(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】X線管用カソード
(51)【国際特許分類】
H01J 35/06 20060101AFI20220621BHJP
H05G 1/00 20060101ALI20220621BHJP
H01J 9/02 20060101ALI20220621BHJP
H01J 9/18 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H01J35/06 D
H01J35/06 C
H01J35/06 E
H01J35/06 H
H05G1/00 D
H01J9/02 J
H01J9/18 B
(21)【出願番号】P 2018524333
(86)(22)【出願日】2016-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2016076005
(87)【国際公開番号】W WO2017080843
(87)【国際公開日】2017-05-18
【審査請求日】2019-10-28
(32)【優先日】2015-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】テルレツカ ゾルヤーナ
(72)【発明者】
【氏名】スフーレン トビアス
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-524144(JP,A)
【文献】特開昭53-132983(JP,A)
【文献】実開平06-009047(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/00-35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管のためのカソードの組立のための方法であって、前記方法は、
a)少なくとも2つの支持構造ホールをカソードカップに設けるステップと、
b)前記支持構造ホールに少なくとも2つの支持構造体を挿入し、はんだ付けするステップと、
c)没入部を機械加工して、フィラメントキャビティを前記カソードカップ内に形成するステップと、
d)ステップc)と同じ機械加工動作で、螺旋状フィラメントの端部を受け入れるように前記支持構造体の各々の受け入れ端部にノッチを形成することによって前記支持構造体を機械加工するステップと、
e)少なくとも部分的な螺旋構造体を有するフィラメントであって、既に完全に再結晶化されているフィラメントの各端部を、前記支持構造体の前記ノッチの各々に挿入するステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記フィラメントは、前記フィラメントの一方の端部から前記フィラメントの他方の端部まで延在する完全な螺旋構造体を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機械加工は放電加工である、請求項1乃至2の何れか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記フィラメントの螺旋状巻線が設けられる長手方向が実質的に直線である、請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記螺旋構造体の中間部分が第1の螺旋ピッチを有し、前記螺旋構造体の螺旋端部が第2の螺旋ピッチを有する、請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ノッチは、機械的な遊びなしに前記螺旋端部を堅固に受け入れる幾何学的形状を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
本体構造体は、固定的に保持される前記フィラメントを有する没入部を有するカソードカップとして設けられる、請求項1乃至6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記カソードカップは、アノードに対向する少なくとも2つのフィラメントを備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記カソードカップは、非導電性セラミックから作られるセラミックカソードカップとして設けられ、
前記カソードカップの表面の一部は金属コーティング部を備える、請求項7又は8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管用カソード、X線管、X線イメージング用システム、及びX線管用カソードの組立のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばX線管におけるX線放射線の発生のために、電子を放出して表面に衝突させて、それによってX線放射線を発生させるためのフィラメントが設けられる。ターゲット上の入射電子の焦点を提供するために、フィラメントの正確な構成及び光学システム内でのその位置決めが必要とされる。動作中のフィラメントの変化は、焦点の変化、それ故に放射されたX線ビームの変化をもたらす可能性がある。従って、組立中のフィラメントの正確な位置決めのために注意が払われる。例えば、カソードカップ組立中に、必要なフィラメントの形状、及びカソードヘッドに対するフィラメントの位置が、所定の精度でもたらされる。これは、例えば、手動調整によって達成される。米国特許第6,607,416号は、カソードヘッドにフィラメントを取り付けるために電極上にフィラメントをセットするため、マンドリルを使用するための固定具を記載している。しかしながら、カソードのキャビティ内のフィラメント端部の固定は、依然として放出された電子の方向に関する最終的な位置を必要とすることが示されている。さらに、第1の場所にフィラメントを適切に位置決めするためにカソードカップに関する取付け工具の正しい位置合わせも注意深く監視されなければならない。
【0003】
国際公開第2013/175402A1号は、改善されかつ容易な組立によるX線管のためのカソードを開示している。
【0004】
米国特許第5526396号は、フィラメントを含むカソード装置を有するX線管を開示しており、フィラメントの位置の簡単な調整が達成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、動作中の位置決めの精度の高い信頼性を備える、改善されかつ容易化された組立をカソードに提供する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、独立請求項の主題によって解決され、さらなる実施形態は従属請求項に組み込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の以下に記載された態様は、X線管用のカソード、X線管、X線イメージングのためのシステム、及びX線管用のカソードの組立のための方法にも適用されることに留意すべきである。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、フィラメントと、少なくとも2つの支持構造体と、フィラメント用の没入部を含む本体構造体とを含む、X線管用のカソードが提供される。フィラメントは、電子放出方向にアノードに向けて電子を放出するように設けられる。フィラメントは、支持構造体によって保持され、支持構造体は、本体構造体に固定的に接続される。フィラメントは完全に再結晶化される。支持構造体は、ロック機構によってフィラメントの2つの端部を解除可能に受け入れるための受け入れ端部を備え、フィラメントと没入部との位置合わせは、フィラメントのジオメトリによって与えられ、少なくとも2つの支持構造体と本体構造体とはフィラメント用の没入部を有する。
【0009】
フィラメントは、動作中、電子放射面として機能する螺旋構造体と、支持構造体の受け入れ端部に対するカウンタピースとして働く終端部とを示す。
【0010】
「電子放出方向」という用語は、フィラメントの中心部分をアノード上の焦点の中心部分に接続する線によって規定される、電子の主方向に関する。
【0011】
本発明の核心は、重要な領域において高精度で製造されたコンポーネントを使用して、コンポーネントの熱処理を通じて固有応力を除去することにより、組立プロシージャにおける最先端のアライメントステップを回避することにある。最先端の組立プロシージャでは、フィラメントの位置合わせを含む20ものステップが存在し得る。本発明によれば、この数は約5ステップに減少し、提案されたカソード構造の固有の製造精度のために、さらなる位置合わせステップが必要とされない。さらに、フィラメントは既に完全に再結晶化されているので、再結晶化のためにフィラメントのミスアライメントは生じない。寿命にわたって減少した塑性変形があるという利点とは別に、動作中の破壊モードの低減による改善された寿命分布が達成される。
【0012】
本発明によれば、フィラメントは、フィラメントの一方の端部からフィラメントの他方の端部まで延在する完全な螺旋構造体を有する。
【0013】
フィラメント全体は、ロック機構によって支持構造体の適切な受け入れ端部により解除可能に受け入れられ得る螺旋構造体を有する。フィラメントは、フィラメントの一方の端部からフィラメントの他方の端部まで延在する螺旋構造体を有する。支持構造体は、ロック機構によって螺旋構造体の2つの螺旋端部を解除可能に受け入れるための受け入れ端部を有する。全フィラメントが螺旋構造体を有するので、位置合わせは、支持構造体の受け入れ端部に対して精度が高い。ミスアライメントの原因となり得るフィラメントの非螺旋端部はない。
【0014】
例示的な実施形態によれば、フィラメントの螺旋状巻線が設けられる長手方向はほぼまっすぐである。従って、螺旋状巻線の長さの変化に対する何れの感受性も回避される。
【0015】
例示的な実施形態によれば、螺旋構造体の中間部分は第1の螺旋ピッチを有し、螺旋構造体の螺旋端部は第2の螺旋ピッチを有する。第2の螺旋ピッチは、例えば、第1の螺旋ピッチよりも大きい。これは、より低いピッチを有する螺旋構造体の部分だけが光を発するので、螺旋端部は相対的に冷却されたままになるという利点を有する。
【0016】
例示的な実施形態によれば、支持構造体のロック機構は、ノッチを備える。これは、更なるはんだ付けステップの必要なしに、螺旋状巻線の容易な組立及び良好な機械的安定性の利点を有する。安定した電気的接触のために、好ましくは、支持体及びフィラメントはレーザ溶接される。
【0017】
好ましくは、ノッチは、機械的な遊びなしに螺旋端部を堅固に受け入れる幾何学的形状を有する。3/4円筒、半円筒、トラフ、長方形、側方3/4円筒、テーパ状3/4円、3g:薄い3/4円のような異なるノッチ形状が想定されることができる。
【0018】
フィラメントの螺旋ジオミトリは、動作中、熱膨張に起因する張力を吸収することができるため、フィラメントの予張力は必要でないことに留意されたい。剛性支持構造体への接続は、
図1bのような最先端のフィラメントジオミトリと比較して歪みを回避するのに役立つ。
【0019】
さらなる例示的な実施形態によれば、本体構造体は、固定的に保持されたフィラメントを含む没入部を有するカソードカップとして提供される。
【0020】
これは、没入部が、静電ポテンシャルのランドスケープ、したがって、フィラメントの相対的位置決めに依存する電子光学系を規定するという利点を有する。
【0021】
さらなる例示的な実施形態によれば、カソードカップは、アノードに対向する少なくとも2つのフィラメントを備える。
【0022】
これは、より長い寿命のために、置換エミッタ又は異なるフィラメントのための異なる焦点サイズが実現され得るという利点を有する。
【0023】
さらなる例示的な実施形態によれば、カソードカップは、非導電性セラミックから製造されたセラミックカソードカップとして提供され、カソードカップの表面の一部は金属コーティング部を備える。
【0024】
これは、必要な部品が少なくなり、許容誤差の数が減少するという利点がある。したがって、組立プロセスはより安価で正確になることができる。
【0025】
用語「非導電性」は、電気的に絶縁されることを意味する。金属コーティングは、金属化表面とも呼ばれる。金属コーティングは、導電目的及びろう付け目的のために提供される。例えば、カソードカップは、酸化アルミニウム(Al2O3)から作られる。カソードはまた、窒化アルミニウム(AlN)から製造されてもよい。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、カソードとアノードとを備えるX線管が提供される。カソードは、上述の例の1つに従うカソードとして提供される。
【0027】
本発明の第3の態様によれば、X線源と、X線検出器と、処理ユニットとを備えるX線イメージングシステムが提供される。処理ユニットは、関心対象のX線画像データを提供するために、X線源及びX線検出器を制御するように構成される。X線源は、上述し説明したようなX線管を備える。
【0028】
X線システムは医用イメージングシステムであってもよい。
【0029】
さらなる例によれば、検査装置が、例えば荷物又は運搬部品のスキャン及びスクリーニング、又は材料及び構造検査の目的のためのX線システムとして提供される。
【0030】
本発明の第4の態様によれば、X線管のためのカソードの組立のための方法が提供される。この方法は、以下のステップ、すなわち、
a)少なくとも2つの支持構造ホールをカソードカップに設けるステップと、
b)支持構造ホールに少なくとも2つの支持構造体を挿入し、はんだ付けするステップと、
c)没入部を機械加工して、フィラメントキャビティをカソードカップ内に形成するステップと、
d)ステップc)と同じ機械加工動作で、螺旋状フィラメントの端部を受け入れるように支持構造体の各々のトップにノッチを形成することによって支持構造体を機械加工するステップと、
e)少なくとも部分的な螺旋構造体を有する完全に再結晶化されたフィラメントの各端部を、支持構造体のノッチの各々に挿入するステップと
を有する。
【0031】
本発明の第5の態様によれば、X線管のカソードの組立のための方法が提供される。この方法は、以下のステップ、すなわち、
a')少なくとも2つの支持構造ホールをカソードカップに設けるステップと、
b')没入部を機械加工して、フィラメントキャビティをカソードカップ内に形成するステップと、
c')支持構造ホールに少なくとも2つの支持構造体を挿入し、はんだ付けするステップと、
d')螺旋状フィラメントの端部を受け入れるように支持構造体の各々のトップにノッチを形成することによって支持構造体を機械加工するステップと、
e')少なくとも部分的な螺旋構造体を有する完全に再結晶化されたフィラメントの各端部を支持構造体のノッチの各々に挿入するステップと
を有する。本発明の第5の態様によれば、本発明の第4の態様によるc)及びd)の機械加工ステップは、ステップb')及びd')がステップc')によって分離されるのため、1つの動作では実行されない。
【0032】
例示的な実施形態によれば、フィラメントは、フィラメントの一端からフィラメントの他端まで延在する完全な螺旋構造体を有する。
【0033】
例示的な実施形態によれば、機械加工は、放電加工である。これは、カソードの重要な部分の機械加工が高い精度と再現性で行われることはできるという利点を有する。さらに、カソードヘッドのニーズに合わせるために、表面条件及びエッジ条件が選択されることができる。
【0034】
ステップe)の挿入するステップの前に、外部熱を加えることによってフィラメントの全再結晶化は提供される。したがって、全再結晶化は、内側から熱を生成するためにカソードの二つの端部に印加される電流によって提供されず、例えばオーブン又は炉内でフィラメントの外部からの熱によって提供される。本発明によれば、全再結晶化プロセスは事前に行われる。再結晶化がどのように達成されるかは重要ではなく、フィラメントが組立前に全再結晶化特性を示すことのみが重要である。したがって、全再結晶化は、何れかの適切な方法によって達成され得る。
【0035】
完全に再結晶化されたフィラメントのために、それ以上のフラッシングは必要ない。「フラッシング」という用語は、フィラメントを所定の短時間点灯させるために高電流を印加することを指す。したがって、フラッシングは、フィラメントを安定化させる目的で熱処理を提供する。このプロセスは、フィラメントの反りをもたらし得る残留応力のために制御することが困難である。完全に再結晶化されたフィラメントは、寿命にわたって低減される塑性変形を有し、破壊モードの減少により改善される寿命分布を有する。
【0036】
組立の成功は、(動作中、経時的に)没入部又はキャビティの狭いスリット内のフィラメントの位置及び方向の精度によって規定される。本発明は、既に機械加工された没入部及びノッチ内にフィラメントのための高精度スロットを示す支持された支持ワイヤを備えたカソードカップの製造を提案する。とりわけ、支持構造体のろう付けは、動作中に特にロバストな接続をもたらす。フィラメントのないこの中間カソードカップは、異なる方法で製造されることができる。1つ又は2つの機械加工ステップを含む2つの可能性が上述された。機械加工は放電加工(EDM)、好ましくはワイヤカットEDMによって行われる。
【0037】
第1の可能性において、支持構造体は、没入部なしでカソードカップ内にろう付けされる。その後、フィラメントのための支持構造体のノッチ及びカソードヘッドの没入部は、自動的に完全な配向を提供する単一のEDMステップで機械加工される。最後に、(典型的にはレーザ溶接又はノッチの中にそれをクリックすることによって)フィラメントが取り付けられる。
【0038】
さらなる可能性では、没入部は、支持構造体なしでカソードカップ本体構造体内にEDMによって機械加工される。続いて、支持構造体は、本体構造体内にろう付けされ、そのステップでノッチは示されない。その後、第2のEDMステップで、フィラメントのためのノッチは支持構造体に機械加工される。両方のステップは正確に位置合わせされる必要がある。これは、同一の受け入れを有する単一の機械上で両方のEDMステップを実行することによって達成されることができる。再度、フィラメントは最後に挿入され、又は取り付けられる。
【0039】
上記の可能性のために、フィラメントは、高温での動作における輪郭の変化を避けるように熱処理され、正確に製造される。これは、予めフィラメント材料の全再結晶化によって行われる。
【0040】
さらなる態様によれば、組立中に調整のための可塑性が必要とされない。したがって、フィラメントの支持体は、より短い素子及びより直接的な接続による向上された安定性及びより少ない熱ドリフトによる、カソードの潜在的により高い熱的及び機械的負荷性能で、カソード又はセラミック絶縁体及びカソードに直接ろう付けされることができる。
【0041】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態を参照して明らかになるであろう。
【0042】
本発明の例示的な実施形態を、以下の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1a】従来技術によるX線管のカソードの一例を概略的に示す。
【
図1b】従来技術によるフィラメントの形状を示す。
【
図2a】本発明によるカソードの2つの支持構造体によって保持されたフィラメントの一例を斜視図で示す。
【
図3a】本発明によるX線管用カソードの支持構造体のロック機構の例を示す。
【
図3b】本発明によるX線管用カソードの支持構造体のロック機構の他の例を示す。
【
図3c】本発明によるX線管用カソードの支持構造体のロック機構の他の例を示す。
【
図3d】本発明によるX線管用カソードの支持構造体のロック機構の他の例を示す。
【
図3e】本発明によるX線管用カソードの支持構造体のロック機構の他の例を示す。
【
図3f】本発明によるX線管用カソードの支持構造体のロック機構の他の例を示す。
【
図3g】本発明によるX線管用カソードの支持構造体のロック機構の他の例を示す。
【
図3h】本発明によるX線管用カソードの支持構造体のロック機構の他の例を示す。
【
図4a】本発明によるX線管用カソードの組立のための方法の異なるステップの一実施形態を斜視図で示す。
【
図4b】本発明によるX線管用カソードの組立のための方法の異なるステップの他の実施形態を斜視図で示す。
【
図4c】本発明によるX線管用カソードの組立のための方法の異なるステップの他の実施形態を斜視図で示す。
【
図4d】本発明によるX線管用カソードの組立のための方法の異なるステップの他の実施形態を斜視図で示す。
【
図5a】本発明によるX線管用カソードの組立のための方法の異なるステップのさらなる実施形態を斜視図で示す。
【
図5b】本発明によるX線管用カソードの組立のための方法の異なるステップのさらなる実施形態を斜視図で示す。
【
図5c】本発明によるX線管用カソードの組立のための方法の異なるステップのさらなる実施形態を斜視図で示す。
【
図5d】フィラメントが挿入された支持端部及びノッチの詳細なクローズアップを示す。
【
図7a】本発明に係るX線イメージングのためのシステムの一例、医用イメージングシステムを示す。
【
図7b】本発明に係るX線イメージングのためのシステムの一例、例えば荷物のスキャン及びスクリーニングのための検査装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1aは、X線管用の既知のカソード10の断面図を示す。カソード10は、フィラメント12、支持構造体14、及び本体構造体16を有する。例えば、支持構造体14は、第1の取り付けボルト17及び第2のボルト18を有する。フィラメント及びカソードヘッド10の電気絶縁のためのセラミック13は、フィラメント当たり2つの支持体について示されているが、単一の支持ワイヤのみに使用されることもできる。
【0045】
フィラメント12は、電子放出方向11においてアノード(図示略)に向けて電子を放出するように設けられる。電子光学的理由から、フィラメントは没入部15内に正確に配置される。フィラメント12は、少なくとも部分的に螺旋構造体を有する。フィラメント12は、支持構造体14によって保持され、支持構造体14は、本体構造体16に固定的に接続される。
図1bは、フィラメント12が支持構造体14によって保持されることを示している。
【0046】
本体構造体16を通って延在する取付ボルトは、フィラメント12が配置される側の反対側にそれぞれの接続部を有することができる。電源はフィラメント12(これ以上図示略)に電流を供給する。
【0047】
図2aでは、フィラメント22と2つの支持構造体21とが斜視図で示される。
図2b及び
図2cでは、フィラメントの2つの実施形態が示される。フィラメント及び2つの支持構造体は、本体構造体(図示略)内に存在する。フィラメントは、電子放出方向25においてアノードに向かって電子を放出するように設けられる。フィラメントは、本体構造体に固定的に接続された支持構造体21によって保持される。フィラメントは、フィラメントの一方の端部からフィラメントの他方の端部まで延在する螺旋構造体(22,23)を有し、支持構造体21は、ロック機構によって螺旋構造体22の2つの螺旋端部を解除可能に受け入れるための受け入れ端部24を有する。フィラメントの螺旋状巻線が設けられる長手方向はほぼまっすぐである。
【0048】
図2cでは、螺旋構造体22の中間部分は第1の螺旋ピッチを有し、螺旋構造体の螺旋端部23は第2の螺旋ピッチを有する。この例では、第2の螺旋ピッチは第1の螺旋ピッチよりも大きい。支持構造体のロック機構はノッチを有する。ノッチは、幾何学的形状を有し、機械的な遊びなしに螺旋端部を堅固に受け入れる。
【0049】
図3a乃至3gにおいて、7つの異なる種類のノッチが螺旋構造体の端部を収容するように示される。
図3aはクリックノッチであり、3bは半円筒ノッチであり、3cはトラフノッチであり、3dは矩形ノッチであり、3eは側方クリックノッチであり、3fはテーパークリックノッチであり、3gは薄いクリックノッチであり、3hは、フィラメントの螺旋状巻線がまわりに設けられる長手方向に平行な脚部としての直線ワイヤ及び螺旋状巻線構造体を示す、少なくとも部分的に螺旋状のフィラメントの直線ワイヤ端部を受け入れるための狭ノッチである。
【0050】
図4a乃至
図4dにおいて、本発明によれば、X線管用カソードの組立のための方法が実施される場合のカソードの組立状態を表す4つの図面が示される。
図4aの左側は、4つの支持構造ホール41を備えるカソードカップの本体構造体40の斜視図を示す。
図4aの右側は、フィラメントを受け入れるための支持構造体を挿入するための2つの支持構造ホールの断面図を示す。
図4bにおいて、4つの支持構造体21を支持構造ホール41に挿入し、はんだ付けした後のカソードカップの本体構造体が示される。
図4cにおいて、2つのフィラメント空間42をカソードカップに形成するワイヤカット放電加工(EDM)によって2つの没入部42を機械加工した後のカソードカップの本体構造体が示される。
図4cでは、機械加工と同じ機械加工動作において、支持構造体21を機械加工する没入部は、螺旋状フィラメントの端部を受け入れるために、支持構造体の各々の受け入れ端部においてノッチ43を形成することによって機械加工される。水平ボア44は、ヘッド40のキャビティと支持構造体21の受け入れ部との両方をカットする単一の(EDM)機械加工ステップを可能にする。
図4dでは、
図2cで記載される二つのフィラメント22の四つの端部の各々を、支持構造体21のノッチのそれぞれに挿入した後の、準備されたカソードカップ45が示される。したがって合計2本のこのようなフィラメントが挿入される。図はフィラメント当たり1つのセラミックのみを示している。より多くの、異なるタイプのセラミックスが存在する可能性がある。
【0051】
本発明の別の実施形態による
図5a乃至
図5dにおいて、X線管のカソードの組立のための方法が実行されるときのカソードの組立状態を表す4つの図面が示される。
図5aにおいて、2つの没入部42を機械加工してカソードカップにフィラメント空間を形成した後の4つの支持構造ホールを備えるカソードカップの本体構造体40が示される。この実施形態では、水平ボア44は不要である。
図5bでは、4つの支持構造体21を支持構造ホールに挿入してはんだ付けした後の、カソードカップの本体構造体が示される。
図5cにおいて、螺旋状フィラメントの端部を受け入れるために、支持構造体21のそれぞれのトップにノッチを形成することによって支持構造体を機械加工した後の、カソードカップの本体構造体が示される。
図5dでは、
図2cで記載のように、2つのフィラメント22の4つの端部のそれぞれを、支持構造体21のノッチの各々に挿入した後の、準備されたカソードカップ45が示される。
図5dは、ノッチ及び挿入されたフィラメントを備える支持構造体端部のクローズアップを更に示す。
図4と比較すると、2つのステップの順序が逆転されるので、没入部を機械加工し、支持構造体を機械加工する機械加工ステップは、1つの動作では実行されないが、支持構造体を挿入してはんだ付けした後に実行される。機械加工はEDMでもある。
【0052】
図2cで記載のように、フィラメントの各端部を支持構造体のノッチの各々に挿入する前に、フィラメントの全再結晶化が、外部熱を加えることによって提供される。これは、
図4及び5に記載された両方の実施形態に当てはまる。
【0053】
更に支持構造体21の取付ボルトは、本体構造体41を通じて延在する。それ故にステップ付きスルーホール41は、取付ボルト又はセラミックの何れかの直径に対応する下部よりも大きな直径を有する上部を備える。したがって、本体構造体41へのろう付け、例えば高温半田付けは、下部に設けられることができ、上部において、ボルトは本体構造体41に結合されず、フィラメントコアの高熱負荷を可能にする一方、ろう付けされた接続部を熱的に保護する。
【0054】
本発明によれば、フィラメント22は完全に再結晶化されて、時間に渡って動作における必要な直線性を達成する。例えば、フィラメント22は、再結晶中に螺旋構造体に挿入されるように提供されることができる、W.A円筒状ガイドピンからなる。
【0055】
図4及び
図5に示すように、一例によれば、カソードは、カソードカップ、例えばカソードカップ45として設けられる。カソードカップは、非導電性セラミックから作られたセラミックカソードカップとして設けられてもよい。カソードカップの表面の一部は、金属コーティング部を備える。
【0056】
例えば、メタライゼーションは、表面電荷を避けるため、ろう付け及び電気的目的のために表面上に提供される。
【0057】
図6は、カソード110とアノード112とを有するX線管100を示している。カソードは、上述した実施例の1つによるカソードとして設けられる。
【0058】
例えば、X線管は、回転軸114で示される回転アノード112を備える。この目的のために、駆動装置116が示されるが、管ハウジング118の内部の部分のみが示され、外側にある何れの部分、例えば、駆動手段の散乱は無視される。さらに、電子ビーム122をカソード110からアノード112上の焦点部分124に向かって偏向するためのステアリング又は偏向手段装置120が示される。X線透過窓126が示され、X線ビーム128が、それ以上表示されていない対象物に向けて放射される。
図6がX線管の概略図であることは留意されなければならない。
【0059】
さらに、本発明によれば、X線源210とX線検出器212と処理ユニット214とを有するX線イメージングシステムのためのシステム200も提供される。処理ユニット214は、関心対象物216のX線画像データを提供するためにX線源210及びX線検出器212を制御するように構成される。X線源210は、上述の例によるX線管100として提供される。
【0060】
例えば、X線システムは、
図7aに示すような医用イメージングシステムであってもよい。図から分かるように、X線源210及びX線検出器212は、いわゆるCアーム装置218として提供され、Cアーム装置は、関心対象物の周りの源及び検出器の自由な配置を提供するために、支持構造体に移動可能に取り付けられる。例えば、病院内の手術室を示す、患者テーブルならびに監視装置222及び照明装置224が示される。代わりに、X線システムは、本発明によるカソードを含むX線源が使用される何れかの他の医用イメージングシステム、例えばCT X線イメージングシステムであってもよい。しかしながら、本発明によれば、例えば荷物部品228のスキャン及びスクリーニング、又は材料及び構造検査のための検査装置226も提供される。これは、上述した例によるX線管として設けられるX線源を有する、X線イメージングのためのX線システム200のさらなる例として
図7bに示される。X線源は
図7bにはさらに示されていないことに留意されたい。
【0061】
図8は、X線管のためのカソードの組立のための方法300であって、以下のステップ、すなわち、a)少なくとも2つの支持構造ホールをカソードカップに設けるステップ(310)と、b)支持構造ホールに少なくとも2つの支持構造体を挿入し、はんだ付けするステップ(312)と、c)没入部を機械加工して、フィラメントキャビティをカソードカップ内に形成するステップ(314)と、d)ステップc)と同じ機械加工動作で、螺旋状フィラメントの端部を受け入れるように支持構造体の各々のトップにノッチを形成することによって支持構造体を機械加工するステップ(314)と、e)少なくとも部分的な螺旋構造体を有する完全に再結晶化されたフィラメントの各端部を、支持構造体のノッチの各々に挿入するステップ(316)とを有する、方法を示す。この場合、フィラメントは、フィラメントの一方の端部からフィラメントの他方の端部まで延在する完全な螺旋構造体(22,23)を有する。フィラメントは、電子放出方向にアノードに向かって電子を放出するように構成される。
【0062】
更なる例(更に図示略)によれば、ステップe)の前に、外部熱を加えることによってフィラメントの全再結晶化が提供される。
【0063】
本発明の実施形態は、異なる主題を参照して説明されることに留意されたい。特に、いくつかの実施形態は、方法タイプの特許請求の範囲を参照して記載され、他の実施形態は、デバイスタイプの特許請求の範囲を参照して記載される。しかし、当業者であれば、上記及び以下の説明から、別段の注意がない限り、1つのタイプの主題に属する特徴の何れかの組み合わせに加えて、異なる主題に関連する特徴間の何れかの組み合わせが、この出願に開示される。ただし、すべての機能を組み合わせることで、機能の単純な合計以上の相乗効果が得られる。
【0064】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に図示され説明されたが、そのような図示及び説明は、例示的又は例示的であって限定的ではないとみなされるべきである。本発明は開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示、及び従属請求項の研究から、クレームされた発明を実施する際の当業者によって理解され、達成され得る。
【0065】
特許請求の範囲において、「有する(comprising)」という単語は他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に再掲されたいくつかのアイテムの機能を果たすことができる。特定の措置が相互に異なる従属請求項に再掲されるという事実だけでは、これらの措置の組み合わせを活用することができないことを示すものではない。特許請求の範囲内のいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。