(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】硬化性組成物、電子部品及び電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 299/00 20060101AFI20220621BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220621BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220621BHJP
G03F 7/032 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C08F299/00
C08F290/06
G03F7/004 501
G03F7/032
(21)【出願番号】P 2018529666
(86)(22)【出願日】2018-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2018018156
(87)【国際公開番号】W WO2019017047
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2017142088
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】前中 寛
(72)【発明者】
【氏名】鹿毛 崇至
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 駿夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀
【審査官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-158628(JP,A)
【文献】特開2016-024284(JP,A)
【文献】特開2010-270185(JP,A)
【文献】特開2011-052154(JP,A)
【文献】特開2015-072468(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098797(WO,A1)
【文献】特開2016-204631(JP,A)
【文献】特開2012-138251(JP,A)
【文献】特開2015-59983(JP,A)
【文献】特開2016-136248(JP,A)
【文献】特開2017-141472(JP,A)
【文献】国際公開第2017/90680(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 283/01
C08F 290/00 - 290/14
C08F 299/00 - 299/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性成分と、酸化チタンと、酸化チタン以外の無機フィラーとを含み、
前記硬化性成分が、芳香族骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート又はエポキシ化合物を含み、
前記無機フィラーが、タルク、シリカ、又は硫酸バリウムであり、
硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、前記無機フィラーの含有量が、5重量%以上であり、
硬化性組成物中の鉄濃度が、100ppm以下である、硬化性組成物。
【請求項2】
硬化性組成物中の鉄濃度が、80ppm以下である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、前記酸化チタンの含有量が、35重量%以上70重量%以下である、請求項1
又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記硬化性成分が、2000以上の重量平均分子量を有する硬化性化合物を含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記硬化性成分が、水酸基を有する硬化性化合物を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
ソルダーレジスト膜を形成するために用いられる、請求項1~
5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
電子部品本体と、
前記電子部品本体の表面上に配置された硬化膜とを備え、
前記硬化膜の材料が、請求項1~
6のいずれか1項に記載の硬化性組成物である、電子部品。
【請求項8】
電子部品本体の表面上に、請求項1~
6のいずれか1項に記載の硬化性組成物を塗布して、硬化性組成物層を形成する工程と、
前記硬化性組成物層を硬化させて、硬化膜を形成する工程とを備える、電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記硬化性組成物層がソルダーレジスト層であり、前記硬化膜がソルダーレジスト膜である、請求項
8に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性成分と酸化チタンとを含む硬化性組成物に関する。また、本発明は、上記硬化性組成物を用いた電子部品及び上記硬化性組成物を用いた電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板を高温のはんだから保護するための保護膜として、ソルダーレジスト膜が広く用いられている。
【0003】
また、様々な電子部品において、プリント配線板の上面に発光ダイオード(以下、LEDと略す)チップが搭載されている。LEDから発せられた光の内、プリント配線板の上面側に到達した光も利用するために、プリント配線板の上面に白色ソルダーレジスト膜が形成されていることがある。この場合には、LEDチップの表面からプリント配線板とは反対側に直接照射される光だけでなく、プリント配線板の上面側に到達し、白色ソルダーレジスト膜により反射された反射光も利用できる。従って、LEDから生じた光の利用効率を高めることができる。
【0004】
上記白色ソルダーレジスト膜を形成するための組成物が、下記の特許文献1,2に開示されている。
【0005】
下記の特許文献1には、少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、希釈剤(C)と、酸化チタン(D)と、エポキシ系熱硬化性化合物(E)とを含有する光硬化性組成物が開示されている。上記光硬化性組成物は、上記(A)成分として、二官能のエポキシ(メタ)アクリレート(A1)を含有する。
【0006】
下記の特許文献2には、光硬化性樹脂と、光重合開始剤と、希釈剤と、熱硬化性樹脂と、酸化チタン粒子と、含水珪酸マグネシウム粒子とを含むアルカリ溶液可溶型レジストインキ組成物が開示されている。上記光硬化性樹脂は、ノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂又はビスフェノールA型エポキシ樹脂と、不飽和カルボン酸との反応物を有機多塩基酸無水物と反応させることにより得られる。上記熱硬化性樹脂は、アクリル系共重合体により構成されている。上記酸化チタン粒子は、酸化アルミニウムで被覆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-158628号公報
【文献】特開2016-24284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の光硬化性組成物により形成された硬化膜では、光の反射率が徐々に低下することがある。特に、硬化膜が高温下に晒されると、光の反射率が大きく低下することがある。また、硬化膜の絶縁信頼性が悪化することがある。
【0009】
本発明の目的は、耐熱性が高い硬化膜を得ることができ、光の反射率が高い硬化膜を得ることができ、高温下に晒されても硬化膜の高い光の反射率を維持することができ、更に絶縁信頼性が高い硬化膜を得ることができる硬化性組成物を提供することである。また、本発明の目的は、上記硬化性組成物を用いた電子部品及び上記硬化性組成物を用いた電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、硬化性成分と、酸化チタンと、酸化チタン以外の無機フィラーとを含み、硬化性組成物中の鉄濃度が、100ppm以下である、硬化性組成物が提供される。
【0011】
本発明に係る硬化性組成物のある特定の局面では、硬化性組成物中の鉄濃度が、80ppm以下である。
【0012】
本発明に係る硬化性組成物のある特定の局面では、前記無機フィラーが、タルク、シリカ、又は硫酸バリウムである。
【0013】
本発明に係る硬化性組成物のある特定の局面では、硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、前記酸化チタンの含有量が、35重量%以上70重量%以下である。
【0014】
本発明に係る硬化性組成物のある特定の局面では、前記硬化性成分が、光硬化性化合物又は熱硬化性化合物を含む。
【0015】
本発明に係る硬化性組成物のある特定の局面では、前記硬化性成分が、2000以上の重量平均分子量を有する硬化性化合物を含む。
【0016】
本発明に係る硬化性組成物のある特定の局面では、前記硬化性成分が、水酸基を有する硬化性化合物を含む。
【0017】
本発明に係る硬化性組成物のある特定の局面では、該硬化性組成物は、ソルダーレジスト膜を形成するために用いられる。
【0018】
本発明の広い局面によれば、電子部品本体と、前記電子部品本体の表面上に配置された硬化膜とを備え、前記硬化膜の材料が、上述した硬化性組成物である、電子部品が提供される。
【0019】
本発明の広い局面によれば、電子部品本体の表面上に、上述した硬化性組成物を塗布して、硬化性組成物層を形成する工程と、前記硬化性組成物層を硬化させて、硬化膜を形成する工程とを備える、電子部品の製造方法が提供される。
【0020】
本発明に係る電子部品の製造方法のある特定の局面では、前記硬化性組成物層がソルダーレジスト層であり、前記硬化膜がソルダーレジスト膜である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る硬化性組成物は、硬化性成分と、酸化チタンと、酸化チタン以外の無機フィラーとを含み、硬化性組成物中の鉄濃度が、100ppm以下である。本発明に係る硬化性組成物では、上記の構成が備えられているので、光の反射率が高い硬化膜を得ることができ、耐熱性が高い硬化膜を得ることができ、高温下に晒されても硬化膜の高い光の反射率を維持することができ、更に絶縁信頼性が高い硬化膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1(a)~(e)は、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物を用いて、電子部品を製造する方法の一例を説明するための断面図である。
【
図2】
図2(a)~(c)は、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物を用いて、電子部品を製造する方法の他の例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0024】
(硬化性組成物)
本発明に係る硬化性組成物は、光の照射により硬化されて用いられることが好ましい。本発明に係る硬化性組成物は、硬化膜を形成するために用いられることが好ましく、ソルダーレジスト膜を形成するために用いられることがより好ましい。上記硬化膜は、ソルダーレジスト膜であることが好ましい。
【0025】
本発明に係る硬化性組成物は、現像型レジスト硬化性組成物であってもよく、非現像型レジスト硬化性組成物であってもよい。本発明に係る硬化性組成物においては、ソルダーレジスト膜を形成するために現像が行われてもよく、ソルダーレジスト膜を形成するために現像が行われなくてもよい。本発明に係る硬化性組成物は、ソルダーレジスト用硬化性組成物であることが好ましい。
【0026】
本発明に係る硬化性組成物は、(A)硬化性成分と、(C)酸化チタンと、(D)酸化チタン以外の無機フィラーとを含む。本発明に係る硬化性組成物では、硬化性組成物中の鉄濃度が、100ppm以下である。
【0027】
本発明では、上記の構成が備えられているので、耐熱性が高い硬化膜を得ることができる。本発明では、はんだ付けが行われるかなり高温の条件下での耐熱性(半田耐熱性)を十分に確保できる。したがって、本発明に係る硬化性組成物は、ソルダーレジスト膜を形成するために好適に用いることができる。本発明では、上記の構成が備えられているので、光の反射率が高い硬化膜を得ることができ、高温下に晒されても硬化膜の高い光の反射率を維持することができる。従って、本発明に係る硬化性組成物は、光反射用途に好適に用いることができる。さらに、本発明では、上記の構成が備えられているので、絶縁信頼性に優れている硬化膜を得ることができる。
【0028】
本発明者らは、光の反射率が高く、高い光の反射率を維持することができる硬化膜を得るために鋭意検討した結果、硬化膜の光の反射率が徐々に低下することの原因が、硬化性組成物中に存在する鉄であることを見出した。また、本発明者らは、光の反射率が高く、高い光の反射率を維持することができる硬化膜を得るために鋭意検討した結果、硬化膜の絶縁信頼性が悪化することの原因が、硬化性組成物中に存在する鉄であることを見出した。鉄によって上記の性能が悪化する理由としては、硬化性組成物中の鉄と、硬化性成分に含まれる硬化性化合物とにより硬化性化合物-鉄複合体が形成されることが考えられる。
【0029】
本発明に係る硬化性組成物では、硬化性組成物中の鉄濃度は、100ppm以下である。本発明に係る硬化性組成物は、鉄を含んでいなくてもよく、鉄を含んでいてもよい。硬化膜の光の反射率を効果的に高め、かつ高い光の反射率を効果的に維持する観点、及び硬化膜の絶縁信頼性を効果的に高める観点からは、硬化性組成物中の鉄濃度は、好ましくは80ppm以下、より好ましくは70ppm以下である。硬化性組成物中の鉄濃度の下限は特に限定されない。硬化性組成物中の鉄濃度は、0ppmを超えていてもよく、0ppm(未含有)以上であってもよく、0ppm(未含有)であってもよい。
【0030】
なお、上記鉄は、硬化性組成物の材料に含まれていたり、硬化性組成物を調製する際に用いる器具に含まれていたりする。硬化性組成物を調製する際に用いる器具によって、硬化性組成物中に鉄が含まれることがある。
【0031】
本発明に係る硬化性組成物において、硬化性組成物中の鉄濃度を上記の好ましい範囲にする方法としては、以下の(1)~(3)の方法等が挙げられる。(1)配合成分の原料として鉄含有量の少ない原料を用いる方法。(2)マグネットフィルター等を用いて組成物、配合成分、又は配合成分の原料から鉄を除去する方法。(3)硬化性組成物を調製する際の攪拌や混練等に用いる部材の材質をステンレス鋼(SUS304等)ではない材質(鉄を含まないか又は鉄の含有量が少ない材質)とする方法。
【0032】
例えば、原料としてのタルクは、鉄を多く含む。上記(2)の方法によって、タルクに含まれる鉄を効果的に除去することができる。
【0033】
硬化性組成物中の鉄濃度は以下のようにして測定できる。
【0034】
硬化性組成物1gを白金るつぼに精秤し、予備燃焼後、800℃及び3時間の条件で電気炉により灰化させる。冷却後、硝酸2mlを6回に分けて加え、300℃~350℃のホットプレート上で完全に蒸発、乾固させる。次に、塩酸3mlを加え、200℃~250℃に加熱し、塩酸がるつぼの底に少量残る程度まで乾固させる。次に、蒸留水で25mlにメスアップし、冷却装置により20℃に保って試料を得る。得られた試料について、原子吸光分光光度計(島津製作所社製「AA-6500」)を用いて原子吸光分析を行い、硬化性組成物中の鉄濃度を測定する。
【0035】
上記鉄濃度は硬化性組成物中の鉄元素の濃度であり、硬化性組成物中における鉄の存在状態は特に限定されない。上記鉄は単体であってもよく、化合物であってもよく、鉄イオンであってもよく、有機金属錯体のように錯体を形成していてもよい。
【0036】
以下、本発明に係る硬化性組成物に含まれる各成分を詳細に説明する。
【0037】
((A)硬化性成分)
本発明に係る硬化性組成物は、(A)硬化性成分を含む。硬化膜の光の反射率を効果的に高め、かつ高い光の反射率を効果的に維持する観点、及び硬化膜の絶縁信頼性を効果的に高める観点からは、(A)硬化性成分は、(A-1)光硬化性化合物又は(A-2)熱硬化性化合物を含むことが好ましい。(A)硬化性成分は、(A-1)光硬化性化合物のみを含んでいてもよく、(A-2)熱硬化性化合物のみを含んでいてもよく、(A-1)光硬化性化合物と(A-2)熱硬化性化合物との双方を含んでいてもよい。上記硬化性組成物は、(A-1)光硬化性化合物のみを含んでいてもよく、(A-2)熱硬化性化合物のみを含んでいてもよく、(A-1)光硬化性化合物と(A-2)熱硬化性化合物との双方を含んでいてもよい。
【0038】
硬化膜の光の反射率を効果的に高め、かつ高い光の反射率を効果的に維持する観点、及び硬化膜の絶縁信頼性を効果的に高める観点からは、(A)硬化性成分は、2000以上の重量平均分子量を有する硬化性化合物を含むことが好ましい。2000以上の重量平均分子量を有する硬化性化合物は、(A-1)光硬化性化合物であってもよく、(A-2)熱硬化性化合物であってもよい。本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量であり、下記の測定装置及び測定条件にて測定することができる。
【0039】
測定装置:日本ウォーターズ社製「Waters GPC System(Waters 2690+Waters 2414(RI))」
測定条件カラム:Shodex GPC LF-G×1本、Shodex GPC LF-804×2本
移動相:THF 1.0ml/分
サンプル濃度:5mg/ml
検出器:示差屈折率検出器(RID)
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製、分子量:620~590000)
【0040】
硬化膜の光の反射率を効果的に高め、かつ高い光の反射率を効果的に維持する観点、及び硬化膜の絶縁信頼性を効果的に高める観点からは、(A)硬化性成分は、水酸基を有する硬化性化合物を含むことが好ましい。水酸基を有する硬化性化合物は、(A-1)光硬化性化合物であってもよく、(A-2)熱硬化性化合物であってもよい。硬化性組成物が水酸基を有する硬化性化合物を含む場合には、水酸基を有する硬化性化合物と、硬化性組成物中の鉄とにより硬化性化合物-鉄複合体が形成されやすい。結果として、硬化膜の光の反射率が大きく低下することがある。本発明に係る硬化性組成物では、上記の構成が備えられているので、水酸基を有する硬化性化合物と、硬化性組成物中の鉄とによる硬化性化合物-鉄複合体の形成を抑制することができ、硬化膜の光の反射率を効果的に高め、かつ高い光の反射率を効果的に維持することができる。
【0041】
((A-1)光硬化性化合物)
上記硬化性組成物に含まれる(A-1)光硬化性化合物は、光硬化性を有していれば特に限定されない。(A-1)光硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
(A-1)光硬化性化合物はカルボキシル基を有していてもよい。(A-1)光硬化性化合物がカルボキシル基を有することで、硬化性組成物の現像性を良好にすることができる。
【0043】
上記硬化性組成物の現像を行わない場合には、(A-1)光硬化性化合物はカルボキシル基を有さないことが好ましい。カルボキシル基を有さない光硬化性化合物を用いることで、上記硬化性組成物により形成された硬化膜の変色を効果的に抑制することができる。
【0044】
硬化膜の光の反射率を効果的に高め、かつ高い光の反射率を効果的に維持する観点、及び硬化膜の絶縁信頼性を効果的に高める観点からは、(A-1)光硬化性化合物は、2000以上の重量平均分子量を有する光硬化性化合物を含むことが好ましく、水酸基を有する光硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0045】
硬化膜の塗布対象部材に対する密着性を高める観点からは、(A-1)光硬化性化合物は、エチレン性不飽和結合を有することが好ましい。特に、(C)酸化チタンの含有量が多い場合に、エチレン性不飽和結合を有する光硬化性化合物を用いていないと、硬化膜の密着性が低くなりやすい傾向がある。
【0046】
(A-1)光硬化性化合物におけるエチレン性不飽和結合を含む基としては、ビニル基、アリル基、及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。効果的に反応を進行させ、硬化膜の発泡、剥離及び変色をより一層抑制する観点からは、(A-1)光硬化性化合物におけるエチレン性不飽和結合を含む基は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。(A-1)光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。
【0047】
硬化膜の塗布対象部材に対する密着性を高める観点からは、(A-1)光硬化性化合物は、エポキシ(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。硬化膜の硬度を高める観点からは、上記エポキシ(メタ)アクリレートは、2官能のエポキシ(メタ)アクリレートと、3官能以上のエポキシ(メタ)アクリレートとを含むことが好ましい。2官能のエポキシ(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を2個有することが好ましい。3官能以上のエポキシ(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を3個以上有することが好ましい。
【0048】
上記エポキシ(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得ることができる。上記エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ基を(メタ)アクリロイル基に変換することにより得ることができる。上記エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ基を有さないことが好ましく、光硬化性化合物であることが好ましい。
【0049】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(例えば、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールS型エポキシ(メタ)アクリレート)、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、アミン変性ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
2官能のエポキシ(メタ)アクリレートの市販品としては、KAYARAD R-381(日本化薬社製、ビスフェノールA型エポキシアクリレート)、EBECRYL3700、EBECRYL3701及びEBECRYL3708(ダイセル・オルネクス社製、変性ビスフェノールA型エポキシアクリレート)等が挙げられる。また、3官能以上のエポキシ(メタ)アクリレートの市販品としては、EBECRYL3603(ダイセル・オルネクス社製、ノボラックエポキシアクリレート)等が挙げられる。また、2官能のエポキシ(メタ)アクリレートの水酸基を変性させて、(メタ)アクリロイル基を導入することにより、3官能以上のエポキシ(メタ)アクリレートを得てもよい。
【0051】
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを示す。「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
【0052】
(A-1)光硬化性化合物の重量平均分子量は、2000以上であることが好ましい。(A-1)光硬化性化合物の重量平均分子量が2000未満であると、重量平均分子量が2000以上である場合と比べて、硬化膜の密着性が低くなる傾向があったり、リフロー後の発泡や変色が生じたりする傾向がある。(A-1)光硬化性化合物の重量平均分子量は、好ましくは20000以下である。
【0053】
硬化膜の発泡、剥離及び変色を効果的に抑制する観点からは、(A-1)光硬化性化合物は、脂環式骨格を有する化合物ではないことが好ましく、脂環式骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレートではないことが好ましい。硬化膜の発泡、剥離及び変色を効果的に抑制する観点からは、(A-1)光硬化性化合物は、芳香族骨格を有する化合物を含むことが好ましく、芳香族骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0054】
(A-1)光硬化性化合物は、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート又は芳香族骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレート、又は芳香族骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。(A-1)光硬化性化合物が上記の好ましい化合物を含むことで、硬化膜の発泡、剥離及び変色を効果的に抑制することができる。
【0055】
上記エポキシ(メタ)アクリレートは、水酸基を有することが好ましい。上記エポキシ(メタ)アクリレートは、水酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレートの水酸基を変性させたエポキシ(メタ)アクリレートであってもよい。この場合には、硬化膜の架橋度を高め、硬化膜の硬度を効果的に高めることができる。水酸基の変性に用いることができる化合物としては、シランカップリング剤、及びイソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、メルカプト基、エポキシ基、アミノ基、スルフィド基、ウレイド基、及びイソシアネート基等の官能基を有する化合物等が挙げられる。光反応性を有するので、上記シランカップリング剤は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、又はメルカプト基を有する化合物であることが好ましい。イソシアネート基を有するモノマーとしては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、又はメルカプト基を有する化合物等が挙げられる。
【0056】
上記エポキシ(メタ)アクリレートの酸価は20mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が上記上限以下であると、酸性基の影響が抑えられ、硬化膜の耐熱性をより一層向上させることができる。なお、上記硬化性組成物が上記エポキシ(メタ)アクリレートを複数種含む場合は、上記酸価は、エポキシ(メタ)アクリレートの混合物の酸価を意味する。
【0057】
上記エポキシ(メタ)アクリレートの酸価は、以下のようにして測定される。
【0058】
エポキシ(メタ)アクリレート1gにアセトン30gを添加し、エポキシ(メタ)アクリレートを均一に溶解し、溶液を得る。なお、エポキシ(メタ)アクリレートに合成溶媒、希釈溶媒等の揮発分が添加されている場合は、上記溶液を得る前に予め、揮発分の沸点よりも10℃程度高い温度で1~4時間加熱し、揮発分を除去する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインを、得られた溶液に適量添加して、0.1Nの水酸化カリウム(KOH)水溶液を用いて滴定を行う。測定対象である上記溶液(エポキシ(メタ)アクリレートのアセトン溶液)を中和するのに必要なKOHのmg数を算出することで、酸価を求める。
【0059】
上記硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、(A-1)光硬化性化合物及び上記エポキシ(メタ)アクリレートの含有量はそれぞれ、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。(A-1)光硬化性化合物及び上記エポキシ(メタ)アクリレートの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化膜の密着性を効果的に高めることができる。
【0060】
また、上記硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、2官能のエポキシ(メタ)アクリレートと、3官能以上のエポキシ(メタ)アクリレートとの合計の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。2官能のエポキシ(メタ)アクリレートと、3官能以上のエポキシ(メタ)アクリレートとの合計の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化膜の密着性を効果的に高めることができる。
【0061】
上記硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%は、硬化性組成物が溶剤を含む場合には、硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%を意味し、硬化性組成物が溶剤を含まない場合には、硬化性組成物100重量%を意味する。
【0062】
((A-2)熱硬化性化合物)
上記硬化性組成物に含まれる(A-2)熱硬化性化合物は、熱硬化性を有していれば特に限定されない。(A-2)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
(A-2)熱硬化性化合物はカルボキシル基を有していてもよい。(A-2)熱硬化性化合物がカルボキシル基を有することで、硬化性組成物の現像性を良好にすることができる。
【0064】
上記硬化性組成物の現像を行わない場合には、(A-2)熱硬化性化合物はカルボキシル基を有さないことが好ましい。カルボキシル基を有さない熱硬化性化合物を用いることで、上記硬化性組成物により形成された硬化膜の変色を効果的に抑制することができる。
【0065】
硬化膜の光の反射率を効果的に高め、かつ高い光の反射率を効果的に維持する観点、及び硬化膜の絶縁信頼性を効果的に高める観点からは、(A-2)熱硬化性化合物は、2000以上の重量平均分子量を有する熱硬化性化合物を含むことが好ましく、水酸基を有する熱硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0066】
(A-2)熱硬化性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、及びシリコーン化合物等が挙げられる。硬化膜の絶縁信頼性を高める観点からは、(A-2)熱硬化性化合物は、上記エポキシ化合物を含むことが好ましい。また、上記エポキシ化合物を用いることにより、硬化性組成物の加工性及び硬化性を良好にすることができる。
【0067】
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ジグリシジルフタレート化合物、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ化合物、ビキシレノール型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、テトラグリシジルキシレノイルエタン化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ化合物、キレート型エポキシ化合物、グリオキザール型エポキシ化合物、アミノ基含有エポキシ化合物、ゴム変性エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ化合物、シリコーン変性エポキシ化合物及びε-カプロラクトン変性エポキシ化合物等が挙げられる。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0068】
上記硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、(A-2)熱硬化性化合物及び上記エポキシ化合物の含有量はそれぞれ、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。(A-2)熱硬化性化合物及び上記エポキシ化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化膜の絶縁信頼性を効果的に高めることができる。
【0069】
((B)反応性希釈剤)
本発明に係る硬化性組成物は、(B)反応性希釈剤を含んでいてもよい。(B)反応性希釈剤は、エチレン性不飽和結合を1個以上有することが好ましい。(A-1)光硬化性化合物とともに(B)反応性希釈剤を用いることにより、(C)酸化チタンの含有量が多くても、硬化膜の密着性を効果的に高めることができ、さらに硬化性組成物の粘度を最適な範囲に容易に制御することができる。(B)反応性希釈剤には、(A-1)光硬化性化合物は含まれない。(B)反応性希釈剤の重量平均分子量は一般に2000未満であり、好ましくは800以下、より好ましくは600以下である。(B)反応性希釈剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
(B)反応性希釈剤におけるエチレン性不飽和結合を含む基としては、ビニル基、アリル基、及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。効果的に反応を進行させ、硬化膜の発泡、剥離及び変色をより一層抑制する観点からは、(B)反応性希釈剤におけるエチレン性不飽和結合を含む基は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。(B)反応性希釈剤は、(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。
【0071】
(B)反応性希釈剤は特に限定されない。(B)反応性希釈剤としては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸付加物、多価アルコールのアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリル酸付加物、ウレタン(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記多価アルコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、及びペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0072】
(B)反応性希釈剤は、エチレン性不飽和結合を1個有する化合物を含んでいてもよく、エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物を含んでいてもよい。硬化膜の密着性をより一層高める観点からは、(B)反応性希釈剤は、エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物を含むことが好ましい。
【0073】
硬化膜の密着性をより一層高める観点からは、(B)反応性希釈剤は、脂環式化合物を含むか、又は、芳香環又は水酸基を有することが好ましい。
【0074】
(B)反応性希釈剤は、カルボキシル基を有さないことが好ましい。カルボキシル基を有さない反応性希釈剤を用いることにより、硬化膜の変色を抑制することができる。
【0075】
(B)反応性希釈剤の25℃での粘度は、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは3mPa・s以上である。硬化膜の密着性をより一層高める観点からは、(B)反応性希釈剤の25℃での粘度は、好ましくは200mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下である。
【0076】
上記粘度は、E型粘度計を用いて、25℃及び10rpmの条件で測定することができる。
【0077】
上記硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、(B)反応性希釈剤及びエチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物の含有量はそれぞれ、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。(B)反応性希釈剤及びエチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化膜の密着性が効果的に高くなる。
【0078】
((C)酸化チタン)
本発明に係る硬化性組成物は、(C)酸化チタンを含む。上記硬化性組成物が(C)酸化チタンを含むことにより、光の反射率が高い硬化膜を形成することができる。(C)酸化チタンを用いることによって、(D)酸化チタン以外の他の無機フィラーのみを用いた場合と比較して、光の反射率が高い硬化膜を形成することができる。(C)酸化チタンは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0079】
(C)酸化チタンは、ルチル型酸化チタン又はアナターゼ型酸化チタンであることが好ましく、ルチル型酸化チタンであることがより好ましい。上記ルチル型酸化チタンを用いることにより、硬化膜の高温下での変色をより一層抑制できる。上記アナターゼ型酸化チタンは、上記ルチル型酸化チタンよりも硬度が低い。このため、上記アナターゼ型酸化チタンを用いることにより、硬化膜の加工性をより一層高めることができる。
【0080】
(C)酸化チタンとしては、硫酸法酸化チタン及び塩素法酸化チタン等が挙げられる。硬化膜の高温下での変色をより一層抑制する観点からは、(C)酸化チタンは、塩素法酸化チタンであることが好ましい。上記塩素法酸化チタンは、塩素法により製造された酸化チタンである。
【0081】
(C)酸化チタンは、ルチル型酸化チタンであることが好ましい。上記ルチル型酸化チタンを用いることにより、硬化膜の耐熱性をより一層高めることができ、硬化膜の変色をより一層抑制できる。
【0082】
(C)酸化チタンは、アルミニウム酸化物により表面処理されたルチル型酸化チタン(アルミニウム酸化物による表面処理物であるルチル型酸化チタン)を含むことが好ましい。上記アルミニウム酸化物により表面処理されたルチル型酸化チタンを用いることにより、硬化膜の耐熱性をより一層高めることができる。
【0083】
上記アルミニウム酸化物により表面処理されたルチル型酸化チタンとしては、ルチル塩素法酸化チタンである石原産業社製「CR-90-2」、ルチル塩素法酸化チタンである石原産業社製「CR-58」、ルチル塩素法酸化チタンであるデュポン社製「R-900」、及びルチル硫酸法酸化チタンである石原産業社製「R-630」等が挙げられる。
【0084】
(C)酸化チタンは、ケイ素酸化物又はシリコーン化合物による表面処理物であるルチル型酸化チタンを含むことが好ましい。上記ケイ素酸化物又はシリコーン化合物による表面処理物であるルチル型酸化チタンを用いることにより、硬化膜の高温下での変色をより一層抑制できる。
【0085】
上記ケイ素酸化物又はシリコーン化合物による表面処理物であるルチル型酸化チタンとしては、ルチル塩素法酸化チタンである石原産業社製「CR-90」や、ルチル硫酸法酸化チタンである石原産業社製「R-550」等が挙げられる。
【0086】
上記表面処理の方法は特に限定されない。上記表面処理の方法として、乾式法、湿式法、インテグラルブレンド法、並びに他の公知慣用の表面処理方法を用いることができる。
【0087】
(C)酸化チタンの平均粒子径は、好ましくは1nm以上であり、好ましくは40μm以下である。上記平均粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化膜の光の反射率をより一層高めることができる。
【0088】
(C)酸化チタンの平均粒子径は、体積基準粒度分布曲線において積算値が50%のときの粒子径である。上記平均粒子径は、例えばレーザ光式粒度分布計を用いて測定可能である。上記レーザ光式粒度分布計の市販品としては、Beckman Coulter社製「LS 13 320」等が挙げられる。
【0089】
上記硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、(C)酸化チタンの含有量は、好ましくは35重量%以上、より好ましくは40重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。(C)酸化チタンの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化膜の耐熱性をより一層高めることができ、硬化膜の高温下での変色をより一層抑制できる。さらに、塗工に適した粘度を有する硬化性組成物を容易に調製できる。
【0090】
((D)酸化チタン以外の無機フィラー)
本発明に係る硬化性組成物は、(D)酸化チタン以外の無機フィラー(以下、(D)無機フィラーと記載することがある)を含む。(D)無機フィラーは、酸化チタンとは異なる無機フィラーである。(D)無機フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0091】
(D)無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、マイカ、ベリリア、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、ホウ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、炭化ケイ素、架橋アクリルの樹脂粒子及びシリコーン粒子等が挙げられる。
【0092】
硬化膜の高温下での変色をより一層抑制する観点からは、(D)無機フィラーは、タルク、シリカ、又は硫酸バリウムであることが好ましく、シリカであることがより好ましい。(D)無機フィラーは、タルクであってもよい。
【0093】
(D)無機フィラーの平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。(D)無機フィラーの平均粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化膜の高温下での変色をより一層抑制できる。
【0094】
(D)無機フィラーの平均粒子径は、体積基準粒度分布曲線において積算値が50%のときの粒子径である。上記平均粒子径は、例えばレーザ光式粒度分布計を用いて測定可能である。上記レーザ光式粒度分布計の市販品としては、Beckman Coulter社製「LS 13 320」等が挙げられる。
【0095】
上記硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、(D)無機フィラーの含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。(D)無機フィラーの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化膜の高温下での変色をより一層抑制できる。
【0096】
上記硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、(C)酸化チタンと(D)無機フィラーとの合計の含有量は、好ましくは38重量%以上、より好ましくは45重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは65重量%以下である。(C)酸化チタンと(D)無機フィラーとの合計の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化膜の高温下での変色をより一層抑制できる。
【0097】
((E)光重合開始剤)
上記硬化性組成物は、(E)光重合開始剤を含んでいてもよい。上記硬化性組成物が(A-1)光硬化性化合物を含む場合には、上記硬化性組成物は、(E)光重合開始剤を含むことが好ましい。(E)光重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0098】
(E)光重合開始剤としては、アシルフォスフィンオキサイド、ハロメチル化トリアジン、ハロメチル化オキサジアゾール、イミダゾール、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、アントラキノン、ベンズアンスロン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、チオキサントン、安息香酸エステル、アクリジン、フェナジン、チタノセン、α-アミノアルキルフェノン、オキシム、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0099】
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、o-ベンゾイル安息香酸メチル及びミヒラーズケトン等が挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤の市販品としては、EAB(保土谷化学社製)等が挙げられる。
【0100】
アセトフェノン系光重合開始剤の市販品としては、ダロキュア1173、ダロキュア2959、イルガキュア184、イルガキュア907、及びイルガキュア369(以上、いずれもBASF社製)等が挙げられる。
【0101】
ベンゾイン系光重合開始剤の市販品としては、イルガキュア651(BASF社製)等が挙げられる。
【0102】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の市販品としては、Lucirin TPO(BASF社製)、及びイルガキュア819(BASF社製)等が挙げられる。
【0103】
チオキサントン系光重合開始剤の市販品としては、イソプロピルチオキサントン、及びジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0104】
アルキルフェノン系光重合開始剤の市販品としては、ダロキュア1173、ダロキュア2959、イルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア651(以上、いずれもBASF社製)、及びエサキュア1001M(Lamberti社製)等が挙げられる。
【0105】
オキシム系光重合開始剤の市販品としては、イルガキュアOXE-01、及びイルガキュアOXE-02(以上、いずれもBASF社製)等が挙げられる。
【0106】
硬化膜の密着性をより一層高める観点からは、(E)光重合開始剤は、アシルフォスフィン系光重合開始剤とアルキルフェノン系光重合開始剤との双方を含むことが好ましい。
【0107】
硬化膜の発泡、剥離及び変色をより一層抑制する観点からは、(E)光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含むことが好ましい。硬化膜の発泡、剥離及び変色をより一層抑制する観点からは、(E)光重合開始剤は、アセトフェノン系光重合開始剤とアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤との双方を含むことが好ましい。
【0108】
(A-1)光硬化性化合物と(B)反応性希釈剤との合計100重量部に対して、(E)光重合開始剤の含有量は、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。(E)光重合開始剤の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、(A-1)光硬化性化合物を含む硬化性組成物を良好に光硬化させることができる。
【0109】
((F-1)硬化剤及び(F-2)硬化触媒)
上記硬化性組成物は、(F-1)硬化剤又は(F-2)硬化触媒を含んでいてもよい。上記硬化性組成物は、(F-1)硬化剤のみを含んでいてもよく、(F-2)硬化触媒のみを含んでいてもよく、(F-1)硬化剤と(F-2)硬化触媒との双方を含んでいてもよい。上記硬化性組成物が(A-2)熱硬化性化合物を含む場合には、上記硬化性組成物は、(F-1)硬化剤又は(F-2)硬化触媒を含むことが好ましい。(F-1)硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。(F-2)硬化触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0110】
(F-1)硬化剤としては、多官能フェノール化合物、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸の酸無水物、脂肪族又は芳香族の一級又は二級アミン、ポリアミド樹脂、イソシアネート化合物、及びポリメルカプト化合物等が挙げられる。硬化膜の加工性を効果的に高める観点、及び硬化膜の絶縁信頼性を効果的に高める観点からは、(F-1)硬化剤は、多官能フェノール化合物、ポリカルボン酸、及びポリカルボン酸の酸無水物であることが好ましい。
【0111】
多官能フェノール化合物としては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されず、公知慣用の化合物を用いることができる。具体的には、多官能フェノール化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ビニルフェノール共重合樹脂等が挙げられる。硬化膜の耐熱性を効果的に高める観点からは、上記多官能フェノール化合物は、ビスフェノールAであることが好ましい。このような多官能フェノール化合物は、適切な硬化触媒の存在下で、エポキシ化合物と反応する。
【0112】
ポリカルボン酸、及びポリカルボン酸の酸無水物としては、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物、及び該化合物の酸無水物等が挙げられる。具体的には、ポリカルボン酸、及びポリカルボン酸の酸無水物としては、(メタ)アクリル酸の共重合物、無水マレイン酸の共重合物、二塩基酸の縮合物等が挙げられる。市販品としては、BASF社製「ジョンクリル」、サートマー社製「SMAレジン」、及び新日本理化社製「ポリアゼライン酸無水物」等が挙げられる。
【0113】
(A-2)熱硬化性化合物100重量部に対して、(F-1)硬化剤の含有量は、好ましくは1重量部以上、より好ましくは10重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下である。(F-1)硬化剤の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、(A-2)熱硬化性化合物を含む硬化性組成物の耐熱性を効果的に高めることができる。
【0114】
(F-2)硬化触媒は、(A-2)熱硬化性化合物と(F-1)硬化剤との反応において硬化触媒として作用する。また、(F-2)硬化触媒は、(F-1)硬化剤を用いない場合に重合触媒として作用する。
【0115】
(F-2)硬化触媒としては、三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、クラウンエーテル錯体、及びホスホニウムイリド等が挙げられる。具体的には、(F-2)硬化触媒としては、イミダゾール化合物、イミダゾール化合物のイソシアヌル酸塩、ジシアンジアミド、ジシアンジアミドの誘導体、メラミン化合物、メラミン化合物の誘導体、ジアミノマレオニトリル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエタノールアミン、ジアミノジフェニルメタン、有機酸ジヒドラジド等のアミン化合物、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、並びに、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン及びメチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物等が挙げられる。
【0116】
(A-2)熱硬化性化合物100重量部に対して、(F-2)硬化触媒の含有量は、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。(F-2)硬化触媒の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、(A-2)熱硬化性化合物を含む硬化性組成物を良好に熱硬化させることができる。
【0117】
((G)チオール基を1個以上有するチオール基含有化合物)
上記硬化性組成物は、(G)チオール基を1個以上有するチオール基含有化合物(以下、(G)チオール基含有化合物と記載することがある)を含んでいてもよい。上記硬化性組成物が(A-1)光硬化性化合物を含む場合には、上記硬化性組成物は、(G)チオール基含有化合物を含むことが好ましい。(G)チオール基含有化合物を用いることで、発泡及び剥離が生じ難い硬化膜を得ることができる。(G)チオール基含有化合物は窒素原子を有さないことが好ましい。(G)チオール基含有化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0118】
(G)チオール基含有化合物としては、メルカプト酢酸メチル、3-メルカプトプロピオン酸メチル、3-メルカプトプロピオン酸4-メトキシブチル、3-メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル、3-メルカプトプロピオン酸n-オクチル、3-メルカプトプロピオン酸ステアリル、1,4-ビス(3-メルカプトプロピオニルオキシ)ブタン、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)、トリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[2-(3-メルカプトブチリルオキシ)エチル]イソシアヌレート等のメルカプトカルボン酸エステル化合物;エチルメルカプタン、1,2-ジメルカプトエタン、1,3-ジメルカプトプロパン、tert-ブチルメルカプタン、n-ドデカンチオール、tert-ドデカンチオール等のメルカプトアルカン化合物;2-メルカプトエタノール、4-メルカプト-1-ブタノール等のメルカプトアルコール化合物;チオフェノール、ベンジルチオール、m-トルエンチオール、p-トルエンチオール、2-ナフタレンチオール、2-ピリジルチオール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等の含芳香環メルカプタン化合物;(γ-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、及び(γ-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン等のシラン含有チオール化合物等が挙げられる。
【0119】
(G)チオール基含有化合物は、メルカプトカルボン酸エステル化合物であることが好ましく、2級チオール化合物であることがより好ましい。メルカプトカルボン酸エステル化合物を用いると、メルカプトカルボン酸エステル化合物が硬化時に架橋構造に取り込まれることから、硬化後の揮発成分の揮発を抑制することができ、発泡をより一層抑制することができる。2級チオール化合物を用いると、チオール基含有化合物独特の臭気を抑制することができる。
【0120】
(G)チオール基含有化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製「TMMP」)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製「PEMP」)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート(SC有機化学社製「TEMPIC」)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製「EGMP-4」)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製「DPMP」)等の1級多官能チオール、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工社製「カレンズMT PE1」)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(昭和電工社製「カレンズMT NR1」)、及び1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工社製「カレンズMT BD1」)等の2級多官能チオール、並びに、β-メルカプトプロピオン酸(SC有機化学社製「BMPA」)、メチル-3-メルカプトプロピオネート(SC有機化学社製「MPM」)、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート(SC有機化学社製「EHMP」)、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート(SC有機化学社製「NOMP」)、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート(SC有機化学社製「MBMP」)、及びステアリル-3-メルカプトプロピオネート(SC有機化学社製「STMP」)等の単官能チオール等が挙げられる。
【0121】
上記硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、(G)チオール基含有化合物の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。(G)チオール基含有化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化膜の発泡、剥離及び変色をより一層抑制することができる。また、(G)チオール基含有化合物の含有量が、上記上限以下であると、保存中に硬化性組成物のゲル化が進行しにくい。(G)チオール基含有化合物の含有量が、上記下限以上であると、硬化性をより一層良好にすることができる。
【0122】
((H)窒素含有化合物)
上記硬化性組成物は、(H)窒素含有化合物を含んでいてもよい。(H)窒素含有化合物を用いることで、硬度が高い硬化膜を得ることができ、硬化膜の傷付きを効果的に抑制することができる。(H)窒素含有化合物は(E)光重合開始剤ではなく、(G)チオール基含有化合物ではない。(H)窒素含有化合物は、(F-2)硬化触媒ではないことが好ましい。(H)窒素含有化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0123】
(H)窒素含有化合物としては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩等のエチレン性不飽和結合を1個以上有するアミド基含有モノマー;(メタ)アクリロイルモルホリン等のエチレン性不飽和結合を1個以上有するモルホリン基含有モノマー;ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、テトラゾール化合物、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、イソシアネート化合物、及びメラミン化合物等が挙げられる。
【0124】
(H)窒素含有化合物は、ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、又はジエチル(メタ)アクリルアミドであることが好ましい。(H)窒素含有化合物は、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩、又はヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドであることも好ましい。(H)窒素含有化合物は、テトラゾール化合物、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、イソシアネート化合物、又はメラミン化合物であることも好ましい。(H)窒素含有化合物が上記の好ましい化合物であると、硬化膜の硬度をより一層高めることができる。
【0125】
上記のメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩、又はヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドを(H1)成分とする。硬化膜の硬度をより一層高める観点からは、(H)窒素含有化合物は、(H1)成分を含むことが好ましい。
【0126】
上記のテトラゾール化合物、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、イソシアネート化合物、又はメラミン化合物を(H2)成分とする。(H2)成分は、エチレン性二重結合を有さないことが好ましい。硬化膜の硬度をより一層高める観点からは、(H)窒素含有化合物は、(H2)成分を含むことが好ましい。
【0127】
上記テトラゾール化合物としては、1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、1-メチル-5-エチル-1H-テトラゾール、1-メチル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、1-フェニル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプト-1H-テトラゾール、2-メトキシ-5-(5-トリフルオロメチル-1H-テトラゾール-1-イル)-ベンズアルデヒド、5,5’-ビ-1H-テトラゾール・ジアンモニウム塩、4,5-ジ(5-テトラゾリル)-[1,2,3]トリアゾール、5,5’-アゾビス-1H-テトラゾール、1-メチル-5-ベンゾイル-1H-テトラゾール、1-メチル-1H-テトラゾール-5-イル、及びフェニルメタノンオキシム(E+Z)(以上、いずれも東洋紡社製)等が挙げられる。上記テトラゾール化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0128】
上記イミダゾール化合物としては、イミダゾール-4-カルボキシアルデヒド、2-フェニルイミダゾール-4-カルボキシアルデヒド、イミダゾール-2-カルボキシアルデヒド、イミダゾール-4-カルボニトリル、2-フェニルイミダゾール-4-カルボニトリル、4-ヒドロキシメチルイミダゾールヒドロクロリド、2-ヒドロキシメチルイミダゾールヒドロクロリド、4-イミダゾールカルボン酸、4-イミダゾールジチオカルボン酸、4-イミダゾールチオカルボキシアミド、2-ブロモイミダゾール、及び2-メルカプトイミダゾール(以上、いずれも四国化成工業社製)等が挙げられる。上記イミダゾール化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0129】
上記トリアゾール化合物としては、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’-[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、及び1,2,3-ベンゾトリアゾール・ナトリウム塩溶液(以上、いずれも城北化学工業社製)等が挙げられる。上記トリアゾール化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0130】
上記イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート等が挙げられる。また、これらイソシアネート化合物のビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、及びカルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も、上記イソシアネート化合物として挙げられる。上記イソシアネート化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。紫外線による硬化膜の黄変を避ける観点からは、芳香族イソシアネート化合物よりも脂肪族イソシアネート化合物又は脂環族イソシアネート化合物がより好ましい。上記イソシアネート化合物は、脂肪族イソシアネート化合物又は脂環族イソシアネート化合物であることがより好ましい。
【0131】
上記イソシアネート化合物をブロックイソシアネートの状態で使用する場合、ブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩;フェノール、クレゾール、エチルフェノール等のフェノール化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン化合物;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン化合物;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム等のラクタム化合物;ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミン等のアミン化合物;アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム化合物等が挙げられる。上記ブロック剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0132】
上記イソシアネート化合物の市販品としては、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製「カレンズAOI」)、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製「カレンズMOI」)、メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート(昭和電工社製「カレンズMOI-EG」)、カレンズMOIのイソシアネートブロック体(昭和電工社製「カレンズMOI-BM」)、カレンズMOIのイソシアネートブロック体(昭和電工社製「カレンズMOI-BP」)、及び1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工社製「カレンズBEI」)等が挙げられる。
【0133】
上記メラミン化合物としては、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させた部分エーテル化化合物、及びアルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させた完全エーテル化化合物等が挙げられる。上記メラミン化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記のエーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール及びイソブタノール等が挙げられる。また、メラミン化合物は、単量体であってもよく、2量体以上の多量体であってもよく、単量体と多量体との混合物であってもよい。メラミン化合物は、メラミンの一部に尿素等を共縮合させた化合物であってもよい。メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を用いてもよい。
【0134】
硬化膜の傷付きをより一層抑制し、硬化膜の硬度をより一層高める観点からは、(H)窒素含有化合物は、モルホリン基含有化合物又はイソシアネート化合物であることが好ましく、モルホリン基含有化合物であってもよく、イソシアネート化合物であってもよい。この場合に、上記モルホリン基含有化合物は、モルホリン基含有モノマーであることが好ましく、エチレン性不飽和結合を1個以上有することがより好ましい。上記イソシアネート化合物は、脂肪族イソシアネート化合物又は脂環族イソシアネート化合物であることが好ましい。上記モルホリン基含有化合物及び上記イソシアネート化合物が上記の好ましい化合物であると、硬化膜の傷付きをより一層抑制することができ、硬化膜の硬度をより一層高めることができる。
【0135】
上記硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、(H)窒素含有化合物の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは45重量%以下、より好ましくは33重量%以下である。(H)窒素含有化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化膜の硬度をより一層高めることができる。
【0136】
上記硬化性組成物が(H1)成分を含む場合に、上記硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、(H1)成分の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは40重量%以下、より好ましくは33重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。(H1)成分の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化膜の硬度をより一層高めることができる。
【0137】
上記硬化性組成物が(H2)成分を含む場合に、上記硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、(H2)成分の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。(H2)成分の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化膜の硬度をより一層高めることができる。
【0138】
(H)窒素含有化合物が上記モルホリン基含有化合物を含む場合に、上記硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、上記モルホリン基含有化合物の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは40重量%以下、より好ましくは33重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。上記モルホリン基含有化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化膜の硬度をより一層高めることができる。
【0139】
(H)窒素含有化合物が上記イソシアネート化合物を含む場合に、上記硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、上記イソシアネート化合物の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記イソシアネート化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化膜の硬度をより一層高めることができる。
【0140】
((I)溶剤)
上記硬化性組成物は、(I)溶剤を含んでいてもよい。上記硬化性組成物は、(I)溶剤を含んでいなくてもよい。(I)溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0141】
(I)溶剤は、一般的には、有機溶剤である。上記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル化合物、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル化合物、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素化合物、石油エーテル、ナフサ等の石油系溶剤並びに二塩基酸エステル等が挙げられる。上記二塩基酸エステルは、DBEと呼ばれている溶剤である。
【0142】
上記硬化性組成物100重量%中、(I)溶剤の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0143】
(他の成分)
硬化膜の高温下での変色をより一層抑制する観点からは、上記硬化性化合物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。上記酸化防止剤は、ルイス塩基性部位を有することが好ましい。硬化膜の高温下での変色をより一層抑制する観点からは、上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤又はアミン系酸化防止剤であることが好ましく、フェノール系酸化防止剤であることがより好ましい。
【0144】
上記フェノール系酸化防止剤の市販品としては、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 1076、IRGANOX 1135、IRGANOX 245、IRGANOX 259、及びIRGANOX 295(以上、いずれもチバジャパン社製)、アデカスタブ AO-30、アデカスタブ AO-40、アデカスタブ AO-50、アデカスタブ AO-60、アデカスタブ AO-70、アデカスタブ AO-80、アデカスタブ AO-90、及びアデカスタブ AO-330(以上、いずれもADEKA社製)、Sumilizer GA-80、Sumilizer MDP-S、Sumilizer BBM-S、Sumilizer GM、Sumilizer GS(F)、及びSumilizer GP(以上、いずれも住友化学工業社製)、HOSTANOX O10、HOSTANOX O16、HOSTANOX O14、及びHOSTANOX O3(以上、いずれもクラリアント社製)、アンテージ BHT、アンテージ W-300、アンテージ W-400、及びアンテージ W-500(以上、いずれも川口化学工業社製)、並びにSEENOX 224M、及びSEENOX 326M(以上、いずれもシプロ化成社製)等が挙げられる。
【0145】
上記リン系酸化防止剤としては、シクロヘキシルフォスフィン及びトリフェニルフォスフィン等が挙げられる。上記リン系酸化防止剤の市販品としては、アデカスタブ PEP-4C、アデカスタブ PEP-8、アデカスタブ PEP-24G、アデカスタブ PEP-36、アデカスタブ HP-10、アデカスタブ 2112、アデカスタブ 260、アデカスタブ 522A、アデカスタブ 1178、アデカスタブ 1500、アデカスタブ C、アデカスタブ 135A、アデカスタブ 3010、及びアデカスタブ TPP(以上、いずれもADEKA社製)、サンドスタブ P-EPQ、及びホスタノックス PAR24(以上、いずれもクラリアント社製)、並びにJP-312L、JP-318-0、JPM-308、JPM-313、JPP-613M、JPP-31、JPP-2000PT、及びJPH-3800(以上、いずれも城北化学工業社製)等が挙げられる。
【0146】
上記アミン系酸化防止剤としては、トリエチルアミン、ジシアンジアミド、メラミン、エチルジアミノ-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-トリル-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-キシリル-S-トリアジン及び第四級アンモニウム塩誘導体等が挙げられる。
【0147】
上記硬化性組成物の溶剤を除く成分100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。上記酸化防止剤の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化膜の高温下での変色をより一層抑制できる。
【0148】
上記硬化性組成物は、上述した成分以外に、着色剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、ワックス、マスキング剤、消臭剤、芳香剤、防腐剤、抗菌剤、帯電防止剤及び密着性付与剤等を含んでいてもよい。上記密着性付与剤としては、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0149】
上記硬化性組成物は、例えば、各配合成分を攪拌混合した後、3本ロールにて均一に混練することにより調製できる。なお、3本ロールにおけるロールの材質がステンレス鋼(SUS304等)であると、混練時に鉄が混入することがあるので、3本ロールにおけるロールの材質はセラミックであることが好ましい。また、ステンレス鋼(SUS304等)のロールの表面をセラミックコーティングしたロールを用いることもできる。
【0150】
上記硬化性組成物を硬化させるために用いられる光源としては、紫外線又は可視光線等の活性エネルギー線を発光する照射装置が挙げられる。上記光源としては、例えば、超高圧水銀灯、Deep UVランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ及びエキシマレーザーが挙げられる。これらの光源は、硬化性組成物の構成成分の感光波長に応じて適宜選択される。光の照射エネルギーは、所望とする厚み又は硬化性組成物の構成成分により適宜選択される。光の照射エネルギーは、一般に、10~3000mJ/cm2の範囲内である。
【0151】
上記硬化性組成物を加熱により硬化させる場合には、熱硬化の際の加熱温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0152】
[電子部品及び電子部品の製造方法]
本発明に係る電子部品は、電子部品本体と、上記電子部品本体の表面上に配置された硬化膜とを備える。本発明に係る電子部品では、上記硬化膜の材料が、上述した硬化性組成物である。
【0153】
本発明に係る電子部品の製造方法は、電子部品本体の表面上に、上述した硬化性組成物を塗布して、硬化性組成物層を形成する工程と、上記硬化性組成物層を硬化させて、硬化膜を形成する工程とを備える。上記硬化膜を形成する工程では、光の照射により上記硬化性組成物を光硬化させることで硬化膜を形成してもよく、加熱により上記硬化性組成物層を熱硬化させることで硬化膜を形成してもよい。本発明に係る電子部品の製造方法では、上記硬化性組成物層がソルダーレジスト層であることが好ましく、上記硬化膜がソルダーレジスト膜であることが好ましい。上記硬化性組成物は、ソルダーレジスト膜を形成するために好適に用いることができる。
【0154】
現像処理を行わない場合には、電子部品本体の表面上に、部分的にかつ複数の箇所に、上記硬化性組成物を塗布することができる。
【0155】
電子部品本体の熱劣化を防止する観点からは、上記硬化膜を形成するために、上記硬化性組成物層を熱硬化させないことが好ましい。電子部品本体の熱劣化を防止する観点からは、上記硬化膜を形成するために、150℃以上に加熱しないことが好ましく、100℃以上に加熱しないことがより好ましい。
【0156】
上記硬化膜を形成するために、粗化処理が行われないことが好ましい。
【0157】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な電子部品の製造方法を説明する。以下に説明する実施形態では、上記硬化性組成物層がソルダーレジスト層であり、上記硬化膜がソルダーレジスト膜である。
図1(a)~(e)では、ソルダーレジスト膜を形成するために、現像型硬化性組成物が用いられている。
【0158】
図1(a)~(e)は、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物を用いて、電子部品を製造する方法の一例を説明するための断面図である。
【0159】
先ず、
図1(a)に示すように、塗布対象部材11を用意する。塗布対象部材11は、電子部品本体である。塗布対象部材11として、基板11Aが用いられており、基板11Aの表面上に複数の電極11Bが配置されている。
【0160】
次に、
図1(b)に示すように、塗布対象部材11の表面上に、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物(現像型硬化性組成物として使用)を塗布して、ソルダーレジスト層12(硬化性組成物層)を形成する。
図1(b)では、塗布対象部材11の表面上に、全体に、ソルダーレジスト層12を形成している。次に、
図1(c)に示すように、マスク13を介して、電極11B間上のソルダーレジスト層12のみに光を照射する。その後、
図1(d)に示すように、現像し、電極11B上に位置し、光が照射されていないソルダーレジスト層12を部分的に除去する。ソルダーレジスト層12を部分的に除去した後、残存しているソルダーレジスト層12を熱硬化させる。この結果、
図1(e)に示すように、塗布対象部材11(電子部品本体)の表面上に、ソルダーレジスト膜2が形成された電子部品1を得る。
【0161】
図2(a)~(c)は、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物を用いて、電子部品を製造する方法の他の例を説明するための断面図である。
【0162】
図2(a)に示すように、塗布対象部材11を用意する。次に、
図2(b)に示すように、塗布対象部材11の表面上に、本発明の第2の実施形態に係る硬化性組成物(非現像型硬化性組成物として使用)を塗布して、ソルダーレジスト層12X(硬化性組成物層)を形成する。
図2(b)では、塗布対象部材11の表面上に、部分的にかつ複数の箇所に、上記硬化性組成物を塗布し、複数のソルダーレジスト層12Xを形成している。具体的には、基板11Aの表面上の複数の電極11Bの間に、複数のソルダーレジスト層12Xを形成している。ソルダーレジスト層12Xは、例えばレジストパターンである。例えば、ソルダーレジスト層12Xは、現像型硬化性組成物を用いることを想定したときに、現像後に残存させて形成されるソルダーレジスト層部分に対応する位置にのみに形成されている。ソルダーレジスト層12Xは、現像型硬化性組成物を用い、現像により除去されるソルダーレジスト層部分に対応する位置に形成されていない。
【0163】
次に、ソルダーレジスト層12Xに光を照射する。例えば、ソルダーレジスト層12Xの塗布対象部材11側とは反対側から、ソルダーレジスト層12Xに光を照射する。
図2(c)に示すように、ソルダーレジスト層12Xが光硬化し、ソルダーレジスト膜2X(硬化膜)が形成される。この結果、塗布対象部材11(電子部品本体)の表面上に、ソルダーレジスト膜2Xが形成された電子部品1Xが得られる。
【0164】
硬化性組成物の塗布方法は、例えば、ディスペンサーによる塗布方法、スクリーン印刷による塗布方法、及びインクジェット装置による塗布方法等が挙げられる。製造効率に優れることから、スクリーン印刷が好ましい。硬化性組成物をパターン印刷することが好ましい。
【0165】
なお、
図1(a)~(e)及び
図2(a)~(c)を用いて説明したソルダーレジスト膜を備える電子部品の製造方法は、一例であり、電子部品の製造方法は、適宜変更することができる。
【0166】
本発明では、塗布対象部材の表面に硬化性組成物を1層塗布する毎に光を照射して硬化性組成物層(ソルダーレジスト層等)を形成してもよく、また2層以上塗布を行った後に光を照射して硬化性組成物層を形成してもよい。
【0167】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0168】
(合成例1)
エポキシ(メタ)アクリレート(1)の合成:
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「YD-134」)100gとアクリル酸28gとを反応容器に入れ、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.06gとテトラブチルアンモニウムブロマイド0.64gとを加えて、90℃にて4時間反応を行った。次に、トルエン300mlと水200mlと炭酸ナトリウム1gとを加えて、常温で1時間撹拌した。その後、水相を分相し、除去した。トルエン相に無水硫酸ナトリウム10gを加え、常温にて1時間撹拌した。その後、硫酸ナトリウムを濾過により除去し、トルエンを減圧除去して、目的物のエポキシアクリレート(1)120gを得た。
【0169】
得られた縮合物の重量平均分子量は900、酸価は10mgKOH/gであった。
【0170】
(合成例2)
エポキシ(メタ)アクリレート(2)の合成:
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「YD-011」)100gとアクリル酸18gとを反応容器に入れ、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.06gとテトラブチルアンモニウムブロマイド0.64gとを加えて、90℃にて4時間反応を行った。次に、トルエン300mlと水200mlと炭酸ナトリウム2gとを加えて、常温で1時間撹拌した。その後、水相を分相し、除去した。トルエン相に無水硫酸ナトリウム10gを加え、常温にて1時間撹拌した。その後、硫酸ナトリウムを濾過により除去し、トルエンを減圧除去して、目的物のエポキシアクリレート(2)100gを得た。
【0171】
得られた縮合物の重量平均分子量は3000、酸価は10mgKOH/gであった。
【0172】
(実施例1)
(1)硬化性組成物の作製
下記の表1に示す配合成分を下記の表2に示す配合量で配合し、混合機(シンキー社製「練太郎ARE-310」)にて3分間混合した後、3本ロールにて混合し、混合物を得た。その後、ARE-310を用いて、得られた混合物を3分間脱泡することにより、硬化性組成物(非現像型硬化性組成物)を得た。なお、配合成分を配合する際には、マグネットフィルターを用いて、配合成分中の鉄を除去した。また、3本ロールでの混合においては、混合物中に鉄が混入しないように、ロールの材質がセラミックである3本ロールを用いた。
【0173】
(2)電子部品の作製
100mm×100mm×厚さ0.8mmのFR-4に銅箔を積層した基板を用意した。この基板上に、MD-4S-UFF(3M社製、番手:1000)でバフ処理後、スクリーン印刷法により、255メッシュのポリエステルバイアス製の版を用いて、マスクパターンで硬化性組成物(非現像型硬化性組成物)を印刷して、ソルダーレジスト層を形成した。印刷後、紫外線照射装置を用い、ソルダーレジスト層に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが1500mJ/cm2となるように500mW/cm2の紫外線照度で、ベルトコンベアー式露光器に流すことにより照射し、ソルダーレジスト膜を備える電子部品を得た。得られた電子部品におけるソルダーレジスト膜の厚みは20μmであった。
【0174】
(実施例2~15及び比較例3,4)
使用した材料の種類及び配合量を下記の表1~3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物(非現像型硬化性組成物)及び電子部品を得た。
【0175】
(比較例1)
硬化性組成物の作製において、配合成分を配合する際にマグネットフィルターを用いず、配合成分中の鉄を除去しないように変更し、また、3本ロールでの混合において、ロールの材質がステンレス鋼(SUS304)である3本ロールを用いるように変更した。上記の変更以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物(非現像型硬化性組成物)及び電子部品を得た。
【0176】
(比較例2)
硬化性組成物の作製において、配合成分を配合する際にマグネットフィルターによる処理時間を実施例1の半分の時間に変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物(非現像型硬化性組成物)及び電子部品を得た。
【0177】
(評価)
(1)硬化性組成物中の鉄濃度
硬化性組成物中の鉄濃度を以下のようにして、測定した。
【0178】
得られた硬化性組成物(非現像型硬化性組成物)1gを白金るつぼに精秤し、予備燃焼後、800℃及び3時間の条件で電気炉により灰化させた。冷却後、硝酸2mlを6回に分けて加え、300℃~350℃のホットプレート上で完全に蒸発、乾固させた。次に、塩酸3mlを加え、200℃~250℃に加熱し、塩酸がるつぼの底に少量残る程度まで乾固させた。次に、蒸留水で25mlにメスアップし、冷却装置により20℃に保って試料を得た。得られた試料を、原子吸光分光光度計(島津製作所社製「AA-6500」)を用いて原子吸光分析を行い、硬化性組成物中の鉄濃度を測定した。
【0179】
(2)反射率
得られた電子部品におけるソルダーレジスト膜について、色彩色度計(コニカミノルタ社製「CR-400」)を用いて反射率Y1を測定し、以下の基準で判定した。
【0180】
[反射率の判定基準]
○○:反射率Y1が85%以上
○:反射率Y1が82%以上、85%未満
△:反射率Y1が78%以上、82%未満
×:反射率Y1が78%未満
【0181】
(3)半田耐熱性
得られた電子部品を4cm角に切り、260℃の鉛フリー半田槽にソルダーレジスト膜が下側にくるようにして、10秒間浸漬する操作を3回繰り返した。この操作により、ソルダーレジスト膜(硬化膜)が高温下に晒される。半田耐熱性を以下の基準で判定した。
【0182】
[半田耐熱性の判定基準]
○○:剥離なし、膨れなし
○:5%未満の面積で剥離又は膨れあり
×:5%以上の面積で剥離又は膨れあり
【0183】
(4)半田耐熱後の反射率の低下率(反射率の維持特性)
半田耐熱性試験後のソルダーレジスト膜について、色彩色度計(コニカミノルタ社製「CR-400」)を用いて反射率Y2を測定し、下記式(1)により半田耐熱後の反射率の低下率を算出した。半田耐熱後の反射率の低下率を以下の基準で判定した。なお、半田耐熱後の反射率の低下率が小さいソルダーレジスト膜では、光の反射率が経時的にも低下しにくい。
【0184】
半田耐熱後の反射率の低下率(%)=[(Y1-Y2)/Y1]×100 ・・・(1)
【0185】
[半田耐熱後の反射率の低下率の判定基準]
○○:低下率が1%以下
○:低下率が1%より大きく、2%以下
△:低下率が2%より大きく、5%以下
×:低下率が5%より大きい
【0186】
(5)絶縁信頼性
IPC-B-25のくし型テストパターンBを用意した。このくし型テストパターンBを80℃に加温して、くし型テストパターンBの表面の全体を覆うように硬化性組成物(非現像型硬化性組成物)を、厚みが20μmとなるように塗工し、ソルダーレジスト層を形成した。紫外線照射装置を用いて、ソルダーレジスト層に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが1500mJ/cm2となるように500mW/cm2の紫外線照度で、ベルトコンベアー式露光器に流すことにより照射し、絶縁信頼性試験用測定サンプルを得た。
【0187】
得られた絶縁信頼性試験用測定サンプルを、温度85℃、湿度85%、及び直流5Vを印加した条件で、500時間及び1000時間加湿試験を行った。加湿試験後の絶縁抵抗を測定した。絶縁信頼性を以下の基準で判定した。
【0188】
[絶縁信頼性の判定基準]
○○:加湿試験後の絶縁抵抗が1014Ω以上
○:加湿試験後の絶縁抵抗が1013Ω以上、1014Ω未満
△:加湿試験後の絶縁抵抗が1012Ω以上、1013Ω未満
×:加湿試験後の絶縁抵抗が1012Ω未満
【0189】
配合成分の詳細、組成及び結果を下記の表1~3に示す。
【0190】
【0191】
【0192】
【符号の説明】
【0193】
1,1X…電子部品
2,2X…ソルダーレジスト膜
11…塗布対象部材(電子部品本体)
11A…基板
11B…電極
12,12X…ソルダーレジスト層
13…マスク