突合せて構成されると共に、それら凸部及び凹部間の突合せ接合部分に、シート状の磁気的絶縁物が、その突合せラインに沿って蛇腹状に曲折した形態で配置されてエアギャップが設けられ、前記凸部を形成する磁性材の積層枚数と、前記凹部を形成する磁性材の積層枚数との関係が、前記磁気的絶縁物の厚みに対応して、前記凸部を形成する磁性材の積層枚数が前記凹部に比べて少なくされている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態を示すもので、積層鉄心の全体構成を概略的に示す正面図
【
図4】接合面に絶縁物を装着する様子を示す分解斜視図
【
図5】第2の実施形態を示すもので、継鉄部と脚部との接合部の拡大断面図
【
図6】第3の実施形態を示すもので、積層鉄心の全体構成を概略的に示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)第1の実施形態
以下、静止誘導機器としての三相用の変圧器に適用した第1の実施形態について、
図1から
図4を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る変圧器用の積層鉄心1の全体構成を示している。この積層鉄心1は、図で左右方向に延びる上部継鉄部2、下部継鉄部3、上下方向に延びそれら継鉄部2、3間を上下に繋ぐ第1、第2、第3の3個の脚部4、5、6を備えている。各脚部4、5、6には、図示しない巻線が装着される。尚、以下の説明で方向を言う場合には、
図1の状態を正面図として説明する。
【0009】
積層鉄心1を構成する継鉄部2、3及び各脚部4、5、6は、夫々板状の磁性材としての例えばケイ素鋼板7(
図3参照)を、図で前後方向に複数枚積層して構成される。そして、それら継鉄部2、3及び各脚部4、5、6が突合せ接合されることにより、積層鉄心1全体が構成される。尚、本実施形態では、
図3に示すように、ケイ素鋼板7の1枚の厚みを、寸法tとしている。具体例をあげると、厚み寸法tは、例えば0.2~0.3mmとされる。
【0010】
このとき、本実施形態の積層鉄心1においては、突合せ部分のうち、継鉄部2、3の左右の両端部と第1、第3の脚部4、6の上下端部とが接合される上下左右の4つの角部が、斜めほぼ45度に切込まれたいわゆる額縁状の突合せ形態とされる。また、継鉄部2、3の中央部と第2の脚部5の上下両端部との接合は、第2の脚部5の上下部をV字状の凸部とした、凹凸の突合せ形態、いわゆるラップジョイント方式の接合方式とされている。
【0011】
図3及び
図4に一部示すように、前記継鉄部2、3と第1、第2、第3の脚部4、5、6との突合せ部分は、双方の接合面が、ケイ素鋼板7の積層方向に、凸部8と凹部9とを交互に有した形態とされる。そして、継鉄部2、3と脚部4、5、6とは、合計8か所の接合部分(第2の脚部5の一方のV字状部分で2か所と数える)で、
図3に示すように、凸部8と凹部9とが互いに噛合う形態に突合せ接合され、いわゆるラップジョイント方式の接合方式が採用されている。
【0012】
より具体的には、本実施形態では、
図3に示すように、積層枚数がn枚例えば2枚のケイ素鋼板7からなる凸部8が形成されている。また、積層枚数がm枚例えば4枚のケイ素鋼板7からなる凹部9が形成されている。この場合、各継鉄部2、3及び脚部4、5、6は、夫々、予め所定寸法に裁断された多数枚のケイ素鋼板7を、所定の順序で位置合せしながら積層することにより、接合部に複数組の凸部8及び凹部9が交互に形成されたものとされる。
【0013】
例えば、1個の脚部4に関してみると、上下両端部に接合部が設けられるが、ここでは、積層方向に両端部で同じ位置に凸部8が配置されている。上下両端部で積層方向に逆の順序で凸部8、凹部9が形成されていても良い。接合する相手側の継鉄部2、3の接合部の凸部8及び凹部9は、それと対応する関係つまり凹凸が噛合う関係に設けられることは勿論である。このとき、本実施形態では、両端部の双方が凸部8となるケイ素鋼板7、両端部の双方が凹部9となるケイ素鋼板7、一方が凸部8で他方が凹部9となるケイ素鋼板7、の多くとも3種類の長さのケイ素鋼板7を用意しておけば済む。積層方向に両端部で逆の順序で凸部8、凹部9が形成される場合には、一方が凸部8で他方が凹部9となるケイ素鋼板7と両端部の双方が凹部9となるケイ素鋼板7の2種類の長さのケイ素鋼板7で済ませることができる。
【0014】
さて、本実施形態では、
図3、
図4に示すように、継鉄部2、3と脚部4、5、6との間には、突合せラインが、蛇腹状に曲折しながら積層方向に延びる形態、つまり直角に屈曲されながら凹凸が順に連続的に繰り返されるが如き形状に形成される。
図3では、第1の脚部4と、下部継鉄部3との接合部を代表させて示している。そして、その突合せラインに沿って、蛇腹状に曲折したシート状の磁気的絶縁物10が配置されることにより、エアギャップが設けられる。磁気的絶縁物10は、例えばアラミド紙等の絶縁紙からなり、例えばケイ素鋼板7の厚み寸法tと同等の厚み寸法gを有している。これにて、磁気的絶縁物10の厚み寸法gに対応したエアギャップが設けられる。
【0015】
従って、エアギャップは、凸部8の先端面と凹部9の底面との間、凸部8の側面と凹部9の内側面との間に、直角に屈曲されながらコ字状に凸凹が順に連続的に繰り返されるが如き形状に形成される。この場合、磁気的絶縁物10は、
図4に示すように、予め、一枚のシートを蛇腹状に曲折した形態に整形して構成され、例えば脚部4、5、6の突合せ面に、凸部8及び凹部9を覆うように嵌合される。その後、継鉄部2、3と脚部4、5、6とが結合される。
【0016】
このとき、本実施形態では、上記凸部8を形成するケイ素鋼板7の積層枚数nと、凹部9を形成するケイ素鋼板7の積層枚数mとの関係は、m=(n+2k)となる。kは、ケイ素鋼板7の1枚の厚み寸法tに対する、前記磁気的絶縁物10の厚み寸法gの関係、つまり、磁気的絶縁部10の厚み寸法gが、ケイ素鋼板7の何枚(k枚)分に相当するかを示す値であり、自然数からなる。本実施形態では、k=1となる。従って、m=(n+2)枚となり、nが2枚であれば、mは4枚となる。このように、凸部8を形成するケイ素鋼板7の積層枚数が、凹部9を形成するケイ素鋼板7の積層枚数に比べて少なくされていることにより、凸部8と凹部9との間に、磁気的絶縁物10がほぼ密に配置される。
【0017】
次に、上記構成の積層鉄心1の組立手順について簡単に述べる。積層鉄心1を構成する上部継鉄部2、下部継鉄部3、3本の脚部4、5、6は、夫々、予め所要形状に裁断された複数枚のケイ素鋼板7が積層され、例えば接着により固着一体化されて得られる。このとき、脚部4、5、6の各接合面は、凸部8と凹部9とを積層方向に交互に有する形態され、継鉄部2、3の各接合面は、それら凸部8及び凹部9に対応した形態、つまり互いに噛合う形態で、凹部9及び凸部8が形成されている。
【0018】
そして、
図4に示すように、例えば脚部4、5、6の各接合面には、凸部8と凹部9とに合わせて予め蛇腹状に整形された磁気的絶縁物10が嵌合配置される。次いで、
図2に示すように、下部継鉄部3の上部の接合部に、凸部8と凹部9とが互いに噛合うようにして、夫々脚部4、5、6の接合面が突合せ接合される。この後、各脚部4、5、6に対して夫々図示しない巻線が装着され、その後、同様に凸部8と凹部9とが互いに噛合うようにして、上部継鉄部2が突合せ接合される。この際の接合は、例えばクランプ部材或いは締結部材を用いた周知の方法を採用することができる。
【0019】
これにて、
図3に示すように、継鉄部2、3と脚部4、5、6との接合部分においては、積層方向に交互に設けられる凸部8と凹部9とが互いに噛合う形態で、いわゆるラップジョイント方式によって突合せ接合される。その接合部分では、突合せラインが、蛇腹状に曲折しながら積層方向に延びる形態に形成され、その突合せラインに沿ってシート状の磁気的絶縁物10が配置されることにより、接合部にエアギャップが設けられる。予め蛇腹状に整形した磁気的絶縁物10を、接合面に組付ければ良く、磁気的絶縁物10の組付けが容易となることは勿論である。尚、磁気的絶縁物10を、継鉄部2、3側に嵌合配置しておき、脚部4、5、6側と突合せ接合しても良い。
【0020】
このような本実施形態の積層鉄心1によれば、次のような作用・効果を得ることができる。即ち、上記構成の積層鉄心1においては、ケイ素鋼板7を積層して構成される継鉄部2、3と、脚部4、5、6との間に、磁気的絶縁物10が配置され、エアギャップが設けられている。このとき、凸部8を形成するケイ素鋼板7の積層枚数と、凹部9を形成するケイ素鋼板7の積層枚数との関係が、磁気的絶縁物10の厚み寸法gに対応して、凸部8を形成するケイ素鋼板7の積層枚数が、凹部9を形成するケイ素鋼板7の積層枚数に比べて少なくされている。
【0021】
具体的には、
図3に示すように、磁気的絶縁物10の厚み寸法gが、1枚(k=1)のケイ素鋼板7の厚み寸法tに対応しているのに対し、n枚この場合2枚のケイ素鋼板7から凸部8を形成し、(n+2)枚、この場合4枚のケイ素鋼板7から凹部9を形成した。これにより、凸部8と凹部9との間に、突合せラインに沿ってシート状の磁気的絶縁物10が密に配置される空間が形成され、磁気的絶縁物10が蛇腹状に曲折した形態でその空間内に配置されてエアギャップが設けられるようになる。
【0022】
これにより、ケイ素鋼板7を密着して積層した状態でも、積層方向に余分な隙間が形成されることがなく、積層鉄心1の各パーツが大型となることを抑制することができる。この結果、本実施形態によれば、ケイ素鋼板7を積層して構成されると共に、凸部8と凹部9との噛合せ状態で接合されるものにあって、積層方向の大型化を招くことなく、磁気的特性を制御するための適切なエアギャップを設けることが可能となるという優れた効果を得ることができる。
【0023】
また、特に本実施形態では、継鉄部2、3と脚部4、5、6との接合部分は傾斜状態で突合せられ、額縁状の接合とするように構成したので、接合面の面積をより大きくすることができ、ひいては、磁路面積を大きくして磁気抵抗を小さくすることが可能となる。尚、変圧器としては、例えばデータセンタ等で用いられるパワエレ用変圧器に適用することが可能で、省スペース化、高効率化、信頼性の向上を図ることができる。
【0024】
(2)第2の実施形態
図5は、第2の実施形態を示すものであり、例えば左側の脚部11と、下部継鉄部12との接合部の構成を示している。この第2の実施形態が、上記第1の実施形態と異なるところは、凸部13と凹部14との間に配置されるシート状の磁気的絶縁物15の厚み寸法g、つまりエアギャップの寸法にある。
【0025】
即ち、本実施形態では、磁気的絶縁物15の厚み寸法gが、磁性材としての1枚のケイ素鋼板7の厚み寸法tの2倍(k=2)に対応している。これと共に、凸部13は、n枚この場合3枚のケイ素鋼板7から形成され、凹部14は、(n+2k)枚、この場合7枚のケイ素鋼板7から形成されている。これにより、凸部13と凹部14との間に、突合せラインに沿ってシート状の磁気的絶縁物15が密に配置される幅寸法が2t(=g)の空間が形成され、磁気的絶縁物15が蛇腹状に曲折した形態でその空間内に配置されてエアギャップが設けられるようになる。
【0026】
従って、この第2の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、ケイ素鋼板7を積層して構成されると共に、凸部13と凹部14との噛合せ状態で接合されるものにあって、積層方向の大型化を招くことなく、磁気的特性を制御するための適切なエアギャップを設けることが可能となるという優れた効果を得ることができる。
【0027】
そして、このように、磁気的絶縁物15の厚み寸法g、即ちエアギャップの寸法を、板状の磁性材としてのケイ素鋼板7の1枚の厚み寸法tの整数倍に対応したものとすることができる。これにより、ケイ素鋼板7の1枚の厚み寸法に対応したエアギャップを設けることができることは勿論、厚みの大きい、即ちケイ素鋼板7の1枚の厚み寸法の整数倍の厚み寸法の磁気的絶縁物15を採用して、エアギャップの大小を調整することが可能となる。この結果、励磁電流の大きさを要求に応じてコントロールすることが可能となる。
【0028】
(3)第3の実施形態、その他の実施形態
図6は、第3の実施形態を示すものであり、積層鉄心21の全体構成を概略的に示している。この積層鉄心21は、やはり、上部、下部の継鉄部22、23、それら継鉄部22、23間を上下に繋ぐ3個の脚部24、25、26を備えている。これら継鉄部22、23及び各脚部24、25、26は、夫々板状の磁性材としての例えばケイ素鋼板7を、図で前後方向に複数枚積層して構成される。
【0029】
このとき、本実施形態の積層鉄心21においては、突合せ部分のうち、継鉄部22、23の左右の両端部においては、L字型に切込まれた形態とされ、第1、第3の脚部24、26の上下端部が接合される。第1、第3の脚部24、26の上下端部は、夫々、継鉄部22、23と接合されるL字型をなす2面が接合面とされる。一方、継鉄部22、23の中央部においては、コ字型に切込まれた形態とされ、第2の脚部25の上下端部が接合される。第2の脚部25の上下両端部においては、夫々、継鉄部22、23と接合されるコ字型をなす3面が接合面とされる。
【0030】
詳しく図示はしないが、それら継鉄部22、23と脚部24、25、26との突合せ部分は、双方の接合面が、ケイ素鋼板7の積層方向に、凸部8と凹部9とを交互に有した形態とされる。継鉄部22、23と脚部24、25、26とは、凸部8と凹部9とが互いに噛合う形態に突合せ接合される。図示は省略するが、この場合も、上記第1の実施形態等と同様に、凸部8と凹部9とが互いに噛合う突合せラインに沿って、蛇腹状に曲折したシート状の磁気的絶縁物10が配置されることにより、エアギャップが設けられる。
【0031】
そして、凸部8を形成するケイ素鋼板7の積層枚数nと、凹部9を形成するケイ素鋼板7の積層枚数mとの関係が、磁気的絶縁物10の厚みに対応して、凸部8側の積層枚数nが凹部9側の積層枚数mに比べて2k枚だけ少なくされている。従って、この第3の実施形態によっても、ケイ素鋼板7を積層して構成されると共に、凸部8と凹部9との噛合せ状態で接合されるものにあって、積層方向の大型化を招くことなく、磁気的特性を制御するための適切なエアギャップを設けることが可能となるという優れた効果を得ることができる。
【0032】
尚、上記した各実施形態に限定されるものではなく、例えば、磁性材の積層枚数n、mの値や、kの値についても種々の変更が可能である。また、静止誘導機器としては、三相の変圧器に限らず、三相以外の例えば単相の変圧器であっても良く、更にはリアクトルに適用することもできる。以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
図面中、1、21は積層鉄心、2、22は上部継鉄部、3、12、23は下部継鉄部、4~6、11、24~26は脚部、7はケイ素鋼板(磁性材)、8、13は凸部、9、14は凹部、10、15は磁気的絶縁物を示す。