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特許7092684エンドグリン拮抗作用による治療に対する、腫瘍の感受性化法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】エンドグリン拮抗作用による治療に対する、腫瘍の感受性化法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220621BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P35/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018565397
(86)(22)【出願日】2017-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 US2017037558
(87)【国際公開番号】W WO2017218708
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】62/350,017
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514135801
【氏名又は名称】シーダーズ-サイナイ メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ボウミック ニール
(72)【発明者】
【氏名】スミス ベサニー
(72)【発明者】
【氏名】プラセンシオ ベロニカ
(72)【発明者】
【氏名】マダフ アニシャ
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0009811(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0071761(US,A1)
【文献】特表2012-502649(JP,A)
【文献】CANCER RESEARCH,2001年,Vol. 61,pp. 7846-7854
【文献】Clinical Cancer Research,2014年,Vol. 20, No. 23,pp. 5918-5926
【文献】Clinical Cancer Research,2012年,Vol. 18, No. 17,pp. 4820-4829
【文献】Clinical Cancer Research,2013年,Vol. 19, No. 1,pp. 170-182
【文献】FATIMA H. KARZAI,A PHASE I STUDY OF TRC105 ANTI‐ENDOGLIN (CD105) ANTIBODY IN METASTATIC CASTRATION‐RESISTANT PROSTATE CANCER,BJU INTERNATIONAL,2015年,VOL:116,PAGE(S):546 - 555,http://dx.doi.org/10.1111/bju.12986
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 45/00-45/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD105アンタゴニストを含む、対象においてがんを感受性化させる及びがんを治療するための治療薬であって、
前記がんを感受性化させるために前記対象にCD105アンタゴニストを投与し、それにより前記がんを感受性化させること;および
前記がんを治療するために前記対象にがん療法を施すこと、
を含み、
前記がんが固形腫瘍であり、かつ、放射線及び/またはアンドロゲン標的療法に耐性であり、
前記CD105アンタゴニストが、TRC105またはその抗原結合断片である、
前記治療薬。
【請求項2】
前記がんが、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、腎細胞癌、黒色腫、肉腫、頭頸部癌、膠芽腫、またはそれらの組み合わせである、請求項に記載の治療薬。
【請求項3】
前記がんが前立腺癌である、請求項1または2に記載の治療薬。
【請求項4】
前記がん療法が、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである、請求項のいずれか1項に記載の治療薬。
【請求項5】
CD105アンタゴニストを含む、対象において、がんを治療し、がんの進行を遅らせ、がんの重症度を低下させ、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させるための治療薬であって、
がん療法と組み合わせて使用され、
前記がん療法によって、前記がんが治療され、前記がんの進行が遅らされ、前記がんの重症度が低下され、前記がんの再発が防止され、及び/または前記がんの再発の可能性が低減され
前記がんが固形腫瘍であり、かつ、放射線及び/またはアンドロゲン標的療法に耐性であり、
前記CD105アンタゴニストが、TRC105またはその抗原結合断片である、
前記治療薬。
【請求項6】
前記がんが、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、腎細胞癌、黒色腫、肉腫、頭頸部癌、膠芽腫、またはそれらの組み合わせである、請求項に記載の治療薬。
【請求項7】
前記がんが前立腺癌である、請求項5または6に記載の治療薬。
【請求項8】
前記がん療法が、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである、請求項のいずれか1項に記載の治療薬。
【請求項9】
CD105アンタゴニストを含む、がん療法により治療を受けている対象において、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させるための治療薬であって、
がん療法と組み合わせて使用され、
前記がん療法によって前記がんの再発が防止され、及び/または再発の可能性が低減され
前記がんが固形腫瘍であり、かつ、放射線及び/またはアンドロゲン標的療法に耐性であり、
前記CD105アンタゴニストが、TRC105またはその抗原結合断片である、
前記治療薬。
【請求項10】
前記がんが、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、腎細胞癌、黒色腫、肉腫、頭頸部癌、膠芽腫、またはそれらの組み合わせである、請求項に記載の治療薬。
【請求項11】
前記がんが前立腺癌である、請求項9または10記載の治療薬。
【請求項12】
前記がん療法が、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである、請求項11のいずれか1項に記載の治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援研究に関する声明
本発明は、国立衛生研究所により付与された助成金番号CA108646に基づく政府の支援によってなされたものである。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、医薬及びがんに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
本明細書中に引用された全ての刊行物は、個々の刊行物または特許出願が、具体的かつ個々に参照により組み込まれると示されている場合と同一の程度で、その全体が参照により組み込まれる。以下の説明は、本発明の理解に有用と思われる情報を含む。本明細書で提供するいかなる情報も、先行技術であるか、または現在請求されている発明と関連しているということ、または具体的または暗示的に参照されているいかなる出版物も、先行技術であるということを認めるものではない。
【0004】
エンドグリン(CD105とも呼ばれる)は、増殖している内皮細胞上に発現し、血管の生存にとって重要な受容体として元々同定された。したがって、特に新しい血管系に依存する腫瘍を死滅させる目的で、エンドグリンアンタゴニスト(すなわち、Tracon Pharmaceuticals Inc.製のTRC105)が開発された。
【0005】
本発明において、本発明者らは、CD105アンタゴニストと、化学療法、放射線療法、ホルモン療法及び外科手術を含むがこれらに限定されない種々の治療とを組み合わせることによって、がん及び腫瘍を治療するための方法、キット及びシステムを提供する。
【発明の概要】
【0006】
概要
以下の実施形態及びそれらの態様は、代表的且つ例示的であることが意図され、範囲を限定するものではないシステム、組成物、及び方法と関連して記載されかつ示される。
【0007】
本発明の種々の実施形態は、それを必要とする対象において癌を感受性化させる方法であって、CD105アンタゴニストを提供すること、及び対象にCD105アンタゴニストを投与し、それによって癌を感受性化させることを含む。種々の実施形態では、この方法は、癌療法を施すことをさらに含む。種々の実施形態では、この方法は、CD105アンタゴニストを投与する前に、癌治療により癌を感受性化させる必要がある対象を特定することをさらに含む。
【0008】
種々の実施形態では、がんは、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、腎細胞癌、黒色腫、肉腫、頭頸部癌、膠芽腫、またはそれらの組み合わせである。種々の実施形態では、癌は、放射線及び/またはアンドロゲン標的療法に耐性である。種々の実施形態では、がんは、前立腺癌である。
【0009】
種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、CD105に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。種々の他の実施形態では、CD105アンタゴニストは、TRC105またはその抗原結合断片である。
【0010】
種々の実施形態ではがん療法は、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである。種々の実施形態では、対象は、CD105アンタゴニストの投与及びがん療法によって治療する。
【0011】
本発明の種々の実施形態は、それを必要とする対象において、がんを治療し、がんの進行を遅らせ、がんの重症度を低下させ、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させる方法であって、対象にCD105アンタゴニストを投与すること、及びがん療法を対象に施し、これにより、対象において、がんを治療し、がんの進行を遅らせ、がんの重症度を低下させ、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させることを含む方法を提供する。
【0012】
種々の実施形態では、がんは、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、腎細胞癌、黒色腫、肉腫、頭頸部癌、膠芽腫、またはそれらの組み合わせである。種々の実施形態では、がんは、放射線及び/またはアンドロゲン標的療法に耐性である。種々の他の実施形態では、がんは、前立腺癌である。
【0013】
種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、CD105に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。種々の他の実施形態では、CD105アンタゴニストは、TRC105またはその抗原結合断片である。
【0014】
種々の実施形態では、がん療法は、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである。
【0015】
本発明の種々の実施形態は、がん療法により治療を受けている対象において、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させる方法であって、対象にCD105アンタゴニストを投与すること、及びその後のがん療法を対象に施し、これにより、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させることを含む方法を提供する。
【0016】
種々の実施形態では、がんは、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、腎細胞癌、黒色腫、肉腫、頭頸部癌、膠芽腫、またはそれらの組み合わせである。種々の実施形態では、がんは、放射線及び/またはアンドロゲン標的療法に耐性である。種々の実施形態では、がんは、前立腺癌である。
【0017】
種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、CD105に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、TRC105またはその抗原結合断片である。
【0018】
種々の実施形態では、その後のがん療法は、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである。
[本発明1001]
それを必要とする対象においてがんを感受性化させる方法であって、
CD105アンタゴニストを提供すること、及び、
前記対象に前記CD105アンタゴニストを投与し、それによって前記がんを感受性化させること
を含む、前記方法。
[本発明1002]
がん療法を施すことをさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記CD105アンタゴニストを投与する前に、がん治療に対してがんを感受性化させる必要がある対象を特定することをさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1004]
前記がんが、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、腎細胞癌、黒色腫、肉腫、頭頸部癌、膠芽腫、またはそれらの組み合わせである、本発明1001の方法。
[本発明1005]
前記がんが、放射線及び/またはアンドロゲン標的療法に耐性である、本発明1004の方法。
[本発明1006]
前記がんが前立腺癌である、本発明1004の方法。
[本発明1007]
前記CD105アンタゴニストが、CD105に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である、本発明1001の方法。
[本発明1008]
前記CD105アンタゴニストが、TRC105またはその抗原結合断片である、本発明1001の方法。
[本発明1009]
前記がん療法が、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである、本発明1002の方法。
[本発明1010]
前記対象を、前記CD105アンタゴニストの投与及び前記がん療法によって治療する、本発明1002の方法。
[本発明1011]
それを必要とする対象において、がんを治療し、がんの進行を遅らせ、がんの重症度を低下させ、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させる方法であって、
前記対象にCD105アンタゴニストを投与すること、及び
前記対象にがん療法を施して、これにより、前記対象において、前記がんを治療し、前記がんの進行を遅らせ、前記がんの重症度を低下させ、前記がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させること
を含む、前記方法。
[本発明1012]
前記がんが、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、腎細胞癌、黒色腫、肉腫、頭頸部癌、膠芽腫、またはそれらの組み合わせである、本発明1011の方法。
[本発明1013]
前記がんが、放射線及び/またはアンドロゲン標的療法に耐性である、本発明1012の方法。
[本発明1014]
前記がんが前立腺癌である、本発明1012の方法。
[本発明1015]
前記CD105アンタゴニストが、CD105に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である、本発明1011の方法。
[本発明1016]
前記CD105アンタゴニストが、TRC105またはその抗原結合断片である、本発明1011の方法。
[本発明1017]
前記がん療法が、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである、本発明1011の方法。
[本発明1018]
がん療法により治療を受けている対象において、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させる方法であって、
前記対象にCD105アンタゴニストを投与すること、及び
がん療法を施して、これにより、前記がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させること
を含む、前記方法。
[本発明1019]
前記がんが、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、腎細胞癌、黒色腫、肉腫、頭頸部癌、膠芽腫、またはそれらの組み合わせである、本発明1018の方法。
[本発明1020]
前記がんが、放射線及び/またはアンドロゲン標的療法に耐性である、本発明1019の方法。
[本発明1021]
前記がんが前立腺癌である、本発明1019の方法。
[本発明1022]
前記CD105アンタゴニストが、CD105に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である、本発明1018の方法。
[本発明1023]
前記CD105アンタゴニストが、TRC105またはその抗原結合断片である、本発明1018の方法。
[本発明1024]
前記がん療法が、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである、本発明1018の方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
例示的な実施形態を、参照図にて示している。本明細書に開示する実施形態及び図面は、限定的ではなく例示的なものとみなすことを意図する。
【0020】
図1】本発明の種々の実施形態に従って、腫瘍進行における間質制御の果たす役割の一例を示す。
図2】本発明の種々の実施形態に従って、アンドロゲン除去療法が、間質及び上皮区画におけるCD105発現を促進し得ることを示す。示された処置により、低酸素(2%O)下でのマウス線維芽細胞との3D共培養で、ヒト前立腺癌(PCa)上皮細胞を増殖させた。72時間後、細胞を解離させ、FACSによりCD105発現について、示しているように評価した。M1043(モノクローナルラット抗マウスCD105抗体)またはTRC105により、CD105に拮抗することによって、マウス前立腺線維芽細胞及びヒト前立腺癌上皮の両方において、エンザルタミド誘導CD105細胞表面発現をダウンレギュレートさせた。
図3】本発明の種々の実施形態に従って、アンドロゲン除去療法によってアンドロゲン受容体変異体がアップレギュレートされることを示す。
図4】本発明の種々の実施形態に従って、アンドロゲン受容体変異体及びRNPC1(RBM38としても知られている)がTRC105によってダウンレギュレートされることを示す。エンザルタミドは、RNPC1発現をアップレギュレートする。
図5】本発明の種々の実施形態に従って、アンドロゲン受容体変異体が、RNPC1依存様式でTRC105によってダウンレギュレートされることを示す。RNPC1発現は、前立腺癌上皮及び間質細胞において亢進する。
図6】本発明の種々の実施形態に従って、CW22Rv1細胞におけるTRC105投与量応答を示す。
図7】本発明の種々の実施形態に従って、エンザルタミドとのM1043(アンタゴニストとして使用されるマウス特異的CD105中和抗体)の組み合わせ治療は、前立腺腫瘍異種移植片を減少させないことを示す。組織組換えヒトCW22Rv1/CAF異種同所移植により、血管新生が減少した。
図8図8A~8Bは、本発明の種々の実施形態に従って、TRC105が前立腺癌細胞のための放射線増感剤として利用されることを示す。図8A)細胞周期分析は、ヒト前立腺上皮細胞株CW22Rv1において、放射線をTRC105と組み合わせた場合の、G2期の(DNA複製に関連する)慢性的アップレギュレーションを実証する。各群内で、左の列はG1を示し、中央の列はSを示し、右の列はG2を示す。図8B)CW22Rv1、すなわち前立腺上皮は、4Gy放射線及びTRC105治療の場合に、生存タンパク質(サバイビン及び全長PARP1)の急激なダウンレギュレーションを有する。示されたすべての研究は、照射後5日間及び/またはTRC105による5日間の治療のものである。
図9】本発明の種々の実施形態に従って、TRC105が前立腺癌細胞のためのタキサン増感剤として働くことを示す。細胞死アッセイに用いたPC3細胞を、異なる濃度のTRC105の存在下で、異なる濃度のドセタキセルで処理した。
図10図10A~10Dは、本発明の種々の実施形態に従って、腫瘍促進能力に間質不均質性が必要であることを示す。図10A)円グラフは、示されたマーカーの細胞表面発現に基づく示された間質線維芽細胞集団の相対比を示し、n>3である。図10B)散布図は、示された線維芽細胞集団及びCW22Rv1からなる組織組換え腫瘍の腫瘍体積を示す。バーは腫瘍体積を示し、n>4である。図10C)示された線維芽細胞集団によるRv1の代表的な組換え腫瘍切片の組織学。H&E染色は腫瘍形態を示す(スケールバーは64μmを表す)。ヘマトキシリン核対比染色(スケールバーは32μmを表す)を用いてKi67及びサバイビン免疫局在性を定量し、n>5である。図10D)RNAシーケンシングによって同定された上位200の差次的発現遺伝子のうち、分泌タンパク質をコードする33の遺伝子。ベン図は、示された対数変換遺伝子発現に従ってヒートマップに注釈された分泌遺伝子の分布を示す。ヒートマップ上の線は、ベン図の群内に見られる遺伝子に対応する。一元配置ANOVA及びボンフェローニポストホック補正を行った。エラーバーは平均+/-SDを示し、p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001である。
図11図11A~11Eは、本発明の種々の実施形態に従って、間質CD105発現が、隣接する上皮のNEDに関連することを示す。図11A)ドーナツチャートは、FACSに基づく、解離した良性及びPCa患者の組織の示された間質集団の平均相対百分率を示す。n=4である。優性集団は、細胞あたり最大強度のマーカーによって決定し、実線ボックス(CD105)、破線ボックス(CD90)、二重線ボックス(CD117)、破線及び点線ボックス(Stro-1)である。図11B)ヘマトキシリンで対比染色した組織アレイの代表的なコア切片からのCD105の免疫組織化学染色。矢頭はCD105陽性血管を示し、矢印はCD105陽性間質染色を示し、n=94である。スケールバーは100μmを表す。図11C)CD105及びクロモグラニンAについて染色し、ヘマトキシリンで対比染色した組織コアからの代表的な連続切片、n=39の対組織。図14も参照のこと。図11D)ウォーターフォールプロットは、段階的スケールで間質CD105の共発現を有するクロモグラニンAの発現割合(%)を示し、ここで0は染色がないことを示し、5は100%染色を示し、n=39の対コアである。図11E)示された遺伝子の相対的なmRNA発現を、平均+/-SD、n=5としてNAF及びCD105に富むCAFについてグラフ化している。プライマー配列を表1に列挙する。
図12図12A~12Fは、アンドロゲン軸阻害が、本発明の様々な実施形態に従って、パラクリンSFRP1媒介性NEDを媒介することを示す。図12A)3D共培養におけるヒト上皮細胞(CW22Rv1)(各群内の左列)、マウス前立腺線維芽細胞(各群内の右列)におけるCD105発現は、FACS分析によって決定されるようにエンザルタミド処理によって制御され、n=3である。図12B)棒グラフは、IgG(対照)処置と比較した、TRC105によって制御されるヒトNAF及びCAFにおける相対的SFRP1mRNA発現を示し、n=5である。図12C)ヒートマップは、0、0.01、0.1、1μg/mlのSFRP1で処置した場合に、GAPDHに対して正規化されたRv1細胞における神経内分泌遺伝子パネルの相対的発現を示す。n=5である。図15も参照のこと。図12D)PDXモデルにおいて、マウスをビヒクルまたはエンザルタミドのいずれかで処置した。良性またはPCa組織におけるCD105及びSFRP1の免疫組織化学的局在は、血管(v)、上皮(e)及び間質(s)に見られる。n=4である。スケールバーは100μmを表す。図12E)マウス前立腺線維芽細胞との3D共培養におけるヒトCW22Rv1の上皮増殖を、FACS分析のためにEpCam及びKi67について共染色した。培養物をTRC105、M1043及び/またはエンザルタミドで72時間処理した。n>3である。図16も参照のこと。図12F)前立腺上皮CW22Rv1、C42B、及びPC3の生存率は、MTTアッセイによって、TRC105及びエンザルタミドの存在下及び非存在下で測定した。n=5である。エラーバーは平均+/-SD、及び他に指示がない限り対照と比較して**p<0.01、****p<0.0001である。
図13図13A~13Bは、本発明の様々な実施形態に従って、アンドロゲン軸及びCD105に拮抗することによって、腫瘍成長及び神経内分泌分化(NED)が低下することを示す。図13A)マウスに、CW22Rv1及びCAFの組織組換え体で同所移植した。マウスを去勢し、TRC105及び/またはエンザルタミドで処置した。棒グラフは、去勢(Cx)マウスに対して正規化した腫瘍体積を示す。図13B)H&E染色の後に、リン酸化ヒストンH3(PH-H3)、TUNEL、及びクロモグラニンA(ChromA)の免疫局在化を行った。スケールバーは32μmを表す。有糸分裂(PH-H3)及び細胞死(TUNEL)インデックスをプロットした。n>5であり、エラーバーは平均+/-SD、及び他に指示がない限り対照と比較しp<0.05、**p<0.01、***p<0.001である。
図14図14A~14Bは、本発明の種々の実施形態に従って、隣接する上皮の神経内分泌分化との間質CD105発現の関連を示す。図14A)ボックスプロットは、Cancer Genome Atlas 前立腺癌(TCGA-PRAD)データ収集からの、正常組織及びPCa組織におけるCD105発現を示す(n=498)。図14B)ヘマトキシリンで対比染色したCD105またはクロモグラニンAの、免疫組織化学によって染色された組織アレイコアからの、代表的な連続対切片を示す。スケールバーは100μmを表す。
図15図15A~15C本発明の種々の実施形態に従って、SFRP1が、神経内分泌分化に関連することを示す。図15A)棒グラフは、対照に対して正規化したものであり、示された濃度のヒト組換えSFRP1またはCAF馴化培地により72時間(平均+/-SD)処理したRv1細胞の相対的増殖を示す。図15B)Zodiac(http://www.compgenome.org/ZODIAC)を用いて生成されたサーカスプロットは、関連遺伝子間の関係及び関係の性質を示す。コピー数(CN)、遺伝子発現(GE)及びメチル化(Me)の間の関連は、あるノードから別のノードへの線によって示される(p≦0.01)。図15C)棒グラフは、指定されたTCGA Research NetworkデータセットのSFRP1突然変異、欠失及び増幅の改変頻度を示す:NEPC(Trento/Cornell/Broad 2016)、PCa1(FHCRC 2016)、PCa2(MICH)、PCa3(TCGA)、PCa4(TCGA 2015)、PCa5(SU2C)、PCa6(MSKCC 2010)、PCa7(Broad/Cornell 2013)、及びPCa8(Broad/Cornell 2012)。
図16】本発明の種々の実施形態に従って、種特異的CD105アンタゴニストを示す。棒グラフは、対照に対して正規化したRv1細胞及びマウス野生型線維芽細胞による相対ID1 mRNA発現を示す。すべての細胞を無血清培地で一晩前処理し、次いで異なる濃度のTRC105またはM1043の存在下または非存在下で6時間、BMP(50ng/mL)と共にインキュベートした(平均+/-SD)。各群内で、左の列はヒトPCaを示し、右の列はマウス線維芽細胞を示す。
図17】本発明の種々の実施形態に従って、種々の処置後の上皮の概略図を示す。
図18図18A~18Fは、本発明の種々の実施形態に従って、前立腺癌細胞における放射線誘導性CD105発現が、放射線耐性を補助することを示す。図18A)4Gy照射処理の72時間後に、細胞表面のCD105発現を、PC3、C42b及び22Rv1においてFACS分析で測定し、照射していない細胞(対照)と比較した。図18B)細胞表面のCD105発現を、照射線量範囲(0、2、4または6Gy)に従って細胞株において測定した。図18C)22Rv1における細胞表面のCD105発現の耐久性を、4Gy照射後0、0.5、4、8、24、48、72、120及び168時間で測定した。CD105細胞表面発現の倍率変化を、照射前に発現したレベルに対して正規化した。図18D)血清飢餓及び50ng/ml BMP4または1μg/mlTRC105による処理の存在下または非存在下で、CW22Rv1細胞におけるリン酸化Smad1/5のウェスタンブロットを測定した。β-アクチン発現は、ローディングコントロールとして利用した。図18E)アネキシン-V発現を、TRC105の存在下及び非存在下での4Gy照射の5日後、FACS分析によって22Rv1細胞において測定した。図18F)1μg/mlのIgGまたはTRC105の存在下で、0~6Gyの線量範囲で、CW22Rv1及びC42b細胞の照射の10日後に、クローン原性アッセイを測定した。データは、平均+/-S.D.として報告する(**p<0.01、***p<0.001)。
図19】本発明の種々の実施形態に従って、無血清条件下で50ng/mlのBMP4を用い、CW22Rv1において測定したID1 mRNA発現を示す。TRC105の増加用量(0.05、0.1、0.5、1、5または10μg/ml)との関連によるIgG。ID1 mRNA発現をGAPDHに対して正規化した。(**p<0.01、****p<0.0001)。
図20図20A~20Fは、本発明の種々の実施形態に従って、放射線がBMP媒介SIRT1発現を誘導することを示す。図20A)血清飢餓後及び50ng/mlのBMP4で4時間処理した後、22Rv1細胞において測定した、SIRT1発現のウェスタンブロット。リン酸化Smad1/5及びβ-アクチンを同時に測定した。図20B)50ng/mlのBMP4、TRC105の漸増用量(0.05、0.1、0.5、1、5または10μg/ml)との関連でIgGを用い、無血清条件下で、CW22Rv1においてSIRT1 mRNA発現を測定した。SIRT1 mRNA発現をGAPDH及び血清処理対照に対して正規化した。図20C)R2-ゲノム解析から得られた良性前立腺癌患者及び前立腺癌患者におけるSIRT1 mRNAの倍率変化を表す(n=95)。図20D)良性前立腺癌及び前立腺癌組織におけるSIRT1発現の免疫組織化学的局在を矢印で示す(Human Protein Atlas)。「e」及び「s」は、それぞれ組織における上皮及び間質区画を示す。図20E)0~6Gyの線量範囲で、22Rv1への照射72時間後に、SIRT1 mRNA発現を測定した。図20F)SIRT1 mRNA発現は、4Gy照射後0-72時間の時間経過で測定した。SIRT1 mRNA発現をGAPDH及び非処理、0Gyに対して正規化した。データは、3回の独立した実験の平均+/-S.D.として報告する(***p<0.001、****p<0.0001)。
図21図21A~21Cは、本発明の種々の実施形態に従って、SIRT1 mRNA発現が定量されたことを示す。図21A)C4-2Bに放射線を照射し(0、2、4、または6Gy)、照射72時間後にSIRT1発現を測定した。図21B)C4-2B細胞に照射し(4Gy)、照射0、0.5、4、8、24、48及び72時間後にSIRT1発現を測定した。図21C)22Rv1を、4Gyの照射の24時間前に1μg/mlのIgGまたはTRC105で前処理し、照射72時間後の相対するSIRT1 mRNA発現と比較した。SIRT1 mRNA発現をGAPDH及び0Gy対照に対して正規化した。
図22図22A~22Cは、本発明の種々の実施形態に従って、CD105が、一過性DNA損傷及び細胞周期停止を誘導することを示す。22Rv1を、4Gyの照射の24時間前に1μg/mlのTRC105で前処理した。図22A)γ-H2AXまたはp53bpは、放射線照射の4時間後、24時間後及び48時間後に免疫局在化した。核当たりの増殖巣を定量した(n=100)。図22B)照射の30分後及び24時間後にコメットアッセイを実施した。テールモーメントを定量化した(n=50)。図22C)3サイクルの独立した実験において、IgGまたはTRC105の存在下で、放射線照射の0、4、8及び24時間後の22Rv1について、細胞周期分析を実施した(n=3)。(***p<0.001、****p<0.0001)。
図23図23A~23Eは、本発明の種々の実施形態に従ってクローン原生生存アッセイを示す。アッセイは、p53欠損前立腺癌細胞株を有する細胞株において実施した。示された線量の放射線を用いて、図23A)PC3及び2つのp53突然変異膵臓癌細胞株、図23B)MIAPACA-2、及び図23C)HPAF-IIを示す。完全なp53を有する乳癌細胞株において、図23D)MCF7及び突然変異体であるが機能的なp53、図23E)MDA-MB23は、しかしながら1μg/mlのTRC105によって放射線増感された。
図24図24A~24Dは、PGC1α及びミトコンドリア生合成が、BMP/CD105によって制御されることを示す。22Rv1細胞を、4Gy照射を伴うかまたは照射なしで、IgGまたはTRC105とともにインキュベートした。放射線照射の72時間後に、すべての測定を行った。図24A)全細胞溶解液、核及び細胞質画分のウェスタンブロットを、PGC1α発現について独立して分析した。ローディングコントロールには、β-アクチン(全細胞)、ラミンB(核マーカー)、及びRho A(細胞質マーカー)が含まれた。図24B)PGC1αの免疫蛍光局在をDAPI核対比染色で視覚化した。図24C)PGC1α標的遺伝子である、NRF1、MTFA及びCPT1CのmRNA発現を測定した。mRNA発現を、GAPDH及び非処理IgG 0Gyに対して正規化した。図24D)総DNA抽出物からミトコンドリアDNA(mtDNA)を測定し、核DNAに対して正規化し、非処理IgG 0Gyと比較した。データは、3回の独立した実験の平均+/-S.D.として報告する(***p<0.001、****p<0.0001)。
図25図25A~25Bは、本発明の種々の実施形態に従って、22Rv1を、4Gyの照射前に1μg/mlのIgGまたはTRC105で処理したことを示す。照射72時間後に、ウェスタンブロットのために溶解物を収集した。図25A)ミトコンドリア複合体タンパク質のカクテルについてブロットをプローブした。複合体-IVのMTCO1及び複合体-IのNDUFB8のタンパク質レベルを、ポンソーに対して正規化した。図25B)MTCO1及びNDUFB8は、4Gy+TRC105において、放射線単独と比較して有意に低かった。各群内の第1/左の列は0Gy+IgGを示し、第2列は0Gy+TRC105を示し、第3列は4Gy+IgGを示し、最後/右の列は4Gy+TRC105を示す。(**p<0.01、***p<0.001)
図26図26A~26Dは、本発明の種々の実施形態に従って、CD105拮抗作用によって誘発される代謝変化を示す。細胞を、IgGまたはTRC105の存在下で、4Gyの放射線照射の168時間後、Seahorse-XFによるミトストレス試験について分析した。図26A)基本呼吸、ミトコンドリアによらない呼吸、プロトンリーク、予備呼吸能、図26B)細胞外酸性化速度(ECAR)及び図26C)ミトコンドリア依存性ATP産生を、Wave2.3.0分析を用いて定量した。データは、3回の独立した実験のうちの代表的な実験(n=5)の平均+/-S.D.として報告する。図26A~26Cにおいて、第1/左の列は0Gy+IgGを示し、第2列は0Gy+TRC105を示し、第3列は4Gy+IgGを示し、最後/右の列は4Gy+TRC105を示す。図26D)IgG、TRC105またはニコチンアミドで処理した22Rv1細胞を照射した(4Gy)。総細胞ATPは、放射線照射の0、24、72、120及び168時間後に測定した。各群内で、左の列はIgGであり、中央の列はTRC105であり、右側の列はニコチンアミドである。データは、3回の独立した実験の平均+/-S.D.として報告する(***p<0.001、****p<0.0001)。
図27】本発明の種々の実施形態に従って、放射線感受性におけるATP枯渇の役割を示す。22Rv1細胞を、示された用量のATPアーゼ阻害剤であるオリゴマイシンにより処理し、4Gy照射に曝露した。各群内で、左の列は0Gy、右の列は4Gyである。細胞計数は照射72時間後に実施した。(**p<0.01、***p<0.001)
図28図28A~28Bは、本発明の種々の実施形態に従って、CD105に拮抗することにより、インビボでの放射線感受性が与えられることを示す。腫瘍体積を長手方向に測定した。腫瘍の平均体積が80mmに達したとき、マウスを、放射線(5日間2Gy)との関連においてIgGまたはTRC105で処置した。腫瘍は、最初の放射線照射の15日後に採取した。図28A)腫瘍体積の倍率変化を、最初の放射線照射(1日目、***p<0.001)に対して正規化した。図28B)各治療は、累積発生率プロットに示されるように、時間の関数としての腫瘍体積の倍加について比較した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本明細書に引用される全ての参考文献は、完全に記載されているようにその全体が参照により組み込まれる。他に定義されない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。Allen et al., Remington: The Science and Practice of Pharmacy 22nd ed., Pharmaceutical Press (September 15, 2012)、Hornyak et al., Introduction to Nanoscience and Nanotechnology, CRC Press (2008)、Singleton and Sainsbury, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 3rd ed., revised ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 2006)、Smith, March’s Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 7th ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 2013)、Singleton, Dictionary of DNA and Genome Technology 3rd ed., Wiley-Blackwell (November 28, 2012)、及びGreen and Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, NY 2012)は、本出願において使用される多くの用語の一般的な指針を、当業者に提供する。抗体を調製する方法については、Greenfield, Antibodies A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Press (Cold Spring Harbor NY, 2013)、K?hler and Milstein, Derivation of specific antibody-producing tissue culture and tumor lines by cell fusion, Eur. J. Immunol. 1976 Jul, 6(7):511-9、Queen and Selick, Humanized immunoglobulins, U. S. Patent No. 5,585,089 (1996 Dec)、及びRiechmann et al., Reshaping human antibodies for therapy, Nature 1988 Mar 24, 332(6162):323-7、を参照されたい。
【0022】
当業者は、本発明の実施において使用することができる、本明細書に記載された方法及び材料と類似または同等の多くの方法及び材料を認識するであろう。本発明の他の特徴及び利点は、本発明の実施形態の種々の特徴を例として示す添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。実際、本発明は、記載された方法及び材料に決して限定されない。便宜上、本発明において本明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲で使用する特定の用語をここに収集する。
【0023】
他に記載がない限り、または文脈から暗示されない限り、以下の用語及び語句は、以下に示す意味を含む。明示的に他に記載がない限り、または文脈から明らかでない限り、以下の用語及び語句は、その用語または語句が関連する技術分野で取得した意味を排除するものではない。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコール、及び試薬等に限定されず、したがって変更することができることを理解されたい。本明細書で使用される定義及び用語は、特定の実施形態を説明するのを助けるために提供され、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるため、特許請求の範囲に記載された発明を限定することを意図するものではない。
【0024】
本明細書で使用する場合、「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、実施形態に有用であり、しかし有用であろうとなかろうと、不特定要素の包含に開放された組成物、方法、及びそれらのそれぞれの構成要素(複数可)に関して使用する。一般に、本明細書で使用する用語は、一般に「オープンな」用語として意図されることが当業者によって理解されるであろう(例えば、「含む(including)」という用語は、「含むが、これに限定されない」と解釈すべきであり、「有する(having)」という用語は、「少なくとも有する」と解釈すべきであり、「含む(includes)」という用語は「含むがこれに限定されない」と解釈すべきである、など)。含む(including)、含有する、または有するなどの用語の同義語である「含む(comprising)」というオープンエンドな用語は、本発明を説明及び請求するために本明細書では使用するが、本発明またはその実施形態は、「からなる(consisting of)」または「実質的にからなる(consisting essentially of)」などの別の用語を使用して代替的に説明することができる。
【0025】
他に記載がない限り、(特に特許請求の範囲の文脈において)本出願の特定の実施形態を説明する文脈で使用する用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」ならびに同様の表現は、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈することができる。本明細書における値の範囲の列挙は、単にその範囲内に含まれるそれぞれの別個の値を個々に示すのを省略した方法として利用することを意図するに過ぎない。本明細書で他に指示がない限り、それぞれ個々の値は、あたかも本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書において特に指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、本明細書で記載されているすべての方法は、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書の特定の実施形態に関して提供される任意の及びすべての例、または例示語(例えば、「など」)の使用は、単に本出願をよりよく説明するためのものであり、特許請求の範囲に別段の記載がない限り、本出願の範囲を限定するものではない。略語「e.g.(例えば)」は、ラテン語のexempli gratia(例えば)に由来し、ここでは非限定的な例を示すために使用する。したがって、略語「e.g.」は、用語「例えば」と同義である。本明細書におけるいずれの文言も、特許請求の範囲に記載されていない要素が、本出願の実施に不可欠であることを示すものと解釈するべきではない。
【0026】
本明細書で使用する「PCa」は、前立腺癌を指す。
【0027】
本明細書で使用する「ATT」は、アンドロゲン標的療法を指す。
【0028】
本明細書で使用する「CAF」は、癌腫関連線維芽細胞を指す。
【0029】
本明細書で使用する「CRPC」は、去勢抵抗性前立腺癌を指す。
【0030】
本明細書で使用する「NED」は、神経内分泌分化を指す。
【0031】
本明細書中で使用する場合、「治療する(treat)」、「治療(treatment)」、「治療する(treating)」または「改善(amelioration)」という用語は、疾患、障害または医学的状態に関して使用する場合、治療的処置及び予防的または防御的手段の両方を指し、その目的は、症状または状態の進行または重症度を予防、逆転、緩和、改善、阻害、軽減、減速または停止することである。「治療する」という用語は、状態の少なくとも1つの有害な効果または症状を軽減または緩和することを含む。1つ以上の症状または臨床マーカーが減少する場合、治療は一般的に「有効」である。あるいは、疾患、障害または医学的状態の進行が低減または停止する場合、治療は「有効」である。すなわち、「治療」には、症状またはマーカーの改善のみならず、治療がない状態で予想される症状の進行または悪化の停止または少なくとも減速も含まれる。また、「治療」とは、有益な結果を追求したり取得したり、または治療が最終的に不成功であったとしても、その個人がその状態を発症する可能性を低くすることを意味し得る。治療を必要とする者には、すでにその状態にある者だけでなく、その状態を有する傾向がある者、またはその状態を予防すべきである者も含まれる。
【0032】
「有益な結果」または「望ましい結果」は、疾患状態の重篤度を軽減または緩和すること、疾患状態が悪化するのを防止すること、疾患状態を治癒すること、疾患状態の発症を予防すること、疾患状態を発症する患者の可能性を低下させること、罹患率及び死亡率を低減させること、及び患者の寿命または平均余命を延ばすことを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。非限定的な例として、「有益な結果」または「所望の結果」は、1つまたは複数の症状の緩和、障害の程度の縮小、がんの安定した(すなわち、悪化していない)状態、がんの遅延または減速、及びがんに関連する症状の改善または軽減、であり得る。
【0033】
本明細書で使用する「疾患」、「状態」及び「疾患状態」は、悪性腫瘍性細胞増殖障害または疾患のいずれかの形態を含み得るが、これらに限定されない。このような障害の例としては、がん及び腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書で使用する「がん」または「腫瘍」とは、身体の器官及び系の正常な機能を妨げる、細胞の制御されない成長、及び/またはすべての腫瘍性細胞の成長及び増殖、悪性または良性のいずれかの、ならびに全ての前がん性及びがん性の細胞及び組織を指す。がんまたは腫瘍を有する対象は、対象の体内に客観的に測定可能ながん細胞を有する対象である。この定義には、良性及び悪性腫瘍ならびに休眠腫瘍または微小転移巣が含まれる。元の位置から移動し、重要な器官に播種するがんは、最終的に、罹患した器官の機能的悪化を介して対象の死をもたらす可能性がある。本明細書で使用する場合、「侵襲的」という用語は、周囲の組織に浸潤してこれを破壊する能力を指す。黒色腫は、皮膚腫瘍の侵襲的形態である。本明細書中で使用する場合、「癌腫」という用語は、上皮細胞から生じるがんを指す。がんの例としては、乳癌、膀胱癌、肺癌、大腸癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、腎細胞癌、癌腫、黒色腫、肉腫、頭頸部癌、膠芽腫、及びアンドロゲン依存性前立腺癌及びアンドロゲン非依存性前立腺癌を含むがこれらに限定されない前立腺癌が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、「投与する」という用語は、所望の部位に薬剤または組成物を少なくとも部分的に局在化させる方法または経路によって、本明細書に開示する薬剤または組成物を対象に配置することを指す。
【0035】
本明細書で使用される「対象」とは、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、霊長類、げっ歯類、家畜または狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカク、例えばアカゲザルが挙げられる。げっ歯類としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ及びハムスターが挙げられる。家畜及び狩猟動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、飼いネコなどのネコ科の種、及びイヌ、キツネ、オオカミなどのイヌ科の種が挙げられる。「患者」、「個体」及び「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用する。一実施形態では、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。さらに、本明細書に記載の方法は、家畜及び/またはペットを治療するために使用することができる。
【0036】
本明細書で使用される「哺乳動物」とは、哺乳綱の任意のメンバーを指し、ヒト、及びチンパンジー及び他の類人猿及びサル種などの非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマなどの家畜、イヌ及びネコなどの飼育哺乳動物、マウス、ラット及びモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物などが挙げられるが、これらに限定されない。この用語は、特定の年齢または性別を示すものではない。したがって、成体及び新生児対象、ならびに胎児は、雄でも雌でも、この用語の範囲内に含まれることを意図している。
【0037】
対象は、治療を必要とする状態(例えば、がん)またはその状態に関連する1つまたは複数の合併症であると以前に診断されたことがある者、または罹患していると特定された者、及び任意選択で、その状態またはその状態に関連する1つまたは複数の合併症の治療を既に受けている者であり得る。あるいは、対象は、状態または状態に関連する1つ以上の合併症を有すると以前に診断されたことがない者でもあり得る。例えば、対象は、状態またはその状態に関連する1つまたは複数の合併症についての1つもしくは複数の危険因子を示す対象、または危険因子を示さない対象であり得る。例えば、対象は、状態またはその状態に関連する1つまたは複数の合併症についての1つもしくは複数の症状を示す対象、または症状を示さない対象であり得る。特定の状態の診断または治療を「必要とする対象」とは、その状態を有すると疑われる対象、その状態を有すると診断された対象、既にその状態の治療を受けた、または治療を受けている対象、その状態の治療を受けていない対象、またはその状態を発症するリスクがある対象であり得る。
【0038】
「機能的」という用語は、「均等物」、「類似体」、「誘導体」または「変異体」または「断片」とともに使用する場合、均等物、類似体、誘導体、変異体またはその断片である実体または分子の生物学的活性と実質的に類似する生物学的活性を有する実体または分子を指す。
【0039】
本発明によれば、「放射線療法」または「放射線治療」という用語は、X線、ガンマ線、電子ビーム、またはプロトンなどの高エネルギー粒子または波を使用して、がん細胞を破壊もしくは損傷させるか、またはがん細胞の増殖や分裂を防ぐがん治療を指す。放射線療法の他の名称には、照射またはX線療法が含まれる。放射線は、単独で、または外科手術または化学療法などの他の治療と併用することができる。がんの種類と場所によって、放射線療法を施す3つの異なる方法すなわち、外部放射線、内部放射線、全身放射線もある。患者は、同じがんに対して複数の種類の放射線療法を受ける場合がある。
【0040】
外部放射線(または外部ビーム放射線)治療は、身体の外側から高エネルギー線を腫瘍に向ける機械を使用する。外部放射線治療は、通常、直線加速器(しばしば、略して「リニアック」と呼ばれる)と呼ばれる機械で実施する。外部放射線治療の種類としては、標準的な外部ビーム放射線治療、従来の外部ビーム放射線治療(2DXRT)、画像誘導放射線療法(IGRT)、3次元コンフォーマル放射線療法(3D-CRT)、強度変調放射線治療(IMRT)、ヘリカルトモセラピー、回転型強度変調放射線治療(VMAT)、粒子線治療、陽子線治療、重粒子線治療、コンフォーマル陽子線放射線療法、オーガー療法(AT)、術中放射線療法(IORT)、定位放射線療法、定位放射線手術(SRS)、及び体幹部定位放射線治療(SBRT)が挙げられるが、これらに限定されない。SRSを実施する3つの異なる方法がある。すなわち、最も一般的なタイプでは、コンピュータによって制御されて回転し、様々な角度から腫瘍を標的にする、可動式リニアック(例えば、X-KNIFE、CYBERKNIFE、及びCLINAC)を使用する。第2のタイプはガンマナイフであり、これは、約200の小ビームを使用して異なる角度から短時間、腫瘍に向け、高用量放射線照射を行う。第3のタイプは、重い荷電粒子ビーム(プロトンまたはヘリウムイオンビームのような)を使用して腫瘍に照射する。
【0041】
内部放射線治療(近接照射療法とも呼ばれる)は、体内の腫瘍の中または近くに置いた放射線源を使用する。近接照射療法の主なタイプは、腔内照射及び組織内照射である。これらの方法はどちらも、ペレット、シード、リボン、ワイヤー、針、カプセル、バルーンまたはチューブなどの放射性インプラントを使用する。高線量率(HDR)近接照射療法は、アプリケータに置いた強力な放射線源を用いて一度に数分しか治療することができず、数分後に放射線源が除去される。低線量率の近接照射療法では、インプラントを使用して、より低線量の放射線を長期間にわたって放出する。
【0042】
全身的放射線治療では、特定の種類のがんを治療するために放射性薬物(放射性医薬品と呼ばれる)を使用する。これらの薬物は、口から投与することもできるし、静脈に入れることもでき、その後、これらの薬物は体内中を移動する。これらの放射線源は、放射性物質からなる液体の形態であり、これらの放射線源をがん及び腫瘍に導く標的化剤と結合させることもある。例えば、モノクローナル抗体を用いて、放射性物質をがん細胞に標的化すること、すなわち、放射免疫療法を行うことができる。放射免疫療法は、モノクローナル抗体が放射性物質に結合した全身的放射線治療の一種である。モノクローナル抗体は、がん細胞にしか見られない特定の因子を認識するように設計された人工のタンパク質であり、低線量の放射線を腫瘍に直接照射しながら非がん細胞のみを残すことができる。例示的な放射免疫療法としては、イブリツモマブ(ゼバリン)及びトシツモマブ(BEXXAR)が挙げられる。放射性同位体療法(例えば、放射性ヨード、ストロンチウム、サマリウム、ストロンチウム-89、サマリウム(153Sm)レキシドロナム、及びラジウム)は、甲状腺、骨及び前立腺癌などの特定のタイプのがんを治療するために使用する、別のタイプの全身照射である。放射性同位元素治療の例としては、メタヨードベンジルグアニジン(MIBG)、ヨウ素-131、ホルモン結合ルテチウム-177及びイットリウム-90、イットリウム-90放射性ガラスまたは樹脂ミクロスフェア、イブリツモマブ チウキセタン(ゼバリン、イットリウム-90にコンジュゲートした抗CD20モノクローナル抗体)、トシツモマブ/ヨウ素(131I)トシツモマブレジメン(BEXXAR、ヨウ素131標識及び非標識抗CD20モノクローナル抗体の組合せ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
放射線療法線量は、多分割放射線療法及び少分割放射線療法など、異なる方法で与えてもよい。多分割放射線療法では、放射線の総線量は小線量に分割され、治療は1日に1回以上行う。多分割放射線療法は、標準的な放射線療法と同じ時間(日または週の期間)にわたって行われる。多分割放射線療法は、超分画放射線療法とも呼ばれる。多分割放射線療法の1つのタイプは、連続過分割加速放射線治療(CHART)である。週末に治療を行わないCHARTは、CHARTWELと呼ばれる。少分割放射線療法では、放射線の総線量は大きな線量に分割され、治療は1日にまたはそれ以下の頻度で行う。少分割放射線療法は、標準的な放射線療法よりも短い時間(より少ない日または週の期間)にわたって行う。
【0044】
種々の実施形態では、本発明者らは、放射線感受性を補助するために、(例えば、TRC105を用いて)エンドグリンに拮抗する。固形腫瘍の放射線療法におけるBMPシグナル伝達の役割に関する本発明者らの知見には、多数の新規な側面がある、すなわち、1)本発明者らは、BMPシグナル伝達が、放射線の結果としてアップレギュレートされることを初めて見出した。2)BMPシグナル伝達はまた、放射線生存を補助することができる。3)さらに、癌腫関連線維芽細胞によるBMPシグナル伝達は、腫瘍生存のメディエーターである。4)エンドグリンに拮抗することによってBMPシグナル伝達に拮抗することにより、腫瘍とその微小環境との相互作用の結果として、放射線に対する腫瘍感受性化がもたらされる。これらの知見は、結腸、乳房、黒色腫、及び肺を含む任意の固形腫瘍型に適用可能であり得る。
【0045】
種々の実施形態では、本発明者らは、ホルモン療法に対する耐性を担うアンドロゲン受容体スプライスバリアントの発現を制限するために、(例えば、TRC105を用いて)エンドグリンに拮抗する。アンドロゲン除去療法(ADT)は、エンザルタミド及びアビラテロンを含み、一次切除療法後の再発性前立腺癌の最も一般的な治療法である。ADTは、不適切にスプライシングされたAR発現の増加と関連している。TGF-β間質応答性は、隣接する前立腺上皮におけるアンドロゲン感受性を決定することが示されている。前立腺癌間質組織におけるTGF-β応答の喪失は、アンドロゲン受容体スプライスバリアント(ARv)の発現に関連する。ARvは核に移動し、リガンド非依存的にアンドロゲン応答性遺伝子を活性化することができ、それにより治療耐性を誘発する。過去において、前立腺癌上皮におけるIL-6発現により、その上皮自体にARvの発現がもたらされ、ADT耐性に寄与することが示されている。本発明者らは、前立腺線維芽細胞におけるTGF-β応答の喪失によって、ARv発現の機序においてNotch及びCD105シグナル伝達が同時に生じることを見出した。本発明者らは、(例えばTRC105を用いて)エンドグリンに拮抗することにより、Notch及びIL-6媒介性ARv発現をダウンレギュレートできることを見出した。本発明者らのインビボデータは、TRC105とADTとの組み合わせが、前立腺癌モデルにおいていずれか単独のものより優れていることを示した。同様の結果は、ER+がんのSERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)との関連で乳癌でも起こりうる。
【0046】
種々の実施形態では、本発明者らは、がん上皮の幹特性を低下させるために、(例えば、TRC105を用いて)エンドグリンに拮抗する。本発明者らのデータは、前立腺上皮において、がん幹細胞マーカー(例えば、CD44、ALDH、Oct4、及びSox)及びスフィア形成単位(幹特性の別の指標)がダウンレギュレートされることを示す。この観察の意義は、がん細胞における幹機能の獲得が、治療耐性及び転移性進行と関連しているということである。したがって、がんを治療するために、本発明者らは、TRC105を化学療法(例えば、タキサン、ビンブラスチン、及びプラチナベースの薬物)と組み合わせる。
【0047】
種々の実施形態では、本発明者らは、腫瘍を除去するために乳房形成手術(根治的または小葉)を受ける乳癌患者における局所再発の発生を制限するために、(例えば、TRC105を用いて)エンドグリンに拮抗する。増殖している脈管構造(多くの場合CD105を発現する)は、隣接する乳癌細胞の増殖を促進することが実証されている。したがって、このような血管内皮をTRC105によって阻害することは、有益であり得る。他の固形腫瘍の場合も、外科的切除後のTRC105の予防的使用から同様に利益を得ることができる。
【0048】
前立腺癌(PCa)は、男性において2番目に高いがん死亡率をもたらす異種疾患である。ほとんどの限局性前立腺癌の標準治療は、放射線療法または外科的切除である。放射線はまた、外科手術の補助療法として、また骨転移のための緩和的治療においても使用される。放射線アブレーション治療を受けた限局性前立腺癌患者の30%までが再発性放射線耐性疾患を発症する。さらに、生化学的再発後に救助放射線療法を受ける患者の50%は、疾患の進行を有するであろう。放射線毒性は治癒用量を達成する上での大きな障害である。
【0049】
再発性PCaの標準治療は、アンドロゲンシグナル伝達の中断である。後期PCaの治療法は、アンドロゲン合成またはアンドロゲン受容体を遮断することにより、アンドロゲン軸を標的とする。ATTの初期効能にもかかわらず、PCaは耐性になり、多くの患者は、特徴的な神経内分泌特性を有する去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)を発症する。アンドロゲン標的療法(ATT)に対する最終的な耐性の発生には、現在治癒的アプローチがなく、したがって、当技術分野においてアンメットニーズが存在する。
【0050】
本発明者らは、腫瘍増大を補助するその能力に基づいて、CAFと名付けたものを構成する様々な線維芽細胞集団を同定した。共通の間葉系細胞表面マーカーを介して同定された様々な線維芽細胞集団のうち、CD105を発現する細胞集団は、既存の腫瘍上皮の増大に重要であり、さらにPCaにおける神経内分泌機能を4つの方法で促進することが判明した:1)2つの非腫瘍増強NAF及びCAFHiPとPCa上皮との組換えは、腫瘍誘導性CAFにおけるのと同様の腫瘍を生じ、2)ヒトPCa組織で同定されたCD105の濃縮は、ATTによってさらに強化され、3)CD105CAFの局在化はNEDの領域に限定され、4)3D培養及びマウス実験におけるCD105中和抗体の使用により、アンドロゲン軸標的化との関連において上皮増大が低減した。本発明者らは、CAFHiPにおけるCD105集団の減少と、インビボでの腫瘍増大の低減とを相関させた。ここで、培養に関連する細胞集団ドリフトを利用して、CD105の変化を明らかにした。しかし、この培養関連ドリフトは、組織で観察されたものとは反対に、CD90集団の変化を含んでいた。ATTによって誘導された間質CD105の変化は、パラクリンシグナル伝達を介して上皮NEDを媒介することが見出された。
【0051】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、ATTとCD105の拮抗作用の組み合わせは、合成致死性の例である。進行CRPCにおけるATT耐性は、腫瘍の不均質性に関連する可変応答のために生じることが知られている。本発明者らは、CD105の亢進がATT誘発NEDのメディエーターであることを見出した。これらの研究において、本発明者らは、CD105線維芽細胞集団が、アンドロゲンが切除された状態で生存する潜在的手段としてSFRP1を発現することを確認した。CD105に拮抗することにより、前立腺腫瘍のSFRP1発現及びNEDを阻害した。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、SFRP1は、増殖維持と幹様の特徴とのバランスに関与している可能性が高い。以前の研究では、SFRP1が、古典的マーカーであるオーロラキナーゼ、n-myc、及びセクレトグラニン-3を含むPCa細胞において神経内分泌シグネチャーを増強することが、本発明者らによって見出された(Beltran et al., 2012, J Amer Soc Clin Oncology 30, e386-389)。さらに、CRPCの組織組換え異種移植モデルでは、去勢とそれに続くエンザルタミド治療は、腫瘍増殖を有意に減少させなかったが、間質のない単層における同じ上皮は、エンザルタミド治療に対して感受性であった。したがって、いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、間質線維芽細胞の役割は、CRPCのパラクリン介在性発症に必要である。
【0052】
元々、増殖する内皮において同定されたIII型TGFβ/BMP共受容体であるエンドグリン(CD105)は、前立腺癌を含むいくつかのがんにおいてアップレギュレートされる。CD105は、TGF-βシグナル伝達に拮抗し、骨形態形成タンパク質(BMP)シグナル伝達を促進し、TGF-βシグナル伝達に拮抗する。種々のがんにおけるCD105発現は、従来の治療法における進行、転移、攻撃性、及び回避と相関している。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、本発明者らは、CD105の標的化が、前立腺癌を、がん療法に対して感受性化させると考えている。実証するために、本発明者らは、BMPシグナル伝達をブロックする、部分的にヒト化されたモノクローナル抗体である、TRC105を使用した。
【0053】
本明細書中に記載するように、本発明者らは、CD105発現前立腺線維芽細胞が、腫瘍誘導性CAFを富化し、アンドロゲン標的療法(ATT)によりさらに増幅され、パラクリン様式でCRPCに寄与すると同定した。線維芽細胞性CD105は、前立腺腫瘍の進行及び神経内分泌の分化を高める。中和抗体でCD105に拮抗することにより、CAFによるSFRP1発現をダウンレギュレートする。
【0054】
さらに、本発明者らは、TRC105を用いたBMP/CD105シグナル伝達の阻止により、SIRT1発現及びその下流の制御タンパク質である、p53及びペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ共活性化因子1α(PGC1α)が阻害されることを実証する。
【0055】
したがって、CD105に拮抗することにより、PCa腫瘍を、ATT及び放射線に対して感受性化させる。
【0056】
本発明は、これらの知見に少なくとも部分的に基づいている。実施形態は、対象においてがんを感受性化させる方法、及び対象において、がんを治療し、がんの進行を遅らせ、がんの重症度を低下させ、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させる方法の、当該技術における必要性に取り組む。実施形態はさらに、がん療法により治療を受けている対象において、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させる方法を提供する。
【0057】
がんを感受性化させる方法
本発明の種々の実施形態は、それを必要とする対象においてがんを感受性化させる方法であって、CD105アンタゴニストを提供すること、及び対象にCD105アンタゴニストを投与し、それによってがんを感受性化させることを含む方法を提供する。種々の実施形態では、この方法は、がん療法を施すことをさらに含む。種々の実施形態では、この方法は、CD105アンタゴニストを投与する前に、がん治療に対してがんを感受性化させる必要がある対象を特定することをさらに含む。
【0058】
本発明の種々の実施形態は、それを必要とする対象においてがんを感受性化させる方法であって、対象にCD105アンタゴニストを投与し、それによってがんを感受性化させることを含む方法を提供する。種々の実施形態では、この方法は、がん療法を施すことをさらに含む。種々の実施形態では、この方法は、CD105アンタゴニストを投与する前に、がん治療に対してがんを感受性化させる必要がある対象を特定することをさらに含む。
【0059】
本発明の種々の実施形態は、がん療法に応答しない対象においてがんを感受性化させる方法であって、対象にCD105アンタゴニストを投与し、それによってがんを感受性化させることを含む方法を提供する。種々の実施形態では、この方法は、がん療法を施すことをさらに含む。
【0060】
本発明の種々の実施形態は、それを必要とする対象においてがんを感受性化させる方法であって、CD105アンタゴニストを投与する前に、がん治療に対してがんを感受性化させる必要がある対象を特定すること、及び対象にCD105アンタゴニストを投与し、それによってがんを感受性化させることを含む方法を提供する。種々の実施形態では、この方法は、がん療法を施すことをさらに含む。種々の実施形態では、対象は以前にがん療法を受けたことがある。
【0061】
種々の実施形態では、がんは、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、腎細胞癌、黒色腫、肉腫、頭頸部癌、膠芽腫、またはそれらの組み合わせである。種々の実施形態では、がんは、放射線及び/またはアンドロゲン標的療法に耐性である。種々の実施形態では、がんは、前立腺癌である。種々の実施形態では、がんは、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)である。
【0062】
種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、CD105に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。種々の他の実施形態では、CD105アンタゴニストは、TRC105またはその抗原結合断片である。
【0063】
種々の実施形態ではがん療法は、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである。種々の実施形態では、対象は、CD105アンタゴニストの投与及びがん療法によって治療する。
【0064】
種々の実施形態では、本発明は、対象におけるがんを、がん療法に対して感受性化させる方法を提供する。方法は、CD105アンタゴニストを提供すること、及び対象にCD105アンタゴニストを投与し、それによってがんを、がん治療に対して感受性化させることを含む。種々の実施形態ではがん療法は、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである。種々の実施形態では、この方法は、がん療法で対象を治療することをさらに含む。
【0065】
治療方法
本発明の種々の実施形態は、それを必要とする対象において、がんを治療し、がんの進行を遅らせ、がんの重症度を低下させ、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させる方法であって、対象にCD105アンタゴニストを投与すること、及びがん療法を対象に施し、これにより、対象において、がんを治療し、がんの進行を遅らせ、がんの重症度を低下させ、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させることを含む方法を提供する。
【0066】
種々の実施形態では、がんは、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、腎細胞癌、黒色腫、肉腫、頭頸部癌、膠芽腫、またはそれらの組み合わせである。種々の実施形態では、がんは、放射線及び/またはアンドロゲン標的療法に耐性である。種々の他の実施形態では、がんは、前立腺癌である。種々の実施形態では、がんは、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)である。
【0067】
種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、CD105に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。種々の他の実施形態では、CD105アンタゴニストは、TRC105またはその抗原結合断片である。
【0068】
種々の実施形態ではがん療法は、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである。
【0069】
種々の実施形態では、本発明は、対象において、がんを治療し、がんの進行を遅らせ、がんの重症度を低下させ、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させる方法を提供する。方法は、CD105アンタゴニストを提供すること、及び対象にCD105アンタゴニストを投与し、それによってがんを、がん治療に対して感受性化させること、及び対象にがん療法を施して、これにより、対象において、がんを治療し、がんの進行を遅らせ、がんの重症度を低下させ、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させることを含む。種々の実施形態ではがん療法は、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである。
【0070】
種々の実施形態では、本発明は、対象において、がんを治療し、がんの進行を遅らせ、がんの重症度を低下させ、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させる方法を提供する。方法は、CD105アンタゴニストを提供すること、対象にCD105アンタゴニストを投与し、及び対象にがん療法を施して、これにより、対象において、がんを治療し、がんの進行を遅らせ、がんの重症度を低下させ、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させることを含む。種々の実施形態ではがん療法は、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである。
【0071】
種々の実施形態では、本発明は、対象において、去勢抵抗性前立腺癌を治療し、去勢抵抗性前立腺癌の進行を遅らせ、去勢抵抗性前立腺癌の重症度を低下させ、去勢抵抗性前立腺癌の再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させる方法を提供する。方法は、対象にCD105アンタゴニストを投与し、対象にアンドロゲン標的療法を施して、これにより、対象において、去勢抵抗性前立腺癌を治療し、去勢抵抗性前立腺癌の進行を遅らせ、去勢抵抗性前立腺癌の重症度を低下させ、去勢抵抗性前立腺癌の再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させることを含む。種々の実施形態では、アンドロゲン標的療法はエンザルタミドである。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、TRC105またはその抗原結合断片である。種々の実施形態では、抗原は、CD105である。種々の実施形態では、抗原は、エンドグリンである。
【0072】
再発の防止及び/または再発の可能性の低減
本発明の種々の実施形態は、がん療法により治療を受けている対象において、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させる方法であって、対象にCD105アンタゴニストを投与すること、及びがん療法を対象に施し、これにより、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させることを含む方法を提供する。
【0073】
種々の実施形態では、がんは、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、腎細胞癌、黒色腫、肉腫、頭頸部癌、膠芽腫、またはそれらの組み合わせである。種々の実施形態では、がんは、放射線及び/またはアンドロゲン標的療法に耐性である。種々の実施形態では、がんは、前立腺癌である。種々の実施形態では、がんは、去勢抵抗性前立腺癌である。
【0074】
種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、CD105に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、TRC105またはその抗原結合断片である。種々の実施形態では、抗原は、CD105である。種々の実施形態では、抗原は、エンドグリンである。
【0075】
種々の実施形態では、がん療法は、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである。種々の実施形態では、がん療法は、以前に対象に施されたがん療法と同じである。種々の実施形態では、がん療法は、以前に対象に施されたがん療法と異なっている。
【0076】
種々の実施形態では、本発明は、対象において、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させる方法を提供する。方法は、CD105アンタゴニストを提供すること、対象にCD105アンタゴニストを投与し、これにより、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させることを含む。種々の実施形態では、対象は以前にがん療法を受けたことがある。種々の実施形態では、がん療法は、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、がん療法は、がんまたはがんの少なくとも一部を除去する外科手術である。いくつかの実施形態では、対象は、がんを除去する外科手術、またはがんの少なくとも一部を除去する外科手術による治療を受けたことがある。一実施形態では、外科手術は乳房切除術である。別の実施形態では、外科手術は睾丸切除術である。
【0077】
本発明の種々の実施形態は、がん療法により治療を受けている対象において、去勢抵抗性前立腺癌の再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させる方法であって、対象にCD105アンタゴニストを投与すること、及びがん療法を対象に施し、これにより、去勢抵抗性前立腺癌の再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させることを含む方法を提供する。
【0078】
種々の実施形態では、対象はヒトである。種々の実施形態では、対象は、ヒト、サル、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ブタ、ウサギ、マウス及びラットを含むが、これらに限定されない哺乳動物対象である。
【0079】
種々の実施形態では、がんは、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、腎細胞癌、黒色腫、肉腫、頭頸部癌、膠芽腫、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、がんは、前立腺癌である。種々の実施形態では、がんは、去勢抵抗性前立腺癌である。他の実施形態では、がんは、乳癌である。種々の実施形態では、CD105アンタゴニスト及びがん療法は、連続的に、代替的にまたは同時に投与する。種々の実施形態では、CD105アンタゴニスト及びがん療法は、連続的に投与する。種々の実施形態では、CD105アンタゴニスト及びがん療法は、代替的に投与する。種々の実施形態では、CD105アンタゴニスト及びがん療法は、同時に投与する。種々の実施形態では、複数のがん療法を施すことができる。
【0080】
本明細書で使用する「連続的に」または「連続投与される」という用語は、第1の治療薬が投与され、続いて第2の治療薬が投与されるように、治療薬(すなわち、CD105アンタゴニストまたはがん療法)を順番に投与することを指す。例えば、CD105アンタゴニストを投与した後にがん療法を投与するか、またはその逆を行う。様々な実施形態において、第1の治療薬の投与は、第2の治療薬の投与の直前、1分、5分、10分、20分、30分または45分前に投与することができる。その他の実施形態では、第1の治療薬は、第2の治療薬の1時間前、2時間前、3時間前、4時間前、5時間前、6時間前、12時間前または24時間前に投与する。さらにその他の実施形態では、第1の治療薬は、第2の治療薬の2日前、3日前または4日前に投与する。
【0081】
本明細書で使用する「代替的」という用語は、第2の治療薬に対する第1の治療薬の投与を指し、逆もまた同様である。
【0082】
本明細書で使用する「同時に」という用語は、一時に/一緒に、第1の治療薬及び第2の治療薬を投与することを指す。いくつかの実施形態では、治療薬は単一の組成物である。種々の実施形態では、治療薬は別々の組成物中にある。
【0083】
種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、1日1回、1日2回、1週間に1回、1週間に2回、2週間に1回、3週間に1回、または1か月に1回投与する。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、1週間に1回投与する。種々の他の実施形態では、CD105アンタゴニストは、2週間に1回投与する。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、腫瘍がもはや検出されなくなるまでの期間、投与する。いくつかの実施形態では、腫瘍の検出には、X線撮影及び/または血液検査が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
種々の実施形態では、がん療法は、特定の治療のための標準的治療のために確立された期間にわたって投与する。種々の実施形態では、がん療法は、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月またはこれらの組み合わせの期間投与する。種々の実施形態では、がん療法は、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、10年間、またはこれらの組み合わせの期間投与する。
【0085】
種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、がん療法と並行して投与する。例えば、CD105アンタゴニストを週に1回投与し、がん療法を1か月間投与する場合、CD105アンタゴニストは、それを必要とする対象に4回投与する。
【0086】
種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、1週間に1回投与し、がん療法は1か月間投与する。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、1週間に1回投与し、がん療法は2か月間投与する。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、1週間に1回投与し、がん療法は4か月間投与する。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、1週間に1回投与し、がん療法は8か月間投与する。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、1週間に1回投与し、がん療法は1年間投与する。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、1週間に1回投与し、がん療法は1年以上にわたって投与する。
【0087】
種々の他の実施形態では、CD105アンタゴニストは、2週間に1回投与し、がん療法は1か月間投与する。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、2週間に1回投与し、がん療法は2か月間投与する。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、2週間に1回投与し、がん療法は4か月間投与する。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、2週間に1回投与し、がん療法は8か月間投与する。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、2週間に1回投与し、がん療法は1年間投与する。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、2週間に1回投与し、がん療法は1年以上にわたって投与する。
【0088】
種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、がん療法の投与前、投与中、投与後に投与する。いくつかの実施形態では、CD105アンタゴニストは、がん療法の投与前に投与する。いくつかの実施形態では、CD105アンタゴニストは、がん療法の投与中に投与する。いくつかの実施形態では、CD105アンタゴニストは、がん療法の投与後に投与する。
【0089】
種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、CD105に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。他の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。種々の実施形態では、抗体は、任意の動物由来であり得る。動物由来の例としては、ヒト、非ヒト霊長類、サル、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ及びロバが挙げられるが、これらに限定されない。種々の実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。種々の実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。特定の実施形態では、CD105アンタゴニストは、TRC105またはその抗原結合断片である。種々の実施形態では、抗原は、CD105である。種々の実施形態では、抗原は、エンドグリンである。
【0090】
種々の実施形態では、がんは、機能性p53を有する。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストの投与は、がんを有する対象におけるATPの枯渇をもたらす。種々の実施形態では、機能性p53を有するがんにおけるATPの枯渇は、放射線感受性化をもたらす。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、CD105に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、TRC105またはその抗原結合断片である。
【0091】
種々の実施形態では、CD105アンタゴニストの投与によって観察される感受性化は、非血管機構を介して起こる。
【0092】
いくつかの実施形態では、がん療法は外科手術である。種々の実施形態では、がん療法を施すことは、対象を外科手術することを含む。種々の実施形態では、外科手術はがんを除去する。特定の実施形態では、外科手術は乳房切除術である。特定の実施形態では、外科手術は睾丸切除術(外科的去勢)である。
【0093】
いくつかの実施形態では、がん療法は放射線療法である。種々の実施形態では、がん療法を施すことは、対象に放射線を投与することを含む。種々の実施形態では、がん療法を施すことは、対象に放射線治療薬を投与することを含む。いくつかの実施形態では、CD105アンタゴニスト及び放射線治療薬は、単一の組成物で提供される。他の実施形態では、CD105アンタゴニスト及び放射線治療薬は、別々の組成物で提供される。
【0094】
種々の実施形態では、放射線療法は、焦点式照射療法、外部ビーム放射線治療、従来の外部ビーム放射線治療(2DXRT)、画像誘導放射線療法(IGRT)、3次元コンフォーマル放射線療法(3D-CRT)、強度変調放射線治療(IMRT)、ヘリカルトモセラピー、回転型強度変調放射線治療(VMAT)、粒子線治療、陽子線治療、コンフォーマル陽子線放射線療法、オーガー療法(AT)、定位放射線療法、定位放射線手術(SRS)、体幹部定位放射線治療(SBRT)、近接照射療法、内部放射線療法、術中放射線療法(IORT)、放射線免疫療法、放射性同位元素治療、多分割放射線療法もしくは少分割放射線療法、またはそれらの組み合わせである。
【0095】
対象に投与する有効量の放射線の典型的な投与量は、製造業者、放射線生物学者、放射線腫瘍医または医学物理学者によって推奨される、既知の放射線療法技術が使用される範囲内、及び細胞におけるインビトロ応答もしくは動物モデルにおけるインビボ応答によって当業者に示される範囲内であり得る。このような投与量は、典型的には、関連する生物活性を失うことなく、濃度または量を最大約1桁低下させることができる。実際の投与量は、医師の判断、患者の状態、及び例えば、関連する培養細胞または組織培養による組織試料のインビトロ応答性、または適切な動物モデルで観察される応答に基づく放射線療法技術の有効性に依存し得る。例えば、膵臓癌のマウスモデルは、SonRx技術を用いたエネルギー応答性の薬剤送達、及びX-RAD小動物照射装置を用いた焦点式照射療法に供してもよい。SonRx技術及び放射線療法における担体、薬剤、超音波及び放射線に関する適切なパラメータ(例えば、それらの種類、投与量及びタイミング)を、臨床転帰及び治療可能比を最大化するために特定し、これらのデータは、ヒトにおける臨床試験及び治療へ転換する基礎として利用する。本発明のいくつかの実施形態では、典型的なインビトロ及びインビボの用量は、1Gy~50Gyの範囲の全治療用量で、50cGy~8Gyの1日分割分の範囲であり得る。
【0096】
種々の実施形態では、放射線量は、約1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、または90~100cGyの1日治療線量を有する。種々の実施形態では、放射線量は、約0.1~1、1~2、2~3、3~4、4~5、5~6、6~7、7~8、8~9、または9~10Gyの1日治療線量を有する。種々の実施形態では、放射線量は、約1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、または90~100Gyの1日治療線量を有する。種々の実施形態では、放射線量は、約0.1~1、1~2、2~3、3~4、4~5、5~6、6~7、7~8、8~9、または9~10Gyの全治療線量を有する。種々の実施形態では、放射線量は、約1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、または90~100Gyの全治療線量を有する。
【0097】
いくつかの実施形態では、がん療法は化学療法である。種々の実施形態では、がん療法を施すことは、対象に化学療法薬を施すことを含む。いくつかの実施形態では、CD105アンタゴニスト及び化学療法薬は、単一の組成物で提供される。他の実施形態では、CD105アンタゴニスト及び化学療法薬は、別々の組成物で提供される。
【0098】
種々の実施形態では、がん療法は、チロシンキナーゼ阻害剤を含まない。種々の実施形態では、がん療法は、アキシチニブを含まない。種々の実施形態では、がん療法は、パゾパニブを含まない。種々の実施形態では、がん療法は、ソラフェニブを含まない。
【0099】
いくつかの実施形態では、がん療法はホルモン療法である。種々の実施形態では、がん療法を施すことは、対象にホルモン治療薬を投与することを含む。いくつかの実施形態では、CD105アンタゴニスト及びホルモン治療薬は、単一の組成物で提供される。他の実施形態では、CD105アンタゴニスト及びホルモン治療薬は、別々の組成物で提供される。ある種の実施形態では、ホルモン治療薬は、エンザルタミドである。ある種の実施形態では、ホルモン治療薬は、アビラテロンである。種々の実施形態では、TRC105及びアビラテロンを、対象に投与する。
【0100】
いくつかの実施形態では、ホルモン療法は、アンドロゲン除去療法である。他の実施形態では、ホルモン療法はアンドロゲン標的療法(ATT)である。本発明によれば、アンドロゲン除去療法(ADT、アンドロゲン抑制療法とも呼ばれる)は、前立腺癌を治療するためのホルモン療法を指す。前立腺癌細胞は、通常、テストステロンなどのアンドロゲンホルモンが増殖することを必要とする。ADTは、薬物または外科手術によりアンドロゲンホルモンのレベルを低下させて前立腺癌細胞の増殖を防ぐ。手術アプローチには、睾丸切除(外科的去勢)が含まれる。薬学的アプローチには、抗アンドロゲン及び化学去勢が含まれる。
【0101】
種々の実施形態では、がん療法を施すことは、対象に第2の治療薬を投与することを含む。いくつかの実施形態では、CD105アンタゴニスト及び第2の治療薬は、単一の組成物で提供される。他の実施形態では、CD105アンタゴニスト及び第2の治療薬は、別々の組成物で提供される。種々の実施形態では、第2の治療薬は、放射線治療薬、化学療法薬、またはホルモン治療薬、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は放射線治療薬である。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は化学治療薬である。いくつかの実施形態では、第2の治療薬はホルモン治療薬である。
【0102】
本発明によれば、本発明によれば、化学治療薬の例としては、テモゾロマイド、アクチノマイシン、アリトレチノイン、オールトランスレチノイン酸、アザシチジン、アザチオプリン、ベバシズマブ、ベキサトテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、カペシタビン、セツキシマブ、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、例えばDoxil(ペグ化形態)、Myocet(非ペグ化形態)及びCaelyxなどのリポソーム封入ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エルロチニブ、エトポシド、フルオロウラシル、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、イピリムマブ、イリノテカン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトキサントロン、オクレリズマブ、オファツムマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、パニツマブ、ペメトレキセド、リツキシマブ、タフルポシド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、トレチノイン、バルルビシン、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ボリノスタット、ロミデプシン、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、クラドリビン、クロファラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ペントスタチン、マイトマイシン、イクサベピロン、エストラムスチン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾンまたはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態では、化学治療薬はタキサンである。タキサンの例としては、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、ナブパクリタキセル、ドセタキセル、及びカバジタキセルが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、化学療法剤はビンカアルカロイドである。ビンカアルカロイドの例としては、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、化学療法剤は白金系薬剤である。白金系薬物の例としては、オキサリプラチン、シスプラチン、リポプラチン、(シスプラチンのリポソーム型)、カルボプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、及びトリプラチンが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、化学療法剤はアントラサイクリンである。アントラサイクリンの例としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、アクラルビシン、バルルビシン、及びミトキサントロンが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、担体に負荷される化学療法剤は、ドキソルビシン、またはその機能的同等物、類似体、誘導体、変異体もしくは塩、またはそれらの組み合わせである。
【0103】
本発明によれば、ホルモン治療薬の例としては、抗アンドロゲン、VT-464、ODM-201、ガレテロン、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、エンザルタミド、アパルタミド(ARN-509)、酢酸シプロテロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、スピロノラクトン、カンレノン、ドロスピレノン、ケトコナゾール、トシルタミド(フルリジル(Fluridil))、シメチジンなどのARアンタゴニスト;テストステロンエステル(テストステロンエナンテート、プロピオネート、またはシピオネートなど)、エノボサーム(Ostarine、MK-2866、GTx-024)、BMS-564,929、LGD-4033、AC-262,356、JNJ-28330835、LGD-2226、LGD-3303、S-40503、S-23、及びアンダリン(S-4)などの選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM);フィナステリド、デュタステリド、アルファトラジオール、及びノコギリヤシ抽出物などの5α-レダクターゼ阻害剤;酢酸シプロテロン、スピロノラクトン、ダナゾール、ゲストリノン、ケトコナゾール、アビラテロン、及び酢酸アビラテロンのようなCYP17A1(17α-ヒドロキシラーゼ、17,20-リアーゼ)阻害剤;ダナゾール、ゲストリノン、及び酢酸アビラテロンなどの3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害剤;ダナゾール及びシンバスタチンなどの17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害剤;アミノグルテチミド、ダナゾールなどのCYP11A1(コレステロール側鎖開裂酵素)阻害剤;スタチン(例えば、アトルバスタチン、シンバスタチン)などのHMG-CoAレダクターゼ阻害剤;抗ゴナドトロピン、プロゲステロン、酢酸シプロテロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、スピロノラクトン及びドロスピレノンなどのプロゲストゲン;エストラジオール、エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、及び結合型ウマエストロゲンなどのエストロゲン;GnRH類似体、ブセレリン、デスロレリン、ゴナドレリン、ゴセレリン、ヒストレリン、リュープロレリン、ナファレリン、トリプトレリンなどのGnRHアゴニスト;アバレリクス、セトロレリックス、デガレリクス、及びガニレリクスなどのGnRHアンタゴニスト;アナボリックステロイド(例えば、ナンドロロン、オキサンドロロン);LHRHアゴニスト、LHRHアンタゴニスト、ロイプロリド、ゴセレリン、トリプトレリン、ヒストレリン、及びデガレリクスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの薬剤は、複数の作用機序を介して作用することができ、従って、複数のカテゴリーの例として挙げられる。
【0104】
用法及び用量
本明細書に記載されている治療薬(例えば、CD105アンタゴニスト、放射線治療薬、化学療法薬及びホルモン治療薬)の有効量の典型的な投与量は、製造者によって推奨される、既知の治療分子または化合物が使用される範囲内、及び細胞におけるインビトロ応答もしくは動物モデルにおけるインビボ応答によって当業者に示される範囲内であり得る。このような投与量は、典型的には、関連する生物活性を失うことなく、濃度または量を最大約1桁低下させることができる。実際の投与量は、医師の判断、患者の状態、及び例えば、関連する培養細胞または組織培養による組織試料のインビトロ応答性、または適切な動物モデルで観察される応答に基づく治療方法の有効性に依存し得る。種々の実施形態では、治療薬は、1日1回(SID/QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)、1日4回(QID)、またはそれ以上投与され、こうして対象に有効量の治療薬を投与し、有効量は、本明細書に記載の投与量のいずれか1つまたは複数である。
【0105】
種々の実施形態では、本明細書に記載の治療薬(例えば、CD105アンタゴニスト、放射線治療薬、化学療法薬及びホルモン治療薬)は、約0.001~0.01、0.01~0.1、0.1~0.5、0.5~5、5~10、10~20、20~50、50~100、100~200、200~300、300~400、400~500、500~600、600~700、700~800、800~900、もしくは900~1000mg/kgまたはそれらの組み合わせで投与する。種々の実施形態では、本明細書に記載の治療薬(例えば、CD105アンタゴニスト、放射線治療薬、化学療法薬及びホルモン治療薬)は、約0.001~0.01、0.01~0.1、0.1~0.5、0.5~5、5~10、10~20、20~50、50~100、100~200、200~300、300~400、400~500、500~600、600~700、700~800、800~900、もしくは900~1000mg/mまたはそれらの組み合わせで投与する。種々の実施形態では、本明細書に記載の治療薬は、1回、2回、3回またはそれ以上の回数で投与する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療薬は、1日に1~3回、1週間に1~7回、1か月に1~9回、または1年に1~12回投与する。さらにいくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療薬は、約1~10日、10~20日、20~30日、30~40日、40~50日、50~60日、60~70日、70~80日、80~90日、90~100日、1~6か月、6~12か月、または1~5年投与する。ここで、「mg/kg」とは、対象の体重1kgあたりのmgを意味し、「mg/m」は対象の体表面積1m当たりのmgを指す。
【0106】
種々の実施形態では、本明細書に記載の治療薬(例えば、CD105アンタゴニスト、放射線治療薬、化学療法薬及びホルモン治療薬)の有効量は、約0.001~0.01、0.01~0.1、0.1~0.5、0.5~5、5~10、10~20、20~50、50~100、100~200、200~300、300~400、400~500、500~600、600~700、700~800、800~900、もしくは900~1000μg/kg/日のうちのいずれか1つまたは複数、またはそれらの組み合わせである。種々の実施形態では、本明細書に記載の治療薬(例えば、CD105アンタゴニスト、放射線治療薬、化学療法薬及びホルモン治療薬)の有効量は、約0.001~0.01、0.01~0.1、0.1~0.5、0.5~5、5~10、10~20、20~50、50~100、100~200、200~300、300~400、400~500、500~600、600~700、700~800、800~900、もしくは900~1000μg/m/日のうちのいずれか1つまたは複数、またはそれらの組み合わせである。種々の実施形態では、本明細書に記載の治療薬(例えば、CD105アンタゴニスト、放射線治療薬、化学療法薬及びホルモン治療薬)の有効量は、約0.001~0.01、0.01~0.1、0.1~0.5、0.5~5、5~10、10~20、20~50、50~100、100~200、200~300、300~400、400~500、500~600、600~700、700~800、800~900、もしくは900~1000mg/kg/日のうちのいずれか1つまたは複数、またはそれらの組み合わせである。種々の実施形態では、本明細書に記載の治療薬(例えば、CD105アンタゴニスト、放射線治療薬、化学療法薬及びホルモン治療薬)の有効量は、約0.001~0.01、0.01~0.1、0.1~0.5、0.5~5、5~10、10~20、20~50、50~100、100~200、200~300、300~400、400~500、500~600、600~700、700~800、800~900、もしくは900~1000mg/m/日のうちのいずれか1つまたは複数、またはそれらの組み合わせである。ここで、「μg/kg/日」または「mg/kg/日」とは、1日あたりの対象の体重1kgあたりのμgまたはmgを指し、「μg/m/日」または「mg/m/日」とは、1日あたりの対象の体表面積1mあたりのμgまたはmgを指す。
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療薬(例えば、CD105アンタゴニスト、放射線治療薬、化学療法薬及びホルモン治療薬)は、がんの治療段階で(すなわち、対象が既にがんを発症している場合)投与してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療薬(例えば、CD105アンタゴニスト、放射線治療薬、化学療法薬及びホルモン治療薬)は、がんの維持段階で(すなわち、対象が既にがん寛解を達成する過程にある場合)投与してもよい。他の実施形態では、本明細書に記載の治療薬(例えば、CD105アンタゴニスト、放射線治療薬、化学療法薬及びホルモン治療薬)は、がんの再発予防段階で(すなわち、対象ががんの再発を起こさないが、がん再発を発症する可能性のある、またはその過程にある場合)投与してもよい。
【0108】
種々の実施形態では、対象に第2の治療薬を投与する。種々の実施形態では、第2の治療薬は、放射線治療薬、化学療法薬、またはホルモン治療薬、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は放射線治療薬である。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は化学治療薬である。いくつかの実施形態では、第2の治療薬はホルモン治療薬である。
【0109】
種々の実施形態では、組成物中の第2の治療薬は、対象の体重1kg当たりmg、例えば、約0.001~0.01、0.01~0.1、0.1~0.5、0.5~5、5~10、10~20、20~50、50~100、100~200、200~300、300~400、400~500、500~600、600~700、700~800、800~900、もしくは900~1000mg/kgで提供する。種々の実施形態では、組成物中の第2の治療薬は、対象の体表面積1mあたりmg、例えば、約0.001~0.01、0.01~0.1、0.1~0.5、0.5~5、5~10、10~20、20~50、50~100、100~200、200~300、300~400、400~500、500~600、600~700、700~800、800~900、もしくは900~1000mg/mで提供する。
【0110】
本発明によれば、本明細書に記載の治療薬(例えば、CD105アンタゴニスト、放射線治療薬、化学療法薬及びホルモン治療薬)は、適切な投与様式、例えば、治療薬それぞれに対し製造者が推奨する投与様式を用いて投与することができる。本発明によれば、種々の経路を利用して、本明細書に記載の治療薬(例えば、CD105アンタゴニスト、放射線治療薬、化学療法薬及びホルモン治療薬)を投与することができる。「投与経路」とは、経口、局所、エアロゾル、鼻内、吸入による、肛門、肛門内、肛門周囲、経粘膜、経皮、非経口、経腸、連続注入による、または埋め込み型ポンプもしくはリザーバによる、または局所投与を含むがこれらに限定されない、当該分野で既知の任意の投与経路を指してもよい。「非経口」は、一般に、注射に関連する投与経路を指し、腫瘍内、頭蓋内、脳室内、髄腔内、硬膜外、硬膜内、眼窩内、眼内、注入、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、くも膜下腔内、子宮内、血管内、静脈内、動脈内、くも膜下腔、嚢下、皮下、経粘膜、または経気管注射を含む。非経口経路を介して、薬剤または組成物は、注入または注射用の溶液または懸濁液の形態であってもよく、または凍結乾燥粉末として存在してもよい。経腸経路を介する薬剤または組成物は、カプセル剤、ゲルカプセル剤、錠剤、糖衣錠、シロップ剤、懸濁剤、溶液、粉末、顆粒、エマルジョン、制御放出を可能にするマイクロスフェアもしくはナノスフェアもしくは脂質小胞もしくはポリマー小胞の形態であり得る。局所経路を介する薬剤または組成物は、エアロゾル、ローション、クリーム、ゲル、軟膏、懸濁液、溶液またはエマルジョンの形態であり得る。典型的には、組成物は注射によって投与する。これらの投与のための方法は、当業者に既知である。
【0111】
一実施形態では、薬剤または組成物を粉末形態で提供し、水などの液体と混合して飲料を形成することができる。本発明によれば、「投与すること」は、自己投与することであり得る。例えば、対象が本明細書に開示する組成物を摂取することを「投与する」とみなす。種々の実施形態では、本明細書に記載の治療薬(例えば、CD105アンタゴニスト、放射線治療薬、化学療法薬及びホルモン治療薬)は、頭蓋内に、脳室内に、髄腔内に、硬膜外に、硬膜内に、局所に、腫瘍内に、血管に、静脈内に、動脈内に、筋肉内に、皮下に、腹腔内に、鼻腔内に、経口で、眼窩内に、または眼内に投与する。
【0112】
種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、CD105に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。他の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。種々の実施形態では、抗体は、任意の動物由来であり得る。動物由来の例としては、ヒト、非ヒト霊長類、サル、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ及びロバが挙げられるが、これらに限定されない。種々の実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。種々の実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。特定の実施形態では、CD105アンタゴニストは、TRC105またはその抗原結合断片である。
【0113】
種々の実施形態では、組成物中のCD105アンタゴニストは、対象の体重1kg当たりmg、例えば、約0.001~0.01、0.01~0.1、0.1~0.5、0.5~5、5~10、10~20、20~50、50~100、100~200、200~300、300~400、400~500、500~600、600~700、700~800、800~900、もしくは900~1000mg/kgで提供する。種々の実施形態では、組成物中のCD105アンタゴニストは、対象の体表面積1mあたりmg、例えば、約0.001~0.01、0.01~0.1、0.1~0.5、0.5~5、5~10、10~20、20~50、50~100、100~200、200~300、300~400、400~500、500~600、600~700、700~800、800~900、もしくは900~1000mg/mで提供する。
【0114】
好ましい治療薬はまた、哺乳動物に投与された場合に、最小限の毒性を示す。
【0115】
種々の実施形態では、組成物は、1回、2回、3回またはそれ以上の回数で投与する。種々の実施形態では、組成物は、1日に1~3回、1週間に1~7回、1か月に1~9回、または1年に1~12回投与する。いくつかの実施形態では、組成物は、約1~10日、10~20日、20~30日、30~40日、40~50日、50~60日、60~70日、70~80日、80~90日、90~100日、1~6か月、6~12か月、または1~5年投与する。種々の実施形態では、組成物は、1日1回(SID/QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)、1日4回(QID)、またはそれ以上投与され、こうして対象に有効量のCD105アンタゴニスト及び第2の治療薬を投与し、有効量は、本明細書に記載の投与量のいずれか1つまたは複数である。
【0116】
種々の実施形態では、本発明の治療薬は、任意の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。本明細書で使用する場合、「賦形剤」とは、組成物または処方物を増量する目的で含まれる、組成物または処方物の有効成分と一緒に処方される天然または合成物質である。したがって、「賦形剤」は、多くの場合「増量剤」、「充填剤」または「希釈剤」と呼ばれる。非限定的な例として、本明細書に記載の治療薬に1種または複数の賦形剤を加え、組成物の1回分が1カプセルまたは錠剤に収まるように、組成物の体積またはサイズを増加させることができる。また、「賦形剤」は、活性成分の吸収または溶解を促進するなど、最終剤形中の活性成分を強化することができる。「薬学的に許容される賦形剤」は、一般的に安全で、毒性がなく、望ましい治療薬を調製するのに有用な賦形剤を意味し、獣医学的使用ならびにヒト医薬用途に許容される賦形剤を含む。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体、またはエアロゾル組成物の場合にはガス状であり得る。賦形剤の例としては、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、香料、防腐剤、酸化防止剤、可塑剤、ゲル化剤、増粘剤、硬膜剤、硬化剤、懸濁化剤、界面活性剤、保湿剤、担体、安定剤、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
種々の実施形態では、治療薬は、任意の薬学的に許容される担体を含み得る。本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」とは、目的の化合物を、ある組織、器官、または身体の一部から別の組織、器官、または身体の一部に運搬または輸送することに関与する薬学的に許容される物質、組成物またはビヒクルを指す。例えば、担体は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、もしくはカプセル化材料、またはそれらの組み合わせであってもよい。担体の各成分は、製剤の他の成分と相溶性がなくてはならないという点で、「薬学的に許容される」ものでなければならない。担体の各成分はまた、接触する可能性がある組織または器官と接触して使用するのに好適でなくてはならず、治療上の利点を過度に上回る毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、または他のいかなる合併症の危険性をも伴ってはならないことを意味する。
【0118】
治療薬はまた、経口投与用に、カプセル化、錠剤化するか、またはエマルジョンまたはシロップで調製することができる。薬学的に許容される固体または液体担体は、組成物を増強しまたは安定化させるため、または組成物の調製を容易にするために添加し得る。液体担体としては、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、グリセリン、生理食塩水、アルコール及び水が挙げられる。固体担体としては、デンプン、乳糖、硫酸カルシウム、二水和物、白土、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸、タルク、ペクチン、アカシア、寒天またはゼラチンが挙げられる。担体はまた、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートなどの持続放出性材料を、単独で、またはワックスとともに含むことができる。
【0119】
治療薬は、粉末形態のための乾式粉砕、混合、及び配合、必要に応じて、錠剤形態のための粉砕、混合、造粒、及び圧縮、または硬ゼラチンカプセル形態のための粉砕、混合及び充填を含む従来の製薬技術に従って製造する。液体担体を使用する場合、製剤は、シロップ、エリキシル、エマルジョンまたは水性もしくは非水性懸濁液の形態である。そのような液体製剤は、直接経口投与されるか、または軟質ゼラチンカプセルに充填される。
【0120】
治療薬は、治療有効量で送達することができる。正確な治療有効量は、所与の対象における治療の有効性に関して、最も効果的な結果をもたらすであろう組成物の量である。この量は、(活性、薬物動態、薬力学、及び生物学的利用能を含む)治療化合物の特性、(年齢、性別、疾患の種類及び段階、一般的な身体状態、所定の投与量に対する応答性、及び投薬の種類を含む)対象の生理学的状態、製剤中の薬学的に許容される担体(carrier)または担体(carriers)の性質、及び投与経路を含むが、これらに限定されない、種々の要因によって異なるであろう。臨床及び薬理学分野の当業者は、例えば、化合物の投与に対する対象の反応を監視し、それに応じて投与量を調整することによって、慣例的な実験を通じて治療有効量を決定することができるであろう。追加の指針については、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro ed. 20th edition, Williams & Wilkins PA, USA) (2000)を参照されたい。
【0121】
患者に投与する前に、配合物(formulant)を組成物に添加してもよい。液体配合物が好ましい。例えば、これらの配合物は、油、ポリマー、ビタミン、炭水化物、アミノ酸、塩、緩衝液、アルブミン、界面活性剤、増量剤またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0122】
炭水化物配合物は、糖もしくは糖アルコールなどの単糖類、二糖類または多糖類または水溶性グルカンを含む。糖類またはグルカンとしては、フルクトース、デキストロース、ラクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、スクロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、アルファ及びベータシクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルスターチ、及びカルボキシメチルセルロース、またはそれらの混合物を挙げることができる。「糖アルコール」は、-OH基を有するC4~C8炭化水素として定義され、ガラクチトール、イノシトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、グリセロール及びアラビトールを含む。上述のこれらの糖または糖アルコールは、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。糖または糖アルコールは、水性調製物中に可溶性である限り、使用量には一定の制限はない。一実施形態では、糖または糖アルコールの濃度は、1.0w/v%~7.0w/v%、より好ましくは2.0~6.0w/v%である。
【0123】
アミノ酸配合物は左旋性(L)体のカルニチン、アルギニン、及びベタインを含む;しかし、他のアミノ酸も加えられ得る。
【0124】
ポリマー配合物としては、平均分子量2,000と3,000との間のポリビニルピロリドン(PVP)、または平均分子量3,000と5,000との間のポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
【0125】
凍結乾燥前または再構成後の溶液のpH変化を最小にする組成の緩衝液を用いることもまた好ましい。ほとんどの任意の生理緩衝液は用いてもよく、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、及びグルタミン酸緩衝液またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、濃度は0.01~0.3モルである。製剤に加えることができる界面活性剤は、欧州特許第270,799号及び第268,110号に示されている。
【0126】
循環半減期を増加させるための別の薬物送達システムは、リポソームである。リポソーム送達システムを調製する方法は、Gabizon et al., Cancer Research (1982) 42:4734;Cafiso, Biochem Biophys Acta (1981) 649:129;及び Szoka, Ann Rev Biophys Eng (1980) 9:467に述べられている。その他の薬物送達システムは、当技術分野において既知であり、例えば、Poznansky et al., DRUG DELIVERY SYSTEMS (R. L. Juliano, ed., Oxford, N.Y. 1980), pp. 253-315;M. L. Poznansky, Pharm Revs (1984) 36:277に記載されている。
【0127】
液体治療薬を調製した後、それを凍結乾燥して、分解を防ぎ、無菌性を保持することができる。液体組成物を凍結乾燥するための方法は、当業者に既知である。使用直前に、組成物は、追加の成分を含み得る滅菌希釈剤(例えば、リンゲル液、蒸留水、または滅菌生理食塩水)で再構成することができる。再構成の際に、組成物は、当業者に知られている方法を用いて対象に投与する。
【0128】
治療薬は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌することができる。得られた溶液は、使用のために包装してもよいし、無菌条件下で濾過して凍結乾燥してもよく、凍結乾燥した製剤を投与前に滅菌溶液と混合する。組成物は、例えばpH調整剤及び緩衝剤、等張化剤などの、生理学的条件に近似させるのに必要とされる薬学的に許容される補助物質、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、及び安定剤(例えば、1~20%マルトースなど)を含む。
【0129】
本発明のキット
種々の実施形態では、本発明は、対象におけるがんを感受性化させるためのキットを提供する。このキットには、ある量のCD105アンタゴニスト;CD105アンタゴニストを使用してがんを感受性化させるための指示書が含まれている。種々の実施形態では、がんはがん療法に対して感受性化される。
【0130】
種々の実施形態では、本発明は、対象において、がんを治療し、がんの進行を遅らせ、がんの重症度を低下させ、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させるためのキットを提供する。このキットには、ある量のCD105アンタゴニスト;がん療法;CD105アンタゴニスト及びがん療法を使用して、対象において、がんを治療し、がんの進行を遅らせ、がんの重症度を低下させ、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させるための指示書が含まれている。
【0131】
種々の実施形態では、本発明は、対象において、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させるためのキットを提供する。このキットには、ある量のCD105アンタゴニスト;及びCD105アンタゴニストを使用してがんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させるための指示書が含まれている。種々の実施形態では、対象は以前にがん療法を受けたことがある。
【0132】
種々の実施形態では、CD105アンタゴニストは、CD105に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。他の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。種々の実施形態では、抗体は、任意の動物由来であり得る。動物由来の例としては、ヒト、非ヒト霊長類、サル、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ及びロバが挙げられるが、これらに限定されない。種々の実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。種々の実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。特定の実施形態では、CD105アンタゴニストは、TRC105またはその抗原結合断片である。
【0133】
種々の実施形態では、がん療法は、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、もしくは外科手術、またはそれらの組み合わせである。
【0134】
いくつかの実施形態では、がん療法は外科手術である。種々の実施形態では、キットは、対象に外科手術を行うための器具、道具、材料及び指示を含む。種々の実施形態では、外科手術はがんを除去する。特定の実施形態では、外科手術は乳房切除術である。特定の実施形態では、外科手術は睾丸切除術(外科的去勢)である。
【0135】
いくつかの実施形態では、がん療法は放射線療法である。種々の実施形態では、キットは、対象に放射線療法を施すための器具、道具、材料及び指示を含む。種々の実施形態では、このキットには、ある量の放射線治療薬及び放射線治療薬を使用して、対象において、がんを治療し、がんの進行を遅らせ、がんの重症度を低下させ、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させるための指示書が含まれている。いくつかの実施形態では、CD105アンタゴニスト及び放射線治療薬は、単一の組成物で提供される。他の実施形態では、CD105アンタゴニスト及び放射線治療薬は、別々の組成物で提供される。
【0136】
いくつかの実施形態では、がん療法は化学療法である。種々の実施形態では、このキットには、ある量の化学療法薬を使用して、対象において、がんを治療し、がんの進行を遅らせ、がんの重症度を低下させ、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させるための指示書が含まれている。いくつかの実施形態では、CD105アンタゴニスト及び化学療法薬は、単一の組成物で提供される。他の実施形態では、CD105アンタゴニスト及び化学療法薬は、別々の組成物で提供される。
【0137】
いくつかの実施形態では、がん療法はホルモン療法である。種々の実施形態では、このキットには、ある量のホルモン治療薬及びホルモン治療薬を使用して、対象において、がんを治療し、がんの進行を遅らせ、がんの重症度を低下させ、がんの再発を防止し、及び/または再発の可能性を低減させるための指示書が含まれている。いくつかの実施形態では、CD105アンタゴニスト及びホルモン療法薬は、単一の組成物で提供される。他の実施形態では、CD105アンタゴニスト及びホルモン療法薬は、別々の組成物で提供される。
【0138】
キットは、本発明の組成物または成分の少なくとも1つを含む材料または成分の集合体である。したがって、いくつかの実施形態では、キットは、上記の治療薬と複合体化した薬物送達分子を含む組成物を含有する。
【0139】
本発明のキットに構成された成分の正確な性質は、その意図された目的に依存する。ある実施形態では、キットは、特に、哺乳動物対象を治療する目的で構成されている。別の実施形態では、キットは、特に、ヒト対象を治療する目的で構成されている。さらなる実施形態では、キットは、これらに限定されないが、家畜、飼育動物及び実験動物などの対象を治療する、獣医学的用途のために構成されている。
【0140】
使用のための指示は、キットに含まれていてもよい。「使用のための指示」には、典型的には、キットのコンポーネントを使用して所望の結果に影響を及ぼすのに用いられる技術を記述した具体的な表現が含まれる。任意に、キットにはまた、容器、スプレーボトルもしくは缶、希釈剤、緩衝液、薬学的に許容される担体、シリンジ、カテーテル、アプリケータ(例えば、静脈内注入のアプリケータ、クリーム、ゲルもしくはローションなど)、ピペット操作もしくは測定ツール、包帯材料などの他の有用なコンポーネント、または当業者が容易に認識する他の有用な道具が含まれる。
【0141】
キットに組み込まれた材料またはコンポーネントは、その操作性及び有用性を保持する任意の便利かつ好適な方法で保管されて、開業医に提供することができる。例えば、コンポーネントは、溶解、脱水、または凍結乾燥形態であり得る。それらは、室温、冷蔵または凍結温度で提供することができる。これらのコンポーネントは、典型的には適切な包装材料(複数可)に含まれる。本明細書で使用する「包装材料」という語句は、本発明の組成物などのような、キットの内容物を収容するために使用される1つまたは複数の物理的構造を指す。包装材料は、周知の方法によって構築され、好ましくは滅菌された汚染のない環境を提供する。キットに用いられる包装材料は、アッセイ及び治療において慣習的に利用するものである。本明細書で使用する場合、「パッケージ」という用語は、個々のキットコンポーネントを保持することができる、ガラス、プラスチック、紙、ホイルなどの好適な固体マトリックスまたは材料を指す。したがって、例えば、パッケージは、適切な量の本明細書に記載の組成物を含有する、予め装填されたシリンジ、予め装填された注射ペン、またはガラスバイアルであり得る。包装材料は、一般に、キット及び/またはそのコンポーネントの内容及び/または目的を示す外部ラベルを有する。
【0142】
本発明の実施形態では、多くの変形形態及び代替の要素を開示している。さらに別の変形形態及び代替の要素が、当業者には明らかであろう。これらの変形形態の中には、本発明の方法、組成物、キット、及びシステムの構成モジュール、ならびに診断され、予後診断されまたはこれにより治療され得る種々の状態、疾患及び障害の選択が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の種々の実施形態は、これらの変形または要素のいずれをも具体的に含むかまたは除外することができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、本発明の特定の実施形態を記載及び請求するために使用される、成分の量、濃度、反応条件などの特性などを表す数字は、場合によっては「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。1つの非限定的な例として、当業者は、「約」という用語の意味において、5%を超えない値の差(増加または減少)を一般に考慮するであろう。したがって、いくつかの実施形態では、記述要件及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、特定の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施形態では、数値パラメータは、報告された有効数字の数と、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。本発明のいくつかの実施形態の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示された数値は、実施可能な限り正確に報告される。本発明のいくつかの実施形態で提示される数値は、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含むことができる。
【0144】
本明細書で開示する本発明の代替要素または実施形態のグループ分けは、限定として解釈されるべきではない。各グループメンバーは、個別に、またはグループの他のメンバーまたは本明細書に見出される他の要素との任意の組み合わせで参照し、請求することができる。便宜上及び/または特許性の理由から、1つまたは複数のグループの要素をグループに含めたり、グループから削除することができる。そのような任意の包含または削除が生じた場合、明細書は、改変されたグループを含むとみなされ、したがって、添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの記述要件を満たすものとみなされる。
【実施例
【0145】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これは本発明の純粋な例示であることが意図されており、決して本発明を限定するものとみなすべきではない。以下の実施例は、特許請求の範囲に記載された発明をより良く説明するために提供され、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。特定の材料が言及されている範囲で、それは単なる例示のためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。当業者は、発明能力を働かせることなく、かつ本発明の範囲から逸脱することなく、同等の手段または反応物を開発し得る。
【0146】
実施例1 去勢抵抗性前立腺癌におけるTRC105の血管外作用
前立腺癌組織由来の癌腫関連線維芽細胞に関するFACS分析を用いて、CD105が腫瘍誘導性を定義する重要な因子であることを確認した。CD105の発現は、放射線曝露により、前立腺癌種関連線維芽細胞において非がん性対応細胞におけるものよりも亢進し、増加した。TRC105は、CD105に対するブロッキング抗体であり、その同系リガンドの結合を妨げる。前立腺線維芽細胞にTRC105を用いて、ウェスタンブロッティングによりシグナル伝達活性を試験した。
【0147】
がんの間質支持が、その進行に重要であるので、CD105シグナル伝達に拮抗することにより、内皮細胞及びがん関連線維芽細胞の両方でその作用によってがん進行を阻害することができると考えられる。図7において、M1043(マウス特異的CD105アンタゴニスト)を用いて内因性宿主脈管構造をブロックすることにより、腫瘍血管分布が効果的に減少したが、ATTとの関連において腫瘍サイズに有意な効果はなかった。
【0148】
TRC105が、インビトロ及びインビボで腫瘍モデルの放射線治療を補完することについて試験する(図8A、8B及び18A参照)。前臨床試験は、TRC105とドセタキセルの組み合わせを用いた前立腺癌モデルでも実施した(図9参照)。さらに、前立腺癌上皮異種移植片を移植した去勢マウスにおけるTRC105処置により、腫瘍サイズが減少した(図13参照)。TRC105はまた、アンドロゲンシグナル伝達を阻害する別の方法としてエンザルタミドと組み合わせて、同様の結果を得た(図13参照)。
【0149】
前立腺間質線維芽細胞においてCD105に拮抗することにより、去勢感受性を媒介することができるが、前立腺脈管構造においてCD105に拮抗することは治療上の価値が限られている。アビラテロンまたはエンザルタミドとTRC105との、安全で許容できる組み合わせがある。CD105の阻害は、AR標的治療への耐性を克服することができ、AR標的治療に対して早期に耐性が発生した患者の臨床的有益性を誘導する。臨床試験デザインでは、EWOC(過剰用量制御をともなう用量漸増-ベイズ適応型薬物用量探索デザイン)コンビナトリアルフェーズIは、MTD(最大耐容量)曲線を作成することである。アビラテロン投与:500、750、1000mg qd;エンザルタミド投与80、120、160mg qd;及びTRC105投与:10~20mg/kg(連続変数)。適格性は、PSA ECOG PS 0-1の上昇によって進行の初期の徴候を示している、現在、アビラテロンまたはエンザルタミドのいずれかを受けている患者に対する。
【0150】
実施例2 異種CAF集団のアンドロゲン依存性変化は、去勢抵抗性を増強する
間質細胞の細胞不均質性が腫瘍促進能力を維持する
前立腺切除組織から生成した初代CAF培養物は、確立された腫瘍上皮の増大を促進し得る。しかし、初代PCa CAFのルーチン培養は、腫瘍促進能力の喪失につながり得ることが観察された。本発明者らは、NAF、CAF及びCAFHiP図10A)におけるCD90、CD105、CD117及びSTRO-1の細胞表面発現により、低継代CAF(3~7継代間)と高継代(CAFHiP>8継代)とを比較した。他のマーカーである、PDGF受容体、CD133、及びCD10も試験したが、間質細胞型の間で差次的に発現することは見出されなかった。CD117/CD90集団は、非誘導性CAFHiP及びNAFのいずれかと比較して、腫瘍誘導性CAFにおいてダウンレギュレートされた。Stro-1/CD90線維芽細胞集団は、NAFと比較してCAFにおいて亢進し、しかしCAFHiPにおいてさらに亢進した。興味深いことに、NAF及びCAFの両方における最も豊富な線維芽細胞集団はCD90/CD105集団であり、これは、CAFHiPにおいて枯渇していることが見出された。
【0151】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、長期間培養すると、間質の不均質性が失われると考えられる。したがって、本発明者らは、フローソーティングによって、CAF中のCD105、CD117、及びStro-1集団を枯渇させないことを試みた。興味深いことに、選別された培養物の過去7日間の増大は、最初の間質細胞表面マーカー分布の回復を明らかにした(データは示していない)。したがって、ヒトCWR22Rv1(Rv1)PCa上皮を用いた組織組換え異種移植の生成によりNAF細胞を加えることによって、CAFHiPにおける枯渇したCD90/CD105集団の回復を達成した。驚くべきことに、2つの非腫瘍誘導性間質集団CAFHiP/NAFの組み合わせは、NAFまたはCAFHiP単独における場合の腫瘍よりも大きい腫瘍を生じ、CAFの場合と統計的に類似していた(図10B)。腫瘍の組織学的分析により、Ki67免疫組織化学によって判定されるように、CAFHiP及びCAFHiP/NAF間質細胞の組み合わせでは、NAFと比較して上皮増殖が有意に亢進したことを明らかになった(図10C)。しかし、NAFまたはCAF組換え腫瘍と比較して、CAFHiP関連腫瘍における上皮サバイビン発現の有意な減少があった。多少直感に反するが、CAFHiPにおける腫瘍促進能力の喪失は、非腫瘍原性NAFを加えることにより回復する可能性がある。
【0152】
3種の間質細胞中のパラクリンメディエーターの相違を同定するために、本発明者らはRNAシークエンシングを行い、それらの発現パターンに基づいて遺伝子を分離した。CAF、CAFHiP及びNAFの間の差異的遺伝子発現を、CAF/CAFHiPとCAF/NAFとのランク付けされた合算比に基づいて分析した。候補パラクリンメディエーター(分泌遺伝子、上位200の差次的に制御された遺伝子の遺伝子オントロジー分析による)をベン図にプロットして、CAFHiPで見出されず、NAF及びCAFの両方で発現した9つの遺伝子を明らかにした(図10D)。逆に、3つの遺伝子が、CAF及びCAFHiP細胞によって共有された。おそらく、CAF中のパラクリンメディエーターは、CAFHiPまたはNAFにおいては差次的に発現し、腫瘍増大が観察されることが見出される。
【0153】
本発明者らは、新鮮な前立腺切除組織から直接得た前立腺間質集団における間質の不均質性の変化を調べた。凍結切片からのH&E染色によりがんまたは良性であることが確認された組織を解離させ、4人の患者の間質集団内のCD90、CD105、CD117及びStro-1の発現について選別した。図11Aは、集団ごとの最も豊富なマーカーに基づく細胞表面マーカーの分布を示し、共発現したマーカーは個々の集団の多様性を増す。CD117優性集団は、良性及びPCa組織の両方において最も豊富であった。Stro-1優性集団は、良性組織の間質において豊富であった。CD105優性集団は、良性組織と比較してPCa間質において差次的に亢進した。その発現は、組織アレイ中の免疫局在によって、79個のPCa及び16個の良性組織において確認された。良性前立腺組織では、CD105染色は主として内皮細胞に限定されていた(図11B)。しかし、PCaでは、CD105は内皮細胞で発現し、間質線維芽細胞では不均一に発現した。グリーソングレードと間質線維芽細胞性CD105の発現との相関は観察されなかった。TCGA Research Networkのクエリは、良性組織とPCa組織におけるCD105発現の差を明らかにしなかったが、CD105遺伝子増幅は、Trento/Cornell/Broad 2016 データにおけるPCa神経内分泌と顕著に関連していた(Cerami et al., Cancer Discov. 2012, 2, 401-404;Gao et al., cBioPortal. Sci Signal, 2013, 6, pl1)、ハザード比>3(p<0.001、図14)。興味深いことに、神経内分泌マーカー、クロモグラニンAの染色は、その発現がCD105線維芽細胞によって限定されていることを明らかにした(図11C及び14)。Stromal CD105はNEDを有する組織の83%において発現し、ここで受容体作動特性(ROC)分析により0.751の曲線下面積(AUC)が得られた(p = 0.0026、図11D)。次に、遺伝子パネルを測定して、CAF集団を定義するのに利用した。NAFと比較して、CD105発現が豊富な初代CAF株において、MMP-9、テネイシンC及びSFRP1(分泌型Frizzled関連タンパク質1)は、25倍を超えて亢進した(図11E)。α-平滑筋アクチン、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)及びIL-6の従来のマーカーは、興味深いことに、培養NAFのものに比べてCD105が豊富なCAFでは特に亢進しなかった。同時に、間質線維芽細胞性CD105発現は、PCa上皮と関連していたが、NEDと高度に相関していた。
【0154】
PCa神経内分泌分化におけるCD105の役割
エンザルタミド及び/または去勢療法でアンドロゲン軸に拮抗することは、最終的に神経内分泌腺分化(NED)につながる進行したPCaに対するルーチン介入である。エンザルタミドによって誘導されたCD105の細胞表面発現を定量するために、本発明者らは、ヒトRv1及びマウス野生型前立腺線維芽細胞を有する3D培養物を作製した。エンザルタミドによるこれらの培養物の処理は、ビヒクル(図12A)と比較して、FACS分析により、上皮及び線維芽細胞集団におけるCD105細胞表面発現の顕著な3倍の増加をもたらした。NAF、CAF及びCAFHiP集団におけるSFRP1の差次的発現及び観察されたCD105及びSFRP1発現の相関に基づいて、本発明者らは、SFRP1発現に対するCD105の役割を試験した。本発明者らは、NAF及びCAFをCD105中和抗体TRC105で処理した。CAFにおけるSFRP1発現は、TRC105によって有意にダウンレギュレートされ(p<0.0001)、NAFでは影響がなかった。図15のサーカスプロットは、TCGA遺伝子関連クエリに基づき、SFRP1遺伝子発現と、トロンボスポンジン1(THBS1)、血小板由来増殖因子1(PDGFC)、tectonicファミリーメンバー1(TCTN1)、及びジンクフィンガータンパク質449(ZFN449)の発現との関連を示す。4つのSFRP1制御遺伝子のうち、PDGFC、ソニックヘッジホッグ(TCTN1の標的)、及びTHBS1は、腫瘍NEDと関連している。Trenton/Cornell/Broad2016試験において、その増幅がNEDと関連していた(図15)という、PCaのNEDにおけるSFRP1の役割についてのさらなる証拠が、TCGAにあった(Cerami et al., Cancer Discov. 2012, 2, 401-404;Gao et al., cBioPortal. Sci Signal, 2013, 6, pl1)。上皮におけるSFRP1の役割を試験するために、本発明者らは、培養したRv1を組換えSFRP1で処理して、9 PCa NED遺伝子のパネルの用量依存的な有意な誘導を見出した(p<0.002;図12C)。しかし、同じ用量のSFRP1は上皮増殖に影響を及ぼさなかった(図15)。エンザルタミド治療の結果として、PCa患者由来異種移植(PDX)モデルを調べた。CD105の免疫局在化は、エンザルタミド治療の非存在下での良性及びがん組織移植片における血管内皮において、主に発現した。3D培養と同様に、エンザルタミド投与4日後、CD105の発現は、PDX組織の上皮及びCAF集団の両方で亢進した(図12D)。同時に、SFRP1は、エンザルタミド治療に関連するPDXにおいてアップレギュレートされることが見出された。したがって、いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、アンドロゲン軸をブロックすることは、CD105の発現ひいてはPCaのNEDに寄与するSFRP1の発現と関連する。
【0155】
CD105CAF集団のエンザルタミド誘発性増殖がATTの有効性に重要であるかどうかを試験するために、本発明者らは、上述のように、ヒトCW22Rv1細胞及び野生型マウス前立腺線維芽細胞を有するPCa上皮及び間質を用いて、3D共培養を作製した。この場合、種差により、ヒト特異的CD105中和抗体、TRC105による上皮、またはマウス特異的CD105中和抗体M1043による線維芽細胞のいずれかの標的化が可能になった。この試験に用いた用量(1μg/ml)では、2つの抗体の交差反応性は見られなかった(図16)。TRC105及び/またはM1043の存在下または非存在下で共培養物をエンザルタミドで処理した。得られた上皮増殖の変化を、EpCam及びKi-67共染色のFACS分析によって定量した。M1043またはTRC105のいずれか単独による処置は、IgG対照と比較して上皮増殖を変化させなかった。3D培養物において、CW22Rv1増殖指数は、ビヒクルと比較してエンザルタミド治療で倍増した(図12E、p<0.01)。線維芽細胞CD105または上皮CD105のいずれかを、M1043またはTRC105でブロックすると、それぞれエンザルタミド誘発上皮増殖が変化しなかった。しかし、エンザルタミドをM1043とTRC105の両方と組み合わせると、上皮増殖が対照の増殖に回復した。MTTアッセイによって判定されるように、(線維芽細胞の非存在下での)Rv1またはC42Bの処理では、エンザルタミド単独で細胞増殖を有意に減少させた(p<0.0001、図12F)。エンザルタミドにTRC105を加えることは、PCa上皮の増殖にさらなる影響を与えなかった。アンドロゲン受容体発現のないPC3細胞は、TRC105の存在下または非存在下でエンザルタミドのいずれに対しても感受性ではなかった。したがって、エンザルタミドに対する間質反応は、上皮増殖に必須であった。
【0156】
CD105に拮抗することにより、去勢抵抗性前立腺癌を、アンドロゲン標的療法に対して感受性化させる
CD105に拮抗することにより、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)を、アンドロゲン標的療法(ATT)に対して感受性化させるかどうかを決定するために、本発明者らは、初代ヒトCAF及びRv1の組織組換え同所性異種移植片を試験した。腫瘍を3週間増大させてから、マウスを去勢し、TRC105の存在下または非存在下で、エンザルタミドによりさらに3週間処置した。エンザルタミドを与えた去勢マウスの去勢抵抗性腫瘍組換えモデルは、腫瘍体積を有し、リン酸化ヒストンH3及びTUNEL局在による細胞代謝回転の組織学的測定値は、対照無傷マウスと統計的に同等であった(図13A、13B)。TRC105単独で処置したマウスは、ビヒクルよりも腫瘍が小さく(p<0.05)、対照と比較して増殖または細胞死のいずれかの変化はほとんど観察されなかった。しかし、エンザルタミド処置去勢マウスにおけるTRC105の組み合わせは、ビヒクルまたはエンザルタミドのいずれかと比較して、腫瘍体積の有意な減少をもたらした(それぞれp<0.01及び<0.05)。去勢、エンザルタミド、及びTRC105の組み合わせは、対照または去勢エンザルタミド処置群(それぞれp<0.05及び<0.001)いずれかと比較して増殖を実質的に減少させ、対照またはエンザルタミド処置と比較してTUNEL染色を増加させた(p<0.05)。クロモグラニンA染色に関連するATTによって亢進したNEDは、TRC105の追加投与によって減少した。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、アンドロゲン軸の拮抗に関連するPCaのCD105及びNEDの観察された増加は、CD105を中和してNEDを制限し、去勢感受性を回復する手段を提供することによって利用することができる
【0157】
実験手順
3Dオルガノタイプ共培養: 以前に報告されたものと同様のコラーゲンマトリックスで、3Dオルガノタイプ共培養系の改変版を実施した(Stark et al., 1999, J Invest Dermatol 112, 681-691)。コラーゲンマトリックスゲルは、5倍量のラット尾部コラーゲンIを、2倍量のマトリゲル(NCI)、1倍量の10×DMEM培地(GE Healthcare Life Sciences)、及び1倍量のFBS(Atlanta Biologicals)、Rv1及び初代マウス前立腺線維芽細胞を1:3の比で組み合わせ、混合して調製した。ナイロンマスをコラーゲンでコーティングし、6ウェルプレート中の金属グリッド上に置いた。ゲルプラグ(150μl)をナイロンマスに移し、培地をナイロンメッシュのレベルに加えた。72時間後、細胞をコラゲナーゼでマトリックスから解離して、FACS分析のために分散させた。
【0158】
FACS分析: FACS実験は、eBiosciences抗体、すなわち、抗ヒトStro-1-FITC(340105)、抗ヒトCD90-PE(12-0909-42)、抗ヒトCD105-APC(17-1057-41)、抗マウスCD105-APC(17-1051-82)、抗ヒトCD117-PE-Cy7(15-1178-41)、抗ヒトKi67-PECy7(25-5699-41)、及び抗ヒトEpCAM -PE(12-9326-41)を用いて実施した。すべての事象は、BD FACSDivaソフトウェアをインストールしたCedars-Sinai Medical Center FACSコアのBD LSRIIフローサイトメーターで取得した。ファイルは、FlowJoソフトウェアv10.2を使用して分析した。EpCAM陽性細胞を用いて、三次元(3D)共培養物中のCW22Rv1上皮を同定し、CD105またはKi67陽性細胞についてさらにゲートした。
【0159】
動物試験: 以前に記載されているように(Banerjee et al., 2014, Oncogene 33, 4924-4931;Hayward et al., 2001, Cancer Res 61, 8135-8142)、それぞれ腎被膜下または前立腺の同所移植のために、6~8週齢または10~12週齢のオスのベージュ/SCIDマウス(Envigo)を使用した。動物実験委員会の承認に従って、2×10のCW22Rv1細胞及び6×10の間質細胞を20μLのI型コラーゲンに懸濁させて、7日後に去勢したマウスの腎被膜下に移植し、去勢後21日目に屠殺した。同所性異種移植については、マウスを3週間後に去勢し、エンザルタミド(1mg/マウス強制経口投与)及び/またはTRC105(50μg/マウス静脈)で毎週3回処置し、去勢後21日目に屠殺した。腫瘍体積は、改変された楕円体の式: 体積3 =π/6×(幅)2×長さ、を使用して計算した。
【0160】
細胞株及び培養物: ATCCのCW22Rv1、C42B、及びPC3細胞を指示通りに拡大させた。Cedars-Sinai Medical CenterまたはGreater Los Angeles Veterans Affairsの前立腺切除標本を、以前に報告されたようにC57BL/6マウス野生型前立腺線維芽細胞を増殖させるのと同じ方法を用いて、NAF及びCAF細胞を培養して生成した(Franco et al., 2011, Cancer research 71, 1272-1281;Kiskowski et al., 2011, Cancer research 68, 4709-4718)。TRC105及びM1043は、TRACON Pharmaceuticals、Inc.(San Diego、CA)によって提供された。エンザルタミド(Xtandi)は、Medivation(San Francisco、CA)から購入した。細胞をTRC105またはM1043(1μg/mL)及びエンザルタミド(5μM)で72時間処理した。
【0161】
CAF条件培地: CAFは、以前に報告されたように、(Franco et al., 2011, Cancer research 71, 1272-1281;Qi et al., 2013, Cancer cell 23, 332-346)正常な培養培地中で、72時間でコンフルエントに達するような密度でプレーティングした。72時間後、培地を収集し、遠心分離して細胞破片を除去し、上清を新鮮なものとして使用したか、または-80℃で保存した。標的細胞を、50%対照培地と組み合わせた50%条件培地で処理した。
【0162】
組織病理学及び免疫組織化学: 以前に報告されたように(Placencio et al., 2008, Cancer research 68, 4709-4718)、パラフィン包埋組織を切片化し(厚さ5μm)、ヘマトキシリン及びエオジン(H&E)染色及び免疫組織化学に供した。前立腺癌組織アレイの連続切片組織アレイは、US Biomax, Inc.(Derwood, MD)から購入した。抗リン酸化ヒストンH3(06-570、Millipore)、抗CD105(NCL-CD105、Leica Microsystems)、抗Ki67(ab16667、Abcam)及び抗クロモグラニンA(sc-13090、Santa Cruz Biotechnology)、抗SFRP1(601-401-475S、Rockland Immunochemicals)及び抗サバイビン(2808、Cell Signaling)抗体を、4℃で一晩インキュベートした。二次抗体の開発は、Dako Cytomationマウスまたはウサギキットを用いて行い、3,3’-ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド基質を用いて視覚化した。TUNEL染色は、製造業者のプロトコール(S7100、Millipore)に従って行った。スライドはLeica Biosystems Aperio ATで走査した。組織当たり最大5つの視野を、特注のマクロを用いてFiji(ImageJ)により定量した。有糸分裂及び死亡指数は、陽性染色された核の総数を核の総数で割って定量した。
【0163】
RNA分析: RNeasyキット(Qiagen)を用いて全RNAを抽出した。iSCRIPT cDNA合成キット(1708891、Bio-Rad)を使用して、1μgのRNAをcDNA合成に用いた。定量的RT-PCRは、Step One Real-Time PCRシステム(Applied Biosystems)を用いて5回繰り返して実施した。遺伝子のmRNA発現をGAPDHに対して正規化した。プライマー配列は、表1に見出すことができる。RNAシーケンシングのために、Ion Proton AmpliSeq Transcriptome RNAシークエンシングを行い、平均3Mの読み取りを達成した。Torrent Suiteバージョン4.4.2を使用して、ヒトゲノムに平均88%の読み込みをマッピングした。
【0164】
(表1)プライマー配列
【0165】
MTT増殖アッセイ: 96個のウェルあたり3000個の細胞を、処理当たり5ウェルを用いて72時間処理した。MTT試薬(M6494、Life Technologies)を指示通りに調製し、37℃で1時間インキュベートし、製造業者の推奨を用いて分析した。
【0166】
統計分析: 間質CD105集団及び上皮クロモグラニンA発現の一致を、受信者操作特性(ROC)曲線及びROC曲線下面積(AUC)により測定した。マン-ホイットニーU検定を用いて、AUC(c-統計量)のp値を決定した。全ての計算はRのROCパッケージを用いて行った。神経内分泌遺伝子のヒートマップは、SFRP1の異なる用量の遺伝子サインによって生成された。MATLABのバイオインフォマティクスツールボックスのClustergram機能を、ヒートマップの作成と遺伝子ごとのクラスタリングに使用した。CAF/CAFHiP及びCAF/NAF遺伝子値について比の値を生成して、RNAシークエンシングデータ中トップの分泌遺伝子を引き出した。次に、分析されたすべての遺伝子中の各比率値について比率値をランク付けし、最も高い値は1のランクを有する。2つの比率値があった場合、平均ランクを割り当てた。続いて、CAF/CAFHiP及びCAF/NAF比率値のランクを合計した。次いで、2つのランクの合計値がランク付けされた。最も低い合計値は最も低いランクを有し、これは最も重要な遺伝子発現と逆相関した。ヒートマップに示されるように、類似のパターンを有する遺伝子は、遺伝子発現において互いにより近接していた。以前に記載されたように(Cerami et al., Cancer Discov. 2012, 2, 401-404;Gao et al., cBioPortal. Sci Signal, 2013, 6, pl1)、cBioPortalを使用して、SFRP1、クロモグラニンA及びCD105の突然変異、欠失及び増幅頻度ならびにTCGA研究ネットワーク: http://cancergenome.nih.gov/によって生成された公に利用可能なデータセットを介した相関性をチェックした。インビトロデータの多重比較は、Prismソフトウェア(GraphPad software)v6.07を使用して、1元配置または2元配置分散分析(ANOVA)で評価した。複数の比較のために、1元配置ANOVAを用いて腫瘍データを分析した。結果は、個々のデータポイントとして、または平均±S.Dとして表した。0.05未満のp値は、統計的に有意であると考えられた(p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。FACSデータの各群内の相対的発現を、パイまたはドーナツチャートの特徴を用いてPrismソフトウェアでプロットした。
【0167】
実施例3 CD105に拮抗することにより前立腺癌における放射線感受性を補助する
前立腺癌におけるCD105の発現
CD105は、前立腺癌、卵巣癌、胃癌、腎臓癌、乳癌、及び小細胞肺癌ならびにグリア芽細胞腫を含むいくつかのがんにおける攻撃性、転移、再発及び治療耐性に関係する。本発明者らは、FACS分析により、前立腺癌細胞株(PC3、C4-2B、及び22Rv1)上のCD105の細胞表面発現が、4Gy放射線治療で増加することを見出した(図18A)。細胞表面CD105の発現は、時間及び放射線量の両方に依存した(図18B、18C)。2Gy放射線は、CD105の発現を有意にアップレギュレートしなかったが、4Gy及び6Gyの用量は、3つの細胞株すべてについてCD105を有意に増加させた。さらに、22Rv1におけるCD105発現の時間依存性測定は、4Gy照射の8時間後の有意な亢進を示し、それは1週間後に亢進したままであった。
【0168】
本発明者らは、TRC105を用いてBMP依存性CD105シグナル伝達を遮断することにより、放射線応答におけるCD105の役割を特定しようとした。50ng/mLのBMPで刺激した場合、1μg/mLの最小用量で、TRC105は、22Rv1においてリン酸化SMAD1/5活性化及びID1(BMP標的遺伝子)の発現を効果的にブロックした(図18D及び図19)。TRC105と放射線との組み合わせは、放射線単独と比較して、アネキシン-Vによって測定されるように、有意にアポトーシスを増加させた(図18E)。IgGまたはTRC105処理CW22Rv1及びC4-2B細胞株を、放射線量の増加と比較して、クローン原生生存アッセイを実施して、CD105が放射線耐性を付与するかどうかを判定した(図18F)。これらの両細胞株において、TRC105を用いた治療により、前立腺癌細胞を、放射線治療に対して感受性化させた(p値<0.001)。同時に、放射線誘導CD105は、アポトーシスに対するPCa耐性に寄与しているようであり、CD105をTRC105で拮抗して、放射線感受性を回復させた。
【0169】
放射線は、BMP媒介性のSIRT1発現を誘導する
ヒストンデアセチラーゼであるSIRT1は、DNA損傷修復のメディエーターとして公知である。本発明者らは、BMP/CD105シグナル伝達がSIRT1を制御するかどうかを試験した。BMPを用いた、血清飢餓状態の22Rv1の処理は、Smad1/5のリン酸化に関連するSIRT1タンパク質発現を誘導した(図20A)。さらに、SIRT1転写のBMP依存性誘導は、CD105が用量依存的様式でTRC105で拮抗された場合、ダウンレギュレートされた(図20B)。SIRT1は、前立腺癌においてアップレギュレートされることが以前に報告されている。R2-ゲノム解析を用いて、良性組織(n=48)及び前立腺癌組織(n=47)の患者サンプルにおけるSIRT1発現を比較した。組織型の比較では、SIRT1発現は、良性前立腺組織と比較して、前立腺癌試料において有意に過剰発現したことを確認した(図20C)。ヒト良性及び前立腺癌組織の免疫染色により、SIRT1は、前立腺癌上皮において過剰発現することをさらに確認した(図20D)。以前に報告されたように、SIRT1は核に免疫局在していた。予想通り、SIRT1発現は、22Rv1及びC4-2Bにおいて、放射線量依存性及び時間依存性の両方の様式でアップレギュレートされた(図20E、20F及び21)。TRC105を用いた治療により、両方の細胞型における放射線誘導SIRT1発現が排除され、このことは、いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、SIRT1が、BMP/CD105シグナル伝達の下流にあることを示唆している。
【0170】
CD105をブロックすると一時的なDNA損傷が誘導されるが、p53の長期間の蓄積につながる
SIRT1のサイレンシングまたはノックアウトは、Nbs1、Brca1及びRad51を含む下流のDNA損傷修復タンパク質の動員を損なうことが報告されている。本発明者らは、IgGまたはTRC105の存在下での4Gy照射の4時間後、24時間後、48時間後及び72時間後の、γ-H2AX及びp53結合タンパク質(p53BP)増殖巣を比較して、DNA損傷修復の障害が、TRC105が放射線感受性を与える機構であるかどうかを試験した(図22A)。TRC105処理は、照射4時間後及び24時間後にγ-H2AX及びp53BP増殖巣の有意な増加をもたらしたが、48時間までに、TRC105処理と照射単独との間に差はなかった。TRC105単独処理では、非処理の細胞と比較して、24時間以内に2本鎖DNA切断が有意に増加し、これは72時間を超えて持続した(データは示さず)。しかし、核1個あたり10個以上の増殖巣を有する細胞の数は、放射線単独の場合の59.6%と比較して、TRC105を用いる場合わずか4.3%であった。TRC105の存在下及び非存在下で照射された22Rv1細胞を用いてCOMETアッセイを実施し、1本鎖切断の発生を含むDNA損傷の尺度を付与した。結果は、放射線照射の30分後にTRC105処理細胞の尾部モーメントの有意な増加を示したが(p値<0.001)、24時間後には有意差はなかった(図22B)。特定の理論に束縛されるものではないが、放射線の存在下で、TRC105はDNA損傷修復を遅延させるが、細胞はTRC105誘導SIRT1抑制をバイパスしてDNA完全性を回復できるようであることを、データは示唆している。したがって、TRC105をともなう照射に対する前立腺癌細胞の観察された感受性化は、DNA損傷修復へのその影響によってのみ決定されるのではないようである。
【0171】
TRC105放射線感受性化を媒介する別のプロセスを探索するために、本発明者らは細胞周期の変化を調べた。細胞周期の再分布を受けるG2細胞周期停止を引き起こすなどの、細胞周期に対する放射線の影響は、十分に記載されている。したがって、本発明者らは、IgG(対照)の存在下でCW22Rv1細胞を照射すると(4Gy)、G2期に4時間までに細胞が蓄積するが、細胞周期の分布は8時間までに回復することを見出した。しかし、放射線及びTRC105処理細胞の組み合わせは、同じ時間枠でDNAの完全性の回復が観察されたにもかかわらず、24時間までに解消しなかったG2細胞周期の停止を受けた(図22C)。SIRT1がp53を脱アセチル化することによって、p53の安定性を制御することが以前報告されているので、本発明者らはTRC105処理によりp53の状態を調べた。照射前(4Gy)に、22Rv1細胞を、TRC105またはSIRT1活性の阻害剤である200μMのニコチンアミドのいずれかで処理した。次いで、放射線照射の0日後、1日後、及び7日後に細胞を収集して、早期及び後期p53応答を明らかにした。本発明者らは、ニコチンアミドによるSIRT1活性の阻害またはTRC105によるSIRT1発現の阻害が、アセチル化p53の増加をもたらし、それによって全-p53を安定化することを見出した(図22D)。アセチル化及び全-p53は、放射線照射の7日後にTRC105及びニコチンアミド処理群において顕著に増加した。TRC105またはニコチンアミドによるp53の安定化は、p53の下流の標的であるp21の増加と相関した。さらに、p53安定化は、抗アポトーシスタンパク質Bcl-2の減少と相関していた。p53欠損前立腺癌細胞株PC3をTRC105で処理し、クローン原生生存のために放射線量を増加させると、放射線感受性化の証拠は得られなかった。前立腺癌では機能喪失p53突然変異はまれであるが、膵臓癌の90%はp53突然変異を有する。したがって、本発明者らは、2つのp53突然変異膵臓癌細胞株、HPAF-II及びMIAPACA-2を使用して、放射線に対するTRC105の無反応性が、p53の機能喪失に起因するかどうかを特定した。PC3細胞株の場合と同様に、放射線で処理したHPAF-II細胞株またはMIAPACA-2細胞株は、TRC105によるCD105阻害とのクローン原生応答において変化を示さなかった(図23A~23C)。しかし、機能的p53を有する2つの乳癌細胞株、MCF7及びMDAMB231は、TRC105の投与によって、照射に対してポジティブに感受性化されることが見出された(図23D及び23E)。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、このことは、完全なp53応答が、TRC105依存性の放射線応答に必要であることを示唆した。
【0172】
PGC1α及びミトコンドリア生合成が、BMP/CD105によって制御される
本発明者らは、SIRT1の他の下流の機能を再検討して、PGC1αに対するCD105の役割を試験した。SIRT1標的であるPGC1αは、ミトコンドリアの生合成の制御に関与する転写因子である。PGC1αの活性化及び核局在化は、SIRT1による脱アセチル化を必要とする。IgGまたはTRC105の存在下での4Gy放射線による22Rv1細胞の処理は、全細胞溶解物のウェスタンブロッティングによってPGC1α発現に影響を及ぼさなかった(図24A)。しかしながら、オルガネラ分画による細胞内局在をより詳細に調べると、放射線との関連で、細胞質画分からのPGC1α枯渇及び核画分中のPGC1α蓄積が示された。CD105をブロックすることにより、PGC1αの放射線誘導性核内移行が妨げられた。免疫蛍光局在化は、これらの同じ知見を裏付けた(図24B)。PGC1α細胞内局在化は、代謝及びミトコンドリア生合成に関与するPGC1α標的遺伝子、すなわち、NRF1、MTFA及びCPT1Cの発現と相関した(図24C)。NRF1、MTFA及びCPT1CのmRNA発現は、TRC105の存在下と比較して、放射線により有意に増加した(p値<0.001)。放射線は、多くのがんモデルにおいてミトコンドリアDNA(mtDNA)の蓄積を誘導することが示されている。TRC105の存在下でのmtDNAの劇的なダウンレギュレーションが見出された(p値<0.0001)(図24D)ことで、したがって、mtDNAの定量化は、CD105によるPGC1α制御に関するこれまでの知見と同等であった。ミトコンドリア電子伝達鎖タンパク質の評価では、TRC105処理により、CIV-MTCO1及びCI-NDUF88のダウンレギュレーションがもたらされることを示した(図25)。本発明者らは、SIRT1発現のCD105による制御が、p53の下流のDNA損傷修復、ならびに放射線との関連でPGC1αを介してミトコンドリアの完全性を維持することのどちらにも影響を与えることを実証する。
【0173】
BMP/CD105に拮抗することにより、細胞エネルギーを枯渇させる
放射線誘発損傷からの細胞回復は大量のエネルギーを必要とし、したがって細胞代謝を標的とすることにより、細胞を放射線に感受性化させる可能性がある。以前の研究では、エネルギー欠損により、アポトーシスまたはG2細胞周期停止が不当になる可能性があることが示されている。前立腺癌は、酸化的リン酸化を受けるミトコンドリアに大きく依存する、比較的成長が遅いがんである。CD105はミトコンドリアの生合成を増強するので、本発明者らは、Seahorse-XFを用いて酸素消費速度を測定することによって、放射線及びTRC105処理後のミトコンドリアの機能性を試験した(図26A)。放射線治療は、照射されていない細胞と比較して非ミトコンドリア呼吸を亢進させた。しかし、ミトコンドリア呼吸のみを比較すると、非照射細胞と照射細胞の基底酸素消費量は、類似していた。放射線媒介性のミトコンドリア損傷により、明らかにプロトンの漏出が増加し、予備呼吸能が枯渇した。放射線との関連でCD105に拮抗すると、放射線単独の場合と比較して、基底の酸化的リン酸化が減少し、予備呼吸能がさらに低下した。Seahorse-XFによる、CW22Rv1細胞における細胞外酸性化の程度は、放射線との関連で解糖に依存することが示唆された(図26B)。TRC105の添加は、CW22Rv1細胞における解糖をブロックした。さらに、放射線またはTRC105いずれかのみの処理により、ミトコンドリア依存性ATP産生の枯渇がもたらされた。(図26C)。しかし、放射線とTRC105の組み合わせは、いずれかの薬剤単独の場合と比較して、さらなる枯渇をもたらした。したがって、ミトコンドリアATP合成阻害剤であるオリゴマイシンを用いたCW22Rv1の処理は、オリゴマイシンの用量にほとんど関係なく、連続的細胞計数によって測定されたように、細胞増殖を有意に低下させた(p値<0.01、図27)。放射線治療の1日以内に、全ATP貯蔵量の有意な減少が見られ、CW22Rv1細胞における3日までの対照に近いレベルに戻ったようであった(図26D)。SIRT1機能がニコチンアミドにより直接ブロックされるか、またはCD105アンタゴニズムによりその発現がブロックされた場合、細胞内の貯蔵ATPは放射線治療に関係なく枯渇した。したがって、TRC105依存性エネルギーの枯渇は、放射線感受性化を可能にするp53機能の喪失を必要とするとみられる、慢性効果である。
【0174】
CD105に拮抗することにより、インビボでの放射線感受性が与えられる
本発明者らは、CW22Rv1異種移植モデルを用いてCD105依存性放射線耐性を評価した。皮下にCW22Rv1を移植されたマウスには、照射の72時間前に1回用量のIgGまたはTRC105を投与し、続いて放射線治療の期間中は週に3回投与した。照射IgG群及び照射TRC105群に、2Gyの放射線量を5日間連続して与えた。腫瘍体積の倍率変化を各群について計算した(図28A)。TRC105単独では、非処理のものと比較して腫瘍体積に影響しなかった。対照群と比較して放射線及びIgG群の腫瘍体積は、放射線照射後1週間で有意に低下したが、2週間後にはこの群は、非照射群と有意差はなかった。しかし、放射線とTRC105の組み合わせで処理した腫瘍体積は、他の3つの実験群よりも有意に小さかった(p値<0.001)。いずれかの処置単独と比較して、腫瘍の倍加時間は、TRC105を照射と組み合わせることによって、認識可能な程度まで阻害された(図28B)。
【0175】
上記の種々の方法及び技術は、本出願を実行するための多くの方法を提供する。当然のことながら、記載された全ての目的または利点が、本明細書に記載の特定の実施形態に従って、必ずしも達成されるわけではないことを理解されたい。したがって、当業者は、例えば、本明細書に教示された利点または利点群を達成または最適化する様式で、本明細書で教示または示唆された他の目的または利点を必ずしも達成することなく、方法を実施することができることを認識するであろう。本明細書には、種々の代替案が記載されている。いくつかの好ましい実施形態は、特に、1つ、別の、またはいくつかの特徴を含むが、他の実施形態は、1つ、別の、またはいくつかの特徴を特に除外し、さらに他の実施形態は、1つ、別の、またはいくつかの有利な特徴を含むことによって、特定の特徴を緩和することを理解されたい。
【0176】
さらに、当業者は、異なる実施形態からの種々の特徴の適用可能性を認識するであろう。同様に、上述した種々の要素、特徴及びステップならびにそのような各要素、特徴またはステップの他の既知の均等物は、本明細書に記載の原理に従って方法を実施するために、当業者が、様々な組み合わせで使用することができる。種々の要素、特徴、及びステップの中には、種々の実施形態に具体的に含まれるものと、特に除外されるものとがある。
【0177】
本出願は、特定の実施形態及び実施例の関連で開示されているが、当業者であれば、本出願の実施形態は、具体的に開示された実施形態を超えて、他の代替実施形態及び/または使用ならびにその改変及び均等物に及ぶことを理解するであろう。
【0178】
本出願を実施するために本発明者らに知られている最良の形態を含む、本出願の好ましい実施形態を本明細書に記載する。これらの好ましい実施形態の変形は、上記の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。当業者は、このような変形を適切に用いることができ、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で、本出願を実施することができると考えられる。したがって、本出願の多くの実施形態は、適用される法律によって許容されるように、添付の特許請求の範囲に記載された主題のすべての改変及び均等物を含む。さらに、本出願において他に指示されない限り、または文脈から明らかに矛盾しない限り、全ての可能な変形における上記要素の任意の組み合わせが本明細書に包含される。
【0179】
本明細書で言及した全ての特許、特許出願、特許出願の刊行物、及び記事、本、明細書、刊行物、文書、物などの他の資料は、これに関連する訴追ファイルの履歴、本文書と矛盾しているか、または本文書に抵触しているもの、または本文書に関連して現在または後で請求する範囲の最も広い範囲について限定的な影響を及ぼす可能性があるものを除いて、このすべての目的のために、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。例として、組み込まれた資料のいずれかに関連する用語の説明、定義、及び/または使用と、本文書、説明、定義に関連する用語の説明、定義、及び/または使用、及び/または本文書における用語の使用との間に矛盾または対立がある場合には、本明細書の用語の使用が優先する。
【0180】
本明細書で開示される本出願の実施形態は、本出願の実施形態の原理の例示であることを理解されたい。採用することができる他の改変は、本出願の範囲内にあることが可能である。したがって、限定ではなく例として、本明細書の教示に従って、本出願の実施形態の代替の構成を利用することができる。したがって、本出願の実施形態は、図示し説明したものに厳密に限定されない。
【0181】
本発明の種々の実施形態は、上記の詳細な説明に記載されている。これらの記述は上記の実施形態を直接説明しているが、当業者は本明細書に示され説明された特定の実施形態に対する改変及び/または変形を考案することができるということを理解されたい。この説明の範囲内に入るそのような改変または変形は、同様に本明細書に含まれることが意図される。特に明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲の単語及び語句は、当業者にとって通常の及び慣用の意味を与えられることが、発明者の意図である。
【0182】
出願の時点で出願人に知られている本発明の種々の実施形態の上記の説明は、例示及び説明のために提示され、意図されている。本説明は網羅的であることを意図するものでもなく、本発明を開示された厳密な形態に限定するものでもなく、上記の教示に照らして多くの改変及び変形が可能である。記載された実施形態は、本発明の原理及びその実用的な適用を説明し、他の当業者が種々の実施形態において、及び企図される特定の用途に適した種々の改変を用いて本発明を利用できるように使用する。したがって、本発明は、本発明を実施するために開示された特定の実施形態に限定されないことが意図される。
【0183】
本発明の特定の実施形態が示され、説明されたが、当業者には、本明細書の教示に基づいて、本発明及びそのより広い態様から逸脱することなく、変更及び改変がなされることがあり、したがって、添付の特許請求の範囲が、本発明の真の精神及び範囲内にあるそのようなすべての変更及び改変をその範囲内に包含するものであることが、明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図13A
図13B
図14
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【配列表】
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