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特許7092661強靱化ポリ(アリールエーテルスルホン)/ポリ(アリールエーテルケトン)ブレンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】強靱化ポリ(アリールエーテルスルホン)/ポリ(アリールエーテルケトン)ブレンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/06 20060101AFI20220621BHJP
   C08L 71/10 20060101ALI20220621BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20220621BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C08L81/06
C08L71/10
C08L33/04
C08L33/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018512148
(86)(22)【出願日】2016-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2016071329
(87)【国際公開番号】W WO2017042349
(87)【国際公開日】2017-03-16
【審査請求日】2019-08-09
(31)【優先権主張番号】62/216,115
(32)【優先日】2015-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15195914.5
(32)【優先日】2015-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブッシェルマン, コリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】デシオ, グレン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】サッティク, ウィリアム イー.
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-290328(JP,A)
【文献】特開平11-029707(JP,A)
【文献】特表平05-500986(JP,A)
【文献】特表2009-520858(JP,A)
【文献】特開昭61-106666(JP,A)
【文献】特開2004-238585(JP,A)
【文献】特開昭59-184255(JP,A)
【文献】特表2016-529130(JP,A)
【文献】特表2016-501927(JP,A)
【文献】特開平05-125279(JP,A)
【文献】特開昭58-173151(JP,A)
【文献】特表2010-525126(JP,A)
【文献】特開2015-028181(JP,A)
【文献】特開2014-196484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーと、
- 少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)ポリマーと、
- 少なくとも1種の衝撃改質剤(IM)と
を含み、
衝撃改質剤(IM)は、1種または2種以上の(メタ)アクリレートモノマーに由来する繰り返し単位と、エチレン、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル及びスチレンから選択される1種または2種以上のモノマーに由来する繰り返し単位を含むランダムポリマーであり、
(メタ)アクリレートモノマーは、一般式:
CH=C(R)-C(=O)-ORMA
(式中、Rは、HまたはCHであり、RMAはエポキシ含有炭化水素基またはHである)で表される、ポリマー組成物。
【請求項2】
- 少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーと、
- 少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)ポリマーと、
- 少なくとも1種の衝撃改質剤(IM)と
を含み、
衝撃改質剤(IM)は、少なくともエチレンに由来する繰り返し単位及びグリシジルメタクリレートに由来する繰り返し単位を含むランダムポリマーを含む、ポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーは、式(A):
-Ar-(T’-Ar-O-Ar-SO-[Ar-(T-Ar-SO-Ar-O- (A)
(式中、
互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるAr、Ar、Ar、Ar、およびArは、独立して、芳香族単核または多核基であり;
互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるTおよびT’は、独立して、結合または1つもしくは2つ以上のヘテロ原子を任意選択的に含む二価基であり;および
互いに等しいかまたは異なるnおよびmは、独立して、ゼロまたは1~5の整数である)
によって表される繰り返し単位を含む、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
Ar、Ar、Ar、ArおよびArは、互いに等しいかまたは異なり、かつ以下の式の群:
(式中、各Rは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ性土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ性土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、互いに等しいかまたは異なるj、kおよびlは、独立して、0、1、2、3または4である)
から選択される式によって表される、請求項3に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーは、式:
(式中、
互いに等しいかまたは異なるR’のそれぞれは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ性土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ性土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され;および
j’は、ゼロであるかまたは0~4の整数であり;および
互いに等しいかまたは異なるTおよびT’は、結合、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(ここで、各RおよびRは、互いに独立して、水素またはC~C12アルキル、C~C12アルコキシ、またはC~C18アリール基である);nが1~6の整数である-(CH-および-(CF-;最大でも6個の炭素原子の線状または分岐の脂肪族二価基;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される)
の群から選択される繰り返し単位を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーは、式:
のものからなる群から選択される繰り返し単位を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーの繰り返し単位の50モル%超は、式:

の繰り返し単位である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーは、式:

の繰り返し単位を含み、
携帯用電子機器の1以上の部品の製造に用いられる、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)ポリマーの繰り返し単位の50モル%超は、式(J-A)~(J-P):

(式中、
- 互いに等しいかまたは異なるR’のそれぞれは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ性土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ性土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され;および
- jは、ゼロまたは1~4の範囲の整数である)
からなる群から選択される繰り返し単位(RPAEK)である、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記繰り返し単位(RPAEK)は、以下の式(J’-A)~(J’-P):
のものからなる群から選択される、請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)ポリマーは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
芳香族ポリカーボネートポリマーをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
以下の式(IX):
(式中、Ar’は、
以下の式(X)及び(XI):
(式中、各R、RおよびRは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ性土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ性土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムから独立して選択され;Tは、C~C20アルキル、C~C15シクロアルキル、C~C20アリール、C~C20アルキルアリール、C~C20アラルキル、C~C20アルケニル、およびハロゲンから選択され;q、rおよびsは、独立して、0~4の整数である)
の一つによって表される)
によって表される繰り返し単位(Rpc)を含むポリカーボネートポリマーをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーは、前記PAESと前記PAEKとの総重量の約40重量%~約99重量%の範囲の量で存在する、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含む少なくとも1つの構造部品を含む携帯用電子機器。
【請求項16】
約200J/m以上のノッチ付きアイゾット衝撃と、2.0%以上の日焼け止め剤試験臨界汚れと、少なくとも91.0のCIE色Lとの組み合わせを示す、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年9月9日出願の米国仮特許出願第62/216,115号および2015年11月23日出願の欧州特許出願公開第15195914.5号に対する優先権を主張するものであり、それらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、ポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマーと、ポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーと、衝撃改質剤とを含む高性能ポリマー組成物であって、改善された衝撃強度および耐化学薬品性を示す高性能ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
今日、携帯電話、携帯端末(PDA)、ラップトップコンピュータ、MP3プレーヤーなどの携帯用電子機器は、世界中で広く使用されている。携帯用電子機器は、さらに一層の携帯性および利便性を求めてますます小さくかつ軽くなりつつあり、一方、同時により進んだ機能およびサービスを行うことが一層可能になっており、両方とも機器およびネットワークシステムの開発による。
【0004】
利便性のために、多くの場合、これらの機器は小さくかつ軽量であることが望ましい。しかし、それらは依然として、それらが通常の取扱および時折の落下によって損傷しないように、一定の構造強度を有することが必要である。したがって、その主要な機能が、強度、および/または剛性、および/または耐衝撃性を機器に提供し、かつ場合によりまた、機器の様々な内装構成要素および/または携帯用電子機器ケース(外側ハウジング)の一部またはすべてのための取付場所を提供することである構造部品が、通常、そのような機器へ組み込まれる。過去、マグネシウムまたはアルミニウムなどの低密度金属がそのような構造部品用の選択される材料であったが、合成樹脂が、費用削減、設計柔軟性、減量、および美的特性の理由で、次第にそのような金属に少なくとも部分的に置き換わっている。電子機器での金属の使用に関連した別の問題は、それらが高周波を通さないことであり、そのため、電子機器を金属で覆うことができない。電子機器のプラスチック部品は、そのため、様々な複雑な形状へ加工するのが容易であり、優れた耐衝撃性など、頻繁な使用の厳しさに耐えることができ、かつ困難な美的要求を満たすことができ、および一方でそれらの意図される操作性を妨げない材料で製造される。
【0005】
それにもかかわらず、特定の場合、携帯用電子機器の構造部品をすべてプラスチック材料で置き換えることはできず、金属/合成樹脂アセンブリが多くの場合に見られる。そのような場合、携帯機器に存在する金属部品、例えばアルミニウム部品および/またはアルミニウム/プラスチック複合部品は、一般に、陽極酸化、すなわち、その目的が、とりわけ攻撃的な化学薬品の使用によって酸化物層をアルミニウム表面上に構築することである電気化学的プロセスにかけられる。陽極酸化が、既にポリマー要素を含む/ポリマー要素中へ組み立てられた部品に関して行われるという事実を考慮して、プラスチック材料は、攻撃的な酸に高度に耐えなければならない。
【0006】
携帯エレクトロニクス部品に使用されるプラスチック材料に対する追加の要件は、それらが、多くの場合にそれらと、特にハウジングと接触する消費者化学薬品および汚染剤に耐えることである。典型的な消費者化学薬品および汚染剤は、ローション(ハンドローション、日焼け止めローションなど)、メーキャップ(口紅、リップグロス、リップライナー、リッププランパー、リップクリーム、ファンデーション、粉おしろい、頬紅などの)、食品(オリーブ油、コーヒー、赤ワイン、マスタード、ケチャップおよびトマトソース)、染料および顔料(ポータブル電子機器ハウジングの製造のために使用される染色織物および皮革に見いだされるものなどの)を含む。これらの汚染剤と接触すると、ポータブル電子機器ハウジングは、容易に汚され得、そのため、特にそれらが白色であるかまたは鮮やかなもしくは無色透明な色を有する場合、特に汚れ防止特性が前記機器の良好な美的外観を維持するために望ましい。
【0007】
消費者化学薬品への暴露は、プラスチック材料の耐化学薬品性が十分でない場合に部品の早期の破損および/または環境応力亀裂をもたらし得る。
【0008】
加えて、ポリマー材料は、電子機器での使用のための優れた耐衝撃性を有するべきであるが、二酸化チタン(TiO)などの着色剤の添加は、いくつかの場合に靱性の低下をもたらし得る。
【0009】
したがって、高い耐衝撃性および良好な美的特性に加えて、高い耐化学薬品性を示すプラスチック材料を提供することが必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
例示的な実施形態は、少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーと、少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)ポリマーと、少なくとも1種の衝撃改質剤(IM)とを含むポリマー組成物に向けられる。本ポリマー組成物は、任意選択的に、少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート(PC)および/または二酸化チタン(TiO)を含んでもよい。ポリマー組成物は、携帯用電子機器での使用に特に好適である。
【0011】
例示的な実施形態は、少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーと、少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)ポリマーと、少なくとも1種の衝撃改質剤(IM)とを含むポリマー組成物に向けられる。
【0012】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーは、式(A):
-Ar-(T’-Ar-O-Ar-SO-[Ar-(T-Ar-SO-Ar-O- (A)
(式中、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるAr、Ar、Ar、Ar、およびArは、独立して、芳香族単核または多核基であり;互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるTおよびT’は、独立して、結合または1つもしくは2つ以上のヘテロ原子を任意選択的に含む二価基であり;および互いに等しいかまたは異なるnおよびmは、独立して、ゼロまたは1~5の整数である)
によって表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0013】
Ar、Ar、Ar、ArおよびArは、互いに等しいかまたは異なってもよく、かつ以下の式の群:
(式中、各Rは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ性土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ性土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;互いに等しいかまたは異なるj、kおよび1は、独立して、0、1、2、3または4である)
から選択される式によって表され得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーは、式:
(式中、互いに等しいかまたは異なるR’のそれぞれは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ性土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ性土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され;およびj’は、ゼロであるかまたは0~4の整数であり;および互いに等しいかまたは異なるTおよびT’は、結合、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(ここで、各RおよびRは、互いに独立して、水素またはC~C12アルキル、C~C12アルコキシ、またはC~C18アリール基である);nが1~6の整数である-(CH-および-(CF-;最大でも6個の炭素原子の線状または分岐の脂肪族二価基;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される)
の群から選択される繰り返し単位を含む。
【0015】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)は、式:
のものからなる群から選択される繰り返し単位を含んでもよい。
【0016】
好ましくは、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)の繰り返し単位の50モル%超は、式:
の繰り返し単位である。
【0017】
例示的な実施形態によれば、少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)の繰り返し単位の50モル%超は、式(J-A)~(J-P):
(式中、互いに等しいかまたは異なるR’のそれぞれは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ性土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ性土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され;およびjは、ゼロまたは1~4の範囲の整数である)
からなる群から選択される繰り返し単位(RPAEK)である。
【0018】
好ましくは、繰り返し単位(RPAEK)は、本明細書における以下の式(J’-A)~(J’-P):
のものからなる群から選択される。
【0019】
好ましくは、少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)ポリマーは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。
【0020】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の衝撃改質剤(IM)は、アクリル弾性コポリマーを含む。
【0021】
衝撃改質剤(IM)は、以下のコポリマー:
(i)ASTM D 3418に従って測定されるときに25℃未満のガラス転移温度を有し、かつアルキル(メタ)アクリレートおよびアクリロニトリルからなる群から選択される1種または2種以上のアクリルモノマーに由来する繰り返し単位を含む弾性コポリマー;および
(ii)中心コアと、コアを少なくとも部分的に取り囲むシェルとを含むコア-シェルエラストマーであって、前記コアおよび前記シェルは、異なるモノマー組成を有し、および前記コアおよび前記シェルの少なくとも1つは、ASTM D 3418に従って測定されるときに25℃未満のガラス転移温度の弾性性質のものであり、かつ前記コアおよび前記シェルの少なくとも1つは、アルキル(メタ)アクリレートおよびアクリロニトリルからなる群から選択される1種または2種以上のアクリルモノマーに由来する繰り返し単位を含む、コア-シェルエラストマー
から選択されてもよい。
【0022】
例示的な実施形態によれば、ポリマー組成物は、以下の式(IX):
(式中、Ar’は、以下の式(XII)
(式中、各
は、ハロゲン、アルキル、過ハロゲン化アルキル、アルケニル、過ハロゲン化アルキニル、アリール、過ハロゲン化アリール、エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ性土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ性土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、第四級アンモニウム、またはそれらの任意の組み合わせから独立して選択され;n’’は、1~20の範囲の整数であり;およびtは、0~2の範囲の整数である)
によって表される)
によって表される繰り返し単位(Rpc)を含むポリカーボネートポリマーをさらに含む。
【0023】
ポリマー組成物はまた、二酸化チタン(TiO)を含んでもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーは、PAESとPAEKとの総合重量の約40重量%~約99重量%の範囲の量で存在する。
【0025】
例示的な実施形態は、本明細書に記載されるようなポリマー組成物を含む造形品を含む。
【0026】
例示的な実施形態はまた、本明細書に記載されるようなポリマー組成物を含む少なくとも1つの構造部品を含む携帯用電子機器を含む。
【0027】
ポリマー組成物は、約200J/m以上のノッチ付きアイゾット衝撃と、2.0%以上の日焼け止め剤試験臨界歪み(以下に記載されるような)と、少なくとも91.0のCIE色Lとの組み合わせを示し得る。
【発明を実施するための形態】
【0028】
例示的な実施形態は、少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマー(ここで、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)は、好ましくは、ポリフェニルスルホン(PPSU)である)と、少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)(ここで、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)は、好ましくは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である)と、少なくとも1種の衝撃改質剤(IM)とを含むポリマー組成物を含む。任意選択的に、ポリマー組成物は、少なくとも1種のポリカーボネート(PC)を含んでもよい。ポリマー組成物は、任意選択的に、二酸化チタン(TiO)を含んでもよい。
【0029】
明確にするために、本出願の全体にわたり、
- 用語「ハロゲン」は、特に明記しない限り、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含み;
- 用語「方法」は、プロセスの同意語として用いられ、逆も同様であり;
- 形容詞「芳香族」は、4n+2(ここで、nは、0または任意の正の整数である)に等しい数のπ電子を有する任意の単核または多核環基(または部分)を意味し、芳香族基(または部分)は、アリールまたはアリーレン基(または部分)部分であり得る。
- 「アリール基」は、1つのベンゼン環から、または2つ以上の隣接環炭素原子を共有することによって一緒に縮合した複数のベンゼン環からなる1つのコアから、および1つの末端からなる炭化水素一価基である。アリール基の非限定的な例は、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、テトラセニル、トリフェニリル、ピレニル、およびペリレニル基である。アリール基の末端は、アリール基のベンゼン環に含有される炭素原子の自由電子であり、ここで、前記炭素原子に結合していた水素原子は除去されている。アリール基の末端は、別の化学基と結合することができる。
- 「アリーレン基」は、1つのベンゼン環から、または2つ以上の隣接環炭素原子を共有することによって一緒に縮合した複数のベンゼン環からなる1つのコアから、および2つの末端からなる炭化水素二価基である。アリーレン基の非限定的な例は、フェニレン、ナフチレン、アントリレン、フェナントリレン、テトラセニレン、トリフェニリレン、ピレニレン、およびペリレニレンである。アリーレン基の末端は、アリーレン基のベンゼン環に含有される炭素原子の自由電子であり、ここで、前記炭素原子に結合していた水素原子は除去されている。アリーレン基の各末端は、別の化学基と結合を形成することができる。
- 「携帯用電子機器」とは、好都合に運ばれかつ様々な場所で使用されるように設計されている電子機器を意味する。携帯用電子機器の代表的な例としては、携帯電話、携帯端末、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ラジオ、カメラおよびカメラ付属品、時計、計算機、音楽プレーヤー、全地球測位システム受信機、ポータブルゲーム機、ハードドライブならびに他の電子記憶装置などが挙げられる。
- 「携帯用電子機器の構造部品」とは、ハウジングなどの携帯用電子機器の外部構造部品を含むだけでなく、多くの場合に目に見えないことがあり得、すなわち、それらが、携帯用電子機器が通常使用される構成では通常目に見えない(ただし、それらは携帯用電子機器が解体された場合に目に見え得る)、携帯用電子機器の内部にあり得る内部構造部品も含む任意の構造部品を意味する。
【0030】
構造部品は、それがその所望の機能を果たすような任意の形状であってもよい。例えば、それは携帯用電子機器の外縁周りの完全または部分「フレーム」であり得、それは格子細工の形態での1つ以上の別個のビームおよび/または多数のビームの形態にあり得、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。それは、取付け穴またはそれ自体と回路基板、マイクロホン、スピーカー、ディスプレイ、バッテリー、カバー、ハウジング、電気または電子コネクタ、ヒンジ、アンテナ、スイッチ、およびスイッチパッドなどの携帯用電子機器の別のアイテムとの間のスナップ式コネクタなどの他の固定デバイスなどのアイテムへ形成され得る。本構造部品が有用である携帯用電子機器には、携帯電話、携帯端末(PDA)、音楽記憶およびリスニング機器、ポータブルDVDプレーヤー、電気マルチメーター、携帯用電子ゲーム機、携帯用パソコン(ノートブックコンピュータなど)が含まれる。
【0031】
ポリ(アリールエーテルスルホン)
本発明の目的のために、表現「ポリ(アリールエーテルスルホン)」および「PAES」は、その繰り返し単位の少なくとも50モル%が、少なくとも1つのアリーレン基と、少なくとも1つのエーテル基(-O-)と、少なくとも1つのスルホン基[-S(=O)-]とを含有する1つ以上の式の繰り返し単位(RPS)である任意のポリマーを意味することを意図される。
【0032】
上に詳述されたようなPAESでは、繰り返し単位の好ましくは60モル%超、より好ましくは80モル%超、さらにより好ましくは90モル%超が繰り返し単位(RPS)である。さらに、PAESの実質的にすべての繰り返し単位が繰り返し単位(RPS)であることが一般に好ましい。
【0033】
PAESのアリーレン基は、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、ニトロ、シアノ、アルコキシ、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ性土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ性土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で任意選択的に置換されている、6~36個の炭素原子を含む芳香族ラジカルであってもよい。
【0034】
繰り返し単位(RPS)は、有利には、以下に示されるような式(A):
-Ar-(T’-Ar-O-Ar-SO-[Ar-(T-Ar-SO-Ar-O- (A)
(式中、
- 互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるAr、Ar、Ar、Ar、およびArは、独立して、芳香族単核または多核基であり;
- 互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるTおよびT’は、独立して、結合または1つもしくは2つ以上のヘテロ原子を任意選択的に含む二価基であり;
互いに等しいかまたは異なるnおよびmは、独立して、ゼロまたは1~5の整数である)
の繰り返し単位である。
【0035】
好ましくは、Ar、Ar、Ar、ArおよびArは、互いに等しいかまたは異なり、かつ以下の式:
(式中、各Rは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ性土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ性土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、および互いに等しいかまたは異なるj、kおよびlは、独立して、0、1、2、3または4である)
に従うものからなる群から好ましくは選択される芳香族部分である。
【0036】
Arは、ナフチレン(および特に2,6-ナフチレン)、アントリレン(および特に2,6-アントリレン)およびフェナントリレン(および特に2,7-フェナントリレン、ナフタセニレンならびにピレニレン基などの縮合ベンゼン環;ピリジン、ベンズイミダゾール、キノリンなど、その少なくとも1つがヘテロ原子である、5~24個の原子を含む芳香族炭素環系からなる群からさらに選択されてもよい。ヘテロ原子は、多くの場合、N、O、Si、PおよびSから選択される。それは、より多くの場合、N、OおよびSから選択される。
【0037】
好ましくは、互いに等しいかまたは異なる式(A)のTおよびT’は、結合、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(ここで、各RおよびRは、互いに独立して、水素またはC~C12アルキル、C~C12アルコキシ、またはC~C18アリール基である);n=1~6の整数である-(CH-および-(CF-、または最大でも6個の炭素原子の線状または分岐の脂肪族二価基;ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0038】
繰り返し単位(RPS)は、とりわけ、本明細書における以下の式(B)~(E):
(式中、
- 互いに等しいかまたは異なるR’のそれぞれは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ性土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ性土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され;
- j’は、ゼロであるかまたは0~4の整数であり;
- 互いに等しいかまたは異なるTおよびT’は、結合、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(ここで、各RおよびRは、互いに独立して、水素またはC~C12アルキル、C~C12アルコキシ、またはC~C18アリール基である);nが1~6の整数である-(CH-および-(CF-、または最大でも6個の炭素原子の線状または分岐の脂肪族二価基;ならびにそれらの混合物からなる群から選択される)
のものからなる群から選択することができる。
【0039】
以下に詳述されるように、PAESは、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(例えば、ポリフェニルスルホン(PPSU))、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)またはポリスルホン(すなわち、ビスフェノールAポリスルホン)(PSU)を含む。
【0040】
本発明の目的のために、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)は、その繰り返し単位の少なくとも50モル%が、少なくとも1つのエーテル基(-O-)と、少なくとも1つのスルホン基[-S(=O)-]と、フェニレン、ナフチレン(2,6-ナフチレンなどの)、アントリレン(2,6-アントリレンなどの)、フェナントリレン(2,7-フェナントリレンなどの)、ナフタセニレンおよびピレニレン基から選択される少なくとも2つの基(G)とを含有する1つ以上の式の繰り返し単位(RPSa)であって、前記基(G)のそれぞれが少なくとも1つの単結合によって直接、かつ任意選択的に、最大でも1つのメチレン基により、それ自体と異なる少なくとも1つの基(G)とさらに結合している、繰り返し単位(RPSa)である任意のポリマーを意味することを意図される。したがって、基(G)は、このように、互いに結合してとりわけp-ビフェニレン、1,2’-ビフェニレン基などのビフェニレン、p-トリフェニレンなどのトリフェニレン基およびフルオレニレン基(すなわち、フルオレンに由来する二価基)を形成してもよい。
【0041】
繰り返し単位(RPSa)は、有利には、上に定義されたような、ただし、少なくとも1つのAr~Arが、以下の式:
(式中、Rは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ性土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ性土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、および互いに等しいかまたは異なるkおよびlは、独立して、0、1、2、3または4である)
に従うものからなる群から好ましくは選択される芳香族部分である、式(A)の繰り返し単位である。
【0042】
T、T’、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、nおよびmについて上に記載された定義および好ましさがここで等しく適用される。
【0043】
ある種の実施形態では、繰り返し単位(RPSa)は、好ましくは、本明細書における以下の式(F)~(H):
ならびにそれらの混合物から選択される。
【0044】
したがって、ある種の好ましい実施形態では、PAESはポリフェニルスルホン(PPSU)である。
【0045】
本発明の目的のために、ポリフェニルスルホン(PPSU)は、その繰り返し単位の50モル%超が、式(F)の置換または非置換の(好ましくは非置換の)繰り返し単位(RPSa)である任意のポリマーを意味することを意図される。ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の繰り返し単位の好ましくは75モル%超、好ましくは85モル%超、好ましくは95モル%超、好ましくは99モル%超が繰り返し単位(RPSa)である。
【0046】
PPSUは、公知の方法によって製造することでき、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からRADEL(登録商標)PPSUとしてとりわけ入手可能である。
【0047】
ある種の他の好ましい実施形態では、PAESは、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホンまたはビスフェノールAポリスルホンである。
【0048】
本発明の目的のために、ポリエーテルスルホン(PESU)は、その繰り返し単位の少なくとも50モル%が、式(I-1):
の繰り返し単位(RPSb)である任意のポリマーを意味することを意図される。
【0049】
PESUの繰り返し単位の好ましくは75重量%超、好ましくは85重量%超、好ましくは95重量%超、好ましくは99重量%超が式(I-1)の繰り返し単位(RPSb)である。
【0050】
PESUは、公知の方法によって製造することでき、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からVERADEL(登録商標)PESUとしてとりわけ入手可能である。
【0051】
本発明の目的のために、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)は、その繰り返し単位の少なくとも50モル%が、式(I-2):
の繰り返し単位(RPSc)である任意のポリマーを意味することを意図される。
【0052】
PEESの繰り返し単位の好ましくは75重量%超、好ましくは85重量%超、好ましくは95重量%超、好ましくは99重量%超が式(I-2)の繰り返し単位(RPSc)である。最も好ましくは、PEESの繰り返し単位は、すべて式(I-2)の繰り返し単位(RPSc)である。
【0053】
本発明の目的のために、ビスフェノールAポリスルホン(PSU)は、その繰り返し単位の少なくとも50モル%が、式(I-3):
の繰り返し単位(RPSd)である任意のポリマーを意味することを意図される。
【0054】
PSUの繰り返し単位の好ましくは75重量%超、好ましくは85重量%超、好ましくは95重量%超、好ましくは99重量%超が式(I-3)の繰り返し単位(RPSd)である。最も好ましくは、PSUの繰り返し単位は、すべて式(I-3)の繰り返し単位(RPSd)である。
【0055】
PSUは、公知の方法によって製造することでき、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からUDEL(登録商標)PSUとしてとりわけ入手可能である。
【0056】
優れた結果は、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)が、PPSU、PESU、PSUまたはそれらの混合物からなる群から選択される場合に得られた。最も好ましくは、PAESはPPSUである。
【0057】
いくつかの実施形態では、PAES(好ましくはPPSU)は、PAESと、PAEKと、衝撃改質剤(IM)との総合重量の約30%~約94%、好ましくは約40重量%~約90重量%、好ましくは約50重量%~約85重量%、好ましくは約55重量%~約80重量%、好ましくは約60重量%~約75重量%、好ましくは約65重量%~約70重量%を表す。
【0058】
当業者は、明確に開示された範囲内の追加の濃度範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを認めるであろう。
【0059】
ポリ(アリールエーテルケトン)
用語「ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)」は、本発明の目的のために、繰り返し単位を含む任意のポリマーであって、前記繰り返し単位の50モル%超が、Ar-C(=O)-Ar’基(ここで、互いに等しいかまたは異なるArおよびAr’が芳香族基である)を含む繰り返し単位(RPAEK)であるポリマーを意味することを意図される。繰り返し単位(RPAEK)は、一般に、本明細書における以下の式(J-A)~(J-P):
(式中、
- 互いに等しいかまたは異なるR’のそれぞれは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ性土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ性土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され;
- j’は、ゼロであるかまたは0~4の整数である)
からなる群から選択される。
【0060】
繰り返し単位(RPAEK)において、それぞれのフェニレン部分は、独立して、繰り返し単位中のR’と異なる他の部分への1,2-、1,4-または1,3-結合を有していてよい。好ましくは、前記フェニレン部分は、1,3-または1,4-結合を有し、より好ましくは、それらは1,4-結合を有する。
【0061】
さらに、繰り返し単位(RPAEK)において、J’は出現ごとにゼロであり、すなわち、フェニレン部分は、ポリマーの主鎖中での結合を可能にするもの以外の置換基をまったく有していない。
【0062】
好ましい繰り返し単位(RPAEK)は、したがって、本明細書における以下の式(J’-A)~(J’-O):
のものから選択される。
【0063】
ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)は、一般に、様々な商業的供給源から容易に入手可能な結晶性芳香族ポリマーである。ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、好ましくは、25℃でおよび大気圧で濃硫酸中において測定されるように約0.8~約1.8dl/gの範囲の還元粘度を有する。
【0064】
本発明の好ましい実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)の繰り返し単位の少なくとも50モル%は、繰り返し単位(J’-A)である。ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)の繰り返し単位の好ましくは少なくとも60モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、さらにより好ましくは少なくとも80モル%、最も好ましくは少なくとも90モル%は、繰り返し単位(J’-A)である。優れた結果は、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)が繰り返し単位(J’-A)以外の繰り返し単位をまったく含有しない場合に得られた。
【0065】
本発明の別の好ましい実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)の繰り返し単位の少なくとも50モル%は、繰り返し単位(J’-B)である。ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)の繰り返し単位の好ましくは少なくとも60モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、さらにより好ましくは少なくとも80モル%、最も好ましくは少なくとも90モル%は、繰り返し単位(J’-B)である。優れた結果は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)が繰り返し単位(J’-B)以外の繰り返し単位をまったく含有しない場合に得られた。
【0066】
本発明のその上別の好ましい実施形態では、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の繰り返し単位の少なくとも50モル%は、繰り返し単位(J’-C)である。ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)の繰り返し単位の好ましくは少なくとも60モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、さらにより好ましくは少なくとも80モル%、最も好ましくは少なくとも90モル%は、繰り返し単位(J’-C)である。優れた結果は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)が繰り返し単位(J’-C)以外の繰り返し単位をまったく含有しない場合に得られた。
【0067】
最も好ましくは、ポリマー組成物(C)のポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。優れた結果は、Solvay Specialty Polymers USA,LLCから商業的に入手可能なKETASPIRE(登録商標)、またはVictrex PLCから商業的に入手可能なVictrex(登録商標)150P PEEKを使用して得られ得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)は、PAESと、PAEKと、衝撃改質剤(IM)との総合重量の約1%~約57%、好ましくは約5%~約50%、好ましくは約10%~約40%、好ましくは約15%~約30%、好ましくは約20%~約25%を表す。
【0069】
当業者は、明確に開示された範囲内の追加の濃度範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを認めるであろう。
【0070】
衝撃改質剤(IM)
本記載の目的のために、表現「衝撃改質剤」は、別の材料の変形または破壊への耐性を改善することができる任意の材料を意味する。
【0071】
ポリマー組成物において、衝撃改質剤(IM)は、典型的には、
- スチレン単位とゴムモノマー単位とを含むブロックコポリマー[衝撃改質剤(IM-1)];および
- アクリル弾性コポリマー[衝撃改質剤(IM-2)]
の少なくとも1つから選択される。衝撃改質剤(IM-1)は、A-B-Aブロックタイプ(すなわち、(スチレン/ゴム/スチレン)の線状構造、タイプ(A-B)n(スチレンゴム)の分岐構造、タイプA-B(スチレンゴム)のジブロック構造、またはそれらの組み合わせを有し得る。
【0072】
ゴムモノマー単位は、ブタジエンもしくはイソプレン単位から、またはエチレンとブチレンとのおよびエチレンとプロピレンとの組み合わせから選択することができる。
【0073】
ブタジエンまたはイソプレン単位を含む衝撃改質剤(IM-1)は、Kraton(登録商標)DポリマーとしてKraton Polymersから市場で入手可能であり、一方、エチレン/ブチレンまたはエチレン/プロピレン単位を含む衝撃改質剤は、Kraton(登録商標)Gポリマーとして市場で入手可能である。
【0074】
有利には、衝撃改質剤(IM-1)は、スチレン単位およびエチレン/ブチレンを含む。優れた結果は、商標Kraton(登録商標)G 1651で市場で入手可能である、タイプスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンの構造のトリブロックコポリマーを使用して得ることができる。
【0075】
衝撃改質剤(IM-2)は、典型的には、以下のコポリマー:
(i)ASTM D 3418に従って測定されるときに25℃未満のガラス転移温度と、アルキル(メタ)アクリレートおよびアクリロニトリルからなる群から選択される1種または2種以上のアクリルモノマーに由来する繰り返し単位とを有する弾性コポリマーと、
(ii)中心コアと、コアを少なくとも部分的に取り囲むシェルとを含むコア-シェルエラストマーであって、前記コアおよび前記シェルが異なるモノマー組成を有し、および前記コアおよび前記シェルの少なくとも1つが、ASTM D 3418に従って測定されるときに25℃未満のガラス転移温度の弾性性質のものであり、かつ前記コアおよび前記シェルの少なくとも1つが、アルキル(メタ)アクリレートおよびアクリロニトリルからなる群から選択される1種または2種以上のアクリルモノマーに由来する繰り返し単位を含む、コア-シェルエラストマーと
から選択されるエラストマーである。
【0076】
一実施形態では、衝撃改質剤(IM-2)は、上に記載されたように弾性コポリマー(i)である。弾性コポリマー(i)の中に、とりわけ、
(i-A)アクリロニトリルに由来する繰り返し単位と、エチレン、ブタジエン、イソプレン、(メタ)アクリレートモノマーおよびスチレンから選択される1種または2種以上のモノマーに由来する繰り返し単位とから本質的になるエラストマーと、
(i-B)1種または2種以上の(メタ)アクリレートモノマーに由来する繰り返し単位と、エチレン、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリルおよびスチレンから選択される1種または2種以上のモノマーに由来する繰り返し単位とから本質的になるエラストマーと
を挙げることができる。
【0077】
表現(メタ)アクリレートモノマーは、一般式CH=C(R)-C(=O)-ORMA(式中、RMは、HまたはCHであり、RMAは、O、S、ハロゲンから選択される1つまたは2つ以上のヘテロ原子を好ましくは含む炭化水素基であるか、またはRMAはHである(すなわち、(メタ)アクリル酸を提供する))のモノマーを意味するために本明細書によって用いられる。
【0078】
炭化水素基RMAは、特に限定されず、とりわけアルキル基(この場合、(メタ)アクリレートモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートと言われるであろう)、ヒドロキシ-アルキル基、エポキシ含有炭化水素基などを包含する。
【0079】
RMAがヒドロキシル-アルキル基である(メタ)アクリレートモノマーの非限定的な例は、とりわけ、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート異性体である。
【0080】
エラストマー(i-B)の例は、とりわけ、エチレン-アクリルエステル-グリシジルメタクリレートエラストマーである。
【0081】
いくつかの実施形態では、衝撃改質剤(IM-2)は、エチレンとグリシジルメタクリレートとのランダムコポリマー、および/またはエチレンと、アクリルエステルと、グリシジルメタクリレートとのランダムターポリマーである。いくつかの実施形態では、衝撃改質剤(IM)は、エチレンと、アクリルエステルと、グリシジルメタクリレートとのランダムターポリマーではない。
【0082】
有利には、衝撃改質剤(IM-2)は、エラストマー(i-B)である。そのようなエラストマーは、商標Lotader(登録商標)でArkemaから入手可能である。優れた結果は、Lotader(登録商標)AX 8900、エチレンと、アクリルエステル(24重量%)と、グリシジルメタクリレート(8重量%)とのランダムターポリマーを使用して得られた。
【0083】
別の実施形態では、衝撃改質剤(IM-2)は、上に記載されたようなコア-シェルエラストマー(ii)である。
【0084】
述べられたように、これらのコア-シェルエラストマーは、一般に0.1μm~5μm、好ましくは0.1μm~1μmのサイズを有する粒子の形態で提供される。
【0085】
好ましい実施形態によれば、コア-シェルエラストマーは、弾性コアおよび熱可塑性シェルからなる。
【0086】
弾性コアは、一般に、
- イソプレンまたはブタジエンホモポリマー、最大でも30モルパーセントのビニルモノマーとのイソプレンコポリマーおよび最大でも30モルパーセントのビニルモノマーとのブタジエンコポリマーからなる群から一般に選択される弾性ジエンホモポリマーまたはコポリマー。ビニルモノマーは、上に詳述されたようなスチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリルまたは(メタ)アクリレートモノマー、好ましくはアルキル(メタ)アクリレートであってもよく;
- MMAと異なるアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマー、およびMMAと異なる前記アルキル(メタ)アクリレートと、別のアルキル(メタ)アクリレート、およびビニルモノマーから選択される最大でも30モルパーセントのモノマーとのコポリマー
から選択される。有利には、MMAと異なるアルキル(メタ)アクリレートはブチルアクリレートである。ビニルモノマーは、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、ブタジエンまたはイソプレンであってもよい。
【0087】
コア-シェルコポリマーの弾性コアは、完全にまたは部分的に架橋されてもよい。
【0088】
弾性コアの架橋を達成するために、可能な慣行は、前記弾性コアをもたらす重合中に少なくとも1種の二官能性モノマーを組み入れることであり、これらの二官能性モノマーが、ブチレンジ(メタ)アクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートなどのポリ(メタ)アクリルエステルから選択されることが可能である。他の好適な二官能性モノマーは、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ビニルアクリレートおよびビニルメタクリレートである。
【0089】
弾性コアはまた、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドなどの不飽和官能性モノマーをグラフトすることによるか、または重合中にコモノマーとしてその中へ導入することによって架橋され得る。例えば、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸およびグリシジルメタクリレートが挙げられ得る。
【0090】
熱可塑性シェルは、とりわけ、スチレン、アルキルスチレンもしくはメチルメタクリレートホモポリマー、または少なくとも70モル%の上述のこれらのモノマーの1つと、上述の他のモノマー、別のアルキル(メタ)アクリレート、酢酸ビニルおよびアクリロニトリルから選択される少なくとも1種のコモノマーとを含有するコポリマーのいずれかであり得る。シェルは、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドなどの不飽和官能性モノマーをグラフトすることによるか、または重合中のコモノマーとしてそれらの中に導入することによって官能化され得る。例として、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸およびグリシジルメタクリレートが挙げられ得る。
【0091】
コポリマーの例およびそれらの製造方法は、以下の特許:米国特許第4,180,494号明細書、米国特許第3,808,180号明細書、米国特許第4,096,202号明細書、米国特許第4,260,693号明細書、米国特許第3,287,443号明細書、米国特許第3,657,391号明細書、米国特許第4,299,928号明細書、米国特許第3,985,704号明細書、および米国特許第5,773,520号明細書に記載されている。
【0092】
有利には、コアは、コア-シェルエラストマーの70~90重量%、シェルは、30~10重量%を表す。
【0093】
使用することができる具体的なコア-シェルエラストマーの例として、
(1)コア-シェルエラストマーであって、
(i)25~95重量パーセントのアクリルゴムコアであって、
- C~Cアクリレート(好ましくはブチルアクリレート)に由来する90~100重量%の繰り返し単位を含み;
- ポリオールのポリアクリル酸およびポリメタクリル酸エステル(好ましくはブチレンジアクリレート、ブチレンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート);ジ-およびトリ-ビニルベンゼン、ビニルアクリレートならびにビニルメタクリレートから好ましくは選択される、そのすべてが実質的に同じ反応速度で重合する、複数の付加重合性反応基を有する0.1~5重量%の架橋性モノマーで場合により架橋されており;
- 場合により、0.1~5重量%のグラフト結合性モノマー、すなわち、複数の付加重合性反応基を有する多エチレン性不飽和モノマーをさらに含有し、反応基の少なくとも1つが前記反応基の実質的により遅い速度で重合し、そのため、エラストマー相中に残留レベルの不飽和を提供して熱可塑性シェルのグラフト化を可能にし、前記グラフト結合性モノマーが、アリル基含有モノマー、特にエチレン性不飽和酸のアリルエステル(好ましくはアリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート)から好ましくは選択される、コアと、
(ii)75~5重量パーセントの熱可塑性シェルであって、スチレン、アクリロニトリル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、ジアリルメタクリレートのいずれかに由来する30重量%未満の繰り返し単位と場合により組み合わせて、C~Cアルキルメタクリレート(好ましくはメチルメタクリレート)に由来する少なくとも70重量%の繰り返し単位を含むポリマーからなるシェルと
でできているコア-シェルエラストマー;
(2)コア-シェルエラストマーであって、
(i)25~95重量パーセントの1,3-ブタジエンエラストマーベースのコアであって、
- 1,3-ブタジエンに由来する少なくとも70重量%の繰り返し単位と、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート(好ましくはスチレン)からなる群から選択される、1,3-ブタジエン以外のモノマーに由来する30重量%未満の繰り返し単位とを含み;
- 前記コアが場合により、1種以上のポリ不飽和架橋性モノマー、例えばジビニルベンゼンからの少量(例えば、0.01~1重量%)の繰り返し単位を含むコアと、
(ii)75~5重量パーセントの熱可塑性シェルであって、前記シェルが、(k)ポリオールのポリアクリルおよびポリメタクリルエステル(好ましくはブチレンジアクリレート、ブチレンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート)から好ましくは選択される、少量(例えば、0.1~1重量%)の架橋性モノマーで場合により変性された、メチルメタクリレートホモポリマー、(kk)スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートのポリマー、ならびに(kkk)好ましくはジビニルベンゼンから選択される、少量(例えば、0.1~1重量%)の架橋性モノマーで場合により変性された、スチレンホモポリマーのいずれかでできているシェルと
でできているコア-シェルエラストマー;
(3)コア-シェルエラストマーであって、
(j)1,3-ブタジエンに由来する少なくとも94重量%の繰り返し単位と、スチレンに由来する5重量%以下の繰り返し単位と、ジビニルベンゼンに由来する0.5~1重量%パーセントの繰り返し単位とを含む75~80重量部のコアと、
(jj)一般に同一の重量分率の、25~20重量部の2つのシェルであって、内側のものがポリスチレンででき、他の外側のものが、ポリオールのポリアクリルおよびポリメタクリルエステル(好ましくはブチレンジアクリレート、ブチレンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート)から好ましくは選択される、少量(例えば、0.1~1重量%)の架橋性モノマーで場合により変性された、メチルメタクリレートホモポリマーでできてたシェルと
を含むコア-シェルエラストマー
が挙げられ得る。
【0094】
ハード/ソフト/ハードコポリマーなどの他のタイプのコア-シェルコポリマーも存在し、すなわち、それらは、この順にハードコア、ソフトシェルおよびハードシェルを有する。ハード部分は、上のソフト/ハードコポリマーのシェルのポリマーを含んでもよく、ソフト部分は、上のソフト/ハードコポリマーのコアのポリマーを含んでもよい。そのようなコア-シェルポリマーの非限定的な例は、順に、
- メチルメタクリレート/エチルアクリレートコポリマーでできたコア;
- ブチルアクリレート/スチレンコポリマーでできたシェル;および
- メチルメタクリレート/エチルアクリレートコポリマーでできたコア
を含む。
【0095】
ハード(コア)/ソフト/ハード/半ハードコポリマーなどの他のタイプのコア-シェルコポリマーも存在する。前のものと比較して、差異は、2つのシェル(1つは中間シェルであり、他は外側シェルである)を含む「半ハード」外側シェルから生じる。中間シェルは、メチルメタクリレートと、スチレンと、アルキルアクリレート、ブタジエンおよびイソプレンから選択される少なくとも1種のモノマーとのコポリマーである。外側シェルは、PMMAホモポリマーまたはコポリマーである。そのようなコポリマーの非限定的な例は、順に、
- メチルメタクリレート/エチルアクリレートコポリマーでできたコア;
- ブチルアクリレート/スチレンコポリマーでできたシェル;
- メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/スチレンコポリマーでできたシェル;および
- メチルメタクリレート/エチルアクリレートコポリマーでできたコア
を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、衝撃改質剤(IM)は、PAESポリマーとPAEKポリマーとの総合重量の約5重量%~約30重量%、好ましくは約5重量%~約20重量%、好ましくは約5重量%~約15重量%である。
【0097】
いくつかの実施形態では、衝撃改質剤(IM)は、PAESと、PAEKと、衝撃改質剤(IM)との総合重量の約4.5%~約23%、好ましくは約5%~約20%、好ましくは約7.5%~約18%、好ましくは約10%~約15%を表す。
【0098】
ポリマー組成物は、約10重量%~約20重量%、好ましくは約15重量%の衝撃改質剤(IM)を含んでもよい。
【0099】
当業者は、明確に開示された範囲内の追加の濃度範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを認めるであろう。
【0100】
任意選択の芳香族ポリカーボネート(PC)
ポリマー組成物は、任意選択的に、1種以上の芳香族ポリカーボネートポリマー(PC)を含んでもよい。本明細書で用いる場合、「芳香族ポリカーボネートポリマー」は、繰り返し単位の少なくとも50モル%が、少なくとも1つのアリーレン部分と、少なくとも1つのカーボネートモノマー(-O-C(=O)-O)とを含有する繰り返し単位(Rpc)である任意のポリマーを意味する。いくつかの実施形態では、芳香族ポリカーボネートポリマーは、少なくとも約60モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%、または少なくとも約99モル%の繰り返し単位(Rpc)を有することができる。当業者は、明確に開示された範囲内の追加範囲の繰り返し単位(Rpc)濃度が考えられ、本開示の範囲内であることを認めるであろう。
【0101】
いくつかの実施形態では、繰り返し(Rpc)は、1つの以下の式:
(式中、各RおよびRは、ハロゲン、C~C20アルキル、C~C15シクロアルキル、C~C20アルケニル、アルキニル、C~C20アリール、C~C20アルキルアリール、C~C20アラルキル、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ性土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ性土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムから独立して選択され;Ar’は、芳香族単核または多核基であり;(iii)各lは、独立して、0~4の整数である)
で表すことができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、Ar’は、ナフチレン(例えば、2,6-ナフチレン)、アントリレン(例えば、2,6-アントリレン)、フェナントリレン(例えば、2,7-フェナントリレン)、ナフタセニレンおよびピレニレンを含むが、それらに限定されない1つ以上の縮合ベンゼン環を含有する部分;またはその少なくとも1個がヘテロ原子である、5~24個の原子を含む芳香族炭素環系(例えば、ピリジン、ベンズイミダゾール、およびキノリン)を含有する部分から選択することができる。ヘテロ原子は、N、O、Si、PまたはSであり得る。いくつかの実施形態では、ヘテロ原子は、N、OまたはSであり得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、Ar’は、以下の式:
(式中、各R、RおよびRは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ性土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ性土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムから独立して選択され;Tは、C~C20アルキル、C~C15シクロアルキル、C~C20アリール、C~C20アルキルアリール、C~C20アラルキル、C~C20アルケニル、およびハロゲンから選択され;q、rおよびsは、独立して、0~4の整数である)
の1つで表すことができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、Ar’は、以下:
(式中、各
は、ハロゲン、アルキル、過ハロゲン化アルキル、アルケニル、過ハロゲン化アルキニル、アリール、過ハロゲン化アリール、エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ性土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ性土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、第四級アンモニウム、またはそれらの任意の組み合わせから独立して選択され;n’’は、1~20の整数であり;tは、0~2の整数である)
で表すことができる。いくつかのそのような実施形態では、各
は、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、またはブチル(n-、イソまたはtert)を含むが、それらに限定されないC~C20アルキルであり得る。いくつかの実施形態では、n’’は1であり得、およびtは2であり得る。いくつかの実施形態では、各Rはメチル基であり得る。
【0105】
芳香族ポリカーボネート(PC)は、分岐を含まないものであり得るか、またはそれは分岐であり得る。芳香族ポリカーボネート(PC)は、半結晶性であり得る(それは融点を有する)か、または非晶質であり得る(それは融点を有さない)。いくつかの実施形態では、芳香族ポリカーボネート(PC)は、好ましくは非晶質である。例えば、式(VIII)の芳香族ポリカーボネート(PC)は、ジフェニルカーボネートモノマーと芳香族ジオールモノマーとの重縮合によって合成することができる。さらなる例として、式(IX)の芳香族ポリカーボネート(PC)は、ホスゲンモノマーと芳香族ジオールモノマーとの重縮合によって合成することができる。望ましい芳香族ポリカーボネートポリマー(PC)およびそれらの相当する合成は、その全体が参照により本明細書に援用される2009年2月26日出願の「Aromatic Polycarbonate Composition」という名称である、El-Hibriらへの米国特許出願公開第2010/0016518号明細書において考察されている。
【0106】
繰り返し単位(Rpc)に加えて、芳香族ポリカーボネート(PC)は、繰り返し単位(Rpc)とは別個の1つ以上の追加の繰り返し単位(Rpc )を含むことができる。望ましい繰り返し単位(Rpc )は、繰り返し単位(Rpc)に関して上に記載されたものを含むが、それらに限定されない。いくつかのそのような実施形態では、芳香族ポリカーボネート(PC)は、約49モル%以下、約40モル%以下、約30モル%以下、約20モル%以下、約10モル%以下、約5モル%以下、または約1モル%以下の1つ以上の追加の繰り返し単位(Rpc )を含んでもよい。当業者は、明確に開示された範囲内の追加の繰り返し単位(Rpc )濃度範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを認めるであろう。
【0107】
ポリカーボネート(PC)の量は、PAESと、PAEKポリマーと、衝撃改質剤(IM)との総重量を基準として、好ましくは0重量%~約40重量%、好ましくは0重量%~約30重量%、好ましくは0重量%~約30重量%の範囲である。いくつかの実施形態では、ポリカーボネート(PC)の量は、PAESと、PAEKポリマーと、衝撃改質剤(IM)との総合重量の最大でも40重量%、好ましくは最大でも35重量%、好ましくは最大でも30重量%、好ましくは最大でも25重量%、好ましくは最大でも20重量%である。
【0108】
いくつかの実施形態では、ポリカーボネート(PC)の量は、ポリマー組成物の0~約10重量%、好ましくは約5重量%の範囲である。
【0109】
当業者は、明確に開示された範囲内の追加の濃度範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを認めるであろう。
【0110】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、追加的な別個のポリカーボネートポリマーを含んでもよい。追加的な別個のポリカーボネートポリマーは、上に記載されたそれらのポリカーボネートポリマー(PC)を含むことができる。そのような実施形態では、ポリカーボネートポリマー対ポリカーボネートポリマーと追加的な別個のポリカーボネートポリマーとの総合重量の重量比(ポリカーボネート/(ポリカーボネート+追加のポリカーボネート))は、少なくとも約0.5、少なくとも約0.6、少なくとも約0.7、少なくとも約0.8、少なくとも約0.9、少なくとも約0.95、または少なくとも約0.99である。いくつかの実施形態では、ポリカーボネートポリマー対ポリカーボネートポリマーと追加的な別個のポリカーボネートポリマーとの総合重量の重量比は1であり得る。当業者は、明確に開示された範囲内の追加的に重量比範囲が考えられ、本開示の範囲ないであることを認めるであろう。
【0111】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、芳香族ポリカーボネート(PC)を含まない。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、芳香族ポリカーボネート(PC)を含むが、エチレンと、アクリルエステルと、グリシジルメタクリレートとのランダムターポリマーである衝撃改質剤(IM)を含まない。
【0112】
他の任意選択の成分
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は二酸化チタン(TiO)を含む。二酸化チタンの量は、好ましくは0pph~約25pph、好ましくは約0.1pph~約25pph、好ましくは約5pph~約20pph、好ましくは約10pph~約20pph、好ましくは約15pphの範囲である。
【0113】
二酸化チタン(TiO)の量は、最大でも約25pph、好ましくは最大でも約20pph、好ましくは最大でも約20pph、好ましくは最大でも約15pphであってもよい。
【0114】
当業者は、明確に開示された範囲内の追加の濃度範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを認めるであろう。
【0115】
ポリマー組成物は、任意選択的に、紫外線安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、加工助剤、滑剤、難燃剤、ならびに/またはカーボンブラックおよびカーボンナノフィブリルなどの導電性添加剤をさらに含んでもよい。
【0116】
ポリマー組成物はまた、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィドおよび/またはポリカーボネートなどの他のポリマーをさらに含んでもよい。
【0117】
ポリマー組成物は、ハロゲン難燃剤およびハロゲンを含まない難燃剤などの難燃剤をさらに含んでもよい。
【0118】
ポリマー組成物の製造方法
ポリマー組成物は、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)(好ましくはポリフェニルスルホン(PPSU)と、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)(好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)と、衝撃改質剤(IM)と、芳香族ポリカーボネート(PC)および二酸化チタン(TiO)などの任意選択の成分とを溶融混合して融解混合物を提供する工程、引き続く融解混合物の押出および冷却によって製造することができる。
【0119】
例示的な実施形態はまた、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)とポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)とを含む組成物の、前記組成物に衝撃改質剤を添加することによる耐化学薬品性および/または衝撃強度を向上させる方法を含む。
【0120】
本明細書に記載されるポリマー組成物は、有利には、当技術分野で公知の射出成形または押出法に使用され得るペレットの形態で提供される。
【0121】
ポリマー組成物の調製は、熱可塑性成形組成物を調製するために好適である任意の公知の溶融混合法によって実施することができる。そのような方法は、典型的には、熱可塑性ポリマーを熱可塑性ポリマーの溶融温度を超えて加熱し、それによって熱可塑性ポリマーの溶融物を形成することによって実施される。組成物の調製方法は、溶融混合装置で実施することができ、そのために溶融混合によってポリマー組成物を調製する技術分野の当業者に公知の任意の溶融混合装置を用いることができる。好適な溶融混合装置は、例えば、混練機、バンバリー(Banbury)ミキサー、単軸スクリュー押出機、および二軸スクリュー押出機である。好ましくは、所望の成分をすべて押出機に、押出機のスロートまたは溶融物のいずれかで投与するための手段を備えた押出機が用いられる。ポリマー組成物の調製方法において、組成物を形成するための構成成分が溶融混合装置に供給され、その装置において溶融混合される。構成成分は、粉末混合物またはドライブレンドとしても知られる顆粒混合物として同時に供給されてもよく、または別々に供給されてもよい。
【0122】
本発明による携帯用電子機器の構造部品は、任意の好適な溶融加工法を用いてポリマー組成物から製造される。特に、それらは、射出成形または押出成形によって製造される。射出成形が好ましい方法である。
【0123】
本発明による携帯用電子機器の構造部品は、真空蒸着(蒸着されるべき金属を加熱する様々な方法を含む)、無電解めっき、電気めっき、化学蒸着、金属スパッタリング、および電子ビーム蒸着など、それを実現するための任意の公知の方法によって金属でコートされてもよい。金属は、いかなる特別な処理もなしに構造部品に十分接着し得るが、通常、接着を改善するための当技術分野において周知の何らかの方法が用いられるであろう。これは、表面を粗くするための合成樹脂表面の単純な摩耗、接着促進剤の添加、化学エッチング、プラズマおよび/もしくは放射線(例えば、レーザーもしくはUV放射線)への曝露による表面の官能化、またはこれらの任意の組み合わせに及び得る。また、金属コーティング法のいくつかは、構造部品が酸浴に浸漬される少なくとも1つの工程を含む。2種以上の金属または金属合金が、ポリマー組成物(C)でできた構造部品上へめっきされてもよく、例えば、1種の金属または合金がその良好な接着性のために合成樹脂表面上へ直接めっきされてもよく、別の金属または合金が、それがより高い強度および/または剛性を有するためにそのトップ上にめっきされてもよい。金属コーティングを形成するための有用な金属および合金は、銅、ニッケル、鉄-ニッケル、コバルト、コバルト-ニッケル、およびクロム、ならびに異なる層でのこれらの組み合わせを含む。好ましい金属および合金は、銅、ニッケル、および鉄-ニッケルであり、ニッケルがより好ましい。構造部品の表面は、金属で完全にまたは部分的にコートされてもよい。好ましくは、表面積の50パーセント超がコートされ、より好ましくは表面のすべてがコートされるであろう。構造部品の異なる領域において、金属層の厚さおよび/もしくは数、ならびに/または金属層の組成は変わってもよい。金属は、構造部品の一定の区域で1つ以上の特性を効率的に改善するためにパターンでコートされてもよい。
【0124】
本発明の態様は、本明細書に記載されるポリマー組成物でできた少なくとも1つの構造部品を含む携帯用電子機器、特にラップトップ、携帯電話、GPS、タブレット、携帯端末、ポータブル録音機器、ポータブル再生装置およびポータブルラジオ受信機に向けられる。
【0125】
ポリマー組成物を含む造形品
本明細書に記載されるポリマー組成物(C)は、成形品、特に電子機器の部品、より具体的にはポータブルまたは携帯用電子機器の部品の製造のために使用することができる。
【0126】
用語「携帯用電子機器」は、好都合に運ばれ、および例えば無線接続または携帯ネットワーク接続により、データを交換し/データへのアクセスを提供しながら様々な場所で使用されるように設計されている任意の電子機器を意味することを意図される。携帯用電子機器の代表的な例としては、携帯電話、携帯端末、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ラジオ、カメラおよびカメラ付属品、時計、計算機、音楽プレーヤー、全地球測位システム受信機、ポータブルゲーム機、ハードドライブならびに他の電子記憶装置などが挙げられる。本発明による携帯用電子機器の少なくとも1つの部品は、射出成形、押出または他の造形技術によってとりわけ製造することができる、取付部品、スナップ式部品、相互可動式部品、機能素子、作動要素、トラッキング素子、調整要素、キャリア要素、フレーム要素、スイッチ、コネクタおよびハウジングの(内側および外側)構成要素などの物品の大きいリストから選択されてもよい。
【0127】
特に、本明細書に記載されるポリマー組成物は、携帯用電子機器のハウジング構成要素の製造に非常に好適である。
【0128】
そのため、本発明による携帯用電子機器の少なくとも1つの部品は、有利には、携帯用電子機器ハウジングの構成要素である。「携帯用電子機器ハウジング」とは、携帯用電子機器の裏面カバー、前面カバー、アンテナハウジング、フレームおよび/またはバックボーンの1つ以上を意味する。ハウジングは、単一成分物品であってもよく、またはより多くの場合、2つ以上の成分を含んでもよい。「バックボーン」とは、エレクトロニクス、マイクロプロセッサ、スクリーン、キーボードおよびキーパッド、アンテナ、バッテリーソケットなど、機器の他の構成要素がその上へ取り付けられる構造構成要素を意味する。バックボーンは、携帯用電子機器の外部から見えないかまたは部分的に見えるにすぎない内部構成要素であってもよい。ハウジングは、衝撃と環境試剤(液体、粉塵など)による汚染および/または損傷とからの保護を機器の内部構成要素に提供し得る。カバーなどのハウジング構成要素はまた、スクリーンおよび/またはアンテナなどの機器の外部に露出しているある種の構成要素の衝撃に対する実質的なまたは主な構造支持と、衝撃からの保護とを提供し得る。ハウジング構成要素はまた、それらの美的外観および感触のために設計されてもよい。
【0129】
好ましい実施形態では、携帯用電子機器ハウジングは、携帯電話ハウジング、タブレットハウジング、ラップトップコンピュータハウジングおよびタブレットコンピュ-タハウジングからなる群から選択される。優れた結果は、本発明による携帯用電子機器の部品が携帯電話ハウジングである場合に得られた。
【0130】
造形品の製造方法
本明細書に記載されるポリマー組成物から得られる(またはそれを含む)造形品は、成形技術によって製造され得る。
【0131】
この目的のために、任意の標準的な成形技術を用いることができ、融解/軟化形態のポリマー組成物の造形を含む標準的な技術が有利に適用され得、とりわけ圧縮成形、押出成形、射出成形、トランスファー成形などを含む。
【0132】
それにもかかわらず、携帯用電子機器の前記部品が複雑な設計を有する場合、とりわけ射出成形技術が最も万能でありかつ広範に用いられることが一般に理解される。この技術によれば、ラムまたはスクリュー型プランジャーが、それらの融解状態のポリマー組成物の一部を金型キャビティ中に押し込み、そこで、それは、金型の輪郭に対して確認した形状へ固化する。次に、金型が開き、好適な手段(例えば、一連のピン、スリーブ、ストリッパーなど)が、物品を離型するために前進される。次に、金型は閉じ、このプロセスが繰り返される。
【0133】
別の実施形態では、電子機器の部品の製造方法は、前記標準的な造形品と異なるサイズおよび形状を有する前記部品を得るために標準的な造形品の機械加工の工程を含む。前記標準的な造形品の非限定的な例としては、とりわけプレート、ロッド、スラブなどが挙げられる。前記標準的な造形品は、ポリマー組成物の押出または射出成形をとりわけ含む、任意の加工技術によって得ることができる。
【0134】
本発明による電子機器の部品は、真空蒸着(蒸着されるべき金属を加熱する様々な方法を含む)、無電解めっき、電気めっき、化学蒸着、金属スパッタリング、および電子ビーム蒸着など、それを実現するための任意の公知の方法によって金属でコートされてもよい。そのため、上に詳述されたような方法は、少なくとも1種の金属を前記部品の表面の少なくとも一部上へコートすることを含む、少なくとも1つの追加の工程をさらに含んでもよい。
【0135】
金属は、いかなる特別な処理もなしに部品に十分接着し得るが、通常、当技術分野において周知の何らかの方法を、接着を改善するために用いることができる。これは、表面を粗くするためのその単純な摩耗、接着促進剤の添加、化学エッチング、プラズマおよび/または放射線(例えば、レーザーまたはUV放射線)への曝露による表面の官能化、またはこれらの任意の組み合わせに及び得る。
【0136】
また、金属コーティング法のいくつかは、部品が酸浴に浸漬される少なくとも1つの工程を含み得る。2種以上の金属または金属合金が、ポリマー組成物でできた部品上へメッキされてもよく、例えば、1種の金属または合金が、その良好な接着性のために表面上へ直接めっきされてもよく、別の金属または合金が、それがより大きい強度および/または剛性を有するため、そのトップ上にめっきされてもよい。金属コーティングを形成するための有用な金属および合金は、銅、ニッケル、鉄-ニッケル、コバルト、コバルト-ニッケル、およびクロム、ならびに異なる層でのこれらの組み合わせを含む。好ましい金属および合金は、銅、ニッケル、および鉄-ニッケルであり、ニッケルがより好ましい。部品の表面は、金属で完全にまたは部分的にコートされてもよい。部品の異なる領域において、金属層の厚さおよび/もしくは数、ならびに/または金属層の組成は変わってもよい。金属は、部品の一定の区域で1つ以上の特性を効率的に改善するためにパターンでコートされてもよい。
【0137】
上の方法から得られるような部品は、一般に、電子機器、特に携帯用電子機器を製造するために他の構成要素と組み立てられる。
【0138】
そのため、本発明のさらなる目的は、電子機器、特に携帯用電子機器の製造であって、前記方法が、
a.構成要素として少なくとも回路基板、スクリーンおよびバッテリーを提供する工程と、
b.上に記載されたようなポリマー組成物でできた少なくとも1つの部品を提供する工程と、
c.前記構成要素の少なくとも1つを前記部品と組み立てる工程または前記構成要素の少なくとも1つを前記部品上に取り付ける工程と
を含む製造である。
【0139】
ポリマー組成物の化学的および機械的特性
本ポリマー組成物は、改善された衝撃性能を示し得る。携帯用電子機器(およびその部品)は、小さくかつ軽量であることが多くの場合に望ましいが、機器が通常の取扱および時折の突然の衝撃(例えば、落下)において損傷しないであろうように優れた構造強度が非常に望ましい。相応に、強度、剛性、および/または耐衝撃性を機器に付与し、場合によりまた、構成要素間の電気絶縁/電気遮蔽を確保しながら、機器の様々な内部構成要素および/または携帯用電子機器ケース(例えば、外側ハウジング)の一部またはすべてのための取付場所を提供する構造部品が一般に携帯用電子機器に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも200ジュール/メートル(「J/m」)、好ましくは少なくとも250J/mのノッチ付きアイゾット耐衝撃性を有し得る。いくつかの態様では、ポリマー組成物は、約200J/m~約250J/mの範囲、好ましくは約200J/m~約300J/mの範囲のノッチ付きアイゾット耐衝撃性を有する。当業者は、明確に開示された範囲内の追加のノッチ付きアイゾット耐衝撃性範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを認めるであろう。耐衝撃性は、実施例においてさらに記載されるような、ASTM D256標準に従ったノッチ付きアイゾット衝撃試験を用いて測定することができる。
【0140】
ポリマー組成物はまた、改善された耐化学薬品性および耐汚染性を示し得る。いくつかの用途環境では、携帯用電子機器のプラスチック構成要素の少なくとも一部は、携帯用電子機器(例えば、携帯電話またはタブレットコンピュータ)の外部の環境に曝され得る。そのような環境では、プラスチック構成要素の露出部分は、外部環境と接触し得る。プラスチック構成要素の露出部分と接触し得る外部環境中の試剤は、酸性剤および汚染剤を含むが、それらに限定されない。
【0141】
典型的な汚染剤は、例えば、メーキャップ(例えば、口紅、リップグロス、リップライナー、リッププランパー、リップクリーム、ファウンデーション、粉おしろい、および頬紅)、人造または天然着色剤(例えば、ソフトドリンク、コーヒー、赤ワイン、マスタード、ケチャップおよびトマトソース中に見いだされるもの)、染料および顔料(例えば、ポータブル電子機器ハウジングの製造のために使用される、染色織物および皮革中に見いだされるもの)などの消費者製品を含むが、それらに限定されない。プラスチック構成要素の露出部分は、汚染剤と接触した場合に容易に汚され得、相応して、プラスチック構成要素が白の色合いに着色されるかまたは無色透明着色である場合にとりわけ汚れ防止特性を有するプラスチック構成要素が望ましい。
【0142】
本ポリマー組成物は、65℃/90%RHおよび2%超の歪みで24時間後の消費者製品への暴露後、目に見える欠陥がまったくないことによって測定されるような消費者製品への耐化学薬品性を有し得る。
【0143】
極性有機化学薬品に対する機器構成要素の耐性は、最も厳しい消費者化学薬品の1つを一般に表し、機器構成要素がその意図される用途環境において耐えることが期待される、日焼け止めローションに対するその耐性によって測定することができる。特に、日焼け止めローションは、一般に、プラスチックに対して非常に攻撃的であり得る一連の紫外線吸収化学薬品を含有する。代表的な日焼け止め剤は、少なくとも1.8容積%のアヴォベンゾン(1-(4-メトキシフェニル)-3-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3-プロパンジオン)、少なくとも7容積%のホモサレート(3,3,5-トリメチルシクロヘキシルサリチレート)および少なくとも5容積%のオクトクリレン(2-エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート)を含み得る。前述の日焼け止め剤の例は、Edgewell(St.Louis,MO)から商品名Banana Boat(登録商標)Sport Performance(登録商標)(SPF 30)で商業的に入手可能である。ポリマー組成物の耐化学薬品性は、ポリマー組成物の成形試料が攻撃的な化学薬品に曝され、かつ制御環境中で老化させた後の成形試料中の亀裂またはひび割れを目視観察するために必要な最低歪み(「臨界歪み」)として測定することができる。一般に、臨界歪みが高いほど、極性有機剤に対するポリマー組成物の耐化学薬品性はより高い。いくつかの態様では、ポリマー組成物は、1.7%以上、好ましくは約1.8%以上、好ましくは約1.9%以上、好ましくは約2.0%以上の破損日焼け止め剤試験歪み%(Sunscreen Test strain to fail %)(すなわち、臨界歪み)を有する。臨界歪みの測定は、以下の実施例においてさらに記載される。
【0144】
ポリマー組成物はまた、望ましい着色性を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、約90.0~約94.0、好ましくは約91.0~約94.0、好ましくは約92.0~約94.0、好ましくは約93.0~約94.0の範囲のCIE L値を有することができる。当業者は、明確に開示された範囲内の追加のL範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを認めるであろう。
【0145】
ポリマー組成物はまた、耐陽極酸化性を示し得る。携帯用電子機器中に存在する金属部品(例えば、アルミニウム部品)または金属-プラスチック複合部品(例えば、アルミニウム-プラスチック部品)は、一般に、陽極酸化処理を受ける。陽極酸化処理は、目的が、攻撃的な化学薬品の使用によって一般に金属表面上に酸化物層を構築することである電気化学的プロセスを含むことができる。相応に、優れた耐陽極酸化性を示すポリマー材料は、既にポリマー要素を含有するかまたはポリマー要素に組み立てられている携帯用電子部品に関して陽極酸化が行われる用途環境において望ましい。耐陽極酸化性は、ポリエステル組成物の成形されたままの試料と、23℃で70重量%硫酸に曝された成形試料との引張強度、引張弾性率、および破断点伸びのそれぞれの差異として測定することができる。耐陽極酸化性の測定は、実施例においてさらに記載される。
【0146】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、約3MPa以下、好ましくは約2MPa以下、好ましくは約1MPa以下、好ましくは約0MPa以下の引張強度の相対的差異を示し得る。
【0147】
ポリマー組成物は、約0.10GPa以下の引張弾性率の相対的差異を示し得る。
【0148】
ポリマー組成物は、約5%以下、好ましくは約4%以下、好ましくは約3%以下、好ましくは約2%以下の引張破断点伸びの相対的差異を示し得る。
【0149】
当業者は、明確に開示された範囲内の追加範囲の相対的引張強度、引張弾性率、および引張破断点伸びが考えられ、本開示の範囲内であることを認めるであろう。
【0150】
例示的な実施形態では、ポリマー組成物は、約200J/m以上のノッチ付きアイゾット衝撃と、2.0%以上の破損日焼け止め剤試験歪みと、91.0~94.0の範囲のCIE色Lとの組み合わせを示す。
【0151】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0152】
本発明は、本明細書において、非限定的な実施例を用いて以下のセクションにおいてより詳細に例示される。
【実施例
【0153】
原材料
以下の原材料を使用して実施例および比較例を調製した:
ポリフェニルスルホン(PPSU) - グレード:Solvay Specialty Polymers USA,LLCから入手可能なRadel(登録商標)R-5100 LC1100(365℃の温度および5.0kg重りでASTM D-1238に従って測定されるように16~22g/10分のメルトフローレイト(MFR)範囲)。
ポリカーボネート(PC) - グレード:Bayer Materials Science,Inc.から入手可能なMakrolon(登録商標)3108。これは、1.2kgの重りでの300℃の温度でASTM D1238に従って測定されるように4.9~8.4g/10分の規格メルトフロー範囲を有するPCである。
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK) - Victrex PLC製のVictrex 150P。これは、400℃でISO11443に従って測定されるように130Pa.sの溶融粘度を有するPEEKである。
衝撃改質剤A - Lotader(登録商標)AX8900は、Arkemaから入手可能なエチレンとグリシジルメタクリレート(8重量%)とのランダムコポリマーである。
衝撃改質剤B - Lotader(登録商標)AX8840は、Arkemaから入手可能なエチレンと、アクリルエステル(24重量%)と、グリシジルメタクリレート(8重量%)とのランダムターポリマーである。
二酸化チタン(TiO) - グレード:Chemourから入手可能なTiPure(登録商標)R105。
【0154】
ブレンド調製
各調合物を、48:1のL/D比を有する26mm直径Coperion(登録商標)ZSK-26共回転部分噛合二軸スクリュー押出機を用いる溶融配合にかけた。バレル区域2~12およびダイを以下の通り設定点温度に加熱した。
バレル2~6:360℃
バレル7~12:360℃
ダイ:360℃
【0155】
各場合において、樹脂および添加剤を、範囲30~40ポンド/時の押出量で重量測定フィーダーを用いてバレル区域1において供給した。押出機を約200RPMのスクリュー速度で運転した。真空を、約27インチの水銀の真空レベルでバレル域10において適用した。単一孔ダイを配合物のすべてについて使用し、ダイを出る融解ポリマーストランドを水トラフ中で冷却し、次にペレタイザーで切断しておよそ長さ3.0mm×直径2.7mmのペレットを形成した。
【0156】
射出成形
射出成形を、機械的特性試験用の3.2mm(0.125インチ)厚さのASTM引張および曲げ検体をもたらす目的のために実施例調合物に関して行った。タイプI引張ASTM検体および5インチ×0.5インチ×0.125インチの曲げ検体を、バレルおよび金型に関して以下のおよその温度条件を用いて射出成形した。
リアゾーン:680°F
ミドルゾーン:680°F
フロントゾーン:700°F
ノズル:700°F
金型:285°F
【0157】
試験
機械的特性は、1)タイプI引張試験片、2)5インチ×0.5インチ×0.125インチの曲げ試験片、および3)計装化衝撃(Dynatup)試験用の4インチ×4インチ×0.125インチのプラークからなる、射出成形された0.125インチ厚さのASTM試験検体を使用して、調合物のすべてについて試験した。以下のASTM試験方法をすべての組成物の評価に用いた。
D-638:引張特性:引張破断点強度、引張弾性率および引張破断点伸び
D-256:ノッチ付きアイゾット耐衝撃性
【0158】
各調合物の成形したままの色を、調合物の白色度を評価するために測定した。色は、L*座標が明度(黒から白)スケールを表し、a*座標が緑-赤色度を表し、およびb*スケールが青-黄色度を表す、CIE L-a-b座標標準に従って測定した。材料の白色度は、L*値が90.0よりも大きく、色度座標a*およびb*の合算絶対値が4.0単位未満である場合に許容できると考えられる。
【0159】
調合物の耐化学薬品性は、2つの方法で試験した。日焼け止めローションに対する耐化学薬品性は、Banana Boat(登録商標)SPF30広域日焼け止めクリームを、プラスチック材料への印加歪みをゼロ近くから2.0%まで変える(日焼け止め剤試験)パラボラ曲げ治具(Bergen治具)上へ取り付けられたASTM曲げ試験片に適用することによって試験した。これらの応力を受けたアセンブリを、約24時間の継続時間にわたり約65℃の温度および約90%の相対湿度での制御湿度環境チャンバーで老化させ、その後、アセンブリをチャンバーから取り出し、歪み治具上に取り付けられた曲げ試験片を亀裂またはひび割れのいかなる兆候についても検査した。破損臨界歪み(Critical strain to failure)を、亀裂またはひび割れがその上に観察されたパラボラ上の最低歪みレベルとして記録した。
【0160】
行われた第2耐化学薬品性試験は、タイプIASTM引張検体が23℃で70重量%硫酸に浸漬され、その後、検体を取り出し、水で洗浄し、次にそれらの引張特性に関して試験する酸浴浸漬試験であった。この酸暴露前後の引張特性は、電話機が金属とプラスチック部品との組み合わせからなる場合に携帯電話製造工程において適用される陽極酸化工程であって、プラスチック材料が、陽極酸化浴の化学的条件(典型的には様々な強酸性環境を含む)への暴露を受けなければならない工程に耐える材料の能力の指標として役立った。
【0161】
結果
実施例および比較例すべてに関連した特性試験データを表1に示す。
【0162】
【0163】
衝撃改質剤(IM)は、PPSUおよびPEEKの加工温度に耐えないであろうと予期されたが、表1に示されるように、実施例E1、E2、およびE3のポリマー組成物は、著しく改善されたノッチ付きアイゾット衝撃強度を意外かつ予想外にも示した。
【0164】
加えて、衝撃改質剤(IM)の添加は、日焼け止め剤試験における化学薬品暴露に対するポリマー組成物の耐性を高めることが意外かつ予想外にも見いだされた。比較例のPPSU/PEEKブレンドは、日焼け止めローションへの65℃/90%RHでの24時間の暴露後に破損したが、実施例のブレンド(衝撃改質剤(IM)を含有する)は、2%超の歪みでさえもいかなる変化も示さなかった。
【0165】
さらに、実施例のポリマー組成物の引張特性は、23℃での70重量%硫酸への24時間浸漬後に本質的に未変化のままであった。