(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】樹脂粒子、接続材料及び接続構造体
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20220621BHJP
C08F 299/08 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CFH
C08F299/08
(21)【出願番号】P 2018532346
(86)(22)【出願日】2018-04-25
(86)【国際出願番号】 JP2018016745
(87)【国際公開番号】W WO2018203500
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2017091123
(32)【優先日】2017-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 沙織
(72)【発明者】
【氏名】山田 恭幸
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/088812(WO,A1)
【文献】特開2016-108563(JP,A)
【文献】国際公開第2011/152008(WO,A1)
【文献】特開2009-52005(JP,A)
【文献】特表2013-508510(JP,A)
【文献】国際公開第2017/082353(WO,A1)
【文献】特開2017-88882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F283/、290/、299/
C08J3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン樹脂と、シリコーン樹脂とは異なる樹脂とを含む樹脂粒子であり、
前記シリコーン樹脂の外表面が前記シリコーン樹脂とは異なる樹脂により覆われた樹脂粒子であり、
前記シリコーン樹脂とは異なる樹脂の材料が、ジビニルベンゼン又はスチレンであり、
一般式:[(R)
3SiO
1/2]で表されるM単位、一般式:[(R)
2SiO
2/2]で表されるD単位、一般式:[(R)SiO
3/2]で表されるT単位及び一般式:[SiO
4/2]で表されるQ単位の合計の全個数100%中、前記T単位及び前記Q単位の合計の個数が、4%以下であり、
粒子径のCV値が、10%以下であり、
40%圧縮変形させた際の圧縮回復率が、10%以下である、樹脂粒子。
【請求項2】
10%K値が、500N/mm
2以下である、請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項3】
粒子径が、0.5μm以上500μm以下である、請求項1又は2に記載の樹脂粒子。
【請求項4】
スペーサとして用いられる、請求項1~
3のいずれか1項に記載の樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の樹脂粒子と、
バインダー又は金属原子含有粒子とを含む、接続材料。
【請求項6】
バインダーを含む、請求項
5に記載の接続材料。
【請求項7】
金属原子含有粒子を含む、請求項
5又は
6に記載の接続材料。
【請求項8】
前記樹脂粒子の熱分解温度が、前記金属原子含有粒子の融点よりも高い、請求項
7に記載の接続材料。
【請求項9】
2つの接続対象部材を接続する接続部を形成するために用いられ、
前記金属原子含有粒子の焼結体によって、前記接続部を形成するために用いられる、請求項
7又は
8に記載の接続材料。
【請求項10】
第1の接続対象部材と、
第2の接続対象部材と、
前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、
前記接続部の材料が、請求項1~
4のいずれか1項に記載の樹脂粒子を含む、接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン樹脂を含む樹脂粒子に関する。また、本発明は、上記樹脂粒子を用いた接続材料及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気及び電子部品の小型化、軽量化及び薄型化が急速に進行している。これに伴い、プリント配線板や多層板の寸法安定性、反りの低減、及びクラックの発生の防止等が課題となっている。上記課題を解決する方法としては、内部応力を緩和する方法等が挙げられる。内部応力を緩和する方法としては、例えば、シリコーン粒子等の応力緩和材を樹脂組成物に添加する方法等が提案されている。
【0003】
上記シリコーン粒子の一例として、下記の特許文献1には、球状シリコーンエラストマー粒子が開示されている。上記球状シリコーンエラストマー粒子の主成分は、シリコーンエラストマーである。上記球状シリコーンエラストマー粒子の平均粒子径は、0.1~500μmである。上記球状シリコーンエラストマー粒子は、硬化触媒に由来する金属元素を実質的に含まない。
【0004】
また、下記の特許文献2には、シリコーンエラストマー球状粒子100質量部と、その表面を被覆するポリオルガノシルセスキオキサン0.5~25質量部とを有するシリコーン粒子が開示されている。上記シリコーンエラストマー球状粒子の体積平均粒径は、0.1~100μmである。上記ポリオルガノシルセスキオキサンは、粒状である。上記ポリオルガノシルセスキオキサンの大きさは、60nm以下である。
【0005】
また、下記の特許文献3には、式(1)に示す3個の官能基を有するシラン化合物と、式(2)に示す2個の官能基を有するシラン化合物とを共重合させることで得られるスポンジ状シリコーン粒子が開示されている。上記スポンジ状シリコーン粒子は、一次粒子の平均粒子径が0.1~50μmの球状シリコーン粒子が、房状に連結することで形成されている。上記スポンジ状シリコーン粒子の平均粒子径は1~100μmである。上記スポンジ状シリコーン粒子は、一旦吸収したオイルの70%以上を再度排出可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-104456号公報
【文献】特開2013-40241号公報
【文献】特開2015-140356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電極間を電気的に接続している接続部や、2つの接続対象部材を接着する接着層を形成する際には、樹脂等のバインダーを硬化させるために接続部又は接着層を加熱することがある。接続部又は接着層が加熱されると、樹脂等のバインダーの硬化収縮等により内部応力が発生することがある。発生した内部応力は、接続部又は接着層におけるクラック等の要因となるため、内部応力を緩和することが必要となる。特許文献1~3に記載のような従来のシリコーン粒子では、接続部又は接着層に発生した内部応力を十分に緩和することが困難である。
【0008】
また、特許文献1~3に記載のような従来のシリコーン粒子をスペーサとして用いる場合には、圧縮されたシリコーン粒子が元の形状に戻ろうとする作用が働いて、スプリングバックと呼ばれる現象が生じることがある。接着層にスペーサとして配合したシリコーン粒子によりスプリングバックが発生すると、長期間経過後に接着層と被着体との界面で剥離することがある。
【0009】
本発明の目的は、内部応力を効果的に緩和することができ、スプリングバックの発生を効果的に抑制することができる樹脂粒子を提供することである。また、本発明の目的は、上記樹脂粒子を用いた接続材料及び接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、一般式:[(R)3SiO1/2]で表されるM単位、一般式:[(R)2SiO2/2]で表されるD単位、一般式:[(R)SiO3/2]で表されるT単位及び一般式:[SiO4/2]で表されるQ単位の合計の全個数100%中、前記T単位及び前記Q単位の合計の個数が、4%以下である、樹脂粒子が提供される。
【0011】
本発明に係る樹脂粒子のある特定の局面では、40%圧縮変形させた際の圧縮回復率が、10%以下である。
【0012】
本発明に係る樹脂粒子のある特定の局面では、10%K値が、500N/mm2以下である。
【0013】
本発明に係る樹脂粒子のある特定の局面では、粒子径が、0.5μm以上500μm以下である。
【0014】
本発明に係る樹脂粒子のある特定の局面では、前記樹脂粒子が、シリコーン樹脂を含む粒子である。
【0015】
本発明に係る樹脂粒子のある特定の局面では、前記樹脂粒子が、スペーサとして用いられる。
【0016】
本発明の広い局面によれば、上述した樹脂粒子と、バインダー又は金属原子含有粒子とを含む、接続材料が提供される。
【0017】
本発明に係る接続材料のある特定の局面では、前記接続材料が、バインダーを含む。
【0018】
本発明に係る接続材料のある特定の局面では、前記接続材料が、金属原子含有粒子を含む。
【0019】
本発明に係る接続材料のある特定の局面では、前記樹脂粒子の熱分解温度が、前記金属原子含有粒子の融点よりも高い。
【0020】
本発明に係る接続材料のある特定の局面では、前記接続材料が、2つの接続対象部材を接続する接続部を形成するために用いられ、前記接続材料が、前記金属原子含有粒子の焼結体によって、前記接続部を形成するために用いられる。
【0021】
本発明の広い局面によれば、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、前記接続部の材料が、上述した樹脂粒子を含む、接続構造体が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る樹脂粒子は、一般式:[(R)3SiO1/2]で表されるM単位、一般式:[(R)2SiO2/2]で表されるD単位、一般式:[(R)SiO3/2]で表されるT単位及び一般式:[SiO4/2]で表されるQ単位の合計の全個数100%中、上記T単位及び上記Q単位の合計の個数が、4%以下である。本発明に係る樹脂粒子では、上記の構成が備えられているので、内部応力を効果的に緩和することができ、スプリングバックの発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明に係る樹脂粒子を用いた接続構造体の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る樹脂粒子を液晶表示素子用スペーサとして用いた液晶表示素子の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
(樹脂粒子)
本発明に係る樹脂粒子は、一般式:[(R)3SiO1/2]で表されるM単位、一般式:[(R)2SiO2/2]で表されるD単位、一般式:[(R)SiO3/2]で表されるT単位及び一般式:[SiO4/2]で表されるQ単位の合計の全個数100%中、上記T単位及び上記Q単位の合計の個数が、4%以下である。なお、M単位、D単位、T単位、及びQ単位が、上記の一般式で表されることは、公知である。上記一般式におけるRは、任意の基を表す。Rの任意の基として、上記一般式の単位外のSiに結合しているO1/2基は除かれる。
【0026】
本発明に係る樹脂粒子では、上記の構成が備えられているので、内部応力を効果的に緩和することができ、スプリングバックの発生を効果的に抑制することができる。
【0027】
本発明に係る樹脂粒子では、上記の構成が備えられているので、圧縮回復率が比較的低く、圧縮された樹脂粒子が元の形状に戻ろうとする作用が比較的働き難く、スプリングバックが発生し難い。例えば、本発明に係る樹脂粒子をスペーサとして用いた場合には、スペーサを液晶表示素子用部材等に十分に接触させることができ、ギャップをより一層高精度に制御することができる。
【0028】
電極間を電気的に接続している接続部や、2つの接続対象部材を接着する接着層を形成する際には、樹脂等のバインダーを硬化させるために接続部又は接着層を加熱することがある。接続部又は接着層が加熱されると、樹脂等のバインダーの硬化収縮等により内部応力が発生することがある。発生した内部応力はクラック等の原因となるため、内部応力は除去されることが好ましい。内部応力を除去する方法としては、加熱処理する方法等が挙げられる。しかしながら、接続部又は接着層に樹脂等が用いられていると、加熱処理によっても十分に内部応力を除去することが困難である。本発明に係る樹脂粒子では、上記の構成が備えられているので、圧縮回復率が比較的低く、圧縮された樹脂粒子が元の形状に戻ろうとする作用が比較的働き難い。本発明に係る樹脂粒子を接続部又は接着層に用いることで、加熱等により接続部又は接着層に内部応力が発生したとしても、樹脂粒子が変形することで接続部又は接着層の内部応力を効果的に緩和することができる。結果として、接続部又は接着層におけるクラック等の発生を効果的に抑制することができる。
【0029】
内部応力をより一層効果的に緩和する観点、及びスプリングバックの発生をより一層効果的に抑制する観点からは、上記樹脂粒子は、シリコーン樹脂を含む粒子であることが好ましい。上記シリコーン樹脂は、特定のオルガノシロキシ単位(含ケイ素結合単位)を含むことが好ましい。
【0030】
上記オルガノシロキシ単位には、M単位と呼ばれる1官能オルガノシロキシ単位、D単位と呼ばれる2官能オルガノシロキシ単位、T単位と呼ばれる3官能オルガノシロキシ単位及びQ単位と呼ばれる4官能オルガノシロキシ単位がある。なお、Q単位は、ケイ素原子に直接結合した炭素原子を有する有機基を有していない単位であるが、本発明においては、オルガノシロキシ単位とみなしている。
【0031】
上記オルガノシロキシ単位において、シロキサン結合は2個のケイ素原子が1個の酸素原子を介して結合した結合であるので、シロキサン結合におけるケイ素原子1個当たりの酸素原子は1/2個とみなし、一般式中ではO1/2と表される。具体的には、例えば、1個のD単位においては、D単位に含まれる1個のケイ素原子は2個の酸素原子と結合し、それぞれの酸素原子は他の単位のケイ素原子と結合している。即ち、D単位の構造は、[-O1/2-(R)2Si-O1/2-]であり、O1/2が2個存在するので、D単位は、一般式:[(R)2SiO2/2]と表される。
【0032】
上記M単位は、一般式:[(R)3SiO1/2]で表されるオルガノシロキシ単位である。具体的には、上記M単位は、下記式(1)で表される構造を有する。
【0033】
【0034】
上記式(1)中、R1、R2及びR3はそれぞれ、任意の基を表す。R1、R2及びR3はそれぞれ、アルキル基、アリール基、アリル基、水素原子、又は、炭素数1~5の2価の有機基を表すことが好ましい。上記有機基は、炭素原子と水素原子と酸素原子とを含んでいてもよい。上記有機基は、炭素数1~5の2価の炭化水素基であってもよい。上記有機基の主鎖は、2価の炭化水素基であることが好ましい。上記有機基では、2価の炭化水素基にカルボキシル基や水酸基等が結合していてもよい。上記式(1)で表される構造は、R1、R2又はR3を介して他の構造と結合していてもよい。上記式(1)における酸素原子は、他の構造のケイ素原子とシロキサン結合を形成していてもよく、他の構造のケイ素原子以外の原子と結合を形成していてもよい。
【0035】
内部応力をより一層効果的に緩和する観点、及びスプリングバックの発生をより一層効果的に抑制する観点からは、上記式(1)で表される構造は、2価の炭化水素基を介して他の構造と結合していることが好ましい。内部応力をより一層効果的に緩和する観点、及びスプリングバックの発生をより一層効果的に抑制する観点からは、上記式(1)における酸素原子は、他の構造のケイ素原子とシロキサン結合を形成していることが好ましく、他の構造の2価の炭化水素基と結合していることが好ましい。
【0036】
上記D単位は、一般式:[(R)2SiO2/2]で表されるオルガノシロキシ単位である。具体的には、上記D単位は、下記式(2)で表される構造を有する。
【0037】
【0038】
上記式(2)中、R4及びR5はそれぞれ、任意の基を表す。R4及びR5はそれぞれ、アルキル基、アリール基、アリル基、水素原子、又は、炭素数1~5の2価の有機基を表すことが好ましい。上記有機基は、炭素原子と水素原子と酸素原子とを含んでいてもよい。上記有機基は、炭素数1~5の2価の炭化水素基であってもよい。上記有機基の主鎖は、2価の炭化水素基であることが好ましい。上記有機基では、2価の炭化水素基にカルボキシル基や水酸基等が結合していてもよい。上記式(2)で表される構造は、R4又はR5を介して他の構造と結合していてもよい。上記式(2)における酸素原子は、他の構造のケイ素原子とシロキサン結合を形成していてもよく、他の構造のケイ素原子以外の原子と結合を形成していてもよい。
【0039】
内部応力をより一層効果的に緩和する観点、及びスプリングバックの発生をより一層効果的に抑制する観点からは、上記式(2)で表される構造は、2価の炭化水素基を介して他の構造と結合していることが好ましい。内部応力をより一層効果的に緩和する観点、及びスプリングバックの発生をより一層効果的に抑制する観点からは、上記式(2)における酸素原子は、他の構造のケイ素原子とシロキサン結合を形成していることが好ましく、他の構造の2価の炭化水素基と結合していることが好ましい。
【0040】
上記T単位は、一般式:[(R)SiO3/2]で表されるオルガノシロキシ単位である。具体的には、上記T単位は、下記式(3)で表される構造を有する。
【0041】
【0042】
上記式(3)中、R6は、任意の基を表す。R6は、アルキル基、アリール基、アリル基、水素原子、又は、炭素数1~5の2価の有機基を表すことが好ましい。上記有機基は、炭素原子と水素原子と酸素原子とを含んでいてもよい。上記有機基は、炭素数1~5の2価の炭化水素基であってもよい。上記有機基の主鎖は、2価の炭化水素基であることが好ましい。上記有機基では、2価の炭化水素基にカルボキシル基や水酸基等が結合していてもよい。上記式(3)で表される構造は、R6を介して他の構造と結合していてもよい。上記式(3)における酸素原子は、他の構造のケイ素原子とシロキサン結合を形成していてもよく、他の構造のケイ素原子以外の原子と結合を形成していてもよい。
【0043】
内部応力をより一層効果的に緩和する観点、及びスプリングバックの発生をより一層効果的に抑制する観点からは、上記式(3)で表される構造は、2価の炭化水素基を介して他の構造と結合していることが好ましい。内部応力をより一層効果的に緩和する観点、及びスプリングバックの発生をより一層効果的に抑制する観点からは、上記式(3)における酸素原子は、他の構造のケイ素原子とシロキサン結合を形成していることが好ましく、他の構造の2価の炭化水素基と結合していることが好ましい。
【0044】
上記Q単位は、一般式:[SiO4/2]で表されるオルガノシロキシ単位(シロキシ単位)である。具体的には、上記Q単位は、下記式(4)で表される構造を有する。
【0045】
【0046】
上記式(4)における酸素原子は、他の構造のケイ素原子とシロキサン結合を形成していてもよく、他の構造のケイ素原子以外の原子と結合を形成していてもよい。内部応力をより一層効果的に緩和する観点、及びスプリングバックの発生をより一層効果的に抑制する観点からは、上記式(4)における酸素原子は、他の構造のケイ素原子とシロキサン結合を形成していることが好ましく、他の構造の2価の炭化水素基と結合していることが好ましい。
【0047】
本発明に係る樹脂粒子では、一般式:[(R)3SiO1/2]で表されるM単位、一般式:[(R)2SiO2/2]で表されるD単位、一般式:[(R)SiO3/2]で表されるT単位及び一般式:[SiO4/2]で表されるQ単位の合計の全個数100%中、上記T単位及び上記Q単位の合計の個数(TnQn)は、4%以下である。
【0048】
内部応力をより一層効果的に緩和する観点、及びスプリングバックの発生をより一層効果的に抑制する観点からは、上記M単位、上記D単位、上記T単位及び上記Q単位の合計の全個数100%中、上記TnQnは、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下である。上記TnQnの下限は特に限定されない。上記TnQnは0%(個数が0)であってもよく、0%を超えていてもよい。
【0049】
上記TnQnは、樹脂粒子を29Si-固体NMR分析することにより算出することができる。具体的には、以下のようにして算出することができる。
【0050】
TnQnの算出方法:
十分に乾燥させた樹脂粒子を用いて、下記測定条件における29Si-固体NMR測定(DD/MAS法)により、上記の各単位のシグナル量の積分値を得ることができる。得られた上記の各単位のシグナル量の積分値からTnQnを算出することができる。
【0051】
29Si-固体NMR測定(DD/MAS法)の測定条件:
装置:Jeol Resonance社製「JNM-ECX400」
観測核:29Si
プローブ:固体NMR用8mmプローブ
MAS回転数:7kHz
測定法:Single pulse(DD/MAS)
パルス幅:3.45μ秒(29Si/90度)
遅延時間:315秒
取り込み時間:21ミリ秒
スキャン回数:500回
【0052】
また、上記の各単位に由来する29Si-固体NMRの化学シフトは、一般的には、以下の通りである。上記の各単位に由来する29Si-固体NMRの化学シフトは、Si基に結合している任意の基を考慮して、適宜判別することができる。
【0053】
M単位:5ppm~15ppm
D単位:-30ppm~-5ppm
T単位:-75ppm~-50ppm
Q単位:-120ppm~-100ppm
【0054】
内部応力をより一層効果的に緩和する観点、及びスプリングバックの発生をより一層効果的に抑制する観点からは、上記樹脂粒子を40%圧縮変形させた際の圧縮回復率は、好ましくは10%以下、より好ましくは9%以下であり、好ましくは0.1%以上、より好ましくは1%以上である。
【0055】
上記樹脂粒子を40%圧縮変形させた際の圧縮回復率は、以下のようにして測定できる。
【0056】
試料台上に樹脂粒子を散布する。散布された樹脂粒子1個について、微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径100μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃において、樹脂粒子の中心方向に、樹脂粒子が40%圧縮変形するまで負荷(反転荷重値)を与える。その後、原点用荷重値(0.40mN)まで除荷を行う。この間の荷重-圧縮変位を測定し、下記式から25℃における40%圧縮変形させた際の圧縮回復率を求めることができる。なお、負荷速度は0.33mN/秒とする。上記微小圧縮試験機として、例えば、島津製作所社製「微小圧縮試験機MCT-W200」、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」等が用いられる。
【0057】
圧縮回復率(%)=[L2/L1]×100
L1:負荷を与えるときの原点用荷重値から反転荷重値に至るまでの圧縮変位
L2:負荷を解放するときの反転荷重値から原点用荷重値に至るまでの除荷変位
【0058】
上記樹脂粒子の10%K値は、好ましくは5N/mm2以上、より好ましくは10N/mm2以上であり、好ましくは500N/mm2以下、より好ましくは200N/mm2以下、さらに好ましくは150N/mm2以下、特に好ましくは100N/mm2以下である。上記樹脂粒子の10%K値が上記下限以上及び上記上限以下であると、内部応力をより一層効果的に緩和することができ、また、スプリングバックの発生をより一層効果的に抑制することができる。
【0059】
上記樹脂粒子の10%K値は、以下のようにして測定できる。
【0060】
微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径100μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃において、圧縮速度0.3mN/秒、及び最大試験荷重20mNの条件下で樹脂粒子1個を圧縮する。このときの荷重値(N)及び圧縮変位(mm)を測定する。得られた測定値から、25℃における10%K値を下記式により求めることができる。上記微小圧縮試験機として、例えば、島津製作所社製「微小圧縮試験機MCT-W200」、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」等が用いられる。上記樹脂粒子の10%K値は、任意に選択された50個の樹脂粒子の10%K値を算術平均することにより、算出することが好ましい。
【0061】
10%K値(N/mm2)=(3/21/2)・F・S-3/2・R-1/2
F:樹脂粒子が10%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:樹脂粒子が10%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:樹脂粒子の半径(mm)
【0062】
上記K値は、樹脂粒子の硬さを普遍的かつ定量的に表す。上記K値を用いることにより、樹脂粒子の硬さを定量的かつ一義的に表すことができる。
【0063】
上記樹脂粒子の粒子径は、用途に応じて適宜設定することができる。上記樹脂粒子の粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは450μm以下、より一層好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下である。上記樹脂粒子の粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、内部応力をより一層効果的に緩和することができ、また、スプリングバックの発生をより一層効果的に抑制することができる。上記樹脂粒子の粒子径が、0.5μm以上20μm以下であると、上記樹脂粒子を応力緩和材の用途に好適に用いることができる。上記樹脂粒子の粒子径が、1μm以上100μm以下であると、上記樹脂粒子をギャップ制御材の用途に好適に用いることができる。
【0064】
上記樹脂粒子の粒子径は、樹脂粒子が真球状である場合には、直径を示し、樹脂粒子が真球状ではない場合には、最大径を示す。
【0065】
上記樹脂粒子の粒子径は、平均粒子径であることが好ましく、数平均粒子径であることがより好ましい。上記樹脂粒子の粒子径は、粒度分布測定装置等を用いて求められる。例えば、レーザー散乱光、電気抵抗値変化、撮像後の画像解析等の原理を用いた粒度分布測定装置を用いることができる。具体的には、樹脂粒子の粒子径の測定方法としては、例えば、粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「Multisizer4」)を用いて、約100000個の樹脂粒子の粒子径を測定し、平均値を算出する方法等が挙げられる。樹脂粒子の粒子径は、任意の樹脂粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求めることが好ましい。
【0066】
内部応力をより一層効果的に緩和する観点からは、上記樹脂粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下である。上記樹脂粒子の粒子径の変動係数(CV値)が、上記上限以下であると、樹脂粒子を応力緩和材又はギャップ制御材の用途に好適に用いることができる。
【0067】
上記変動係数(CV値)は、以下のようにして測定できる。
【0068】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:樹脂粒子の粒子径の標準偏差
Dn:樹脂粒子の粒子径の平均値
【0069】
上記樹脂粒子の形状は特に限定されない。上記樹脂粒子の形状は、球状であってもよく、扁平状等の球形状以外の形状であってもよい。
【0070】
上記樹脂粒子の用途は特に限定されない。上記樹脂粒子は、様々な用途に好適に用いられる。上記樹脂粒子は、スペーサとして用いられることが好ましい。上記スペーサの使用方法としては、液晶表示素子用スペーサ、ギャップ制御用スペーサ、及び応力緩和用スペーサ等が挙げられる。上記ギャップ制御用スペーサは、スタンドオフ高さ及び平坦性を確保するための積層チップのギャップ制御、並びに、ガラス面の平滑性及び接着剤層の厚みを確保するための光学部品のギャップ制御等に用いることができる。上記応力緩和用スペーサは、センサチップ等の応力緩和、及び2つの接続対象部材を接続している接続部の応力緩和等に用いることができる。上記応力緩和用スペーサは、パワーデバイス用の接続材料、及びセンサ用の接着剤等に用いることができる。上記スペーサは、パワーデバイス用の接続材料に用いられることが好ましく、センサ用の接着剤に用いられることが好ましい。
【0071】
上記樹脂粒子は、液晶表示素子用スペーサとして用いられることが好ましく、液晶表示素子用周辺シール剤に用いられることが好ましい。上記液晶表示素子用周辺シール剤において、上記樹脂粒子は、スペーサとして機能することが好ましい。上記樹脂粒子は、良好な圧縮変形特性を有するので、上記樹脂粒子をスペーサとして用いて基板間に配置する場合には、スペーサが基板間に効率的に配置される。さらに、上記樹脂粒子では、液晶表示素子用部材等の傷付きを抑えることができるので、上記液晶表示素子用スペーサを用いた液晶表示素子において、表示不良が生じ難くなる。
【0072】
さらに、上記樹脂粒子は、無機充填材、トナーの添加剤、衝撃吸収剤又は振動吸収剤としても好適に用いられる。例えば、ゴム又はバネ等の代替品として、上記樹脂粒子を用いることができる。
【0073】
(樹脂粒子のその他の詳細)
内部応力をより一層効果的に緩和する観点、及びスプリングバックの発生をより一層効果的に抑制する観点からは、上記樹脂粒子は、シリコーン樹脂を含む粒子であることが好ましい。
【0074】
上記シリコーン樹脂の材料は、ラジカル重合性基を有するシラン化合物と炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物とであることが好ましく、ラジカル重合性基を有しかつ炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物であることが好ましく、ラジカル重合性基を両末端に有するシラン化合物であることが好ましい。これらの材料を反応させた場合には、シロキサン結合が形成される。得られるシリコーン樹脂において、ラジカル重合性基及び炭素数5以上の疎水基は一般に残存する。このような材料を用いることで、1μm以上、200μm以下の粒子径を有する上記シリコーン樹脂を含む粒子を容易に得ることができ、しかも上記シリコーン樹脂を含む粒子の耐薬品性を高くし、かつ透湿性を低くすることができる。
【0075】
上記ラジカル重合性基を有するシラン化合物では、ラジカル重合性基はケイ素原子に直接結合していることが好ましい。上記ラジカル重合性基を有するシラン化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0076】
上記ラジカル重合性基を有するシラン化合物は、アルコキシシラン化合物であることが好ましい。上記ラジカル重合性基を有するシラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジビニルメトキシビニルシラン、ジビニルエトキシビニルシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、及び1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0077】
上記炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物では、炭素数5以上の疎水基はケイ素原子に直接結合していることが好ましい。上記炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0078】
上記炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物は、アルコキシシラン化合物であることが好ましい。上記炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物としては、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、ジメチルメトキシフェニルシラン、ジメチルエトキシフェニルシラン、ヘキサフェニルジシロキサン、1,3,3,5-テトラメチル-1,1,5,5-テトラペニルトリシロキサン、1,1,3,5,5-ペンタフェニル-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、フェニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、及びオクタフェニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0079】
上記ラジカル重合性基を有しかつ炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物では、ラジカル重合性基はケイ素原子に直接結合していることが好ましく、炭素数5以上の疎水基はケイ素原子に直接結合していることが好ましい。上記ラジカル重合性基を有しかつ炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0080】
上記ラジカル重合性基を有しかつ炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物としては、フェニルビニルジメトキシシラン、フェニルビニルジエトキシシラン、フェニルメチルビニルメトキシシラン、フェニルメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルビニルメトキシシラン、ジフェニルビニルエトキシシラン、フェニルジビニルメトキシシラン、フェニルジビニルエトキシシラン、及び1,1,3,3-テトラフェニル-1,3-ジビニルジシロキサン等が挙げられる。
【0081】
上記シリコーン樹脂を含む粒子を得るために、上記ラジカル重合性基を有するシラン化合物と、上記炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物とを用いる場合、以下の重量比で用いることが好ましい。上記ラジカル重合性基を有するシラン化合物と、上記炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物とは重量比で、1:1~1:20で用いることが好ましく、1:5~1:15で用いることがより好ましい。
【0082】
上記シリコーン樹脂を含む粒子を得るためのシラン化合物の全体において、ラジカル重合性基の数と炭素数5以上の疎水基の数との比は、1:0.5~1:20であることが好ましく、1:1~1:15であることがより好ましい。
【0083】
上記シリコーン樹脂を含む粒子は、1つのケイ素原子に2つのメチル基が結合したジメチルシロキサン骨格を有することが好ましく、上記シリコーン樹脂の材料は、1つのケイ素原子に2つのメチル基が結合したシラン化合物を含むことが好ましい。この場合には、内部応力をより一層効果的に緩和することができ、また、スプリングバックの発生をより一層効果的に抑制することができる。
【0084】
内部応力をより一層効果的に緩和する観点、及びスプリングバックの発生をより一層効果的に抑制する観点からは、上記シリコーン樹脂を含む粒子は、上述したシラン化合物を、ラジカル重合開始剤により反応させて、シロキサン結合を形成させることが好ましい。一般に、酸または塩基触媒を用いた重縮合によって上記シリコーン樹脂を含む粒子を合成する場合、10μm以上500μm以下の粒子径を有するシリコーン樹脂を含む粒子を得ることは困難であり、100μm以下の粒子径を有するシリコーン樹脂を含む粒子を得ることが特に困難である。これに対して、ラジカル重合開始剤及び上記構成のシラン化合物を用いることで、1μm以上500μm以下の粒子径を有するシリコーン樹脂を含む粒子を得ることができ、10μm以上の粒子径を有するシリコーン樹脂を含む粒子を得ることもでき、100μm以下の粒子径を有するシリコーン樹脂を含む粒子を得ることもできる。
【0085】
上記シリコーン樹脂を含む粒子を得るために、ケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物を用いなくてもよい。この場合には、金属触媒を用いずに、ラジカル重合開始剤を用いて、シラン化合物を重合させることができる。結果として、上記シリコーン樹脂を含む粒子に金属触媒が含まれないようにすることができ、上記シリコーン樹脂を含む粒子における金属触媒の含有量を少なくすることができ、内部応力をより一層効果的に緩和することができ、スプリングバックの発生をより一層効果的に抑制することができる。
【0086】
透湿性を低くする観点からは、上記樹脂粒子は、シリコーン樹脂と、シリコーン樹脂とは異なる樹脂とを含み、該シリコーン樹脂の外表面が上記シリコーン樹脂とは異なる樹脂により覆われた樹脂粒子であることが好ましい。透湿性を低くする観点からは、上記シリコーン樹脂を含む粒子は、シリコーン樹脂と、シリコーン樹脂とは異なる樹脂とを含み、該シリコーン樹脂の外表面が上記シリコーン樹脂とは異なる樹脂により覆われた粒子であることが好ましい。
【0087】
上記樹脂粒子が、シリコーン樹脂と、シリコーン樹脂とは異なる樹脂とを含む場合には、上記シリコーン樹脂とは異なる樹脂によって、上記シリコーン樹脂の外表面全体が覆われていてもよく、上記シリコーン樹脂とは異なる樹脂によって、覆われていない部分があってもよい。
【0088】
上記シリコーン樹脂とは異なる樹脂としては、ビニル基を有する樹脂(ビニル樹脂)等が挙げられる。上記シリコーン樹脂とは異なる樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0089】
透湿性をより一層低くする観点からは、上記シリコーン樹脂とは異なる樹脂は、ビニル基を有する樹脂であることが好ましく、ジビニルベンゼン又はスチレンであることがより好ましい。
【0090】
上記シリコーン樹脂を含む粒子の具体的な製造方法としては、懸濁重合法、分散重合法、ミニエマルション重合法、又は乳化重合法等でシラン化合物の重合反応を行い、シリコーン樹脂を含む粒子を作製する方法等が挙げられる。シラン化合物の重合を進行させてオリゴマーを得た後、懸濁重合法、分散重合法、ミニエマルション重合法、又は乳化重合法等で重合体(オリゴマー等)であるシラン化合物の重合反応を行い、シリコーン樹脂を含む粒子を作製してもよい。例えば、ビニル基を有するシラン化合物を重合させて、末端においてケイ素原子に結合したビニル基を有するシラン化合物を得てもよい。フェニル基を有するシラン化合物を重合させて、重合体(オリゴマー等)として、側鎖においてケイ素原子に結合したフェニル基を有するシラン化合物を得てもよい。ビニル基を有するシラン化合物とフェニル基を有するシラン化合物とを重合させて、重合体(オリゴマー等)として、末端においてケイ素原子に結合したビニル基を有しかつ側鎖においてケイ素原子に結合したフェニル基を有するシラン化合物を得てもよい。
【0091】
上記シリコーン樹脂の外表面が上記シリコーン樹脂とは異なる樹脂により覆われた樹脂粒子を得るために、シリコーン樹脂を作製した後、該シリコーン樹脂と、上記シリコーン樹脂とは異なる樹脂とを重合反応をさせてもよい。
【0092】
(接続材料)
上記接続材料は、2つの接続対象部材を接続する接続部を形成するために用いられる。上記接続材料は、上述した樹脂粒子と、バインダー又は金属原子含有粒子とを含む。上記接続材料は、金属原子含有粒子の焼結体によって、上記接続部を形成するために用いられることが好ましい。上記バインダーには、本発明に係る樹脂粒子は含まれない。上記金属原子含有粒子には、本発明に係る樹脂粒子は含まれない。
【0093】
上記樹脂粒子の熱分解温度が、上記金属原子含有粒子の融点よりも高いことが好ましい。上記樹脂粒子の熱分解温度が、上記金属原子含有粒子の融点よりも、10℃以上高いことが好ましく、30℃以上高いことがより好ましく、50℃以上高いことが最も好ましい。
【0094】
上記金属原子含有粒子としては、金属粒子及び金属化合物粒子等が挙げられる。上記金属化合物粒子は、金属原子と、該金属原子以外の原子とを含む。上記金属化合物粒子の具体例としては、金属酸化物粒子、金属の炭酸塩粒子、金属のカルボン酸塩粒子及び金属の錯体粒子等が挙げられる。上記金属化合物粒子は、金属酸化物粒子であることが好ましい。例えば、上記金属酸化物粒子は、還元剤の存在下で接続時の加熱で金属粒子となった後に焼結する。上記金属酸化物粒子は、金属粒子の前駆体である。上記金属のカルボン酸塩粒子としては、金属の酢酸塩粒子等が挙げられる。
【0095】
上記金属粒子及び上記金属酸化物粒子を構成する金属としては、銀、銅及び金等が挙げられる。上記金属粒子及び上記金属酸化物粒子を構成する金属は、銀又は銅であることが好ましく、銀であることが特に好ましい。従って、上記金属粒子は、好ましくは銀粒子又は銅粒子であり、より好ましくは銀粒子である。上記金属酸化物粒子は、好ましくは酸化銀粒子又は酸化銅粒子であり、より好ましくは酸化銀粒子である。銀粒子及び酸化銀粒子を用いた場合には、接続後に残渣を少なくすることができ、体積減少率も非常に小さくすることができる。上記酸化銀粒子における酸化銀としては、Ag2O及びAgOが挙げられる。
【0096】
上記金属原子含有粒子は、400℃未満の加熱で焼結することが好ましい。上記金属原子含有粒子が焼結する温度(焼結温度)は、より好ましくは350℃以下、好ましくは300℃以上である。上記金属原子含有粒子が焼結する温度が、上記下限以上又は上記上限未満であると、焼結を効率的に行うことができ、さらに焼結に必要なエネルギーを低減し、かつ環境負荷を小さくすることができる。
【0097】
上記金属原子含有粒子が金属酸化物粒子である場合に、還元剤が用いられることが好ましい。上記還元剤としては、アルコール化合物(アルコール性水酸基を有する化合物)、カルボン酸化合物(カルボキシ基を有する化合物)及びアミン化合物(アミノ基を有する化合物)等が挙げられる。上記還元剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0098】
上記アルコール化合物としては、アルキルアルコール等が挙げられる。上記アルコール化合物の具体例としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール及びイコシルアルコール等が挙げられる。また、上記アルコール化合物としては、1級アルコール型化合物に限られず、2級アルコール型化合物、3級アルコール型化合物、アルカンジオール及び環状構造を有するアルコール化合物も使用可能である。さらに、上記アルコール化合物として、エチレングリコール及びトリエチレングリコール等多数のアルコール基を有する化合物を用いてもよい。また、上記アルコール化合物として、クエン酸、アスコルビン酸及びグルコース等の化合物を用いてもよい。
【0099】
上記カルボン酸化合物としては、アルキルカルボン酸等が挙げられる。上記カルボン酸化合物の具体例としては、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸及びイコサン酸等が挙げられる。また、上記カルボン酸化合物は、1級カルボン酸型化合物に限られず、2級カルボン酸型化合物、3級カルボン酸型化合物、ジカルボン酸及び環状構造を有するカルボキシル化合物も使用可能である。
【0100】
上記アミン化合物としては、アルキルアミン等が挙げられる。上記アミン化合物の具体例としては、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン及びイコデシルアミン等が挙げられる。また、上記アミン化合物は分岐構造を有していてもよい。分岐構造を有するアミン化合物としては、2-エチルヘキシルアミン及び1,5-ジメチルヘキシルアミン等が挙げられる。上記アミン化合物は、1級アミン型化合物に限られず、2級アミン型化合物、3級アミン型化合物及び環状構造を有するアミン化合物も使用可能である。
【0101】
上記還元剤は、アルデヒド基、エステル基、スルホニル基又はケトン基等を有する有機物であってもよく、カルボン酸金属塩等の有機物であってもよい。カルボン酸金属塩は金属粒子の前駆体としても用いられる一方で、有機物を含有しているために、金属酸化物粒子の還元剤としても用いられる。
【0102】
上記金属酸化物粒子100重量部に対して、上記還元剤の含有量は、好ましくは1重量部以上、より好ましくは10重量部以上であり、好ましくは1000重量部以下、より好ましくは500重量部以下、さらに好ましくは100重量部以下である。上記還元剤の含有量が、上記下限以上であると、上記金属原子含有粒子をより一層緻密に焼結させることができる。この結果、上記金属原子含有粒子の焼結体によって形成された接続部における放熱性及び耐熱性も高くなる。
【0103】
上記金属原子含有粒子の焼結温度(接続温度)よりも低い融点を有する還元剤を用いると、接続時に凝集し、接続部にボイドが生じやすくなる傾向がある。カルボン酸金属塩の使用により、該カルボン酸金属塩は接続時の加熱により融解しないため、ボイドの発生を抑制できる。なお、カルボン酸金属塩以外にも有機物を含有する金属化合物を還元剤として用いてもよい。
【0104】
接続強度をより一層効果的に高める観点からは、上記接続材料は、バインダーを含むことが好ましい。上記バインダーは特に限定されない。上記バインダーとして、公知の絶縁性の樹脂が用いられる。上記バインダーは、熱可塑性成分(熱可塑性化合物)又は硬化性成分を含むことが好ましく、硬化性成分を含むことがより好ましい。上記硬化性成分としては、光硬化性成分及び熱硬化性成分が挙げられる。上記光硬化性成分は、光硬化性化合物及び光重合開始剤を含むことが好ましい。上記熱硬化性成分は、熱硬化性化合物及び熱硬化剤を含むことが好ましい。上記バインダーとしては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0105】
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル-スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
【0106】
また、上記バインダーは、溶媒であってもよい。上記溶媒としては、水及び有機溶剤等が挙げられる。溶媒の除去性をより一層高める観点からは、上記溶媒は、有機溶剤であることが好ましい。上記有機溶剤としては、エタノール等のアルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル化合物;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素化合物;並びに石油エーテル、ナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0107】
接続強度をより一層効果的に高める観点からは、上記接続材料は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0108】
本発明の樹脂粒子による効果が効果的に発揮されるので、上記接続材料が上記金属原子含有粒子を含む場合に、上記接続材料において、上記金属原子含有粒子の含有量は、上記樹脂粒子の含有量よりも多いことが好ましく、10重量%以上多いことがより好ましく、20重量%以上多いことがさらに好ましい。
【0109】
上記接続材料100重量%中、上記樹脂粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。上記樹脂粒子の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、接続部における内部応力をより一層効果的に緩和することができる。
【0110】
上記接続材料が上記金属原子含有粒子を含む場合に、上記接続材料100重量%中、上記金属原子含有粒子の含有量は、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは3重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。上記金属原子含有粒子の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、接続抵抗がより一層低くなる。
【0111】
上記接続材料がバインダーを含む場合に、上記接続材料100体積%中、上記バインダーの含有量は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上であり、好ましくは40体積%以下、より好ましくは20体積%以下である。上記バインダーの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、接続強度をより一層効果的に高めることができる。
【0112】
(接続構造体)
上述した樹脂粒子とバインダー又は金属原子含有粒子とを含む接続材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
【0113】
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、上記第1の接続対象部材と、上記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備える。上記接続部の材料が、上述した樹脂粒子を含む。上記接続部の材料が、上述した接続材料であることが好ましい。上記接続部が、上述した接続材料により形成されている接続構造体であることが好ましい。
【0114】
図1は、本発明に係る樹脂粒子を用いた接続構造体の一例を示す断面図である。
【0115】
図1に示す接続構造体51は、第1の接続対象部材52と、第2の接続対象部材53と、第1の接続対象部材52と第2の接続対象部材53とを接続している接続部54とを備える。
【0116】
接続部54は、上述した樹脂粒子1を含む。樹脂粒子1は、2つの第1,第2の接続対象部材52,53の双方に接していない。樹脂粒子1は、応力緩和用スペーサとして用いられている。
図1では、図示の便宜上、樹脂粒子1は略図的に示されている。
【0117】
接続部54は、ギャップ制御粒子61と、金属接続部62とを含む。接続部54では、1つのギャップ制御粒子61が、2つの第1,第2の接続対象部材52,53の双方に接している。ギャップ制御粒子61は導電性粒子であってもよく、導電性を有さない粒子であってもよい。金属接続部62は、金属原子含有粒子の焼結体である。金属接続部62は、金属原子含有粒子を焼結させることにより形成されている。金属接続部62は、金属原子含有粒子を溶融させた後に固化させることにより形成されている。金属接続部62は、金属原子含有粒子の溶融固化物である。
【0118】
上記第1の接続対象部材は、第1の電極を表面に有していてもよい。上記第2の接続対象部材は、第2の電極を表面に有していてもよい。上記第1の電極と上記第2の電極とが、上記接続部により電気的に接続されていることが好ましい。
【0119】
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例として、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間に上記接続材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。上記加圧の圧力は9.8×104~4.9×106Pa程度である。上記加熱の温度は、120~220℃程度である。フレキシブルプリント基板の電極、樹脂フィルム上に配置された電極及びタッチパネルの電極を接続するための上記加圧の圧力は9.8×104~1.0×106Pa程度である。
【0120】
上記接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板等の電子部品等が挙げられる。上記接続対象部材は電子部品であることが好ましい。上記第1の接続対象部材及び上記第2の接続対象部材の内の少なくとも一方は、半導体ウェハ又は半導体チップであることが好ましい。上記接続構造体は、半導体装置であることが好ましい。
【0121】
上記接続材料は、タッチパネルにも好適に用いられる。従って、上記接続対象部材は、フレキシブル基板であるか、又は樹脂フィルムの表面上に電極が配置された接続対象部材であることも好ましい。上記接続対象部材は、フレキシブル基板であることが好ましく、樹脂フィルムの表面上に電極が配置された接続対象部材であることが好ましい。上記フレキシブル基板がフレキシブルプリント基板等である場合に、フレキシブル基板は一般に電極を表面に有する。
【0122】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、銀電極、モリブデン電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブル基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0123】
また、上記樹脂粒子は、液晶表示素子用スペーサとして好適に用いることができる。上記第1の接続対象部材は、第1の液晶表示素子用部材であってもよい。上記第2の接続対象部材は、第2の液晶表示素子用部材であってもよい。上記接続部は、上記第1の液晶表示素子用部材と上記第2の液晶表示素子用部材とが対向した状態で、上記第1の液晶表示素子用部材と上記第2の液晶表示素子用部材との外周をシールしているシール部であってもよい。
【0124】
上記樹脂粒子は、液晶表示素子用シール剤に用いることもできる。液晶表示素子は、第1の液晶表示素子用部材と、第2の液晶表示素子用部材と、シール部と、液晶とを備える。上記シール部は、上記第1の液晶表示素子用部材と上記第2の液晶表示素子用部材とが対向した状態で、上記第1の液晶表示素子用部材と上記第2の液晶表示素子用部材との外周をシールしている。上記液晶は、上記シール部の内側で、上記第1の液晶表示素子用部材と上記第2の液晶表示素子用部材との間に配置されている。この液晶表示素子では、液晶滴下工法が適用され、かつ上記シール部が、液晶滴下工法用シール剤を熱硬化させることにより形成されている。
【0125】
図2は、本発明に係る樹脂粒子を液晶表示素子用スペーサとして用いた液晶表示素子の一例を示す断面図である。
【0126】
図2に示す液晶表示素子81は、一対の透明ガラス基板82を有する。透明ガラス基板82は、対向する面に絶縁膜(図示せず)を有する。絶縁膜の材料としては、例えば、SiO
2等が挙げられる。透明ガラス基板82における絶縁膜上に透明電極83が形成されている。透明電極83の材料としては、ITO等が挙げられる。透明電極83は、例えば、フォトリソグラフィーによりパターニングして形成可能である。透明ガラス基板82の表面上の透明電極83上に、配向膜84が形成されている。配向膜84の材料としては、ポリイミド等が挙げられている。
【0127】
一対の透明ガラス基板82間には、液晶85が封入されている。一対の透明ガラス基板82間には、複数の樹脂粒子1が配置されている。樹脂粒子1は、液晶表示素子用スペーサとして用いられている。複数の樹脂粒子1により、一対の透明ガラス基板82の間隔が規制されている。一対の透明ガラス基板82の縁部間には、シール剤86が配置されている。シール剤86によって、液晶85の外部への流出が防がれている。シール剤86には、樹脂粒子1と粒径のみが異なる樹脂粒子1Aが含まれている。
図2では、図示の便宜上、樹脂粒子1及び1Aは略図的に示されている。
【0128】
上記液晶表示素子において1mm2あたりの液晶表示素子用スペーサの配置密度は、好ましくは10個/mm2以上であり、好ましくは1000個/mm2以下である。上記配置密度が10個/mm2以上であると、セルギャップがより一層均一になる。上記配置密度が1000個/mm2以下であると、液晶表示素子のコントラストがより一層良好になる。
【0129】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0130】
(参考例1)
(1)樹脂粒子A(シリコーン粒子A)の作製
両末端アクリルシリコーンオイル(信越化学工業社製「X-22-2445」)30重量部に、tert-ブチル-2-エチルペルオキシヘキサノアート(重合開始剤、日油社製「パーブチルO」)0.5重量部を溶解させた溶解液Aを用意した。また、イオン交換水150重量部に、ラウリル硫酸トリエタノールアミン塩40重量%水溶液(乳化剤)0.8重量部とポリビニルアルコール(重合度:約2000、けん化度:86.5~89モル%、日本合成化学社製「ゴーセノールGH-20」)の5重量%水溶液80重量部とを混合して、水溶液Bを用意した。温浴槽中に設置したセパラブルフラスコに、上記溶解液Aを入れた後、上記水溶液Bを添加した。その後、Shirasu Porous Glass(SPG)膜(細孔平均径約5μm)を用いることで、乳化を行った。その後、85℃に昇温して、9時間重合を行った。重合後の粒子の全量を遠心分離により水洗浄した後、分級操作を行った後、凍結乾燥させて樹脂粒子A(シリコーン粒子A)を得た。
【0131】
(2)接続材料の作製
銀粒子(平均粒子径15nm)40重量部と、ジビニルベンゼン樹脂粒子(平均粒子径30μm、CV値5%)1重量部と、上記樹脂粒子A10重量部と、溶媒であるトルエン40重量部とを配合し、混合して接続材料を作製した。
【0132】
(3)接続構造体の作製
第1の接続対象部材として、パワー半導体素子を用意した。第2の接続対象部材として、窒化アルミニウム基板を用意した。
【0133】
第2の接続対象部材上に上記接続材料を約30μmの厚みになるように塗布し、接続材料層を形成した。その後、接続材料層上に上記第1の接続対象部材を積層して、積層体を得た。得られた積層体を300℃で10分加熱することにより、接続材料層に含まれている銀粒子を焼結させて、接続構造体を作製した。
【0134】
(4)液晶表示素子の作製
液晶滴下工法用シール剤の作製:
以下の材料を用意した。
樹脂粒子A(シリコーン粒子A)30重量部
ビスフェノールA型エポキシメタクリレート(熱硬化性化合物、ダイセル・オルネクス社製「KRM7985」)50重量部
カプロラクトン変性ビスフェノールA型エポキシアクリレート(熱硬化性化合物、ダイセル・オルネクス社製「EBECRYL3708」)20重量部
部分アクリル変性ビスフェノールE型エポキシ樹脂(熱硬化性化合物、ダイセル・オルネクス社製「KRM8276」)30重量部
2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(光ラジカル重合開始剤、BASF Japan社製「IRGACURE651」)2重量部
マロン酸ジヒドラジド(熱硬化剤、大塚化学社製「MDH」)10重量部
シリカ(充填剤、アドマテックス社製「アドマファインSO-C2」)20重量部
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、信越化学工業社製「KBM-403」)2重量部
【0135】
上記の材料を配合し、遊星式撹拌装置(シンキー社製「あわとり練太郎」)にて撹拌した後、セラミック3本ロールにて均一に混合させて液晶表示素子用シール剤(シール剤)を得た。
【0136】
液晶表示素子の作製:
得られたシール剤100重量部に対して、スペーサ粒子(平均粒子径5μm、積水化学工業社製「ミクロパールSP-205」)1重量部を配合し、遊星式撹拌装置を用いて、シール剤中にスペーサ粒子を均一に分散させた。得られたスペーサ粒子含有シール剤をディスペンス用シリンジ(武蔵エンジニアリング社製「PSY-10E」)に充填し、脱泡処理を行った。その後、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製「SHOTMASTER300」)を用いて、ITO薄膜が形成された透明電極基板上に長方形の枠を描くように、スペーサ粒子含有シール剤を塗布した。次いで、液晶滴下装置を用いて、TN液晶(チッソ社製「JC-5001LA」)の微小滴を、透明電極基板のスペーサ粒子含有シール剤が塗布された長方形の内側に滴下して塗布した。シール剤及びTN液晶が塗布された透明電極基板と、シール剤及びTN液晶が塗布されていない透明電極基板を、真空貼り合わせ装置を用いて5Paの真空下にて貼り合わせた。次いで、シール剤を塗布した部分にメタルハライドランプを用いて100mW/cm2の紫外線を30秒照射した後、120℃で1時間加熱してシール剤を熱硬化させ、液晶表示素子(セルギャップ5μm)を得た。
【0137】
(参考例2)
樹脂粒子を作製する際に、信越化学工業社製「X-22-2445」の代わりに信越化学工業社製「X-22-1602」を用いたこと以外は参考例1と同様にして樹脂粒子B(シリコーン粒子B)を得た。樹脂粒子Aを樹脂粒子Bに変更したこと以外は、参考例1と同様にして、接続材料、接続構造体及び液晶表示素子を得た。
【0138】
(実施例3)
(1)樹脂粒子C(樹脂被覆シリコーン粒子C)の作製
温浴槽内に設置した500mlのセパラブルフラスコに、参考例1で得られた樹脂粒子A(シリコーン粒子A)6.5重量部と、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド0.6重量部と、蒸留水240重量部と、メタノール120重量部とを入れ、40℃で1時間攪拌した。次いで、ジビニルベンゼン3.0重量部とスチレン0.5重量部とをセパラブルフラスコ内に添加して、75℃まで昇温し、0.5時間攪拌した。次いで、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.4重量部をセパラブルフラスコ内に添加して、8時間攪拌し、重合反応させた。重合反応後、遠心分離を行うことで得られた粒子を水洗浄して、樹脂粒子C(樹脂被覆シリコーン粒子C)を得た。
【0139】
樹脂粒子Aを樹脂粒子Cに変更したこと以外は参考例1と同様にして接続材料、接続構造体及び液晶表示素子を得た。
【0140】
(比較例1)
接続材料及び液晶表示素子を作製する際に、樹脂粒子Aの代わりにシリコーンパウダー「KMP-605」(信越化学工業社製)を用いたこと以外は、参考例1と同様にして、接続材料、接続構造体及び液晶表示素子を得た。
【0141】
(比較例2)
接続材料及び液晶表示素子を作製する際に、樹脂粒子Aの代わりにシリコーンパウダー「KMP-590」(信越化学工業社製)を用いたこと以外は、参考例1と同様にして、接続材料、接続構造体及び液晶表示素子を得た。
【0142】
(評価)
(1)T単位及びQ単位の合計の個数(TnQn)
上記M単位、上記D単位、上記T単位及び上記Q単位の合計の個数100%中、上記T単位及び上記Q単位の合計の個数(TnQn)を、29Si-固体NMR分析することにより、上述した方法で算出した。
【0143】
(2)粒子径
得られた樹脂粒子の粒子径を、粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「Multisizer4」)を用いて、約100000個の樹脂粒子の粒子径を測定し、平均値を算出することにより求めた。
【0144】
(3)変動係数(CV値)
得られた樹脂粒子の変動係数を、上述した方法で測定した。
【0145】
(4)10%K値
得られた樹脂粒子の10%K値を、上述した方法で測定した。
【0146】
(5)40%圧縮変形させた際の圧縮回復率
得られた樹脂粒子の40%圧縮変形させた際の圧縮回復率を、上述した方法で測定した。
【0147】
(6)接続強度
マウント強度測定装置を用いて、得られた接続構造体の260℃での接続強度を測定した。接続強度を以下の基準で判定した。
【0148】
[接続強度の判定基準]
○○:シェア強度が150N/cm2以上
〇:シェア強度が100N/cm2以上、150N/cm2未満
×:シェア強度が100N/cm2未満
【0149】
(7)スプリングバック
走査型電子顕微鏡により、得られた接続構造体の接続部においてスプリングバックが発生しているか否かを観察した。スプリングバックを以下の基準で判定した。
【0150】
[スプリングバックの判定基準]
○:スプリングバックが発生していない
×:スプリングバックが発生している
【0151】
(8)内部応力緩和特性
走査型電子顕微鏡により、得られた接続構造体の接続部においてクラックが発生しているか否かを観察した。内部応力緩和特性を以下の基準で判定した。
【0152】
[内部応力緩和特性の判定基準]
○:クラックが発生していない
×:クラックが発生している
【0153】
(9)冷熱サイクル特性(接続信頼性)
得られた接続構造体を、-65℃から150℃に加熱し、-65℃に冷却する過程を1サイクルとする冷熱サイクル試験を1000サイクル実施した。超音波探傷装置(SAT)により、接続部においてクラック及び剥離の発生の有無を観察した。冷熱サイクル特性(接続信頼性)を以下の基準で判定した。
【0154】
[冷熱サイクル特性(接続信頼性)の判定基準]
○:接続部にクラック及び剥離なし
×:接続部にクラック又は剥離がある
【0155】
(10)透湿性
得られた液晶表示素子を温度80℃、湿度90%RHの環境下にて72時間保管した後、AC3.5Vの電圧駆動をさせ、中間調のシール部周辺を目視で観察した。透湿性を下記の基準で判定した。
【0156】
[透湿性の判定基準]
○:シール部周辺に色むらなし
△:シール部周辺に色むらがわずかに発生
×:シール部周辺に目立つ色むらが発生
【0157】
結果を下記の表1に示す。
【0158】
【符号の説明】
【0159】
1…樹脂粒子
1A…樹脂粒子
51…接続構造体
52…第1の接続対象部材
53…第2の接続対象部材
54…接続部
61…ギャップ制御粒子
62…金属接続部
81…液晶表示素子
82…透明ガラス基板
83…透明電極
84…配向膜
85…液晶
86…シール剤