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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ペット用尿採集トイレ
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/01 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
A01K1/01 801A
A01K1/01 801Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018213522
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020078281
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 玲瑛子
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-104890(JP,U)
【文献】特開2012-100577(JP,A)
【文献】実開平01-168151(JP,U)
【文献】特開2013-074819(JP,A)
【文献】特開2017-153402(JP,A)
【文献】特表2009-540300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/01
A01K 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ本体と、該トイレ本体内を上層部分と下層部分とに区画する尿透過性の仕切層を備えたペット用尿採集トイレであって、
前記下層部分に、ペットから排泄されて前記仕切層を通過した尿を集める集合部を備えた尿採集カバーが配置され、該尿採集カバーの下方に冷却器が配置されているペット用尿採集トイレ。
【請求項2】
前記尿採集カバーと前記冷却器とが離間して配置されている請求項1記載のペット用尿採集トイレ。
【請求項3】
前記尿採集カバーの前記集合部に開口部を設け、該開口部の下方に採尿カップが配置されている請求項1又は2記載のペット用尿採集トイレ。
【請求項4】
前記採尿カップの周囲に前記冷却器が配置されている請求項3記載のペット用尿採集トイレ。
【請求項5】
前記採尿カップと前記冷却器とが離間して配置されている請求項4記載のペット用尿採集トイレ。
【請求項6】
前記開口部が前記尿採集カバーの中央又は端部に設けられている請求項3~5の何れか1項に記載のペット用尿採集トイレ。
【請求項7】
前記開口部にフィルタを設けた請求項3~6の何れか1項に記載のペット用尿採集トイレ。
【請求項8】
前記尿採集カバーが前記集合部に向って斜め下方に傾斜する斜面を有する請求項1~7の何れか1項に記載のペット用尿採集トイレ。
【請求項9】
前記尿採集カバーに、前記集合部に向かう溝部を設けた請求項1~8の何れか1項に記載のペット用尿採集トイレ。
【請求項10】
トイレ本体と、該トイレ本体内を上層部分と下層部分とに区画する尿透過性の仕切層を備えたペット用尿採集トイレであって、
前記上層部分に、ペットから排泄される尿を集める集合部を備えた尿採集カバーが配置され、前記下層部分に冷却器が配置されているペット用尿採集トイレ。
【請求項11】
前記尿採集カバーの集合部に開口部を設け、前記尿採集カバーに設けられた前記開口部の下方で且つ前記下層部分に、採尿カップが配置されている請求項10記載のペット用尿採集トイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットが排泄する尿を冷却しながら採集することができるペット用尿採集トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、屋内で猫や犬等のペットの排泄物を処理するためのペット用トイレが既に提案されて実用に供されている。このペット用トイレは、トイレ本体と、該トイレ本体内を上層部分と下層部分とに区画する尿透過性の仕切層を備え、前記下層部分に、尿を受けるためのトレー等の尿受け部を設けて構成されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-123078号公報
【文献】特開2015-159782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ペットの健康管理の一環として、ペットの尿を採集して該ペットの健康状態を検査することが行われている。この検査は、ペットの腎臓病、肝臓病、下部尿路疾患、糖尿病等の早期発見に有効であり、尿のpH値や比重の測定、尿の色や濁り具合等の目視観察等によって行われている。
【0005】
特許文献1及び2に記載のペット用トイレで、尿を採集する場合、ペットの排泄尿をトレーで受け、この受けられた尿をトレーから採尿カップ等に移し替えて採集することが行われている。この場合、周囲の温度(室温等)が高いと、トレーに採集した尿の水分が蒸発するため、該尿の比重が経時的に高くなってしまい、ペットから排泄された直後の尿の比重よりも大きな値を示すために正確な尿検査を行うことができないという問題がある。その他、周囲の温度が高いと、採集した尿の腐敗が進行し、尿のpH値や尿中に含まれる成分値等が変動するために正確な尿検査を行うことができないという問題もある。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その課題は、採集する尿の汚染や蒸発、腐敗等を防いでペットから排泄される尿を簡単に採集できるペット用尿採集トイレを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トイレ本体と、該トイレ本体内を上層部分と下層部分とに区画する尿透過性の仕切層を備えたペット用尿採集トイレであって、
前記下層部分に、ペットから排泄されて前記仕切層を通過した尿を集める集合部を備えた尿採集カバーが配置され、該尿採集カバーの下方に冷却器が配置されているペット用尿採集トイレを提供するものである。
【0008】
また、本発明は、トイレ本体と、該トイレ本体内を上層部分と下層部分とに区画する尿透過性の仕切層を備えたペット用尿採集トイレであって、
前記上層部分に、ペットから排泄される尿を集める集合部を備えた尿採集カバーが配置され、前記下層部分に冷却器が配置されているペット用尿採集トイレを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のペット用尿採集トイレによれば、採集する尿の汚染や蒸発、腐敗等を防いでペットから排泄される尿を簡単に採集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明のペット用尿採集トイレの第1実施形態について排泄物処理材を省略して示す斜視図である。
図2図2は、第1実施形態のペット用尿採集トイレの斜視図である。
図3図3は、第1実施形態のペット用尿採集トイレの分解斜視図である。
図4図4(a)は第1実施形態のペット用尿採集トイレの尿採集カバーの平面図、図4(b)は同尿採集カバーの側面図である。
図5図5は、第1実施形態のペット用尿採集トイレにおける尿採集カバーのトレーへの配置状態の例を示す断面図である。
図6図6は、第1実施形態のペット用尿採集トイレにおける尿採集カバーのトレーへの配置状態の例を示す断面図である。
図7図7は、尿採集カバーの平面図である。
図8図8は、開口部が端部に形成された尿採集カバーの平面図である。
図9図9は、開口部にフィルタが設けられた尿採集カバーの平面図である。
図10図10(a)は溝が形成された尿採集カバーの平面図、図10(b)は(a)のC-C線断面図である。
図11図11は、採尿カップの形状と冷却器の配置例を模式的に示す平面図である。
図12図12は、採尿カップの形状と冷却器の配置例を模式的に示す平面図である。
図13図13は、尿採集カバーの変形例を示す斜視図である。
図14図14は、第2実施形態のペット用尿採集トイレにおける尿採集カバーの配置状態を示す断面図である。
図15図15は、仕切層と一体化された尿採集カバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づいて説明する。
先ず、第1実施形態のペット用尿採集トイレの構成を図1図3に基づいて以下に説明する。
【0012】
図1は第1実施形態のペット用尿採集トイレ1の排泄物処理材を省略して示す斜視図、図2は同ペット用尿採集トイレの斜視図、図3は同ペット用尿採集トイレの分解斜視図である。ペット用尿採集トイレ1は、トイレ本体2と、該トイレ本体2内を上層部分Aと下層部分Bとに区画する尿透過性の仕切層3を備えている。そして、トイレ本体2の下層部分Bには、尿を受けるための尿受け部を構成するトレー4がトイレ本体2に対して出し入れ可能に設けられている。図2に示すように、仕切層3の上には、多孔質構造を有する粒状(ペレット状)の多数の排泄物処理材(チップ)20が敷設されており、これらの排泄物処理材20は、後述の内容器6内に収容されている。
【0013】
トイレ本体2は、上面が開口する矩形ボックス状の外容器5と、該外容器5内に着脱可能に装着された矩形トレー状の内容器6を備えている。ここで、外容器5は、底面を形成する平坦な底壁51と、該底壁51の周縁から立ち上がって当該外容器5の側面を形成する周壁52とを有しており、底壁51と周壁52によって囲まれた内側部分に内容器6とトレー4が収容されている。
【0014】
内容器6も外容器5と同様に底壁61と周壁62を有しており、これらの底壁61と周
壁62によって囲まれた内側部分に、仕切層3の上に敷設された前記排泄物処理材20が収容されている(図2参照)。そして、この内容器6の底壁61は、尿透過性の仕切層3として機能する。底壁61は、略矩形の板状部材で構成されており、図1及び図3に示すように、該底壁61には細長い矩形スリット状の複数の貫通孔63が上下方向に貫設されている。ここで、複数の貫通孔63は、長手方向及び幅方向にそれぞれ所定の間隔をおいて整然と配列されてスノコ部分64を形成しており、各貫通孔63の幅は、粒状の排泄物処理材20(図2参照)が通過しない程度の大きさに設定されている。
【0015】
トレー4は、底面を形成する平坦な底壁41と、該底壁41の周縁から斜めに立ち上がって当該トレー4の側面を形成する周壁42,43,44とを有しており、平面視で略四角形状を成す容器として構成されている。ここで、トレー4の底壁41は、外容器5の底壁51と同等の面積を有している。トレー4の周壁42~44の高さは、その上端部が内容器6の底壁61(仕切層3)に接触しない値に設定されている。尚、トレー4の周壁42~44は、何れも当該トレー4の長手方向(後述するトレー4の引き出し方向X)と直交するY方向(トレー4の幅方向)に延びており、一方の周壁42は、当該トレー4の引き出し方向Xの前端側に位置し、他方の周壁43は、引き出し方向Xの後端側に位置している。そして、トレー4の周壁44は、当該トレー4の引き出し方向X(長手方向)に延びている。
【0016】
前述のように、トレー4は、トイレ本体2(外容器5)に対して出し入れ可能であり、図3に示すように、外容器5の周壁52の幅方向(Y方向)の一方(トレー4の引き出し方向Xの前端側)に位置する部分には、幅方向に細長い矩形スリット状の開口部52aが形成されている。従って、トレー4は、開口部52aを通過してトイレ本体2(外容器5)から図3の矢印方向Xに引き出すことができるとともに、引き出したトレー4を開口部52aに差し込んでこれを矢印Xとは逆方向に押し込むことによって該トレー4をトイレ本体2(外容器5)内に収納することができる。ここで、外容器5に形成された開口部52aの形状と大きさは、トレー4の引き出し方向Xと直交するY方向(幅方向)の断面形状と大きさと略同じになるように設定されている。又、トレー4の長手方向(引き出し方向X)の長さは、外容器5の長手方向の長さと同等に設定されている。
【0017】
図3に示すように、トレー4の引き出し方向Xの前端側に位置する周壁42の上端には、トレー4の外側方に向かって略水平に延びるフランジ部45が一体に延設されている。そして、このフランジ部45の先端部には、鉛直下方に向かって延びる返し部46が一体に形成されており、この返し部46は、当該トレー4を引き出す際に指を掛けるための把手として機能する。
【0018】
トイレ本体2を構成するトレー4と外容器5及び内容器6(仕切層3)の材質としては、耐食性を有するものであれば特に制限はないが、軽量で取り扱い易く、成形性に優れているものが好ましい。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)等の汎用の合成樹脂が好適に用いられる。又、トイレ本体2の表面には、撥水加工や抗菌加工を施すことが好ましい。
【0019】
多数の前記排泄物処理材20は、トイレ本体2の仕切層3上に敷設された状態で図2に示すように内容器6内に収容されている。排泄物処理材20としては、ペットの尿の組成や特性に影響を与えないか、殆んど与えないものが好ましく、例えば、ガラス、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂、玉砂利等の鉱物等から成るものが好適に使用される。又、この排泄物処理材20の形状としては、例えば、円筒形状、球状、立方体、直方体等が選定される。
【0020】
本発明に係るペット用尿採集トイレ1においては、トイレ本体2内の仕切層3によって区画された下層部分Bに配置されるトレー4の内部には、図3に示すように、尿採集カバー7及び冷却器8が配置されている。ここで、尿採集カバー7は、矩形のシートによって構成されており、その材質には、プラスチック、ガラス、金属等が選定される。又、冷却器8としては、保冷剤、氷水やドライアイス等が収容された容器、ペルチエ素子等を含む電子機器等が用いられる。
【0021】
尿採集カバー7は、トイレ本体2の仕切層3に形成された複数の貫通孔63を有するスノコ部分64を、下方から覆うことができる程度の大きさを有している。即ち、尿採集カバー7の大きさは、仕切層3のスノコ部分64の大きさ以上、且つ、仕切層3の大きさ以下に設定され、その外周の長さは、仕切層3の外周の長さと同等の値に設定されている。
【0022】
図4(a)には尿採集カバー7の平面図、図4(b)には尿採集カバー7の側面図がそれぞれ示されている。図4(a)に示す尿採集カバー7の横寸法aは、a=20cm~70cmに設定され、縦寸法bは、b=15cm~60cmに設定され、或いはb/a=0.2~3に設定されている。
【0023】
尿採集カバー7は、中心に向かって下方に絞られた漏斗状の形状に成形されている。尿採集カバー7においては、図4(b)に示す高さhは、h=0.5cm~5cmに設定され、斜面71の傾斜角θは、θ=2°~30°に設定されている。
【0024】
尿採集カバー7のトレー4内への配置としては、図5又は図6に示すものが採用される。図5に示す配置状態においては、尿採集カバー7として、中心部に凹状の集合部72が形成されたものが使用され、この尿採集カバー7の集合部72の周囲に、該集合部72を囲むように冷却器8が配置されている。ここで、尿採集カバー7の集合部72と冷却器8とは、両者が直接接触しないように互いに離間して配置されている。その理由は、尿採集カバー7の集合部72と冷却器8とが接触すると、結露によって尿採集カバー7の集合部72に集められた尿に水滴が混入する可能性があるためである。
【0025】
尿採集カバー7が図5に示すようにトレー4内に配置された状態では、該尿採集カバー7の集合部72を除く斜面71は、集合部72に向かって斜め下方に傾斜する凸曲面を形成している。
【0026】
次に、ペットが猫である場合に、図5に示すようにトレー4内に尿採集カバー7と冷却器8が配置されたペット用尿採集トイレ1によって猫の尿を採集する方法について説明する。
【0027】
ペット用尿採集トイレ1は、例えば、屋内の水平な床面上に図2に示す状態で配置されてペットである猫の排泄に供される。そしてペット用尿採集トイレ1は、猫が排泄した尿を採集するために用いられる。即ち、猫は、ペット用尿採集トイレ1のトイレ本体2を乗り越え、該トイレ本体2の内容器6内に収容された多数の排泄物処理材20の上に載った状態で排泄を行う。
【0028】
すると、猫から排泄された尿は、内容器6の底壁61(仕切層3)に形成された複数の貫通孔63(図1及び図3参照)を通過し、その下の外容器5内に収容されたトレー4に向かって落下する。
【0029】
本実施形態では、図5に示すように、トレー4上には、非吸水性の尿採集カバー7が配置されているため、猫が排泄した尿は、尿採集カバー7上に落下し、該尿採集カバー7の凸曲面状の斜面71に沿って中心部の集合部72へと流れて集められ、該集合部72に溜
まる。そして、尿採集カバー7の集合部72に溜まった尿は、集合部72の周囲に配置された冷却器8によって冷却される。そのためペット用尿採集トイレ1によれば、尿から水分が蒸発したり、尿が腐敗して雑菌が繁殖する等の不具合が発生しにくい。
【0030】
上述のように尿採集カバー7の中心部の集合部72に尿が溜まると、トレー4のフランジ部45の先端に形成された返し部46(図3参照)に手を掛けてトレー4をトイレ本体2(外容器5)から図3の矢印X方向に引き出す。そして、引き出されたトレー4に配置された尿採集カバー7の集合部72に溜まった尿は、例えば、スポイト等の不図示の吸引具によって吸い取ることができ、ペットから排泄される尿を簡単に採集できる。この吸引具に吸い取られた尿は、一端が開口する密封可能な不図示の容器に移し替えられる。そして、尿が収容された容器の開口部が栓によって密閉される。内部に尿が密封された容器は、動物病院に持ち込まれる。すると、動物病院では、持ち込まれた容器内の尿のpH値や比重の測定、尿の色や濁り具合等の目視観察等によって所要の検査が行われる。この検査は、猫の腎臓病、肝臓病、下部尿路疾患、糖尿病等の疾患の早期発見に有効である。
【0031】
尿の採集方法の他の例としては、しょう油差し等のような吸引機能を有する密閉可能な不図示の容器であってもよい。該容器は、キャップを外した状態で、尿採集カバー7の集合部72に溜まった尿を容器によって直接吸い取った後、該容器はキャップによって密封される。この方法によって尿が密封された容器は、動物病院に持ち込まれて検査に供される。
【0032】
以上のように、第1実施形態のペット用尿採集トイレ1によれば、トレー4に尿採集カバー7及び冷却器8が配置されている。その為、尿採集カバー7で尿を受けて集合部72に溜め、この集合部72に溜められた尿を冷却器8によって冷却でき、尿の蒸発や腐敗等を防いでペットから排泄される尿を簡単に採集できる。このように採集された尿を用いれば、正確な尿検査を行うことができる。尿検査を行う場合には、採集された尿を室温で保管すると、尿の蒸発による尿比重の上昇で、慢性腎臓病の判定結果に影響することが懸念されるため、排尿から3時間以上保冷されている状態のものを使用することが望ましい。
【0033】
猫から排泄されて落下する尿を尿採集カバー7によって受け、この尿採集カバー7の集合部72に溜まった尿を採集するようにしたため、採集する尿は、トレー4の汚れによって汚染されることがない。そして、尿を採集した後に尿採集カバー7をトレー4から取り除けば、トレー4に尿が付着することがない。そのため、尿の採集後にトレー4を掃除する必要がなく、掃除の手間を省略して飼い主の肉体的負担を軽減することができる。
【0034】
図6に示す配置状態においては、図7に示すように、尿採集カバー7が中心部に矩形の集合部72を備え、集合部72の底面に開口部73を有している。トレー4上に配された尿採集カバー7の開口部73の下方に採尿カップ9が配置され、この採尿カップ9の周囲に冷却器8が配置されている。ここで、冷却器8と採尿カップ9は、両者が直接接触しないよう互いに離間して配置されている。尿採集カバー7は、中心部に開口部73が形成されている以外は図4に示したものと形状や大きさを含めて同じである。
【0035】
採尿カップ9は、天面の開口部の幅が、例えば1.0cm~10.0cmに設定され、底面の幅が天面の開口部の幅と同様に、例えば1.0cm~10.0cmに設定され、その高さが、例えば1.0cm~5.0cmに設定されている。
【0036】
このような尿採集カバー7を備えるペット用尿採集トイレ1によっても、猫が排泄した尿を前述と同様の方法によって採集することができる。即ち、猫によって排泄された尿は、尿採集カバー7上に落下し、該尿採集カバー7の凸曲面状の斜面71に沿って中心部の開口部73へと流れ、該開口部73から採尿カップ9へと落下して採集される。そして、
採尿カップ9に採集された尿は、採尿カップ9の周囲に配置された冷却器8によって冷却されるため、この尿から水分が蒸発したり、尿が腐敗して雑菌が繁殖する等の不具合が発生しにくい。
【0037】
そして、上述のように採尿カップ9に尿が採集されると、トレー4をトイレ本体2(外容器5)から図3の矢印X方向に引き出す。そして、引き出されたトレー4内の採尿カップ9に収容された尿は、前述と同様に、スポイト等の不図示の吸引具によって吸い取ることができ、ペットから排泄される尿を簡単に採集できる。吸引具に吸い取られた尿は、一端が開口する密封可能な容器に移し替えられる。そして、尿が収容された容器の開口部が栓によって密閉される。内部に尿が密封された容器は、動物病院に持ち込まれ、動物病院で上述した所要の検査が行われる。
【0038】
従って、図6に示すようにトレー4内に尿採集カバー7、冷却器8及び採尿カップ9が配置されているペット用尿採集トイレ1においても、ペットから排泄される尿の蒸発や腐敗等を防いでペットから排泄される尿を簡単に採集できる。このように採集された尿を用いれば、採集した尿の汚染や蒸発、腐敗等を防いで正確な尿検査に資することができる。
【0039】
以上説明した実施形態においては、図7に示すとおり、開口部73が中心部に形成された尿採集カバー7を用いたが、尿採集カバー7には、猫の排泄位置に合わせて、例えば、図8に示すように、中心部から外れた端部に開口部73を形成しても良い。又、開口部73の形状は、必ずしも矩形である必要はなく、矩形以外の例えば円形、楕円形、多角形であっても良い。
【0040】
図9に示すように、尿採集カバー7の開口部73にフィルタ10を設けてもよい。フィルタ10によって、排泄物処理材20である猫砂等の粉やゴミ等の異物が除去でき、採尿カップ9に採集される尿に異物が混入するのを防ぐことができる。
【0041】
図10(a),(b)に示すように、尿採集カバー7の斜面71に、集合部72の開口部73に向かって放射状に延びる複数の溝74(図10(a)には一部のみ図示)を形成しても良い。ここで、図10(a)は尿採集カバー7の平面図、図10(b)は図10(a)のC-C線断面図である。図10(b)に示すように、溝74の幅Wは、例えばW=0.5cm~2cmに設定され、溝74の高さHは、例えばH=1mm~10mmに設定されている。このように尿採集カバー7に、開口部73に向かう複数の溝74を形成すると、尿採集カバー7上に落下した尿が溝74に沿って流れ易くなるとともに、尿採集カバー7の溝74以外の部分に尿が溜まることがないため、尿を採尿カップ9に効率良く流し込んで採集することができる。
【0042】
ここで、採尿カップ9の形状と冷却器8の配置例を図11及び図12に基づいて以下に説明する。尚、図11及び図12は採尿カップ9の形状と冷却器8の配置例を模式的に示す平面図である。
【0043】
図11(a)に示す例では、採尿カップ9として平面視長方形のものを使用し、該採尿カップ9の周囲に冷却器8が平面視で長方形のリング状を成すように配置されている。図11(b)に示す例では、採尿カップ9として平面視で正方形のものを使用し、該採尿カップ9の周囲に冷却器8が平面視で正方形のリング状を成すように配置されている。又、図11(c)に示す例では、採尿カップ9として平面視で円形のものを使用し、該採尿カップ9の周囲に冷却器8が平面視で円形のリング状を成すように配置されている。
【0044】
図12(a),(b)に示す例では、冷却器8を平面視で矩形の複数のブロック81に区画し、これらが採尿カップ9の配置に応じて組み合わせて配置されるようになっている
。ここで、図12(a)は採尿カップ9がトレー4の中心部に配置された例を示し、図12(b)は採尿カップ9がトレー4の中心部から外れた長手方向端部に配置された例を示している。
【0045】
尿採集カバー7が形状を保持することが難しい可撓性シート等で構成されている場合には、該尿採集カバー7を図6に示すように冷却器8に直接接触しないように配置することは困難である。そのため、例えば、図13に示すように、尿採集カバー7の四隅に、垂直下方に向かって延びる支持脚75が取り付けられていてもよい。計4本の支持脚75によって尿採集カバー7が略水平に支持されるため、該尿採集カバー7が冷却器8に接触することなくトレー4内に確実に配置することができる。
【0046】
次に、第2実施形態のペット用尿採集トイレ1について説明するが、このペット用尿採集トイレ1のトイレ本体2の構成は、第1実施形態のトイレ本体2のそれと同じであるため、これについての図示及び説明は省略する。
【0047】
第2実施形態のペット用尿採集トイレ1においては、図14に示すように、トイレ本体2の上層部分A、具体的には、仕切層3の上に尿採集カバー7が配置され、トイレ本体2の下層部分Bに出し入れ可能に配置されたトレー4内に冷却器8及び採尿カップ9が配置されている。ここで、尿採集カバー7は、第1実施形態において用いられた尿採集カバー7と同様に構成されており、その中心部に集合部72を備え、集合部72の底面に開口部73が形成されている。尿採集カバー7の上には多数の排泄物処理材20が敷設されている。
【0048】
トイレ本体2の下層部分Bにおいて、採尿カップ9は、尿採集カバー7の開口部73の下方に配置され、且つトレー4上に配置されている。採尿カップ9の周囲には冷却器8が採尿カップ9を囲むように配置されている。ここで、採尿カップ9と冷却器8は、両者が直接接触しないように互いに離間して配置されている。
【0049】
以上のように構成されたペット用尿採集トイレ1を用いたときには、ペットである猫の尿が以下の要領で採集される。
即ち、猫は、図2に示すように、内容器6内に多数の排泄物処理材20が収容されたペット用尿採集トイレ1のトイレ本体2を乗り越え、多数の排泄物処理材20の上に載った状態で排泄を行う。
【0050】
そして、排泄物処理材20によって消臭された尿は、尿採集カバー7上に落下して開口部73へと集められる。尿は、開口部73から仕切層3の複数の貫通孔63(図1及び図3参照)を通過し、トレー4上に配置された採尿カップ9へと落下して該採尿カップ9によって採集される。そして、採尿カップ9に採集された尿は、採尿カップ9の周囲に配置された冷却器8によって冷却されるため、この尿から水分が蒸発したり、尿が腐敗して雑菌が繁殖する等の不具合が発生しにくい。
【0051】
上述のように採尿カップ9に尿が採集されると、トレー4をトイレ本体2(外容器5)から図3の矢印X方向に引き出し、引き出したトレー4に配置された採尿カップ9内の尿は、例えば、スポイト等の不図示の吸引具によって吸い取ることができ、ペットから排泄される尿を簡単に採集できる。この吸引具に吸い取られた尿は、一端が開口する密封可能な容器に移し替えられる。そして、尿が収容された容器の開口部が栓によって密閉される。内部に尿が密封された容器は、動物病院に持ち込まれ、動物病院で上述した所要の検査が行われる。
【0052】
以上のように、第2実施形態のペット用尿採集トイレ1を用いて猫の尿を採集すれば、
猫から排泄されて尿採集カバー7の開口部73から落下する尿を採尿カップ9によって受けて採集することができる。採集する尿は、トレー4の汚れによって汚染され難く、ペットから排泄される尿を簡単に採集できる。このように採集された尿を用いれば、正確な尿検査を行うことができる。そして、この場合、トレー4には尿が落下したり付着することがないため、尿を採集した後にトレー4を掃除する必要がなく、掃除の手間を省略して飼い主の肉体的負担が軽減される。
【0053】
第2実施形態のペット用尿採集トイレ1においては、中心部に開口部73が形成された尿採集カバー7を用いたが、尿採集カバー7には、猫の排泄位置に合わせて、例えば、図8に示す実施形態と同様に、中心部から外れた端部に開口部73を形成しても良い。又、尿採集カバー7に形成される開口部73は、必ずしも矩形である必要はなく、矩形以外の例えば円形、楕円形、多角形のものを形成しても良い。
【0054】
第2実施形態のペット用尿採集トイレ1においては、図9に示す実施形態と同様に、尿採集カバー7の開口部73にフィルタ10を設け、猫砂等の粉やゴミ等の異物をフィルタ10によって除去し、採尿カップ9に採集される尿への異物の混入を防ぐようにしても良い。
【0055】
第2実施形態のペット用尿採集トイレ1においては、図10(a),(b)に示す実施形態と同様に、尿採集カバー7に、集合部72の開口部73に向かって放射状に延びる複数の溝74(図10(a)には一部のみ図示)を形成しても良い。このように尿採集カバー7に、開口部73に向かう複数の溝74を形成すると、尿採集カバー7上に落下した尿が溝74に沿って流れ易くなるとともに、尿採集カバー7の溝74以外の部分に尿が溜まることがないため、尿を採尿カップ9に効率良く流し込んで採集することができる。
【0056】
その他、第2実施形態のペット用尿採集トイレ1においても、前記第1実施形態と同様に、採尿カップ9と冷却器8に関して、図11及び図12に示すような配置を採用しても良い。
【0057】
第2実施形態のペット用尿採集トイレ1においては、使用される尿採集カバー7と仕切層3とを図15に示すように一体化しても良い。
【0058】
尚、以上はペットが猫である場合に該猫が排泄する尿を採集するためのペット用尿採集トイレとこれを用いた尿採集方法について説明したが、本発明は、猫以外の他の任意のペットの尿の採集するためのペット用尿採集トイレに対しても同様に適用可能である。
【0059】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 ペット用尿採集トイレ
2 トイレ本体
3 仕切層
4 トレー(尿受け部)
42~44 トレーの周壁
5 外容器
6 内容器
7 尿採集カバー
71 尿採集カバーの斜面
72 尿採集カバーの集合部
73 尿採集カバーの開口部
74 尿採集カバーの溝
8 冷却器
9 採尿カップ
10 フィルタ
A 上層部分
B 下層部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15