(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】工作機械及びマイクロファクトリ
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/48 20060101AFI20220621BHJP
B23Q 39/04 20060101ALI20220621BHJP
B23P 23/00 20060101ALN20220621BHJP
【FI】
B23Q1/48 F
B23Q39/04 Z
B23P23/00 A
(21)【出願番号】P 2018551773
(86)(22)【出願日】2017-04-19
(86)【国際出願番号】 IB2017052248
(87)【国際公開番号】W WO2017182963
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-01-16
(32)【優先日】2016-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】318013307
【氏名又は名称】オート・エコール・アルク
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】ジャンラ・クロード
(72)【発明者】
【氏名】ドローズ・ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ・クリストフ
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/111070(WO,A2)
【文献】特開平10-277857(JP,A)
【文献】中国実用新案第201186387(CN,Y)
【文献】特開2003-324897(JP,A)
【文献】特開2009-255239(JP,A)
【文献】特開2011-025354(JP,A)
【文献】特開2013-158908(JP,A)
【文献】実開昭57-130561(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/48 - 1/64
B23Q 39/04
B23P 23/00
H02K 5/00 - 5/26
H02K 9/00 - 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
第1の並進運動の軸線に沿って、及び前記第1の並進運動の軸線に対して垂直な第2の並進運動の軸線に沿って、前記フレームに対して相対的に工具ホルダスピンドルを変位可能な可動式の工具ホルダアセンブリであって、前記第2の並進運動の軸線が、前記第1の並進運動の軸線に対して相対的に+40°から+50°の角度を形成する平面においてスライド部を備えている、前記工具ホルダアセンブリと、
前記第1の並進運動の軸線及び前記第2の並進運動の軸線に対して垂直な第3の並進運動の軸線に沿って、並びに前記第3の並進運動の軸線に対して平行な第1の回転軸線周りに、及び該第1の回転軸線に対して垂直な第2の回転軸線周りに前記フレームに対して相対的に部材を変位可能な可動式の部材ホルダアセンブリと
を備え、
前記フレーム及び前記各アセンブリを介して前記部材を工具へ接続する精密経路の長さが1000mmより短い、
少なくとも5軸を有す
る工作機械において、
前記第1の回転軸線のモータが前記第3の並進運動の軸線に沿って可動であって、
前記第1の回転軸線の前記モータを収容するキャリッジを備え、
前記キャリッジが、
前記モータを収容しかつ冷却する、リブを有するパッシブな冷却手段を備えて設けられているシリンダと、
前記シリンダの周囲の透かし彫りケージとを備えていて、
前記ケージ及び前記シリンダが、単一の鋳造部材で形成されていて、
前記ケージと前記シリンダの間の接触面が、前記モータから前記ケージへの伝熱を最小限にするために10cm
2
よりも小さい、
工作機械。
【請求項2】
前記第2の回転軸線のモータが前記第3の並進運動の軸線に沿っていることと、前記第1の回転軸線の周りに可動である
、請求項
1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記第2の回転軸線の前記モータのための支持部を備え、前記支持部が、前記第1の回転軸線の前記モータの軸線に取り付けられている
、請求項
2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記第3の並進運動の軸線が、水平な第1の平面においてスライド部を備え、
前記第1の平面と前記第1の回転軸線の間の前記第1の並進運動の軸線に沿った間隔が10cmより小さく、
前記第1の並進運動の軸線が、垂直な第2の平面においてスライド部を備えて、
前記第2の平面におけるこれらスライド部の下端部と前記第1の平面の間の前記第1の並進運動の軸線に沿った間隔(d2)が10cmより小さい
、請求項
1に記載の工作機械。
【請求項5】
前記工具ホルダスピンドルの軸線と前記第2の平面の間の、前記第1の並進運動の軸線に対して垂直な間隔が10cmより小さい
、請求項
4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記スピンドルの前記軸線と前記第1の平面における前記スライド部の端部の間の、前記第1の並進運動の軸線に対して垂直な間隔が10cmより小さい
、請求項
5に記載の工作機械。
【請求項7】
前記可動式の工具ホルダアセンブリが、50000から100000rpmの間の回転速度で前記工具ホルダスピンドルを回転させるように設定するように構成されたアクチュエータを備える
、請求項
1に記載の工作機械。
【請求項8】
前記工作機械が、前記部材を機械加工するために動作可能に位置決めされている場合に、前記第1の並進運動の軸線が垂直方向へ向けられ、前記第2の並進運動の軸線が水平方向へ向けられ、前記第3の並進運動の軸線が水平方向に向けられている
、請求項
1に記載の工作機械。
【請求項9】
互いの頂部に重ねられた、請求項
1に記載の複数の工作機械を備える
、マイクロファクトリ。
【請求項10】
互いに対して並置された、請求項
1に記載の複数の工作機械を備える
、請求項
9に記載のマイクロファクトリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5軸工作機械と、この5軸工作機械を製造するための方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の工作機械、特に数値制御(CNC)工作機械の機械加工精度は、特にその剛性に依存し、非常に剛直であり、したがって非常に重い(工作)機械は、特にミクロンに及ぶ精度である必要がある場合に、高度な精度で部材を機械加工するために用いられる。
【0003】
しかしながら、このような機械は、コストがかかるとともにかさばるものである。このような機械を構成する大きな部材は、機械を空調する必要があるほど著しく膨張する。大きい寸法のこれら部材は、比較的低く、機械加工プロセスを妨害し、一般的には非常に重いフレーム及び支持部材を用いて減衰される必要がある固有周波数を有している。さらに、可動式の部材のかなりの量は、高速での加速又は方向転換の可能性を制限するかなりの慣性を部材へ提供する。したがって、高速での湾曲した表面の機械加工の能力が制限されている。
【0004】
より小さく、作業台に配置可能であるか、又はケース内へ入れられることが可能な工作機械も知られている。しかしながら、剛性の欠如及びこれら機械の単独使用により、精密な機械加工も、高いレベルのフレキシビリティも可能でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、公知の工作機械の制限を有さない工作機械を提供することにある。
【0006】
別の目的は、非常に小さなエネルギー消費を有する工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、これら目的は、特に、非常に高速での、及び非常に高いレベルの精度での機械加工の場合に、しばしば膨張によるエラーが剛性による問題よりも重大であることを監視することによって達成される。
【0008】
この監視に基づき、本発明の目的は、本質的に膨張の問題が改善される機械を生産することにある。
【0009】
この目的を達成するために、本発明は、特に、力ループとも呼ばれる「精密経路」の長さを縮小することを目指すものである。精密経路は、機械加工されるべき部材を剛直な部材、特に構造上剛性があり軽量な、機械の軸線の構造を形成する部材を通して工具に接続する経路の長さである。この経路が短くなればなるほど、膨張はより重大でなくなるとともにより不都合でなくなる。
【0010】
この経路を短縮することで、可動の部材の体積の低減、フレームの体積の低減、したがって剛性のロスの低減が必然的に生じる。したがって、本発明の目的の1つは、必要以上に剛性を損なうことなくこの経路を短縮できる構造を提供することにある。
【0011】
本発明のやや矛盾した目的は、特に、請求項1の要素を含む工作機械を用いて達成される。
【0012】
特許請求される工作機械は、特に、小さな部材、例えば80mmより小さな、好ましくは50mmより小さな最大寸法を有する部材の機械加工に適している。小さな部材の機械加工に限定することで、精度に影響を与える精密経路と、部材の長さと、その膨張とに起因して、よりコンパクトで、とりわけより応答性がよくより精緻な機械を生産することができる。
【0013】
剛性を向上させ、幾何形状エラーの作用を最小化するために、片持ち式の要素の長さを低減することが効率的であることが観察された。スライド部における数ミクロンの表面エラー(誤差)は、当該スライド部に沿って変位するキャリッジが大きな寸法を有していると増幅される。
【0014】
特許請求された構造により、軸線間の空間又は角度間隔を工具と部材の間で実質的に同等な態様で分配することができ、これにより、それぞれ個別の軸線の構造上の影響を低減することができる。
【0015】
例えば、第1の軸線と第2の軸線Xの平面の間の角度は45°であり、この平面と第3の軸線Yの間の角度もやはり45°である。第3の軸線Yと回転軸線Cの間の角度は90°であり、第1の回転軸線は、YとCの間のセグメントに配置されている。
【0016】
機械加工されるべき部材へ向けて軸線が収束する軸線の空間構成(力の三角形)により、機械加工エラーを低減することができる。なぜなら、この特別な構成により、幾何形状エラーの累積及び/又は軸線の構造の熱膨張が防止されるためである。
【0017】
5:1の割合は、機械の軸線の構造とこの機械が機械加工する部材の間、特に部材の機械加工可能な体積と機械の軸線の構造の間(すなわち可動式の部材ホルダの各可動な要素を有する機械の体積と中央位置における可動式の部材ホルダアセンブリの間)で規定されている。
【0018】
空間についての増加は、従来の機械に比して少なくとも3~5倍である。
【0019】
剛性を増大させるために、2つの可動式のアセンブリ及びフレームを介して部材に工具を接続する精密経路の長さは、600mmより短い。
【0020】
この精密経路の形状は、実質的に半だ円を形成しており、すなわち、軸線bと第1の軸線のスライド部の下端部の間の垂直方向の最大の距離も、できる限り低減されるが、それにもかかわらず軸線Zとスライド部の水平方向の端部Yの間の水平方向な間隔よりも大きい。このたまご状の形状により、アセンブリの剛性を増大させることが可能である。
【0021】
可動の部材の質量を低減することで、エネルギー効率が改善される。典型的には、従来の工作機械は、10~20kWの設定された電力を有しており、同等の機械加工速度における350~500Wは、特許請求された機械に対して十分である。
【0022】
エネルギーについての目標とする増加は、従来の機械に比して少なくとも10倍である。機械加工性の損失は予想され得ない。
【0023】
このエネルギー効率により、機械は、重大な程度まで加熱されない。また、膨張の影響も受けにくい。したがって、この機械を空調する必要がない。
【0024】
空冷(自然又は強制)を行うことは可能である。
【0025】
可動の質量の低減により、個の質量の慣性を低減することができ、したがって、コーナ部の周りにおいて、又は行程の終端において、工具を減速させる必要なく一定の速度で動作させることが可能である。
【0026】
可動の質量の重さは、好ましくは10kgより小さい。
【0027】
20m/分以上の機械加工速度は、0.5mmの曲率半径において得られる。
【0028】
工具の2.5Gの加速度が得られる。
【0029】
事実上一定の速度でのこの機械加工により、機械加工された部材の表面品質を改善することができるとともに、工具の耐用年数の長さを延長することが可能である。
【0030】
機械の軸線及びスライド部は、摩擦を低減するように最適化されている。したがって、ノイズも大幅に低減されている。
【0031】
機械の体積の低減により、作業場における必要空間を低減することができ、したがって、工場のスペースについての必要性を低減することができる。
【0032】
提案された工作機械は、特に、50000rpmより大きく、好ましくは100000rpmまでの回転速度に設定されたスピンドルを用いる高速機械加工(HSM)に適したものである。
【0033】
したがって、潤滑の必要性が低減されるか、又は省略される。
【0034】
可動の質量の小さなサイズによって、軸線の構造における固有振動数を、機械加工プロセスを阻害しない大きな値へ押し戻す(変更する)ことが可能である。この幾何形状及び寸法により、250Hz以上の振動数を得ることができる。
【0035】
本発明の主題は、工作機械の数を増大させるために工作機械のサイズを低減することから恩恵を受けることができるマイクロファクトリである。
【0036】
本発明の主題は、高速機械加工HSMのための方法でもある。
【0037】
添付の図面に図示された本発明の例示的な実施例を以下の説明において示す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明による、5軸を有する工作機械1を示す図である。
【
図2】本発明による、5軸を有する工作機械1を示す図である。
【
図3】本発明による、5軸を有する工作機械1を示す図である。
【
図4】本発明による、5軸を有する工作機械1を示す図である。
【
図7】複数の工作機械を含むマイクロファクトリを示す図である。
【
図8】複数の工作機械を含むマイクロファクトリを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1~
図4には、本発明による、5軸を有する工作機械1が図示されている。
【0040】
工作機械1は、この機械1を介してオペレータが機械加工を行うことができるように、テーブル又は機械加工ワーク台のような作業面上での操作のための機械1を位置決めするためにフレーム3を含んでいる。機械1は、工具ホルダスピンドル7をフレームに対して相対的に変位させることができる可動式の工具ホルダアセンブリ5と、部材150を切削加工しフレームに対して相対的に変位させることができる可動式の部材ホルダアセンブリ11とを含んでいる。
【0041】
可動式の工具ホルダアセンブリ5は、第1の並進運動の軸線(Z)及びこの第1の軸線に垂直な第2の並進運動の軸線(X)に沿った、フレームに対して相対的な工具ホルダスピンドル7の変位を許容するために配置されている。第2の並進運動の軸線(X)は、第1の並進運動の軸線(Z)に対して+40°~+50°の範囲の角度α1を形成する平面(p)においてスライド部9を備えている。
【0042】
可動式の部材ホルダアセンブリ11は、上記第1及び第2の並進運動の軸線Z,Xに対して垂直な第3の並進運動の軸線(Y)、第3の並進運動の軸線(Y)に対して平行な第1の回転軸線(b)及び第1の回転軸線(b)に対して垂直な第2の回転軸線(c)に従って、機械加工されるべき部材をフレーム3に対して相対的に変位させるように設定されている。
【0043】
第1の並進運動の軸線(Z)は、部材の機械加工の方向に対応している。
図3には、垂直に、すなわち重力の方向に配向された第1の軸線(Z)を有する機械1の好ましい位置決めが図示されている。
【0044】
垂直な機械加工のこの好ましい位置決めによれば、第1の並進運動の軸線Zは垂直である一方、第2の並進運動の軸線Xは水平である。第3の並進運動の軸線(Y)及び第1の回転軸線(b)は、Xに対し垂直に水平に配向されている。
【0045】
当然、第1の軸線Zを水平に(重力の方向に対して垂直に)又は重力の方向に対して相対的に傾斜した態様で配置するために、機械を回転させることが可能である。したがって、本文の要件のために、垂直方向は、軸線Zの方向として規定されている。
【0046】
フレーム、上記部材ホルダ及び部材ホルダアセンブリを通過する、部材を工具に接続する力ループとも呼ばれる機械の精密経路の長さは、1000mより短い。
【0047】
小さな力ループ(短い間隔)に加えて、この機械の軸方向の構成により、工具ホルダスピンドルと機械加工されるべき部材の間の相対的な位置決めにおけるこれらアセンブリの熱膨張の作用の伝播及び増幅を低減する工作機械を提案することが可能である。これは、機械の始動のための時間を大幅に短縮するものである。
【0048】
機械は、第3の並進運動の軸線Yに沿って可動式のキャリッジ15を含んでいる。
図5及び
図6により図示されたこのキャリッジは、第1の回転軸線(b)周りに部材150を回転させることができるモータ13を収容している。キャリッジは、このモータ13を収容し、冷却するためのリブを備えたシリンダ17と、このシリンダの周囲の透かし彫りケージ19とを含んでいる。
【0049】
有利には、ケージ及びシリンダは単一の鋳造部品で形成されており、ケージとシリンダの間の接触面は、モータからケージへの伝熱を最小にするために10cm2より小さい。
【0050】
機械は、部材が第2の回転軸線(c)周りに回転できるように構成されたモータ23を備えている。第1の回転軸線(b)のモータ13の軸線に取り付けられた支持部25によってモータが保持されているため、モータ23は、第3の並進運動の軸線(Y)に沿って、及び第1の回転軸線(b)周りに可動であるように取り付けられている。
【0051】
機械は、第1の平面に配置され、第3の並進運動の軸線Yに沿って動作するスライド部27を含んでいる。機械が垂直な機械加工のために構成されている場合には、好ましくは第1の平面は水平である。
【0052】
有利には、機械1は、この第1の平面と第1の回転軸線(b)の間の機械加工の方向(第1の並進運動の軸線Z)における間隔(d1)が10cmより小さいように配置されている。
【0053】
機械は、第2の平面に配置され、第1の並進運動の軸線Zに沿って動作するスライド部を含んでいる。有利には、機械1は、これら垂直なスライド部の下端と上記第1の平面の間の機械加工の方向(第1の並進運動の軸線Z)における間隔d2が10cmより小さいように配置されている。
【0054】
有利には、機械1は、スピンドルの回転軸線と第2の平面の間の機械加工の方向(第1の並進運動の軸線Z)に対して垂直な間隔d3が10cmより小さいように配置されている。
【0055】
有利には、機械1は、スピンドルの回転軸線と第1の平面の上記スライド部27の端部の間の機械加工の方向(第1の並進運動の軸線Z)に対して垂直な間隔d4が10cmより小さいように配置されている。
【0056】
機械加工されるべき部材へ向けて収束するスライド部により、機械加工エラーを低減することができる。なぜなら、この構成は、幾何形状エラー及び/又は各スライド部の膨張の累積及び/又は増幅を妨害するためである。
【0057】
小さな寸法の公知の工作機械に比して向上された機械1の剛性により、高速で(HSM)工作機械を使用することが可能である。
【0058】
高速機械加工は、従来の機械加工中よりも一般的に少なくとも4~10倍速い切削速度によって特徴付けられた機械加工技術である。
【0059】
鋼の機械加工に関して、HSM切削速度は500~2000m/分(毎分500~2000メートル)の速度範囲に対応する一方、従来の機械加工速度は、30~200m/分に制限されている。したがって、スピンドルの回転速度は、典型的には20000rpm、例えば50000~100000rpmのオーダーにある。
【0060】
HSM機械加工条件により、特に、機械加工操作中に放出される熱の機械の構成要素、特に部材ホルダへの伝播についての低減が可能である。従来の機械加工に関して、より大きな機械加工速度により、切削くずを介して熱の大部分を除去することができる。
【0061】
つづいて、この解決手段により、機械の構造の熱膨張を危機的な閾値より低く制限することが可能である。
【0062】
部材と軸線の構造の間の1:5の割合により、機械の電力消費を低減することが可能である。より具体的には、従来の機械加工に比して高められた切削速度におけるHSM機械加工ストラテジに関連した軸線の構造の小型化(部材と軸線の構造の間の比率1:5)により得られる慣性の著しい低減により、部材の機械加工に必要なエネルギー、例えば10KW~550Wにわたるか、又は300Wの総消費量を低減することが可能である。つづいて、この解決手段は、機械を操作するコストと、機械を作動させるための装置により生じる熱エネルギーとを低減し、工作機械の構造の熱的な安定性を空調解決手段から解放することが可能である。
【0063】
HSM機械加工及び可動の部材の小さな寸法により、従来の機械に関して、250Hz又はこれにより大きなオーダーの相対的に高い固有周波数を得ることができる。これら比較的高い固有周波数は、あまり機械加工プロセスを妨げず、したがって、非常に重いフレーム及び支持部を用いて減衰される必要がなく、このことは、加速及び高速での方向転換のための能力を制限するものではない。
【0064】
機械の動作における質量、特に10kg未満への制限により、特により大きな加速度及びカーブにおいて減速の必要性を回避する慣性の低減に起因して、従来技術の機械に比してより大きな機械加工能力を得ることが可能である。
【0065】
図7及び
図8には、複数の工作機械1を含むマイクロファクトリ30が図示されている。
【0066】
マシニングセンタ30は、工作機械1を作動可能に収容するようそれぞれ設定された複数の構成要素を含んでいる。
【0067】
機械1の縮小された寸法により、これら構成要素は、他のものに対して並置されるだけではなく、他の頂部に重ねられて配置されることが可能である。
【0068】
有利には、第2の部材の機械加工中に第2の機械により発生する振動の伝播を弱め、及び/又は低減するために、これら工作機械の第1のものは、これら工作機械の第2のものと同期して特に第1の部材を機械加工するために動作するよう構成されている。
【0069】
この解決手段により、マシニングセンタの構造において発生し伝播する振動を低減することができ、これにより、センタの機械の機械加工精度に対するそのネガティブな影響を弱めることが可能である。
【0070】
マシニングセンタは、工具のマガジン32と、部材のマガジン34とを含んでおり、これらマガジンは、マシニングセンタの機械1の一部、有利には全てに対して利用可能であるように形成されている。センタは、部材を機械加工することができるように、マガジン32,34のうち1つとこれら機械のそれぞれとの間で部材及び/又は工具を搬送することができるように構成されたロボット36を含んでいる。
【0071】
有利には、部材32のマガジンは、機械加工されるべき部材と、中間部材と、完成部材とを貯蔵するように構成されている。
【0072】
有利には、マシニングセンタは、センタの複数の機械、特に給電部、煙除去のための排出装置、切りくずを取り出すためのシステム(40)、消火器、安全ドア及び/又はスプリンクラーシステムに共通な共有ステーション又は共有装置のうち1つ又は複数を含むことができる。
【0073】
マイクロファクトリは、各工作機械の制御信号を生成するための個別の増幅器38を収容している。
【0074】
マトリクス状、すなわち複数の行及び列でのマイクロファクトリ30の機械の配置により、第1に、機械加工空間において使用可能なスペースのより良好な使用と、機械の配置のコストの削減とを可能とすることができる。この配置によって、工作機械から又は工作機械への部材及び/又は工具の搬送時にロボットの変位の距離を短縮することも可能である。
【0075】
さらに、有利には、マトリクス状の工作機械の空間配置により、これらスペースの1つ又は複数において、これら工作機械を較正し、生産された部材の品質を確認するために設定された測定機械を収容することが可能である。
【0076】
マシニングセンタは、上記スペースのうち1つにおいて、少なくとも1つの仕上げ機及び/又は洗浄機を含むことも可能である。
【0077】
マシニングセンタは、マシニングセンタ全体、特にその工作機械、そのステーション若しくは共有装置、測定機械、仕上げ機及び/又は洗浄機を監視するためのタブレット50のようなユーザインターフェースも含むことができる。
【0078】
さらに、本発明は、機械加工されるべき部材150に対して工具ホルダスピンドル7を変位させることができる少なくとも1つの可動式のアセンブリ5,11を含む上述の工作機械1のような工作機械を製造するための方法に関するものである。
【0079】
工作機械を製造する方法は、工作機械の空間要件を決定するステップと、構成を選択するステップと、機械の剛性を最適化するステップと、動作における質量を低減するステップとを含んでいる。
【0080】
工作機械の空間要件の決定は、とりわけ、工作機械のサイズの寸法設定、すなわち機械によって機械加工可能な部材の最大サイズの関数としての幾何の軸線の構造の寸法設定を含んでいる。
【0081】
機械によって機械加工可能な部材の最大のサイズは、工作機械によって最大限機械加工可能な体積として規定されることができる。この体積は、機械加工されるべき部材の類型を表す幾何形状を用いて規定されることが可能である。時計製造及び宝飾類の分野では、有利には、体積は、時計製造及び宝飾類の最も多様な部材をその向きにかかわらずより効果的に表すために、立体形状によって記載されることが可能である。
【0082】
機械の軸線の構造の寸法設定は、軸線の構造のファクタに、機械により最大限機械加工可能な体積を乗算することで行われる。
【0083】
出願人により行われたテストにより、3~7の軸線の構造のファクタによりコンパクトな工作機械の生産が可能である一方、それでも効率的なままであることが証明された。出願人による研究により、特に50~100mmの側を有する立方体体積の機械加工のための、機械加工されるべき最大の部材の寸法(最大限機械加工可能な体積の寸法)と機械の寸法(機械の体積の寸法、すなわち機械の軸線の構造)の間の5:1の比率が確認された。
【0084】
従来の機械に比して短縮された最大経路を有する可動式のアセンブリにより、機械のエネルギー消費の著しい低減が可能である。なぜなら、動きにおいて(特にモータによって)駆動される必要がある質量がより軽量であるためである。
【0085】
工作機械のスペース要件の決定は、上記機械の軸線の構造の寸法設定の関数としての、すなわち工作機械により最大限機械加工可能な体積の関数としての精密経路(力ループ)の定義を更に含んでいる。
【0086】
力ループとも呼ばれる精密経路は、全てのスライド部が中央にあるときに機械の剛直な部分を介して通過する工具へ機械加工されるべき部材を接続する最短経路によって規定されている。したがって、精密経路は、機械の異なる構造を通過する、特に工具から部材へ可動式のアセンブリ5,11を通過する力の線を表している。
【0087】
最適な精密経路は、軸線の構造の寸法設定のうち1つ、特に軸線の構造が立体形状を有している場合のその側のうちの1つを経路ファクタに乗算することで決定される。
【0088】
出願人により行われたテストにより、軸線の構造を表す立方体体積の側の1つによって乗算される0.3~0.9の経路ファクタにより、機械の構成要素、特に可動式のアセンブリ5,11の剛直な構造の膨張を低減することが可能であることが示された。出願人の研究により、0.6に等しい経路ファクタが特に有利であることが証明された。
【0089】
機械の剛性を最適化するステップは、好ましくは(実質的に)閉鎖されたシェル構造を用いた、機械、特に可動式のアセンブリの剛直な構造の生産を含んでいる。
【0090】
シェル構造は、近傍に位置しほぼ互いに並行な2つの主面によって画成された固体(立体)である。(実質的に)閉鎖されたシェル構造は、それ自体において閉鎖された、及び/又は2つの主面を結合する主面(エッジ)によって画成されたシェル構造である。
【0091】
この解決手段により、剛直であるものの軽量なままである構造を実現することができ、つづいて、この構造により、機械、特に可動式のアセンブリを駆動するそのモータのエネルギー消費を低減することが可能である。