(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】放熱シート、放熱シートの製造方法及び積層体
(51)【国際特許分類】
H01L 23/373 20060101AFI20220621BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20220621BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220621BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220621BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20220621BHJP
B32B 27/06 20060101ALI20220621BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20220621BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H01L23/36 M
H01L23/36 D
H05K7/20 F
B32B27/18 Z
H05K3/38 A
B32B27/06
C08L101/12
C08K7/00
(21)【出願番号】P 2018540485
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2018023690
(87)【国際公開番号】W WO2018235919
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2017123510
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川原 悠子
(72)【発明者】
【氏名】大鷲 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】足羽 剛児
(72)【発明者】
【氏名】張 鋭
(72)【発明者】
【氏名】乾 靖
(72)【発明者】
【氏名】前中 寛
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特許第6135817(JP,B1)
【文献】特開2017-94541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/ 00
C08K 3/00 - 13/ 08
C08L 1/00 -101/ 14
H01L23/29
H01L23/34 - 23/ 36
H01L23/373- 23/427
H01L23/44
H01L23/467- 23/473
H05K 1/00 - 1/02
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均アスペクト比が2以下である第1の無機粒子と、平均アスペクト比が2を超える第2の無機粒子と、バインダー樹脂とを含み、
厚み方向の一方側の第1の表面と、厚み方向の他方側の第2の表面とを有し、
前記第1の表面から前記第2の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中において、前記第2の無機粒子の含有量が、前記第1の無機粒子の含有量よりも多く、
前記第1の表面から前記第2の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中における前記第1の無機粒子の含有量が、前記第1の表面から前記第2の表面に向かう厚みの15/100の位置から厚みの85/100の位置までの厚み70%の領域の100体積%中における前記第1の無機粒子の含有量よりも多い、放熱シート。
【請求項2】
前記第1の無機粒子と前記第2の無機粒子との合計100体積%中、前記第1の無機粒子を30体積%以下で含む、請求項1に記載の放熱シート。
【請求項3】
前記第1の無機粒子の平均粒子径が、20μm未満である、請求項1又は2に記載の放熱シート。
【請求項4】
前記第1の無機粒子の材料が、アルミニウム元素又は炭素元素を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の放熱シート。
【請求項5】
前記第1の無機粒子の平均円形度が、0.9以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の放熱シート。
【請求項6】
前記第2の無機粒子の平均アスペクト比が、15以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の放熱シート。
【請求項7】
前記第2の無機粒子の材料が、窒化ホウ素である、請求項1~6のいずれか1項に記載の放熱シート。
【請求項8】
前記窒化ホウ素が、凝集粒子である、請求項7に記載の放熱シート。
【請求項9】
前記第1の無機粒子の熱伝導率と前記第2の無機粒子の熱伝導率とがそれぞれ、10W/m・K以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の放熱シート。
【請求項10】
前記バインダー樹脂が、熱硬化性化合物と熱硬化剤とを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の放熱シート。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の放熱シートの製造方法であって、
平均アスペクト比が2以下である前記第1の無機粒子と、平均アスペクト比が2を超える前記第2の無機粒子と、前記バインダー樹脂とを配合する工程を備える、放熱シートの製造方法。
【請求項12】
熱伝導体と、前記熱伝導体の一方の表面に積層された絶縁層と、前記絶縁層の前記熱伝導体とは反対側の表面に積層された導電層とを備え、
前記絶縁層が、平均アスペクト比が2以下である第1の無機粒子と、平均アスペクト比が2を超える第2の無機粒子と、バインダー樹脂とを含み、
前記絶縁層が、厚み方向の一方側の第1の表面と、厚み方向の他方側の第2の表面とを有し、
前記絶縁層の前記第1の表面から前記第2の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中において、前記第2の無機粒子の含有量が、前記第1の無機粒子の含有量よりも多く、
前記絶縁層の前記第1の表面から前記第2の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中における前記第1の無機粒子の含有量が、前記絶縁層の前記第1の表面から前記第2の表面に向かう厚みの15/100の位置から厚みの85/100の位置までの厚み70%の領域の100体積%中における前記第1の無機粒子の含有量よりも多い、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子とバインダー樹脂とを含む放熱シート及び放熱シートの製造方法に関する。また、本発明は、無機粒子とバインダー樹脂とを含む絶縁層を備える積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子及び電気機器の小型化及び高性能化が進行しており、電子部品の実装密度が高くなっている。このため、狭いスペースの中で電子部品から発生する熱を、如何に放熱するかが問題となっている。電子部品から発生した熱は、電子及び電気機器の信頼性に直結するので、発生した熱の効率的な放散が緊急の課題となっている。
【0003】
上記の課題を解決する一つの手段としては、パワー半導体デバイス等を実装する放熱基板に、高い熱伝導性を有するセラミックス基板を用いる手段が挙げられる。このようなセラミックス基板としては、アルミナ基板及び窒化アルミニウム基板等が挙げられる。
【0004】
しかしながら、上記セラミックス基板を用いる手段では、多層化が困難であり、加工性が悪く、コストが非常に高いという課題がある。さらに、上記セラミックス基板と銅回路との線膨張係数の差が大きいので、冷熱サイクル時に銅回路が剥がれやすいという課題もある。
【0005】
そこで、線膨張係数が低い窒化ホウ素、特に六方晶窒化ホウ素を用いた樹脂組成物が、放熱材料として注目されている。六方晶窒化ホウ素の結晶構造は、グラファイトに類似した六角網目の層状構造であり、六方晶窒化ホウ素の粒子形状は、鱗片状である。このため、六方晶窒化ホウ素は、面方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高く、かつ熱伝導率に異方性がある性質を有することが知られている。上記樹脂組成物は、熱伝導性シートやプリプレグとして用いられることがある。
【0006】
窒化ホウ素を含む熱伝導性シートの一例が、下記の特許文献1に開示されている。特許文献1には、窒化ホウ素粒子の一部又は全部が凝集粒子の状態で、熱硬化性樹脂中に分散されている熱伝導性シートが開示されている。上記熱伝導性シートは、金属酸化物粒子をさらに含有する。上記熱伝導性シートでは、上記金属酸化物粒子と上記窒化ホウ素粒子との合計の含有量は、40体積%~70体積%である。上記熱伝導性シートでは、上記金属酸化物粒子と上記窒化ホウ素粒子との体積比率は、10:90~50:50である。上記熱伝導性シートでは、上記金属酸化物粒子のメジアン径は、0.5μm~30μmである。
【0007】
また、下記の特許文献2には、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と、窒化ホウ素と、バインダー樹脂とを含む熱伝導性絶縁シートが開示されている。上記熱伝導性絶縁シートは以下の条件(1)~(7)の全てを満たす。条件(1):上記熱伝導性絶縁シートは、空隙率が0.2以下である。条件(2):上記熱伝導性絶縁シートは、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を含有し、窒化ホウ素を含有し得る層(A)と、窒化ホウ素を含有し、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)を含有し得る層(B)とを有する。条件(3):上記層(A)と上記層(B)とは、上記層(B)が最外層には位置しないように交互に積層されている。条件(4):最も外側に位置する上記層(Aout)に含まれ得る熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)の質量が、上記層(B)に含まれ得る熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)の質量よりも相対的に多い。条件(5):上記層(Aout)中の熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素との合計の含有量が、層(Aout)中における熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)、窒化ホウ素、及びバインダー樹脂の合計100体積%中、50体積%よりも多い。条件(6):上記窒化ホウ素が、鱗片状、又は鱗片状の一次粒子を造粒した造粒体である。条件(7):上記層(B)は、熱伝導性球状フィラー(窒化ホウ素を除く)と窒化ホウ素とバインダー樹脂との合計100質量%中、窒化ホウ素を30質量%~90質量%含む。
【0008】
窒化ホウ素を含むプリプレグの一例が、下記の特許文献3に開示されている。特許文献3には、二成分以上の無機充填材を含む熱硬化性樹脂組成物が、シート状かつ半硬化状態にされた加熱加圧成形用プリプレグが開示されている。上記無機充填材は、一次粒子の凝集体であって、該凝集体の平均粒径d1が、10μm以上70μm以下である充填材(1)を含む。上記無機充填材は、粒子状であり、粒子単体の平均粒径d2が0.1μm以上30μm以下である充填材(2)を含む。上記熱硬化性樹脂組成物では、熱硬化性樹脂固形分と上記無機充填材との合計100体積%中、上記充填材(1)の含有量は、5体積%~40体積%である。上記熱硬化性樹脂組成物では、熱硬化性樹脂固形分と上記無機充填材との合計100体積%中、上記充填材(2)の含有量は、10体積%~50体積%である。上記熱硬化性樹脂組成物100体積%中、上記無機充填材の合計の含有量は、20体積%~80体積%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-32496号公報
【文献】特許第6135817号公報
【文献】特開2012-219251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1~3に記載のような従来の窒化ホウ素を含む熱伝導性シート等は、銅箔や金属板等と積層されて、積層体として用いられることがある。上記積層体では、上記銅箔をエッチング等により処理することで、回路パターンが形成されることがある。
【0011】
特許文献1~3に記載のような従来の窒化ホウ素を含む熱伝導性シート等では、窒化ホウ素を用いているために熱伝導性を高めることはできるものの、熱伝導性シート等と銅箔との接着性を高めることは困難である。また、特許文献2に記載のような従来の熱伝導性絶縁シートでは、熱伝導性絶縁シートの構成上、最外層の熱伝導率が低く、最外層の熱抵抗が大きくなるので、熱伝導性絶縁シート全体の熱伝導性を高めることは困難である。従来の窒化ホウ素を含む熱伝導性シート等では、熱伝導性と接着性とを両立させることは困難である。
【0012】
また、従来の窒化ホウ素を含む熱伝導性シート等では、ボイドが発生し、絶縁性が低下することがある。さらに、従来の窒化ホウ素を含む熱伝導性シート等を積層体に用いた場合には、上述したように熱伝導性シート等と銅箔との接着性を高めることは困難であるので、形成された回路パターンが積層体から剥離することがある。回路パターンが剥離すると、剥離した回路パターンと積層体の外表面との間で部分放電が起こり、積層体が劣化することがある。結果として、長期絶縁信頼性が低下することがある。
【0013】
本発明の目的は、接着性と長期絶縁信頼性とを効果的に高めることができる放熱シート及び放熱シートの製造方法を提供することである。また、本発明の目的は、接着性と長期絶縁信頼性とを効果的に高めることができる積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の広い局面によれば、平均アスペクト比が2以下である第1の無機粒子と、平均アスペクト比が2を超える第2の無機粒子と、バインダー樹脂とを含み、厚み方向の一方側の第1の表面と、厚み方向の他方側の第2の表面とを有し、前記第1の表面から前記第2の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中において、前記第2の無機粒子の含有量が、前記第1の無機粒子の含有量よりも多く、前記第1の表面から前記第2の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中における前記第1の無機粒子の含有量が、前記第1の表面から前記第2の表面に向かう厚みの15/100の位置から厚みの85/100の位置までの厚み70%の領域の100体積%中における前記第1の無機粒子の含有量よりも多い、放熱シートが提供される。
【0015】
本発明に係る放熱シートのある特定の局面では、前記放熱シートが、前記第1の無機粒子と前記第2の無機粒子との合計100体積%中、前記第1の無機粒子を30体積%以下で含む。
【0016】
本発明に係る放熱シートのある特定の局面では、前記第1の無機粒子の平均粒子径が、20μm未満である。
【0017】
本発明に係る放熱シートのある特定の局面では、前記第1の無機粒子の材料が、アルミニウム元素又は炭素元素を含む。
【0018】
本発明に係る放熱シートのある特定の局面では、前記第1の無機粒子の平均円形度が、0.9以上である。
【0019】
本発明に係る放熱シートのある特定の局面では、前記第2の無機粒子の平均アスペクト比が、15以下である。
【0020】
本発明に係る放熱シートのある特定の局面では、前記第2の無機粒子の材料が、窒化ホウ素である。
【0021】
本発明に係る放熱シートのある特定の局面では、前記窒化ホウ素が、凝集粒子である。
【0022】
本発明に係る放熱シートのある特定の局面では、前記第1の無機粒子の熱伝導率と前記第2の無機粒子の熱伝導率とがそれぞれ、10W/m・K以上である。
【0023】
本発明に係る放熱シートのある特定の局面では、前記バインダー樹脂が、熱硬化性化合物と熱硬化剤とを含む。
【0024】
本発明の広い局面によれば、上述した放熱シートの製造方法であって、平均アスペクト比が2以下である前記第1の無機粒子と、平均アスペクト比が2を超える前記第2の無機粒子と、前記バインダー樹脂とを配合する工程を備える、放熱シートの製造方法が提供される。
【0025】
本発明の広い局面によれば、熱伝導体と、前記熱伝導体の一方の表面に積層された絶縁層と、前記絶縁層の前記熱伝導体とは反対側の表面に積層された導電層とを備え、前記絶縁層が、平均アスペクト比が2以下である第1の無機粒子と、平均アスペクト比が2を超える第2の無機粒子と、バインダー樹脂とを含み、前記絶縁層が、厚み方向の一方側の第1の表面と、厚み方向の他方側の第2の表面とを有し、前記絶縁層の前記第1の表面から前記第2の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中において、前記第2の無機粒子の含有量が、前記第1の無機粒子の含有量よりも多く、前記絶縁層の前記第1の表面から前記第2の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中における前記第1の無機粒子の含有量が、前記絶縁層の前記第1の表面から前記第2の表面に向かう厚みの15/100の位置から厚みの85/100の位置までの厚み70%の領域の100体積%中における前記第1の無機粒子の含有量よりも多い、積層体が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る放熱シートは、平均アスペクト比が2以下である第1の無機粒子と、平均アスペクト比が2を超える第2の無機粒子と、バインダー樹脂とを含む。本発明に係る放熱シートは、厚み方向の一方側の第1の表面と、厚み方向の他方側の第2の表面とを有する。本発明に係る放熱シートでは、上記第1の表面から上記第2の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中において、上記第2の無機粒子の含有量が、上記第1の無機粒子の含有量よりも多い。上記第1の表面から上記第2の表面に向かう厚みの15/100の位置から厚みの85/100の位置までの厚み70%の領域を中央の領域とする。本発明に係る放熱シートでは、上記第1の表面から上記第2の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量が、上記中央の領域の100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量よりも多い。本発明に係る放熱シートでは、上記の構成が備えられているので、接着性と長期絶縁信頼性とを効果的に高めることができる。
【0027】
本発明に係る積層体は、熱伝導体と、上記熱伝導体の一方の表面に積層された絶縁層と、上記絶縁層の上記熱伝導体とは反対側の表面に積層された導電層とを備える。本発明に係る積層体では、上記絶縁層が、平均アスペクト比が2以下である第1の無機粒子と、平均アスペクト比が2を超える第2の無機粒子と、バインダー樹脂とを含む。本発明に係る積層体では、上記絶縁層が、厚み方向の一方側の第1の表面と、厚み方向の他方側の第2の表面とを有する。本発明に係る積層体では、上記絶縁層の上記第1の表面から上記第2の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中において、上記第2の無機粒子の含有量が、上記第1の無機粒子の含有量よりも多い。上記絶縁層の上記第1の表面から上記第2の表面に向かう厚みの15/100の位置から厚みの85/100の位置までの厚み70%の領域を中央の領域とする。本発明に係る積層体では、上記絶縁層の上記第1の表面から上記第2の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量が、上記絶縁層の上記中央の領域の100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量よりも多い。本発明に係る積層体では、上記の構成が備えられているので、接着性と長期絶縁信頼性とを効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る放熱シートを模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る放熱シートを用いて得られる積層体を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る放熱シートにおいて、第1の無機粒子及び第2の無機粒子の含有量を求める各領域を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0030】
(放熱シート及び積層体)
本発明に係る放熱シートは、平均アスペクト比が2以下である第1の無機粒子と、平均アスペクト比が2を超える第2の無機粒子と、バインダー樹脂とを含む。本発明に係る放熱シートは、第1の無機粒子を複数個含む。本発明に係る放熱シートは、第2の無機粒子を複数個含む。
【0031】
本発明に係る放熱シートは、厚み方向の一方側の第1の表面と、厚み方向の他方側の第2の表面とを有する。本発明に係る放熱シートでは、上記第1の表面と上記第2の表面とは対向している。本発明に係る放熱シートでは、上記第1の表面から上記第2の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中において、上記第2の無機粒子の含有量は、上記第1の無機粒子の含有量よりも多い。上記第1の表面から上記第2の表面に向かう厚みの15/100の位置から厚みの85/100の位置までの厚み70%の領域を中央の領域とする。本発明に係る放熱シートでは、上記第1の表面から上記第2の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量は、上記中央の領域の100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量よりも多い。
【0032】
本発明に係る放熱シートは、上記第1の無機粒子と、上記第2の無機粒子と、上記バインダー樹脂とを配合することにより得られる。
【0033】
本発明に係る積層体は、熱伝導体と、上記熱伝導体の一方の表面に積層された絶縁層と、上記絶縁層の上記熱伝導体とは反対側の表面に積層された導電層とを備える。本発明に係る積層体では、上記絶縁層は、平均アスペクト比が2以下である第1の無機粒子と、平均アスペクト比が2を超える第2の無機粒子と、バインダー樹脂とを含む。本発明に係る積層体では、上記絶縁層は、第1の無機粒子を複数個含む。本発明に係る積層体では、上記絶縁層は、第2の無機粒子を複数個含む。本発明に係る積層体では、上記絶縁層は、厚み方向の一方側の第1の表面と、厚み方向の他方側の第2の表面とを有する。本発明に係る積層体では、上記絶縁層の上記第1の表面から上記第2の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中において、上記第2の無機粒子の含有量は、上記第1の無機粒子の含有量よりも多い。上記絶縁層の上記第1の表面から上記第2の表面に向かう厚みの15/100の位置から厚みの85/100の位置までの厚み70%の領域を、中央の領域とする。本発明に係る積層体では、上記絶縁層の上記第1の表面から上記第2の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量は、上記絶縁層の上記中央の領域の100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量よりも多い。
【0034】
本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、上記の構成が備えられているので、接着性と長期絶縁信頼性とを効果的に高めることができる。
【0035】
放熱シートの第1の表面上に銅箔等の導電層が積層された積層体(積層体では、放熱シートは絶縁層である)において、放熱シートと導電層との剥離が生じる際の剥離の形態を観察した。そして、その剥離の形態に関して、放熱シートの第1の表面近傍領域にて面方向に配向した第2の無機粒子が破断又は剥離されることによって、放熱シートの第1の表面近傍領域内で剥離が生じる場合があることを、本発明者らは見出した。
【0036】
本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、放熱シートの第1の表面近傍領域には、アスペクト比が比較的大きい第2の無機粒子だけではなく、アスペクト比が比較的小さい第1の無機粒子が含まれている。本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、放熱シートに熱伝導体や銅箔等の導電層を積層し、プレス等によって積層体が作製される際に、第2の無機粒子は、第1の無機粒子によって厚さ方向に配向が制御される。このため、面方向に配向した第2の無機粒子の含有量を少なくすることができるので、放熱シートの第1の表面近傍領域内での剥離を生じ難くすることができる。また、厚さ方向に配向した第2の無機粒子がアンカーとして機能することで、絶縁層の第1の表面近傍領域内での剥離を生じ難くすることができる。
【0037】
結果として、本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、放熱シートと銅箔等の導電層との接着性をより一層効果的に高めることができる。
【0038】
また、本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、放熱シートの第1の表面近傍領域では、第2の無機粒子は厚さ方向に配向が制御されており、さらに、放熱シートの第1の表面近傍領域以外の領域の第2の無機粒子の含有量を増加させることができるので、放熱シート及び積層体の熱伝導性をより一層効果的に高めることができる。特に、第2の無機粒子として窒化ホウ素を用いた場合には、窒化ホウ素は面方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高く、かつ熱伝導率に異方性がある性質を有するので、窒化ホウ素の配向を制御することで、厚さ方向の熱伝導性をより一層効果的に高めることができる。
【0039】
また、本発明に係る積層体では、導電層である銅箔をエッチング等により処理することで、回路パターンが形成されることがある。形成された回路パターンが積層体から剥離すると、剥離した回路パターンと積層体の外表面との間で部分放電が起こり、積層体が劣化し、長期絶縁信頼性が低下することがある。本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、上述したように放熱シートと銅箔等の導電層との接着性を高めることができるので、形成された回路パターンが積層体から剥離することを防止でき、長期絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。第2の無機粒子のみで放熱シートが構成された場合、放熱シート内部において第2の無機粒子の濃度が異なる部位で応力集中が起こった際に、面方向での剥離が容易に起こり、剥離部における部分放電により長期絶縁信頼性が低下することがある。本発明では、第1の無機粒子と第2の無機粒子とが用いられており、第1の無機粒子により層間の剥離を抑制できるので、長期絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。また、第1の無機粒子を用いることで、放熱シート形成前の放熱シート形成用材料(硬化性材料)の粘度を低くすることができ、より一層均質な放熱シートを作製することができる。
【0040】
本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、上記第1の表面から上記第2の表面に向かって厚み15%の領域(R1)の100体積%中において、上記第2の無機粒子の含有量は、上記第1の無機粒子の含有量よりも多い。上記領域(R1)は、
図3において、第1の表面1aと破線L1との間の領域である。
【0041】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記領域(R1)100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上であり、好ましくは35体積%以下、より好ましくは25体積%以下である。
【0042】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記領域(R1)100体積%中における上記第2の無機粒子の含有量は、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上であり、好ましくは50体積%未満、より好ましくは40体積%以下である。
【0043】
本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、上記領域(R1)の100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量は、上記第1の表面から上記第2の表面に向かう厚みの15/100の位置から厚みの85/100の位置までの厚み70%の領域(R2)の100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量よりも多い。上記領域(R1)は、
図3において、第1の表面1aと破線L1との間の領域である。上記領域(R2)は、
図3において、破線L1と破線L2との間の領域である。
【0044】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記領域(R2)100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量は、好ましくは0体積%(未含有)以上、より好ましくは0.3体積%以上であり、好ましくは7体積%以下、より好ましくは3体積%以下である。
【0045】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記領域(R2)100体積%中における上記第2の無機粒子の含有量は、好ましくは0体積%(未含有)以上、より好ましくは0.5体積%以上であり、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下である。
【0046】
本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、上記第2の表面から上記第1の表面に向かって厚み15%の領域(R3)の100体積%中において、上記第2の無機粒子の含有量は、上記第1の無機粒子の含有量よりも多いことが好ましい。上記領域(R3)は、
図3において、第2の表面1bと破線L2との間の領域である。
【0047】
本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、上記第2の表面から上記第1の表面に向かって厚み15%の領域(R3)の100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量は、上記領域(R2)の100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量よりも多いことが好ましい。上記領域(R2)は、
図3において、破線L1と破線L2との間の領域である。上記領域(R3)は、
図3において、第2の表面1bと破線L2との間の領域である。
【0048】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記領域(R3)100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上であり、好ましくは35体積%以下、より好ましくは25体積%以下である。
【0049】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記領域(R3)100体積%中における上記第2の無機粒子の含有量は、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上であり、好ましくは50体積%未満、より好ましくは40体積%以下である。
【0050】
上記領域(R1)、上記領域(R2)、及び上記領域(R3)100体積%中における無機粒子の含有量は、上記放熱シート又は積層体の断面の電子顕微鏡画像から算出することができる。
【0051】
(第1の無機粒子)
本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体は、第1の無機粒子を含む。上記第1の無機粒子は、絶縁性を有することが好ましい。上記第1の無機粒子は、絶縁性粒子であることが好ましい。上記第1の無機粒子は、例えば、無機フィラーである。上記第1の無機粒子として、少なくとも1種類の無機粒子が用いられる。上記第1の無機粒子として、1種類の無機粒子のみが用いられてもよく、2種類以上の無機粒子が併用されてもよい。2種類以上の無機粒子が配合されて、第1の無機粒子が構成されてもよい。ある材料により形成された無機粒子と、上記ある材料とは異なる材料により形成された無機粒子とが混合されて、第1の無機粒子が構成されてもよい。
【0052】
本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、上記第1の無機粒子の平均アスペクト比は、2以下である。上記第1の無機粒子の平均アスペクト比の下限は特に限定されない。上記第1の無機粒子の平均アスペクト比は、1以上であってもよい。
【0053】
上記第1の無機粒子のアスペクト比は、長径/短径を示す。上記第1の無機粒子のアスペクト比は、任意に選択された第1の無機粒子を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各無機粒子の長径/短径を測定することにより求められる。上記平均アスペクト比は、任意の50個の第1の無機粒子のアスペクト比を平均することにより求めることができる。任意の50個の第1の無機粒子の平均アスペクト比は、第1の無機粒子全体での平均アスペクト比とほぼ等しくなる。
【0054】
本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、上記第1の無機粒子の粒子径は、1μm以上であることが好ましい。
【0055】
上記第1の無機粒子の粒子径は、無機粒子が真球状である場合には直径を意味し、無機粒子が真球状以外の形状である場合には、無機粒子の体積相当の真球と仮定した際の直径を意味する。
【0056】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記第1の無機粒子の平均粒子径は、好ましくは6μm以上、より好ましくは7μm以上であり、好ましくは20μm未満、より好ましくは18μm以下である。
【0057】
上記第1の無機粒子の平均粒子径は、平均スペクト比が2以下である第1の無機粒子全体の粒子径を平均することにより求められる。
【0058】
上記第1の無機粒子の平均粒子径は、体積基準での粒子径を平均した平均粒子径であることが好ましい。上記第1の無機粒子の平均粒子径は、第1の無機粒子の累積体積が50%であるときの第1の無機粒子の粒子径(d50)であることが好ましい。上記第1の無機粒子の平均粒子径は、堀場製作所社製「レーザー回折式粒度分布測定装置」を用いて測定することができる。上記第1の無機粒子の平均粒子径は、任意に選択された50個の第1の無機粒子を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各無機粒子の粒子径を測定し、平均値を算出することにより求めることもできる。任意の50個の第1の無機粒子の平均粒子径は、第1の無機粒子全体での平均粒子径とほぼ等しくなる。
【0059】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記第1の無機粒子の平均円形度は、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上であり、好ましくは1.00以下である。
【0060】
上記第1の無機粒子の円形度は、上記第1の無機粒子と熱硬化性樹脂等とを混合して作製した積層体断面の電子顕微鏡画像から任意に選択された第1の無機粒子の断面積(S)及び周囲長(L)を測定し、下記の式(1)により算出することができる。上記円形度は円らしさを表す値であり、上記円形度が1に近くなるにつれて、円に近くなることを意味する。
【0061】
円形度=[4πS/L2] 式(1)
【0062】
本発明の効果が効果的に発揮されるので、上記第1の無機粒子の平均円形度は0.90以上であることが好ましい。上記第1の無機粒子の平均円形度は0.90を超えていてもよい。
【0063】
上記第1の無機粒子の平均円形度は、平均アスペクト比が2以下である第1の無機粒子全体の円形度を平均することにより求められる。
【0064】
上記第1の無機粒子の平均円形度は、任意に選択された50個の第1の無機粒子の円形度を平均することにより求めることができる。任意の50個の第1の無機粒子の平均円形度は、第1の無機粒子全体での平均円形度とほぼ等しくなる。
【0065】
上記第1の無機粒子は球状粒子、又は丸み状粒子であることが好ましい。上記第1の無機粒子は球状粒子であってもよく、丸み状粒子であってもよい。ここで、球状粒子とは、上記円形度が0.95以上である粒子を意味する。また、丸み状粒子とは、全体に丸みを帯びた形状であり、結晶の角が少ない粒子を意味し、具体的には、上記円形度が0.70以上、0.90以下である粒子を意味する。上記第1の無機粒子が球状粒子である場合には、放熱シートの流動性を効果的に高めることができる。また、本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、表面近傍付近に球状粒子が存在していると、電界集中の発生を抑制することができ、部分放電の発生を抑制することができる。結果として、放熱シート及び積層体の長期絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。上記第1の無機粒子が丸み状粒子である場合には、放熱シート及び積層体の熱伝導性を効果的に高めることができる。本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、上記第1の無機粒子として、球状粒子のみが用いられてもよく、丸み状粒子のみが用いられてもよく、球状粒子と丸み状粒子とが併用されてもよい。本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、上記第1の無機粒子として、球状粒子と丸み状粒子とを併用することが好ましい。
【0066】
上記第1の無機粒子の材料は特に限定されない。上記第1の無機粒子は、絶縁性フィラーであることが好ましい。上記第1の無機粒子の材料は窒化ホウ素でなくてもよい。上記第1の無機粒子の材料としては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化カルシウム、及び酸化マグネシウム等の金属酸化物、窒化アルミニウム、及び窒化チタン等の金属窒化物、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等の炭酸金属塩、ケイ酸カルシウム等のケイ酸金属塩、水和金属化合物、結晶性シリカ、非結晶性シリカ、窒化ホウ素、炭化ケイ素並びにダイヤモンド等が挙げられる。上記第1の無機粒子の材料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0067】
実使用上の観点、及び熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記第1の無機粒子の材料は、アルミニウム元素又は炭素元素を含むことが好ましい。実使用上の観点、及び熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記第1の無機粒子の材料は、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、又はダイヤモンドであることが好ましく、酸化アルミニウム(アルミナ)、又はダイヤモンドであることがより好ましい。これらの好ましい材料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0068】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記第1の無機粒子の熱伝導率は、好ましくは10W/m・K以上、より好ましくは20W/m・K以上である。上記第1の無機粒子の熱伝導率の上限は特に限定されない。上記第1の無機粒子の熱伝導率は、300W/m・K以下であってもよく、200W/m・K以下であってもよい。上記第1の無機粒子の熱伝導率が、上記の好ましい範囲であると、接着性と絶縁性とを高めることができ、さらに、熱伝導性を高めることができる。
【0069】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記放熱シート100体積%中及び上記絶縁層100体積%中、上記第1の無機粒子の含有量は、好ましくは2体積%以上、より好ましくは3体積%以上であり、好ましくは20体積%以下、より好ましくは17体積%以下である。
【0070】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記放熱シート及び上記絶縁層において、上記第1の無機粒子と上記第2の無機粒子との合計100体積%中、上記第1の無機粒子を30体積%以下で含むことが好ましく、25体積%以下で含むことがより好ましい。上記第1の無機粒子と上記第2の無機粒子との合計100体積%中、上記第1の無機粒子の含有量の下限は特に限定されない。上記第1の無機粒子と上記第2の無機粒子との合計100体積%中、上記第1の無機粒子の含有量は、5体積%以上であってもよく、10体積%以上であってもよい。
【0071】
(第2の無機粒子)
本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体は、第2の無機粒子を含む。上記第2の無機粒子は、絶縁性を有することが好ましい。上記第2の無機粒子は、絶縁性粒子であることが好ましい。上記第2の無機粒子は、例えば、無機フィラーである。上記第2の無機粒子は、絶縁性フィラーであることが好ましい。上記第2の無機粒子として、少なくとも1種類の無機粒子が用いられる。上記第2の無機粒子として、1種類の無機粒子のみが用いられてもよく、2種類以上の無機粒子が併用されてもよい。2種類以上の無機粒子が配合されて、第2の無機粒子が構成されてもよい。ある材料により形成された無機粒子と、上記ある材料とは異なる材料により形成された無機粒子とが混合されて、第2の無機粒子が構成されてもよい。
【0072】
本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、上記第2の無機粒子の平均アスペクト比は、2を超える。熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記第2の無機粒子の平均アスペクト比は、好ましくは4以上、より好ましくは5以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは12以下である。上記第2の無機粒子は、例えば、板状フィラーである。本明細書においては、板状フィラーも、粒子に含まれることとする。
【0073】
上記第2の無機粒子のアスペクト比は、長径/短径を示す。上記第2の無機粒子のアスペクト比は、第2の無機粒子と硬化性樹脂とを混合し、硬化させて作製したシート又は積層体の断面を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、第2の無機粒子の長径/短径を測定することにより求められる。上記平均アスペクト比は、任意の50個の第2の無機粒子のアスペクト比を平均することにより求めることができる。任意の50個の第2の無機粒子の平均アスペクト比は、第2の無機粒子全体での平均アスペクト比とほぼ等しくなる。
【0074】
本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、上記第2の無機粒子の粒子径は、1μm以上であることが好ましい。
【0075】
上記第2の無機粒子の粒子径は、長径であることが好ましい。
【0076】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記第2の無機粒子の平均長径は、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは20μm以下である。
【0077】
上記第2の無機粒子の平均長径は、平均アスペクト比が2を超える第2の無機粒子全体の長径を平均することにより求められる。
【0078】
上記第2の無機粒子の平均長径は、任意に選択された50個の第2の無機粒子を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各無機粒子の長径を測定し、平均値を算出することにより求めることができる。任意の50個の第2の無機粒子の平均長径は、第2の無機粒子全体での平均長径とほぼ等しくなる。また、上記第2の無機粒子の平均長径は、第2の無機粒子と硬化性樹脂とを混合し、硬化させて作製したシート又は積層体の断面を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、任意に選択した50個の第2の無機粒子の長径を測定し、平均値を算出することにより求めることもできる。
【0079】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記第2の無機粒子は、凝集粒子を構成する一次粒子であることが好ましい。本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体は、凝集粒子を含んでいてもよい。上記第2の無機粒子は、凝集粒子ではないことが好ましい。上記凝集粒子としては、例えば、窒化ホウ素凝集粒子等が挙げられる。ここで、上記第2の無機粒子が凝集粒子を構成する一次粒子である場合には、上記平均長径は、上記一次粒子の平均長径を意味する。
【0080】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記第2の無機粒子の材料は、窒化ホウ素であることが好ましい。熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記窒化ホウ素は、凝集粒子であることが好ましい。上記窒化ホウ素としては特に限定されない。上記窒化ホウ素としては、六方晶窒化ホウ素、立方晶窒化ホウ素、ホウ素化合物とアンモニアとの還元窒化法により作製された窒化ホウ素、ホウ素化合物とメラミン等の含窒素化合物とから作製された窒化ホウ素、及び、ホウ水素ナトリウムと塩化アンモニウムとから作製された窒化ホウ素等が挙げられる。熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記窒化ホウ素は、六方晶窒化ホウ素であることが好ましい。
【0081】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記第2の無機粒子の熱伝導率は、好ましくは10W/m・K以上、より好ましくは30W/m・K以上である。上記第2の無機粒子はアスペクト比が比較的大きく、熱伝導率に異方性を有することがあるので、上記第2の無機粒子の熱伝導率は、平均熱伝導率であることが好ましい。上記第2の無機粒子の熱伝導率の上限は特に限定されない。上記第2の無機粒子の熱伝導率は、300W/m・K以下であってもよく、200W/m・K以下であってもよい。上記第2の無機粒子の熱伝導率が、上記の好ましい範囲であると、接着性と絶縁性とを高めることができ、さらに、熱伝導性を高めることができる。
【0082】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記放熱シート100体積%中及び上記絶縁層100体積%中、上記第2の無機粒子の含有量は、好ましくは35体積%以上、より好ましくは40体積%以上であり、好ましくは65体積%以下、より好ましくは60体積%以下である。
【0083】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記放熱シート及び上記絶縁層において、上記第1の無機粒子と上記第2の無機粒子との合計100体積%中、上記第2の無機粒子の含有量は、好ましくは70体積%以上、より好ましくは75体積%以上である。熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記放熱シート及び上記絶縁層において、上記第1の無機粒子と上記第2の無機粒子との合計100体積%中、上記第2の無機粒子の含有量は、好ましくは95体積%以下、より好ましくは90体積%以下である。
【0084】
(粒子径が1μm未満の無機粒子)
本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、粒子径が1μm未満の無機粒子(第3の無機粒子)を含んでいてもよい。本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、上記第1の無機粒子として上記第3の無機粒子を含んでいてもよく、上記第2の無機粒子として上記第3の無機粒子を含んでいてもよく、上記第1の無機粒子及び上記第2の無機粒子として上記第3の無機粒子を含んでいてもよい。熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記放熱シート及び上記積層体は、上記第3の無機粒子を含むことが好ましい。上記第3の無機粒子は、凝集粒子であってもよく、凝集粒子を構成する一次粒子であってもよい。上記第3の無機粒子の材料は特に限定されない。上記第3の無機粒子の材料としては、上述した上記第1の無機粒子の材料及び上記第2の無機粒子の材料等が挙げられる。
【0085】
上記第1の無機粒子、上記第2の無機粒子、及び上記第3の無機粒子は、シランカップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されていてもよい。
【0086】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記第3の無機粒子の粒子径は、1μm未満であることが好ましい。上記第3の無機粒子の粒子径は、上述した上記第1の無機粒子の粒子径又は上記第2の無機粒子の粒子径を算出する方法により求めることができる。
【0087】
本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、上記第3の無機粒子の含有量は特に限定されない。熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記放熱シート100体積%中及び上記絶縁層100体積%中、上記第3の無機粒子の含有量は、好ましくは0.5体積%以上、より好ましくは1体積%以上であり、好ましくは5体積%以下、より好ましくは3体積%以下である。
【0088】
(バインダー樹脂:熱硬化性化合物)
本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体は、バインダー樹脂を含む。上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂としては、公知の絶縁性の樹脂が用いられる。上記バインダー樹脂は、熱可塑性成分(熱可塑性化合物)又は硬化性成分を含むことが好ましく、硬化性成分を含むことがより好ましい。上記硬化性成分としては、熱硬化性成分及び光硬化性成分が挙げられる。上記熱硬化性成分は、熱硬化性化合物及び熱硬化剤を含むことが好ましい。上記光硬化性成分は、光硬化性化合物及び光重合開始剤を含むことが好ましい。上記バインダー樹脂は、熱硬化性成分を含むことが好ましい。上記バインダー樹脂は、熱硬化性化合物と熱硬化剤とを含むことが好ましい。上記熱硬化性成分は、硬化促進剤を含んでいてもよい。上記バインダー樹脂は、硬化促進剤を含んでいてもよい。上記バインダー樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0089】
上記熱硬化性化合物は特に限定されない。上記熱硬化性化合物としては、スチレン化合物、フェノキシ化合物、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0090】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記熱硬化性化合物は、エポキシ化合物を含むことが好ましい。上記エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物である。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0091】
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。
【0092】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記エポキシ化合物は、ビスフェノールA型エポキシ化合物であることが好ましい。
【0093】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記放熱シート100体積%中、上記熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上であり、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下である。熱伝導性をより一層効果的に高める観点、及び接着性と長期絶縁信頼性とをより一層効果的に高める観点からは、上記絶縁層100体積%中、上記熱硬化性化合物に由来する成分の含有量は、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上であり、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下である。
【0094】
(バインダー樹脂:熱硬化剤)
本発明に係る放熱シート及び本発明に係る積層体では、上記熱硬化性化合物とともに熱硬化剤を用いることが好ましい。上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤として、上記熱硬化性化合物を硬化させることができる熱硬化剤を適宜用いることができる。また、本明細書において、熱硬化剤には、硬化触媒が含まれる。熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0095】
上記熱硬化剤としては、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)、フェノール化合物(フェノール熱硬化剤)、アミン化合物(アミン熱硬化剤)、チオール化合物(チオール熱硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、酸無水物、活性エステル化合物及びジシアンジアミド等が挙げられる。上記熱硬化剤は、上記エポキシ化合物のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
【0096】
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
【0097】
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT-30」及び「PT-60」)、及びビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA-230S」、「BA-3000S」、「BTP-1000S」及び「BTP-6020S」)等が挙げられる。
【0098】
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
【0099】
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD-2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEHC-7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH-7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA1356」及び「LA3018-50P」)等が挙げられる。
【0100】
上記放熱シート100体積%中、上記熱硬化性化合物と上記熱硬化剤との合計の含有量は、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上であり、好ましくは50体積%以下、より好ましくは45体積%以下である。上記絶縁層100体積%中、上記熱硬化性化合物と上記熱硬化剤とに由来する成分の合計の含有量は、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上であり、好ましくは50体積%以下、より好ましくは45体積%以下である。上記の合計の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、熱伝導性をより一層効果的に高めることができ、接着性をより一層効果的に高めることができる。上記熱硬化性化合物と上記熱硬化剤との含有量比は、熱硬化性化合物が硬化するように適宜選択される。
【0101】
上記熱硬化性化合物が良好に硬化するように、上記熱硬化剤の含有量は適宜選択される。上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上であり、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下である。上記熱硬化剤の含有量が、上記下限以上であると、熱硬化性化合物を十分に硬化させることがより一層容易になる。上記熱硬化剤の含有量が、上記上限以下であると、硬化に関与しない余剰な熱硬化剤が発生し難くなる。このため、硬化物の耐熱性及び接着性がより一層高くなる。
【0102】
(他の成分)
上記放熱シートは、上述した成分の他に、硬化促進剤、分散剤、キレート剤、酸化防止剤等の樹脂シート、及び硬化性シートに一般に用いられる他の成分を含んでいてもよい。また、上記放熱シートは、放熱シート等の成形性を向上させるためにポリマー成分を含んでいてもよい。上記ポリマー成分としては、ポリイミド等が挙げられる。また、上記放熱シートは、溶剤を含んでいてもよい。放熱シート等におけるボイドの発生をより一層抑制する観点からは、上記放熱シート100重量%中の上記溶剤の含有量は、5重量%以下であることが好ましい。
【0103】
(放熱シートの他の詳細)
上記放熱シートの製造方法は、上記第1の無機粒子と、上記第2の無機粒子と、上記バインダー樹脂とを配合する工程を備える。上記工程において、上記第1の無機粒子と、上記第2の無機粒子と、上記バインダー樹脂とを配合する方法は、従来公知の混合方法を用いることができ、特に限定されない。上記第1の無機粒子と、上記第2の無機粒子と、上記バインダー樹脂とを配合する方法としては、ホモディスパー型攪拌機で混練する方法等が挙げられる。
【0104】
(積層体の他の詳細)
本発明に係る積層体は、熱伝導体と、絶縁層と、導電層とを備える。上記絶縁層は、上記熱伝導体の一方の表面に積層されている。上記導電層は、上記絶縁層の上記熱伝導体とは反対側の表面に積層されている。上記熱伝導体の他方の表面にも、上記絶縁層が積層されていてもよい。本発明に係る積層体では、上記絶縁層の材料は、上述した放熱シートである。本発明に係る積層体では、上記絶縁層は、上述した放熱シートの硬化物であることが好ましい。上記硬化物は、上記放熱シートをプレス等を用いて加熱及び加圧処理をすることにより得られてもよい。
【0105】
熱伝導体:
上記熱伝導体の熱伝導率は、好ましくは10W/m・K以上である。上記熱伝導体としては、適宜の熱伝導体を用いることができる。上記熱伝導体は、金属材を用いることが好ましい。上記金属材としては、金属箔及び金属板等が挙げられる。上記熱伝導体は、上記金属箔又は上記金属板であることが好ましく、上記金属板であることがより好ましい。
【0106】
上記金属材の材料としては、アルミニウム、銅、金、銀、及びグラファイトシート等が挙げられる。熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記金属材の材料は、アルミニウム、銅、又は金であることが好ましく、アルミニウム又は銅であることがより好ましい。
【0107】
導電層:
上記導電層を形成するための金属は特に限定されない。上記金属としては、例えば、金、銀、パラジウム、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素、タングステン、モリブデン及びこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、アルミニウム、銅又は金であることが好ましく、アルミニウム又は銅であることがより好ましい。
【0108】
上記導電層を形成する方法は特に限定されない。上記導電層を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、並びに、上記絶縁層と金属箔とを加熱圧着する方法等が挙げられる。導電層の形成が簡便であるので、上記絶縁層と金属箔とを加熱圧着する方法が好ましい。
【0109】
図1は、本発明の一実施形態に係る放熱シートを模式的に示す断面図である。なお、
図1では、図示の便宜上、実際の大きさ及び厚みとは異なっている。
【0110】
図1に示す放熱シート1は、第1の無機粒子11と、第2の無機粒子12と、バインダー樹脂13とを含む。第1の無機粒子11は上述した第1の無機粒子であることが好ましく、第2の無機粒子12は上述した第2の無機粒子であることが好ましい。
【0111】
本実施形態に係る放熱シート1は、一方の表面(第1の表面)1aと、他方の表面(第2の表面)1bとを有する。本実施形態に係る放熱シート1では、第1の表面1aから第2の表面1bに向かって厚み15%の領域の100体積%中において、第2の無機粒子12の含有量は、第1の無機粒子11の含有量よりも多い。本実施形態に係る放熱シート1では、上記厚み15%の領域の100体積%中における第1の無機粒子11の含有量が、第1の表面1aから第2の表面1bに向かう厚みの15/100の位置から厚みの85/100の位置までの厚み70%の領域の100体積%中における第1の無機粒子11の含有量よりも多い。
【0112】
本発明に係る放熱シートでは、上記第2の表面から上記第1の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中において、上記第2の無機粒子の含有量は、上記第1の無機粒子の含有量よりも多いことが好ましい。本発明に係る放熱シートでは、上記厚み15%の領域の100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量は、上記第1の表面から上記第2の表面に向かう厚みの15/100の位置から厚みの85/100の位置までの厚み70%の領域の100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量よりも多いことが好ましい。
【0113】
本実施形態に係る放熱シート1では、バインダー樹脂13は、熱硬化性化合物と熱硬化剤とを含むことが好ましい。上記バインダー樹脂は、完全に硬化していないことが好ましい。上記バインダー樹脂は、加熱等によりBステージ化していてもよい。上記バインダー樹脂は、Bステージ化させたBステージ化物であってもよい。
【0114】
図2は、本発明の一実施形態に係る放熱シートを用いて得られる積層体を模式的に示す断面図である。なお、
図2では、図示の便宜上、実際の大きさ及び厚みとは異なっている。
【0115】
図2に示す積層体21は、絶縁層22と、導電層23と、熱伝導体24とを備える。絶縁層22、導電層23及び熱伝導体24は、上述した絶縁層、導電層及び熱伝導体である。
図2では、絶縁層22として、
図1に示す放熱シート1が用いられている。
【0116】
絶縁層22は、一方の表面(第1の表面)22aと、他方の表面(第2の表面)22bとを有する。導電層23は、一方の表面(第1の表面)23aと、他方の表面(第2の表面)23bとを有する。絶縁層24は、一方の表面(第1の表面)24aと、他方の表面(第2の表面)24bとを有する。
【0117】
絶縁層22の一方の表面(第1の表面)22a側に、導電層23が積層されている。絶縁層22の他方の表面(第2の表面)22b側に、熱伝導体24が積層されている。導電層23の他方の表面(第2の表面)23b側に、絶縁層22が積層されている。熱伝導体24の一方の表面(第1の表面)24a側に、絶縁層22が積層されている。導電層23と熱伝導体24との間に絶縁層22が配置されている。
【0118】
上記積層体の製造方法は、特に限定されない。上記積層体の製造方法としては、上記熱伝導体と、上記絶縁層と、上記導電層とを積層し、真空プレス等により加熱圧着する方法等が挙げられる。プレス時は必ずしも真空でなくてもよい。
【0119】
本実施形態に係る積層体21では、絶縁層22は、平均アスペクト比が2以下である第1の無機粒子11と、平均アスペクト比が2を超える第2の無機粒子12と、硬化物部25とを含む。絶縁層22は、
図1に示す放熱シート1により形成されている。上記絶縁層は、上述した放熱シートを真空プレス等により加熱圧着することにより形成されることが好ましい。
【0120】
本実施形態に係る積層体21では、絶縁層22の第1の表面22aから第2の表面22bに向かって厚み15%の領域の100体積%中において、第2の無機粒子12の含有量は、第1の無機粒子11の含有量よりも多い。絶縁層22の第1の表面22aから第2の表面22bに向かう厚みの15/100の位置から厚みの85/100の位置までの厚み70%の領域を中央の領域とする。本実施形態に係る積層体21では、絶縁層22の第1の表面22aから第2の表面22bに向かって厚み15%の領域の100体積%中における第1の無機粒子11の含有量が、絶縁層22の上記中央の領域の100体積%中における第1の無機粒子11の含有量よりも多い。
【0121】
本発明に係る積層体では、上記絶縁層の上記第2の表面から上記第1の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中において、上記第2の無機粒子の含有量は、上記第1の無機粒子の含有量よりも多いことが好ましい。上記絶縁層の上記第1の表面から上記第2の表面に向かう厚みの15/100の位置から厚みの85/100の位置までの厚み70%の領域を中央の領域とする。本発明に係る積層体では、上記絶縁層の上記第2の表面から上記第1の表面に向かって厚み15%の領域の100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量は、上記絶縁層の上記中央の領域の100体積%中における上記第1の無機粒子の含有量よりも多いことが好ましい。
【0122】
本実施形態において、硬化物部25は、
図1におけるバインダー樹脂13が硬化した部分である。硬化物部25は、バインダー樹脂13を硬化させることにより得られる。硬化物部25は、熱硬化性化合物及び熱硬化剤を含むバインダー樹脂が硬化した部分であってもよい。
【0123】
上記放熱シートは、熱伝導性及び機械的強度等が高いことが求められる様々な用途に用いることができる。上記積層体は、例えば、電子機器において、発熱部品と放熱部品との間に配置されて用いられる。例えば、上記積層体は、CPUとフィンとの間に設置される放熱体、又は電気自動車のインバーター等で利用されるパワーカードの放熱体として用いられる。また、上記積層体の導電層をエッチング等の手法により回路形成することで、上記積層体を絶縁回路基板として用いることができる。
【0124】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0125】
バインダー樹脂(熱硬化性化合物):
(1)三菱化学社製「エピコート828US」、エポキシ化合物
(2)日本化薬社製「NC-3000」、エポキシ化合物
(3)DIC社製「HP-4032D」、ナフタレン型エポキシ化合物
【0126】
バインダー樹脂(熱硬化剤):
(1)東京化成工業社製「ジシアンジアミド」
(2)四国化成工業社製「2MZA-PW」、イソシアヌル変性固体分散型イミダゾール
(3)シアネートエステル化合物含有液(ロンザジャパン社製「BA-3000S」、固形分75重量%)、実施例には固形分量を記載。
【0127】
バインダー樹脂(硬化促進剤):
(1)イミダゾール化合物(2-フェニル-4-メチルイミダゾール、四国化成工業社製「2P4MZ」、アニオン性硬化促進剤)
【0128】
無機粒子:
(1)昭和電工社製「AS-50」、平均粒子径9μm、平均アスペクト比1.2(平均アスペクト比は2以下)、平均円形度0.78、熱伝導率30W/m・K、酸化アルミニウム
(2)マイクロン社製「AX10-75」、平均粒子径8μm、平均アスペクト比1.0(平均アスペクト比は2以下)、平均円形度0.99、熱伝導率30W/m・K、酸化アルミニウム
(3)昭和電工社製「CB-P05」、平均粒子径4μm、平均アスペクト比1.0(平均アスペクト比は2以下)、平均円形度0.99、熱伝導率30W/m・K、酸化アルミニウム
(4)昭和電工社製「CB-P15」、平均粒子径16μm、平均アスペクト比1.0(平均アスペクト比は2以下)、平均円形度0.99、熱伝導率30W/m・K、酸化アルミニウム
(5)昭和電工社製「AS-30」、平均粒子径18μm、平均アスペクト比1.2(平均アスペクト比は2以下)、平均円形度0.78、熱伝導率30W/m・K、酸化アルミニウム
(6)昭和電工社製「CB-A40」、平均粒子径40μm、平均アスペクト比1.0(平均アスペクト比は2以下)、円形度0.99、熱伝導率30W/m・K、酸化アルミニウム
(7)モメンティブ社製「PTX25」、平均長径7μm、平均アスペクト比12(平均アスペクト比は2を超える)、熱伝導率60W/m・K、窒化ホウ素凝集粒子
(8)昭和電工社製「UHP-G1H」、平均長径4μm、平均アスペクト比7(平均アスペクト比は2を超える)、熱伝導率60W/m・K、窒化ホウ素凝集粒子
(9)モメンティブ社製「PTX60」、平均長径7μm、平均アスペクト比12(平均アスペクト比は2を超える)熱伝導率60W/m・K、窒化ホウ素凝集粒子
(10)水島合金鉄社製「HP-40」、平均長径7μm、平均アスペクト比7(平均アスペクト比は2を超える)、熱伝導率60W/m・K、窒化ホウ素凝集粒子
(11)モメンティブ社製「PT110」、平均長径45μm、平均アスペクト比9.5(平均アスペクト比は2を超える)、熱伝導率60W/m・K、窒化ホウ素
(12)モメンティブ社製「PT100」、平均長径13μm、平均アスペクト比16(平均アスペクト比は2を超える)、熱伝導率60W/m・K、窒化ホウ素
【0129】
(無機粒子の平均アスペクト比)
無機粒子の平均アスペクト比を以下のようにして測定した。
【0130】
無機粒子の平均アスペクト比の測定方法:
無機粒子と硬化性樹脂とを混合し、硬化させて作製したシート又は積層体の断面を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、任意に選択された50個の各無機粒子の長径/短径を測定し、平均値を算出することにより求めた。
【0131】
(無機粒子の平均粒子径)
無機粒子の平均粒子径を以下のようにして測定した。
【0132】
無機粒子の平均粒子径の測定方法:
堀場製作所社製「レーザー回折式粒度分布測定装置」を用いて測定し、無機粒子の累積体積が50%であるときの無機粒子の粒子径(d50)の値を算出した。
【0133】
(無機粒子の平均長径)
無機粒子の平均長径を以下のようにして測定した。
【0134】
無機粒子の平均長径の測定方法:
無機粒子と硬化性樹脂とを混合し、硬化させて作製したシート又は積層体の断面を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、任意に選択した50個の無機粒子の長径を測定し、平均値を算出した。
【0135】
(実施例1,2,4~7,8~10,13)
(1)硬化性材料A及びBの作製
三菱化学社製「エピコート828US」100重量部に対して、東京化成工業社製「ジシアンジアミド」10重量部、四国化成工業社製「2MZA-PW」1重量部となるように配合した。次に、下記の表1~3に示す無機粒子を下記の表1~3に示す配合量(体積%)で配合し、遊星式攪拌機を用いて500rpmで25分間攪拌することにより、硬化性材料A及びBを得た。
【0136】
(2)積層体の作製
得られた硬化性材料Aを離型PETシート(厚み50μm)上に、厚み100μmになるように塗工し、50℃のオーブン内で10分間乾燥して第1の硬化性材料層を形成し、第1の放熱シートを得た。次に、得られた硬化性材料Bを離型PETシート(厚み50μm)上に、厚み300μmとなるように塗工し、50℃のオーブン内で10分間乾燥して第2の硬化性材料層を形成し、第2の放熱シートを得た。得られた2枚の第1,第2の放熱シートを重ねて、放熱シートを得た。得られた放熱シートは、第1の硬化性材料層が形成されている第1の表面と、第2の硬化性材料層が形成されている第2の表面とを有する。
【0137】
その後、離型PETシートを剥がして、放熱シートの第1の表面に銅箔を積層し、放熱シートの第2の表面にアルミニウム板を積層して、温度200℃、圧力12MPaの条件で真空プレスすることにより積層体を作製した。得られた積層体の、放熱シートを硬化させることにより形成された絶縁層の厚みは200μmであった。
【0138】
(実施例3)
実施例1と同様にして、硬化性材料A及びBを得た。得られた硬化性材料Aを離型PETシート(厚み50μm)上に、厚み50μmになるように塗工し、50℃のオーブン内で20分間乾燥して第1の硬化性材料層を形成し、第1の放熱シートを得た。次に、得られた硬化性材料Bを離型PETシート(厚み50μm)上に、厚み300μmとなるように塗工し、50℃のオーブン内で20分間乾燥して第2の放熱シートを形成した。さらに、得られた硬化性材料Aを離型PETシート(厚み50μm)上に、厚み50μmになるように塗工し、50℃のオーブン内で20分間乾燥して第3の硬化性材料層を形成し、第3の放熱シートを得た。得られた3枚の第1,第2,第3の放熱シートを、第1の放熱シートと第3の放熱シートとで第2の放熱シートを挟むようにセットした。第1の放熱シートと第3の放熱シートとがそれぞれ銅箔とアルミニウム板に接するように、第1,第2,第3の放熱シートが重ねられた放熱シートを、銅箔とアルミミニウム板で挟んだ。得られた放熱シートは、第1の硬化性材料層が形成されている第1の表面と、第3の硬化性材料層が形成されている第2の表面とを有する。
【0139】
その後、離型PETシートを剥がして、放熱シートの第1の表面に銅箔を積層し、放熱シートの第2の表面にアルミニウム板を積層して、温度200℃、圧力12MPaの条件で真空プレスすることにより積層体を作製した。得られた積層体の、放熱シートを硬化させることにより形成された絶縁層の厚みは200μmであった。
【0140】
(実施例11)
日本化薬社製「NC-3000」100重量部に対し、DIC社製「HP-4032D」50重量部、シアネートエステル化合物含有液「BA3000-S」150重量部、イミダゾール化合物「2P4MZ」0.3重量部となるように配合した。次に、下記の表3に示す無機粒子を下記の表3に示す配合量(体積%)で配合し、遊星式攪拌機を用いて500rpmで25分間攪拌することにより、硬化性材料A及びBを得た。
【0141】
得られた硬化性材料A及びBを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。得られた積層体の、放熱シートを硬化させることにより形成された絶縁層の厚みは200μmであった。
【0142】
(実施例12)
実施例1同様にして、硬化性材料Aを作製した。また、日本化薬社製「NC-3000」100重量部に対し、DIC社製「HP-4032D」50重量部、シアネートエステル化合物含有液「BA3000-S」150重量部、イミダゾール化合物「2P4MZ」0.3重量部となるように配合した。次に、下記の表3に示す無機粒子を下記の表3に示す配合量(体積%)で配合し、硬化性材料Bを得た。
【0143】
得られた硬化性材料A及びBを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。得られた積層体の、放熱シートを硬化させることにより形成された絶縁層の厚みは200μmであった。
【0144】
(実施例14)
実施例1同様にして、硬化性材料Aを作製した。また、日本化薬社製「NC-3000」100重量部に対し、DIC社製「HP-4032D」50重量部、シアネートエステル化合物含有液「BA3000-S」150重量部、イミダゾール化合物「2P4MZ」0.3重量部となるように配合した。次に、下記の表3に示す無機粒子を下記の表3に示す配合量(体積%)で配合し、硬化性材料Bを得た。
【0145】
得られた硬化性材料A及びBを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、積層体を作製した。得られた積層体の、放熱シートを硬化させることにより形成された絶縁層の厚みは200μmであった。
【0146】
(比較例1~5)
硬化性材料A及びBの作製の際に、硬化性材料A及びBの無機粒子の配合量を表4に示す配合量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。得られた積層体の、放熱シートを硬化させることにより形成された絶縁層の厚みは200μmであった。
【0147】
(評価)
(1)第1の無機粒子及び第2の無機粒子の有無
得られた硬化性材料Aにおいて、第1の無機粒子及び第2の無機粒子が配合されているか否かを確認した。第1の無機粒子及び第2の無機粒子の有無を以下の基準で判定した。
【0148】
[第1の無機粒子及び第2の無機粒子の有無の判定基準]
○:硬化性材料A中に、第1の無機粒子及び第2の無機粒子が配合されている
×:硬化性材料A中に、第1の無機粒子又は第2の無機粒子が配合されていない
【0149】
(2)第1の無機粒子及び第2の無機粒子の含有量
得られた積層体の断面をクロスセクションポリッシャー(日本電子社製「IB-19500CP」)にて平滑に加工し、加工後の積層体の断面を電界放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製「S-4800」)で観察した。エネルギー分散型X線分光器(日立ハイテクノロジーズ社製「S-4800EN-EDS」)により第1の無機粒子及び第2の無機粒子を特定した。
【0150】
得られた電子顕微鏡画像から、放熱シートの第1の表面から第2の表面に向かって厚み15%の領域(R1)の100体積%中における第1の無機粒子の含有量(領域(R1)100体積%中の第1の無機粒子及び第2の無機粒子の含有量)を算出した。また、放熱シートの第1の表面から第2の表面に向かう厚みの15/100の位置から厚みの85/100の位置までの厚み70%の領域(R領域2)の100体積%中における上記第1の無機粒子((領域R2)100体積%中の第1の無機粒子及び第2の無機粒子の含有量)を算出した。さらに、放熱シートの第2の表面から第1の表面に向かって厚み15%の領域(R3)の100体積%中における第1の無機粒子の含有量((R3)100体積%中の第1の無機粒子及び第2の無機粒子の含有量)を算出した。
【0151】
(3)熱伝導率
得られた積層体を1cm角にカットした後、両面にカーボンブラックをスプレーすることで測定サンプルを作製した。得られた測定サンプルを用いて、レーザーフラッシュ法により熱伝導率を算出した。熱伝導率は、比較例1の値を1.0とした相対値を算出し、以下の基準で判定した。
【0152】
[熱伝導率の判定基準]
○○:熱伝導率が1.5以上
○:熱伝導率が1.1を超え1.5未満
×:比較例1(1.0)、又は熱伝導率が比較例1(1.0)と同等(同等とは、0.9倍から1.1倍の範囲を意味する)
【0153】
(4)90度ピール強度(引きはがし強さ)
得られた積層体を50mm×120mmの大きさに切り出して、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルの中央幅10mmの銅箔が残るように銅箔を剥がし、中央幅10mmの銅箔に対して、JIS C 6481に準拠して、銅箔の引きはがし強さを測定した。ピール強度測定装置としては、オリエンテック社製「テンシロン万能試験機」を用いた。20個のテストサンプルについて、銅箔の引きはがし強さを測定した。20個のテストサンプルにおける銅箔の引きはがし強さの測定値の平均値を、90度ピール強度とした。90度ピール強度は、比較例1の値を1.0とした相対値を算出し、以下の基準で判定した。
【0154】
[90度ピール強度(引きはがし強さ)の判定基準]
○○:90度ピール強度が1.2以上
○:90度ピール強度が1.0を超え1.2未満
△:比較例1(1.0)
×:90度ピール強度が1.0未満
【0155】
(5)絶縁破壊強度
得られた積層体における銅箔をエッチングすることにより、直径2cmの円形に銅箔をパターニングして、テストサンプルを得た。耐電圧試験機(ETECH Electronics社製「MODEL7473」)を用いて、テストサンプル間に0.33kV/秒の速度で電圧が上昇するように、温度25℃にて交流電圧を印加した。テストサンプルに10mAの電流が流れた電圧を絶縁破壊電圧とした。絶縁破壊電圧をテストサンプルの厚みで除算することで規格化し、絶縁破壊強度を算出した。絶縁破壊強度を以下の基準で判定した。
【0156】
[絶縁破壊強度の判定基準]
○○:60kV/mm以上
○:30kV/mm以上60kV/mm未満
×:30kV/mm未満
【0157】
(6)長期絶縁信頼性
上記の(5)と同様にして、20個のテストサンプルを得た。得られた20個のテストサンプルを用いて、テストサンプル間に3kVの交流電圧を、温度85℃及び湿度85%の環境下で1000時間印加して、絶縁破壊が発生するか否かを評価した。長期絶縁信頼性を以下の基準で判定した。
【0158】
[長期絶縁信頼性の判定基準]
○○:絶縁破壊が発生したテストサンプルが0個
○:絶縁破壊が発生したテストサンプルが1個以上3個未満
△:絶縁破壊が発生したテストサンプルが3個以上1W0個未満
×:絶縁破壊が発生したテストサンプルが10個以上
【0159】
結果を下記の表1~4に示す。
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【符号の説明】
【0164】
1…放熱シート
1a…一方の表面(第1の表面)
1b…他方の表面(第2の表面)
11…第1の無機粒子
12…第2の無機粒子
13…バインダー樹脂
21…積層体
22…絶縁層
22a…一方の表面(第1の表面)
22b…他方の表面(第2の表面)
23…導電層
23a…一方の表面(第1の表面)
23b…他方の表面(第2の表面)
24…熱伝導体
24a…一方の表面(第1の表面)
24b…他方の表面(第2の表面)
25…硬化物部(バインダー樹脂が硬化した部分)