(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】モータコア
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20220621BHJP
H02K 1/16 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H02K1/18 B
H02K1/16
(21)【出願番号】P 2018213644
(22)【出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-02-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間部 秀毅
(72)【発明者】
【氏名】浦田 信也
(72)【発明者】
【氏名】前田 義隆
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-324869(JP,A)
【文献】特開2016-111807(JP,A)
【文献】特開2007-166700(JP,A)
【文献】特開2007-159332(JP,A)
【文献】米国特許第09490667(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0028717(US,A1)
【文献】特開2015-061374(JP,A)
【文献】特開2002-272046(JP,A)
【文献】国際公開第2010/150354(WO,A1)
【文献】米国特許第07030540(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 1/16
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属板が積層された積層体を備え、前記積層体における外周縁側の固定位置で前記複数の金属板同士が固定部材により固定されたモータコアであって、
前記積層体における前記固定位置を含む外周縁部においては、前記金属板間に絶縁皮膜が設けられ、
前記積層体における前記外周縁部よりも内側においては
、前記金属板間に前記外周縁部の前記絶縁皮膜よりも薄い絶縁皮膜が設けられていることを特徴とするモータコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金属板が積層された積層体を備えるモータコアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータコアには、渦電流損を低減するために、電磁鋼板等の金属板が板間の絶縁体により互いに絶縁され、複数枚積層された積層体が多く用いられている。
【0003】
このような積層体が用いられたモータコアにおいては、渦電流損を低減する同時に、積層体における金属板が占める体積の割合である占積率を向上させることにより、トルク性能を向上させることが求められる。そして、渦電流損は金属板を薄くすることにより低減できるものの、金属板を薄くすると積層体における絶縁皮膜が占める体積の割合が大きくなり、占積率が低下することにより、トルク等の性能が低下することになる。
【0004】
また、金属板に優れた磁気特性を有するアモルファス合金薄帯やそれを結晶化したナノ結晶合金薄帯が用いられる場合には、電磁鋼板が用いられる場合と比べて、金属板が薄くなるため、渦電流損の低減には有利であるが、占積率が低下し、性能が低下する影響が大きくなる。
【0005】
渦電流損の低減とともに性能の向上を図る方法としては、例えば、特許文献1に記載されたコアのように、金属板を互いに絶縁するために金属板間に積極的に絶縁皮膜を設けることにより渦電流損の低減を図るとともに、性能の向上のために種々の工夫を施したコアが知られている。また、金属板間に生じる空隙を利用することで金属板を互いに絶縁することにより、絶縁皮膜を設けずに占積率を向上させたコアが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたコアのように、金属板を互いに絶縁するために金属板間に積極的に絶縁皮膜を設けたコアでは、積層体における周縁側の複数の金属板の固定位置から離れた中央側の領域において、金属板間に空隙が生じることにより、金属板間に絶縁皮膜及び空隙の厚さの合計分の間隔が生じることがある。このため、占積率が低下するおそれがある。特に、金属板に前記のアモルファス合金薄帯やナノ結晶合金薄帯が用いられる場合には、金属板が薄くなる分、占積率の低下が顕著となる。
【0008】
また、金属板間に生じる空隙を利用することで金属板を互いに絶縁した前記のコアでは、積層体における複数の金属板の固定位置に近い周縁部において、金属板同士が密着することにより、絶縁を十分に確保できないために、渦電流損を低減できないことがある。
【0009】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、渦電流損の低減及び占積率の向上を両立させることができるモータコアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決すべく、本発明に係るモータコアは、複数の金属板が積層された積層体を備え、前記積層体における周縁側の固定位置で前記複数の金属板同士が固定部材により固定されたモータコアであって、前記積層体における前記固定位置を含む周縁部においては、前記金属板間に絶縁皮膜が設けられ、前記積層体における中央部においては、前記金属板間に絶縁皮膜が設けられていないか、又は前記金属板間に前記周縁部よりも薄い絶縁皮膜が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、渦電流損の低減及び占積率の向上を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係るモータコアの一例を示す概略斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1のA-A線に沿う断面を示す概略断面図であり、(b)は、(a)のX部分の拡大図であり、(c)は、(a)のY部分の拡大図である。
【
図3】(a)は、
図2に示される金属薄板を示す概略平面図であり、(b)は、
図2に示される金属薄板及び絶縁皮膜を示す概略平面図である。
【
図4】
図1のB-B線に沿う断面の一例を示す写真である。
【
図5】(a)は、第2実施形態に係るモータコアの一例を示す
図2(a)に対応する概略断面図であり、(b)は、(a)のX部分の拡大図であり、(c)は、(a)のY部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るモータコアは、複数の金属板が積層された積層体を備え、前記積層体における周縁側の固定位置で前記複数の金属板同士が固定部材により固定されたモータコアであって、前記積層体における前記固定位置を含む周縁部においては、前記金属板間に絶縁皮膜が設けられ、前記積層体における中央部においては、前記金属板間に絶縁皮膜が設けられていないか、又は前記金属板間に前記周縁部よりも薄い絶縁皮膜が設けられていることを特徴とする。
【0014】
以下、本発明に係るモータコアの実施形態として、積層体における中央部の金属板間に絶縁皮膜が設けられていない第1実施形態、及び積層体における中央部の金属板間に周縁部よりも薄い絶縁皮膜が設けられている第2実施形態を説明する。なお、以下の第1実施形態及び第2実施形態の説明における「金属薄板」とは、各実施形態に係る金属板の一つの態様に相当する薄板である。
【0015】
I.第1実施形態
まず、第1実施形態に係るモータコアの概略について、図に例示して説明する。ここで、
図1は、第1実施形態に係るモータコアの一例を示す概略斜視図である。
図2(a)は、
図1のA-A線に沿う断面を示す概略断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のX部分の拡大図であり、
図2(c)は、
図2(a)のY部分の拡大図である。
図3(a)は、
図2に示される金属薄板を示す概略平面図であり、
図3(b)は、
図2に示される金属薄板及び絶縁皮膜を示す概略平面図である。
図4は、
図1のB-B線に沿う断面の一例を示す写真である。
【0016】
図1及び
図2(a)に示されるように、第1実施形態に係るモータコア10は、複数の金属薄板(金属板の一つの態様)2が積層された積層体4と、積層体4を積層方向から挟持する一対のエンドプレート5と、積層体4における周縁側の固定位置で複数の金属薄板2同士をエンドプレート5とともに締結するリベット6と、を備えるステータコアである。積層体4は、周縁側の環状のバックヨーク部4y(周縁部)及びこのバックヨーク部4yから中央側へ突出するティース部4t(中央部)から構成される構造を有する。
【0017】
図2(a)及び
図3(a)に示されるように、複数の金属薄板2には、バックヨーク部4yに含まれる周縁側の固定位置を貫通する固定孔2hがそれぞれ設けられている。また、エンドプレート5にも、同様の周縁側の固定位置を貫通するプレート固定孔5hが設けられている。リベット6は、複数の金属薄板2の固定孔2h及びエンドプレート5のプレート固定孔5hを貫通してそれらを締結している。
【0018】
図2(a)~
図2(c)及び
図3(b)に示されるように、バックヨーク部4yにおいては、金属薄板2間に絶縁皮膜8が設けられている。また、ティース部4tにおいては、金属薄板2間に絶縁皮膜8が設けられていない。
【0019】
図4に示されるように、バックヨーク部4yでは、ティース部4tと比較して、複数の金属薄板2同士をリベット6で締結する積層方向の圧力が大きいので、
図2(a)に示される金属薄板2間の間隔が狭まり、金属薄板2同士が密着しようとする。それにもかかわらず、
図2(a)、
図2(b)、及び
図3(b)に示されるように、金属薄板2間に絶縁皮膜8が設けられているため、金属薄板2間の絶縁を十分に確保できる。これに対し、
図4に示されるように、ティース部4tでは、上述した積層方向の圧力が小さいので、金属薄板2同士が密着しようとしない。このため、
図2(a)、
図2(c)、及び
図3(b)に示されるように、金属薄板2間に絶縁皮膜8が設けられていないにもかかわらず、モータコア10の態様次第では、金属薄板2間に生じる空隙9により、金属薄板2間の絶縁を十分に確保できる。
【0020】
したがって、第1実施形態によれば、積層体における金属板間に絶縁皮膜が設けられていないモータコアと比較すると、周縁部の金属板間に絶縁皮膜が設けられていることにより、積層体における金属板間の絶縁を十分に確保できるために、渦電流損を低減することができる。同時に、積層体における中央部の金属板間に絶縁皮膜が設けられたモータコアと比較すると、積層体における中央部の金属板間の間隔が、絶縁皮膜が設けられていない分だけ狭くなるために、占積率を向上させることができる。よって、渦電流損の低減及び占積率の向上を両立させることができる。さらに、積層体における中央部の金属板間に絶縁皮膜が設けられていない分だけ、絶縁皮膜の材料費を削減することができる。
【0021】
続いて、第1実施形態に係るモータコアの各構成について、詳細に説明する。
【0022】
1.積層体
積層体は、複数の金属板が積層されたものである。積層体における周縁側の固定位置で複数の金属板同士が固定部材により固定されている。積層体における固定位置を含む周縁部においては、金属板間に絶縁皮膜が設けられている。積層体における中央部においては、金属板間に絶縁皮膜が設けられていない。
【0023】
固定位置は、具体的には、積層体を積層方向から平面視した場合における、複数の金属板同士が固定部材により固定されている周縁側の位置である。固定位置は、モータコアの種類等によって異なり、ステータコアである場合には、例えば、積層体のバックヨーク部における径方向の中心部付近になることが好ましい。
【0024】
周縁部は、具体的には、積層体を積層方向から平面視した場合における固定位置を含む環状の部分である。周縁部は、モータコアの種類によって異なり、ステータコアである場合には、例えば、
図1に示されるようなバックヨーク部となる。なお、周縁部は、
図1に示されるバックヨーク部のように周縁まで延在していてもよいが、周縁まで延在していなくてもよい。周縁部の幅は、特に限定されないが、モータコアの種類等によって異なり、ステータコアである場合には、例えば、外径の1/3~1/2程度の範囲内となる。
【0025】
中央部は、具体的には、積層体を積層方向から平面視した場合における固定位置よりも中央側の部分である。中央部は、モータコアの種類等によって異なり、ステータコアである場合には、例えば、
図1に示されるようなティース部となる。
【0026】
(1)絶縁皮膜
絶縁皮膜は、周縁部の金属板間に設けられており、中央部の金属板間に設けられていないものである。
【0027】
ここで、本発明において、「絶縁皮膜」とは、金属板の製造後に金属板間に積極的に形成される絶縁皮膜を意味する。このため、絶縁皮膜には、例えば、金属板の製造過程等で必然的に金属板の表面に形成される酸化膜等は含まれない。
【0028】
絶縁皮膜としては、
図2に示される絶縁皮膜8のように、周縁部の全体に設けられたものが好ましい。金属板間の絶縁をより効果的に確保できるからである。また、周縁部の一部に設けられたものでもよい。絶縁皮膜の材料費をより効果的に削減できるからである。
【0029】
絶縁皮膜の材料は、所望の絶縁性が得られれば特に限定されず、無機材料、有機材料、有機と無機の複合材料のいずれでもよいが、例えば、無機材料としては、SiO2等が挙げられ、有機材料としては、ポリイミド等が挙げられる。
【0030】
絶縁皮膜の形成方法は、特に限定されず、一般的な方法を使用できるが、例えば、塗布法、スパッタリング法、蒸着法等が挙げられる。
【0031】
周縁部の金属板間に設けられた絶縁皮膜の平均膜厚は、絶縁皮膜の材料等によって異なり、SiO2等の無機材料である場合には、例えば、0.1μm~0.5μmの範囲内であり、中でも、0.1μm~0.3μmの範囲内、特に、0.1μm~0.2μmの範囲内が好ましい。ポリイミド等の有機材料である場合には、例えば、0.1μm~0.5μmの範囲内であり、中でも、0.1μm~0.3μmの範囲内、特に、0.1μm~0.2μmの範囲内が好ましい。厚過ぎると占積率を向上させることが困難となるおそれがあるからであり、薄過ぎると金属板間の絶縁を十分に確保できなくなるおそれがあるからである。
【0032】
ここで、本発明において、「絶縁皮膜の平均膜厚」とは、例えば、絶縁皮膜の膜厚を、絶縁皮膜に圧力が加えられていない状態で測定して求められるものを意味する。そして、「絶縁皮膜の平均膜厚」は、例えば、オージェ電子分光法(AES)、透過型電子顕微鏡(TEM)等による測定により求められるものである。
【0033】
(2)金属板
金属板の材質としては、特に限定されないが、例えば、電磁鋼板(ケイ素鋼板)、アモルファス合金薄帯、ナノ結晶合金薄帯等が挙げられる。ここで、「ナノ結晶合金薄帯」とは、アモルファス合金薄帯が結晶化されたものであって、化合物相の析出及び結晶粒の粗大化を実質的に生じさせずに微細な結晶粒を析出させることによって、所望の軟磁気特性が得られるものを意味する。
【0034】
金属板の材質としては、中でもアモルファス合金薄帯、ナノ結晶合金薄帯等が好ましい。電磁鋼板と比較して、厚さが1/10程度まで薄くなるので、厚さが同程度の積層体を得るためには、10倍程度の枚数を積層する必要がある。この結果、積層体における絶縁皮膜が占める体積の割合が大きくなり、占積率が低下する影響が顕著に表れる。よって、占積率を向上させる効果が顕著となるからである。
【0035】
金属板の厚さは、特に限定されないが、金属板の材質等によって異なり、電磁鋼板である場合には、例えば、0.25mm程度であり、アモルファス合金薄帯やナノ結晶合金薄帯である場合には、例えば、0.025mm程度である。
【0036】
金属板の形状は、特に限定されないが、例えば、ステータコアやロータコアに用いられる合金板の形状等が挙げられる。なお、金属板は、固定部材が金属板を貫通するものである場合には、
図2(a)及び
図3(a)に示されるように、固定部材を貫通させる固定孔が設けられたものとなる。
【0037】
(3)積層体の積層枚数等
積層体における金属板の積層枚数は、特に限定されないが、金属板の材質等に応じ、モータで所望のトルクが得られるように適宜定めることができる。また、積層体の厚さも、特に限定されないが、金属板の材質等に応じ、所望のトルクが得られるように適宜定めることができる。
【0038】
2.固定部材
固定部材は、固定位置で複数の金属板同士を固定するものである。
固定部材は、積層体に固定位置で積層方向の圧力が加わる態様で用いられるものであれば特に限定されず、積層体に一般的なものを使用することができる。例えば、
図1に示されるようなリベットやボルトとナット等が挙げられる。
【0039】
3.モータコア
モータコアは、特に限定されず、一般的なモータコアとして用いることができるが、例えば、
図1に示されるようなステータコアやロータコア等が挙げられる。
【0040】
モータコアは、例えば、
図1に示されるように、積層体を積層方向から挟持する一対のエンドプレートを備えていてもよい。エンドプレートとしては、例えば、モータコアに一般的なものを使用することができる。なお、エンドプレートは、固定部材がエンドプレートを貫通するものである場合には、
図2(a)に示されるように、固定部材を貫通させるプレート固定孔が設けられたものとなる。
【0041】
モータコアは、例えば、
図1に示される、複数の金属薄板2同士が一対のエンドプレート5を介してリベット6により締結されているモータコア1のように、複数の金属板同士がエンドプレートのような他の部材を介して固定部材により固定されたものでもよいが、複数の金属板同士が直接固定部材により固定されたものでもよい。
【0042】
なお、第1実施形態においては、絶縁皮膜が中央部の金属板間に設けられていないため、第2実施形態と比較して、中央部の金属板間の間隔がより狭くなり、占積率をより大きく向上させることができ、さらに材料費をより効果的に削減できる。
【0043】
II.第2実施形態
以下、第2実施形態について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。
まず、第2実施形態に係るモータコアの概略について、図に例示して説明する。ここで、
図5(a)は、第2実施形態に係るモータコアの一例を示す概略断面図であり、
図2(a)に対応する概略断面図である。
図5(b)は、
図5(a)のX部分の拡大図であり、
図5(c)は、
図5(a)のY部分の拡大図である。
【0044】
第2実施形態に係るモータコア10は、
図5(a)~
図5(c)に示されるように、バックヨーク部4y(周縁部)においては、金属薄板(金属板の一つの態様)2間に絶縁皮膜8aが設けられており、ティース部4t(中央部)においては、金属薄板2間にバックヨーク部4yよりも薄い絶縁皮膜8bが設けられている。よって、バックヨーク部4yでは、複数の金属薄板2同士をリベット6で締結する積層方向の圧力が大きいので、金属薄板2同士が密着しようとするにもかかわらず、絶縁皮膜8aにより、金属薄板2間の絶縁を十分に確保できる。これに対し、ティース部4tでは、上述した積層方向の圧力が小さいので、金属薄板2同士が密着しようとしないため、金属薄板2間の絶縁皮膜8bがバックヨーク部4yよりも薄いにもかかわらず、モータコア10の態様次第では、金属薄板2間に生じる空隙9及び絶縁皮膜8bにより、金属薄板2間の絶縁を十分に確保できる。
【0045】
したがって、第2実施形態によれば、積層体における金属板間に絶縁皮膜が設けられていないモータコアと比較すると、周縁部及び中央部の金属板間に絶縁皮膜が設けられていることにより、積層体における金属板間の絶縁を十分に確保できるために、渦電流損を低減することができる。同時に、積層体における中央部の金属板間に周縁部と同一の膜厚の絶縁皮膜が設けられたモータコアと比較すると、積層体における中央部の金属板間の間隔が、絶縁皮膜が薄い分だけ狭くなるために、占積率を向上させることができる。よって、渦電流損の低減及び占積率の向上を両立させることができる。さらに、積層体における中央部の金属板間の絶縁皮膜が薄い分だけ、絶縁皮膜の材料費を削減することができる。
【0046】
続いて、第2実施形態に係るモータコアの各構成について、第1実施形態とは異なる点を中心に詳細に説明する。
【0047】
第2実施形態に係るモータコアは、第1実施形態とは異なり、積層体における中央部においては、金属板間に周縁部よりも薄い絶縁皮膜が設けられている。ここで、本発明において、「周縁部よりも薄い絶縁皮膜」とは、具体的には、平均膜厚が周縁部の金属板間に設けられた絶縁皮膜よりも薄い絶縁皮膜を意味する。
【0048】
中央部の金属板間に設けられた絶縁皮膜の平均膜厚は、絶縁皮膜の材料等によって異なり、SiO2等の無機材料である場合には、例えば、0.5μm以下の範囲内であり、中でも、0.3μm以下の範囲内、特に、0.2μm以下の範囲内が好ましい。ポリイミド等の有機材料である場合には、例えば、0.5μm以下の範囲内であり、中でも、0.3μm以下の範囲内、特に、0.2μm以下の範囲内が好ましい。厚過ぎると占積率を向上させることが困難となるおそれがあるからである。
【0049】
なお、周縁部の金属板間に設けられた絶縁皮膜及び中央部の金属板間に設けられた絶縁皮膜は、通常、同一の材料を用いて、同一の方法により形成されたものである。
【0050】
第2実施形態に係るモータコアの各構成は、ここで説明した内容を除いて、第1実施形態と同様である。なお、第2実施形態においては、中央部の金属板間に絶縁皮膜が設けられているため、第1実施形態と比較して、中央部の金属板間の絶縁をより効果的に確保して、渦電流損をより大きく低減することができる。
【0051】
以上、本発明に係るモータコアの実施形態について詳細に説明したが、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0052】
2 金属薄板
4 積層体
6 リベット
8 絶縁皮膜
10 モータコア